しかしながら、最近のビルや商業施設の屋内床面は、従来からのプラスチックタイルに代わり、耐久性が高く光沢があるセラミックタイルの施工が増えてきている。一方、これらの大型施設においても、屋外や半屋外に位置するエントランスやピロティなどでは、否透水性であって美観と耐久性を兼ね備えつつ、降雨時のスリップ防止のために、表面に微細な凹凸を設けた床材が使用されている。
即ち、セラミックタイルは表面硬度が高く滑らかであり、また、比較的白色系タイルの採用数が多く、その為、セラミックタイルを洗浄した際の汚水が少量でもタイル面に残ってしまうと、スリップが原因の転倒事故につながり易く、また、白色系のタイル面に汚水が黒く目立ってしまって、清掃品質面で問題となるため、上記のスキージを使用するユーザからは、洗浄後の床面に汚水を残さないようにするための改善が求められていた。
加えて、セラミックタイルの施工に際しては、そのタイル間において、少し間隔を空けた隙間や継ぎ目(以下、目地と称す)を設けた後、モルタルや接着剤を使用して床に固定する施工方法が一般的に用いられているが、その目地には、どうしても汚水が溜まってしまって、上述のように汚水が黒く目立ってしまうため、清掃品質面で問題となっていた。
一方で、石材やタイルの表面に微細な凹凸を持たせる加工を施した床面としては、石材やタイル表面に凹凸を加工するためにバーナーで焼いて加工する方法や、硬質な凹凸面を成す様な特殊コーティングの方法などがあるが、いずれの方法も、乾いている時と水に濡れた時の両方でスリップ防止効果を期待することができる。ただし、清掃時に凹凸部の窪みに堆積した汚れを確実に除去する様にメンテナンスしないと、この窪み部分に汚れが付着しやすくなって、美観の維持が難しいという欠点もあった。
更に、昨今では大型施設の床面の洗浄清掃用として、大容量のバッテリーを搭載して、一度に広範囲の床面洗浄清掃作業が実施できる大型の床面洗浄清掃機が普及しており、効率良く床面洗浄清掃を行なう必要があるところであるが、前述の様な異なる性状の床面であってもスキージを交換することなく、適切に洗浄清掃作業を行なうことが求められていた。
このような技術的背景により、目地やその他の凹溝等に溜まった汚水をできるだけ吸引でき、且つ、表面にスリップ防止の微細な凹凸のある床面の両方に使用して好適な床面洗浄機が必要となったが、しかし、上記特許文献1に記載のスキージ、即ち、進行方向後側のブレードが、内側と外側の2枚の可撓性ゴム板を重ね合わせた構造のスキージでは、目地に溜まった汚水を吸引すると、後部側ブレードを構成する内側ブレードが、目地の位置にさしかかった瞬間に急激に目地内に落ち込んでしまい、その影響で洗浄汚水の飛沫が後方に飛び散ることになり、その結果生じる汚水は、その後方の外側ブレードが掻き取るが、後部側ブレード体が目地を通過した後は、後部側ブレード体を構成する内側ブレードと外側ブレードとの間に、上記目地の上部に堆積していた汚水が入り込んでしまって吸引されないため、その結果、清掃後の床面に洗浄汚水が引き伸ばされたように残留して床面を汚してしまい、再度清掃作業を行わなければならないという欠点があった。
加えて、後部側ブレード体の内側ブレードには、通常の場合、複数の縦スリット(図示省略)が設けられているが、表面に微細な凹凸のあるスリップ防止機能を備えた床面の汚水を掻き取る場合には、上記縦スリットによる追従性の改善だけでは、細かい窪みの汚水や堆積物の掻き取りの改善には充分な効果が得られないため、この様な表面に微細な凹凸のあるスリップ防止機能を備えた床面に対して、優れた汚水回収性能を発揮可能にするための、スキージの改善が求められていた。
そこで本発明の技術的課題は、床面に目地やその他の凹溝等があったとしても、これ等目地や凹溝等に溜まった汚水をできる限り回収すると共に、床面に回収した汚水の残りが残留しないように工夫し、且つ、表面にスリップ防止用の微細な凹凸のある床面に対しても、極めて高い汚水回収性能を発揮できるように工夫した床面洗浄機等用のスキージを提供することである。
上記の技術的課題を解決する為に本発明で講じた手段は以下の如くである。即ち、
