JP5785095B2 - 配列変種の対立遺伝子特異的抑制を用いる核酸増幅 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸ベースの分子診断の分野に関し、さらに詳しくは、不要な配列変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制を用いる核酸配列増殖の改良された方法に関する。
核酸ベースの診断検査は、医学、法医学、及び環境用途で広く使用されている。特定の核酸配列中の変化を検出することは、多型と変異(疾患を引き起こす変異を含む)についての情報を提供する。例えば個人の変異遺伝子型を検出することは、遺伝子カウンセリングのための疾患キャリアー状態を提供する。より困難な課題は、組織中で出現し、疾患を引き起こすか又は疾患の進行を引き起こす体細胞変異を検出することである。例えば、特定の変異により多くの癌が引き起こされる。後に腫瘍進行中に、癌細胞中で追加の変異が蓄積する。Lea et al. (2007) Genetic pathways and mutation profiles of human cancers: site and exposure-specific patterns、Carcinogenesis、28(9):1851-1858. Downward、J. (2003) Targeting RAS signaling pathways in cancer therapy (2005)、Nature Rev. Cancer、3:11-22を参照。これらの変異は疾患転帰と治療への応答に対して予測的である。Ikediobi et al. (2008) Somatic pharmacogenomics in cancer、Pharmacogenomics J.、8:305-314、Pao et al. (2005) KRAS mutations and primary resistance of lung adenocarcinomas to gefitinib and or erlotinib、PLoS Medicine、2(1)、e17を参照。そのような変異を検出する能力は、癌の診断と治療法で極めて有用である。しかし変異の検出、特に早期検出は多くの技術的課題に直面している。
癌関連変異の検出における大きな課題は変異のまれな性質であり、特にそれが癌発生中の単一細胞で最初に起きる時である。まずわずかな亜集団の細胞のみが変異を有し、周りの細胞はまだ野生型配列を持っている。従って核酸分離体では、新たに変異した核酸は過剰の野生型核酸により覆い隠される。多くの対立遺伝子特異的検出法(例えば対立遺伝子特異的PCR)は、不要な配列(野生型配列)よりも目的の配列(変異配列)の優先的増幅を使用する。残念ながら多くの場合、アッセイの選択性は完全ではなく、すなわち不要な配列も、所望の配列よりははるかに低い効率であるが、増幅される。不要な(野生型)配列は変異配列よりはるかに過剰に存在するため、不具合は抹消され、野生型配列が主に増幅されて、変異配列の存在が覆い隠される。
この問題に対応していくつかの方法が開発されている。例えば米国特許第5,849,497号及び特許出願第12/186,311号(2008年8月5日出願)は、競合する不要な配列の増幅を防止する増幅ブロッカーの使用を教示する。このアプローチではブロッカーは、増幅プライマーの1つの下流に不要な配列(所望の配列とではなく)と安定なハイブリッドを形成する非伸長性オリゴヌクレオチドである。ブロッカーが安定にハイブリダイズされると、5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如したDNAポリメラーゼはプライマー伸長を完了することができない。このアプローチの成功は、所望の配列と不要な配列との配列の相違に依存する。配列間に複数の差がある場合にこのアプローチが最も有効に作用し、ブロッカーと抑制すべき配列とのハイブリッドが安定になり、ブロッカーと増幅すべき配列とのハイブリッドが不安定になることが確保される。
上記方法にはいくつかの技術的限界がある。より長いブロッカーオリゴヌクレオチドはブロッキングがより効率的であるが、区別することはできず、従ってすべての配列変種の増幅をブロックしてしまう。より短いブロッカーは、すべての増幅を効率的に行うことはできない。ある場合には、差が少なすぎてブロッカーが非常に弱い区別しかできない。従って臨床的関連のある一部の遺伝子座において、ブロッカー単独では対立遺伝子特異的増幅の技術的問題を解決するのに不充分である。
本発明は、2種以上の変種の形で存在する標的配列の所望の変種の選択的増幅の改良法であって、おそらくは反応混合物中に標的配列の少なくとも1種の変種を含む試料を提供し、標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第1のオリゴヌクレオチドを提供し、標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第2のオリゴヌクレオチドを提供し(ここで、前記第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチドに修飾塩基を含有する)、標的配列の不要な変種に対するよりも小さい親和性で標的配列の所望の変種に対しハイブリダイズすることができ、かつ同じ鎖にそして前記第2のオリゴヌクレオチドの0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計された、第3のオリゴヌクレオチドを提供し、実質的に5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如しており、ホットスタート(hot-start)能力を有する核酸ポリメラーゼを提供し、前記反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に付す、ことを含んでなり、第3のオリゴヌクレオチドが標的配列の不要な変種にハイブリダイズした時、第3のオリゴヌクレオチドは前記核酸ポリメラーゼによる前記第2のオリゴヌクレオチドの伸長を実質的に阻害するが、前記第3のオリゴヌクレオチドが標的配列の所望の変種に対しハイブリダイズした時は、前記核酸ポリメラーゼによる前記第2のオリゴヌクレオチドの伸長を実質的に阻害しないことを特徴とする方法である。
本発明の方法の略図である。 本発明の実施例1における野生型とKRAS変異体標的の別々の増幅と融解分析の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例2における野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例3における患者由来のホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)試料中のKRAS変異体の対立遺伝子特異的増幅と検出の結果を示す。 本発明の実施例で使用される標的核酸配列を示す。
本発明は、標的配列の1種以上の他の変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制により増強される、標的配列のある変種の選択的増幅の改良された方法である。
定義
特に明記しない場合は、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本発明の説明と特許請求の範囲において、以下の定義が使用される。
「生物学的試料」又は「試料」は、目的の核酸を含有する可能性のある任意の物質を示す。試料は当業者に公知の任意の方法により得られる。そのような試料は、ヒト又は他の動物から単離される、ある量の組織若しくは液体、又はその精製画分でもよく、特に限定されないが:体液、例えば血漿、血清、髄液、唾液、腹水、リンパ液、眼房水若しくは硝子体液、滑液、尿、涙、精液、膣分泌液、肺滲出液、漿液;組織、例えば血液、通常の組織、腫瘍、パラフィン包埋組織がある。試料はまた、インビトロの細胞培養物(又はこれに由来)でもよい。試料には、調整培地、細胞、細胞成分もある。核酸は、当前記分野で公知の方法により生物学的試料から得られる。
本明細書において「ブロッカーオリゴヌクレオチド」は以下のオリゴヌクレオチドを意味する:
(1)充分に低い融解温度で標的配列のいくつかの変種と2本鎖を形成して、5’−3’ヌクレアーゼ活性が有意に欠如したポリメラーゼが、ブロッカーオリゴヌクレオチドを置換し、かつ標的配列のこれらの変種を複製することを可能にするオリゴヌクレオチド、及び
