以下、本発明を適用した光反射性異方性導電接着剤の具体的な実施の形態(以下、これを「本実施の形態」という。)の一例について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、発光素子であるLED素子を配線板に異方性導電接続するために使用する接着剤であって、熱硬化性樹脂組成物と、導電性粒子と、光反射性針状絶縁粒子とを含有する。
光反射性針状絶縁粒子は、後述するように、アスペクト比が所定範囲の値である針状形状からなることを特徴としている。熱硬化性樹脂組成物が球状粒子を含有する場合、温度変化に伴い伸縮性が低下すると、熱硬化性樹脂組成物の内部応力によって球状粒子と熱硬化性樹脂組成物との界面からクラックが発生する場合がある。このように光反射性異方性導電接着剤にクラックが生じると、導通信頼性を損なうことになる。そのため、光反射性異方導電接着剤は、優れた強靭性を有することが必要となる。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、アスペクト比が所定範囲の針状の光反射性絶縁粒子を熱硬化性樹脂組成物に添加する。熱硬化性樹脂組成物中において、それぞれランダムな方向に配置される針状の光反射性絶縁粒子は、温度変化に伴う熱硬化性樹脂組成物の内部応力を針状結晶中に伝搬及び吸収させて熱硬化性樹脂にこの内部応力が伝わるのを抑制することができるため、熱硬化性樹脂組成物の強靭性を高めることができる。これにより、光反射性異方導電接着剤は、優れた強靭性を発揮して、温度変化によって熱硬化性樹脂組成物が伸縮してもクラックの発生や接着面の剥離を抑制することができる。
光反射性針状絶縁粒子は、可視光を発光する発光装置においては、白色を呈する針状無機化合物からなり、光反射性異方性導電接着剤に入射した光を外部に反射する。光反射性針状絶縁粒子自体が白色を呈することにより、可視光に対する反射特性の波長依存性を小さくすることができ、可視光を効率的に反射することができる。
このように、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、白色を呈するとともにアスペクト比が所定範囲の針状形状を有する無機化合物からなる粒子(以下、これを「白色針状無機粒子」という。)を含有することにより、発光素子から出射された光に対する反射率の低減を抑制して発光素子の発光効率を維持するとともに、クラック等を防止して高い導通信頼性を得ることができる。
白色針状無機粒子としては、例えば酸化亜鉛ウィスカ、酸化チタンウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等のチタン酸塩ウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、ウォラストナイト(カオリンシリケートの針状結晶)等の針状形状の無機化合物を挙げることができる。ウィスカは、特殊な製法によって針状に成長した結晶であり、結晶構造に乱れがないため弾力性に富み、変形しにくいという利点を有する。これらの無機化合物は、可視光を発光する発光装置においては白色を呈するため、可視光に対する反射特性の波長依存性が小さく、且つ可視光を反射しやすい。中でも、酸化亜鉛ウィスカは、白色度が高く、且つ、硬化した異方性導電接着剤における熱硬化性樹脂組成物の硬化物の光劣化が懸念される場合であっても光劣化に対して触媒性がないことから、特に好ましい。
白色針状無機粒子は、一本の針状形状を有する結晶(単針状結晶)からなる場合には、その繊維径(短方向粒径)は、5μm以下が好ましい。また、単針状結晶からなる白色針状無機粒子のアスペクト比は、10よりも大きく35未満が好ましく、10よりも大きく20未満が特に好ましい。白色針状無機粒子のアスペクト比が10よりも大きい場合には、熱硬化性樹脂の内部応力を十分に伝搬及び吸収させることができる。また、白色針状無機粒子のアスペクト比が35未満である場合には、針状の結晶が折れにくくなるとともに、熱硬化性樹脂中へ均一に分散することができ、導電性粒子による異方性接続を阻害することがない。このアスペクト比が20未満である場合には、熱硬化性樹脂中への分散性をさらに向上させることができる。
アスペクト比が10よりも大きく35未満の白色針状無機粒子を熱硬化性樹脂組成物に添加することにより、熱硬化性樹脂組成物の強靭性を高めることができるため、光反射性異方性導電接着剤が伸縮しても接着面の剥離やクラックが発生することを抑制することができる。
なお、白色針状無機粒子としては、このような単針状結晶であるものに代えて、例えばテトラポッド(登録商標)のように四面体の中心部と頂点とをそれぞれ結合してなる形状等の、複数本の針状形状を有する結晶(複針状結晶)を使用するようにしてもよい。複針状結晶の白色針状無機粒子は、単針状結晶の白色針状無機粒子に比べて熱伝導性が大きい点で優れているが、単針状結晶よりもかさ高い結晶構造であるため、熱圧着時に針状部分によって基板や素子の接合部品を傷付けないように注意する必要がある。
また、針状白色無機粒子は、例えばシランカップリング剤で処理したものであってもよい。針状白色無機粒子がシランカップリング剤で処理されていることにより、熱硬化性樹組成物中での分散性を向上させることができる。このため、シランカップリング剤で処理した針状白色無機粒子を短時間に均一に熱硬化性樹脂組成物中に混合させることができる。
