JP5795392B2 - 芳香消臭剤 - Google Patents

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本発明は、多層構造を有する芳香消臭剤に関する。また、多層構造を有する芳香消臭剤の製造方法に関する。特に、この芳香消臭剤は、吸水性高分子の層と、架橋ゼラチンの層とを有するものである。
従来、部屋や玄関、トイレ等の様々な場所で使用される種々の芳香剤や消臭剤が販売されている。例えば、液状の芳香性物質に拡散用の棒を挿して使用するいわゆるスティックディフューザーや、棒ではなく不織布等の布を挿すことで拡散力を高めるタイプのもの、加湿器等の水に芳香性材料の抽出液(いわゆるエッセンス)を添加して用いるもの等が市販されている。
また、芳香剤や消臭剤には、液体を用いる物の他にも、吸水性物質や、各種ゲル化剤が用いられている。例えば、特許文献1〜4には、含水ゲルや水性ゲル芳香剤といった吸水性樹脂を用いた芳香消臭剤が開示されている。これらは、吸水性樹脂を用いた芳香消臭剤が、前述のディフューザー等のように液を拡散させることで芳香消臭機能を発揮するものと比べて、その芳香消臭効果の持続性に優れ、容器が倒れたときの液の飛散防止効果があり、また、意匠性を有することに着目したものである。
また、特許文献5には、共に揮発性化合物を含む上層のゲル層と、下層の液体あるいはゾル状の流動層からなる芳香消臭剤が開示されている。これは、安定した芳香強度を維持できるようにするために、揮発しやすい液体やゾル状の流動層の上部をゲルが抑えることで、使用時や流通時の安定性を保つためのものである。
特開2007−291145号公報 特開2007−291146号公報 特開2010−162327号公報 特開2012−61121号公報 特開2003―102822号公報
前述の特許文献1〜5が解決しようとするように、液体を主要な構成としてそのまま用いるタイプの芳香剤は、液体が蒸発しやすいこと、容器が倒れたとき液漏れの恐れがあることなどの課題が存在していた。これらの課題を解決するために、吸水性樹脂を芳香消臭剤の主成分としたり、ゲル層を蓋として機能するような2層構造の芳香消臭剤が提案されているが、吸水性樹脂は、製造時や使用開始時には液漏れがほとんどなくても、温度変化や経時変化に伴い吸収されている液量が変化することでわずかに液が漏出してしまう場合がある。また、特許文献5に開示されている2層構造のものは、そもそも使用時には流動層が開放されることを前提としたものであり、液漏れ等のおそれがある。
また、従来の芳香消臭剤は単一の芳香や消臭といった機能を維持することを目的としていたが、近年、さらなる高付加価値や、需要者の独自性に応えた芳香消臭剤が求められるようになってきており、そのような需要の一つとして、香りや効果の変化といったニーズがある。このような多機能の芳香消臭剤として、ゲル層の上にゲル層を設けるような構成が考えられるが、このような構成では、使用に伴い上層の収縮により直ちに下層のゲルが露出し芳香消臭効果の混合が著しく、機能の切替えと呼べる状態とならない問題がある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1>水性高分子層と架橋ゼラチン層との2層以上の多層構造を有する芳香消臭剤であって、吸水性高分子層が、吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層であり、架橋ゼラチン層が、架橋ゼラチンと機能性物質とを含有するゲル状体からなる架橋ゼラチン層であり、1層あるいは複数層の前記架橋ゼラチン層の上に、1層あるいは複数層の前記吸水性高分子層が積層された多層構造を有する芳香消臭剤。
<2> 前記機能性物質が、香料、消臭剤、防虫剤および抗菌剤から選択される少なくとも1以上の物質である前記<1>記載の芳香消臭剤。
<3> 前記架橋ゼラチンが、ゼラチンと架橋剤とを架橋せしめることで得られてなる架橋ゼラチンである前記<1>または<2>記載の芳香消臭剤。
<4> 容器内に、機能性物質とゼラチンと架橋剤との含有液を充填する充填工程と、前記充填工程後、ゼラチンと架橋剤とを架橋させることでゲル状化させた架橋ゼラチン層を成形させる架橋工程と、前記架橋工程により成型された架橋ゼラチンの上部に吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層を設ける積層工程とを有する多層構造を有する芳香消臭剤の製造方法。
