JP5785438B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
このとき、第2隔壁106は弾性変形しない。なお、第2隔壁106は前記特許文献1における第1オリフィス通路の壁部に設けた弾性膜に相当し、より高い周波数fbにおける作動液の強い液圧で弾性変形するように設定されている。
また、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路の流路を独立させ、一方のオリフィス通路に入力振動の振幅に応じてパッシブ(受動的)に開閉する開閉バルブを設けたものもある(特許文献2参照)。
したがって、第2隔壁106の存在が2つの減衰ピーク、すなわちダブルピークの発生に重要であることが判る。
この図における減衰特性は、2つの減衰ピークPKaとPKbの間隔が最も広くなった状態であり、減衰特性がブロード化していることを意味する。このブロード化は、減衰力を発揮する周波数域を拡大して防振性能アップするうえで重要である。
この減衰力ダウンは是非とも回避したいところであり、研究の結果、1回目の共振時に第2隔壁106が動くこと、及び2回目の共振時に作動液の一部が第2オリフィス通路111へ流れることにより、共振効率のロスによって生じることが判明した。これは長いオリフィス通路と短いオリフィス通路の共振周波数が近いと、各オリフィス通路に対する作動液の流動を阻害することを意味する。
そこで、1回目の共振では、第2隔壁106をできるだけ動かないように固定し、2回目の共振では、第2オリフィス通路111へ作動液ができるだけ流れ込まないようにより確実に連通遮断することが必要になった。
なお、第2隔壁106もパッシブに流路を切り換えるものではあるが、入力振動が所定の切換周波数になっても第2オリフィス通路に対する作動液の流動をある程度許容して共振効率のロスを大きくしてしまうものであるから、所定の入力振動周波数で第2オリフィス通路に対する作動液の流動を停止して流路を明確に切り換える流路切換手段とは異なる。なおここで第2オリフィス通路に対する作動液の流動を停止するとは、完全なる停止のみならず、共振効率のロスを従来よりも小さくして、所定の改善目的となる減衰値を実現できる程度に作動液の流動を抑制した状態を含むものとする。
そのうえ、特許文献2に示される流路切換手段は、入力振動の振幅に応じて作動するため、所定の周波数により開閉させることができないばかりか、微小振幅の入力時には、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路の双方へ作動液が流れる可能性があるため、共振ロスの発生を防ぐことができない。
さらに、特許文献1及び2の液封マウントは、いずれもエンジンの運転状況における異なるモード、例えば、一般走行時やアイドル時のモードに変更したことにより切り換わるものであり、同一モード(例えば、一般走行モード)時において、比較的小さな周波数範囲にて高い減衰ピークを維持したままダブルピークを発生することはできない。
すなわち、特許文献1における副弾性膜では、このような狭い範囲での切り換えを可能とする膜剛性の設定が不可能である。また、特許文献2では、振幅の大小で切り換わるため、狭い周波数域での鋭敏な切り換えができないからである。
そこで本願は、これらの要請の実現を目的とする。
直列した第1オリフィス通路(22)と第2オリフィス通路(23)を作動液が流動して第1の共振をする長いオリフィス通路と、第1オリフィス通路(22)へ主体的に作動液が流動して第2の共振をする短いオリフィス通路とへ流路切換手段(35)により切り換えることにより、異なる周波数で2つの減衰ピークを発生する液封防振装置において、
前記第2オリフィス通路(23)を迂回した、前記第1オリフィス通路(22)及び第2オリフィス通路(23)よりも通路断面積の大きなバイパス通路(25)を設け、
このバイパス通路(25)の一端を前記第1オリフィス通路(22)と前記第2オリフィス通路(23)の接続部へ接続し、他端を前記中間室(26)を介して前記副液室(17)へ連通させるとともに、
