以下、本発明の実施形態に係る天井設置型室内機1について図面を参照して説明する。
<天井設置型室内機の全体構造>
図1及び図2に示すように、天井設置型室内機1は、天井71に埋め込まれるカセット室内機である。この室内機1は、天井71に設けられた開口に埋め込まれる室内機本体2と、室内機本体2の下部に取り付けられた下面パネル(化粧パネル)3とを備える。
室内機本体2は、ターボファンなどの送風機11、熱交換器13、ドレンパン14、ベルマウス17などの複数の構成部品と、これらの構成部品を収容するケース10とを備える。
ケース10は、天板10aと、側板10bとを有する箱状の部材である。ケース10の下部は開口しており、この開口部は、下面パネル3によって塞がれている。ケース10は、平面視で多角形状を呈しているが、これに限られない。本実施形態では、ケース10は、平面視で矩形の四隅が面取りされたような八角形状であるが、これに限られず、例えば正方形や長方形などの四角形状などであってもよい。
図2に示すように、送風機11は、羽根車16とファンモータ12とを備える。ファンモータ12は、室内機本体2の天板10aの略中央に固定されている。羽根車16は、ハブ19と、シュラウド20と、複数のファンブレード21とを含む。ハブ19は、ファンモータ12のシャフトの下端部に固定されている。シュラウド20は、ハブ19の下方に配置されている。複数のファンブレード21は、ハブ19とシュラウド20との間において羽根車16の回転方向に沿って所定の間隔をあけて配列されている。ベルマウス17は、羽根車16に空気を案内する。
熱交換器13は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷媒の凝縮器として機能する。熱交換器13は、室内機本体2内に吸い込まれる室内の空気と冷媒との熱交換を行う。熱交換器13は、冷房運転時には室内の空気を冷却し、暖房運転時には室内の空気を暖める。熱交換器13としては、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器を例示できるが、これに限られない。
図2及び図3(A),(B)に示すように、熱交換器13は、厚み(本実施形態では水平方向の寸法)の小さな扁平な形状を有している。熱交換器13は、ドレンパン14から上方に起立した状態で送風機11の周囲を囲むように配置されている。
ドレンパン14は、熱交換器13において生じる水滴を収容する。ドレンパン14は、断熱材によって形成されている。断熱材としては、例えば発泡ポリスチレンなどの発泡プラスチックを例示することができるが、これに限られない。図2及び図3(A),(B)に示すように、ドレンパン14は、熱交換器13の下端部に沿って設けられた皿形状を有する。
図2、図3(A),(B)及び図4に示すように、ドレンパン14は、熱交換器13の下端部に対して上下方向に対向する底壁140と、底壁140における内側の側端部から上方に延びる第1側壁141と、底壁140における外側の側端部から上方に延びる第2側壁142と、第2側壁142に対して隙間をあけて水平方向外側に設けられた第3側壁143とを含む。主に底壁140の上面、第1側壁141の側面及び第2側壁142の側面によって形成される凹部がドレン水の収容空間として機能する。ドレンパン14は、をさらに有する。
下面パネル3は、平面視の形状が室内機本体2よりも一回り大きく、天井71の開口を覆った状態で室内に露出している。本実施形態の下面パネル3は、平面視で略矩形状であるが、これに限られない。下面パネル3は、室内の空気をケース10内に吸い込む吸込口7を有する。本実施形態では、吸込口7は例えば矩形状を有し、下面パネル3の中央部に設けられているが、これに限られない。吸込口7には、図略のグリルが設けられている。
また、下面パネル3は、熱交換器13において冷媒と熱交換した空気を室内に吹き出す吹出流路5を形成する吹出部を有する。下面パネル3は1つ又は複数の吹出部を有する。吹出部の数は、特に限定されないが、本実施形態では、4つの吹出部が下面パネル3に設けられている。4つの吹出部は、吸込口7の周りを囲むように設けられている。4つの吹出部は、下面パネル3の4つの外縁に沿って設けられている。各吹出部の下部には、室内に開口する吹出口6が形成されている。吹出流路5及び吹出口6は、下面パネル3の対応する外縁に平行な方向に延びる細長い形状を有する。吹出流路5の詳細については後述する。