(2)充分な高い融解温度で標的配列の他の変種と2本鎖を形成して、5’−3’ヌクレアーゼ活性が有意に欠如したポリメラーゼが標的配列のこれらの変種を複製することを弱めるオリゴヌクレオチド。
ブロッカーオリゴヌクレオチドは典型的には、ポリメラーゼによるブロッカーオリゴヌクレオチドの伸長を妨害するための3’末端での修飾を含む。
「標的配列」は、生物学的試料中の検出すべきヌクレオチド配列を意味する。標的配列は、大きな配列の一部又は単離された核酸でもよい。
「増幅を弱める」という表現は、配列の増幅を排除するか又は測定(検出)できる程度に低下させることを意味する。本明細書においてブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的配列の1種以上の変種の増幅を弱めることができ、従ってそのような変種の増幅は、ブロッカーオリゴヌクレオチドが欠如した対照反応と比較して検出できないか、又はあまり検出できない。
用語「核酸」と「ポリヌクレオチド」は同義で使用され、RNA、DNAのポリマー、又はその修飾型、例えばペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(PNA)などを意味する。用語「核酸」と「ポリヌクレオチド」との間には長さの明確な差は無い。「オリゴヌクレオチド」は一般により短い核酸であり、これは一般的に1本鎖である。
核酸は1本鎖であるか又は2本鎖であり、一般にホスホジエステル結合を含有するが、ある場合には、ホスホラミダイト(Beaucage et al. (1993) Tetrahedron 49(10): 1925; Letsinger (1970) J. Org. Chem. 35:3800; Sprinzl et al. (1977) Eur. J. Biochem. 81:579; Letsinger et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14: 3487; Sawai et al. (1984) Chem. Lett. 805; Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; 及び Pauwels et al. (1986) Chemica Scripta 26:1419)、ホスホロチオエート(Mag et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:1437、及びU.S. Pat. Nos. 5,644,048)、ホスホロジチオエート(Briu et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O−メチルホスホラミダイト結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Press (1992))、及びペプチド核酸骨格と結合(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895; Meier et al. (1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008; Nielsen (1993) Nature 365:566; and Carlsson et al. (1996) Nature 380:207)を含む別の骨格を有する核酸類似体が含まれる。他の類似体核酸は、陽性荷電骨格(Denpcy et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097);非イオン性骨格(U.S. Pat. Nos. 5,386,023、5,637,684、5,602,240、5,216,141、及び4,469,863; Angew (1991) Chem. Intl. Ed. English 30: 423; Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; Letsinger et al. (1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597; Chapters 2 and 3、ASC Symposium Series 580、"Carbohydrate Modifications in Antisense Research"、Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cook; Mesmaeker et al. (1994) Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4: 395; Jeffs et al. (1994) J. Biomolecular NMR 34:17; Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))、及びU.S. Pat. Nos. 5,235,033と5,034,506、及びChapters 6 and 7、ASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cookに記載されたような非リボース骨格を有するものがある。1種以上の炭素環式糖を含有する核酸も、核酸の定義に含まれる(Jenkins et al. (1995) Chem. Soc. Rev. pp 169-176)。例えばRawls、C & E News Jun. 2、1997 page 35に、いくつかの核酸類似体が記載されている。リボゾーム−リン酸骨格のこれらの修飾は、追加の成分(例えば標識成分)の付加を促進したり、又は生理学的環境中でのそのような分子の安定性や半減期を改変するために行われる。
核酸は一般に、典型的な窒素含有塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル)を含む。しかし核酸はまた、天然に存在しない複素環又は他の修飾塩基も含む。特にそのような塩基は、Seela et al. (1991) Helv. Chim. Acta 74:1790、Grein et al. (1994) Bioorg. Med. Chem. Lett. 4:971-976、及び Seela et al. (1999) Helv. Chim. Acta 82:1640に記載されている。他の塩基には、7−デアザプリン類(例えば、7−デアザグアニン、7−デアザアデニンなど)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン類、プロピニル−dN(例えば、プロピニル−dU、プロピニル−dCなど)などがある。例えば、米国特許第5,990,303号参照。さらに別の代表的複素環塩基には、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチンの8アザ誘導体;アデニン、グアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、及びキサンチンの7−デアザ−8−アザ誘導体;6−アザシチジン;5−フルオロシチジン;5−クロロシチジン;5−ヨードシチジン;5−ブロモシチジン;5−メチルシチジン;5−プロピニルシチジン;5−ブロモビニルウラシル;5−フルオロウラシル;5−クロロウラシル;5−ヨードウラシル;5−ブロモウラシル;5−トリフルオロメチルウラシル;5−メトキシメチルウラシル;5−エチニルウラシル;5−プロピニルウラシル、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシ−ヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルクエウオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、7−デアザアデノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、7−デアザグアノシン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−Dマンノシルクエウオシン、5’−メトキシカルボキシ−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデノシン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエウオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6−ジアミノプリン、及び5−プロピニルピリミジンなどがある。
