以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプラズマエッチング装置の全体の断面概略構成を示すものである。まず、図1を参照してプラズマエッチング装置の構成について説明する。
プラズマエッチング装置1は、電極板が上下平行に対向し、プラズマ形成用電源が接続された容量結合型平行平板エッチング装置として構成されている。
プラズマエッチング装置1は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等からなり円筒形状に成形された真空処理チャンバ2を有しており、この真空処理チャンバ2は接地されている。真空処理チャンバ2内の底部には、セラミックなどの絶縁材料からなる基台3を介して、被処理基板、例えば半導体ウエハWを載置するための略円柱状のサセプタ支持台4が設けられている。さらに、このサセプタ支持台4の上には、下部電極を構成するサセプタ(載置台)5が設けられている。このサセプタ5には、ハイパスフィルター(HPF)6が接続されている。
サセプタ支持台4の内部には、冷媒室7が設けられており、この冷媒室7には、冷媒が冷媒導入管8を介して導入されて循環し冷媒排出管9から排出される。そして、その冷熱がサセプタ5を介して半導体ウエハWに対して伝熱され、これにより半導体ウエハWが所望の温度に制御される。
サセプタ5は、その上側中央部が凸状の円板状に成形され、その上に半導体ウエハWと略同形の静電チャック11が設けられている。静電チャック11は、絶縁材10の間に電極12を配置して構成されている。そして、電極12に接続された直流電源13から例えば1.5kVの直流電圧が印加されることにより、例えばクーロン力によって半導体ウエハWを静電吸着する。
サセプタ支持台4、サセプタ5、静電チャック11には、半導体ウエハWの裏面に、伝熱媒体(例えばHeガス等)を供給するためのガス通路14が形成されており、この伝熱媒体を介してサセプタ5の冷熱が半導体ウエハWに伝達され半導体ウエハWが所定の温度に維持されるようになっている。
サセプタ5の上端周縁部には、静電チャック11上に載置された半導体ウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング15が配置されている。このフォーカスリング15は、例えば、シリコン等から構成されており、エッチングの面内均一性を向上させる作用を有する。
上記フォーカスリング15の下部には、サセプタ5及びサセプタ支持台4の周囲を囲むように、円環状の絶縁部材、本実施形態では、石英(クォーツ)からなる円環状の石英部材72が設けられている。
また、真空処理チャンバ2の外側(常圧雰囲気とされる部分)の所定部位(本実施形態では、真空処理チャンバ2の下側)には、光源70が設けられており、この光源70から発せられる加熱用の光71を、円環状の石英部材72の内部を透過させてフォーカスリング15に供給し、フォーカスリング15を加熱するようになっている。このフォーカスリング15の加熱機構の詳細は、後述する。なお、円環状の絶縁部材は、加熱用の光71を透過させる材料によって構成すればよく、石英の他、例えば、溶融石英、サファイヤ、透明イットリア、又はGe、ZnSe、ZnS、GaAs、CaF2、BaF2、MgF2、LiF、KBr、KCl、NaCl、MgOのいずれかからなる光学材料等から構成してもよい。また、本実施形態では、円環状とした絶縁部材を用いているが、この絶縁部材の形状は、他の形状、例えば扇状或いは、後述するように円柱状としてもよい。
サセプタ5の上方には、このサセプタ5と平行に対向して上部電極21が設けられている。この上部電極21は、絶縁材22を介して、真空処理チャンバ2の上部に支持されている。上部電極21は、電極板24と、この電極板24を支持する導電性材料からなる電極支持体25とによって構成されている。電極板24は、例えば、導電体または半導体で構成され、多数の吐出孔23を有する。この電極板24は、サセプタ5との対向面を形成する。
上部電極21における電極支持体25の中央にはガス導入口26が設けられ、このガス導入口26には、ガス供給管27が接続されている。さらにこのガス供給管27には、バルブ28、並びにマスフローコントローラ29を介して、処理ガス供給源30が接続されている。処理ガス供給源30から、プラズマエッチング処理のための処理ガスが供給される。
真空処理チャンバ2の底部には排気管31が接続されており、この排気管31には排気装置35が接続されている。排気装置35はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、真空処理チャンバ2内を所定の減圧雰囲気、例えば1Pa以下の所定の圧力まで真空引き可能なように構成されている。また、真空処理チャンバ2の側壁にはゲートバルブ32が設けられており、このゲートバルブ32を開いた状態で半導体ウエハWが隣接するロードロック室(図示せず)との間で搬送されるようになっている。
上部電極21には、第1の高周波電源40が接続されており、その給電線には整合器41が介挿されている。また、上部電極21にはローパスフィルター(LPF)42が接続されている。この第1の高周波電源40は、例えば、13MHz〜150MHzの範囲の周波数を有している。このように周波数の高い高周波電力を印加することにより、真空処理チャンバ2内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができる。
下部電極としてのサセプタ5には、第2の高周波電源50が接続されており、その給電線には整合器51が介挿されている。この第2の高周波電源50は、第1の高周波電源40より低い周波数の範囲を有しており、このような範囲の周波数の高周波電力を印加することにより、被処理基板である半導体ウエハWに対してダメージを与えることなく適切なイオン作用を与えることができる。第2の高周波電源50の周波数としては、20MHz以下のものが用いられる。
