JP5793015B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents
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樹脂の射出成形中に金型内にガス体を注入し、樹脂を射出成形するガスアシスト射出成形方法においても、ガス体を樹脂に作用させることで樹脂の粘度を低下させたり、樹脂を発泡させ、あるいは着色、改質させたりする種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、金型表面状態を高度に成形品に転写することができるようにした、つぎのようなガスアシスト射出成形方法が提案されている。
この方法では、まず、金型のキャビティを二酸化炭素などの特定のガス体を適度な圧力で満たしてから樹脂が充填される。
これにより、ガス体は流動樹脂のフローフロントで吸収され、あるいは金型と樹脂の界面に入り込み、樹脂表面層に溶解する。樹脂に溶解したガス体は可塑剤として作用し、樹脂の溶融粘度を下げ、特に樹脂表面の固化温度を選択的に低下させる。
これらにより、薄い樹脂表面層だけ固化温度が下がり、固化温度が金型表面温度以下となれば、樹脂充填工程中の固化が起きない。このような手法により、成形品の金型表面転写性の向上が図られている。
しかし、シャットオフノズルはノズル先端に樹脂経路を機械的開閉するニードル弁を具備するため、溶融樹脂がニードル弁近傍で滞留し、熱履歴増加による炭化が発生する。
この炭化した樹脂は、溶融樹脂によって金型内に運ばれると、特に透明材料を使う光学素子において樹脂ゴミとなるという問題が生じる。
この方法によれば、ノズル先端に樹脂経路を解放したオープンノズルを用いたとしても、金型に注入されたガス体が金型内に注入された時点でスプルーは樹脂で満たされており、ガス体がノズル内部へ逆流することがなくなる。
これによりガス体が溶解することによって、樹脂は粘度が低下して流れ易くなる。一方、ガス体の温度は射出進行中の樹脂に対して100℃以上低温であるため、樹脂の流れに対して吹き付けるガス体の勢いが強いとフローフロントで樹脂の熱が奪われてスキン層が増大し固化し易くなる。
前者に対して後者の影響が強いと、時としてフローフロントで発生したスキン層が完全に充填を阻害してショートショットとなったり、あるいはスキン層の痕が成形品に残ったりして外観不良となる。
一般的にゲートが絞られている場合には、ゲート通過直後でジェッティングやフローマークを回避するために、ゲート通過区間は低射速で成形することが行われる。
図3に示される1はランナーであり、2はゲートである。ゲート2通過直後、すなわちキャビティ5に少しだけ入った箇所で射速が落ちてゆっくりと流れている樹脂のフローフロントに、ガス体の流れ4が作用するとガス体の溶融による可塑化作用よりも冷却による固化作用が優ってスキン層6が成長する。
この時点で射速を高速に切り替えると、スキン層6を破って樹脂の充填が進行し成形品3の外形形状を形作ることはできるが、図4に示すように、内部にスキン層6を破った痕7が残る。
透明材料の光学素子においては、少しでもこの痕が残ることは許されないため、このような条件では良品は得られない。
本実施形態の金型のキャビティ内にガス体の注入を伴うガスアシストにより樹脂の射出成形を行うガスアシスト射出成形方法では、ノズル先端の樹脂経路が解放されたオープンノズルが用いられる。また、金型に注入するガス体として、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパンのうち、いずれか一つの種類のものが用いられる。
金型のキャビティ内に射出する樹脂は、透明な熱可塑性樹脂が好ましい。その具体例としては、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など、可視光から赤外光までの広い波長域に対して高い透過率を有する樹脂が挙げられる。
そして、第一の工程において、オープンノズルを用いて溶融した熱可塑性樹脂を前記金型に充填する間に前記ガス体の該金型への注入が開始される。
次に、第二の工程において、樹脂が前記金型のゲートを通過する前に、ガス体の昇圧を完了させる。こうすることにより、キャビティにおいて樹脂のフローフロントにガス体の流れを作用させないようにすることができる。
このようなガスアシスト射出成形方法によれば、ガス体を樹脂に溶融させることによりキャビティ内でスキン層を発生させることなく樹脂の充填を完了させることができ、外観不良のない良品を得ることが可能となる。
また、金型に射出された樹脂がゲート手前の位置において、前記フローフロントにガス体の流れが作用して薄いスキン層が発生したとしても、スキン層の痕をキャビティ外のランナーに残すことで、外観不良のない良品を得ることが可能となる。