天然に存在しない塩基とヌクレオチドのさらなる例は、米国特許第5,484,908号に記載された5−プロピニルピリミジン類、及び米国特許第5,645,985号と5,830,653号に記載された他の修飾ピリミジン類である。[2.2.1]ビシクロヌクレオチドは米国特許第6,639,059号に記載されている。他の修飾プリン類やピリミジン類は、米国特許第6,011,611号に記載された。
「プライマー伸長」という用語は、ヌクレオチドがポリメラーゼのような生体触媒を取り込んで、プライマーの3’末端に1個以上のヌクレオチドを付加する能力を意味する。
「プライマー伸長に適した条件」とは、鋳型核酸にハイブリダイズするプライマーが、ヌクレオチドを取り込む生体触媒(例えばポリメラーゼ)により伸長される条件を意味する。例えばそのような条件は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のアニーリングと伸長工程で起きる。そのような条件が変動可能であり、一般に溶液のイオン強度、温度、及び具体的な鋳型核酸やプライマーの配列により影響を受けることは、当業者に明らかであろう。種々のPCR条件は、PCR Strategies (M. A. Innis, D. H. Gelfand, and J. J. Sninsky eds., 1995, Academic Press, San Diego, Calif.) の第14章; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (M. A. Innis, D. H. Gelfand, J. J. Sninsky, and T. J. White eds., 1990 Academic Press, N.Y.) に記載されている。
ある核酸の少なくとも1つのサブ配列が、他の核酸の少なくとも1つのサブ配列と逆平行に結合して2本鎖を形成できる時、その核酸は他の核酸と「相補的」である。本発明において、特定の核酸配列に「完全に相補的」なオリゴヌクレオチドでは、オリゴヌクレオチドの各塩基はその特定の配列中の対応する塩基と相補的である。オリゴヌクレオチド中の1個以上の塩基が他の核酸中の対応する塩基と相補的ではない(「ミスマッチ」)時、オリゴヌクレオチドはその核酸配列に対して「部分的に相補的」である。修飾塩基は一般に、非修飾前駆体と同じ塩基に対して相補的であると考えられる。例えば7−デアザグアニンはシトシンと相補的であり、N6−ベンジル−アデニンはチミンと相補的であると考えられる。
「プライマー核酸」又は「プライマー」は、適切な反応条件下で、標的核酸(時に、鋳型核酸と呼ばれる)にハイブリダイズすることができ生体触媒(例えばポリメラーゼ)を取り込むヌクレオチドによる鎖伸長を可能にする、オリゴヌクレオチドである。プライマー核酸は典型的には約6〜約100ヌクレオチドの長さの天然の又は合成オリゴヌクレオチドであるが、最も一般的にはプライマーは15〜35ヌクレオチドの長さである。短いプライマー核酸は一般に、鋳型核酸と充分に安定なハイブリッド複合体を形成するには、低い温度を必要とする。鋳型核酸に少なくとも部分的に相補的なプライマーは、典型的には伸長が起きるのに充分である。ある標的配列の増幅に適したプライマーの設計は当前記分野で公知であり、本明細書に引用した文献に記載されている。所望であればプライマーは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の方法により検出可能な標識物を取り込むことにより標識することができる。例えば、有用な標識物には、ラジオアイソトープ、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(一般にELISAで使用される)、ハプテン、及びその抗血清やモノクローナル抗体が利用できるタンパク質がある。これら及び他の標識物の多くは本明細書に記載されているか、又は当前記分野で公知である。
本明細書において用語「プローブ」は、標的核酸中の少なくとも1つのサブ配列との部分的又は完全な相補性のために、適切な条件下で標的核酸のある領域と2本鎖構造を形成することができるオリゴヌクレオチド(又は他の核酸配列)を意味する。上記したようにプローブは、典型的には標的核酸の検出を可能にするように標識される。プローブの3’末端は典型的には、生体触媒を取り込んでいるヌクレオチドによるプローブの伸長を防止するように設計される。これは、非相補性塩基を使用して、又は化学成分(例えば、ビオチン又はリン酸塩基)を3’末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に付加することにより行うことができる。3’末端のこれらの化学成分は、プローブがハイブリダイズしている核酸の以後の検出又は捕捉のための標識物として作用することにより、2つの目的を果たす。伸長を防ぐことは、3’−OHを除去することにより、又はジデオキシヌクレオチドのような3’−OHが欠如したヌクレオチドを使用することにより、又は立体障害により伸長を阻止する大きな基を加えることにより、行うこともできる。上記したように本発明のブロッカーオリゴヌクレオチドは、場合によりプローブとしても機能することができる。
用語「5’から3’ヌクレアーゼ活性」又は「5’−3’ヌクレアーゼ活性」は、核酸鎖の5’末端からヌクレオチドが除去される、典型的には核酸鎖合成に関連する核酸ポリメラーゼの活性を意味し、例えば大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIはこの活性を有するが、クレノウ断片はこの活性を持たない。
用語「5’−3’ヌクレアーゼ活性が実質的に欠如している核酸ポリメラーゼ」又は「5’−3’ヌクレアーゼ欠損酵素」、又は簡単に「ヌクレアーゼ欠損酵素」は、TaqDNAポリメラーゼの50%又はそれ以下の5’−3’活性を有するポリメラーゼを意味する。5’−3’ヌクレアーゼ活性を測定する方法及び測定条件は、米国特許第5,466,591号に記載されている。5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如したポリメラーゼの例には、TaqDNAポリメラーゼのストフェルフラグメント(Stoffel Fragment)(米国特許第5,466,591号)、サームス・アフリカヌス(Thermus africanus)DNAポリメラーゼの変異体(米国特許第5,968,799号)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)DNAポリメラーゼの変異体(米国特許第5,624,833号と5,420,029号)、サームス(Thermus)種sps17とサームス(Thermus)種Z05 DNAポリメラーゼの変異体(米国特許第5,466,591号と5,405,774号)がある。5’−3’ヌクレアーゼ欠損酵素はまた、2種以上の種からドメインからなり、5’−3’ヌクレアーゼ活性を排除する変異を有するキメラ、すなわちキメラタンパク質でもよい(米国特許第5,795,762号及び6,228,628号)。
熱安定性DNAポリメラーゼの例には、サームス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サームス・カルドフィルス(Thermus caldophilus)、サームス(Thermus)種Z05(例えば、米国特許第5,674,738号参照)、サームス・アクアチクス(Thermus aquaticus)、サームス・フラブス(Thermus flavus)、サームス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サームス(Thermus)種sps17、デイノコッカス・ラジオヅランス(Deinococcus radiodurans)、ホットスプリングファミリー B/clone7、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バシラス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)、大腸菌(Escherica coli)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、及びサーモシホ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)由来のものがある。無数の熱安定性DNAポリメラーゼの完全な核酸配列とアミノ酸配列が、公のデータベースで利用可能である。