上記構成のプラズマエッチング装置1は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置1の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース部62と、記憶部63とが設けられている。
ユーザインターフェース部62は、工程管理者がプラズマエッチング装置1を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
記憶部63には、プラズマエッチング装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース部62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置1での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
上記構成のプラズマエッチング装置1によって、半導体ウエハWのプラズマエッチングを行う場合、まず、半導体ウエハWは、ゲートバルブ32が開放された後、図示しないロードロック室から真空処理チャンバ2内へと搬入され、静電チャック11上に載置される。そして、直流電源13から直流電圧が印加されることによって、半導体ウエハWが静電チャック11上に静電吸着される。次いで、ゲートバルブ32が閉じられ、排気装置35によって、真空処理チャンバ2内が所定の真空度まで真空引きされる。
その後、バルブ28が開放されて、処理ガス供給源30から所定の処理ガスが、マスフローコントローラ29によってその流量を調整されつつ、処理ガス供給管27、ガス導入口26を通って上部電極21の中空部へと導入され、さらに電極板24の吐出孔23を通って、図1の矢印に示すように、半導体ウエハWに対して均一に吐出される。
そして、真空処理チャンバ2内の圧力が、所定の圧力に維持される。その後、第1の高周波電源40から所定の周波数の高周波電力が上部電極21に印加される。これにより、上部電極21と下部電極としてのサセプタ5との間に高周波電界が生じ、処理ガスが解離してプラズマ化する。
他方、第2の高周波電源50から、上記の第1の高周波電源40より低い周波数の高周波電力が下部電極であるサセプタ5に印加される。これにより、プラズマ中のイオンがサセプタ5側へ引き込まれ、イオンアシストによりエッチングの異方性が高められる。
そして、所定のプラズマエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが真空処理チャンバ2内から搬出される。
図2は、図1のプラズマエッチング装置1のフォーカスリング15及びフォーカスリング15を加熱するための加熱機構の部分の構成を拡大して模式的に示すものであり、図2では左側に断面構成を、右側に円環状の石英部材72の一部の立体的形状を示している。図2に示すように、フォーカスリング15は、下部電極を構成するサセプタ5及び円環状の石英部材72の上に載置され、半導体ウエハWの周囲を囲むように載置されている。なお、円環状の石英部材72は、サセプタ(下部電極)5の周囲を囲むことによって、周囲と絶縁する作用を有する。
基台3には、光源70からの加熱用の光71を通過させるための光路3aが形成されており、光路3aの出口側(図2中左側)端部には、気密封止のための窓3bが配設されている。そして、光路3aの入口近傍に設けられたミラーまたはプリズム73によって、光源70からの加熱用の光71を略90度曲げて光路3a内に導入するようになっている。なお、図2において3cは、窓3bを気密封止するためのOリングである。
円環状の石英部材72の上記窓3bに対応した部位には、図2の右側にも示すように、光導入部72aが設けられている。円環状の石英部材72の光導入部72aの内側部分には、反射部72bが形成されており、光導入部72aから入射した加熱用の光71は、反射部72bで上方に向かって反射され、上部に設けられたフォーカスリング15に向かって進行するようになっている。
また、円環状の石英部材72の光導入部72a以外の内側面と外側面及び底面には、反射膜72cが形成されている。これらの反射膜72cは、光導入部72aから円環状の石英部材72内に入射した加熱用の光71が側面及び底面から外部へ漏れることを抑制するためのものである。これらの反射膜72cの作用によって、円環状の石英部材72内に入射した加熱用の光71は、図5に示すように、円環状の石英部材72内部で、乱反射し、分岐して、走査されるようにフォーカスリング15の各部にまで分散して伝播し、効率良く均一にフォーカスリング15を加熱することができる。このような反射膜72cは、金属膜や誘電体膜によって形成することができる。このような反射膜72cを形成する代わりに、内部を透過する加熱用の光71を反射しやすくする為に表面を透明にした構成、又は、表面にファイヤーポリッシュ処理を施した構成としてもよい。
なお、光源70としては、レーザ光を発生させるレーザ光源又はLED(Light Emitting Diode)からなるLED光源を使用することが好ましい。また、本実施形態では、光源70からの加熱用の光71は、フォーカスリング15(シリコン製)を透過しない光とすることが好ましく、この場合、シリコンの基礎吸収端以下の波長の光(波長1050nm以下の光)で照射することが好ましい。これによって、効率良くフォーカスリング15を加熱することができる。なお、加熱用の光71は、紫外線、可視光、赤外線のいずれであってもよい。
ところで、図2に示すように、フォーカスリング15の外周部には、円環状に形成されたカバーリング15aが設けられている。このカバーリング15aを、フォーカスリング15と同様にして加熱することもできる。
