以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は実施形態1に係るマイクロポンプを示し、図7,8は実施形態2、図9は実施形態3、図10は実施形態4、図11は実施形態5、図12は実施形態6、図13は実施形態7を示している。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマイクロポンプを示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。図1において、マイクロポンプ1は、駆動部10と液体を収容するリザーバ11とから構成されている。
駆動部10は、チューブユニット2と制御ユニット3とが積層装着され構成されている。チューブユニット2は、チューブ50と複数のフィンガーとカムとロータと振動体と(共に図示せず)、これらを保持する案内枠としてのチューブ案内枠15と第2機枠16とを備えている。また、制御ユニット3は、制御回路部と電源部と(共に図示せず)を保持する機枠としての第1機枠14とを備えて構成されている。
チューブユニット2と制御ユニット3とは、厚さ方向に積層装着されて駆動部10を構成するが、着脱可能な構成である。なお、チューブユニット2と制御ユニット3との装着は、図1(a)に示すように、本実施形態では3本の固定螺子91によって固定される構造を例示している。
リザーバ11は、第1機枠14の上面側に設けられる凹部内に載置され、チューブ50によって駆動部10と接続されている。なお、リザーバ11は柔軟性を有する材料から構成されており、内部の液体が流出する際に外部の大気圧により変形し、リザーバ11の内部圧力が一定に保たれる。
リザーバ11に収容されている液体は、駆動部10の蠕動運動によりチューブ50を圧閉と開放を繰り返すことにより流出口部53から吐出される。
続いて、駆動部10の構成について図面を参照して説明する。
図2は駆動部の構成を示す平面図、図3は、図2のA−P−B切断面を示す断面図である。なお、図2は、第2機枠16の図示を省略して表している。
まず、図2を参照して平面構成について説明する。駆動部10は、一部が平面視して円弧形状に配設され弾性を有するチューブ50と、チューブ50の円弧形状の中心と回転軸Pが略一致するカム20と、チューブ50の円弧形状部分とカム20の間に介設されると共に、回転軸Pから放射状にそれぞれ等間隔に配設される複数のフィンガー40〜46と、カム20に回転力を伝達する円盤形状のロータ70と、ロータ70の外周部に突起部81aが当接するよう配設される振動体80と、制御回路部60と、電源部としての電池61とから構成されている。
本実施形態では、電池61は駆動部10の小型化のために、小型ボタン型電池を使用することが好ましい。
カム20とロータ70とはカム軸75に軸止されている。従って、カム20とロータ70は回転軸Pを同一として一体で回転するよう構成されている。
なお、制御回路部60と電池61と振動体80のそれぞれは、チューブ50及びカム20及びフィンガー40〜46と平面的に重ならない位置に分散配設されている。
カム20は、外周方向に凹凸を有し、最外周部にフィンガー押圧面21a〜21dが形成されている。フィンガー押圧面21a〜21dは、回転軸Pから等距離の同心円上に形成される。
また、フィンガー押圧面21aとフィンガー押圧面21b、フィンガー押圧面21bとフィンガー押圧面21c、フィンガー押圧面21cとフィンガー押圧面21d、及びフィンガー押圧面21dとフィンガー押圧面21a、の周方向ピッチと外形形状は等しく形成されている。
フィンガー押圧面21a〜21dそれぞれは、フィンガー押圧斜面22と回転軸Pを中心とする同心円上の円弧部23とが連続して形成されている。この円弧部23は、フィンガー40〜46を押圧しない位置に設けられる。
また、フィンガー押圧面21a,21b,21c,21dそれぞれの一方の端部と円弧部23とは、回転軸Pから延長した直線部24で結ばれている。
チューブ50は、チューブ案内枠15に形成されたチューブ案内溝15b内に挿着され、一方の端部は、液体を外部に吐出する流出口部53であり、マイクロポンプ1の外部に突出している。他方の端部は液体を流入する流入口部52であり、液体を収容するリザーバ11に接続され、液体流動部51がリザーバ11内に連通されている。
チューブ50は、フィンガー40〜46によって押圧される範囲が、回転軸Pに対して同心円となるように形成されたチューブ案内溝15b内に装着されている。なお、フィンガー40〜46は、それぞれ同じ形状で形成されているのでフィンガー44を例示して説明する。
フィンガー44は、円柱状の軸部44aと、軸部44aの一方の端部に設けられる鍔形状のチューブ押圧部44cと、他方の端部が半球状に丸められたカム当接部44bと、から構成されている。
フィンガー40〜46は、チューブ案内枠15に穿設されるフィンガー案内溝15aに沿って進退可能であり、カム20によって外側方向に押圧され、チューブ50を圧閉して液体流動部51を閉塞する。なお、フィンガー40〜46の断面方向の中心位置は、チューブ50の中心とほぼ一致している。