本明細書において用語「Tm」は、「融解温度」を意味する。融解温度は、2本鎖核酸分子(すなわち、完全に又は部分的に相補的な核酸2本鎖)の集団の半分が解離して1本鎖になる温度を意味する。2本鎖ポリヌクレオチドのTmの予測は、塩基配列ならびに他の要因(構造及び配列の特性、相補性の程度、オリゴマー結合の本質、及び溶液のイオン強度を含む)を考慮する。Tmを予測し実験的に測定する方法は、当前記分野で公知である。例えばTmは従来、融解曲線解析(ここで、2本鎖核酸分子は徐々に加熱され、2本鎖の融解に相関する検出可能なパラメータの変化を測定することにより、2本鎖の会合/解離状態が追跡される)により測定される。パラメータの変化は、温度変化に対してプロットされる。この融解曲線からTmが決定される。
核酸増幅反応において用語「ホットスタート」とは、温度が充分に上昇して1個以上のプライマーの必要なハイブリダイゼーション特異性が提供されるまでは、少なくとも1つの決定的に重要な試薬の添加が抑制される(又は反応混合物中に存在する場合は、試薬は不活性化なままである)プロトコールである。「ホットスタート酵素」とは、ホットスタートプロトコールで「添加抑制」又は不活性試薬として作用することができる酵素(典型的には核酸ポリメラーゼ)である。
本発明は、標的配列の不要な変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制を使用する、核酸の選択的増幅の改良である。本発明の方法の略図を図1に示す。この略図は、2本鎖核酸標的と、プライマー(矢印)の1つの下流の標的にアニーリングすることができるブロッカーオリゴヌクレオチドを示す。ブロッカーの上流に位置するプライマーの3’末端は化学修飾されている。Fは蛍光レポーター成分を示し、Qはブロッカーオリゴヌクレオチドに結合した蛍光クエンチャーを示す。
本発明の改良は、プライマーとブロッカーオリゴヌクレオチドの相対的近傍性ならびにプライマーとポリメラーゼのいくつかの化学的修飾が選択的増幅を大幅に改良するという発見に基づく。
標的配列の不要な変種の増幅を抑制する一般的方法は、米国特許出願第12/186,311号(2008年8月5日出願)に教示されている。ブロッカーオリゴヌクレオチドによる増幅の対立遺伝子特異的抑制の成功は、ブロッカーオリゴヌクレオチドと標的とのハイブリッドの安定性に依存する。ブロッカーとのハイブリッドがより安定な場合(不要な配列の場合のように)、増幅はブロッカーにより抑制される。ブロッカーとのハイブリッドがあまり安定ではない場合(増幅される配列の場合のように)、増幅が起きる。核酸ハイブリッドの安定性を上昇させる従来の方法は、ハイブリダイズする核酸の長さを長くすることである。しかし長くなったブロッカーオリゴヌクレオチドは区別を弱めるであろう。標的配列のすべての変種の増幅が抑制されるであろう。従ってある標的配列について、ブロッカーオリゴヌクレオチドを最適化する能力が限定される。
米国特許出願第12/186,311号に記載のように、ブロッカーオリゴヌクレオチドは典型的には、2つのプライマーオリゴヌクレオチド間のどこかでハイブリダイズするように設計される。1個以上のブロッカーは、標的核酸の片方の又は両方の鎖にハイブリダイズし得る。唯一の公知の要件は、その伸長が抑制されるプライマーの下流で及びこれと同じ鎖に、ブロッカーがハイブリダイズしなければならないということである。しかし本発明において、プライマーの3’末端とブロッカーオリゴヌクレオチドの5’末端との距離が、ブロッキングの効率に影響を与えることが見いだされた。一般にプライマーとブロッカーのそれぞれの端の間の最適距離は0〜60ヌクレオチドである。各特定の標的配列について、この範囲内の最適距離は、本明細書に記載の指針を使用して経験的に決定される。
本明細書で発見された別の改良は、ブロッカーオリゴヌクレオチドの上流に位置し同じ鎖にハイブリダイズするプライマーの3’末端を化学的に修飾することにより、ブロッキングの程度を改良できるということである。従来化学修飾は、対立遺伝子特異的プライマー(すなわち所望の配列変種と一致するが、不要な配列変種とミスマッチを有するプライマー)で見つかる。増幅プライマーの特異性に影響を与える化学修飾の例は、米国特許第6,011,611号に記載されている。これらの修飾は、いくつかの窒素含有塩基の環外アミノ基への共有結合を含む。プライマーのほぼ5個の3’末端ヌクレオチド内に位置する1個以上のヌクレオチド中に存在する修飾は一般に、増幅の特異性を上昇させることが知られている。先行技術によると、プライマーが所望の配列変種と不要な配列変種とに同等に相補的な時、プライマーの化学修飾は必要ではない。
驚くべきことに、プライマーの化学修飾がブロッカーオリゴヌクレオチドによる増幅の対立遺伝子特異的抑制の成功に役割を果たすことが、本発明者により見いだされた。この作用は、プライマー自体が先行技術が要求するような対立遺伝子特異的ではないため、特に驚くべきことである。プライマーは、所望の配列変種と不要な配列変種の両方に等しく相補的である。
ある実施態様において本発明は、不要な配列変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制を用いる選択的増幅アッセイであり、これは少量の所望の配列変種とモル過剰の不要な配列変種の存在下で行われる。ある実施態様において、所望の配列変種と不要な配列変種との比率は1:1、1:20、1:100、1:1000、又はそれ以上である。
本発明のブロッカーオリゴヌクレオチドは、プライマー結合部位間に位置する標的配列の部分にアニーリングしハイブリダイズするように設計される。1個以上のブロッカーは、標的核酸の片方の又は両方の鎖にハイブリダイズするように設計される。ブロッカーオリゴヌクレオチドは、所望の変種より標的配列の不要な変種と高融解温度でハイブリッドを形成するように設計される。不要な配列変種の増幅の抑制のためのブロッカーオリゴヌクレオチドの設計は、米国特許出願12/186,311号(2008年8月5日出願)に記載されている。
一般にブロッカーは、標的配列の所望の変種と1個以上のミスマッチを取り込むように設計される。標的配列の別の変種では、ブロッカーはミスマッチがより少ないか又は全く無い。相補性の程度は核酸ハイブリッドの融解温度に影響を与えるため、ブロッカーオリゴヌクレオチドと標的配列の所望の変種とで形成されるハイブリッドのTmは、好ましくはブロッカーオリゴヌクレオチドにより形成されるすべてのハイブリッドの中で最も低い。相補性の程度以外にオリゴヌクレオチドの融解温度はまた、異常な塩基の存在と数によっても影響を受け、これらは当前記分野で公知のように「安定化性」(例えば、5−メチルシトシン及びプロピニルウリジン)又は「不安定化性」(例えば、N6−ベンジルアデノシン)である。場合により、このような塩基はブロッカーオリゴヌクレオチド中に取り込まれて、その融解温度をさらに調節する。
一般に先行技術は、ブロッカーオリゴヌクレオチドが2つの増幅プライマーの間で位置し、その伸長を抑制すべきプライマーの下流で同じ鎖にハイブリダイズしなければならないことを教示する。本発明の範囲において、ブロッカーとプライマーオリゴヌクレオチドの相対的位置が、増幅を抑制するブロッカーの能力に大きく影響することが見いだされた。例えばブロッカーは、プライマーの1つの3’末端の、0〜60ヌクレオチド、例えば0、1、2、3、又はそれ以上のヌクレオチド下流に位置し、上流プライマーと同じ鎖にハイブリダイズする。
ブロッカーオリゴヌクレオチドは、「用手法で」、又はVisual OMP (DNA Software, Inc., Ann Arbor, Mich.)、Oligo 6 (Stratagene, La Jolla, Calif.)、Sequencher (Gene Codes, Ann Arbor, Mich.) 及び DNAStar (DNAStar, Inc., Madison, Wis.) のような当業者に公知のオリゴ設計ソフトウェアプログラムのいずれかを使用して設計してもよい。設計プロセスの目標は、温度と特定の増幅アッセイの条件下で、標的配列の異なる変種とブロッカーとのハイブリッドの異なる熱力学的安定性を有するブロッカーオリゴヌクレオチドと、特定の増幅アッセイの温度と条件とを作成することである。
