実施の形態1
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に実施の形態1にかかる無線通信装置10、20を有する無線通信システム1のブロック図を示す。図1に示すように、無線通信システム1は、無線通信装置10、20のそれぞれに設けられたアンテナANT1、ANT2を介して無線通信を行う。この無線通信は、例えば、バックホール無線通信である。
無線通信装置10、20は、適応変調機能を有するものとする。ここで、例えば、特許文献4に記載されたように、無線通信では変調方式に関して、例えば、1つのキャリヤを用いて1つのデータの送受信を行うQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)のような変調方式をシングルキャリヤ変調方式と称し、1組の複数のキャリヤを用いて同時に複数のデータを送信するOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)のような変調方式をマルチキャリヤ変調方式と称することがある。しかし、以下の説明では、占有無線帯域を1つの変調方式の変調波で占有している状態をシングルキャリヤ、占有無線帯域を複数の変調方式の変調波で占有している状態をマルチキャリヤと称す。
また、無線通信装置10は、携帯通信端末と通信を行う基地局として機能する。無線通信装置20は、無線通信装置10との間でバックホール無線通信を行う局舎として機能する。なお、図1では無線通信装置10、20のいずれにおいても、バックホール無線通信に必要な機能ブロックのみを示し、他の機能のための機能ブロックの記載は省略した。
無線通信装置10は、基地局バックホール無線通信装置11、制御部12を有する。基地局バックホール無線通信装置11は、アンテナANT1を介して制御部12から出力される送信データを無線信号として出力すると共に、アンテナANT1を介して受信した受信信号から受信データを復号して制御部12に出力する。制御部12は、送信データ及び受信データに応じて基地局バックホール無線通信装置11の変調方式及び占有無線帯域幅等を制御する。
基地局バックホール無線通信装置11は、回線切り替えスイッチ15、第1の変復調器(例えば、変復調器16)、第1の増幅器(例えば、電力増幅器17)、第2の変復調器(例えば、変復調器18)、第2の増幅器(例えば、電力増幅器19)を有する。実施の形態1では、変復調器16及び電力増幅器17により第1の通信経路を構成する。第1の通信経路は、例えば、無線通信装置20等の他の無線通信装置との間で無線通信を行う。また、実施の形態1では、変復調器18及び電力増幅器19により第2の通信経路を構成する。第2の通信経路は、例えば、無線通信装置20等の他の無線通信装置との間で無線通信を行う。
変復調器16、18は、実質的に同じ機能を有する。変復調器16、18は、制御部12からの指示に基づき変調方式を切り替える。例えば、変復調器16、18は、変調多数値がQPSK、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、32QAM、64QAM、128QAM、256QAM、512QAM、1024QAM、2048QAMになる変調方式を扱うことが可能であり、制御部12からの指示に基づきこれらの変調方式のいずれか1つを選択して送信データを変調する。また、変復調器16、18は、変調に用いるローカル信号の周波数を切り替えて無線信号の変調帯域を切り替えて無線信号の占有帯域幅を切り替える。例えば、変復調器16、18は、占有帯域幅を56MHz、40MHz、16MHzに切り替えることができる。
電力増幅器17、19は、実質的に同じ機能を有する。電力増幅器17、19は、変復調器16、18で処理された信号の電力を増幅してアンテナANT1を駆動すると共にアンテナANT1を介して受信した受信信号の電力を増幅して変復調器16、18に出力する。また、電力増幅器17、19は、変復調器の変調多数値或いは変調帯域毎にレベルダイヤを切り替える。このレベルダイヤを切り替える際には、変調多数値或いは変調帯域が変復調器と電力増幅器との間で異なる時間帯が必ず発生するため、変調多数値或いは変調帯域を切り替えの手順には考慮しなければならない点がある。変調多数値或いは変調帯域の切り替え手順の詳細は後述する。
回線切り替えスイッチ15は、制御部12からの指示に応じて、第1の通信経路と第2の通信経路とに送信データを振り分ける。また、詳しくは後述するが、無線通信装置10では、変調帯域の切り替え処理において回線が一時的に切断される期間がある。そのため、回線切り替えスイッチ15は運用中の回線に対し「回線輻輳回避のため回線切り替え中」である旨のアナウンス等を送信する機能を有する。
制御部12は、第1の通信経路及び第2の通信経路が無線通信に用いる占有帯域幅と変調方式とを外部から与えられる経路開設指示に基づき切り替える。より具体的には、制御部12は、経路開設指示(例えば、緊急呼)が与えられていない通常状態においては、第1の通信経路と第2の通信経路とに対して1つの変調方式を設定して、第1の通信経路及び第2の通信経路に無線通信を実行させる。実施の形態1では、通常状態においては、無線通信装置10は、第1の通信経路を動作させると共に第2の通信経路を停止させて、1つの変調方式の無線信号により占有無線帯域の全部を利用するシングルキャリヤで無線通信を行う。