次に、図3を参照して駆動部10の断面構成について説明する。
チューブユニット2は、チューブ案内枠15の周縁部に形成される断面形状がU字形状の7本のフィンガー案内溝15aに挿着されたフィンガー40〜46(フィンガー44を例示)と、断面形状がU字形状のチューブ案内溝15bに挿着されたチューブ50と、図示上方からフィンガー40〜46及びチューブ50を保持する第2機枠16とを備える。
フィンガー案内溝15aとチューブ案内溝15bそれぞれに、フィンガー40〜46とチューブ50を挿着した後、それらの上面(各溝の開放側)を第2機枠16で覆い、チューブ案内枠15と第2機枠16との互いの当接面を密着固定することで密閉された空間30が形成される。なお、チューブ案内溝15bの外側(外周)方向にはチューブ案内壁15cが設けられ、フィンガー40〜46によるチューブ圧閉の際にチューブ50の移動を規制している。
なお、チューブユニット状態では、フィンガー40〜46はフィンガー案内溝15aに沿って進退可能であって、カム20の円弧部23の位置にあるフィンガーはカム20の方向に移動し、チューブ50を開放した位置にある(図中、フィンガー44’、チューブ50’で示す)。
また、カム20とロータ70とは、カム軸75に重ねて軸止されている。そして、カム軸75の軸部75aが第2機枠16に設けられる軸受92に、軸部75bがチューブ案内枠15に設けられる軸受93に軸支されている。従って、カム20とロータ70とはカム軸75を回転軸として一体で回転可能である。
なお、軸受92の軸穴は貫通していない。従って、チューブユニット2は、チューブ案内枠15と第2機枠16の互いの周縁部で密着固定することで、空間30の内部は密閉される。
ロータ70の外周部には回転方向に沿って溝71が形成されており、溝71の内部側面が、振動体80との当接面72である。
振動体80は、ロータ70の溝71の断面方向のほぼ中央に配設されると共に、腕部81cが、固定螺子98によってチューブ案内枠15に植立された振動体固定軸90に固定されている。なお、振動体80については、図4〜図6を参照して説明する。
振動体固定軸90は、接続基板64を貫通して軸止している。接続基板64には、表裏両面に接続パターン(図示せず)が形成されており、表面側には、振動体80に接続する接続パターンが形成され、裏面側(チューブ案内枠15表面側)には、制御回路部60と接続する接続パターンが形成されている。
チューブ案内枠15には表裏を貫通する接続端子65が植立されており、一方の端部が接続基板64の裏面側接続パターンと接続し、他方の端部がチューブ案内枠15から突設されている。なお、接続端子65は、後述する回路基板63に形成される接続端子部63aに対応する数(つまり、振動体80に接続する接続パターンの数)だけ設けられている。
なお、接続基板64は、少なくとも接続端子65の周辺においてチューブ案内枠15に貼着されて、チューブ案内枠15から浮き上がらないようにすることが望ましい。
続いて制御ユニット3の構成について図3を参照して説明する。制御ユニット3は、制御回路部60と、電池61と、これらを接続する回路基板63と、これらを保持する第1機枠14とから構成されている。
回路基板63は、表裏両面に回路パターン(図示せず)が形成され、第1機枠14の表面に穿設される回路基板63の厚さ分の凹部内に貼着されている。回路基板63には、半島状の接続端子部63aが形成されている。
接続端子部63aは、前述した振動体80に交流電圧を印加するのに必要な本数からなり、弾性を有している。
回路基板63は、接続端子部63aの周囲、制御回路部60及び電池61にわたって延在されており、裏面(図示下方)には制御回路部60が接続固定されている。制御回路部60は、電池61のプラス極及びマイナス極と、交流電圧の出力に対応する回路パターンに接続される。
電池61は、第1機枠14の裏面(図示下方)から挿入され、側面周囲を第1機枠14によって保持されると共に、電池蓋19によって固定される。
電池61の回路基板63に接する面がマイナス極であり、側面がプラス極であって、マイナス極が回路パターンと直接に接触接続される。また、プラス極は電池端子62(図2も参照する)を介して対応する回路パターンに接続される。
電池蓋19の外周突起部には螺子部19bが形成されており、第1機枠14に形成される雌螺子に螺着される。
また、電池蓋19には開閉溝19aが形成されており、この開閉溝19aにドライバやコイン等を挿入して回転することで電池蓋19を開閉することが可能である。つまり、電池蓋19を外して電池61を取り出し、電池61を装着して電池蓋19を締め付けることにより、電池61を回路基板63に圧設する。この際、電池蓋19と第1機枠14との間は密着される。
なお、電池蓋19の開閉構造としては、螺着固定の他にバヨネット構造、圧入構造、固定螺子構造等から選択することが可能である。