ある実施態様においてブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的配列の増幅の検出のためのプローブとして2つの機能を有する。プローブとして使用するためにブロッカーオリゴヌクレオチドは、当前記分野で公知の任意の種の検出可能な標識物で標識される。例えば標識物は、蛍光、化学発光、放射活性、酵素などでもよい。このようなブロッカー−プローブオリゴヌクレオチドは、増幅検出(「増殖曲線」)ならびに増幅後融解アッセイのような多くの検出法で使用される。
本発明の増幅反応において、1種以上のブロッカーオリゴヌクレオチドを使用することができる。ブロッカーオリゴヌクレオチドは、増幅すべき核酸の1つの鎖にハイブリダイズするように設計されるか、又は両方の鎖にハイブリダイズするように別々のブロッカーが設計される。核酸の同じ鎖にハイブリダイズするように2種以上のオリゴヌクレオチドが設計される場合、オリゴヌクレオチドは同じラウンドの又は異なるラウンドの増幅反応で使用される。例えば2回目の増幅が、1回目のラウンドで使用されるプライマーに対して内部に位置するプライマーを含む場合、そのような2回目のプライマーに対して内部に位置するブロッカーが2回目又は以後の増幅ラウンドで使用される。すべての又は少なくとも1つのブロッカーオリゴヌクレオチドは、本発明のガイドラインに従って設計すべきである。
本発明の増幅プライマーは、標的配列の既存の変種の少なくとも1つに対して少なくとも部分的に相補的なオリゴヌクレオチドである。プライマーの長さは6〜100ヌクレオチドの範囲であるが、ほとんどのプライマーは典型的には15〜35ヌクレオチドの範囲である。核酸増幅のためにプライマーを最適化する方法は、例えば PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds., (1990) (Academic Press)に記載されている。典型的にはプライマーは、A、C、G、及びTヌクレオチドからなる合成オリゴヌクレオチドである。しかし、核酸中に通常存在しない異常塩基ヌクレオチドを使用することもできる。例えばいくつかの修飾塩基は、増幅の特異性を上昇させることが知られている(米国特許第6,001,011号参照)。これらの修飾体には、ヌクレオ塩基の環外アミノ基に共有結合したアルキル、アリール、又はアルキル−アリール基がある。増幅プライマーにおけるこれらの修飾塩基の従来の使用は、非特異的増幅を減少させることである。しかし本発明のある態様において、環外アミノ基で共有結合的に修飾された塩基を有するヌクレオチドもまた、ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用して増幅抑制の程度を上昇させることがわかった。
生体触媒(例えばDNAポリメラーゼ)を取り込む種々のヌクレオチドが当前記分野で公知である。5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如した任意の熱安定性ポリメラーゼが、本発明で使用される。プルーフリーディング(3’−5’−エキソヌクレアーゼ)活性の無い酵素を使用することが好ましい場合がある。
適切な酵素の1つの例はΔZ05ポリメラーゼである。米国特許第5,677,152号及び5,773,528号に記載された逆に修飾された酵素のような、「ホットスタート」能力を有する酵素を用いることが好ましい場合がある。ホットスタート酵素の1つの例は、ΔZ05−Goldポリメラーゼである。
本発明の増幅生成物の検出は、当前記分野で公知の方法により行われる。これらの検出方法には、標識プライマーやプローブならびに種々の核酸結合色素の使用を含む。検出方法は、標的配列の1つの変種に対して特異的であるか、又は標的配列のすべての変種若しくはすべての2本鎖DNAに対して共通に特異的である。標的の不要な変種の増幅が最少で、方法の検出限界以下であると予測される場合、非特異的検出法を使用してもよい。
増幅生成物は増幅が完了後、例えば非標識生成物のゲル電気泳動、及び核酸結合色素を用いるゲルの染色により検出される。あるいは増幅生成物は、合成中の取り込みにより又は標識プライマーを有することにより、放射活性又は化学的標識物を有してもよい。電気泳動後又はその最中に、標識増幅生成物は、当前記分野で公知の適切な放射活性若しくは化学的手段により検出される。電気泳動後生成物はまた、当前記分野で公知の任意の方法で標識された標的特異的プローブを用いて検出される。標識プローブはまた、「ドットブロット」アッセイなどで、電気泳動無しで標的に適用してもよい。
別の実施態様において増幅生成物の存在は、均一アッセイ(すなわち増幅サイクル中に新生生成物が検出され、増幅後の操作が不要なアッセイ)で検出される。ヌクレアーゼプローブを使用する均一増幅アッセイは、例えば米国特許第5,210,015号に記載されている。核酸挿入性色素は、例えば米国特許第5,871,908号と6,569,627号に記載されている。均一アッセイはまた、2つの相互作用性蛍光物質で標識された蛍光プローブを利用してもよい。このようなプローブの例には、「分子ビ−コン」プローブ(Tyagi et al., (1996) Nat. Biotechnol., 14:303-308)又は蛍光標識ヌクレアーゼプローブ(Livak et al., (1995) PCR Meth. Appl., 4:357-362)がある。
本発明のさらに別の実施態様は、そのユニークな融解温度(Tm)を測定することにより、増幅生成物が検出され同定される方法である。融解アッセイのある変法では、全アンプリコンの融解が、2本鎖核酸に特異的に結合する蛍光性化合物を使用して追跡される。特に、2本鎖挿入性色素の蛍光の温度依存性変化を測定することは、米国特許第5,871,908号に記載されている。蛍光の低下は、アンプリコンの融解を反映し、アンプリコンのTmの測定を可能にする。
本発明の別の実施態様において、標的DNAと1種以上の蛍光標識プローブとの間でハイブリッドが形成される。典型的にはプローブは、FRET対を形成する少なくとも2種の蛍光成分で標識される。ある実施態様において、FRET対を形成する成分の1つは非蛍光性クエンチャーである。FRET対を形成する成分は、同じか又は別のプローブ分子に結合してもよい。鋳型−プローブハイブリッドの融解又は形成に至る温度の変化は、FRET対のメンバー間の物理的距離の変化により蛍光の測定可能な変化を伴う。プローブ対又は単一のプローブに結合した1種以上の色素の蛍光の温度依存性変化の測定は、米国特許第6,174,670号に記載されている。標識プローブの対を用いてユニークなTmにより特定の遺伝子型を同定することは、De Silva et al., (1998) “Rapid genotyping and quantification on the LightCycler(TM) with hybridization probes,” Biochemica, 2:12-15に記載されている。
ある実施態様において本発明は、非対称PCRを含む。非対称PCR混合物中では、増幅プライマーの1つが他のプライマーよりはるかに多量に存在する。これらのプライマーは「過剰プライマー」と「制限プライマー」と呼ばれる。過剰プライマーと制限プライマーとの比率は選択的に操作することができ、200:1〜2:1であるが、典型的には約9:1〜5:1である。プライマー過剰のために、過剰の鎖が1本鎖型で直線的に蓄積される。この過剰の1本鎖は、いくつかのPCR後分析法に有用である。
ある実施態様において本発明は、非対称PCR後に融解温度分析のPCR後性状解析を行う。Tmが後に続く非対称PCRは、米国特許出願2007/0072211号に記載されている。プローブの融解とアニーリングは、蛍光の測定可能な変化に関連し、これは核酸2本鎖の形成又は融解を反映している。典型的には非対称PCRでは、融解プローブは「過剰の鎖」(すなわち、過剰のプライマーの伸長により生じ、1本鎖型で蓄積されるるアンプリコン鎖)にハイブリダイズするように設計される。