円環状の石英部材72に加熱用の光71を導入する構成としては、例えば図3に示すように、石英部材72の下部に複数のLEDからなる光源70を設け、光源70から窓3bを介して直接石英部材72内に加熱用の光71を導入するようにしてもよい。また、図4に示すように、LEDからなる光源70からの加熱用の光71を光ファイバ75内に導入するとともに、複数個の光ファイバ75の先端を石英部材72の下部に配置し、これらの光ファイバ75から石英部材72の下部に窓3bを介して加熱用の光71を導入するようにしてもよい。
なお、円環状の石英部材72の光導入部72aおよび光出射部に、図6に示すように回折格子からなる拡散機構72dを設け、円環状の石英部材72内に入射する加熱用の光71を、−1次光、0次光、+1次光等に分けて分散させるようにしてもよい。この場合、光源70からの加熱用の光71の波長を変えることによって、その分散の状態(回折角)を変化させ、より均一に分散させて均一にフォーカスリング15を加熱することもできる。
また、円環状の石英部材72に前述した反射膜72cを形成する代わりに、円環状の石英部材72の内側面、外側面及び底面を鏡面状に研磨して、図7、図8に示すように、円環状の石英部材72の内側で加熱用の光71が全反射する入射条件(入射角度)で、円環状の石英部材72内に加熱用の光71を入射させるようにしてもよい。
さらに、図9に示すように、円環状の石英部材72内に複数のビームスプリッタ72eを設け、周方向に沿って入射させた加熱用の光71を、少しずつ分散させて上方に向けて(フォーカスリング15に向けて)分岐させるようにしてもよい。また、図10に示すように、光ファイバ75によって、光源70からの加熱用の光71を分散させて円環状の石英部材72内に複数の個所から入射させるようにしてもよい。
上記の実施形態では、円環状の石英部材72内から分散させた状態の加熱用の光71をフォーカスリング15に供給する場合について説明したが、例えば、図11,12に示すように、フォーカスリング15内を加熱用の光71が伝播し、フォーカスリング15内で加熱用の光71が全反射して伝搬する構成とすることもできる。なお、この場合、フォーカスリング15内を加熱用の光71が伝播するように、シリコンの基礎吸収端より長い波長の光(波長が1050nmより長い波長の光)を加熱用の光71として使用する必要がある。
図11に示す例は、円環状の石英部材72とフォーカスリング15との間に、シリコン製の円環状のプリズム76を設けたものである。なお、図11において(a)は、プラズマエッチング装置の要部断面構成を示し、(b)は、プリズム76の断面構成を示し、(c)はフォーカスリング15及びプリズム76の平面構成を示している。
図11(b)に示すように、プリズム76の入射面と水平面とのなす角度が25.4°より大きい角度とされ、これによって、プリズム76を経てフォーカスリング15中に入射した加熱用の光71が、フォーカスリング15の径方向に沿ってフォーカスリング15中を全反射しなから伝播するようになっている。なお、上記の角度25.4度は、シリコン(Si)の屈折率を3.5、石英(クォーツ)の屈折率を1.5として算出したものである。
図12に示す例は、円環状の石英部材72とフォーカスリング15との間に、矩形状のシリコン製のプリズム77を設けたものである。なお、図12において(a)は、プラズマエッチング装置の要部断面構成を示し、(b)は、プリズム77の(a)に示すA−A断面構成を示し、(c)はフォーカスリング15及びプリズム77の平面構成を示している。
上記プリズム77は、加熱用の光71をフォーカスリング15の周方向に向けて屈折させるものであり、上記A−A断面におけるプリズム77の入射面と水平面とのなす角度が25.4°より大きい角度とされている。これによって、プリズム77を経てフォーカスリング15中に入射した加熱用の光71が、フォーカスリング15の周方向に沿ってフォーカスリング15中を全反射しなから伝播する。なお、上記の角度25.4度は、シリコン(Si)の屈折率を3.5、石英(クォーツ)の屈折率を1.5として算出したものである。上記のプリズム76,77を設ける代わりに、円環状の石英部材72及びフォーカスリング15の少なくとも一方の表面にプリズム相当の光路を変える加工を施してもよい。
プラズマエッチング装置1において、フォーカスリング15は、半導体ウエハWのプラズマエッチングを行う際に、真空処理チャンバ2内にプラズマを発生させると、このプラズマに曝される。このため、半導体ウエハWのプラズマエッチングを行う場合、最初は常温であったフォーカスリング15が、プラズマによって加熱され、次第に高温となる。
また、複数枚の半導体ウエハWを連続的にプラズマエッチングする場合は、1枚目の半導体ウエハWのプラズマエッチング処理を開始する前は、フォーカスリング15の温度は常温であるが、1枚目の半導体ウエハWのプラズマエッチング処理の開始によってフォーカスリング15の加熱が開始され、その温度が次第に上昇する。
そして、1枚目の半導体ウエハWのプラズマエッチング処理が終了し、1枚目の半導体ウエハWが真空処理チャンバ2からアンロードされ、2枚目の半導体ウエハWが真空処理チャンバ2内にロードされてプラズマエッチング処理が開始されるまでの間に、フォーカスリング15はある程度冷却される。
この後、2枚目の半導体ウエハWのプラズマエッチング処理の開始によって、再度フォーカスリング15の加熱が開始される。このようなフォーカスリング15の加熱及び冷却過程が数回繰り返されることによって、フォーカスリング15の温度は、ある一定の範囲の温度となる。
上記のように、プラズマエッチング処理の開始に伴って、フォーカスリング15の温度が変化するため、何等対策を講じなかった場合、特に、1枚目の半導体ウエハWと、2枚目以降の半導体ウエハWの処理状態が、フォーカスリング15の温度の相違に起因して変化してしまう。