(1) 本発明の請求項1に係る床面洗浄機等用スキージは、進行方向に対して前後に間隔をあけて前部側と後部側の各ブレードを並設し、これ等前後のブレードの間にブロアーの吸引作用を及ぼすことにより、当該前後のブレードが掻き集めた汚水やゴミ等を吸い取るように構成した床面洗浄機等用スキージであって、 前記前部側と後部側のブレードのうち、後部側のブレードが、内側と外側の2枚の可撓性ゴム板を内外二重に重ね合わせて構成され、且つ、当該外側可撓性ゴム板の上下幅方向の長さが、当該内側可撓性ゴム板の上下幅方向の長さより下側方向に同じか又は長く形成されると共に、前記内側可撓性ゴム板の下側部には、当該ゴム板の下端と隔てた位置に吸引穴が設けられ、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板のいずれか一方又は両方には、当該ゴム板の板面同士の密着を防止するための密着防止手段として、当該ゴム板の表面に撥水性を生じさせる表面処理が施されていることを特徴としている。
(2) また、本発明の請求項2に係る床面洗浄機等用スキージは、進行方向に対して前後に間隔をあけて前部側と後部側の各ブレードを並設し、これ等前後のブレードの間にブロアーの吸引作用を及ぼすことにより、当該前後のブレードが掻き集めた汚水やゴミ等を吸い取るように構成した床面洗浄機等用スキージであって、 前記前部側と後部側のブレードのうち、後部側のブレードが、内側と外側の2枚の可撓性ゴム板を内外二重に重ね合わせて構成され、且つ、当該外側可撓性ゴム板の上下幅方向の長さが、当該内側可撓性ゴム板の上下幅方向の長さより下側方向に同じか又は長く形成されると共に、前記内側可撓性ゴム板の下側部には、当該ゴム板の下端と隔てた位置に吸引穴が設けられ、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板の移動時の密着を防止するための移動時密着防止手段として、両可撓性ゴム板の板厚及び硬度を、互いに異ならせしめて構成したことを特徴としている。
(3) また、本発明の請求項3に係る床面洗浄機等用スキージは、前記(1)に記載の床面洗浄機等用スキージにおいて、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板の、いずれか一方又は両方の当該ゴム板の板面同士の密着防止手段として、当該ゴム板の表面に撥水性を生じさせる表面処理を施すと共に、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板同士の移動時の密着を防止するための移動時密着防止手段として、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板同士の板厚及び硬度を、互いに異ならせしめて構成したことを特徴としている。
(4) また、本発明の請求項4に係る床面洗浄機等用スキージは、前記(1)又は(3)に記載の床面洗浄機等用スキージにおいて、前記表面処理が、フッ素樹脂コーティング処理であることを特徴としている。
(5) また、本発明の請求項5に係る床面洗浄機等用スキージは、前記(2)又は(3)に記載の床面洗浄機等用スキージにおいて、前記移動時密着防止手段としての前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板同士の板厚及び硬度を、互いに異ならせしめるための構成として、前記内側可撓性ゴム板の板厚が3mmで硬度40度とし、前記外側可撓性ゴム板の板厚が2mmで硬度50度とすることを特徴としている。
上記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、進行方向に対して後部側のブレードが2枚の可撓性ゴム板を重ね合わせて構成されているため、例えば、磁器タイルを敷き詰めた床面の目地や凹溝をスキージが通過する際に、目地や凹溝内に一旦進行方向前側(内側)の可撓性ゴム板が落ち込むと、目地や凹溝内に堆積していた洗浄汚水を可撓性ゴム板の弾力ではじき飛ばして周辺に飛散させようとするが、その後側(外側)のもう一枚の可撓性ゴム板が上記飛沫の拡散を防止し、更に、後側の可撓性ゴム板が目地部や凹溝内に残留している汚水を掻き出すため、床面の目地や凹溝の後方に洗浄汚水の残留や飛沫が残ることがなく、洗浄汚水等をきれいに吸い取ることを可能にしている。