ハイブリダイゼーションプローブの設計は当前記分野で公知である。このプローブがヌクレアーゼプローブ、単一のハイブリダイゼーションプローブ、又はハイブリダイゼーションプローブ対のメンバーとして作用しても、プローブオリゴヌクレオチドの設計は、当前記分野で公知で本明細書に記載の同じ原理に支配され、用手法で又はソフトウェアの助けを借りて適用される。
本発明のある実施態様において、配列の不要な変種の増幅を抑制するためにプライマーの1つに隣接して結合するブロッカーオリゴヌクレオチドはまた、ハイブリダイゼーションプローブとして又は融解プローブ又はその両方として作用する。このような二重機能オリゴヌクレオチドに適用可能な設計基準を、当業者は直ちに認識するであろう。特にオリゴヌクレオチドは、標的配列の異なる変種と異なるハイブリッド融解温度を有するべきであるが、各融解温度は特定の系で検出可能な範囲内であるべきである。多くの場合これは区別できる程度に測定可能であるが、比較的近い融解温度である。本発明の別の実施態様において1種以上のプローブは、ブロッカーオリゴヌクレオチドとは別のオリゴヌクレオチドである。
プローブオリゴヌクレオチドは、種々の方法(放射活性、分光学的、光化学的、生化学的、免疫学的、又は化学的)により検出可能な成分を取り込むことにより標識することができる。蛍光ベースの検出では標識物は、色素、例えばフルオレセイン群(FAM、HEX、TET、JOE、NAN、及びZOE)、ローダミン群(テキサスレッド、ROX、R110、R6G、及びTAMRA)、シアニン群(Cy2、Cy3、Cy5、及びCy7)、クマリン群、オキサジン群、チアジン群、スクアラニン群の色素、及び核酸の標識と検出に適した別の群の蛍光色素がある。さらに、蛍光色素は、例えばBlack Hole Quenchers(TM) (Biosearch Tech., Novato, Calif.)、Eclipse Dark Quenchers(TM) (Epoch Biosciences, Bothell, Wash.) 、及びIowa Black (Integrated DNA Tech., Coralville, Iowa) で例示されるように、非蛍光クエンチャー成分と対合してもよい。
ある実施態様において本発明は、野生型(すなわち非変異核酸配列)の存在下での癌関連変異を含む疾患関連変異の検出を含む。一般に癌の進行中は腫瘍細胞は、変異細胞に選択的優位性を付与する変異を蓄積する。Downward, J. (2003) Targeting RAS signaling pathways in cancer therapy (2005)、Nature Rev. Cancer, 3:11-22を参照。変異はしばしば、治療で使用される抗腫瘍剤に対する耐性を付与する、see Pao et al. (2005) KRAS mutations and primary resistance of lung adenocarcinomas to gefitinib and or erlotinib, PLoS Medicine, 2(1), e17を参照。そのような変異を検出することは、副作用のある無効な薬剤を服用することに関連する迷惑と不要なリスクとを、患者から無くしてくれる。より広い意味では癌関連変異を検出することは、存在する疾患の予後や初期の癌スクリーニングに有用である。
ある実施態様において本発明は、細胞の亜集団中で起きる体細胞変異の検出に応用される。変異核酸配列をうまく増幅し検出するために、増幅プライマーは、疑われる変異部位にフランキングする配列にハイブリダイズするように設計される。野生型配列の増幅を抑制するために、ブロッカーオリゴヌクレオチドは変異配列と1個以上のミスマッチを有する野生型配列と完全(又はほぼ完全)に相補的であるように設計される。ブロッカーオリゴヌクレオチドの設計は、特異的プライマーのアニーリングと伸長が起きる条件下で、ブロッカーオリゴヌクレオチドが野生型配列と安定なハイブリッドを形成するが、変異配列とは不安定な(又は有意に不安定な)ハイブリッドを形成することを確実にしなければならない。例えばオリゴヌクレオチド設計の利用可能な手段を使用して、ブロッカーと野生型配列とにより形成されるハイブリッドの融解温度が、増幅反応の典型的な条件下で、熱サイクリング中に使用されるアニーリング温度より高くなるように、ブロッカーオリゴヌクレオチドを設計することができるであろう。同時に、ブロッカーと変異配列とにより形成されるハイブリッドの融解温度は、熱サイクリング中に使用されるアニーリング温度より低くなるであろう。
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、例えばDownward, J. (2003)(前述)に列記されている変異のような特定の疾患又は症状について、目的の任意の数の疑われる変異部位にフランキングするように設計される。本発明の核酸配列試料は、新鮮な又は保存された患者組織から、及び疾患の無い対照組織(ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)を含む)から得られる。
例示としてのみかつ本発明の範囲を限定することなく、多くのヒト固形腫瘍に関連することが知られているKRAS遺伝子の変異を検出する方法が適用される。KRAS変異は、非小細胞肺癌の20〜30%、結腸直腸癌の30〜40%、及び膵臓癌の最大90%で見つかっている。Yeang et al., (2008) Combinatorial pattern of somatic gene mutations in cancer, FASEB J, 22:2605-2622。KRAS変異は、表皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とする薬剤に対する耐性を付与する。耐性は作用機序に無関係に、EGFRを標的とする薬剤に適用されるようである:チロシンキナーゼインヒビターと抗EGFR抗体の両方とも、KRAS変異細胞に対するその有効性を失う。
KRAS遺伝子は、変異検出アッセイに特に適した標的である:すべての変異の約99%は3つのコドンのみで起きる:コドン12(88%)、コドン13(10%)、及びコドン61(1〜3%)。変異のそのような密集は、臨床的に関連する変異の全範囲をカバーする少数の対立遺伝子特異的プライマー又はプローブの設計を可能にする。
別の態様において本発明は、不要な配列変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制を用いる核酸の選択的増幅のための反応混合物を提供する。反応混合物は標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズできるl第1及び第2のオリゴヌクレオチド(ここで、第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチド中に修飾塩基を含む)と:第3のオリゴヌクレオチド(標的配列の不要な変種に対するより小さい親和性で標的配列の所望の変種に対しハイブリダイズすることができ、前記第2のオリゴヌクレオチドの0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計される)と;5’−3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如しホットスタート能力を有する核酸ポリメラーゼと:そして場合により、2種以上の配列変種中に存在することが知られている標的核酸とを含む。ある実施態様において反応混合物はさらに、核酸の増幅及び場合により検出に通常必要な試薬と溶液、例えば、ポリメラーゼの活性を支持するのに適した核酸前駆体(すなわちヌクレオシド三リン酸)と有機及び無機イオン、及び場合により検出可能な標識物をさらに含む。ある実施態様において、第1のオリゴヌクレオチドが過剰に存在するように、混合物中の第1のヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドの量は等しくない。ある実施態様において第3のオリゴヌクレオチドが標識される。本発明のある実施態様において標的核酸は、KRAS遺伝子配列のすべてまたは一部を含む。ある実施態様において標的配列は、KRASコドン12、13、及び61の1個以上を含む。