白色針状無機粒子は、その屈折率(JIS K7142)が、好ましくは熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きいこと、より好ましくは少なくとも0.02程度大きいことが好ましい。屈折率の差が小さいと、それらの界面での反射効率が低下するからである。すなわち、白色針状無機粒子としては、光反射性且つ絶縁性を有する無機粒子であっても、SiO2のように、その屈折率が使用する熱硬化性樹脂組成物の屈折率以下であるものは適用できない。
白色針状無機粒子の光反射性異方性導電接着剤中の配合量は、少なすぎると十分な光反射を実現することができず、その一方、多すぎると、熱硬化性樹脂の接着性が低下するため、熱硬化性樹脂組成物に対し、1〜50体積%(Vol%)であることが好ましく、5〜25体積%であることが特に好ましい。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、このような白色針状無機粒子を含有することで、導電性粒子の大部分を覆うため、導電性粒子が茶色等の色を呈する場合であっても、熱硬化性樹脂組成物の白色性を実現する。このような熱硬化性樹脂組成物の白色性により、可視光に対する反射特性の波長依存性を小さくし、且つ可視光を反射しやすくなるため、基板電極の色の種類に関係なく、LED素子から出射される光の反射率の低下を抑制するとともに、LED素子がその下面側に向けて発光する光も効率的に利用することができる。その結果、LED素子の発光効率(光取り出し効率)を向上させることができる。
そして、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、光反射性絶縁粒子としての白色の無機粒子の形状が針状であることにより、温度変化に伴う熱硬化性樹脂組成物の内部応力を針状結晶中に伝搬及び吸収させて熱硬化性樹脂にこの内部応力が伝わるのを抑制することができる。なお、粒子形状が球状である場合には、熱硬化性樹脂組成物の内部応力を、針状形状の粒子に比べて粒子内に伝搬及び吸収させにくい。
光反射性異方導電接着剤は、このようにして熱硬化性樹脂にこの内部応力が伝わるのを抑制するため、熱硬化性樹脂組成物の強靭性を高めることができる。これにより、光反射性異方導電接着剤は、優れた強靭性を発揮して、温度変化によって熱硬化性樹脂組成物が伸縮してもクラックの発生や接着面の剥離を抑制することができる。
なお、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、光反射性絶縁粒子としての白色を呈する球状形状の無機化合物からなる粒子(以下、これを「白色球状無機粒子」という。)を含有する熱硬化性樹脂組成物に、白色針状無機粒子を添加するようにしてもよい。白色球状無機粒子は、上述の白色針状無機粒子と同様の材料からなることが好ましく、SiO2のように、その屈折率が使用する熱硬化性樹脂組成物の屈折率以下であるものは適用できない。
この白色針状無機粒子とともに白色球状無機粒子を添加することで、熱硬化性樹脂組成物をさらに白色化してLED素子の光取り出し効率をより向上させることができる。また、この場合においても、熱硬化性樹脂の強靭性を高めることができる。ここで、白色針状無機粒子の添加量(Vol%)は、白色球状無機粒子の添加量(Vol%)と同量以上とすることが好ましい。
白色球状無機粒子は、小さすぎると反射率が低くなり、大きすぎると異方性導電性粒子による接続を阻害する等の傾向があるので、その大きさは、0.02〜20μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。
白色球状無機粒子は、白色針状無機粒子と同様に、その屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きいことが好ましく、少なくとも0.02程度大きいことがより好ましい。
球状の光反射性絶縁粒子としては、このような白色球状無機粒子に代えて、球状の金属粒子の表面を透明な絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子を使用してもよい。金属粒子としては、ニッケル、銀、アルミニウム等を挙げることができる。
樹脂被覆金属粒子の大きさは、粒径0.1〜30μmが好ましく、0.2〜10μmであることがより好ましい。なお、樹脂被覆金属粒子の大きさは、絶縁被覆も含めての大きさを示している。
このような樹脂被覆金属粒子における当該樹脂としては、種々の絶縁性樹脂を使用することができる。機能的強度や透明性の点から、アクリル系樹脂の硬化物を好ましく利用することができる。好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等のラジカル開始剤の存在下で、メタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとをラジカル共重合させた樹脂を挙げることができる。この場合、2,4−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤で架橋されていることがより好ましい。
また、金属粒子としては、予めシランカップリング剤でγ−グリシドキシ基やビニル基等を金属表面に導入しておくことが好ましい。
このような樹脂被覆金属粒子は、例えばトルエン等の溶媒中に金属粒子とシランカップリング剤とを投入し、室温で約1時間攪拌した後、ラジカルモノマーとラジカル重合開始剤と、必要に応じて架橋剤とを投入し、ラジカル重合開始温度に加温しながら攪拌することにより製造することができる。