加えて、上記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、後部側のブレードが目地や凹溝を通過した際に、当該後部側のブレードを構成する内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板との間に汚水が入り込んでしまうが、内側可撓性ゴム板の下側部には、当該ゴム板の下端と隔てた位置に吸引穴が設けられているため、その吸引穴からのブロアーの吸引作用により汚水が吸引される。よって、内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板との間に入り込んだ汚水がその間に残ることがなく、また床面にも引き伸ばされたように汚水が残留しないので、洗浄後の床面を汚すことがなく、多数の目地で仕切られたセラミックタイルの床面などをきれいに洗浄することを可能にする。
更に、上記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、ブロアーの吸引作用により吸引穴を通じて発生する内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板の間の負圧に対して、外側可撓性ゴム板と内側可撓性ゴム板のいずれか一方、又は両方には、密着防止手段として、当該ゴム板の表面に撥水性を生じさせる表面処理が施されているので、内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板が密着する事がなくなって、内側可撓性ゴム板の吸引穴を閉塞することがなくなるため、吸引穴を通して外側可撓性ゴム板と内側可撓性ゴム板の隙間に残留した汚水を確実に吸引させることができる。
また、上記(2)で述べた請求項2に係る手段によれば、上記の密着防止手段として、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板のいずれか一方のゴム表面に、撥水性を生じさせる表面処理を施すだけで、容易に両ゴム板の密着を防止する密着防止手段を実現することができる。
また、上記(3)で述べた請求項3に係る手段によれば、上記の表面処理による密着防止手段と共に、移動時密着防止手段を設けたことで、スキージが停止している状態だけでなく、移動している状態でも密着防止作用が成され、全体的に使用時のスキージによる汚水回収性能が向上する。
また、上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、上記の密着防止手段として、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板のいずれか一方のゴム板の表面に施す、撥水性を生じさせるための表面処理が、フッ素樹脂コーティングであって、極めて普及している処理方法であるため、処理が容易で安価に密着防止手段を実現することができる。
更に、上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、移動時密着防止手段として、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板同士の板厚及び硬度を、お互いに異ならせしめただけでこれを実現しているため、移動時密着防止手段を追加することによるコストアップが生じる事無く、安価に性能向上が実現する。
また、上記(5)で述べた請求項5に係る手段によれば、前記移動時密着防止手段としての、前記内側可撓性ゴム板と外側可撓性ゴム板同士の板厚及び硬度をお互いに異ならせしめた構成として、前記内側可撓性ゴム板の板厚を3mmで硬度40度とし、前記外側可撓性ゴム板の板厚を2mmで硬度50度としたことで、通常普及しているゴム板材の材質や硬度の仕様のものの組み合わせに過ぎないので、部材の調達が容易であり、特殊な部材を調達することによるコストアップなどの懸念もなく、容易に、而も安価に本発明の利点を実現することができる。
更に、上記(5)で述べた請求項5に係る手段によれば、前記内側可撓性ゴム板側の板厚を3mmで硬度40度としたことで、表面に凹凸のある床面への追従性が向上し、且つ、撥水処理によるコーティングがフッ素樹脂コーティングであれば、スキージゴム板の磨耗防止と耐久性向上に寄与することができるものであって、多種の床面に使用するスキージのゴム板材および処理技術として、安価で性能の向上が可能な、極めて好適なスキージゴムの組み合わせが容易に実現できる。