本発明の構成の芳香消臭剤とすることで、吸水性高分子層から漏出する液による美感の悪化や液漏れの恐れを解消することができる。また、複数の層を有する各層が有する芳香消臭機能の安定した切り替えが生じるという優れた芳香消臭剤とすることができる。また、本発明の芳香消臭剤の製造方法によれば、本発明の構成の芳香消臭剤を簡易に、かつ、需要に応じて自由に設計できる。
本発明の芳香消臭剤の一態様を示す図である。 本発明の構成による芳香消臭剤の経時変化を示す模式図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明は、少なくとも吸水性高分子層と架橋ゼラチン層との2層以上の多層構造を有する芳香消臭剤であって、吸水性高分子層が、吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層であり、架橋ゼラチン層が吸水性高分子層の下部に設けられ、かつ、架橋ゼラチンと機能性物質とを含有するゲル状体からなる架橋ゼラチン層であることを特徴とする芳香消臭剤に関するものである。このような構成とすることで、使用時に吸水性高分子層から漏出する液は下層の架橋ゼラチン層に吸収されることで、液漏れの恐れを解消することができる。また、この構成によれば、吸水性高分子層の芳香消臭効果が発揮された後、吸水性高分子層の収縮により、架橋ゼラチン層の表面を覆いながら減少していくため、安定した芳香消臭機能の切り替えが生じるという優れた芳香消臭剤とすることができる。さらに、機能性成分によっては、吸水性高分子或いは架橋ゼラチンのいずれかに担持されにくいこともあるが、それぞれに適した機能性物質を担持させることで、各々の長所を生かした複合的な機能を有する芳香消臭剤とすることができる。
本発明の芳香消臭剤を構成する層の一つである吸水性高分子層は、吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層である。吸水性高分子を用いた芳香消臭剤は、種々開発されてきたが、本発明においてはこれらの吸水性高分子を使用することができる。吸水性高分子は、一般的に自重のおよそ10倍以上、高分子によっては100倍〜1000倍の極めて多量の水を吸収する。この水を吸収する特性を活かして、水に香料や消臭剤等の機能性物質を混合したものを吸収させることで芳香剤や消臭剤として利用することができる。
本発明において、吸水性高分子層は、吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる。この粒状体は、前述の水、機能性物質に加え、界面活性剤、防臭剤、色素成分、紫外線吸収剤、pH調整剤等の、本発明の芳香消臭剤の用途に応じて各種成分を吸収させて用いられる。また、吸水性高分子は、自重よりはるかに多量の水を吸収する為、前述したような水、機能性物質、界面活性剤等の成分の混合液に接触させることで、粉状や、小粒径の粒状の吸水性高分子が膨張し、所定の大きさ(例えば、Φ1mm〜20mm程度)の粒状体となる。すなわち、この粒状体は、少なくとも吸水性高分子と機能性物質とを含有し、さらに、水や、その他、混合された各種成分を含むものである。この粒状体を容器の大きさに併せて複数個以上、配置することで吸水性高分子層が得られる。吸水性高分子層は、容器サイズと、そこに用いられる粒状体の量等からその厚み、密度等が変化する。なお、ここで粒状とは球状のみでなく、楕円状や、直方体状などの角があるような形状でもよい。