吹出部の吹出流路5には、室内への空気の吹き出し方向を調節するフラップ22が設けられている。フラップ22は、吹出流路5の長手方向の寸法とほぼ同じ大きさ、又は吹出流路5の長手方向の寸法よりも少し小さい大きさを有する細長い形状である。各フラップ22は、その長手方向が対応する吹出流路5の長手方向に平行となるように配置されている。
各フラップ22は、図略の羽根モータによって、下吹き状態と水平吹き状態との間で角度が調節される。下吹き状態は、フラップ22の可動範囲のうちで、吹出流路5から吹き出される気流の向きが鉛直方向に最も近くなる状態であり、水平吹き状態は、フラップ22の可動範囲のうちで、吹出流路5から吹き出される気流の向きが水平方向に最も近くなる状態である。
下面パネル3は、枠部材を有する。枠部材は、下面パネル3の周縁部を構成する外枠部31と、内枠部32とを含む。外枠部31は、底面視で吹出流路5の外側に設けられており、下面パネル3の外周縁を含む。外枠部31は、底面視で環形状を呈する。内枠部32は、底面視で吸込口7と吹出流路5との間に設けられている。内枠部32は、中央に開口(吸込口7)が形成されている。内枠部32は、底面視で環形状を呈する。内枠部32及び外枠部31を含む枠部材は、室内に露出する化粧面を構成するパネル部と、パネル部の内側に設けられた断熱材とを有する。この断熱材としては、上述したような材料によって形成されている。
外枠部31は、室内に露出している下面(化粧面)33を有する。同様に、内枠部32は、室内に露出している下面(化粧面)34を有する。
吸込口7とベルマウス17との間には、エアフィルタ15が設けられている。エアフィルタ15は、吸込口7から吸入される空気中の塵埃を除去する。エアフィルタ15は、ベルマウス17の下端部の入口を覆う大きさを有する。図2に示す本実施形態では、エアフィルタ15は波形状を有するがこれに限られない。
ファンモータ12によって羽根車16が回転すると、図2及び図3(A),(B)において一点鎖線の矢印Fで示すように、室内の空気が吸込口7から室内機1の内部に吸い込まれる。吸込口7から吸い込まれた空気は、ベルマウス17によって羽根車16に案内され、熱交換器13に送られる。熱交換器13において冷媒と熱交換した空気は、上流側案内流路9、案内流路8及び吹出流路5の順に下方に流れ、吹出流路5から室内に吹き出される。吹き出される空気は、フラップ22によって吹出方向が調節される。
上流側案内流路9は、案内流路8よりも気流方向の上流側に位置して案内流路8に空気を案内する流路である。本実施形態では、上流側案内流路9は、熱交換器13とケース10内の内側面(本実施形態では、側板10bの内面に設けられた断熱材18の内側面)との隙間によって構成されているが、これに限られない。
案内流路8は、吹出流路5よりも気流方向の上流側に位置して吹出流路5に空気を案内する流路である。本実施形態では、案内流路8は、ドレンパン14の第2側壁142の側壁面と、第3側壁143の側壁面との隙間によって構成されているが、これに限られない。案内流路8は、ドレンパン14とは別に設けられた他の部材によって形成されていてもよい。
吹出流路5は、互いに間隔をあけて対向する外側壁面51(第1壁面51)及び内側壁面52(第2壁面52)によって形成されている。吹出流路5は、水平方向に長い形状を有する。外側壁面51の下端には、室内に露出する外枠部31の下面33が接続されている。内側壁面52の下端には、室内に露出する内枠部32の下面34が接続されている。
吹出流路5についてより具体的に説明すると次のようになる。図2に示すように、外枠部31と内枠部32とは、各吹出流路5を介して水平方向に間隔をあけて設けられている。また、外枠部31と内枠部32とは、各吹出流路5の長手方向の両端部においては連続している。すなわち、外枠部31及び内枠部32を含む枠部材には、各吹出流路5に対応する部位に上下方向に貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔は、外枠部31と、内枠部32と、これらをつなぐ一対の端壁(図示省略)とによって形成されている。これらの端壁は、吹出流路5の長手方向に互いに対向する位置に間隔をあけて設けられている。