以上の如く構成された本発明に係る床面洗浄機等用スキージによれば、床面に目地やその他の凹溝等があったとしても、これ等目地や凹溝等に溜まった汚水をできる限り回収すると共に、床面に回収した汚水の残りが残留しないように工夫して、且つ、表面に微細な凹凸のあるスリップ防止機能をそなえた床面に対しても、汚水回収性能の高い床面洗浄機等用のスキージを提供することができる。
以下に、上述した本発明に係る床面洗浄機等用スキージの実施の形態を添付した図面と共に詳細に説明する。これらの実施の形態は本発明の好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
添付した図面中、図1は本発明に係るスキージが実施されている床面洗浄機の外観および内部構造を説明した斜視図、図2はその平面図であって、これ等の図面に於いて夫々符号1にて全体的に示したのは床面洗浄機の機体、1Aは運転用のハンドル、1Bと1Cは駆動輪と前輪、2はモータ2Mによって回転して床面を洗浄するパッド又は回転ブラシ、3と4は機体1内に搭載した清水又は洗剤と清水を混合した洗浄液CW用のタンクと汚水DW用の回収タンク、5はポンプ5Tの作用によって取入口5Aから取り入れた清水又は洗浄液CWを、上記のパッド又は回転ブラシ2に供給する給液パイプを示す。
また、符号10で全体的に示したのは、全体が略弓型形状を成した本発明に係るスキージであって、機体1の後部に連結されたスキージ10には、吸引パイプ6を通して汚水タンク4内に作用するブロアー6Tの吸引力が、ホース先端口9Aよりバキュームホース9を通して及んでいて、この吸引力でパッド又は回転ブラシ2の洗浄回転によって床面上に残った汚水を、上記バキュームホース9を通して汚水タンク4内に吸引回収するように構成されている。また、上述した吸引パイプ6の上端にはフロート弁付きの吸引口6Aが設けられている。
更に図1と図2において、7はスキージ10の本体10Aの上面中央部に取付けた基板を示し、図2において符号7Tで示したのは、スキージ10を機体1の後部に連結するために当該基板7に連設した連結板、7Kは連結板7Tの連結軸を連結する取付軸を示す。
次に、21,21はボルト21X,21Xを用いてスキージ10の左右両端部側の後方部に取付けた車輪カバーで、これ等両車輪カバー21,21の内部には車軸21A,21Aによってスキージ10を支持する左右のガイド車輪22,22が回転自在に取付けられている。また、20,20は左右のガイドホイール、7A,7Aは前述した基板7をスキージ10の中央部に取付けるボルト、8は前述したバキュームホース9を接続するために、上記基板7の上面に立設した通気筒で、バキュームホース9を通して作用される前記ブロアー6Tの吸引力は、この通気筒8からスキージ本体10Aの中央部上面に開口した通気口10H(図4、図6参照)を通して、前後の可撓性ブレード12,13の間隔内、即ち、後述するスキージ室11W内に及ぶ仕組みに成っている。
図3の(1)、(2)、(3)は、本発明の実施例に係るスキージ10の洗浄動作時の状態を説明した断面図を示したものであって、スキージ10を構成する細長い形状のスキージ本体10Aは、断面略逆さ凹形状に形成されている。また、図3の各図において矢印FWDは床面洗浄機1の洗浄動作時の進行方向(前進方向)を示し、12及び符号13で全体的に示したのは、スキージ本体10Aの前側面部と後側面部のそれぞれに、前後に間隔をあけて取付けられた前後2組の可撓性ゴム板で出来たブレードであり、スキージ本体10Aの底面より下側に垂下されたこれ等前部側ブレード12と後部側ブレード13の内部間隔が、スキージ室11Wを構成している。
上述した後部側のブレード13は、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが前後に重ね合わされて構成されており、11Sと11Tはこれら計3枚のブレード12,13A,13Bを、上記スキージ本体10Aの前後両側面部に固定するためのサポータであって、当該スキージ本体10Aの上面中央に突設した通気筒8の上端口8T(図4参照)に、バキュームホース9の下端口9Bが接続されていて、図1に示したブロアー6Tの吸引力を、このスキージ本体10Aの内部を通して前後のブレード12,13の間に及ぼす仕組みになっている。また、前部側ブレード12と後部側ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13Aは、使用状態において床面FLよりも下に突出する分の長さだけ長く形成されており、更に後部側ブレード13を構成する外側可撓性ゴム板13Bは、それらよりも長く形成されている。