前記吸水性高分子層に用いられる吸水性高分子は水を高度に吸水して膨潤する樹脂である。より具体的には、架橋構造の親水性物質で、水と接触することで吸水し、吸水後は圧力をかけても離水しにくいものを指す。このような吸水性高分子を例示すると、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体や、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体やカルボキシメチルセルロースおよびその塩のようなセルロース系の重合体を含む吸水性高分子が好ましく、具体的には、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸エステル共重合体の部分中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物、部分中和ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体等が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なお、アクリル酸(塩)の記載は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
次に、この吸水性高分子層および後述する架橋ゼラチン層に用いられる機能性物質としては、香料、消臭剤、防虫剤および抗菌剤等があげられる。この機能性物質には、揮発性化合物を用いることができ、香料や防虫剤の多くや一部の消臭剤等は揮発性化合物である。また、機能性物質としては、吸着性を有する吸着剤を用いることができる。これらの例としては活性炭やタンニン等の主に臭いの基となる物質を吸着し消臭剤として機能するもの等が挙げられる。これらの機能性物質は1種単独で使用してもよく、適宜2種以上を混合して使用しても良い。さらに、各層には、色素や、防腐剤、安定剤等の添加物も用いることができる。
本発明の芳香消臭剤を構成する層の一つである架橋ゼラチン層は、吸水性高分子層の下部に設けられ、かつ、架橋ゼラチンと機能性物質とを含有するゲル状体からなる架橋ゼラチン層である。この架橋ゼラチン層が吸水性高分子層の下部に設けられ、粒状体の変形等に伴い漏出する液が架橋ゼラチン層に吸収される。
ここで架橋ゼラチンとは、ゼラチンを架橋させることで得られるものである。この架橋ゼラチンと水等の液とが分散することで、本発明の架橋ゼラチン層として用いられるゲル状体を形成する。ゼラチンを架橋させる方法としては、架橋前のゼラチンを熱架橋や、電子線架橋、化学架橋等によって架橋させるものが知られており、本発明においては、これらの架橋ゼラチンを用いることができる。また、架橋ゼラチンとしては、ゼラチンと、他の化合物とを混合し架橋させたものも用いることができる。
ゼラチンと他の化合物との混合による好適な架橋ゼラチンを例示すると、ゼラチンを、架橋剤であるエチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体により架橋したものが挙げられ、これは原料となるゼラチンの溶液と、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体の溶液とを、混合し、所定の条件で架橋反応させることにより得られる。
「ゼラチン」
本発明には、ゼラチンを架橋した架橋ゼラチンを用いる。一般的に、ゼラチンは、いわゆる動物性タンパク質であるコラーゲンを熱、酸、アルカリ、酵素等により変性した水溶性の蛋白であるが、本発明においては、このような一般的なゼラチンはもちろん、本発明の架橋剤によって架橋することでゲル化し、架橋ゼラチン層に使用できるコラーゲンも、ゼラチンとして使用することができる。本発明に用いることができるゼラチンの平均分子量を例示すると、低分子量である3,000以上10,000未満程度のものや、中分子量である10,000以上100,000未満のもの、高分子量である100,000以上500,000未満程度のものの、いずれも使用することができる。なお、ゼラチンの平均分子量はパギイ法第9版(2002)により得られる分子量分布から求めることができる。
前記コラーゲンとしては、骨や皮や腱等の動物組織を原料として得られる従来公知のあらゆるコラーゲン、例えば、酸不溶化コラーゲン、中性塩不溶化コラーゲンのような不溶化コラーゲン;酸可溶化コラーゲン、中性塩可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲンのような可溶化コラーゲン;これら不溶化もしくは可溶化コラーゲンを化学修飾(例えば、アセチル化、コハク化、マレイル化、フタル化、ベンゾイル化、エステル化、アミド化、グアニジノ化等)したコラーゲン;可溶化コラーゲンからコラーゲン繊維を再生させた再生コラーゲン等が挙げられる。前記コラーゲンの分子種は、特に制限されないが、具体的には、例えば、豚皮由来I型コラーゲン、豚腱由来I型コラーゲン、牛鼻軟骨由来II型コラーゲン、魚から抽出したI型コラーゲン等が好ましく挙げられる。