また、制御部12は、経路開設指示(例えば、緊急呼)を検出したことに応じて、第1の通信経路と第2の通信経路とのうち一方の通信経路の変調方式及び占有帯域幅の少なくとも一方を変更して通常状態で行われていた無線通信の回線速度を維持し、他方の通信経路に一方の通信経路とは異なる変調方式による無線通信を指示する。実施の形態1では、無線通信装置10は、新たに経路を開設する場合、第1の通信経路に加えて第2の通信経路を動作させる。そして、無線通信装置10は、第1の通信経路の変調方式及び占有帯域幅を変更することで空いた帯域幅で第2の通信経路による通信を行う。
制御部12は、処理部13、基地局バックホール制御部14を有する。処理部13は、通常呼、或いは、緊急呼等の外部から入力される入力信号Sinに応じて基地局バックホール制御部14に基地局バックホール無線通信装置11を制御のための指示を与えると共に、送信データを出力する。また、処理部13は、基地局バックホール無線通信装置11を介して入力される受信データに応じて基地局バックホール制御部14に基地局バックホール無線通信装置11を制御するための指示を与えると共に携帯端末側に伝達する送信データを生成する。
無線通信装置20は、局舎バックホール無線通信装置21、制御部22を有する。局舎バックホール無線通信装置21は、回線切り替えスイッチ25、第1の変復調器(例えば、変復調器26)、第1の増幅器(例えば、電力増幅器27)、第2の変復調器(例えば、変復調器28)、第2の増幅器(例えば、電力増幅器29)を有する。制御部22は、処理部23、局舎バックホール制御部24を有する。
回線切り替えスイッチ25、変復調器26、電力増幅器27、変復調器28、電力増幅器29、処理部23、局舎バックホール制御部24は、回線切り替えスイッチ15、変復調器16、電力増幅器17、変復調器18、電力増幅器19処理部13、基地局バックホール制御部14と実質的に同じものであるためここでは説明を省略する。なお、実施の形態1では、無線通信装置20は、通常呼、或いは、緊急呼を無線通信装置10との間の通信により検出する。
上記説明のように、実施の形態1にかかる無線通信装置10、20は、それぞれ第1の通信経路及び第2の通信経路を有し、緊急呼があった場合に第2の通信経路を動作させる。そこで、以下の説明では、第2の通信経路に属する変復調器18、電力増幅器19、変復調器28、電力増幅器29をそれぞれ、予備変復調器18、予備電力増幅器19、予備変復調器28、予備電力増幅器29と称す
また、実施の形態1にかかる無線通信装置10、20は、適応変調機能を有する。そこで、無線通信装置10、20において用いられる変調多数値と占有無線帯域幅との関係を図2に示す。
図2に示す例では、変調多数値の欄に記載された値は下に行くほど多数値が大きくなる。図2に示すように、通信速度は、占有無線帯域幅が同じであれば、変調多数値が大きくなるほど高くなる。また、通信速度は、変調多数値が同じであれば、占有無線帯域幅が大きくなるほど高くなる。
実施の形態1にかかる無線通信システム1では、通常呼による通信が確立されている状態で緊急呼があった場合には、通常呼で使われている通信路の変調多数値と占有無線帯域幅とを変更し、空いた帯域幅で緊急呼の通信路を確保する。例えば、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、通常呼の通信路が占有無線帯域幅が56MHz、変調方式が32QAM、通信速度が196Mbpsで確立されている状態で緊急呼が生じた場合、通常呼の通信路を、占有無線帯域幅を40MHz、変調方式を128QAM、通信速度を196Mpbsに変更する。そして、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、緊急呼の通信路を、占有無線帯域幅を16MHz、変調方式を32QAM、通信速度を49Mbpsで確立する。
そこで、実施の形態1にかかる無線通信システム1において通常呼による通信路が確立されている状態で緊急呼が生じた場合の回線切り替え手順を図3に示し、当該回線切り替え手順について説明する。
図3に示すように、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、通常呼の通信路(例えば、バックホール通信)が確立されている通常使用状態では、割り当てられている占有無線帯域の全体を利用して、1つの変調方式の無線信号を利用するシングルキャリヤの通信が行われている。
そして、実施の形態1にかかる無線通信装置10にて緊急呼が検出された場合、無線通信システム1は第1の回線切替処理を実施する。この第1の回線切替処理では、バックホール回線の変調方式を32QAMから128QAMに切り替える。これにより、バックホール回線の回線速度は、196Mbpsから274Mbpsに上昇する。
続いて、実施の形態1にかかる無線通信システム1は、第2の回線切替処理を実施する。この第2の回線切替処理では、無線通信システム1はバックホール通信の占有無線帯域幅を56MHzから40MHzに切り替える。これにより、バックホール通信の通信速度は、274Mbpsから196Mbpsに戻る。この第2の回線切替処理により、占有無線帯域に16MHzの空き帯域が生じる。
続いて、実施の形態1にかかる無線通信システム1は、第2の回線切替処理で空き帯域となった帯域に緊急呼の通信路(例えば、非常用通信)を確立する。この非常用通信は、占有無線帯域幅が16MHz、変調方式が32QAM、通信速度が49MHzで確立される。