したがって、各吹出流路5は、外枠部31の外側壁面51(内枠部32側に向いた側壁面)と、内枠部32の内側壁面52(外枠部31側に向いた側壁面)と、長手方向一方側の端壁の側壁面と、長手方向他方側の端壁の側壁面とによって形成されている。すなわち、各吹出流路5は、下面パネル3に設けられている流路である。
<第1実施形態の特徴>
第1実施形態に係る室内機1では、吹出流路5は次のような特徴を備える。図4(A)は、本発明の第1実施形態に係る天井設置型室内機の吹出流路を示す断面図であり、図4(B)は、吹出流路に設けられた水保持部材を説明するための断面図である。
吹出流路5を形成する外側壁面51は、空気を下方に案内する案内面53と、案内面53と下面33の間に介在する剥離誘発面54とを備える。剥離誘発面54は、外側壁面51において気流の剥離が生じる高さ方向の位置P(剥離ポイントP)を吹出流路5の長手方向において揃える機能を有する。剥離ポイントPは、例えば、後述する図5(A),(B)などに示される位置であるが、これらの図例に限られない。
第1実施形態では、剥離誘発面54が外側壁面51における気流の剥離を誘発するので、外側壁面51において気流の剥離が生じる高さ方向の位置Pを吹出流路5の長手方向において揃えることができる。このように剥離ポイントPを吹出流路5の長手方向において揃えることができれば、結露が生じる場所を下面パネルの下面33ではなく、吹出流路5内に設定するができる。
そして、吹出流路5内に結露場所を設定することができれば、図4(B)に示すように、植毛テープなどの水保持部材61(結露対策部材61)を、室内のユーザーからは見えにくい吹出流路5内に配置することができる。水保持部材61は、例えば吹出流路5の長手方向に沿って帯状に配置されている。図4(B)に示す第1実施形態では、水保持部材61は、剥離誘発面54に取り付けられている。また、図4(B)では、水保持部材61は、変曲部54aを覆うように配置されているが、これに限られない。また、図4(B)では、水保持部材61は、変曲部54aを覆い、水保持部材61の上端部が剥離ポイントPの近傍に位置するように配置されているが、これに限られない。なお、水保持部材61は、剥離ポイントPを含む範囲に設けられていてもよい。
これに対し、図4(C)に示す参考例に係る天井設置型室内機では、外側壁面151全体は、内枠部132の内側壁面152側に凸の凸曲面からなる。したがって、外側壁面151において気流の剥離が生じる剥離ポイントは、吹出流路105の長手方向の位置によって上下方向の位置のばらつきが大きく、また、長手方向の同じ位置においても上下方向の位置が変動する。そして、剥離ポイントが外側壁面151の下端付近、すなわち吹出口106の近傍である場合には、外側壁面151の下端につながる下面パネル103の外枠部131の下面133などにおいて結露Wが生じる。
以下、第1実施形態における吹出流路5の形状について具体的に説明する。図4(A)に示すように、剥離誘発面54は、吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹曲面により構成されている。この凹曲面はフラップ22側の斜め下方に向いている。剥離誘発面54は、吹出流路5の長手方向において図4(A)に示すような同じ断面形状を有する。
第1実施形態では、剥離誘発面54は、その全体が凹曲面である。剥離誘発面54の両端部を結ぶ線分よりも吹出口6から遠ざかる側(図4(A)では右斜め上方側)に、剥離誘発面54の全体が位置している。剥離誘発面54の両端のうちの一端は、剥離誘発面54と案内面53との境界部(変曲部54a)であり、前記両端のうちの他端は、剥離誘発面54と下面33との境界部54bである。このように本実施形態では、剥離誘発面54の全体が前記線分よりも吹出口6から遠ざかる側に位置していることによって、剥離誘発面54によって形成される凹み空間を大きくすることができるとともに、前記凹み空間をできるだけ上方に位置させることができる。これにより、凹み空間において生じる渦流Sを上方に位置させることができ、結露ポイントを上方に位置させることができる。