「エチレン性不飽和化合物―無水マレイン酸共重合体」
本発明の架橋ゼラチンゲルは、架橋剤として、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体を用いて架橋してなることを特徴とする。ここで、エチレン性不飽和化合物―無水マレイン酸共重合体には、その開環重合体またはその塩も含む。エチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブチレン等のオレフィン類、その他のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。その開環重合体とは、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体に加水して開環した重合体、その塩とは開環重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩等の塩である。塩は上記酸共重合体または開環重合体と水酸化アンモニウム、または水酸化ナトリウム塩等を反応させて形成することができる。また、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体の構造の一部を極性の高い基に置換したり、さらに他のモノマー単位を加えたりすることで得られる共重合体を用いることもできる。このような、エチレン性不飽和化合物―無水マレイン鎖共重合体を一部変性させたものとして、例えば、無水マレイン酸基を一部アンモニア変性させ、開環させたマレイミド単位とした構造を有する、共重合体等があげられる。
エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体はこれらのエチレン性不飽和化合物と無水マレイン酸との共重合体であり、エチレン性不飽和化合物と無水マレイン酸とのモル比は10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5、平均分子量は、通常2,000〜5,000,000であり、好ましくは3,000〜3,000,000である。このようなエチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体としては市販品が用いられる。または、その開環重合体をモノマー単位とする場合、アンモニウム塩、ナトリウム塩等の塩における開環または塩に変換する割合は任意であるが、無水環の一部または全部を変換することができる。
この架橋ゼラチン層は、未架橋のゲル化していない状態で芳香消臭剤として用いる容器に充填し容器内で架橋させることでゲル状体化させることで架橋ゼラチンとしてもよいし、一旦ゲル状体化させた後に容器に併せて切断するなどして形状を調製し充填させることで芳香消臭剤として用いる容器における架橋ゼラチン層としても良い。
また、架橋ゼラチン層は、層全体が均質な一体の層として形成してもよいし、吸水性高分子層のように粒状体による層としてもよい。また、この架橋ゼラチン層は、前述の吸水性高分子層同様に、各種機能性物質や、その他の添加物も用いることができる。
少なくとも吸水性高分子層と架橋ゼラチン層との2層以上の多層構造を有する芳香消臭剤である。この層の数は適宜2層以上に増やすことができ、異なる機能の吸水性高分子層を複数設けて、最下層に架橋ゼラチン層を設けたり、架橋ゼラチン層を複数設けたり、他の物質による層を設けても良い。
本発明は、容器内に、機能性物質とゼラチンと架橋剤との含有液を充填する充填工程と、前記充填工程後、ゼラチンと架橋剤とを架橋させることでゲル状化させた架橋ゼラチン層を成形させる架橋工程と、前記架橋工程により成型された架橋ゼラチンの上部に吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層を載置する積層工程とを有することを特徴とする多層構造を有する芳香消臭剤の製造方法とすることができる。この製造方法は、架橋ゼラチン層と、吸水性高分子層とを設計の自由度を高く設けることができ、また、この方法は簡易な作業で行うことができる。