このため、従来においては、半導体ウエハWの処理を開始する前に、ダミーウエハを真空処理チャンバ2内にロードし、サセプタ5の上にダミーウエハを載置した状態で、真空処理チャンバ2内にプラズマを発生させて、フォーカスリング15等を加熱することが行われていた。なお、サセプタ5の上にダミーウエハを載置しない状態でプラズマを発生させると、サセプタ5の上に設けられた静電チャック11の表面が、プラズマにより損傷されるため、ダミーウエハを用いている。
しかしながら、このようにしてフォーカスリング15を加熱すると、フォーカスリング15を含めた真空処理チャンバ2内の部材が、プラズマに曝されて消耗するという問題がある。また、このようにしてフォーカスリング15を加熱すると、ダミーウエハが必要となるだけでなく、ダミーウエハの使用回数等の管理が必要になるとともに、ダミーウエハを収容するための収容部(スロット)が必要になるという問題もある。
そこで、本実施形態では、例えば、1枚目の半導体ウエハWの処理を開始する前に、光源70から加熱用の光71を、円環状の石英部材72を介してフォーカスリング15に照射し、フォーカスリング15を加熱する。そして、このようにしてフォーカスリング15を加熱した後、半導体ウエハWのプラズマエッチング処理を開始する。
上記のように、本実施形態では、プラズマを用いずにフォーカスリング15を加熱するので、ダミーウエハを用いる必要がない。また、フォーカスリング15を加熱する際に、フォーカスリング15を含めた真空処理チャンバ2内の部材が、プラズマに曝されて消耗することもない。なお、フォーカスリング15の加熱は、サセプタ5上に半導体ウエハWが載置された状態で行ってもよく、サセプタ5上に半導体ウエハWが載置されていない状態で行ってもよい。
また、例えば、プラズマからの入熱が少なく、プラズマエッチング中にフォーカスリング15の温度を上昇させる必要がある場合等は、上記加熱用の光71の照射によるフォーカスリング15の加熱をプラズマエッチング中に行ってもよい。さらに、プラズマエッチングの最中のフォーカスリング15の温度は、プラズマエッチング時間の経過に連れて変動するので、フォーカスリング15の温度を温度計で測定しながら加熱用の光71の照射による加熱を行い、フォーカスリング15の温度を一定に制御することもできる。このような場合、低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術によりフォーカスリング15の温度を測定するようにし、光源70からの光を、温度測定用の光として兼用して使用することもできる。
以上のように、本実施形態では、ダミーウエハ等を用いることなく、予めフォーカスリング15を加熱しておくことができるので、従来に比べてプラズマエッチング処理の手順を簡素化することができる。また、プラズマを用いることなくフォーカスリング15を加熱するので、フォーカスリング15や真空処理チャンバ2内の他の部材のプラズマによる消耗も抑制することができる。そして、予めフォーカスリング15が所望温度となっていることにより、各半導体ウエハWに均一なプラズマエッチング処理を施すことができる。また、真空処理チャンバ2の外側に設けた光源70からの加熱用の光71を、フォーカスリング15の下部に設けられている円環状の石英部材72を介してフォーカスリング15に供給するようにしているので、例えば、フォーカスリング内部に誘導発熱部を設け、かつ、真空処理チャンバ内に誘導コイル等を設置した場合等に比べて加熱機構の構成を簡略化することができ、製造コストの増大を抑制することができる。
図13は、第2実施形態に係るプラズマエッチング装置1aの全体の断面概略構成を示すものである。
プラズマエッチング装置1aは、電極板が上下平行に対向し、プラズマ形成用電源が接続された容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。なお、図1に示したプラズマエッチング装置1と対応する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
本実施形態のプラズマエッチング装置1aでは、サセプタ5の上端周縁部には、静電チャック11上に載置された半導体ウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング15が配置されている。このフォーカスリング15は、例えば、シリコンやSiC等から構成されており、エッチングの面内均一性を向上させる作用を有する。また、このフォーカスリング15の外周部分には、フォーカスリング15の周囲を囲むように環状に構成された環状部材(カバーリング)16が設けられている。この環状部材16は、一部又は全部がシリコン又はSiC等から構成されている。
図14にも示すように、上記環状部材16の下部には、サセプタ5及びサセプタ支持台4の周囲を囲むように、円環状の絶縁部材、本実施形態では、石英(クォーツ)からなる円環状の石英部材720が設けられている。なお、この円環状の石英部材720は、石英の他、加熱用の光71を透過させる材料、例えば、溶融石英、サファイヤ、透明イットリア、又はGe、ZnSe、ZnS、GaAs、CaF2、BaF2、MgF2、LiF、KBr、KCl、NaCl、MgOのいずれかからなる光学材料等から構成してもよい。また、円環状の石英部材720の代わりに、他の形状、例えば扇状或いは、後述するように円柱状のものを用いることもできる。
また、真空処理チャンバ2の外側(常圧雰囲気とされる部分)の所定部位(本実施形態では、真空処理チャンバ2の下側)には、加熱用の光源70が設けられており、この光源70から発せられる加熱用の光71を、円環状の石英部材720の内部を透過させて環状部材16に供給し、環状部材16を加熱するようになっている。