前記流路切換手段(35)は、入力振動周波数が、前記第1の共振の共振周波数のとき、前記バイパス通路(25)と前記副液室(17)とを連通遮断し、
前記第2の共振の共振周波数のとき、前記バイパス通路(25)と前記副液室(17)とを連通させるように切り換わり,
入力振動周波数に応じて、前記バイパス通路(25)における作動液の流動を停止することにより前記第1の共振をする長いオリフィス通路と、
前記バイパス通路(25)に作動液を流動させることにより、前記第2の共振をする短いオリフィス通路と、へ切り換えることを特徴とする。
このマス(30)は、前記第2オリフィス通路(23)又はバイパス通路(25)のいずれか一方側における作動液の流動によって振動しつつ他方側と前記副液室(17)の間を連通遮断し、
所定の周波数のとき慣性により一定位置に停止して、前記一方側と前記副液室(17)の間を連通遮断するとともに、前記他方側を前記副液室(17)と連通させることを特徴とする。
また、バイパス通路に作動液を流動させると、第2オリフィス通路における作動液の流動が停止し、作動液は第1オリフィス通路にて主体的に流動するので、短い第1オリフィス通路にて共振し、より高い周波数で第2の減衰ピークを発生する。
このため、長短のオリフィス通路を切り換えることで周波数が高低に異なる2つの共振を発生させることにより2つの減衰ピークを発生して減衰域をブロード化できる。
しかも、流路切換手段により長いオリフィス通路と短いオリフィス通路とへ選択的に切り換えるので、いずれか一方の流路だけに作動液を流動させ、他方側に対する作動液の流動を抑制することができ、減衰ロスを少なくできるため、減衰ピークの減衰値をより高くすることができる。
そのうえ、流路切換手段を所定周波数で動作するパッシブなものとし、かつ第1オリフィス通路と第2オリフィス通路を直列させることにより、共通部を有するオリフィス通路構造としたので、コストダウンをはかることができる。
また、所定の周波数になるとマスが慣性により一定位置に停止するため、一方側と副液室の間を連通遮断するとともに、他方側を副液室と連通させることにより、作動液の流路を他方側に切り換えることができる。
このため、マスの慣性を利用して周波数応答性のある流路切換手段を容易に構成することができる。
また、マスの慣性による停止は入力振動の周波数に対して鋭敏に反応できるので、2つの減衰ピークを生じる周波数の範囲を明確に設定することが容易になる。
図1は本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10を示し、図1のAはその概略断面図である。11は第1取付金具であり、図示しないエンジンへ取付けられている。12は第2取付金具であり、円筒状をなし、車体(図示省略)へ取付けられている。
第2取付金具12の他方側の開口部はダイヤフラム14で覆われ、第1取付金具11,第2取付金具12,主弾性体13,ダイヤフラム14で囲まれた空間が液室をなす。この液室は、仕切部材15で主弾性体13側の主液室16とダイヤフラム14側の副液室17に区画される。
上部材20には、第1オリフィス通路22及び第2オリフィス通路23が弧状をなして、例えば、半径方向へ同心状に並んで設けられ、図示しないがそれぞれは一部で連通しており、第1オリフィス通路22と第2オリフィス通路23が直列して長いオリフィス通路を形成するようになっている。但し、第1オリフィス通路22及び第2オリフィス通路23の形状や配置等は種々に変更可能である。
バイパス通路25は第2オリフィス通路23を迂回して設けられ、バイパス通路25の他端部は、仕切部材15の中心部に設けられたマス30の通路31に連通している。通路31は連絡路32を介して副液室17へ連通している。
通路31とバイパス通路25が一致すると、バイパス通路25が連絡路32を介して副液室17と連通し、バイパス通路25内における作動液の流動を可能にする。
なお、中間室26とマス30との間には若干の間隙33があり、主液室16にエンジンの重量がかかり、かつ振動入力前の静的状態(1G状態)において、主液室16側から押し出された作動液を副液室17側へ逃がすようになっている。
本実施形態では、第1オリフィス通路22のみによる短いオリフィス通路の共振周波数である第2共振点f2で作動液が流動すると、マス30が慣性により見かけ上の上下動をほぼ停止した状態になるように設定されている。