この充填工程は、容器内に、機能性物質とゼラチンと架橋剤との含有液を充填する充填工程である。架橋ゼラチン層に用いられる架橋ゼラチンは、架橋前は流動性の高いゼラチン等の含有液である溶液のため、その溶液の状態のまま容器に所望量を充填することができる。なお、この溶液は、ゼラチン、架橋剤、溶媒(主として水)、機能性物質および適宜その他の添加物を混合させたものであり、架橋ゼラチン層の機能を変更したい場合、適宜、機能性物質を変更したり、また、その意匠性を変更するために色素を追加・変更したり、各成分濃度を変更して弾力性や質感を変更させることができる。また、この設計の変更は非常に自由度が高く、製造者や需要者が任意の仕様に容易に設計変更できる点で優れている。
次に、この架橋工程は、前記充填工程後、ゼラチンと架橋剤とを架橋させることでゲル状化させた架橋ゼラチン層を成形させる架橋工程である。すなわちこの架橋工程にて、前述の充填工程で充填された機能性物質とゼラチンと架橋剤との含有液は、その容器内で架橋され、ゲル状化し固定される。これにより、容器の形状に合わせた自由な成形ができる。
次に、この積層工程は、前記架橋工程により成型された架橋ゼラチンの上部に吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層を載置する積層工程である。この積層工程により、吸水性高分子層を設け、本発明の芳香消臭剤は得られる。なお、この積層工程に用いる吸水性高分子層を形成する粒状体は、架橋ゼラチン層とは別の容器にて作成されたものを用いるのが一般的である。
図1に、本発明による芳香消臭剤の一例を示す。この図1に示すように、本発明は、架橋ゼラチン層の上部に吸水性高分子層を設けた構成とすることができる。図1においては、吸水性高分子層側に開口部は設けられ、上蓋に開口部を設けた構成を示す。この構成により、開口部に近い吸水性高分子層の揮発性物質による機能が先に発揮され、その後、段階的に機能が切り替わり、後期から終期にかけては下段の架橋ゼラチン層の機能性成分による機能が発揮される。
この段階的な変化を示すために、図2に、本発明による芳香消臭剤の実施態様の概念図を示す。
図2に示すように、上段に設けられた吸水性高分子層から、揮発性成分が揮発しまずはその機能が発揮される。この吸水性高分子層の粒状体は揮発性成分や、吸水性高分子が吸収している水の蒸発に伴い収縮していくが、粒状体が縮小しその形状変化に伴い生じる隙間を埋めるように減少していき、図2の(b)に示すように、層全体として下段の架橋ゼラチン層の表面を覆ったままその層の厚みが減少していく。また、この粒状体の収縮等に伴い、この吸水性高分子層は、その内部の水やその他の液体が徐々に漏出していくが、この漏出液は下段に設けられた架橋ゼラチン層に吸収拡散されるため、この芳香消臭剤の容器が転倒しても液漏れが生じることはなく、また美感を損ねることもない。この吸水性高分子層の吸水性高分子は、多量の水等を吸収しており、それらが経時変化にともない拡散、揮発することで吸水性高分子層は層が薄くなり(図2(c)、(d))、徐々に下段の架橋ゼラチン層が露出し始めていくことで架橋ゼラチン層の揮発性成分による機能が発揮され始める。これは、例えば、両層に異なる香料を使っている場合、まず上層の香料が継続して香りつづけ、吸水性高分子層が小さくなったとき、下層との混合した香りに切り替わり、吸水性高分子層の機能性成分が消費され、かつ極めて小さいサイズになった後は、下層のみの香りがするという、段階的な変化を楽しむことができるものである。
一方、互いに異なる機能性物質を含有する吸水性高分子層を2層設ける構成とした場合、使用経過に併せて、香りの変化のような機能の変化を発揮するものとすることができるが、使用に伴い漏出液が容器内に溜まり、美感の悪化と液漏れの恐れがあるものとなった。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
工程(a).吸水性高分子層用の粒状体の作製