光反射性異方性導電接着剤において、白色針状無機粒子とともに白色球状無機粒子が添加されている場合においても、光反射性異方性導電接着剤は、優れた強靭性を発揮することができることにより、温度変化によって伸縮しても接着面の剥離やクラックが発生することを抑制することができる。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤が含有する導電性粒子としては、異方性導電接続用の従来の導電性粒子において使用されている金属材料の粒子を使用することができる。すなわち、導電性粒子の金属材料としては、例えば金、ニッケル、銅、銀、半田、パラジウム、アルミニウム、それらの合金、それらの多層化物(例えば、ニッケルメッキ/金フラッシュメッキ物)等を挙げることができる。
なお、金、ニッケル或いは銅を金属材料とする導電性粒子は、茶色を呈することから、本発明の効果を他の金属材料よりも享受することができる。すなわち、上述したように、熱硬化性樹脂組成物中において、白色針状無機粒子が導電性粒子の大部分を覆うため、導電性粒子に起因して熱硬化性樹脂組成物が茶色を呈するのを抑制し、熱硬化性樹脂組成物全体が高い白色性を呈するようになる。
また、導電性粒子としては、樹脂粒子を金属材料で被覆した金属被覆樹脂粒子を使用するようにしてもよい。このような樹脂粒子としては、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子等を挙げることができる。樹脂粒子を金属材料で被覆する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用することができる。また、被覆する金属材料の層厚は、良好な接続信頼性を確保できる厚さであればよく、樹脂粒子の粒径や金属の種類にもよるが、通常、0.1〜3μmである。
また、樹脂粒子の粒径は、小さすぎると導通不良が生じ、大きすぎるとパターン間ショートが生じる傾向にあるので、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましく、さらには3〜5μmが特に好ましい。この場合、樹脂粒子の形状としては球形が好ましいが、フレーク状、ラクビーボール状であってもよい。
金属被覆樹脂粒子は、球状形状であり、その粒径は、大きすぎると接続信頼性の低下となるため、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。
なお、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤が含有する導電性粒子は、例えば図1A、図1Bの断面図に示されるような、光反射性を付与した光反射性導電性粒子とすることも可能である。
図1Aに示す光反射性導電性粒子10は、金属材料で被覆されているコア粒子1と、その表面に酸化チタン(TiO2)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子又は酸化アルミニウム(Al2O3)粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子2から形成される光反射層3とから構成される。このような無機粒子から形成された光反射層3は、白色から灰色の範囲にある色を呈する。このため、上述したように、可視光に対する反射特性の波長依存性が小さく、且つ可視光を反射しやすくなり、LED素子の発光効率をより向上させることができる。
なお、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子の内、硬化した異方性導電接着剤の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の光劣化が懸念される場合には、上述したように、光劣化に対して触媒性がなく、屈折率も高い酸化亜鉛を好ましく使用することができる。
コア粒子1は、異方性導電接続に供するものであり、表面が金属異材料で構成されている。コア粒子1の態様としては、例えばコア粒子1そのものが金属材料である態様、又は樹脂粒子の表面が金属材料で被覆された態様を挙げることができる。
無機粒子2から形成された光反射層3の層厚は、コア粒子1の粒径との相対的大きさの観点からみると、コア粒子1の粒径に対して小さすぎると反射率の低下が著しくなり、大きすぎると導通不良が生じる。このため、光反射層3の層厚は、0.5〜50%が好ましく、1〜25%がより好ましい。
また、光反射性導電性粒子10において、光反射層3を構成する無機粒子2の粒径は、小さすぎると光反射現象が生じ難くなり、大きすぎると光反射層の形成が困難となる傾向がある。このため、無機粒子2の粒径は、0.02〜4μmが好ましく、0.1〜1μm、0.2〜0.5μmが特に好ましい。この場合、光反射させる光の波長の観点からみると、無機粒子2の粒径は、反射させるべき光(すなわち、発光素子が発する光)が透過してしまわないように、その光の波長の50%以上であることが好ましい。この場合、無機粒子2の形状としては無定型、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。
光反射性導電性粒子10は、大小の粉末同士を物理的に衝突させることにより大粒径粒子の表面に小粒子からなる膜を形成させる公知の成膜技術(いわゆるメカノフュージョン法)により製造することができる。この場合、無機粒子2は、コア粒子1の表面の金属材料に食い込むように固定され、他方、無機粒子同士が融着固定されにくいから、無機粒子のモノレイヤが光反射層3を構成する。したがって、図1Aの場合、光反射層3の層厚は、無機粒子2の粒径と同等乃至わずかに薄くなると考えられる。
図1Bに示す光反射性導電性粒子20は、光反射層3が接着剤として機能する熱可塑性樹脂4を含有し、この熱可塑性樹脂4により無機粒子2同士も固定され、無機粒子2が多層化(例えば2層又は3層)している点で、図1Aの光反射性導電性粒子10と相違する。このような熱可塑性樹脂4を含有することにより、光反射層3の機械的強度が向上し、無機粒子の剥落等が生じにくくなる。