その際に、意図的に計量を少なくしてショートショット品を取得し、シリンダ内のスクリュを何ミリ分前進させて樹脂を射出すると樹脂がノズルからゲートまで至るかを把握しておく。
適当な射速の設定でテスト成形を行い、ガス圧と可塑化装置のスクリュ位置の関係を確認する。
このとき得られた波形データを図1に示す。
ゲートを通過するスクリュ位置はXmm、ガス昇圧完了後の圧力はYMPaである。
射出開始時間を基準として、計量完了位置すなわち射出開始位置からスクリュがXmmまで移動するまでにかかった時間はTX秒、ガスが昇圧完了するまでかかった時間をTY秒である。
図1においてはTX<TYであり、これはすなわちゲート2を通過する際にガスの昇圧が完了しておらず、ゲート2の出口、すなわちキャビティ5に少しだけ入った位置で樹脂のフローフロントに流れのあるガス体が作用したことを示す。
このため、フローフロントでスキン層6が形成され、成形品は充填が阻害されてショートショットとなった(図3)。
射速を遅くしてTXを大きくするか、ガス圧の昇圧を早くしてTYを小さくする2通りの手法が存在する。
前者に関しては射速を低速にすることで対応することができる。後者に関してガス圧の昇圧レートを高める対応が考えられるが、昇圧レートはガス供給装置のポンプ能力と、成形機とガス供給装置をつなぐ配管長さに依存するため容易に調整できない。
ガス注入のタイミングを早めることでも対応が可能であるが、タイミングを早くし過ぎると、スプルーが樹脂で満たされる前に、ガス体が金型キャビティ内に充満する。そのため、ガス体がシリンダ内を逆流する虞があることから、短縮できる時間は短い。
射速を低速化して再度成形し、得られた波形データを図2に示す。
射速低速化に伴い、スクリュ位置のグラフの勾配が減少し、計量完了位置すなわち射出開始位置からスクリュがXmmまで移動する時間TXが遅延された。
その結果TX>TYとなり、樹脂がゲートを通過する前にガス圧の昇圧が完了した。
射速が低速化したためスキン層が発生し易くなったが、もしスキン層が発生したとしてもスキン層の痕は成形品と関係のないランナー部に残るため良品が得られる。
なお、良品が得られるためには、昇圧を完了させた後のガス体は、該ガス体の圧力を5〜9MPaとすることが望ましい。
以上のように、成形中の波形データを参照することにより、TX>TYとなるように適宜成形条件を調整することが、良品を得るための重要指針となる。
[実施例1]
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。
実施例に示すガスアシスト射出成形で使用した樹脂材料はアクリル樹脂、ガス体は二酸化炭素である。
ガス供給装置によって液化二酸化炭素のボンベから取り込んだ二酸化炭素を50℃、8MPaに加温、加圧し、可塑化装置のスクリュ位置の信号をトリガーとして成形機と連動して金型へガスの注入を行う。成形機とガス供給装置は内径1.6mm、長さ3mのSUS配管で接続した。
金型は厚み1.3mm、幅26mm、長さ17mmのキャビティを4つ有し、ゲートは厚さ1mmのファンゲートとした。
ガス供給装置から注入されたガス体を保持できるように、キャビティの外周をはじめとして、エジェクタピンやスプールブシュなどの金型分割部品にシール材を配置した(図示なし)。
意図的に計量を少なくしてショートショット品を取得した結果、スクリュ径は25mmの可塑化装置で18.44mm分射出すると樹脂がノズルからゲートまで至ることを確認した。該キャビティを満たすのに必要な計量は27.44mmであるため、成形中にこの位置から8.5mmまでスクリュが前進したとき、樹脂がゲートを通過する。
射速はスクリュ位置によって多段制御し、スクリュ位置が27.44mmから20mmまでは12mm/s、12mmから8mmまでは3mm/s、8mm以下は7mm/sとした(図示なし)。
上記の装置構成にて、ガス体の注入開始のタイミングを変更してガスアシスト射出成形を行い比較例1のものと比較検討した。
本実施例で得られた波形データを図5に示す。
比較例1ではスクリュが計量位置27.44mmから19.5mmまで前進させて、キャビティに樹脂を射出したタイミングでガス注入を開始した。比較例1で得られた波形データを図6に示す。
樹脂がゲートに達するまでの時間(TX)はスクリュが計量位置27.44mmから8.5mmまで移動するまでの時間である。
ガス圧の昇圧完了時間はガス圧が7.5MPaに達するまでの時間(TY)とした。
本実施例ではTX=1.85秒、TY=1.8秒、比較例1ではTX=1.85秒、TY=2.25秒となった。
本実施例は良品条件(TX>TY)を満たすのに対して、比較例1は前記条件を満たさない。
この結果、本実施例では外観良品が得られたのに対して、比較例1では外観不良が発生した。