以上のように、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、割り当てられた占有無線帯域の制限の範囲内で、バックホール通信の通信速度を維持しながら、緊急呼が発生した場合にのみ非常用通信を確立することができる。
ここで、図3に示した手順で非常用通信を確立するための無線通信装置10と無線通信装置20との間の処理について更に詳細に説明する。そこで、図4に実施の形態1にかかる無線通信システム1における非常用通信回線の開設手順を示すシーケンス図を示す。
図4に示すように、実施の形態1にかかる無線通信システム1は、通常呼による通信を行っている状態で基地局側の制御部12で緊急呼が検出された場合、当該緊急呼を基地局側の制御部12から局舎側の制御部22に通知する。これにより、無線通信装置20の制御部22は、非常用回線の設置処理を開始する。無線通信装置20の制御部22は、非常用回線の設置処理の開始したことに応じて、まず、変調多数値変更処理を実施する。変調多数値切り替え処理では、まず、無線通信装置20の制御部22は、変調多数値変更通知を局舎バックホール無線通信装置21に与える。また、無線通信装置20の制御部22は、局舎バックホール無線通信装置21を介して無線通信装置10の制御部12に変調多数値変更通知を通知する。そして、制御部12は、基地局バックホール無線通信装置11に変調多数値変更指示を与える。これにより、局舎バックホール無線通信装置21の変復調器26及び基地局バックホール無線通信装置11の変復調器16は、対応する制御部からの指示に応じて変調多数値の切り替え処理を実施する。そして、変調多数値の切り替え処理が完了すると、無線通信装置10は、基地局バックホール無線通信装置11を介して、変調多数値変更完了通知を無線通信装置20の制御部22に通知する。
続いて、無線通信装置20の制御部22は、変調帯域の切り替え処理を開始する。変調帯域切り替え処理では、まず、無線通信装置20の制御部22は、変調帯域変更通知を局舎バックホール無線通信装置21に与える。また、無線通信装置20の制御部22は、局舎バックホール無線通信装置21を介して無線通信装置10の制御部12に変調帯域変更通知を通知する。そして、制御部12は、基地局バックホール無線通信装置11に変調帯域変更指示を与える。これにより、局舎バックホール無線通信装置21と基地局バックホール無線通信装置11とは、回線を切断する。なお、回線切断状態の期間は、回線切り替えスイッチ15が伝送処理中のバックホール通信に対して回線輻輳回避のため回線切り替え中である旨のアナウンスを相手側の無線通信装置に通知する。
その後、変復調器26及び変復調器16は、対応する制御部からの指示に応じて変調帯域の切り替え処理を実施する。そして、変調帯域の切り替え処理が完了すると、基地局バックホール無線通信装置11と局舎バックホール無線通信装置21は回線を復旧させる。また、無線通信装置10は、基地局バックホール無線通信装置11を介して、変調帯域変更完了通知を無線通信装置20の制御部22に通知する。なお、変調帯域が変更された後に無線通信装置10と無線通信装置20とは、適応変調機能を用いて変調方式を変更して通信速度を元の通信速度に戻す。
続いて、無線通信装置20の制御部22は、局舎バックホール無線通信装置21に予備機器起動指示を与える。これにより、局舎バックホール無線通信装置21の予備変復調器28及び予備電力増幅器29が起動する。また、無線通信装置20の制御部22は、局舎バックホール無線通信装置21を介して無線通信装置10の制御部12に基地局側の予備機器起動指示を通知する。制御部12は、基地局バックホール無線通信装置11に基地局予備機器起動指示を与える。これにより、基地局バックホール無線通信装置11の予備変復調器18及び予備電力増幅器19が起動する。そして、無線通信装置10の予備変復調器18及び電力増幅器19と、無線通信装置20の予備変復調器28及び予備電力増幅器29との間で非常用無線通信路が構築される。これにより、無線通信システム1では、通常呼が利用するバックホール通信と、緊急呼が利用する非常用通信と、が確立される。なお、無線通信システム1では、制御部12の指示に基づき回線切り替えスイッチ15が緊急呼を変復調器18に振り分けることで、非常用通信路を介して緊急呼が無線通信装置20に伝達される。
ここで、変調多数値の切り替え処理と、変調帯域の切り替え処理と、については増幅器の設定を切り替えるタイミングが重要になる。そこで、変調多数値切り替え処理と変調帯域切り替え処理とについて更に詳細に説明する。
まず、図5に実施の形態1にかかる無線通信システムにおける変調多値数切り替え処理の詳細な処理手順を示すシーケンス図を示す。
図5に示すように、無線通信システム1では、非常用回線の設置処理が開始されたことに応じて、無線通信装置20の制御部22が基地局の送信側変調多数値変更指示を局舎バックホール無線通信装置21に出力する。そして、局舎バックホール無線通信装置21は、受信した基地局の送信側変調多数値変更指示に応じて送信変調多数値変更通知を無線通信装置10の基地局バックホール無線通信装置11に通知する。
これにより、基地局バックホール無線通信装置11では、電力増幅器17の送信電力増幅器のレベルダイヤを変更後の変調多数値に応じた値に変更する。そして、電力増幅器17はレベルダイヤの変更が完了したことに応じて送信器設定完了通知を局舎バックホール無線通信装置21に通知する。局舎バックホール無線通信装置21は、受信した送信器設定完了通知に応じて電力増幅器27の送信電力増幅器のレベルダイヤを変更後の変調多数値に応じて変更する。局舎バックホール無線通信装置21の送信電力増幅器のレベルダイヤの変更が完了したことに応じて、変調多数値切替タイミング通知を基地局バックホール無線通信装置11に通知する。