熱可塑性樹脂4としては、環境低負荷を意図してハロゲンフリーの熱可塑性樹脂を好ましく使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリスチレン、アクリル樹脂等を好ましく使用することができる。
このような光反射性導電性粒子20も、メカフュージョン法により製造することができる。メカフュージョン法に適用する熱可塑性樹脂4の粒子径は、小さすぎると接着機能が低下し、大きすぎるとコア粒子に付着しにくくなるので、0.02〜4μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。また、このような熱可塑性樹脂4の配合量は、少なすぎると接着機能が低下し、多すぎると粒子の凝集体が形成されるので、無機粒子2の100質量部に対し、0.2〜500質量部が好ましく、4〜25質量部がより好ましい。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤に含まれる熱硬化性樹脂としては、なるべく無色透明なものを使用することが好ましい。異方性導電接着剤中の光反射性導電性粒子の光反射効率を低下させず、更には入射光の光色を変えずに反射させるためである。ここで、無色透明とは、異方性導電接着剤の硬化物が、波長380〜780nmの可視光に対して光路長1cmの光透過率(JIS K7105)が80%以上、好ましくは90%以上となることを意味する。
光反射性異方性導電接着剤において、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対する光反射性導電性粒子等の導電性粒子の配合量は、少なすぎると導通不良が生じ、多すぎるとパターン間ショートが生じる傾向があるので、1〜100質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、熱硬化性樹脂組成物に白色針状無機粒子を加えることで、波長450nmの光に対する反射率(JIS K7105)が、9%よりも高い値となる。本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤の反射特性は、その他の様々な因子、例えば光反射性導電性粒子の反射特性や配合量、熱硬化性樹脂組成物の配合組成等を適宜調整することで、波長450nmの光に対する反射率(JIS K7105)で、30%以上を実現する。通常、反射特性の良好な光反射性導電性粒子の配合量を増量すれば、反射率も増大する傾向がある。
また、光反射性異方性導電接着剤の反射特性は屈折率という観点から評価することもできる。すなわち、その硬化物の反射率が、導電性粒子と光反射性絶縁粒子とを除いた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率よりも大きいと、光反射性絶縁粒子とそれを取り巻く熱硬化性樹脂組成物の硬化物との界面での光反射量が増大するからである。具体的には、光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)を差し引いた差が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.2以上であることが望まれる。なお、通常、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物の屈折率は、約1.5である。
熱硬化性樹脂組成物としては、従来の異方性導電接着剤や異方性導電フィルムにおいて使用されているものを利用することができる。一般に、このような熱硬化性樹脂組成物は、絶縁性バインダ樹脂に硬化剤を配合したものである。絶縁性バインダ樹脂としては、脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物等を主成分としたエポキシ系樹脂が好ましく挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは、液状であっても固体状であってもよい。具体的には、グリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等を挙げることができる。中でも、硬化物にLED素子の実装等に適した光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、グリシジルヘキサビドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを好ましく使用することができる。
複素環状エポキシ化合物としては、トリアジン環を有するエポキシ化合物を挙げることができ、特に好ましくは1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンを挙げることができる。
水添加エポキシ化合物としては、先述の脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物の水素添加物や、その他公知の水素添加エポキシ樹脂を使用することができる。
脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物は、単独で使用してもよいが、2種以上を併用することができる。また、これらのエポキシ化合物に加えて本発明の効果を損なわない限り、他のエポキシ化合物を併用してもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、ジアリールビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等から得られるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。
