JP5793174B2 - リアクトル - Google Patents

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本発明は、電力変換装置に用いられるリアクトルの構造に関する。
コンバータの部品の一つとして用いられるリアクトルは、平角線をらせん状に巻回したコイルと、磁性材料を圧粉成形したコアとを主要部品としている。代表的なコアとして、コイルの内周に複数個の分割片から構成されるコアを嵌め込み、各分割片をギャップ板を介して接合した環状のコアが知られている。
従来のリアクトルにおいては、組み立て時、コイルとコアとの間に、コアに対するコイルの位置決めを行う樹脂製の筒状ボビンが介在されていた。また、コイルの両端部には、樹脂製の枠状ボビンが配置され、コイルの隣り合うターン同士が接触する圧縮状態となるように、コイルの両端を押え込んでいた。
従来のリアクトルの部品点数を削減し、組み立て作業性を向上させた先行例として、特許文献1では、コイルをその自由長よりも圧縮した状態に保持する樹脂モールド部を備えたコイル成形体が提示されている。この例では、樹脂モールド部でコイルを圧縮状態に保持することにより、筒状ボビンが不要となり、コイル成形体の中空孔にコアを嵌め込むことで容易にリアクトルを組み立てることができる。
特開2012−134562号公報
一方、らせん状に巻回されたコイルは、その巻き取り時に外周側と内周側の曲げ部において、平角線の板厚に差が生じる。すなわち、コイル内周側の曲げ部は圧縮されて板厚が厚肉になり、コイル外周側の曲げ部は引っ張られて板厚が薄肉になる。この板厚のばらつきは、コイル成形時に均一化することは難しく、コントロールし難いものである。
このため、上記特許文献1のように、コイルを、隣り合うターン間の隙間を詰めた圧縮状態で樹脂モールド部(あるいは枠状ボビン)に組み付けた場合、コイルの全長にばらつきが生じていた。その結果、組み立て精度が低くなり、コイルと他の機器との接続位置が安定せず、製品としての性能にばらつきが生じるという問題があった。また、コイルと他の機器との接続が困難となる場合もあった。
また、従来のリアクトルは、複数個のコアの分割片の間に非磁性体からなるギャップ板を接着する工程等があり、組み立て工程が複雑で作業性が悪かった。このため、組み立てに時間を要し、製造コストの低減が困難であった。
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、リアクトルの組み立て精度を向上させ、製品の性能のばらつきを抑えると共に、製造コストの低減を図ることを目的とする。
本発明に係るリアクトルは、巻線をらせん状に巻回したコイルと、コイルを両側から挟み込み保持する絶縁性樹脂からなる一対のボビンと、コイルの内周に配置される内部コアとボビンおよびコイルの外周を囲むように配置される外部コアとを有する磁性材料からなるコアと、コイル、ボビン、およびコアの組立体を収納する筐体と、筐体の内部に充填され組立体を封止する封止材を備え、コイルは、その両端の巻線のらせん状の部分をボビンに設けられた爪部に引っ掛けることにより固定され、コイルの自由長よりも伸ばされた状態でボビンに保持されるものである。
本発明に係るリアクトルによれば、コイルが自由長よりも伸ばされた状態でボビンに保持されるようにしたので、コイルの全長が製造ロット毎にばらついていても、常に一定の長さでボビンに固定することができる。これにより、組み立て精度が向上し、製品の性能のばらつきを抑制することが可能である。また、成形後のコイルの長さに関して管理値を厳しく設定する必要がなくなるため、寸法外れによる不良品が低減し、製造コストの低減が図られる。
本発明の実施の形態1に係るリアクトルを示す分解斜視図である。 本発明の実施の形態1に係るリアクトルを示す斜視図および断面図である。 本発明の実施の形態2に係るリアクトルの組立体を示す斜視図および断面図である。 本発明の実施の形態3に係るリアクトルの組立体を示す斜視図および断面図である。 本発明の実施の形態4に係るリアクトルを示す斜視図および断面図である。 本発明の実施の形態5に係るリアクトルを示す斜視図および断面図である。 本発明の実施の形態6に係るリアクトルの組立体と筐体を示す斜視図である。
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係るリアクトルについて、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係るリアクトルの構成要素を示す分解斜視図である。また、図2(a)は、本実施の形態1に係るリアクトルを示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すリアクトルを水平方向に切断した断面図である。なお、図中、同一または相当部分には、同一符号を付している。
コイル1は、巻線である平角線をらせん状に巻回して構成される。平角線は、銅または銅合金等の導電性に優れた金属材料からなる導体と、導体の周囲を覆う絶縁被覆とからなる。コイル1の断面は、円形、楕円形、四角形、多角形等に形成される。図2(a)に示すコイル1の先端部11は、他の機器と接続される。