案内面53は、第2壁面52側に凸の凸曲面により構成されているが、これに限られず、平面などによって構成されていてもよい。本実施形態における案内面53には、角張った部位がなく、全体が滑らかに湾曲している。また、本実施形態では、案内面53及び剥離誘発面54は、全体として滑らかに湾曲する湾曲面を構成している。
案内面53と剥離誘発面54との接続部分は、案内面53と剥離誘発面54の湾曲する方向が変わる変曲部(変曲面)54aである。図4(A)に示す断面図で見たときには、案内面53及び剥離誘発面54は曲線で表されるので、変曲部54aは、断面図上では変曲点となる。
図5(A),(B)は、第1実施形態に係る室内機1の吹出流路5における空気の流れのシミュレーション結果を示す図である。図5(A)は、吹出流路の長手方向の端部における空気の流れを示し、(B)は、吹出流路の長手方向の中央部における空気の流れを示している。図6(A),(B)は、第1実施形態に係る室内機1の吹出流路5における空気の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。図6(A)は、吹出流路5の長手方向の端部における空気の温度分布を示し、図6(B)は、吹出流路5の長手方向の中央部における空気の温度分布を示している。
図5(A),(B)に示すように、第1実施形態では、吹出流路5を下方に流れる空気は、案内面53に沿ってほとんど剥離せずに流れている一方で、変曲部54aの近傍(図5(A)では変曲部54aのわずかに上部)の剥離ポイントPにおいて剥離している。そして、剥離ポイントPよりも下流側の空間であって、主に剥離誘発面54(凹曲面54)近傍の凹み空間において渦流Sが生じている。
このような気流の傾向は、図5(A)に示す吹出流路5の長手方向の端部と、図5(B)に示す吹出流路5の長手方向の中央部とにおいて、ほぼ同様である。すなわち、剥離誘発面54が外側壁面51における気流の剥離を誘発することによって、外側壁面51において気流の剥離が生じる高さ方向の位置P(剥離ポイントP)が吹出流路5の長手方向において揃えられている。図6(A),(B)に示す空気の温度分布のシミュレーション結果にも図5(A),(B)について説明した上記の傾向が現れている。
これに対し、図7(A),(B)に示す参考例に係る室内機では、図7(A)に示す吹出流路105の長手方向の端部における気流の傾向と、図7(B)に示す吹出流路105の長手方向の中央部における気流の傾向は、大きく異なっている。すなわち、参考例の外側壁面151では、気流の剥離が生じる高さ方向の位置P1(剥離ポイントP1)が端部と中央部とで高さ方向に大きな差が生じている。これに伴って、吹出口の近傍に生じている渦流S1の大きさや範囲にも大きな差が生じている。図8(A),(B)に示す空気の温度分布のシミュレーション結果にも図7(A),(B)について説明した上記の傾向が現れている。
図9(A)は、第1実施形態に係る室内機1の吹出流路5及びその近傍の温度分布のシミュレーション結果を示す図であり、図9(B)は、参考例に係る室内機の吹出流路105及びその近傍の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。
図9(A)に示すように、第1実施形態では、吹出口6から吹き出される空気の温度は、特にフラップ22の温度分布からわかるように、吹出流路5の長手方向Dにおいてほぼ同程度であることがわかる。これは、図5(A),(B)及び図6(A),(B)のデータに基づいて説明したように、外側壁面51において気流の剥離が生じる高さ方向の位置P(剥離ポイントP)が吹出流路5の長手方向Dにおいて揃えられているからである。また、第1実施形態では、剥離ポイントPは、参考例に比べて吹出流路5の気流方向上流側(上方側)に移動している。第1実施形態では、フラップ22の温度分布からわかるように、冷気と逆流した暖気の接触ポイントが吹出流路5の長手方向においてほぼ一定の位置となっている。