図14は、図13のプラズマエッチング装置1aの環状部材(カバーリング)16及び環状部材16を加熱するための加熱機構の部分の構成を拡大して模式的に示すものである。図14に示すように、フォーカスリング15は、半導体ウエハWの周囲を囲むように下部電極を構成するサセプタ5の上に載置されている。環状部材16は、フォーカスリング15の周囲を囲むように配置され、サセプタ5及びサセプタ支持台4を囲むように配置された円環状の石英部材720の上に載置されている。なお、円環状の石英部材720は、サセプタ(下部電極)5の周囲を囲むことによって、サセプタ5を周囲と絶縁する作用を有する。
基台3には、加熱用の光源70からの加熱用の光71を通過させるための光路3aが形成されており、光路3aの出口側(図14中左側)端部には、気密封止のための窓3bが配設されている。そして、光路3aの入口近傍に設けられたミラーまたはプリズム73によって、光源70からの加熱用の光71を略90度曲げて光路3a内に導入するようになっている。なお、図14において3cは、窓3bを気密封止するためのOリングである。
円環状の石英部材720の上記窓3bに対応した部位には、光導入部72aが設けられている。円環状の石英部材720の光導入部72aの内側部分には、反射部72bが形成されており、光導入部72aから入射した加熱用の光71は、反射部72bで上方に向かって反射され、上部に設けられた環状部材16に向かって進行するようになっている。
また、図15に示すように、円環状の石英部材720の光導入部72a以外の内側面と外側面及び底面には、反射機構としての反射膜72cが形成されている。これらの反射膜72cは、光導入部72aから円環状の石英部材720内に入射した加熱用の光71が側面及び底面から外部へ漏れることを抑制するためのものである。これらの反射膜72cの作用によって、円環状の石英部材720内に入射した加熱用の光71は、図16に示すように、円環状の石英部材720内部で、乱反射し、分岐して、走査されるように環状部材16の各部にまで分散して伝播し、効率良く均一に環状部材16を加熱することができる。このような反射膜72cは、金属膜や誘電体膜によって形成することができる。
なお、加熱用の光源70としては、レーザ光を発生させるレーザ光源又はLED(Light Emitting Diode)からなるLED光源を使用することが好ましい。また、本実施形態では、光源70からの加熱用の光71は、環状部材16(シリコン製)を透過しない光とすることが好ましく、この場合、シリコンの基礎吸収端以下の波長の光(波長1050nm以下の光)で照射することが好ましい。これによって、効率良く環状部材16を加熱することができる。なお、加熱用の光71は、紫外線、可視光、赤外線のいずれであってもよい。
一方、図14に示すように、上記の環状部材16の内周側に設けられたフォーカスリング15は、熱伝達シート15aを介してサセプタ5上に載置されており、このサセプタ5は、前述したとおり、半導体ウエハWを冷却するため冷媒によって冷却されている。したがって、フォーカスリング15は、サセプタ5からの冷熱によって冷却されるようになっている。本実施形態では、処理チャンバー2内にプラズマを発生させて半導体ウエハWに形成された膜のプラズマエッチングを行っている際に、フォーカスリング15を200℃未満の温度に維持できるようになっている。
上記のように、本実施形態では、環状部材(カバーリング)16を、光源70からの加熱用の光71を照射することによって200℃以上(例えば300〜500℃)の温度に加熱しつつ、フォーカスリング15を200℃未満の温度に冷却した状態でプラズマエッチングを行う。これによって、半導体ウエハWの周縁部におけるホール径の細り等の加工形状の悪化を抑制しつつ、半導体ウエハWの周縁部のフォトレジストのエッチングレートの上昇を抑制することができ選択比の低下を抑制することができるので、プラズマエッチング処理の面内均一性を向上させることができる。
円環状の石英部材720に加熱用の光71を導入する構成としては、例えば図17,18に示す構成を採用することができる。なお、図17,18において図14と対応する部分には同一の符号が付してある。これらの図17,18では、小型の光源70を円環状の石英部材720の底部に隣接して配置し、気密封止のための窓3bを介して加熱用の光71を直接円環状の石英部材720内に照射する構成となっている。この場合、小型の光源70として、例えば50W程度の出力のものを用い、周方向に沿って等間隔で8〜12個程度の光源70を設けた構成とすることができる。
また、上記構成の場合、窓3bを凹シリンドリカルレンズ等から構成し、加熱用の光71を周方向に広げることが好ましい。さらに、円環状の石英部材720には、少なくとも加熱用の光71を導入するための窓3b以外部分の底部に、加熱用の光71が外部に漏洩することを抑制するための反射機構を設けることが好ましい。この反射機構は、例えば図19に示すように、円環状の石英部材720の底部をプリズム状に加工する方法、または、反射膜のコーティングやファイャーポリッシュ処理等を施す方法等によって形成することができる。
円環状の石英部材720に加熱用の光71を導入する他の構成としては、例えば図20に示す構成を採用することができる。すなわち、LED等からなる光源70からの加熱用の光71を光ファイバ75内に導入するとともに、複数個の光ファイバ75の先端を円環状の石英部材720の下部に配置し、これらの光ファイバ75から円環状の石英部材720の下部に窓3bを介して加熱用の光71を導入する。
なお、円環状の石英部材720の光導入部72aの部分に、図21に示すように回折格子からなる拡散機構72dを設け、円環状の石英部材720内に入射する加熱用の光71を、−1次光、0次光、+1次光等に分けて分散させるようにしてもよい。この場合、光源70からの加熱用の光71の波長を変えることによって、その分散の状態(回折角)を変化させ、より均一に分散させて均一に環状部材16を加熱することもできる。
また、円環状の石英部材720に前述した反射膜72cを形成する代わりに、円環状の石英部材720の内側面、外側面及び底面を鏡面状に研磨或いはファイャーポリッシュ処理等を施して、図22、図23に示すように、円環状の石英部材720の内側で加熱用の光71が全反射する入射条件(入射角度)で、円環状の石英部材720内に加熱用の光71を入射させるようにしてもよい。
