JP5790855B2 - 複合ブレーキの協調制御装置 - Google Patents
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Description
摩擦制動が車両の運動エネルギーを熱として消失させてしまうのを最小限にしつつ、回生制動が車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収するエネルギー量を最大にすることができる。
その結果、エネルギー効率が向上し、燃料消費率や電気消費率を向上させるできることができる。
その後、制動操作力の増大で目標制動トルクが大きくなる等により、回生制動のみでは目標制動トルクを実現できなくなった時、回生制動のみによる制動状態から、回生制動および摩擦制動による制動状態へと切り替わる。
この特許文献1に記載されている複合ブレーキの協調制御技術は、制動初期に回生制動を優先的に用い、これのみを用いて目標制動トルクを実現するのではなく、制動初期から回生制動および摩擦制動の双方を用いて制動を行うというものである。
かように回生制動トルクが大きな値から一気に0になると、摩擦制動が制動初期はこれを補い得るほど高応答に制動トルクを発生し得ないことから、減速度が急減して一時的に車両が空走するような違和感を運転者に与えるという問題を生ずる。
制動初期に回生制動の中止で回生制動トルクが一気に0になっても、違和感を伴うほどに大きく減速度が急減することのないようにした複合ブレーキの協調制御装置を提案し、
もって上述の問題を解消することを目的とする。
先ず、本発明の前提となる複合ブレーキの協調制御装置を説明するに、これは、
制動操作に応じた目標制動トルクを、目標回生制動トルクと目標摩擦制動トルクとにより実現するようにしたものである。
つまり、上記制動操作が開始された後、上記目標摩擦制動トルクに対する摩擦制動トルクの偏差が所定値以上である制動初期であると判定した場合は、大きさが制限された上記目標回生制動トルクと、上記目標摩擦制動トルクとにより上記目標制動トルクを実現するよう構成したものである。
他方では、回生制動の中止により回生制動トルクが一気に0になって、摩擦制動が制動初期の応答遅れによりこれを補い得るほど高応答に制動トルクを発生し得なくても、かかる回生制動トルクの低下が上記の制限された回生制動トルクから0への落差の小さい低下であるため、違和感を伴うほどに大きく減速度が急減するという前記の問題を生ずることもなくなる。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になる協調制御装置を具えた複合ブレーキの制御システムを、車両の上方から見て示す概略系統図である。
図1において、1L,1Rはそれぞれ左右前輪を示し、また2L,2Rはそれぞれ左右後輪を示す。
モータ3の制御に際しては、モータコントローラ5が、バッテリ(蓄電器)6の電力をインバータ7により直流−交流変換して、またこの交流電力をインバータ7による制御下でモータ3へ供給することで、モータ3のトルクが統合コントローラ8からの目標モータトルクtTmに一致するよう、当該モータ3の制御を行うものとする。
この時モータ3が回生制動作用により発電した電力を、インバータ7により交流−直流変換してバッテリ6に充電する。
摩擦制動システムは、以下のような周知の液圧式ディスクブレーキ装置とし、以下にその概略を説明する。
このディスクブレーキ装置は、左右前輪1L,1Rと共に回転するブレーキディスク10L,10R、および、左右後輪2L,2Rと共に回転するブレーキディスク9L,9Rを具え、これらブレーキディスク10L,10Rおよび9L,9Rをそれぞれ、個々の液圧ブレーキユニット(キャリパ)11L,11Rおよび12L,12Rにより軸線方向両側から挟圧することで摩擦制動可能なものとする。
ブレーキ液圧の制御に際しては、液圧ブレーキコントローラ14が統合コントローラ8からの目標摩擦制動トルクtTbに応動し、車両全体の摩擦制動トルクが目標摩擦制動トルクtTbに一致するようブレーキユニット11L,11Rおよび12L,12Rへのブレーキ液圧(目標マスターシリンダ圧tPmc)を決定し、このように決定したブレーキ液圧がブレーキユニット11L,11Rおよび12L,12Rに供給されるようブレーキ液圧制御装置13を作動させる。