これに対し、図9(B)に示す参考例では、吹出口6から吹き出される空気の温度は、吹出流路5の長手方向Dにおいて大きくばらついていることがわかる。これは、参考例の外側壁面151では、気流の剥離が生じる高さ方向の位置P1(剥離ポイントP1)が端部と中央部とで高さ方向に大きな差が生じているからである。図9(B)に示すように、参考例では、フラップ22の温度分布がまだらであることからわかるように、冷気と逆流した暖気との接触ポイントが第1実施形態に比べておおきくばらついている。
第1実施形態と参考例は、外側壁面の全体が滑らかに湾曲する湾曲面である点で共通している。このように外側壁面の全体が滑らかな湾曲面であることを前提にした場合、剥離ポイントPを吹出流路5の長手方向Dにおいて揃えるためには、第1実施形態のように凸曲面である案内面53と凹曲面である剥離誘発面54とを変曲部54aを介して接続する構成が有効である。
すなわち、第1実施形態では、凸曲面と凹曲面とを変曲部54aにおいて接続する構成を採用することにより、案内面53の下部(変曲部54aよりも少し上方の部位)において局所的に凸曲面の曲率半径を小さくすることができる。このように案内面53における剥離ポイントP付近の曲率半径は、参考例の外側壁面151における同程度の高さ位置の部位の曲率半径に比べて小さくなる。このように曲率半径を小さくした点の付近が剥離ポイントPとなる。以上のような理由から、第1実施形態では、剥離ポイントPは、変曲部54aよりも少し上方に位置している。
なお、図5(A),(B)に示す第1実施形態では、吹出流路5を流れる空気の最大風速が、参考例に比べて増加している。
<第2実施形態の特徴>
図10(A),(B)は、第2実施形態に係る室内機1の吹出流路5における空気の流れのシミュレーション結果を示す図である。図10(A)は、吹出流路5の長手方向の端部における空気の流れを示し、図10(B)は、吹出流路5の長手方向の中央部における空気の流れを示している。
図10(A)に示すように、第2実施形態の室内機1は、外側壁面51の形状が第1実施形態と異なっており、他の構成については第1実施形態と同様である。したがって、以下では、第1実施形態との相違点について主に説明する。
第2実施形態では、外側壁面51の剥離誘発面54は、吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹面により構成されている。図10(A)に示す第2実施形態では、剥離誘発面54は、折れ曲がり部543と、折れ曲がり部543の端部と下面33とを接続する接続部544とを有する。折れ曲がり部543は、案内面53と剥離誘発面54との接続部分を角形状とするために設けられている。折れ曲がり部543は、吹出口6から遠ざかる方向に延びる平面又は湾曲面である。本実施形態では、折れ曲がり部543は平面である。接続部544は、本実施形態では断面がS字形状の湾曲面であるが、これに限られない。
案内面53と剥離誘発面54との接続部分において、案内面53と剥離誘発面54とのなす角度θ(案内面53の下端部と折れ曲がり部543とのなす角度θ)は、鋭角である。角度θの範囲は、鋭角であればよく、特に限定されるものではない。
第2実施形態では、剥離誘発面54の全体が、剥離誘発面54の両端部を結ぶ線分よりも吹出口6から遠ざかる側(図10(A)では右斜め上方側)に位置している。剥離誘発面54の両端のうちの一端は、剥離誘発面54と案内面53との境界部(本実施形態では剥離ポイントP)であり、前記両端のうちの他端は、剥離誘発面54と下面33との境界部54bである。このように本実施形態では、剥離誘発面54の全体が前記線分よりも吹出口6から遠ざかる側に位置していることによって、剥離誘発面54によって形成される凹み空間を大きくすることができるとともに、前記凹み空間をできるだけ上方に位置させることができる。これにより、凹み空間において生じる渦流Sを上方に位置させることができ、結露ポイントを上方に位置させることができる。