さらに、図24に示すように、円環状の石英部材720内に複数のビームスプリッタ72eを設け、周方向に沿って入射させた加熱用の光71を、少しずつ分散させて上方に向けて(環状部材16に向けて)分岐させるようにしてもよい。また、図25に示すように、光ファイバ75によって、光源70からの加熱用の光71を分散させて円環状の石英部材720内に複数の個所から入射させるようにしてもよい。
上記の実施形態では、円環状の石英部材720内から分散させた状態の加熱用の光71を環状部材16に供給する場合について説明したが、例えば、図26,27に示すように、環状部材16内を加熱用の光71が伝播し、環状部材16内で加熱用の光71が全反射して伝搬する構成とすることもできる。なお、この場合、環状部材16内を加熱用の光71が伝播するように、シリコンの基礎吸収端より長い波長の光(波長が1050nmより長い波長の光)を加熱用の光71として使用する必要がある。
また、この場合、加熱用の光71の導入部を除いて環状部材16の底面、或いは円環状の石英部材720の上面に反射機構を設けることが好ましい。反射機構は、前述したとおり、反射膜を形成するか又はその表面にファイヤーポリッシュ処理等の表面処理を施すことによって形成することができる。
図26に示す例は、円環状の石英部材720と環状部材16との間に、シリコン製の円環状のプリズム76を設けたものである。なお、図26において(a)は、プラズマエッチング装置1aの要部断面構成を示し、(b)は、プリズム76の断面構成を示し、(c)は、環状部材16及びプリズム76の平面構成を示している。
図26(b)に示すように、プリズム76の入射面と水平面とのなす角度が25.4°より大きい角度とされ、これによって、プリズム76を経て環状部材16中に入射した加熱用の光71が、環状部材16の径方向に沿って環状部材16中を全反射しなから伝播するようになっている。なお、上記の角度25.4度は、シリコン(Si)の屈折率を3.5、石英(クォーツ)の屈折率を1.5として算出したものである。
図27に示す例は、円環状の石英部材720と環状部材16との間に、矩形状のシリコン製のプリズム77を設けたものである。なお、図27において(a)は、プラズマエッチング装置1aの要部断面構成を示し、(b)は、プリズム77の(a)に示すA−A断面構成を示し、(c)は環状部材16及びプリズム77の平面構成を示している。
上記プリズム77は、加熱用の光71を環状部材16の周方向に向けて屈折させるものであり、上記A−A断面におけるプリズム77の入射面と水平面とのなす角度が25.4°より大きい角度とされている。これによって、プリズム77を経て環状部材16中に入射した加熱用の光71が、環状部材16の周方向に沿って環状部材16中を全反射しなから伝播する。なお、上記の角度25.4度は、シリコン(Si)の屈折率を3.5、石英(クォーツ)の屈折率を1.5として算出したものである。なお、上記のプリズム76,77を設ける代わりに、円環状の石英部材720及び環状部材16の少なくとも一方の表面にプリズム相当の光路を変える加工を施してもよい。
図28のグラフは、縦軸を環状部材16の定常温度(℃)、横軸を投入エネルギー(W)として、投入エネルギーと環状部材16(外径360mm、内径340mm)の定常温度との関係を示したものである。同図に示すように、環状部材16を200℃に加熱するためには125W、300℃に加熱するためには266W、400℃に加熱するためには500W程度の投入エネルギーが必要となる。
また、図29のグラフは、環状部材16の昇温レート(℃/sec)、横軸を投入エネルギー(W)として、投入エネルギーと環状部材16(外径360mm、内径340mm、厚さ1.5,2.0,3.4,4.0mm)の昇温レートとの関係を示したものである。同図に示すように、環状部材16の厚さによって昇温レートは変化するが、厚さ3.4mmの場合、投入エネルギーが250Wで昇温レートが1℃/sec程度となる。
図30,31のグラフは、縦軸を温度(℃)、横軸を時間(sec)として環状部材16の昇温カーブを示したもので、図30は、環状部材16の厚さが1.5mm、図31は、環状部材16の厚さが3.4mmの場合を示している。図31に示されるように、厚さが3.4mmの環状部材16の場合、266Wの光で約10分後に約300℃となる。
図32のグラフは、縦軸を温度(℃)、横軸を時間(分)として、内径300mm、外径380mmの環状部材16を大気中で加熱した際の昇温カーブを示したものであり、点線は光の出力が560Wで環状部材16の底部に反射機構のある場合、実線は光の出力が560Wで反射機構のない場合を示している。同図に示すように、反射機構を設けることによって、昇温レートを向上させることができ、定常温度も上昇させることができる。
以上のように、本実施形態では、フォーカスリング15を200℃未満の温度に冷却しつつ、フォーカスリング15の外周部に設けられた環状部材16を200℃以上の温度に加熱することができる。これによって、半導体ウエハWの周縁部における加工形状の悪化を抑制することができるとともに、半導体ウエハWの周縁部におけるフォトレジストのエッチングレートの上昇を抑制してプラズマエッチング処理の面内均一性を向上させることができる。
特に、プラズマエッチング装置1aが停止した状態から半導体ウエハWのプラズマエッチングを開始する際、環状部材16はプラズマに晒されていないため、室温近傍の温度となっている。この状態で、フォーカスリング15を冷却しつつプラズマエッチングを開始すると、環状部材16が低温であるため、半導体ウエハWの周縁部におけるレジストのエッチングレートが上昇し、選択比が低下してプラズマエッチング処理の面内均一性が低下してしまう。これに対して、上記実施形態では、環状部材16を予め200℃以上の温度に加熱しておくことができるので、プラズマエッチング処理の開始直後から半導体ウエハWの周縁部におけるレジストのエッチングレートが上昇することを抑制することができ、プラズマエッチング処理の面内均一性を向上させることができる。