なお、オリフィス弾性部24はこのような長短2つのオリフィス通路における共振周波数が接近した場合に、各減衰ピークを明瞭に形成するように作用するが、必ずしも設ける必要はなく、これを省略することもできる。
第2オリフィス通路23は中間室26と連通しているので、中間室26へ入った作動液はマス30を押し下げ、通路31がバイパス通路25及び連絡路32と不一致になる(図3のB)。このとき、バイパス通路25は副液室17との間で連通遮断状態となり、バイパス通路25内の作動液が流動しないため、オリフィス弾性部24の弾性変形を抑制できる。
したがって、流路切換手段35が作動液の流路をバイパス通路25側の短いオリフィス通路から第1オリフィス通路22と第2オリフィス通路23からなる長いオリフィス通路へ切り換えてこの長いオリフィス通路を主体とする共振を生じさせるとともに、マス30がバイパス通路25を連絡路32(さらには副液室17)に対して連通遮断して作動液の流動を止めることにより、オリフィス弾性部24を弾性変形させないか弾性変形を極力抑えることができるため、共振ロスを生じさせないかもしくは共振ロスを極力抑制できる。
すなわち、第2オリフィス通路23における作動液の流動は、完全なる停止ではないものの、共振効率のロスを従来よりも小さくして、所定の改善目的となる減衰値を実現できる程度に抑制された状態(本願発明における停止状態)にあることになる。
このため、バイパス通路25内の作動液は、オリフィス弾性部24の膜共振により通路31及び連絡路32を介して副液室17との間を流動する。
したがって、流路切換手段35が作動液の流路を、第1オリフィス通路22と第2オリフィス通路23からなる長いオリフィス通路からバイパス通路25側の短いオリフィス通路へ切り換えて第1オリフィス通路22のみからなる短いオリフィス通路を主体とする共振が第2共振点f2(例えば約18Hz)で発生する。このとき、マス30が慣性により中立位置へほぼ停止するため、中間室26を副液室17との間で連通遮断し、第2オリフィス通路23には見かけ上ほぼ作動液の流動が生じなくなるので、第2オリフィス通路23に対する作動液の流動を極力抑えて第1オリフィス通路22を主体とする共振をさせることができるため、共振ロスを生じさせないかもしくは共振ロスを極力抑制できる。
このシミュレーションモデルに対して図示のようなパラメータを設定することにより、動特性を得ることができる。a〜i・k〜nを設定したものである。このうちa〜iは図4におけるものと同様であり、図中のaはマウント全体に対する入力荷重(N/mm)、bは主弾性体13への入力荷重(N/mm)、cは主液室16の通路断面積(mm2)、dは第1オリフィス通路22の通路断面積(mm2)、eは第1オリフィス通路22の長さ(mm)、fは仕切部材15の受圧面積(mm2)、gはオリフィス弾性部24の受圧面積(mm2)、hは第2オリフィス通路23の通路断面積(mm2)、iは第2オリフィス通路23の長さ(mm)である。k・lはダイヤフラム14の受圧面積(mm2)、mはマス30の質量(g)、nはマス30の受圧面積(mm2)である。k・lを合算したものが図9における1つのjに相当する。
これらのグラフには、マス30を設けない比較例(すなわち図9の構成)の動特性を仮想線にて併せて示してある。
この比較例との相違より明らかなように、本実施形態によれば、減衰ピークPK1及びPK2からなる明確なダブルピークが生じている。しかも、Bに示すように、減衰ピークは比較例のPK4及びPK5よりも高くなっており、例えば、0.9Ns/mmも上昇している。
このBに明らかなように、従来のシングルピーク特性における減衰ピークPK3とほぼ同等の減衰ピークをなすとともに、従来よりも例えば約3Hzほどブロード化している。
すなわち、減衰をブロード化できるとともに、従来と同等の減衰ピークを得ることができ、優れた減衰特性を実現できる。
また、流路切換手段35を所定周波数で動作するパッシブなものとし、かつ第1オリフィス通路22と第2オリフィス通路23を直列させることにより、長短に異なる2つのオリフィス通路において第1オリフィス通路22を共通部とする構造としたので、コストダウンを図ることができる。