本実施例と実施例1との相違は射速が変更されているだけで、用いられる装置、金型等の構成は、基本的に実施例1と同様である。
本実施例では、つぎのように射速を変更して比較例2のものと比較検討した。
本実施例ではスクリュ位置が27.44mmから12mmまでは7mm/s、12mmから8mmまでは3mm/s、8mm以下は7mm/sとした。
本実施例で得られた波形データを図7に示す。
比較例2ではスクリュ位置が27.44mmから12mmまでは17.5mm/s、12mmから8mmまでは3mm/s、8mm以下は7mm/sとした。
比較例2で得られた波形データを図8に示す。
ガス圧の昇圧完了時間はガス圧が7.5MPaに達するまでの時間(TY)とした。
本実施例ではTX=3.3秒、TY=2.75秒、比較例2ではTX=1.95秒、TY=2.1秒となった。
本実施例は良品条件(TX>TY)を満たすのに対して、比較例2は前記条件を満たさない。
この結果、本実施例では外観良品が得られたのに対して、比較例2では外観不良が発生した。
以下にカメラの光学部品であるフォーカシングスクリーンをガスアシスト射出成形で成形した実施例を示す。
使用する樹脂材料はアクリル樹脂、ガス体は二酸化炭素とした。
ガス供給装置によって液化二酸化炭素のボンベから取り込んだ二酸化炭素を50℃、7.8MPaに加温、加圧し、可塑化装置のスクリュ位置の信号をトリガーとして成形機と連動して金型へガスの注入を行なった。成形機とガス供給装置は内径1.6mm、長さ3mのSUS配管で接続した。
図9に示すようなフォーカシングスクリーンを成形した。フォーカシングスクリーンの外形は略長方形形状であり、各寸長手方向29.2mm、短手方向18.5mm、厚み1.3mmであった。
このようなフォーカシングスクリーンを、8個取りの金型で成形した。
フォーカシングスクリーンを成形するために必要な樹脂計量はスクリュ径25mmの可塑化装置で50mmであった。意図的にショートショット品を取得した結果、シリンダが50mmから15mmまで射出すると、キャビティ内で樹脂がノズルからゲートまで至ることを確認した。
シリンダノズル先端で検知している樹脂の内圧が70MPaに達したところで、圧力制御に切り替え、5秒間の圧力保持し、二酸化炭素を樹脂に溶融させる可塑化作用を促進した。
前記圧力保持を終えてから二酸化炭素を脱圧し、冷却時間を経て成形品を取り出した。取り出した成形品には、金型に形成された微細形状を忠実に転写した高精度な形状が形成されていた。
本実施例で得られた波形データを図10に示す。
ガス圧が7.8MPaに達するまでの時間(TY)は3.67秒であったため、樹脂がゲートに達するまでの時間(TX)>TYを満たすように、射速はスクリュ位置によって多段制御し、スクリュ位置が50mmから20mmまでは12.5mm/s、20mmから16mmまでは3mm/s、16mm以下は8mm/sとした。
この結果、樹脂がゲートに達するまでの時間(TX)は3.87秒となり、TX>TYを満足し、外観良品のフォーカシングスクリーンが得られた。
2:ゲート
3:成形品
4:ガス体の流れ
5:キャビティ
6:スキン層
7:スキン層を破った痕
Claims (6)
- 金型に加圧したガス体の注入を伴うガスアシストにより樹脂の射出成形を行う成形品の製造方法であって、
ノズル先端の樹脂経路が解放されたオープンノズルを用い、溶融した熱可塑性樹脂の射出開始後に前記ガス体を金型へ注入して昇圧を開始し、
前記樹脂が前記金型のゲートを通過する前に、前記ガス体の昇圧を完了させることを特徴とする成形品の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂は透明な材料であることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
- 前記昇圧を完了した後の前記ガス体の圧力は5〜9MPaであることを特徴とする請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
- 前記ガス体は、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパンのうち、いずれか一つの種類のものが用いられることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記成形品は、光学部品であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記成形品は、フォーカシングスクリーンであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の成形品の製造方法。
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