なお、プラズマエッチングの最中の環状部材16の温度は、プラズマエッチング時間の経過に連れて変動するので、環状部材16の温度を温度計で測定しながら加熱用の光71の照射による加熱を行い、環状部材16の温度を一定に制御することもできる。このような場合、低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術により環状部材16の温度を測定するようにし、光源70からの光を、温度測定用の光として兼用して使用することもできる。
また、真空処理チャンバ2の外側に設けた光源70からの加熱用の光71を、環状部材16の下部に設けられている円環状の石英部材720を介して環状部材16に供給するようにしているので、例えば、環状部材16の内部に誘導発熱部を設け、かつ、真空処理チャンバ内に誘導コイル等を設置した場合等に比べて加熱機構の構成を簡略化することができ、製造コストの増大を抑制することができる。
上述した各実施形態では、円環状の石英部材72又は円環状の石英部材720の内側面、外側面及び底面に反射膜を形成したり、鏡面状に研磨或いはファイャーポリッシュ処理等を施して、円環状の石英部材72又は円環状の石英部材720から外部に加熱用の光71が漏れ出ることを防止した場合について説明した。このように、円環状の石英部材72又は円環状の石英部材720の表面を加工する場合に限らず、例えば図33に示すように、円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)に隣接して、その外部に反射ミラー110を設けてもよい。
この場合、反射ミラー110は、円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)の内側面又は外側面側に設けるよりも低面側に設けた方が、効果が有る。このため、図33に示すように底面側にのみ反射ミラー110を設ける構成としてもよい。なお、図33に示す例では、反射ミラー110は、円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)の底面の形状に合わせて円環状に形成されており、その一部に、加熱用の光71を導入するための開口111が1又は複数形成された構成となっている。なお、図33において112は真空処理チャンバー壁を示している。
図34は、縦軸を温度(℃)、横軸を時間(分)として、反射ミラー110による円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)底面における反射が有る場合と、円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)の低面に黒体を塗布して反射を無くした場合のフォーカスリング15の温度の相違を調べた結果を示すものである。同図において、実線は、加熱用の光源70の電流が50Aで反射ミラー110が有る場合、点線は、加熱用の光源70の電流が45Aで反射ミラー110が有る場合、一点鎖線は、加熱用の光源70の電流が50Aで黒体を塗布した場合を示している。
同図に示されるように、反射ミラー110が有る場合の光源70の電流が45Aの場合と、低面からの反射が無く光源70の電流が50Aの場合の温度が略同一となった。また、反射ミラー110が有る場合の光源70の電流が50Aの場合と、低面からの反射が無く光源70の電流が50Aの場合の温度とを比較すると、反射ミラー110が有る場合の方が、30℃以上温度が高くなった。
このように、円環状の石英部材72(又は円環状の石英部材720)の底面に隣接して反射ミラー110を設ければ、効率的にフォーカスリング15(又は環状部材16)を加熱することができる。なお、この反射ミラー110としては、例えば、Al、Au等の金属表面または金属コーティング表面を鏡面研磨したもの等を用いることができる。
また、フォーカスリング15(又は環状部材16)の加熱効率を高めるためには、加熱用の光71の反射を抑制して吸収効果を向上させるコート材を、フォーカスリング15(又は環状部材16)の底面にコーティングしてもよい。この場合、例えば加熱用の光71の波長の光の反射を防止する反射防止膜(例えば、誘電体多層膜)等を用いることができる。
図35は、前述した実施形態のように、フォーカスリング15を冷却しつつ、フォーカスリング15の外周部に設けられた環状部材(カバーリング)16を加熱する際に、フォーカスリング15をより効率的に冷却できるようにした構成を示すものである。図35に示す例は、サセプタ5に、フォーカスリング15をジョンソンラーベック力を用いて吸着する吸着機構120を設けている。この吸着機構120は、フォーカスリング15の近傍に設けられた電極121と、この電極121に直流電圧を印加するための直流電源122と、直流電源122からの電圧の印加をオン・オフするためのスイッチ123等から構成されている。なお、図35において125は、環状部材16及び円環状の石英部材720の外周側に設けられた石英製部材である。
このように、ジョンソンラーベック力によってフォーカスリング15を吸着する吸着機構120を設け、フォーカスリング15をサセプタ5と密に接触させることにより、フォーカスリング15をサセプタ5と略同一の温度とすることができる。ここで、サセプタ5は、冷媒室7内を循環される冷媒によって一定温度に温度制御されている。したがって、吸着機構120を設けることによってフォーカスリング15を精度良く一定温度に制御することができる。