また、前部側ブレード12及び後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13Aと床面FLとの高さの差は、使用する可撓性ゴム材の硬度やゴム材厚に応じて任意に設定するものであるが、本発明の実施例では、外側可撓性ゴム板13Bと内側可撓性ゴム板13Aとの高さの差は、実寸法で数mm程度長い様に設定しており、また、内側可撓性ゴム板13Aがブロアー6Tの吸引力(負圧)により内側に引き寄せられて撓むので、外側可撓性ゴム板13Bに比べて内側可撓性ゴム板13Aのゴムの曲がりがきつくなり、加えて、使用状態において外側可撓性ゴム板13Bには、床面FLとの間に図3(1)で見て右方向への摩擦力が働くことにより、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bとの間には隙間H(空間)が生じることとなる。
更に、内側可撓性ゴム板13Aの中央付近、詳しくは後述するとおり、横幅においてスキージ本体10Aに設けた通気口10H(図4参照)の幅と同程度の位置で、且つ、下端より数mmのところに、直径3〜6mm程度の吸引穴13H…が横並びに複数箇所開口形成されている。この複数箇所開口形成された吸引穴13H…は、外側可撓性ゴム板13Bと内側可撓性ゴム板13Aとの間に入り込んだ汚水ZW(図3(2)参照)を、前記スキージ室11W内に吸引する為のものである。
尚、上記の前部側ブレード12と、後部側ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13A及び外側可撓性ゴム板13Bの夫々は、優れた耐久性と柔軟性を備えた例えばウレタンゴム等のゴム材が使用され、特に所定の材質・厚み・硬度のゴム板状の材料から製品寸法に切り出して製作されることが多い。また、サポータ11S,11Tとスキージ本体10Aは金属板や合成樹脂板やダイキャスト等の硬質材が使用されるが、これ等の材料はいずれも実施の一例であることは勿論である。
また、上記の前部側ブレード12と、後部側ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13A及び外側可撓性ゴム板13Bは、図3の各図に見られるようにサポータ11S,11Tによってスキージ本体10Aの前後両側面に押さえ付けられた状態で取付けられている。
図4は、図3(1)のB矢視より見た拡大断面図である。図4には後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13Aを、スキージ室11Wの内部から正視した状態が示されていて、内側可撓性ゴム板13Aの中央付近、詳しくは横幅においてスキージ本体10Aの上面に設けた通気口10Hの幅と同程度の位置で、下端より数mmのところに、直径3〜6mm程度の吸引穴13H…が横並びに複数箇所開口形成されている。
上記の通気口10Hは、スキージ10の上面中央に設けられていて、ブレード12,13を含むスキージ10の全体が、横方向(幅方向)に略弓なりに湾曲した形状であることから、洗浄汚水DWは中央に集まることとなる。従って、通気口10Hの下側に夫々吸引穴13H…を設けていれば、汚水DWを残さず吸引することができる。よって吸引穴13H…を必要最小限の個数とすることができて、汚水DWを効率よく吸引することができる。
これより、本発明に係る床面洗浄機等用のスキージ10の特徴を再び図3(1)を引用して説明すると、後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bには、夫々表面に撥水性と耐磨耗性を付与するためフッ素樹脂コーティングを施している。具体的には、後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13A及び外側可撓性ゴム板13Bとも、所定のゴム仕様、板厚、硬度のゴム板材を所定の外形寸法に切断加工した後で、その全体をフッ素樹脂コーティング処理する。図示しない取り付け用の各穴や、前述の吸引穴13H…の加工に関しては、フッ素樹脂コーティング処理の前後何れでも可能であるが、コーティング処理前に全ての切断・穴あけ加工を済ませてから、最終工程でフッ素樹脂コーティング処理を施すのが望ましい。