硬化剤としては、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアン等を挙げることができる。中でも、硬化物を変色させ難い酸無水物、特に脂環式酸無水物系硬化剤を好ましく使用できる。具体的には、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等を好ましく挙げることができる。
熱硬化性樹脂組成物において、脂環式エポキシ化合物と脂環式酸無水物系硬化剤とを使用する場合、それぞれの使用量は、脂環式酸無水物系硬化剤が少なすぎると未硬化エポキシ化合物が多くなり、多すぎると余剰の硬化剤の影響で被着体材料の腐食が促進される傾向があるので、脂環式エポキシ化合物100質量部に対し、脂環式酸無水物系硬化剤を、好ましくは80〜120質量部、より好ましくは95〜105質量部の割合で使用する。
本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤は、熱硬化性樹脂組成物と、導電性粒子と、光反射性絶縁粒子である白色針状無機粒子とを均一に混合することにより製造することができる。また、光反射性異方性導電フィルムとする場合には、熱硬化性樹脂組成物と、導電性粒子と、光反射性絶縁粒子である白色針状無機粒子とをトルエン等の溶媒とともに分散混合し、剥離処理したPETフィルムに所期の厚さとなるように塗布し、約80℃程度の温度で乾燥すればよい。
次に、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤を用いて発光素子を配線板に実装してなる発光装置について、図2を参照しながら説明する。図2に示す発光装置200は、基板21上の接続端子22と、発光素子としてのLED素子23のn電極24とp電極25とのそれぞれに形成された接続用のバンプ26との間に、上述の光反射性異方性導電接着剤を塗布し、基板21とLED素子23とがフリップチップ実装されている発光装置である。ここで、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100は、光反射性絶縁粒子10が熱硬化性樹脂組成物の硬化物11中に分散してなるものである。なお、必要に応じて、LED素子23の全体を覆うように透明モールド樹脂で封止してもよい。
このように構成されている発光装置200において、LED素子23は、発した光の内、基板21側に向かって発した光が光反射性異方性導電接着剤の硬化物100中の光反射性絶縁粒子10で反射し、LED素子23の上面から出射する。したがって、発光効率の低下を防止することができる。
発光装置200における光反射性異方性導電接着剤以外の構成(LED素子23、バンプ26、基板21、接続端子22等)は、従来の発光装置の構成と同様とすることができる。また、発光装置200は、本実施の形態における光反射性異方性導電接着剤を使用すること以外は、従来の異方性導電接続技術を利用して製造することができる。なお、発光素子としては、LED素子23の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の発光素子を適用することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の範囲は、下記のいずれかの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(異方性導電接着剤の作製)
白色針状無機粒子と、球状樹脂の表面を金メッキ処理した導電性粒子(粒径5μm)とをエポキシ硬化系接着剤(CEL2021P−MeHHPAを主成分とした接着性バインダ)からなる熱硬化性樹脂組成物に混合し、異方性導電接着剤を作製した。白色針状無機粒子の添加量は、熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%とした。白色針状無機粒子としては、長方向粒径1.7μm、短方向粒径0.13μm(アスペクト比13.1)の二酸化チタン(TiO2)ウィスカを使用した。また、導電性粒子の添加量は、熱硬化性樹脂組成物に対して10質量%とした。
(光反射率の評価)
作製した異方性導電接着剤を白色板上に厚さ100μmとなるように塗布し、200℃で1分間加熱して硬化させた。得られた硬化物について、分光光度計(島津製作所社製 UV3100)を用いて硫酸バリウムを標準とした波長450nmの光に対する全反射率(鏡面反射及び拡散反射)を測定した。
(LED実装サンプルの作製)
100μmピッチの銅配線にNi/Au(5.0μm厚/0.3μm厚)メッキ処理した配線を有するガラスエポキシ基板に、バンプホルダ(FB700、カイジョー(株))を用いて15μm高の金(Au)バンプを形成した。この金バンプ付きエポキシ基板に、光反射性異方性導電接着剤を用いて、青色LED(Vf=3.2V(If=20mA))素子を200℃、20秒、1kg/チップの条件でフリップチップ実装し、テスト用LEDモジュールを得た。
(全光束量の評価)
得られたテスト用LEDモジュールについて、全光束量測定システム(積分全球)(LE−2100、大塚電子株式会社製)を用いて全光束量を測定した(測定条件 If=20mA(定電流制御))。
(導通信頼性及びクラック発生の有無の評価)