別の態様において本発明は、不要な配列変種の増幅の対立遺伝子特異的抑制を用いる核酸の選択的増幅を実施するためのキットを提供する。キットは一般にアッセイ特異的成分と、核酸増幅アッセイを行うのに通常必要な成分とを含む。アッセイ特異的成分として本発明のキットは、標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズできるl第1及び第2のオリゴヌクレオチド(ここで、第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチド中に修飾塩基を含む)と:第3のオリゴヌクレオチド(標的配列の不要な変種にハイブリダイズするより小さな親和性で標的配列の所望の変種に対しハイブリダイズすることができ、前記第2のオリゴヌクレオチドの0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計される)と;5’−3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如しホットスタート能力を有する核酸ポリメラーゼと:そして場合により、標的配列の少なくとも1つのある量の変種を含む対照核酸配列とを含む。ある実施態様において対照核酸配列の2種以上の変種が含まれる。ある実施態様において前記第3のオリゴヌクレオチドは標識される。核酸の増幅及び場合により検出に通常必要な成分として本発明のキットは典型的には、1個以上の核酸前駆体、例えばヌクレオシド三リン酸(デオキシリボヌクレオシド三リン酸、又はリボヌクレオシド三リン酸)、場合により核酸のピロリン酸分解を最小にするためのピロホスファターゼ、増幅反応のキャリーオーバー汚染を防ぐためのウラシルN−グリコシラーゼ(UNG)、増幅反応及び場合により検出に必要なあらかじめ作成した試薬と緩衝剤、及び本発明の対立遺伝子特異的増幅を実施するための説明書のセットを含む。
以下の例は標的配列として、KRAS遺伝子の断片であるエクソン2(配列番号1)(図10)を利用する。変異配列は、エクソン2のコドン12又はコドン13にミスセンス変異を含む。コドン12と13は、図10に示す配列番号1中の下線を引いた塩基である。プローブ(配列番号5)は野生型配列に完全に一致する。変異配列は、プローブと1個以上のミスマッチを有する。以下の例において同じプローブ(配列番号5)が、増幅検出プローブ及び融解プローブの両方として使用される。さらにプローブは、野生型配列の増幅のサプレッサーとして作用する。エクソン3配列は、上流プライマー配列番号6、下流プライマー配列番号7、及び検出プローブ配列番号8を使用して、KRASエクソン2配列を用いる同じ反応で同時増幅した。簡単のために、別の波長チャネルで検出されたエクソン3配列の増幅の結果は示していない。プライマーとプローブ配列を表1に示す。
Figure 0005785095
[実施例1]
野生型とKRAS−変異体標的の別々の増幅と融解分析
各50μlの反応物は、104コピーの野生型配列又は変異体標的配列、0.7μMのエクソン2上流(過剰)プライマー(配列番号2)、0.025μMの第1のエクソン2下流(制限)プライマー(配列番号3:化学修飾無し)、0.075μMの第2のエクソン2下流(制限)プライマー(配列番号4、化学修飾有り)、0.3μMのエクソン2融解プローブ(配列番号5)、0.7μMのエクソン3上流(過剰)プライマー(配列番号6)、0.1μMのエクソン3下流(制限)プライマー(配列番号7)、0.3μMのエクソン3融解プローブ(配列番号8)、50mM トリシン(pH7.7)、57mM酢酸カリウム(pH7.5)、8%グリセロール、1% DMSO、200μMの各dATP、dCTP及びdGTP、400μM dUTP、50μM dTTP、0.01%ツイーン20、0.04単位/μlのウラシル−N−グリコシラーゼ(UNG)、0.6単位/μlのΔZ05GOLD DNAポリメラーゼ、及び3mM酢酸マグネシウムを含有した。エクソン2用に2つの制限プライマーの混合物を使用した:非修飾3’末端シトシンを有する第1のプライマー(配列番号3)を1/4、N4ベンジル化3’末端シトシンを有する第2のプライマー(配列番号4)を3/4。反応物中の2つの制限プライマーの比率は、野生型抑制の最適な程度を可能にした(実施例2参照):変異DNAが欠如している時、野生型DNAが増幅された。しかし変異DNAも存在すると、野生型より変異DNAが優先的に増幅された(データは示していない)。
増幅と融解分析は、Roche LightCycler 480装置を使用して行った。反応は以下の温度プロフィールに付した:50℃で5分(UNG工程)、95℃で10分(ポリメラーゼ活性化)、次に95℃で10秒と61℃で40秒とを50サイクル。蛍光データは各61℃工程の最後に採取して、増殖曲線を作成した(データは示していない)。次に反応物を融解分析に付した:最後の増幅サイクル後、温度を95℃に1秒上げ、40℃に1分下げ、次に95℃に上げ、温度の各1℃の上昇について蛍光を測定した。最後に温度を40℃に下げて、融解分析を終了した。
融解分析の結果を図2に示す。生データ(「融解曲線」)は、温度変化による450〜500nm波長間隔の蛍光として示す。導関数データ(「融解ピーク」)は、同じ温度間隔中の蛍光の一次導関数(dF/dT)として示す。変異体標的は実線で示し、野生型鋳型は点線で示す。本例では、融解プローブ(配列番号5)は、2本鎖中の標的核酸に結合すると、所望の波長の蛍光を発する。温度が上昇すると、プローブが2本鎖から解離するため、蛍光の低下が観察される。解離した1本鎖型では、プローブはクエンチャー(BHQ−2)が蛍光物質(FAM)の蛍光をクエンチするコンフォメーションを取る。
図2の結果は、変異配列(実線)と野生型配列(点線)の明瞭な融解プロフィールを示す。変異体試料は、野生型試料より低い融解ピーク極大値(Tm)で同定される。低いTmは、プローブと変異配列との相補性の程度が低いためである。試料がコドン12又はコドン13中に異なる変異を含有するため、変異体のピークはTmの変動を示す。
[実施例2]
野生型試料と変異体試料の混合物中のKRAS変異の対立遺伝子特異的増幅と検出
本例では、同じ試験管中の野生型標的と変異体標的の混合物について、増幅と融解分析を行った。各50μlの反応物は、野生型配列と変異配列との混合物を含む標的DNAの8,000コピーを含有した。変異配列は、反応物中の全コピー数の1%又は5%を占め、残りの99%又は95%は野生型配列であった。増幅と融解分析は、実施例1について一般的に記載した条件と温度プロフィールとを使用して、各実験について修飾を加えて行った。結果を図3〜8に示す。変異体標的は野生型標的より低い融解ピーク極大値(Tm)により同定される。実線は「抑制条件」を示し、点線は各実験で特定される「対照条件」を示す。
図3では抑制条件は以下の通りである:制限プライマーは配列番号3と4との混合物であり、酵素はホットスタート能力を有する(ΔZ05GOLD)。対照条件は以下の通りである:制限プライマーは配列番号3(3’末端化学修飾が無い)のみであり、酵素はホットスタート能力を持たない(ΔZ05)。ΔZ05酵素についてpHは8.3に調整し、ポリメラーゼ活性化工程はサイクリングプロフィールとは切り離した。
図4は、抑制条件と対照条件の両方がホットスタート酵素ΔZ05GOLDを使用する以外は、図3と同じ実験の結果を示す。抑制条件には配列番号3と4との混合物を使用し、対照条件には配列番号3のみ(化学修飾無し)のみを使用した。
図5は、抑制条件と対照条件の両方がホットスタート酵素ΔZ05GOLDを使用する以外は、図3と同じ実験の結果を示す。抑制条件には配列番号3と4との混合物を使用し、対照条件には配列番号4のみ(化学修飾有り)のみを使用した。結果は、プライマーの組合せが抑制量を低下させることを示し、変異配列の非存在下では野生型配列が増幅されることを確実にする。
図6は、抑制条件と対照条件の両方が配列番号3と4との混合物を使用する以外は、図3と同じ実験の結果を示す。抑制条件はホットスタート酵素ΔZ05GOLDを使用し、対照条件は非ホットスタート酵素ΔZ05を使用する。
図7は、抑制条件と対照条件の両方が配列番号4のみ(化学修飾有り)を使用する以外は、図3と同じ実験の結果を示す。抑制条件はホットスタート酵素ΔZ05GOLDを使用し、対照条件は非ホットスタート酵素ΔZ05を使用する。
図8は、抑制条件と対照条件の両方が配列番号3のみ(化学修飾無し)を使用する以外は、図7と同じ実験の結果を示す。図7に示す例のように、抑制条件はホットスタート酵素ΔZ05GOLDを使用し、対照条件は非ホットスタート酵素ΔZ05を使用する。この実験では、「抑制」条件が抑制を引き起こさなかった。