4輪1L,1R,2L,2Rの各車輪速Vwを検出する車輪速センサ群22からの信号と、
車両前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ23からの信号と、
アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ24からの信号と、
バッテリ6の蓄電状態SOCを検出する蓄電状態センサ25からの信号と、
ブレーキペダルストローク量Bstを検出するブレーキペダルストロークセンサ26からの信号と、
マスターシリンダ圧Pmcを検出する液圧センサ27からの信号とを入力する。
このマスターシリンダ32は有底マスターシリンダ本体32aを具え、有底マスターシリンダ本体32aの開口端から順次、セカンダリピストン32bおよびプライマリピストン32cを摺動自在に嵌合して、セカンダリピストン室32dおよびプライマリピストン室32eを画成する。
これらリターンスプリング32f,32gによるセカンダリピストン32bおよびプライマリピストン32cのストロークを、これらピストンに同軸に設けたマスターシリンダ圧制御機構(ブレーキ倍力装置)33のボールネジ軸33aで、図2に示すごとくに制限する。
インプットロッド34には更に、その内端34bに近い内端部に大径部34cを設定し、この大径部34cに外周フランジ34dを設定する。
外周フランジ34dの径方向両側にスプリング35,36の一端を着座させ、スプリング35の他端をプライマリピストン32cに、またスプリング36の他端をマスターシリンダ圧制御機構33のボールネジ軸33aに着座させる。
この弾支位置でインプットロッド34の大径部34cと、プライマリピストン32cとの間には、L1のストローク隙間を設定し、セカンダリピストン32bと、プライマリピストン32cとの間には、L2のストローク隙間を設定する。
セカンダリピストン室32eは液路39を経てリザーバタンクRESに通じさせると共に、液路40を経てブレーキユニット12L,11Rに通じさせる。
なお図示を省略したが、プライマリピストン室32eからブレーキユニット11L,12Rに至る液路38、および、セカンダリピストン室32eからブレーキユニット12L,11Rに至る液路40にはそれぞれ、アンチスキッド制御などを実行するための各種バルブや、モータポンプや、アクチュエータが介挿されている。
ブレーキペダル31を踏み込む制動操作時は、インプットロッド34が押し込まれてプライマリピストン32cおよびセカンダリピストン32bを対応方向へストロークさせる。
このマスターシリンダ液圧Pmcは液路38,40を経てブレーキユニット11L,12Rおよび12L,11Rへ供給され、これらブレーキユニット11L,12Rおよび12L,11Rが、対応するブレーキディスク10L,9Rおよび9L,10Rを軸線方向両側から強圧するよう作動することで所定の摩擦制動を行うことができる。
なお摩擦制動力は、ブレーキユニット11L,12Rおよび12L,11Rの作動液圧(上記ではマスターシリンダ液圧Pmc)によって決まる。
マスターシリンダ圧制御機構33は、マスターシリンダ本体32aの開口端に同軸に順次突き合わせて設けた第1ハウジング41および第2ハウジング42を具える。
図2の左側におけるボールネジ軸33aの端面にバネ座43を介してスプリング44の一端を着座させ、スプリング44の他端を第1ハウジング41に着座させることで、ボールネジ軸33aを図2の右方へ附勢する。
ボールネジナット33bは、マスターシリンダ圧制御モータ46により回転駆動し得るようになす。
このためボールネジナット33bとマスターシリンダ圧制御モータ46との間を減速機構47により駆動結合する。
減速機構47は、マスターシリンダ圧制御モータ46の出力軸に固着した小径の駆動プーリ48と、ボールネジナット33bの外周に固着した大径の従動プーリ49と、これらプーリ48,49間に掛け渡したベルト50とで構成する。
マスターシリンダ圧制御モータ46により減速機構47を介して従動プーリ49が回転されるとボールネジナット33bが一体的に回転し、このボールネジナット33bの回転運動によりボールネジ軸33aがその軸線方向に並進運動する。
ボールネジ軸33a が図2の右方へ並進運動する場合、プライマリピストン32cが同方向への戻しストロークによりマスターシリンダ圧Pmcを低下させる。