上述したチューブユニット2は、制御ユニット3に積層し、固定螺子91(図1,2、参照)により周縁部において密着固定される。この際、接続端子65がチューブ案内枠15より突出しているため、回路基板63の接続端子部63aを押圧し、接続基板64と回路基板63とが接続される。
上述したように、制御ユニット3とチューブユニット2とを装着された状態で、制御回路部60、電池61、回路基板63は、密閉された状態となる。
続いて、振動体80について図面を参照して説明する。
図4は振動体の構成を示す斜視図である。振動体80は、図4に示すように、ほぼ長方形の薄板形状をしている。振動体80は、補強板81の表面に板状の圧電素子82、圧電素子82の表面に電極84を積層し、裏面に板状の圧電素子83、圧電素子83の表面に電極85が積層されて構成されている。
圧電素子82,83はそれぞれ長方形をなし、制御回路部60(図3、参照)から出力される交流電圧を印加することにより、長手方向に伸張・収縮する。圧電素子82,83の材料としては特に限定されず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリ弗化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を用いることができる。
補強板81は、振動体80の全体を補強する機能を有しており、振動体80が過振幅または外力等によって損傷することを防止する。補強板81の材料としては特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、銅または銅系合金等の金属材料であることが望ましい。
圧電素子82,83は、補強板81よりも厚さが薄いものであることが好ましい。これにより、振動体80をより高い効率で振動させることができる。
補強板81は、圧電素子82,83に対する共通の電極としての機能をも有している。すなわち、圧電素子82には電極84と補強板81とによって交流電圧が印加され、圧電素子83には電極85と補強板81とによって交流電圧が印加される。
なお、圧電素子82,83と補強板81と接続基板64(図3、参照)とは、ワイヤ等で接続されている。
圧電素子82,83は、交流電圧が印加されると長手方向に繰り返し伸縮し、これに伴って、補強板81も長手方向に繰り返し伸縮する。すなわち、圧電素子82,83に交流電圧を印加すると、振動体80は図4の矢印で示すように長手方向に微小な振幅で振動する。
補強板81の両端部には、それぞれ突起部81a,81bが一体的に形成されている。図2及び図3に示すように、振動体80は突起部81aがロータ70の外周側面(当接面72)に当接するように配設されている。
次に、振動体80の作用について図面を参照して説明する。
図5は振動体の作用を模式的に示す部分平面図、図6は突起部の動きを模式的に示す説明図である。図5において、突起部81aは、補強板81の中央部(中心線G)からずれた位置(図示の構成では角部)に設けられている。
また、図示の構成では、反対側の角部に突起部81aとは対称的に突起部81bが設けられているが、本実施形態で使用されていない。
また、補強板81の長手方向のほぼ中央からは、腕部81cが突設されている。この腕部81cの先端部には固定用孔81dが開設されており、この固定用孔81dに固定螺子98(図3、参照)が挿通される。
図3に示すように、振動体80は、腕部81cにおいてチューブ案内枠15に植立される振動体固定軸90に固定螺子98により固定される。つまり、振動体80は、腕部81cによって支持されている。これにより、振動体80は自由に振動することができ、比較的大きい振幅で振動する。
なお、振動体80は腕部81cの弾性によって、突起部81aがロータ70の外周側面の当接面72に圧接された状態で配設されている。
また、振動体80は、ロータ70と断面方向においてほぼ平行な姿勢で配設されると共に、ロータ70の厚さよりも薄い。また、振動体80の厚さは、ロータ70の外周面に形成される溝71の断面方向の幅よりも薄くすることがより好ましい。
上述したように、圧電素子82,83に交流電圧を印加すると振動体80が伸縮し、突起部81aは、図6の矢印rに示すような楕円運動を繰り返す。
そこで、突起部81aがロータ70の当接面72に当接された状態で、圧電素子82,83に交流電圧を印加して振動体80を振動させると、振動体80が伸張するときに、ロータ70は突起部81aから摩擦力(押圧力)を受け、この押圧力の繰り返しでロータ70が時計周り方向(矢印R)方向に回転する。
圧電素子82,83に印加する周波数は特に限定されないが、振動体80の振動(縦振動)の共振周波数とほぼ同程度であることが好ましい。これにより、振動体80の振幅が大きくなり、高い効率でロータ70を回転駆動することができる。
なお、振動体80は、主に長手方向に縦振動するが、縦振動と屈曲振動とを共振させ、突起部81aを楕円振動させることがより好ましい。これにより、より高い効率でロータ70を回転駆動させることができる。以下、この点について説明する。