図10(A),(B)に示す第2実施形態では、案内面53は平面を含む。案内面53の平面は、本実施形態では、鉛直面であるが、これに限られず、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。案内面53の平面の下端は、剥離誘発面54に接続されている。本実施形態における案内面53には角張った部位がないので、案内面53における気流の剥離が抑制される。
図10(A),(B)に示すように、第2実施形態では、吹出流路5を下方に流れる空気は、案内面53に沿ってほとんど剥離せずに流れる一方で、案内面53と剥離誘発面54との接続部分である剥離ポイントPにおいて剥離している。そして、剥離ポイントPよりも下流側の空間であって、主に剥離誘発面54(凹面54)近傍の凹み空間において渦流Sが生じている。
このような気流の傾向は、図10(A)に示す吹出流路5の長手方向の端部と、図10(B)に示す吹出流路5の長手方向の中央部とにおいて、ほぼ同様である。すなわち、剥離誘発面54が外側壁面51における気流の剥離を誘発することによって、外側壁面51において剥離ポイントPが吹出流路5の長手方向において揃えられている。
なお、図10(A),(B)に示す第2実施形態では、吹出流路5を流れる空気の最大風速が、参考例に比べて増加している。
<第3実施形態の特徴>
図11(A),(B)は、第3実施形態に係る室内機1の吹出流路5における空気の流れのシミュレーション結果を示す図である。図11(A)は、吹出流路5の長手方向の端部における空気の流れを示し、図11(B)は、吹出流路5の長手方向の中央部における空気の流れを示している。
図11(A)に示すように、第3実施形態の室内機1は、外側壁面51の形状が第1実施形態と異なっており、他の構成については第1実施形態と同様である。したがって、以下では、第1実施形態との相違点について主に説明する。
第3実施形態では、外側壁面51の剥離誘発面54は、吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹面により構成されている。具体的に、剥離誘発面54は、第1平面541と、第2平面542とによって構成されている。第1平面541は、案内面53の下端部に接続され、内側壁面52から遠ざかる方向に延びている。第2平面542は、その上端部が第1平面541の端部に接続され、下面33に向かって延びている。図11(A)に示す第2実施形態では、案内面53は、内側壁面52側に凸の凸曲面を含む。本実施形態における案内面53には角張った部位がないので、案内面53における気流の剥離が抑制される。
図11(A),(B)に示す第3実施形態では、第1平面541は水平面であり、第2平面542は吹出流路5の長手方向Dに平行な鉛直面であるが、これに限られない。第1平面541は水平方向に対して傾斜していてもよく、第2平面542は鉛直面に対して傾斜していてもよい。
第3実施形態では、剥離誘発面54の全体が、剥離誘発面54の両端部を結ぶ線分よりも吹出口6から遠ざかる側(図11(A)では右斜め上方側)に位置している。剥離誘発面54の両端のうちの一端は、剥離誘発面54と案内面53との境界部(本実施形態では剥離ポイントP)であり、前記両端のうちの他端は、剥離誘発面54と下面33との境界部54bである。このように本実施形態では、剥離誘発面54の全体が前記線分よりも吹出口6から遠ざかる側に位置していることによって、剥離誘発面54によって形成される凹み空間を大きくすることができるとともに、前記凹み空間をできるだけ上方に位置させることができる。これにより、凹み空間において生じる渦流Sを上方に位置させることができ、結露ポイントを上方に位置させることができる。
図11(A),(B)に示すように、第3実施形態では、吹出流路5を下方に流れる空気は、案内面53に沿ってほとんど剥離せずに流れる一方で、案内面53と剥離誘発面54との接続部分である剥離ポイントPにおいて剥離している。そして、剥離ポイントPよりも下流側の空間であって、主に剥離誘発面54(第1平面541と第2平面542によって構成される凹面54)近傍の凹み空間において渦流Sが生じている。