絶縁性樹脂からなる一対のボビン2は、コイル1を両側から挟み込み、コイル1を絶縁すると共に保持する。コイル1は、図2(b)に示すように、その両端の巻線をボビン2に設けられた爪部21によって掴まれ、固定される。この時、コイル1は、その自由長よりも伸ばされた状態でボビン2に保持される。なお、コイルの自由長とは、コイルの無荷重時の長さである。
磁性材料からなるコア3は、ボビン2およびコイル1の外周を囲むように配置される外部コア3aと、コイル1の内周に配置される内部コア3bを有している。ボビン2は、図2(b)に示すように、外部コア3aに設けられた凹部である溝部31に嵌合する細長い凸部22を有し、この凸部22を溝部31に嵌め込むことにより外部コア3aに固定される。
ボビン2を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等が用いられる。これらの樹脂は、リアクトルとして使用した際のコイル1およびコア3の最高到達温度に対して軟化しない耐熱性を有する。また、コア3を構成する磁性材料としては、軟磁性粉末の圧粉成形体や電磁鋼板の積層体等が用いられる。
上記のコイル1、ボビン2、およびコア3の組立体は、筐体4に収納される。筐体4は、前後左右の各側面および底面を有し、上部が開口しているものが一般的である。筐体4は、組立体を収納し機械的に保護すると共に、組立体からの熱を放熱する。
組立体を収納した筐体4の内部には、組立体を封止する封止材5が充填される。封止材5は、コイル1、ボビン2、およびコア3の周囲を覆い、組立体を機械的に保護する機能と共に、リアクトルを励磁した際に生じる振動を吸収する機能や、コイル1の露出部分を覆って機械的、電気的に保護する機能、さらに、組立体からの熱を筐体4に伝導させる機能を有する。
封止材5を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、リアクトルとして使用した際のコイル1およびコア3の最高到達温度に対して軟化しない耐熱性を有する。あるいは、封止材5として、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡シリコンゴム等の多孔質材料を用いることもできる。
なお、本実施の形態1に係るリアクトルは、コイル1がその自由長よりも伸ばされた状態でボビン2に保持されることを特徴としており、その他の構成については特に限定されるものではない。例えば、図1では、コア3は対になっているが、対でなくてもよい。また、ボビン2をコア3に固定する手段は、細長い凸部22と溝部31に限らず、突起状の凸部と穴等、別の手段であってもよい。
以上のように、本実施の形態1に係るリアクトルによれば、コイル1の両端の巻線をボビン2に設けられた爪部21によって固定し、コイル1の自由長よりも伸ばした状態でボビン2に保持するようにしたので、コイル1の全長が製造ロット毎にばらついていても、常に一定の長さでボビン2に固定することができる。これにより、組み立て精度が向上し、製品の性能のばらつきを抑えることが可能である。
また、コイル1には収縮方向に力が働くが、ボビン2の凸部22を外部コア3aの溝部31に嵌め込み固定しているので、ガタが発生せず安定して組み立てることができ、作業性が向上する。また、組み立て精度が向上し、コイル1の先端部11の位置が安定するため、コイル1と他の機器を安定して接続することができる。さらに、成形後のコイル1の長さに関して管理値を厳しく設定する必要がなくなるため、寸法外れによる不良品が低減し、歩留りが向上すると共に製造コストの低減を図ることができる。
実施の形態2.
図3(a)は、本発明の実施の形態2に係るリアクトルの組立体を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す組立体を水平方向に切断した断面図である。図3中、図2と同一または相当部分には、同一符号を付し説明を省略する。なお、図3に示す組立体は、上記実施の形態1と同様に筐体4(図2参照)に収納される。
本実施の形態2に係るリアクトルにおいても、上記実施の形態1と同様に、コイル1の両端の巻線をボビン2に設けられた爪部21によって固定し、コイル1の自由長よりも伸ばした状態でボビン2に保持している。
さらに、図3(b)に示すように、ボビン2aは、コイル1の外周側においてコイル1の軸方向と平行に伸びる棒状部材23を有している。一対のボビン2aは、それぞれに棒状部材23を有しており、それらの先端を突き合わせることによりボビン2aの位置決めがなされる。突き合わせ部23aで突き合せた時の棒状部材23の全長は、コイル1の自由長よりも長く設定されている。
本実施の形態2によれば、ボビン2aに設けられた棒状部材23により、コイル1の収縮方向に働く力を抑制することができるため、コイル1をその自由長よりも伸ばした状態で安定して組み立てることができ、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態3.