基地局バックホール無線通信装置11は、変調多数値切替タイミング通知に応じて変復調器16の変調器の変調多数値を送信変調多数値変更通知により通知された変調多数値に変更する。この変調多数値の変更は通信状態に関わらず強制的に行われるものである。また、局舎バックホール無線通信装置21は、変調多数値切替タイミング通知を出力した後に、自身の変復調器26の復調器の変調多数値を変更する。このように、基地局バックホール無線通信装置11の変復調器16の変調器の変調多数値の変更処理と、局舎バックホール無線通信装置21の変復調器26の復調器の変調多数値の変更処理と、を行うことで、基地局(例えば、無線通信装置10)の送信側変調多数値の変更処理が実施される。そして、無線通信装置10から無線通信装置20に向かう通信経路の変調多数値の変更が完了すると局舎バックホール無線通信装置21は、制御部22に基地局の送信側変調多数値の変更が完了したことを通知する。
続いて、無線通信装置20の制御部22は、無線通信装置10の制御部12に基地局の受信側変調多数値変更通知を出力する。制御部12は、基地局受信側変調多数値変更通知に応じて、基地局バックホール無線通信装置11の変復調器16に受信側変調多数値を強制的に切り替えるように指示する。基地局バックホール無線通信装置11は、当該指示に基づき受信変調多数値変更通知を局舎バックホール無線通信装置21に通知する。
局舎バックホール無線通信装置21は、受信変調多数値変更通知に応じて電力増幅器27の受信電力増幅器のレベルダイヤを変更後の変調多数値に応じて変更する。そして、局舎バックホール無線通信装置21は、電力増幅器27の受信電力増幅器のレベルダイヤの変更が完了したことに応じて送信器設定完了通知を基地局バックホール無線通信装置11に通知する。基地局バックホール無線通信装置11は、受信した送信器設定完了通知に応じて、電力増幅器17の受信電力増幅器のレベルダイヤを変更後の変数多数値に応じて変更する。その後、基地局バックホール無線通信装置11は、電力増幅器17の受信電力増幅器のレベルダイヤの変更が完了したことに応じて変調多数値切替タイミング通知を局舎バックホール無線通信装置21に通知する。
そして、この通知に応じて局舎バックホール無線通信装置21の変復調器26の変調器の変調多数値が変更される。また、基地局バックホール無線通信装置11は、変調多数値切替タイミング通知を局舎バックホール無線通信装置21に通知した後に、変復調器16の変調器の変調多数値を変更する。このように、基地局バックホール無線通信装置11の変復調器16の復調器の変調多数値の変更処理と、局舎バックホール無線通信装置21の変復調器26の変調器の変調多数値の変更処理と、を行うことで、基地局(例えば、無線通信装置10)の受信側変調多数値の変更処理が実施される。そして、無線通信装置20から無線通信装置10に向かう通信経路の変調多数値の変更が完了すると局舎バックホール無線通信装置21は、制御部22に基地局の受信側変調多数値の変更が完了したことを通知する。
ここで、変調多数値切り替え処理における電力増幅器のレベルダイヤの設定について補足的な説明をする。実施の形態1にかかる無線通信システム1では、上記説明のように、変調方式の切り替え処理を行う際に電力増幅器17等の増幅器のレベルダイヤを調節する。これは、変調波毎に歪みが発生する信号レベルが異なるためである。例えば、電力増幅器が32QAMのレベルダイヤになっている状態で128QAMの変調波を入力すると、特に送信側電力増幅器で歪みによりエラーが発生してしまう。従って、変調多数値を上げる場合には、歪みによるエラーの発生を抑制するためには、送信側電力増幅器のレベルダイヤを変復調器の変調多数値よりも先に切り替える必要がある。
逆に、多値数を下げる場合は、電力増幅器の特に受信側電力増幅器のAGC(Auto Gain Control)で追従可能な例えば100dB/sec(decibel per Second)のRSL劣化に追従して変調多数値を次々に切り替える必要がある。電力増幅器が128QAMの変調方式に対応したレベルダイヤになっている状態で32QAMの変調波を入力しても、特に受信側電力増幅器で歪みは発生しないため、電力増幅器のレベルダイヤよりも先に変復調器の変調多数値を切り替えても問題がない。
次いで、図6に実施の形態1にかかる無線通信システムにおける変調帯域切り替え処理の詳細な処理手順を示すシーケンス図を示す。
図6に示すように、無線通信システム1では、変調帯域を変更する場合、まず、無線通信装置20の制御部22が局舎バックホール無線通信装置21に基地局送信側変調帯域変更指示を与える。局舎バックホール無線通信装置21は、基地局送信側変調帯域変更指示に応じて変復調器26の復調器の変調帯域の設定を完了させる。これにより、無線通信装置10において送信に用いる変調帯域と無線通信装置20において受信に用いる変調帯域とがずれるため無線通信装置10から無線通信装置20への通信回線が切断される。
続いて、無線通信装置20の局舎バックホール無線通信装置21は、無線通信装置10の基地局バックホール無線通信装置11に基地局変調帯域変更指示を送信する。そして、基地局バックホール無線通信装置11は、受信した変調帯域変更指示に応じて変復調器16の変調器の変調帯域を変更する。この変復調器16の変調器の変調帯域の設定変更が完了したことに応じて無線通信装置10と無線通信装置20は同期処理を行い、局舎バックホール無線通信装置21側で同期処理が完了すると基地局の送信側回線が復旧する。