導通信頼性及びクラック発生の有無を、冷熱サイクル試験(TCT)により評価した。テスト用LEDモジュールをTCTに入れ、(a)−40℃で30分間←→100℃で30分間、1000サイクル、(b)−55℃、30分←→125℃、30分、1000サイクルを行った。すなわち、(a)−40℃及び100℃の雰囲気に各30分間曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを1000サイクル行い、また(b)−55℃及び125℃の雰囲気に各30分間曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを1000サイクル行った。
導通信頼性の評価は、TCTを1000サイクル行った後に、TCTから取り出したテスト用LEDモジュールについて、If=20mA時のVf値を測定した。初期Vf値からのVf値の上昇分が5%以内である場合には導通信頼性が良好であると判断して「○」とし、初期Vf値からのVf値の上昇分が5%以上である場合には導通信頼性が良好ではないと判断して「×」とした。
クラック発生の有無の評価は、TCTを1000サイクル行った後に、TCTから取り出したテスト用LEDモジュールについて、金属顕微鏡にて青色LED素子の上面より観察を行い、クラックの発生の有無を観察した。光反射性異方性導電接着剤にクラックの発生が観察されない場合を「○」とし、光反射性異方性導電接着剤にクラックの発生が観察された場合を「×」とした。
<実施例2>
白色針状無機粒子として、長方向粒径50μm、短方向粒径3μm(アスペクト比16.7)の酸化亜鉛(ZnO)ウィスカ(パナテトラWZ−05F1、アムテック製)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<実施例3>
白色針状無機粒子として、長方向粒径20μm、短方向粒径0.6μm(アスペクト比33.3)のチタン酸カリウムウィスカ(ティスモシリーズ、大塚化学製)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<実施例4>
白色針状無機粒子として、長方向粒径50μm、短方向粒径3μm(アスペクト比16.7)の酸化亜鉛(ZnO)ウィスカ(パナテトラWZ−05F1、アムテック製)の表面をシランカップリング剤で処理したものを使用した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<実施例5>
白色針状無機粒子として、長方向粒径50μm、短方向粒径3μm、アスペクト比16.7である酸化亜鉛(ZnO)ウィスカ(パナテトラWZ−05F1、アムテック製)を、熱硬化性樹脂組成物に対して9.0体積%の割合で添加するとともに、粒径0.6μm(アスペクト比1.0)の酸化亜鉛(ZnO)の白色球状無機粒子(I種、堺化学製)を、熱硬化性樹脂組成物に対して3.0体積%の割合で添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<比較例1>
異方性導電接着剤に白色針状無機粒子を含有させない以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<比較例2>
実施例1の白色針状無機粒子に代え、粒径0.9μm(アスペクト比1.0)の酸化チタンの白色球状無機粒子を、熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%の割合で添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
<比較例3>
実施例1の白色針状無機粒子に代え、0.6μm(アスペクト比1.0)の酸化亜鉛の白色球状無機粒子を、熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%の割合で添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
[表1]に、実施例1〜5、比較例1〜3の結果を示す。
[表1]に示す実施例1の結果からわかるように、白色針状無機粒子としてアスペクト比が13.1であるTiO2(二酸化チタン)を熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%添加した光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、55%であった。また、この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、350(mlm)であった。球状のTiO2(白色球状無機粒子)を使用した比較例2よりも、反射率及びLEDからの光の取り出し効率は、ともにやや低下した。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなく、耐クラック性が向上した。
実施例2の結果からわかるように、針状白色無機粒子としてアスペクト比が16.7であるZnO(酸化亜鉛)を熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%の割合で添加した光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、35%であった。また、この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、300(mlm)であった。球状のZnO(白色球状無機粒子)を使用した比較例3よりも、反射率及びLEDからの光の取り出し効率は、ともにやや低下した。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなく、耐クラック性が向上した。