図5に示すように、振動体80がロータ70を回転駆動するとき、突起部81aは、ロータ70から図5中の矢印で表す反力fを受ける。本実施形態では、突起部81aが振動体80の中心線Gからずれた位置に設けられている。従って、振動体80は、この反力fによって図5に示すように面内方向に屈曲するように変形、振動する。なお、図5では、振動体80の変形を誇張して表している。
印加電圧の周波数、振動体80の形状・大きさ、突起部81aの位置等を適宜選択することで、この屈曲振動の周波数と縦振動の周波数とが共振し、振幅が大きくなると共に、突起部81aは、図6中の矢印rに表すように、ほぼ楕円に沿って変位(楕円振動)する。
これにより、振動体80の1回の振幅において、突起部81aがロータ70を回転方向に送るときには、突起部81aがロータ70により強い力で圧接され、突起部81aが戻るときには、ロータ70との摩擦力を低減または消滅させることができるため、振動体80の振動をロータ70の回転より高い効率で変換することができる。
続いて、本実施形態による液体の輸送に係る作用について図2を参照して説明する。カム20は、振動体80からの駆動力によりロータ70を介して回転され(図示、矢印R方向)、カム20のフィンガー押圧面21dでフィンガー44を押圧する。
フィンガー45はフィンガー押圧面21dとフィンガー押圧斜面22との接合部に当接しており、チューブ50を圧閉している。また、フィンガー46はフィンガー押圧斜面22上でチューブ50を押圧しているが、フィンガー44の押圧量より小さく、チューブ50を完全には圧閉していない。
フィンガー41〜43は、カム20の円弧部23の範囲にあり、押圧しない初期位置にある。また、フィンガー40はカム20のフィンガー押圧斜面22に当接しているが、この位置では、まだチューブ50を圧閉していない。
この位置から、さらにカム20を矢印R方向に回転すると、カム20のフィンガー押圧面21dによって、フィンガー45,46の順で押圧してチューブ50を圧閉していく。フィンガー44はフィンガー押圧面21dから解除されチューブ50は開放される。チューブ50の液体流動部51には、フィンガーから圧閉が開放される位置または、まだ圧閉されていない位置に液体が流入している。
カム20を振動体80によりさらに回転すると、フィンガー押圧斜面22が、フィンガー40,41,42,43の順に液体の流入側から流出側に順次押圧していき、フィンガー押圧面21cに達したときにチューブ50を圧閉する。
このような動作を繰り返すことにより、液体を流入口部52側から流出口部53側に向けて流動し、流出口部53から吐出する。
この際、カム20のフィンガー押圧面には、複数のフィンガーのうちの2本が当接し、次のフィンガーを押圧する位置に移動するときには、フィンガーのうちの1本を押圧する。このように、フィンガーを2本押圧する状態と、一本を押圧する状態と、を繰り返すことにより、少なくとも1本のフィンガーがチューブ50を常時圧閉している状態を形成する。このような複数のフィンガーの運動によるマイクロポンプの構造は蠕動駆動方式と呼ばれる。
従って、上述した本実施形態によれば、振動体80と、ロータ70と、カム20と、フィンガー40〜46により駆動機構(可動部機構)がチューブユニット2として構成されていることから、従来技術のようにモータモジュールとポンプモジュールとの可動部の連結機構が不要となり構造が簡単になるという効果がある。
また、制御ユニット3は非可動部材の制御回路部60と電池61とを有する構成となり、可動機構を有しない簡単な構造を実現できる。
また、チューブ50とフィンガー40〜46とカム20とをユニット化していることから、チューブ50の交換をチューブユニット2として容易に行うことができる。しかも、チューブ50の直径のばらつきに対してフィンガー40〜46の長さ、さらにカム20の形状を所定の吐出量となるようにチューブユニット毎に組み合わせて調整することにより、吐出精度の保証がしやすいという効果がある。
また、高コストの制御回路部60を含む制御ユニット3に対して、一般の製造設備で製造可能なチューブユニットは低コストで製造可能である。従って、制御ユニット3を繰り返し使用とし、チューブユニット2を使用する液体(薬液)毎、使用対象毎(例えば、個人ごと)に使い捨て使用とすれば、ランニングコストを低減することができる。
また、本実施形態は、カム20の回転駆動源として振動体80の振動を利用してロータ70(カム20)を回転する構造である。振動体80で駆動されるロータ70は回転トルクが大きいことから、従来技術のように減速ギヤ機構を必要としない。また、チューブユニット2と制御ユニット3との可動部に連結機構が不要となり構造が簡単になると共に、駆動源が平板状の振動体80であるために小型、且つ薄型のマイクロポンプ1を実現できる。