続いて、局舎バックホール無線通信装置21は、基地局送信電力設定通知を出力すると共に、基地局送信側変調帯域変更完了通知を制御部22に通知する。これにより、基地局バックホール無線通信装置11では、電力増幅器17の送信電力増幅器のレベルダイヤを変更後の変調帯域に応じて設定する。また、制御部22は、無線通信装置20から無線通信装置10への通信経路の変調帯域の変更処理を開始する。
無線通信システム1では、無線通信装置20から無線通信装置10への通信経路の変調帯域の変更処理を開始すると、まず、無線通信装置20の制御部22から無線通信装置10の制御部12に基地局受信側変調帯域変更指示を与える。制御部12は、受信した基地局受信側変調帯域変更指示に応じて、基地局バックホール無線通信装置11に受信側の変調帯域を変更することを指示する。基地局バックホール無線通信装置11は、当該指示を受けて変復調器16の復調器の変調帯域を変更する。これより、無線通信装置10において受信に用いる変調帯域と無線通信装置20において送信に用いる変調帯域とがずれるため無線通信装置20から無線通信装置10への通信回線が切断される。
続いて、無線通信装置10の基地局バックホール無線通信装置11は、無線通信装置20の局舎バックホール無線通信装置21に局舎変調帯域変更指示を送信する。そして、局舎バックホール無線通信装置21は、受信した変調帯域変更指示に応じて変復調器26の変調器の変調帯域を変更する。この変復調器26の変調器の変調帯域の設定変更が完了したことに応じて無線通信装置20と無線通信装置10は同期処理を行い、基地局バックホール無線通信装置11側で同期処理が完了すると基地局の受信側回線が復旧する。
続いて、基地局バックホール無線通信装置11は、局舎送信電力設定通知を出力する。そして、局舎バックホール無線通信装置21が、局舎送信電力設定通知に応じて電力増幅器27の送信電力増幅器のレベルダイヤの変更を実施する。局舎バックホール無線通信装置21は、電力増幅器17の送信電力増幅器のレベルダイヤの変更が完了すると、基地局受信側変調帯域変更完了通知を制御部22に通知する。これにより、変調帯域切り替え処理が完了する。
ここで、変調帯域の切り替えに伴う増幅器のレベルダイヤの設定について補足的な説明を行う。電力増幅器は、変調帯域毎に個別のレベルダイヤを持っているため、変復調器の変調帯域の切り替えに合わせて、レベルダイヤも切り替える必要がある。このとき、電力増幅器と変復調器で変調帯域が異なる時間が必ず発生するため、切り替え手順を考慮する必要がある。
例として、変調帯域を広げる場合を考える。電力増幅器17が40MHzのレベルダイヤになっている状態で56MHzの変調波を入力すると、特に送信側電力増幅器で歪みによりエラーが発生してしまう。従って、送受信電力増幅器のレベルダイヤを変復調器の変調帯域よりも先に切り替える必要がある。
逆に、変調帯域を狭くする場合は、100dB/secのRSL劣化に追従して変調帯域を次々に切り替える必要がある。電力増幅器のレベルダイヤが56MHzになっている状態で40MHzの変調波を入力しても歪みは発生しないため、電力増幅器よりも先に変復調器の変調方式を切り替えても問題がない。
図5及び図6を用いて説明したように、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、受信側無線通信装置から送信側無線通信装置に対して変調多数値或いは変調帯域を変更する制御を行う。これは、適応変調機能を持った無線通信装置の制御機能を利用しているためである。一方、変調方式の切り替え処理が、伝播路が劣悪な場合に変調多数値を下げて伝送エラーの発生確率を下げる目的で用いられる場合は、受信側の回線品質情報を元に変調多数値が切り替えられるため、受信側から送信側に対して変調多数値の変更を指示する。
上記において説明したように、実施の形態1にかかる無線通信システム1において用いられる制御方法は、第1の変復調器と第1の増幅器とを備え、他の無線通信装置との間で無線通信を行う第1の通信経路と、第2の変復調器と第2の増幅器とを備え、前記他の無線通信装置との間で無線通信を行う第2の通信経路と、第1の通信経路及び第2の通信経路が無線通信に用いる占有帯域幅と変調方式とを外部から与えられる経路開設指示に基づき切り替える制御部と、を有する無線通信装置の制御方法である。また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、制御部によって、経路開設指示(例えば、緊急呼)が与えられていない通常状態においては、第1の通信経路と第2の通信経路とに対して1つの変調方式を設定して、第1の通信経路及び第2の通信経路に無線通信を実行させる。また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、制御部によって、経路開設指示を検出したことに応じて、第1の通信経路と第2の通信経路とのうち一方の通信経路の変調方式及び占有帯域幅の少なくとも一方を変更して通常状態で行われていた無線通信の回線速度を維持し、他方の通信経路に一方の通信経路とは異なる変調方式による前記無線通信を指示する。