実施例3の結果からわかるように、白色針状無機粒子としてアスペクト比が33.3であるチタン酸カリウムを熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%の割合で添加した光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、30%であった。また、この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、250(mlm)であった。粒状のZnO(白色球状無機粒子)を使用した比較例3よりも、反射率及び青色LEDからの光の取り出し効率は、ともにやや低下した。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなく、耐クラック性が向上した。
実施例4の結果からわかるように、白色針状無機粒子としてアスペクト比が16.7であるZnOを熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%の割合で添加した光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、35%であった。また、この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、300(mlm)であった。粒状のZnO(白色球状無機粒子)を使用した比較例3よりも、反射率及びLEDからの光の取り出し効率は、ともにやや低下した。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなく、耐クラック性が向上した。
実施例5の結果からわかるように、白色針状無機粒子としてアスペクト比が16.7である酸化亜鉛(ZnO)を熱硬化性樹脂組成物に対して9.0体積%の割合で添加するとともに、球状のZnO(白色球状無機粒子)を熱硬化性樹脂組成物に対して3.0体積%の割合で添加した光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、40%であった。また、この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、250(mlm)であった。白色球状無機粒子として球状の酸化亜鉛(ZnO)を使用した比較例3よりも、反射率及びLEDからの光の取り出し効率は、ともにやや低下した。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなく、耐クラック性が向上した。
比較例1の結果からわかるように、針状白色無機粒子を添加せず、導電性粒子を熱硬化性樹脂組成物に対して10質量%添加した異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmでの反射率は、8%であった。この異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、200(mlm)であった。青色LEDから出射された波長450nmの光は、金(Au)に吸収されるため、この光に対する反射率が低下し、これにより、青色LEDの発光効率(光取り出し効率)が低くなった。TCT(−40〜100℃)1000サイクル、TCT(−55〜125℃)1000サイクル何れの後においてもクラックの発生はなかった。
比較例2の結果からわかるように、二酸化チタン(TiO2)の白色球状無機粒子を熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%添加した光反射性異方性導電接着剤の波長450nmでの反射率は、62%であった。この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、390(mlm)であった。しかしながら、TCT(−40〜100℃)1000サイクル後においてはクラックの発生はなかったものの、TCT(−55〜125℃)1000サイクル後においてクラックが発生した。
比較例3の結果からわかるように、酸化亜鉛(ZnO)の白色球状無機粒子を熱硬化性樹脂組成物に対して12.0体積%添加した光反射性異方性導電接着剤の波長450nmでの反射率は、40%であった。この光反射性異方性導電接着剤を用いたLED実装サンプルの全光束量は、350(mlm)であった。TCT(−40〜100℃)1000サイクル後においてはクラックの発生はなかったものの、TCT(−55〜125℃)1000サイクル後においてクラックが発生した。
なお、実施例1〜5、比較例1〜3の異方導電接着剤では、初期、TCT(−40〜100℃)1000サイクル後、TCT(−55〜125℃)1000サイクル後の何れにおいても、このような温度変化に対して高い耐性を有し、優れた導通信頼性を発揮することがわかった。
以上の結果からわかるように、白色針状無機粒子を熱硬化性樹脂組成物に添加した光反射性異方性導電接着剤を用いた実施例1〜5では、LED素子から出射された光に対する反射率の低下を抑制し、LED素子の発光効率(光取り出し効率)を向上させることができた。また、実施例1〜5における光反射性異方性導電接着剤は、TCT後においても高い耐クラック性を確認できた。これは、針状形状からなる白色針状無機粒子によって熱硬化性樹脂組成物の強靭性を高めることができたためと考えられる。また、実施例1〜5の光反射性異方性導電接着剤は、温度変化に対して高い耐性を有し、優れた導通信頼性を発揮することがわかった。