また、振動体80は圧電素子82,83に交流電圧を印加することで振動し、ロータ70を回転させることから、電磁ノイズが発生せず、周囲の機器に悪影響を与えることがなく、周囲の機器が発生する電磁ノイズの影響も受けない。従って、特に医療現場における電磁ノイズのリスクを回避することができる。
また、駆動源として圧電素子82,83を含む振動体80を用いる場合は、駆動による劣化がほとんどなく、耐久性に優れ長時間にわたって使用することを可能にする。しかしその際、電源部として小型電池を用いる場合に、使用期間途中で電池容量が不足することが予想される。そこで、電池61を単独で容易に交換できる構成とすることで長時間にわたってマイクロポンプ1を継続使用することができる。
また、チューブユニット2の交換時期に合わせて電池61を交換することができ、電源部を取り出す煩わしさを排除すると共に、交換時に機械的駆動部材に傷をつけてしまうというような問題を排除できる。
また、電池61及び制御回路部60を制御ユニット3に配設していることから、チューブユニット2に対する平面レイアウトの自由度が増す。そのことから、平面サイズが大きい大容量の電池を採用することが可能で、長時間駆動を実現できる。
本実施形態は、振動体80を用いてロータ70を回転し、さらにカムを回転する構造であり、振動体80の突起部81aとロータ70の間の摩擦力(押圧力)によってロータ70を駆動する。従って、従来技術のステップモータのように磁力で駆動する場合と異なり、駆動力が高い。しかも突起部81aを直径が大きいロータ70の外周面に当接することにより、同じ振動体を同じ条件で振動させたときにロータ70の回転トルクを大きくすることができるので安定駆動を継続できる。
また、ロータ70とカム20とをカム軸75に軸止しているために、前述した従来技術のような連結機構が不要となり、マイクロポンプ1をより小型化することができる。
また、ロータ70の突起部81aとの当接面に回転方向に沿った溝71を設け、突起部81aを溝71の内側の当接面72に当接するよう配設している。従って、薄板状の振動体80が外部からの振動、衝撃等により当接面72から外れてしまうことを防止することができる。また、突起部81aと当接面72との断面方向の当接位置がほぼ一定となることから、振動体80からロータ70への駆動力が安定するという効果がある。
また、制御ユニット3とチューブユニット2を装着する際、制御回路部60と振動体80とを電気的に接続する。従って、制御回路部60と振動体80とを、チューブ50及びカム20及びフィンガー40〜46と平面的に重ならないように配設することにより、電気的接続が容易に行えると共にマイクロポンプ1をより薄型化することができる。また、小サイズの振動体80をフィンガー40〜46及びチューブ50と平面的に分散配設することから組立性を向上させることができる。
(実施形態2)
続いて、実施形態2に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態2は、ロータ70をリング形状とし、振動体80の突起部81aがロータ70のリング形状内周側面に当接するよう配設されていることに特徴を有している。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図7は、実施形態2に係る駆動部を示す部分断面図、図8はロータを示す平面図である。図7及び図8において、ロータ170は、図示下面方向から凹部を形成しリング形状をなしている。そして、この凹部内に振動体80が配設されている。
ロータ170のリング形状内周側面には、ロータ170の回転方向に沿って溝171が形成されている。この溝171の内周側面は、振動体80に設けられる突起部81aが当接する当接面172である。
ロータ170は、実施形態1と同様にカム20と共にカム軸75に重ねて軸止され一体で回転するよう構成される。
また、振動体80は、腕部81c(図4、参照)の先端部において、チューブ案内枠15に植立された振動体固定軸90に固定螺子98により固定されている。
なお、振動体80の構成及び駆動作用は実施形態1(図4〜図6、参照)と同じであるが、突起部81aはロータ170のリング形状内周側面の当接面172に当接し、ロータ170を時計回り方向(図中、矢印R方向)に回転させる。
このような構成によれば、ロータ170をリング形状とし、振動体80の突起部81aをロータ170のリング形状内周側面の当接面172に当接するよう配設している。従って、振動体80をロータ170の外径よりも内側に配設することから、より小型化を実現でき、制御回路部60及び電池61(図3も参照する)のレイアウト設計が容易になるという効果がある。
(実施形態3)
続いて、実施形態3に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態3は、前述した実施形態2の構造をさらに簡素化するもので、ロータが、カム20の一方の平面に穿設された凹部の内部に形成され、振動体80に設けられる突起部81aが、凹部の内周側面に当接するよう配設されていることに特徴を有している。従って、実施形態2との相違個所を中心に説明する。