なお図2は、ブレーキペダル31が押し込まれていないのに呼応して、ボールネジ軸33aが図2の最も右方向位置にストロークした初期位置にある状態を示す。
つまり、ブレーキペダル31の踏み込みによる制動操作中(マスターシリンダ圧Pmcの発生中)にマスターシリンダ圧制御モータ46が故障して停止し、ボールネジ軸33aの戻しストローク制御が不能となった場合でも、ボールネジ軸33aがスプリング44により押し戻され、図2の初期位置に戻り得る。
このため、ブレーキペダル31の釈放により制動操作を止めると、マスターシリンダ圧Pmcをゼロまで低下させることができ、摩擦制動力の残存による引きずりの発生を防止することができる。
これがため、マスターシリンダ圧制御装置51には、図1につき前述したブレーキペダルストロークセンサ26からの信号、および目標マスターシリンダ圧tPmcに係わる信号のほかに、
モータ46の回転角を検出するレゾルバ等のモータ回転角検出センサ46aからの信号と、
液路38,40内におけるブレーキユニット作動圧を検出する液圧センサ52,53からの信号とを入力する。
マスターシリンダ圧制御装置51は、モータ回転角検出センサ46aで検出したモータ46の回転角に基づき、ボールネジ軸33aのストローク位置を算出する。
この制御に際しマスターシリンダ圧制御装置51は、モータ46により、インプットロッド34のストロークに応じたプライマリピストン32cのストローク変位、すなわちインプットロッド34とプライマリピストン32cとの相対変位を制御する。
これによりマスターシリンダ圧Pmcを目標マスターシリンダ圧tPmcに一致させることができる。
Pmc=(FIR+K×△x)/AIR=(FPP−K×△x)/APP …(1)
ただし、
Pmc:プライマリピストン室32eの液圧(マスターシリンダ圧)
FIR:インプットロッド34の推力
FPP:プライマリピストン32cの推力
AIR:インプットロッド34の受圧面積
APP:プライマリピストン32cの受圧面積(AIR <APP)
K:スプリング35,36のバネ定数
Δx:インプットロッド34とプライマリピストン32cとの相対変位量
よって、Δxは、相対移動の中立位置では0、インプットロッド34に対してプライマリピストン32cが押し込み方向へ前進(図2の左方へストローク)するとき正極性、逆方向の戻し方向へ後退(図2の右方へストローク)するとき負極性となる。
なお、上記の圧力平衡式(1)ではシールの摺動抵抗を無視している。
またプライマリピストン32cの推力FPPは、モータ46の電流値から推定可能である。
α=Pmc×(APP+AIR)/FIR …(2)
よって、式(2)に上記式(1)のPmcを代入すると、倍力比αは下記の式(3)のようになる。
α=(1+K×Δx/FIR)×(AIR+APP)/AIR …(3)
ここでマスターシリンダ圧特性とは、インプットロッドストロークXiに対するマスターシリンダ圧Pmcの変化特性を指す。
インプットロッドストロークXiに対するピストンストロークXbを示すストローク特性と、上記目標マスターシリンダ圧特性とに対応して、インプットロッドストロークXiに対する相対変位量Δxの変化を示す目標変位量算出特性を得ることができる。
検証により得られた目標変位量算出特性データに基づき、相対変位量Δxの目標値(以下、目標変位量Δx*)を算出する。
検出したインプットロッドストロークXiに対応して決定される目標変位量Δx*を実現するようにモータ46の回転(プライマリピストン32cの変位量Xb)を制御することで、目標変位量Δx*に対応する大きさのマスターシリンダ圧Pmcをマスターシリンダ32で発生させることができる。
更に具体的に説明すると倍力制御では、上記検出した変位量Xiと目標変位量算出特性とに基づいて目標変位量Δx*を設定し、上記検出(算出)された相対変位量Δxが目標変位量Δx*と一致するようにモータ46を制御(フィードバック制御)する。
このようにΔx=0となるようにプライマリピストン32cをストロークさせた場合、上記式(3)により、倍力比αは、α=(AIR+APP)/AIRとして一意に定まる。
よって、必要な倍力比に基づいてAIRおよびAPPを設定し、変位量XbがインプットロッドストロークXiに等しくなるようにプライマリピストン32cを制御することで、常に一定の(上記必要な)倍力比を得ることができる。