水97.6gと、ベルガモットの香料0.4gと、ノニオン系界面活性剤2.0gを混合し、ベルガモット香料液を作製した。次に、粒径約1.5mmの吸水性高分子“Water bead / Super absobert polymer/ Crystal soil”(Shenzhen Greenbar Sci-Tech Co.Ltd社製)2.5gの入った容器に前述のベルガモット香料液100gを投入し、8時間香料液を浸漬担持させた。その後、香料液を浸漬担持し膨張した粒径約8mmの吸水性高分子の粒状体を取り出した。
工程(b).架橋ゼラチン層の作製
水にニッピ社製ゼラチン“AP50”を溶解させた後、オレンジの香料2.0gと、ノニオン系界面活性剤5.0gを溶解させ、ゼラチン2重量%溶液を調整した。一方、水に架橋剤(エチレン性不飽和化合物―無水マレイン酸共重合体である、クラレ社製“イソバン−110”(アンモニア変性イソブチレン―無水マレイン酸共重合体))を溶解させ、架橋剤4重量%溶液を調整した。次に、前記ゼラチン2重量%溶液50.0gと前記架橋剤4重量%溶液50.0gとを混合し、芳香消臭剤を作成する容器内に充填し、室温下にて24時間静置することでさらに架橋反応を進行させ、容器内に架橋ゼラチンゲル層を得た。
工程(c).吸水性高分子層の積層
前述の工程(b)により得られた架橋ゼラチンゲル層の上に、前述の工程(a)により得られた粒状体を流し込み、架橋ゼラチンゲル層の上部に吸水性高分子層を設けた。その後、この容器に開口部を有する蓋をした。これにより、ベルガモット香料を含む吸水性高分子層と、その層の下部にオレンジ香料を含む架橋ゼラチン層との多層構造を有する芳香剤を得た。この芳香剤を、実施例1の芳香剤と呼ぶ。
この実施例1の芳香剤を、静置して芳香剤として使用した。その結果、使用開始時は、ベルガモットの香りが強い芳香剤として機能した。一定期間経過後、下段の架橋ゼラチンゲル層のオレンジの香りとの混合された芳香がしはじめ、徐々にオレンジの香りの方が強いものとなった。さらに、吸水性高分子層が収縮し、架橋ゼラチン層が顕かに露出するようになってから、オレンジの香りが強い芳香剤として機能した。なお、使用期間中、吸水性高分子層由来の液の漏出による美感の劣化はなかった。また、使用期間中、傾けたり移動させても液漏れは生じなかった。
[比較例1]
前述の工程(a)により得られた吸水性高分子の粒状体のみを、容器に移し、ベルガモット香料を含有する粒状体による吸水性高分子層のみを有する芳香剤を作成した。この芳香剤は、使用期間中、ベルガモットの香りのみがし、また、経時変化に伴い液体が漏出し、容器の下部に溜り美感が劣化した。また、これを傾けると、液が漏れる危険があるものだった。
本発明の芳香消臭剤は、複数の機能を段階的に切り替えるという従来の芳香消臭剤と異なる機能を有することができ、吸水性高分子を用いた芳香消臭剤の欠点であった漏出液による美感の低下や液漏れといった問題を解消する優れた芳香消臭剤を提供するものである。

Claims (4)

  1. 水性高分子層と架橋ゼラチン層との2層以上の多層構造を有する芳香消臭剤であって、
    吸水性高分子層が、吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層であり、
    架橋ゼラチン層が、架橋ゼラチンと機能性物質とを含有するゲル状体からなる架橋ゼラチン層であり、
    1層あるいは複数層の前記架橋ゼラチン層の上に、1層あるいは複数層の前記吸水性高分子層が積層された多層構造を有することを特徴とする芳香消臭剤。
  2. 前記機能性物質が、香料、消臭剤、防虫剤および抗菌剤から選択される少なくとも1以上の物質である請求項1記載の芳香消臭剤。
  3. 前記架橋ゼラチンが、ゼラチンと架橋剤とを架橋せしめることで得られてなる架橋ゼラチンである請求項1または2記載の芳香消臭剤。
  4. 容器内に、機能性物質とゼラチンと架橋剤との含有液を充填する充填工程と、
    前記充填工程後、ゼラチンと架橋剤とを架橋させることでゲル状化させた架橋ゼラチン層を成形させる架橋工程と、
    前記架橋工程により成型された架橋ゼラチンの上部に吸水性高分子と機能性物質とを含有する粒状体からなる吸水性高分子層を設ける積層工程とを有することを特徴とする
    多層構造を有する芳香消臭剤の製造方法。
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