このため、マス30の慣性を利用して周波数応答性のある流路切換手段を容易に構成することができる。
しかも、マス30の慣性により振動を停止する周波数を、2つの共振のうち高い方の共振周波数f2に設定したので、高い方の共振周波数f2以上の振動でマス30を慣性により振動停止させておくことができるから、マスの制御が容易になる。
また、流路切換手段35を設ける位置は、図示のように副液室7の近傍部ではなく、分岐部27側へ設けてもよい。
さらに、連絡路32は省略してもよく、第2オリフィス通路23とバイパス通路25の合流部を設け、この合流部にマス30を設けてもよい。
また、マス30の慣性停止周波数は、第1共振点f1又は第2共振点f2のいずれに設定してもよい。また、2つの減衰ピークを発生させるモードは、一般走行モードばかりでなく、アイドリングモードや発進モード等各種モードに設定可能である。
さらに、ダブルピーク形式ばかりでなく、より多数の減衰ピークを有する形式の液封防振装置にも適用できる。
Claims (5)
- 液室を仕切部材(15)により主液室(16)と副液室(17)に区画し、仕切部材(15)に主液室(16)と、副液室(17)に連通する中間室(26)とを連通する、第1オリフィス通路(22)と第2オリフィス通路(23)を直列させて設け、
直列した第1オリフィス通路(22)と第2オリフィス通路(23)を作動液が流動して第1の共振をする長いオリフィス通路と、第1オリフィス通路(22)へ主体的に作動液が流動して第2の共振をする短いオリフィス通路とへ流路切換手段(35)により切り換えることにより、異なる周波数で2つの減衰ピークを発生する液封防振装置において、
前記第2オリフィス通路(23)を迂回した、前記第1オリフィス通路(22)及び第2オリフィス通路(23)よりも通路断面積の大きなバイパス通路(25)を設け、
このバイパス通路(25)の一端を前記第1オリフィス通路(22)と前記第2オリフィス通路(23)の接続部へ接続し、他端を前記中間室(26)を介して前記副液室(17)へ連通させるとともに、
前記流路切換手段(35)は、入力振動周波数が、前記第1の共振の共振周波数のとき、前記バイパス通路(25)と前記副液室(17)とを連通遮断し、
前記第2の共振の共振周波数のとき、前記バイパス通路(25)と前記副液室(17)とを連通させるように切り換わり,
入力振動周波数に応じて、前記バイパス通路(25)における作動液の流動を停止することにより前記第1の共振をする長いオリフィス通路と、
前記バイパス通路(25)に作動液を流動させることにより、前記第2の共振をする短いオリフィス通路と、へ切り換えることを特徴とする液封防振装置。 - 入力振動は、少なくともアイドリングモードと一般走行モードを備え、これらのモードのうち、前記2つの減衰ピークは、同一モードにおいて発生することを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記流路切換手段(35)は、所定の質量を有するマス(30)を前記中間室(26)内に備え、
このマス(30)は、前記第2オリフィス通路(23)又はバイパス通路(25)のいずれか一方側における作動液の流動によって振動しつつ他方側と前記副液室(17)の間を連通遮断し、
所定の周波数のとき慣性により一定位置に停止して、前記一方側と前記副液室(17)の間を連通遮断するとともに、前記他方側を前記副液室(17)と連通させることを特徴とする請求項1又は2に記載した液封防振装置。 - 前記マス(30)は前記2つの減衰ピークを発生させる共振周波数のうち高い方の共振周波数で慣性により振動を停止することを特徴とする請求項3に記載した液封防振装置。
- 前記第1オリフィス通路(22)は、その流路の一部を第1オリフィス通路(22)の共振周波数にて膜共振するオリフィス弾性部(24)にて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した液封防振装置。
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