図1における統合コントローラ8は、図3の制御プログラムを実行して、本発明が狙った通りの制動力協調制御を遂行するべく、目標回生制動トルクtTmおよび目標摩擦制動トルクtTbを以下のように求める。
次のステップS102においては、当該ブレーキペダルストロークBstが設定ストローク以上になったか否かをチェックする。
ここで設定ストロークは、マスターシリンダ32のプライマリピストン32cおよびセカンダリピストン32dが、プライマリピストン室32eおよびセカンダリピストン室32dとリザーバタンクRES(液路37,39)との間における連通ポートに達し、これら連通ポートを遮断することにより室32e,32d内にマスターシリンダ液圧Pmcを発生させ始めるときのブレーキペダルストロークに対応させる。
ステップS102でブレーキペダルストロークBstが設定ストローク以上になったと判定する場合、つまりマスターシリンダ液圧Pmcが発生し始めたと判定する場合は、制御をステップS103に進めて、以下のような早期回生制動トルクの出力を開始するよう、目標回生制動トルクtTmに早期回生制動トルクを設定する。
この協調制御に際しては、ブレーキペダルストロークBstから運転者が要求している目標制動トルクtTtotalを求め、この目標制動トルクtTtotalを回生制動の優先利用により実現すべく、目標回生制動トルクtTmを決定する。
しかし発生可能な最大回生制動トルクが目標制動トルクtTtotal未満である場合、目標回生制動トルクtTmを発生可能最大回生制動トルクと同じ値にし、回生制動のみでは足りない制動トルク不足分を摩擦制動により補うよう、目標摩擦制動トルクtTbを制動トルク不足分と同じ値にすることで、回生制動と摩擦制動とで目標制動トルクtTtotalを実現する。
摩擦制動が車両の運動エネルギーを熱として消失させてしまうのを最小限にしつつ、回生制動が車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収するエネルギー量を最大にすることができる。
その結果、エネルギー効率が向上して、燃料消費率や電気消費率を向上させることができる。
その後、ブレーキペダル踏力(制動操作力)の増大で目標制動トルクtTtotalが大きくなる等により、回生制動のみでは目標制動トルクtTtotalを実現できなくなった時、回生制動のみによる制動状態から、回生制動および摩擦制動による制動状態へと切り替わる。
かかる制動初期の協調制御によれば、摩擦制動の上記した応答遅れにより摩擦制動力の発生遅れがあっても、この発生遅れ分を高応答な回生制動により補うことができ、摩擦制動の応答遅れに伴う一時的な制動力不足の問題を解消することができる。
回生制動制御に用いるセンサが故障したり、バッテリ蓄電率SOCが充電不能な満蓄電状態になったりしたことで、回生制動を中止せざるを得なくなった時、回生制動トルクが上記の大きな値から一気に0になる。
ところで制動初期の摩擦制動は応答遅れが大きくて、かかる回生制動トルクの急低下を補い得ないことから、かかるかかる回生制動トルクの急低下により車両の減速度が急減して、一時的に車両が空走するような違和感を運転者に与えるという別の問題を生ずる。
このように制限された早期回生制動トルクとしては、目標制動トルクtTtotalに対し所定割合の制動トルク量と、目標制動トルクtTtotalのうちの設定制動トルク量との小さい方に相当する制動トルク値を用いるのが良い。
バッテリ6が過充電により破損されることのないようにしたり、バッテリ6の満充電による回生制動トルクの低下で車両減速度が変化することのないようにするのがよい。
ここにおけるマスターシリンダ圧Pmc(摩擦制動トルク)の設定値は、制動初期でなくなって摩擦制動の応答遅れが問題にならなくなったか否かを判定するための設定値とし、液圧センサ52,53(図2参照)の分解能や性能のばらつきを含む誤差を考慮して確実に摩擦制動の応答遅れの完了を判定可能な値に定める。
制限された目標回生制動トルクtTm(早期回生制動トルク)と、不足分を補う目標摩擦制動トルクtTbとにより目標制動トルクtTtotalを実現する協調制御を継続的に行う。
ステップS106でブレーキペダルストロークBstが設定ストローク未満でない(ブレーキペダル31が戻されておらず、未だ制動中であると判定する間は、制御をステップS105に戻して通常の回生制動協調制御を継続する。