図4(a)は、本発明の実施の形態3に係るリアクトルの組立体を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す組立体を水平方向に切断した断面図である。図4中、図2と同一または相当部分には、同一符号を付し説明を省略する。なお、図4に示す組立体は、上記実施の形態1と同様に筐体4(図2参照)に収納される。
本実施の形態3に係るリアクトルにおいても、上記実施の形態1と同様に、コイル1の両端の巻線をボビン2bに設けられた爪部21によって固定し、コイル1の自由長よりも伸ばした状態でボビン2bに保持している。
また、本実施の形態3に係るリアクトルのコアは、外部コア3cと内部コア3dから構成される。図4(b)に示すように、内部コア3dは、コイル1の内周を貫通し、外部コア3cおよびボビン2bに設けられた貫通孔に隙間なく嵌め込まれることにより、外部コア3c、ボビン2b、およびコイル1を固定している。
本実施の形態3に係るリアクトルの組み立て工程について簡単に説明する。まず、ボビン2bの爪部21にコイル1の両端を固定した後、ボビン2bを外部コア3cに組み付ける。続いて、内部コア3dを、外部コア3cおよびボビン2bに設けられた貫通孔と、コイル1の内周に貫通させることにより、コイル1、ボビン2bおよび外部コア3cを固定する。すなわち、内部コア3dは、かんぬきの役割をしている。
本実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、内部コア3dにより外部コア3cおよびボビン2bを固定しているので、他の固定部材を使用する必要がなく、さらに組み立てが容易となり製造コストの低減が図られる。
実施の形態4.
図5(a)は、本発明の実施の形態4に係るリアクトルを示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示すリアクトルを垂直方向に切断した断面図である。なお、図5中、図4と同一または相当部分には、同一符号を付し説明を省略する。
本実施の形態4に係るリアクトルにおいても、上記実施の形態1と同様に、コイル1の両端の巻線をボビン2cに設けられた爪部によって固定し、コイル1の自由長よりも伸ばした状態でボビン2cに保持している。また、上記実施の形態3と同様に、外部コア3cと内部コア3dから構成されるコアを備えている。
さらに、本実施の形態4に係るリアクトルのボビン2cは、筐体4の開口部から露出し封止材により覆われていない部分に、バスバー6の固定部材であるナット7およびボルト8を保持する受け部24を有し、この受け部24において固定されたバスバー6とコイル1の先端部12が接続される。
具体的には、受け部24にナット7を嵌め込み、その上にバスバー6を搭載してボルト8で固定し、バスバー6をコイル1の先端部12と溶接する。なお、ナット7は、受け部24に予めインサート成形されていても良い。また、バスバー6とコイル1は、溶接以外の接合法により接合しても良い。
なお、本実施の形態4では、上記実施の形態3と同様の外部コア3cと内部コア3dを有するリアクトルのボビン2cに受け部24を設けたが、上記実施の形態1または実施の形態2に係るリアクトルのボビン2(または2a)に受け部を設けても良い。
本実施の形態4によれば、上記実施の形態3と同様の効果が得られ、さらに、ボビン2cにナット7、ボルト8等の固定部材を保持する受け部24を設け、他の機器との電気的な接続に必要な端子台の機能を有するようにしたので、端子台を別部品で用意する必要がなくなり、部品点数が削減し、コスト低減が図られる。
実施の形態5.