図9は、実施形態3に係る駆動部を示す部分断面図である。図9において、カム20の下面(チューブ案内枠15方向の面)には凹部が穿設され、この凹部内に振動体80が配設されている。
ロータ170の内周側面には溝171が形成され、この溝171の内側側面には、振動体80に設けられる突起部81aが当接する当接面172が形成される。つまり、ロータ機能がカム20と一体で形成されている。
また、振動体80は、腕部81cの先端部(図4、参照)において、チューブ案内枠15に植立された振動体固定軸90に固定螺子98により固定されている(図8も参照)。
なお、振動体80の構成及び駆動作用は実施形態1(図4〜図6、参照)と同じであるが、実施形態2(図8、参照)と同様に、突起部81aはロータ170のリング形状内周側面の当接面172に当接し、ロータ170を時計回り方向に回転させる。
従って、上述した構成によれば、ロータ170をカム20の内部にカム20と一体形成していることになるので、構造をより簡単にすることができ、また、小型化することができる。
(実施形態4)
続いて、実施形態4に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態4は、前述した実施形態1(図3、参照)では、電池61が制御ユニット3に装着されていることに対し、電池61がチューブユニット2に備えられ、着脱可能であることを特徴としている。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図10は、実施形態4に係る駆動部を示す断面図である。図10において、電池61は、チューブユニット2に装着されている。チューブ案内枠15と第2機枠16には、断面方向に貫通する孔が設けられ、電池61はこの孔に挿入される。
電池61の一方の端面はマイナス極であって、制御ユニット3に設けられる回路基板63のマイナス極パターン(図示せず)に接続される。
また、電池61の側面はプラス極であって、回路基板63に接続固定されている電池端子62を介してプラス極パターン(図示せず)に接続される。
電池61は、第2機枠16の図示上方から挿入され、側面周囲をチューブ案内枠15によって保持されると共に、電池蓋19によって固定される。なお、チューブ案内枠15の電池挿入孔は、電池61が挿脱可能な程度の嵌合関係に設定されることが好ましい。
電池蓋19の外周突起部には螺子部19bが形成されており、第2機枠16に形成される雌螺子に螺着される。また、電池蓋19には開閉溝19aが形成されており、この開閉溝19aにドライバやコイン等を挿入して回転することで電池蓋19を開閉することが可能である。
つまり、電池蓋19を外して電池61を取り出し、電池61を装着して電池蓋19を締め付けることにより、電池61を回路基板63に圧設する。この際、電池蓋19と第2機枠16との間は密着される。
ここで、電池61は、チューブユニット2を制御ユニット3から取り外すときにチューブユニット2と共に取り外し、その後、交換することも、チューブユニット2を制御ユニット3に装着した状態で、電池蓋19を外して単独で交換することも可能である。
このような構成によれば、電池61が、チューブユニット2を貫通して制御ユニット3に達する位置までの厚さとすることができるので、電池61を厚くすることができることから大容量の電池を採用することができ、長時間継続駆動することができる。
(実施形態5)
続いて実施形態5に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態5は、前述した実施形態4(図10、参照)の変形例であって、電池61がチューブユニット2の内部に装着されていることに特徴を有する。従って、実施形態4との相違個所を中心に説明する。
図11は、実施形態5に係る駆動部を示す断面図である。図11において、接続基板64は、電池61の下部まで延在され、図示しないプラス極パターンとマイナス極パターンとが形成されている。
チューブユニット2に設けられる接続基板64と、制御ユニット3に設けられる回路基板63とは、接続端子65によって接続される。従って、接続端子65及び接続端子部63aは、電池61と制御回路部60との接続、振動体80と制御回路部60との接続に必要な数を備えている。また、接続基板64には、電池61の側面に接続する電池端子62に接続固定されている。
電池61は、チューブユニット2(チューブ案内枠15と第2機枠16)に挿入され、電池蓋19により固定される。電池蓋19及び固定構造は実施形態4と同様である。
このような構成にすれば、チューブ50の交換時期に合わせて電池61の交換をすることができる。また、チューブユニット2と制御ユニット3を装着した状態であっても、電池61を単独で交換することができる。
なお、前述した実施形態4及び実施形態5では、振動体80と制御回路部60と電池61のそれぞれを、チューブ50及びカム20及びフィンガー40〜46と平面的に重ならない位置に分散配設しており、薄型化と組立性を向上させることができる。