ステップS106でブレーキペダルストロークBstが設定ストローク未満である(ブレーキペダル31が戻され、制動操作が行われていないと判定する間は、図3のループから離れて制動力の協調制御を終了する。
ブレーキペダルストロークBstがマスターシリンダ圧Pmcを発生させ始める設定ストローク以上になる瞬時t1より(ステップS102)、目標制動トルクtTtotalはブレーキペダル31の踏み込み応じて図4の時系列変化で示すごとくに立ち上がる。
目標制動トルクtTtotalを発生可能最大回生制動トルクで賄い得てtTm=tTtotalにすべきところながら、目標回生制動トルクtTmに対し、前記のごとく制限された早期回生制動トルクを設定すると共に、不足分を補う目標摩擦制動トルクtTbとにより目標制動トルクtTtotalを実現する協調制御を行う(ステップS103)。
例えば図4の瞬時t1〜t2間における目標回生制動トルクtTmの時系列変化により示すごとく、目標制動トルクtTtotalに対し所定割合の制動トルク量と、目標制動トルクtTtotalのうちの設定制動トルク量との小さい方に相当する制動トルク値である。
通常の回生制動協調制御、つまり目標制動トルクtTtotalを回生制動の優先利用により実現し、不足分を摩擦制動により補うという協調制御により、目標回生制動トルクtTmおよび目標摩擦制動トルクtTbを決定する(ステップS105)。
この時における目標回生制動トルクtTmの増大を、図4に例示するごとく所定の時間変化割合ΔtTmで徐々に行わせるようにすることで、高応答な回生制動トルクの急変によるショックの発生を緩和するのがよい。
上記した第1実施例の協調制御装置によれば、
通常は目標制動トルクtTtotalを、回生制動(tTm)の優先利用により実現し、不足分を摩擦制動(tTb)により実現するという協調制御を行うが、
ブレーキペダルストロークBstがマスターシリンダ圧Pmcを発生させ始める設定ストローク以上になる時から(ステップS102)、マスターシリンダ圧Pmc(摩擦制動トルク)が設定値以上になる時までの間(ステップS104)、つまり摩擦制動の応答遅れが問題となる制動初期の間は、
前記のごとくに制限された早期回生制動トルクと、摩擦制動トルクとを用いて制動を行うため、制動初期において以下の作用効果を奏し得る。
また他方では、回生制動の中止により回生制動トルクが、上記制限された早期回生制動トルクから一気に0になって、摩擦制動が制動初期の応答遅れによりこれを補い得るほど高応答に制動トルクを発生し得なくても、当該回生制動トルクの低下が上記の制限された回生制動トルクから0への落差の小さい低下であるため、違和感を伴うほどに大きく減速度が急減するという問題を生ずることもない。
回生制動の中止により回生制動トルクが一気に0になった時における車両減速度が違和感を伴うほど大きなものにならないようにするという効果を一層確実に達成することがである。
バッテリ6が過充電により破損されるのを防止したり、バッテリ6の満充電による回生制動トルクの低下で車両減速度が変化するのを回避することができる。
この目標回生制動トルクtTmの増大を、図4に例示するごとく所定の時間変化割合ΔtTmで徐々に行わせるようにしたため、高応答な回生制動トルクの急変によるショックの発生を緩和することができる。
図5は、本発明の第2実施例になる協調制御の制動力協調制御プログラムを示し、本実施例においても車両のブレーキシステムは、図1,2におけると同様なものとし、
図1における統合コントローラ8が、図3に代え図5の制御プログラムを実行して、本発明が狙った通りの制動力協調制御を遂行すべく、目標回生制動トルクtTmおよび目標摩擦制動トルクtTbを以下のように求める。
相違点のみを説明すると、ステップS102でブレーキペダルストロークBstが設定ストローク以上になった(マスターシリンダ液圧Pmcが発生し始めた)と判定する間、ステップS103で実行される早期回生制動トルクの出力(目標回生制動トルクtTmに早期回生制動トルクを設定し、目標制動トルクtTtotalに対する不足分を目標摩擦制動トルクtTbに割り当てる)制御の終了タイミングを、第1実施例(図3のステップS104)と違って、ステップS204で以下のごとくに決定する。
ここにおける設定偏差は、制動初期でなくなって摩擦制動の応答遅れが問題にならなくなったか否かを判定するための設定値とし、相対変位量Δxに係わるセンサの分解能や性能のばらつきを含む誤差を考慮して確実に摩擦制動の応答遅れの完了を判定可能な値に定める。