吸着機構120は、ジョンソンラーベック力を用いたものに限らず、クーロン力を用いたものであってもよい。クーロン力を用いた吸着機構120は、ジョンソンラーベック力を用いたものに比べて吸着力が弱くなる。このため、例えば図36に示すように、フォーカスリング15の裏面とサセプタ5との間に熱伝導を促進するための伝熱媒体(例えばHeガス等)を供給するガス供給機構130を設けることが好ましい。ガス供給機構130は、ガス供給源131と、ガス供給源131からフォーカスリング15の裏面とサセプタ5との間にHeガス等を導入するためのガス流路132と、ガス流路132を開閉するための開閉弁133等から構成されている。
上記のようにガス供給機構130を設ける場合、図37に示すように、半導体ウエハWの裏面とサセプタ5と間に、ガス通路14を介してHeガス等を供給する半導体ウエハWの冷却機構からHeガス等を分岐させてフォーカスリング15の裏面とサセプタ5との間に供給するようにしてもよい。なお、図37において、150は、半導体ウエハWの裏面とサセプタ5と間へのガスの供給路を開閉するための開閉弁である。
また、図38に示すように、ガス供給機構130のみならず、吸着機構120についても、静電チャック11の直流電源13を兼用し、直流電源13から電極121に直流電圧を印加するように構成してもよい。この場合、フォーカスリング15は、消耗等によって交換が必要となるまでは固定されたままであるので、電極121への電圧の印加をオン・オフするためのスイッチ123を設け、直流電源13からの電圧印加のオン・オフを静電チャック11と独立して行えるようにすることが好ましい。なお、図38において、151は、静電チャック11の電極12への直流電圧の印加のオン・オフを行うためのスイッチである。
上述した各実施形態のように、円環状の石英部材72を介してその上部に載置されたフォーカスリング15に加熱用の光71を供給して加熱する構成とした場合、又は円環状の石英部材720を介してその上部に載置された環状部材16に加熱用の光71を供給して加熱する構成とした場合、フォーカスリング15及び環状部材16は、高真空雰囲気下において真空断熱された状態となっており、これらに蓄積された熱は、輻射によりその周囲に放出される。
この場合、円環状の石英部材72はフォーカスリング15に接触した状態で配置されており、円環状の石英部材720は環状部材16に接触した状態で配置されていることから、フォーカスリング15及び環状部材16からの輻射熱によって加熱され易い状態となっている。そして、円環状の石英部材72及び円環状の石英部材720は、誘電体である石英から構成されており、高真空雰囲気下において真空断熱された状態となっていることから熱の逃げ場がなく、円環状の石英部材72及び円環状の石英部材720に熱が保持された状態となる。
このように、円環状の石英部材72及び円環状の石英部材720に熱が保持され、その温度が高くなると、フォーカスリング15及び環状部材16の加熱特性に影響が生じ、同一の条件で加熱用の光71を照射したとしても、フォーカスリング15及び環状部材16を所定の温度に制御することが難しくなる。
このため、円環状の石英部材72とサセプタ5との間、或いは円環状の石英部材720とサセプタ5との間における伝熱を促進するための機構を設けることが好ましい。このような機構の一例を図39に示す。同図に示す例では、サセプタ5と円環状の石英部材72との間等に、複数のOリング141を配設して、これらのOリング141の間に気密に閉塞された空間142を形成し、この空間142にガス供給源131から伝熱用のガス、例えばヘリウムガスを供給するよう構成されている。このような構成とすることで、同図に矢印で示すように、フォーカスリング15から円環状の石英部材72に伝わった熱が、空間142内の伝熱用ガスを介してサセプタ5に逃げ、円環状の石英部材72の温度が不所望に上昇することを防止することができる。なお、図35〜38に示した実施形態の円環状の石英部材720とサセプタ5との間に上記のような空間142を形成してここに伝熱用のガスを供給するようにしてもよい。この場合、環状部材16から円環状の石英部材720に伝わった熱が、空間142内の伝熱用ガスを介してサセプタ5に逃げ、円環状の石英部材720の温度が不所望に上昇することを防止することができる。
図40は、円環状の石英部材72及び円環状の石英部材720の代わりに、セラミックス等からなる円環状の絶縁部材721中に埋設した複数の円柱状の石英部材722を加熱用の光の光路として用いた実施形態の要部構成を模式的に示したものである。図40(a)は、円環状の絶縁部材721及び円柱状の石英部材722等の上面構成を示し、図40(b)は、縦断面構成を示している。なお、図40中、723は、円環状の絶縁部材721の内周側に設けられ、セラミックス等からなる円環状に形成された内周側絶縁部材を示している。
この実施形態では、各円柱状の石英部材722の下方に、夫々LED光源からなる加熱用の光源70を設け、これらの加熱用の光源70からの加熱用の光71を、石英部材722中を透過させてフォーカスリング15に供給するようになっている。なお、図40では、フォーカスリング15を加熱する場合の例を示したが、環状部材16を加熱する場合についても同様な構成とすることができる。また、円柱状の石英部材722の代わりに、他の材料、例えば、溶融石英、サファイヤ、透明イットリア、又はGe、ZnSe、ZnS、GaAs、CaF2、BaF2、MgF2、LiF、KBr、KCl、NaCl、MgOのいずれかからなる光学材料等からなる円柱状の部材を用いてもよい。
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、プラズマエッチング装置は、図1,13に示した平行平板型の上下部高周波印加型に限らず、例えば、下部電極にのみ1又は2周波の高周波電力を印加するタイプのプラズマエッチング装置、マイクロ波プラズマを用いたプラズマエッチング装置や誘導結合プラズマを用いたプラズマエッチング装置等を使用することができる。