これらの結果は、野生型増幅の抑制が変異アンプリコンの収率を改善することを証明する。変異配列が総標的配列の1%を構成する時、変異配列は野生型抑制無しでは検出されない。より高濃度の変異配列では、変異アンプリコンの収率はまた、野生型抑制により顕著に改善される。
[実施例3]
患者由来のホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)試料中のKRAS変異の対立遺伝子特異的増幅と検出
本例では、7個の市販のFEPET試料から抽出したDNAについて増幅と融解分析を行った。各50μlの反応物は、3×10μmの組織切片から抽出しNanodrop分光光度計で定量したFFPET DNAの25ngを含有した。95%の野生型標的と混合した5%の変異体標的を含有する反応物を対照として使用した(点線)。反応混合物中にエクソン3プライマーとプローブが存在せず、ΔZ05GOLDポリメラーゼの量を0.3単位/μlに減らし、酢酸マグネシウムの量を2.5mMに減らした以外は、実施例1に記載した条件と温度プロフィールを使用して増幅と融解分析を行った。結果は融解ピークとして図9に示す。変異体標的は、野生型標的より低い融解ピーク極大値(Tm)により同定される。点線は野生型配列を示し、実線は、変異配列が存在する患者試料を示す。一部の患者試料は野生型と変異配列との両方を含む。
FFPET DNAは高度に断片化しており、増幅し検出することが困難であることは知られている。しかし図9の結果は、FEPET試料中の野生型DNAの背景中に存在する変異DNAがうまく増幅され検出されることを明瞭に示す。変異体標的中のTmの変動は、配列決定により証明される(データは示していない)ように、KRAS遺伝子の異なるコドン12又は13の変異を反映する。
具体例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは当業者に明らかであろう。本発明の範囲は、決して本明細書に記載した実施例により限定されるものではなく、特許請求の範囲によって確定される。

Claims (10)

  1. 2種以上の変種の形で存在する標的配列の所望の変種の選択的増幅法であって、
    a)反応混合物中に標的配列の少なくとも1種の変種を含み得る試料を提供し、
    b)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第1のオリゴヌクレオチドを提供し、
    c)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第2のオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチドに修飾塩基を含有し、ここで、前記修飾塩基が、環外アミノ基において修飾されており、
    d)標的配列の所望の変種に対し、標的配列の不要な変種に対するよりも小さい親和性でハイブリダイズし得るとともに、第2のオリゴヌクレオチドと同じ鎖に0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計された、第3のオリゴヌクレオチドを提供し、
    e)実質的に5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如した核酸ポリメラーゼを提供し、
    f)反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に付す、ことを含んでなり、
    ここで、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとは等量ではなく、第1のオリゴヌクレオチドが過剰に存在し、
    第3のオリゴヌクレオチドが標的配列の不要な変種にハイブリダイズした時は、第3のオリゴヌクレオチドが前記核酸ポリメラーゼによる前記第2のオリゴヌクレオチドの伸長を実質的に阻害するが、前記第3のオリゴヌクレオチドが標的配列の所望の変種に対しハイブリダイズした時は、前記核酸ポリメラーゼによる前記第2のオリゴヌクレオチドの伸長を実質的に阻害しない、方法。
  2. 第2のオリゴヌクレオチドの修飾塩基がN−ベンジル−2’−デオキシシチジンである、請求項1に記載の方法。
  3. 第1、第2、及び第3のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つが標識されるとともに、増幅された核酸配列の検出をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 第1のオリゴヌクレオチドが配列番号2であり、第2のオリゴヌクレオチドが配列番号3であり、及び/又は、第3のオリゴヌクレオチドが配列番号5である、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 2種以上の変種の形で存在する標的配列の所望の変種の選択的増幅のための反応混合物であって、
    a)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第1のオリゴヌクレオチドと、
    b)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第2のオリゴヌクレオチドであって、その少なくとも一部が、3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチドに修飾塩基を含有し、前記修飾塩基が環外アミノ基において修飾される、第2のオリゴヌクレオチドと、
    c)標的配列の所望の変種に対し、標的配列の不要な変種に対するよりも小さい親和性でハイブリダイズし得るとともに、第2のオリゴヌクレオチドと同じ鎖に0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計された、第3のオリゴヌクレオチドと、
    d)5’−3’ヌクレアーゼ活性が実質的に欠如した核酸ポリメラーゼと、を含み、
    ここで、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとは等量ではなく、第1のオリゴヌクレオチドが過剰に存在し、
    第3のオリゴヌクレオチドは、標的配列の不要な変種の増幅を検出できる程度に阻害できるが、標的配列の所望の変種の増幅を阻害できない、反応混合物。
  6. 第2のオリゴヌクレオチドの修飾塩基がN−ベンジル−2’−デオキシシチジンである、請求項5に記載の反応混合物。
  7. 第1のオリゴヌクレオチドが配列番号2であり、第2のオリゴヌクレオチドが配列番号3であり、及び/又は、第3のオリゴヌクレオチドが配列番号5である、請求項5又は6に記載の反応混合物。
  8. 2種以上の変種の形で存在する標的配列の所望の変種の選択的増幅のためのキットであって、
    a)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第1のオリゴヌクレオチドと、
    b)標的配列の2種以上の変種にハイブリダイズし得る第2のオリゴヌクレオチドであって、その少なくとも一部が、3’末端又はその近傍の1又は2以上のヌクレオチドに修飾塩基を含有し、前記修飾塩基が環外アミノ基において修飾される、第2のオリゴヌクレオチドと、
    c)標的配列の所望の変種に対し、標的配列の不要な変種に対するよりも小さい親和性でハイブリダイズし得るとともに、第2のオリゴヌクレオチドと同じ鎖に0〜60ヌクレオチド下流でハイブリダイズするように設計された、第3のオリゴヌクレオチドと、
    d)実質的に5’−3’ヌクレアーゼ活性が欠如した核酸ポリメラーゼと、
    e)核酸の増幅に必要な試薬と溶液と、を含んでなり、
    ここで、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとは等量ではなく、第1のオリゴヌクレオチドが過剰に存在し、
    第3のオリゴヌクレオチドは、標的配列の不要な変種の増幅を検出できる程度に阻害できるが、標的配列の所望の変種の増幅を阻害できない、キット。
  9. 第2のオリゴヌクレオチドの修飾塩基がN−ベンジル−2’−デオキシシチジンである、請求項8に記載のキット。
  10. 核酸のピロリン酸分解を最小にするのに適した試薬、及び核酸による増幅反応のキャリーオーバー汚染を防ぐのに適した試薬の1個以上をさらに含んでなる、請求項8又は9に記載のキット。
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