制限された目標回生制動トルクtTm(早期回生制動トルク)と、不足分を補う目標摩擦制動トルクtTbとにより目標制動トルクtTtotalを実現する協調制御を継続的に行う。
図6も、図4と同じブレーキペダル操作が行われ、ブレーキペダルストロークBstがマスターシリンダ圧Pmcを発生させ始める設定ストローク以上になる瞬時t1より(ステップS102)、目標制動トルクtTtotalがブレーキペダル31の踏み込み応じて図4と同様に立ち上がる状況を示す。
目標制動トルクtTtotalを発生可能最大回生制動トルクで賄い得てtTm=tTtotalにすべきところながら、目標回生制動トルクtTmに対し、制限された早期回生制動トルクを設定すると共に、不足分を補う目標摩擦制動トルクtTbとにより目標制動トルクtTtotalを実現する協調制御を行う(ステップS103)。
図6の瞬時t1〜t2間における目標回生制動トルクtTmの時系列変化により示すごとく、目標制動トルクtTtotalに対し所定割合の制動トルク量と、目標制動トルクtTtotalのうちの設定制動トルク量との小さい方に相当する制動トルク値である。
通常の回生制動協調制御、つまり目標制動トルクtTtotalを回生制動の優先利用により実現し、不足分を摩擦制動により補うという協調制御により、目標回生制動トルクtTmおよび目標摩擦制動トルクtTbを決定する(ステップS105)。
この目標回生制動トルクtTmがステップ的に増大するのではなく、図6に例示するごとく所定の時間変化割合ΔtTmで徐々に行わせるようにすることで、高応答な回生制動トルクの急変によるショックの発生を緩和するのがよい。
上記した第2実施例の協調制御装置によっても、ブレーキペダルストロークBstがマスターシリンダ圧Pmcを発生させ始める設定ストローク以上になる時から(ステップS102)、相対変位量Δx(実摩擦制動トルク)と、目標相対変位量Δx*(目標摩擦制動トルクtTb)との偏差(目標摩擦制動トルクtTbに対する摩擦制動トルクの偏差)が設定偏差未満になるまでの間(ステップS204)、つまり摩擦制動の応答遅れが問題となる制動初期の間は、
制限された早期回生制動トルクと、摩擦制動トルクとを用いて制動を行うため、制動初期において第1実施例による前記の作用効果を全て奏し得る。
図7は、本発明の第3実施例になる協調制御の制動力協調制御プログラムを示し、本実施例においても車両のブレーキシステムは、図1,2におけると同様なものとし、
図1における統合コントローラ8が、図3,5に代え図7の制御プログラムを実行して、本発明が狙った通りの制動力協調制御を遂行すべく、目標回生制動トルクtTmおよび目標摩擦制動トルクtTbを以下のように求める。
相違点のみを説明すると、ステップS102でブレーキペダルストロークBstが設定ストローク以上になった(マスターシリンダ液圧Pmcが発生し始めた)と判定する間、ステップS103で実行される早期回生制動トルクの出力(目標回生制動トルクtTmに早期回生制動トルクを設定し、目標制動トルクtTtotalに対する不足分を目標摩擦制動トルクtTbに割り当てる)制御の終了タイミングを、第1実施例(図3のステップS104)における要件と、第2実施例(図5のステップS204)における要件との双方が揃った時をとし、ステップS304で以下のごとくに決定する。
ステップS304で未だ制動初期を脱しておらず、摩擦制動の応答遅れが問題になる制動初期であると判定する間は、制御をステップS103に戻して、
制限された目標回生制動トルクtTm(早期回生制動トルク)と、不足分を補う目標摩擦制動トルクtTbとにより目標制動トルクtTtotalを実現する協調制御を継続的に行う。
上記した第3実施例の協調制御装置によっても、ブレーキペダルストロークBstがマスターシリンダ圧Pmcを発生させ始める設定ストローク以上になる時から(ステップS102)、マスターシリンダ圧Pmc(摩擦制動トルク)が設定値以上であり、且つ、相対変位量Δx(実摩擦制動トルク)と、目標相対変位量Δx*(目標摩擦制動トルクtTb)との間における偏差(目標摩擦制動トルクtTbに対する摩擦制動トルクの偏差)が設定偏差未満になるまでの間(ステップS304)、つまり摩擦制動の応答遅れが問題となる制動初期の間は、