(実施形態6)
続いて、実施形態6に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態6は、ロータ70とカム20の間に駆動力伝達機構として減速機構または増速機構を備えていることを特徴とする。なお、減速機構の1例を例示して説明する。
図12は、実施形態6に係る駆動部を示す断面図である。図12において、本実施形態の減速機構は、カム20に設けられるカム歯車101と、ロータ70に設けられるロータ歯車105と、カム歯車101とロータ歯車105とに歯合する中間車102とから構成されている。
カム歯車101は、カム20と共にカム軸75に軸止されると共に、軸受92,93により軸支されている。また、中間車102は中間歯車103を有し、チューブ案内枠15に設けられる軸受95と、中間車受110によって軸支されている。なお、中間車受110は、チューブ案内枠15に固定螺子等で固定されている。
一方、ロータ歯車105は、ロータ70を軸止するロータ軸104に形成され、チューブ案内枠15に設けられる軸受97と、第2機枠16に設けられる軸受96とによって軸支される。
なお、第2機枠16に設けられる軸受92,96は、軸穴が貫通していないので、チューブ案内枠15と第2機枠16によって形成される空間30は、制御ユニット3とチューブユニット2を装着した状態で密閉されている。
また、振動体80は、腕部81cの先端部(図4、参照)において、チューブ案内枠15に植立された振動体固定軸90に固定螺子98により固定されている。
ロータ70の外周部には回転方向に沿って溝71が形成されており、溝71の内部側面が突起部81aとの当接面72である。ロータ70の形状は前述した実施形態1(図3、参照)と同じ場合を例示している。
振動体80は、ロータ70の溝71の断面方向のほぼ中央に配設されると共に、振動体固定軸90に固定螺子98によって固定されている。
なお、振動体80の構成及び作用は実施形態1(図4〜図6、参照)と同じであり、振動体80とロータ70との関係も実施形態1と同様なため、説明を省略する。
振動体80の振動によってロータ70が回転され、このロータ70の回転は、ロータ歯車105、中間歯車103、カム歯車101を介してカム20に伝達される。中間車102を設けることにより、カム20は、実施形態1(図2、参照)と同じ方向に回転する。
ここで、ロータ歯車105とカム歯車101との歯数比は減速比であって、減速比はロータ歯車105とカム歯車101との歯数比により適宜変更することができる。また、中間車102を大歯車と小歯車の構成にすれば減速比をさらに調整可能となる。なお、増速する場合は、各歯車の歯数比を増速ギヤ機構とすればよい。
このように、カム20とロータ70との間に、減速機構または増速機構を設けることにより、カム20の回転速度を変えることができる。つまり、液体の流動量を適宜調整することができる。
また、振動体80、ロータ70、減速機構、カム20などの可動機構を全てチューブユニット2に設けることにより、制御ユニット3とチューブユニット2の間で、連結機構を必要とせず組立性が向上する。
なお、本実施形態においても、前述した実施形態1(図3、参照)、実施形態4(図10、参照)、実施形態5(図11、参照)と同様な電池61の配設構造を採用できる。
さらに、本実施形態では、ロータ70の外周側面の当接面72に振動体80の突起部81aを当接する構造を例示して説明したが、前述した実施形態2(図7,8、参照)または実施形態3(図9、参照)に示すロータ170の内周側面の当接面172に突起部81aを当接する構成にも適合可能である。
(実施形態7)
続いて、実施形態7に係るマイクロポンプについて図面を参照して説明する。実施形態7は、チューブユニットにカム、チューブ、複数のフィンガーを備え、制御ユニットに振動体、減速機構または増速機構、制御回路部を備えて構成されていることに特徴を有する。なお、減速機構の1例を例示して説明する。
図13は、実施形態7に係る駆動部を示す断面図である。図13において、チューブユニット2は、カム20と、フィンガー40〜46とチューブ50(共に図示を省略)を備えて構成されている。フィンガー40〜46とチューブ50の構成は、前述した実施形態1(図2,3、参照)と同じであるため説明を省略する。
カム20は、カム歯車101と共にカム軸75に軸止され、チューブ案内枠15に設けられる軸受93と、第2機枠16に設けられる軸受92によって軸止されている。
一方、制御ユニット3は、振動体80とロータ70と減速機構と制御回路部60とを備えて構成されている。
振動体80は、第3機枠17に植立された振動体固定軸90に腕部81cを固定螺子98によって固定されている。振動体固定軸90は、回路基板63を第3機枠17に軸止している。なお、回路基板63は、第3機枠17に貼着される。
ロータ70の外周部には回転方向に沿って溝71が形成されており、溝71の内部側面が突起部81aとの当接面72である。ロータ70の形状は前述した実施形態1(図3、参照)と同じ場合を例示している。