また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、制御部12及び制御部22をコンピュータ等の演算装置で実現し、制御部12及び制御部22において通信制御プログラムを実行する形態とすることもできる。この場合、通信制御プログラムは、経路開設指示(例えば、緊急呼)が与えられていない通常状態においては、第1の通信経路と第2の通信経路とに対して1つの変調方式を設定して、第1の通信経路及び第2の通信経路に無線通信を実行させる。また、通信制御プログラムは、制御部によって、経路開設指示を検出したことに応じて、第1の通信経路と第2の通信経路とのうち一方の通信経路の変調方式及び占有帯域幅の少なくとも一方を変更して通常状態で行われていた無線通信の回線速度を維持し、他方の通信経路に一方の通信経路とは異なる変調方式による前記無線通信を指示する。
上記説明より、実施の形態1にかかる無線通信装置10、20を含む無線通信システム1は、通常状態において割り当てられた占有無線帯域を1つの変調方式の無線信号で占有するシングルキャリヤで運用し、緊急呼が検出された場合には、割り当てられた占有無線帯域を2つの変調方式の無線信号で共有するマルチキャリヤで運用することができる。また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、無線帯域の運用をシングルキャリヤからマルチキャリヤに切り替えた場合においても、シングルキャリヤで運用していた通信路の通信速度を維持することができる。このような運用が可能になることにより、割り当てられた占有無線帯域の一部を無駄にすることなく効率的な無線帯域の運用が可能になる。より具体的には、実施の形態1にかかる無線通信システム1を用いることで、網輻輳の回避と、非常用通信路の安定的な確保とを両立することができる。
この効果について更に詳細に説明する。携帯電話等の無線通信システムでは、通常、バックホール通信路をシングルキャリヤで運用する。このとき、バックホール通信路の伝送容量を超えると網輻輳の問題が生じる。この網輻輳が生じる原因は、バックホール無線通信路は、発呼率や待ち行列理論等に基づき、携帯電話などの移動端末と基地局間或いは子局と基地局間で無線通話チャネルの全てが利用される状態を想定した回線設計が必ずしもされていないためである。例えば、固定電話の場合、実際の発呼率(使用率)は1%程度であることが知られており、そのような回線に、100%の使用率を想定した伝送路を構築、維持することは事業者にとって過剰投資となってしまい現実的でない。このような事情を考慮して、通常、バックホール通信路は、2〜3%の使用率を想定して構築される。従って、通信が集中等の原因により、バックホール通信路の想定を超えた通信が発生することがあり、このような想定を超えた通信が発生すると網輻輳の問題が発生する。
また、無線通信では、伝搬路の状況の変化に対応する必要があるため、無線通信装置に適応変調機能を実装する。例えば、伝搬路の状況は、雨天時には悪化して通信速度が低下し、晴天時には良好な状態となり通信速度が向上する。そこで、無線通信では、適応変調機能を実装することで、雨天時には変調多数値を下げて伝送エラー発生確率を下げて通信品質を確保し、晴天時には変調多数値を上げて一定の伝送エラー率を確保しながら通信速度を高める等の運用を行う。
また、通信事業者は、災害が発生したような場合には非常用通信路を確実に確保しなければならない事情がある。この非常用通信路は、通常利用されるバックホール通信の状態に関わらず確実に確保しなければならないため、例えば、特許文献1〜5に記載の技術では、割り当てられた占有無線帯域幅の一部を常に非常用通信路のために利用していた。そのため、従来は、適応変調機能を無線通信装置に実装していたとしても、利用頻度が非常に低い非常用通信路に割り当てられた占有無線帯域幅の一部を使わなければならず、割り当てられた占有無線帯域幅を十分に効率的に利用することができない問題があった。
しかしながら、実施の形態1にかかる無線通信システム1によれば、通常状態では、割り当てられた占有無線帯域幅の全てをシングルキャリヤで運用して高い通信速度を確保指ながら、緊急呼が検出された場合のみ割り当てられた占有無線帯域幅をマルチキャリヤで運用することができる。また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、シングルキャリヤからマルチキャリヤに運用方法を切り替えた場合であっても適応変調機能及び変調帯域の変更手段を利用して、通常呼が利用するバックホール通信路の通信速度を維持することができる。これにより、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、緊急呼が検出された場合には確実に非常用通信路を確保しながら、通常状態では、割り当てられた占有無線帯域幅の全体を利用して高い伝送容量を実現して網輻輳が発生する可能性を低減することができる。
また、実施の形態1にかかる無線通信システム1では、バックホール通信の占有無線帯域を狭くする場合に、変調多数値を上げて回線速度を上昇させた後に変調帯域を狭くする。これにより、実施の形態1にかかる無線通信システム1は、変調帯域の切り替え処理中に通常呼の過剰なトラフィックにより網輻輳が発生することを防止することができる。
更に、実施の形態1にかかる無線通信システム1を用いることで、冗長な通信路を確保する必要がないため、伝送容量に対する設備投資を抑制することができる。
実施の形態2