制限された早期回生制動トルクと、摩擦制動トルクとを用いて制動を行うため、制動初期において第1実施例による前記の作用効果を全て奏し得る。
2L,2R 左右後輪
3 モータ(回転電機)
4 減速機
5 モータコントローラ
6 バッテリ(蓄電器)
7 インバータ
8 統合コントローラ
9L,9R,10L,10R ブレーキディスク
11L,11R,12L,12R ブレーキユニット
13 ブレーキ液圧制御装置
14 液圧ブレーキコントローラ
21 モータ回転センサ
22 車輪速センサ群
23 前後加速度センサ
24 アクセル開度センサ
25 バッテリ蓄電状態センサ
26 ブレーキペダルストロークセンサ
27 マスターシリンダ液圧センサ
31 ブレーキペダル
32 マスターシリンダ
32b セカンダリピストン
32c プライマリピストン
33 マスターシリンダ圧制御機構
33a ボールネジ軸
33b ボールネジナット
34 インプットロッド
46 マスターシリンダ圧制御モータ
47 減速機構
51 マスターシリンダ圧制御装置
Claims (7)
- 制動操作に応じた目標制動トルクを、目標回生制動トルクと目標摩擦制動トルクとにより実現するようにした複合ブレーキの協調制御装置において、
前記制動操作が開始された後、前記目標摩擦制動トルクに対する摩擦制動トルクの偏差が所定値以上である制動初期であるか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段にて前記制動初期であると判定した場合は、大きさが制限された前記目標回生制動トルクと、前記目標摩擦制動トルクとにより前記目標制動トルクを実現し、
前記判定手段にて前記制動初期でないと判定した場合は、前記制限が解除された前記目標回生制動トルクと、前記目標摩擦制動トルクとにより前記目標制動トルクを実現するよう構成したことを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記制限された前記目標回生制動トルクは、前記目標制動トルクに対し所定割合の制動トルク量であることを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記制限された前記目標回生制動トルクは、前記目標制動トルクに対し所定割合の制動トルク量と、前記目標制動トルクのうちの設定制動トルク量との小さい方に相当する制動トルク値であり、
摩擦制動システム中におけるアンチスキッド制御装置の作動時は、前記設定制動トルク量を、アンチスキッド制御装置が作動初期に低減する制動トルク低減量に対応させ、回生制動の中止によりアンチスキッド制御による制動トルクの初期低減を実現するよう構成したことを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1または3に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記制限された前記目標回生制動トルクは、前記目標制動トルクに対し所定割合の制動トルク量と、前記目標制動トルクのうちの設定制動トルク量との小さい方に相当する制動トルク値であり、
前記回生制動により発生した回生電力を蓄電する蓄電器の蓄電状態が充電側であるときは、放電側であるときに比べ、前記設定制動トルク量を小さくするよう構成したことを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記判定手段は、前記摩擦制動トルクが設定値未満であるとき、前記制動初期であると判定することを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記判定手段は、前記摩擦制動トルクと該摩擦制動トルクの制御指令値との間における摩擦制動トルク偏差が設定値以上であるとき、前記制動初期であると判定することを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載された複合ブレーキの協調制御装置において、
前記制限された前記目標回生制動トルクから前記制限が解除された前記目標回生制動トルクへの前記目標回生制動トルクの増大を、所定の時間変化割合で徐々に行わせるよう構成したことを特徴とする複合ブレーキの協調制御装置。
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