このような気流の傾向は、図11(A)に示す吹出流路5の長手方向の端部と、図11(B)に示す吹出流路5の長手方向の中央部とにおいて、ほぼ同様である。すなわち、剥離誘発面54が外側壁面51における気流の剥離を誘発することによって、外側壁面51において剥離ポイントPが吹出流路5の長手方向において揃えられている。
なお、図11(A),(B)に示す第3実施形態では、吹出流路5を流れる空気の最大風速が、参考例に比べて増加している。
<実施形態のまとめ>
以上説明したように、第1〜第3実施形態では、凹状の剥離誘発面54が第1壁面51における気流の剥離を誘発するので、第1壁面51において気流の剥離が生じる高さ方向の位置(剥離ポイント)を吹出流路5の長手方向において揃えることができる。このように剥離ポイントを吹出流路5の長手方向において揃えることができれば、結露が生じる場所を下面パネルの下面33ではなく、吹出流路5内に設定することも可能になる。そして、吹出流路5内に結露場所を設定することができれば、植毛テープなどの水保持部材(結露対策部材)を、室内のユーザーからは見えにくい吹出流路5内に配置することができる。これにより、デザイン性を損なうことなく結露対策を施すことができる。
また、第1〜第3実施形態では、前記剥離誘発面54は、前記吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹面により構成されている。剥離誘発面54によって第1壁面51における気流の剥離が誘発されると、剥離誘発面54の近傍においては渦流が生じる。そして、この構成では、剥離誘発面54が吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹面であるので、この凹面によって形成される凹み空間が渦流の生じる空間として機能する。したがって、渦流の生じる空間を吹出流路5の長手方向において前記凹み空間に揃えることができる。すなわち、渦流によって室内の暖気が凹み空間に流れ込むので、結露場所を吹出流路5の長手方向において揃えることができる。
また、第1〜第3実施形態では、前記案内面53は、前記第2壁面52側に凸の凸曲面又は平面により構成されている。
この構成では、案内面53が上記のような凸曲面又は平面である場合には、気流は、案内面53に沿って流れやすい。したがって、剥離誘発面54によって誘発される剥離ポイントに至るまでの気流は、剥離せずに案内面53に沿って流れやすくなるので、剥離ポイントが吹出流路5の長手方向においてさらに揃いやすくなる。
また、第2実施形態では、前記案内面53と前記剥離誘発面54との接続部分において、前記案内面53と前記剥離誘発面54とのなす角度θが鋭角である。この場合には、鋭角の接続部分に剥離ポイントPを位置させることができる。
また、第1実施形態では、前記剥離誘発面54は、前記吹出口6から遠ざかる方向に凹む凹曲面を含み、前記案内面53と前記剥離誘発面54との接続部分は、前記案内面53と前記剥離誘発面54の湾曲する方向が変わる変曲部54aである。この場合には、変曲部54a又はその近傍に剥離ポイントを位置させることができる。
また、第3実施形態では、前記剥離誘発面54は、前記案内面53の下端部に接続され、前記第2壁面52から遠ざかる方向に延びる第1平面541と、上端部が前記第1平面541の端部に接続され、前記下面33に向かって延びる第2平面542とによって構成されている。この場合には、案内面53の下端部と第1平面541との接続部分に剥離ポイントを位置させることができる。また、この場合には、第1平面541と第2平面542によって比較的大きな凹み空間(渦流が生じる空間)を形成できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
本発明では、例えば、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態のうちの2つ以上の実施形態の特徴を組み合わせて採用することもできる。
また、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、凹面の数が1つである場合を例示したが、2つ以上の凹面が組み合わされた形態であってもよい。