実施の形態1では、通常状態にいては割り当てられた占有無線帯域をシングルキャリヤで運用し、緊急呼が検出された場合にマルチキャリヤに切り替える方法について説明した。実施の形態2では、通常状態と緊急呼が検出された非常状態との両方で割り当てられた占有無線帯域をマルチキャリヤで運用する方法について説明する。そこで、図7に実施の形態2にかかる無線通信システム2のブロック図を示す。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素或いは同等の構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、実施の形態2にかかる無線通信システム2は、実施の形態1の無線通信装置10及び無線通信装置20に代えて、無線通信装置30及び無線通信装置40を有する。また、無線通信装置30は、実施の形態1の基地局バックホール無線通信装置11に代えて、基地局バックホール無線通信装置31を有する。無線通信装置40は、実施の形態1の局舎バックホール無線通信装置21に代えて、局舎バックホール無線通信装置41を有する。
基地局バックホール無線通信装置31は、実施の形態1の変復調器18及び電力増幅器19に代えて、変復調器32及び電力増幅器33を有する。この変復調器32及び電力増幅器33は、基地局側の第2の変復調器及び第2の増幅器として機能するものである。また、局舎バックホール無線通信装置41は、実施の形態1の変復調器28及び電力増幅器29に代えて、変復調器42及び電力増幅器43を有する。変復調器42及び電力増幅器43は、局舎側の第2の変復調器及び第2の増幅器として機能するものである。
実施の形態2にかかる無線通信システム2では、通常状態において、変復調器32、電力増幅器33、変復調器42及び電力増幅器43を動作させる。これにより、無線通信システム2では、通常状態と非常状態のいずれの状態においても、第1の通信経路と第2の通信経路とによるマルチキャリヤ通信を実現する。
ここで、実施の形態2にかかる無線通信装置における変調多数値と通信速度との関係を示す表を図8に示す。図8に示すように、実施の形態2にかかる無線通信装置では、利用する占有無線帯域幅が実施の形態1とは異なるものの、占有無線帯域幅及び変調多数値と、通信速度との関係は実施の形態1と同じである。
続いて、実施の形態2にかかる無線通信システム2の回線切り替え手順について説明する。そこで、図9に実施の形態2にかかる無線通信システム2における通常呼による通信路が確立されている状態で緊急呼が生じた場合の回線切り替え手順を説明する図を示す。
図9に示すように、実施の形態2にかかる無線通信システム2では、通常呼の通信路(例えば、バックホール通信)が確立されている通常使用状態では、割り当てられている占有無線帯域の全体を2つのバックホール通信が利用している状態となる。図9では、2つのバックホール通信を区別するために、バックホール通信A、Bと記載した。図9に示す例では、バックホール通信A、Bがいずれも同じ占有無線帯域幅、変調方式及び通信速度となっているが、2つのバックホール通信が異なる通信経路により確立されているため、これらの通信に用いられるキャリヤは互いに独立しているため、マルチキャリヤ通信と考えることができる。
そして、実施の形態2にかかる無線通信装置30にて緊急呼が検出された場合、無線通信システム2は第1の回線切替処理を実施する。この第1の回線切替処理では、バックホール通信Aの変調方式を32QAMから128QAMに切り替える。これにより、バックホール回線Aの回線速度は、98Mbpsから196Mbpsに上昇する。
続いて、実施の形態2にかかる無線通信システム2は、第2の回線切替処理を実施する。この第2の回線切替処理では、無線通信システム2はバックホール通信Bの通信を停止する。この第2の回線切替処理により、占有無線帯域に28MHzの空き帯域が生じる。
続いて、実施の形態2にかかる無線通信システム2は、第2の回線切替処理で空き帯域となった帯域に緊急呼の通信路(例えば、非常用通信)を確立する。この非常用通信は、占有無線帯域幅が28MHz、変調方式が32QAM、通信速度が98MHzで確立される。
実施の形態2にかかる無線通信システム2では、図9で示した回線切り替え処理を実施の形態1の図4〜図6で説明した手順に沿って実施する。
以上のように、実施の形態2にかかる無線通信システム2では、実施の形態1にかかる無線通信システム1と同様に、割り当てられた占有無線帯域の制限の範囲内で、バックホール通信の通信速度を維持しながら、緊急呼が発生した場合にのみ非常用通信を確立することができる。なお、バックホール通信A、Bの占有無線帯域の分割方法は、上記実施の形態2の説明のように、占有無線帯域を等分する例に限られず、例えば、40MHzと16MHzとに分ける等、任意に設定できる。
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態2と同様に、通常状態と緊急呼が検出された非常状態との両方で割り当てられた占有無線帯域をマルチキャリヤで運用する方法について説明する。なお、実施の形態3では、占有無線帯域を3つのキャリヤを用いたマルチキャリヤで運用する。そこで、図10に実施の形態3にかかる無線通信システム3のブロック図を示す。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1、2と同じ構成要素或いは同等の構成要素については実施の形態1、2と同じ符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、実施の形態3にかかる無線通信システム3は、実施の形態1の無線通信装置10及び無線通信装置20に代えて、無線通信装置50及び無線通信装置60を有する。また、無線通信装置50は、実施の形態1の基地局バックホール無線通信装置11に代えて、基地局バックホール無線通信装置51を有する。無線通信装置60は、実施の形態1の局舎バックホール無線通信装置61に代えて、局舎バックホール無線通信装置61を有する。