図6(a)は、本発明の実施の形態5に係るリアクトルを示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示すリアクトルの組立体を水平方向に切断した断面図である。なお、図6中、図4と同一または相当部分には、同一符号を付し説明を省略する。
本実施の形態5に係るリアクトルにおいても、上記実施の形態1と同様に、コイル1の両端の巻線をボビン2cに設けられた爪部21によって固定し、コイル1の自由長よりも伸ばした状態でボビン2cに保持している。また、上記実施の形態4と同様に、外部コア3cと内部コア3dから構成されるコアを備えている。
さらに、本実施の形態5に係るリアクトルの内部コア3dは、その両端部を絶縁性樹脂からなる蓋部材9a、9bで覆われている。内部コア3dの一方の端部の蓋部材9aは、例えばインサート成形により内部コア3dと一体に成形される。この内部コア3dを、外部コア3cおよびボビン2cの貫通孔とコイル1の内周に貫通させた後、内部コア3dの他方の端部に蓋部材9bを取り付ける。
本実施の形態5によれば、上記実施の形態3と同様の効果が得られると共に、内部コア3dと外部コア3cの隙間を蓋部材9aにより埋めることができ、内部コア3dの組み付け位置を安定させることができる。これにより、外部コア3cと内部コア3dの隙間からの漏れ磁束が安定し、製品毎のコイル1の発熱のばらつきが抑制され、製品の性能のばらつきが抑制される。
実施の形態6.
図7(a)は、本発明の実施の形態6に係るリアクトルの組立体を示す斜視図であり、図7(b)は、本実施の形態6に係るリアクトルの筐体を示す斜視図である。図7中、図6と同一または相当部分には、同一符号を付し説明を省略する。
本実施の形態6に係るリアクトルは、上記実施の形態5と同様に、内部コア3dの両端部に絶縁性樹脂からなる蓋部材9a、9bを有する組立体を備え、さらに、これらの蓋部材9a、9bに細長い突起状のリブ91を設け、筐体4の内壁に設けられた溝部41に嵌合させるようにしたものである。
本実施の形態6によれば、上記実施の形態5と同様の効果が得られると共に、内部コア3dの両端部の蓋部材9a、9bにリブ91を設け、筐体4の溝部41に嵌め込んで固定するようにしたので、組立体と筐体4の組み立て精度を容易に向上させることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
本発明は、コンバータの部品であるリアクトルとして利用することができる。
1 コイル、2、2a、2b、2c ボビン、3 コア、3a、3c 外部コア、
3b、3d 内部コア、4 筐体、5 封止材、6 バスバー、7 ナット、
8 ボルト、9a、9b 蓋部材、11、12 先端部、21 爪部、22 凸部、
23 棒状部材、23a 突き合わせ部、24 受け部、31、41 溝部、
91 リブ。

Claims (7)

  1. 巻線をらせん状に巻回したコイル、
    前記コイルを両側から挟み込み保持する絶縁性樹脂からなる一対のボビン、
    前記コイルの内周に配置される内部コアと、前記ボビンおよび前記コイルの外周を囲むように配置される外部コアとを有する磁性材料からなるコア、
    前記コイル、前記ボビン、および前記コアの組立体を収納する筐体、
    前記筐体の内部に充填され前記組立体を封止する封止材を備え、
    前記コイルは、その両端の前記巻線のらせん状の部分を前記ボビンに設けられた爪部に引っ掛けることにより固定され、前記コイルの自由長よりも伸ばされた状態で前記ボビンに保持されることを特徴とするリアクトル。
  2. 前記ボビンは、前記外部コアに設けられた凹部に嵌合する凸部を有し、前記凸部を前記凹部に嵌め込むことにより前記外部コアに固定されることを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
  3. 前記ボビンは、前記コイルの外周側において前記コイルの軸方向と平行に伸びる棒状部材を有し、前記一対のボビンそれぞれの前記棒状部材の先端を突き合わせることにより前記一対のボビンの位置決めがなされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記内部コアは、前記コイルの内周を貫通し、前記外部コアおよび前記ボビンに設けられた貫通孔に嵌め込まれることにより、前記外部コア、前記ボビン、および前記コイルを固定することを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
  5. 前記内部コアは、その両端部を絶縁性樹脂からなる蓋部材で覆われていることを特徴とする請求項4記載のリアクトル。
  6. 前記蓋部材は、前記筐体の内壁に設けられた溝部に嵌合するリブを有し、前記リブを前記溝部に嵌め込むことにより、前記組立体が前記筐体に固定されることを特徴とする請求項5記載のリアクトル。
  7. 前記ボビンは、前記筐体の開口部から露出し前記封止材により覆われていない部分に、バスバーの固定部材を保持する受け部を有し、前記受け部において固定された前記バスバーと前記コイルの先端部が接続されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のリアクトル。
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