振動体80は、ロータ70の溝71の断面方向のほぼ中央に配設されると共に、振動体固定軸90に固定螺子98によって固定されている。
なお、振動体80の構成及び作用は実施形態1(図4〜図6、参照)と同じであり、振動体80とロータ70との関係も実施形態1と同様なため、説明を省略する。
減速機構は、カム20に設けられるカム歯車101と、ロータ70に形成されるロータ歯車105と、カム歯車101とロータ歯車105とに歯合する中間車102とから構成されている。
ロータ70は、ロータ歯車105の軸部に軸止され、第3機枠17に設けられる軸受96と第1機枠14に設けられる軸受97によって軸支されている。ロータ歯車105は、中間車102に設けられる中間歯車103と歯合する。
中間車102は、中間車軸108と、中間車軸108の軸部108bに軸止される中間歯車103とから構成され、中間車軸108には小歯車108aが形成されている。
中間車102は、一方が第3機枠17に設けられる軸受99と、中間車受110と、によって軸支されている。そして、小歯車108aが、第3機枠17からチューブユニット2側に突出して、カム歯車101と歯合する。
なお、第3機枠17は第1機枠14に、中間車受110は第3機枠17に、共に固定螺子を用いて固定される。
チューブユニット2を制御ユニット3に装着する際、カム歯車101と中間車102の小歯車108aとが干渉することが考えられる。このような場合、中間車102またはカム歯車101のどちらか一方を歯車の1ピッチ分回転することで、カム歯車101と中間車102とを歯合させることができる。
なお、カム歯車101の中間車102と歯合する断面方向の外周部に斜面が形成されており、カム歯車101の中間車102との歯合を助けている。
また、回路基板63は片面基板であって、第3機枠17に対し反対側の表面に回路パターン(図示せず)が形成されて、制御回路部60が接続固定されている。
振動体80の振動によってロータ70が回転され、このロータ70の回転は、ロータ歯車105、中間歯車103、小歯車108a、カム歯車101を介してカム20に伝達される。中間車102を設けることにより、カム20は、実施形態1(図2、参照)と同じ方向に回転する。
ここで、ロータ歯車105とカム歯車101との歯数比は減速比であって、減速比はロータ歯車105とカム歯車101との歯数比により適宜変更することができる。また、中間車102を大歯車と小歯車の構成にすれば減速比をさらに調整可能となる。なお、増速する場合は、各歯車の歯数比を増速ギヤ機構とすればよい。
なお、本実施形態においても、前述した実施形態1(図3、参照)、実施形態4(図10、参照)と同様な電池61の配設構造を採用できる。実施形態4と同様な電池61の配設構造の場合には、回路基板63を両面基板として、スルーホールで表裏の回路パターンを接続することで実現できる。
さらに、本実施形態では、ロータ70の外周側面の当接面72に振動体80の突起部81aを当接する構造を例示して説明したが、前述した実施形態2(図7,8、参照)または実施形態3(図9、参照)に示すロータ170の内周側面の当接面172に突起部81aを当接する構成にも適合可能である。
本実施形態の構成によれば、チューブユニット2は、カム20とフィンガー40〜46とチューブ50の構成となる。従って、チューブ50の直径のばらつきに対してフィンガー40〜46の長さ、さらにカム20の形状を所定の吐出量となるようにチューブユニット毎に組み合わせて調整することが可能である。しかも、制御ユニット3に対して低コスト化が可能で、チューブユニット2を使い捨て使用とする場合、ランニングコストをより低減することができる。
また、制御回路部60と振動体80とを制御ユニット3に備えることで、回路基板63の一面側で接続することが可能で、接続構造を簡素化することができる。
なお、本実施形態の技術思想により、減速機構の構成を簡素化することができる。つまり、ロータ70を軸止するロータ歯車105をチューブユニット2側に突出して、ロータ歯車105とカム歯車101とを直接歯合させることで実現可能である。
この構造は、ロータ70を制御ユニット3に、カム20(カム歯車101)をチューブユニット2に備え、カム20とロータ70とが平面的に交差してもよいために成り立つ構成である。
また、このような構成の場合は、中間車を用いていないため、ロータ70の回転方向が実施形態1とは逆方向になるように振動体80のロータ70への当接方向を配慮する。
以上前述した実施形態1〜実施形態7によるマイクロポンプ1は、小型化、薄型化が可能で、微量流量を安定して連続的に流動することができるため、生体内または生体表面に装着し、新薬の開発やドラッグデリバリなどの医療用に好適である。また、様々な機械装置において、装置内、または装置外に搭載し、水や食塩水、薬液、油類、芳香液、インク、気体等の流体の輸送に利用することができる。さらに、マイクロポンプ単独で、流体の流動、供給に利用することができる。