基地局バックホール無線通信装置51は、実施の形態1の基地局バックホール無線通信装置11に第3の変復調器(例えば、変復調器32)及び第3の増幅器(例えば、電力増幅器33)を追加したものである。実施の形態3では、変復調器16及び電力増幅器17により第1の通信経路を構成し、変復調器18及び電力増幅器19により第2の通信経路を構成し、変復調器32及び電力増幅器33により第3の通信経路を構成する。また、局舎バックホール無線通信装置61は、実施の形態1の局舎バックホール無線通信装置21に第3の変復調器(例えば、変復調器42)及び第3の増幅器(例えば、電力増幅器43)を追加したものである。実施の形態3では、変復調器26及び電力増幅器27により第1の通信経路を構成し、変復調器28及び電力増幅器29により第2の通信経路を構成し、変復調器42及び電力増幅器43により第3の通信経路を構成する。
また、実施の形態3では、制御部12及び制御部22は、経路開設指示(例えば、緊急呼)を検出したことに応じて、第1の通信経路、第2の通信経路及び第3の通信経路から選択した2つの通信経路を含む通常通信経路の変調方式及び占有帯域幅の少なくとも一方を変更して前記無線通信の回線速度を維持し、通常通信経路に含まれなかった通信経路に通常通信経路とは異なる変調方式による無線通信を指示する。
より具体的には、実施の形態3にかかる無線通信システム3では、通常状態において、第1の通信経路と第3の通信経路とによるマルチキャリヤ通信を確立する。一方、実施の形態3にかかる無線通信システム3では、非常状態においては、第1、第3の通信経路で通常呼が利用するバックホール通信を確立し、第2の通信経路で非常用通信を確立する。
なお、実施の形態3にかかる無線通信装置における変調多数値と通信速度との関係は、図8に示したものであるため、ここでは説明を省略する。
続いて、実施の形態3にかかる無線通信システム3の回線切り替え手順について説明する。そこで、図11に実施の形態3にかかる無線通信システム3における通常呼による通信路が確立されている状態で緊急呼が生じた場合の回線切り替え手順を説明する図を示す。
図11に示すように、実施の形態3にかかる無線通信システム3では、通常呼の通信路(例えば、バックホール通信)が確立されている通常使用状態では、割り当てられている占有無線帯域の全体を2つのバックホール通信が利用している状態となる。図11では、2つのバックホール通信を区別するために、バックホール通信A、Bと記載した。図11に示す例では、バックホール通信A、Bがいずれも同じ占有無線帯域幅、変調方式及び通信速度となっているが、2つのバックホール通信が異なる通信経路により確立されているため、これらの通信に用いられるキャリヤは互いに独立しているため、マルチキャリヤ通信と考えることができる。
そして、実施の形態3にかかる無線通信装置30にて緊急呼が検出された場合、無線通信システム3は第1の回線切替処理を実施する。この第1の回線切替処理では、バックホール通信Aの変調方式を32QAMから128QAMに切り替える。これにより、バックホール回線Aの回線速度は、98Mbpsから196Mbpsに上昇する。
続いて、実施の形態3にかかる無線通信システム3は、第2の回線切替処理を実施する。この第2の回線切替処理では、無線通信システム3はバックホール通信Bの通信を停止する。この第2の回線切替処理により、占有無線帯域に28MHzの空き帯域が生じる。
続いて、実施の形態3にかかる無線通信システム3は、第3の回線切替処理を実施する。この第3の回線切替処理では、無線通信システム3は、占有無線帯域を14MHz、変調方式を128QAMとしてバックホール通信Bを確立する。このバックホール通信Bの通信速度は68Mbpsである。また、第3の回線切替処理では、バックホール通信Bの占有無線帯域を狭くしたことで空いた帯域に非常用通信を確立する。この非常用通信は、占有無線帯域幅が14MHz、変調方式が32QAMであり、通信速度は49Mbpsである。
続いて、実施の形態2にかかる無線通信システム2は、第2の回線切替処理で変調方式を強制的に切り替えたバックホール通信Aの変調方式を更に変更して、バックホール通信Aとバックホール通信Bの通信速度の合計が通常状態とほぼ同一とする。
実施の形態2にかかる無線通信システム2では、図9で示した回線切り替え処理を実施の形態1の図4〜図6で説明した手順に沿って実施する。
以上のように、実施の形態3にかかる無線通信システム3では、実施の形態1にかかる無線通信システム1と同様に、割り当てられた占有無線帯域の制限の範囲内で、バックホール通信の通信速度を維持しながら、緊急呼が発生した場合にのみ非常用通信を確立することができる。なお、バックホール通信A、Bの占有無線帯域の分割方法は、上記実施の形態2の説明のように、占有無線帯域を等分する例に限られず、例えば、40MHzと16MHzとに分ける等、任意に設定できる。
また、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。