上記の後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13A、および外側可撓性ゴム板13Bに施すフッ素樹脂コーティングとしては、例えばテフロン(登録商標)コーティングが好適であり、テフロン(登録商標)の持つ耐磨耗性・非濡性(撥水性)・非粘着性が、本発明の床面洗浄機等用スキージの後述する密着防止要件に合致している。
また、本発明の床面洗浄機等用のスキージ10に用いる後部側ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13Aおよび外側可撓性ゴム板13Bは、お互いに異なる板厚と硬度のゴム板の組み合わせで構成している。具体的には、内側可撓性ゴム板13Aは板厚3mm、硬度40度のエステル系ウレタンゴムの板材を切断・穴あけ加工して製作し、一方、外側可撓性ゴム板13Bは板厚2mm、硬度50度のエステル系ウレタンゴムの板材を切断・穴あけ加工して製作している。
ゴム板仕様としてエステル系ウレタンゴムを使用しているのは、エーテル系ウレタンゴムやクロロプレンゴムに比べて、機械的性質・耐磨耗性・耐油性などが優れており、工場などの油が付着している床面の洗浄に使用にも耐えという理由である。なお、前部側ブレード12に関しては、材質・板厚・硬度・表面処理の有無は、本発明の実施例においては任意であるが、一例としては、板厚2.6mm、硬度50度のエステル系ウレタンゴムの板材を切断・穴あけ加工して製作し、表面処理を施さずに使用している。
而して図3の(1)に示す様に、上述したスキージ10が矢印FWDの方向に前進する時に、床面FLとの摩擦抵抗(接地抵抗)によって前部側ブレード12と後部側ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13A及び外側可撓性ゴム板13Bの夫々が、その先端部が右側に撓みながら移動することになる。
次に、図3(1)において本発明の実施例におけるスキージ10の使用状態を説明する。図3(1)において、床面FLにスキージの前部側ブレード12と後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13A及び外側可撓性ゴム板13Bが夫々撓みながら各下端部が接する様に配置され、スキージ室11Wの床面部には洗浄汚水DWが前部側ブレード12のスリット(図示省略)から進入してきている状態が示されている。
この様に、スキージ室11Wの下側には洗浄汚水DWが貯まっている状態が示されているが、スキージ室11Wに対してはバキュームホース9から図1に示したブロアー6Tの吸引力が作用するため、スキージ室11Wには図の矢印F…で示した方向に洗浄汚水DWが吸い取られる。また、スキージ室11Wはブロアー6Tの吸引力により周辺よりも気圧の低い負圧状態となっているため、前部側ブレード12より洗浄機側(前寄り)の床面FL上に存在する洗浄汚水FWは、前部側ブレード12のスリット(図示省略)とブレード12と床面FLの接触部分から、スキージ室11W内の負圧に引かれてスキージ室11W内に捕集吸引される。
一方、スキージ10の後部のガイド車輪22(図1、図2参照)は、車軸21Aにより回転自在に取り付けられていて、走行時にこれ等のガイド車輪22が床面FLをなぞりながら回転することによって、スキージ10の姿勢が床面FLに対して傾かずに安定して支えられると共に、スキージ10が床面FLをなぞりながら床面FLに追従するため、目地FT(図3(2)参照)を多数備える床面FLであっても、適正な接地角を保って、汚水DWの吸い残しを防止しつつ、汚水DWを円滑に吸引することができる。
また、図3(1)、(2)、(3)において、後部ブレード13を構成する内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bと間には、隙間(空間H)が確保されているので、夫々のゴム板13A,13B同士が密着しておらず、床面FLから吸引穴13Hまでの吸引経路である空間Hが確保されている状態が示されている。更に、図3(2)に示す様に、内側可撓性ゴム板13Aの下端が目地FTを通過する際には、外側可撓性ゴム板13Bの下端は目地FT内に侵入して(落ち込んで)はいない。よって、内側可撓性ゴム板13Aの下端が目地FTに落ち込んだ際に、目地FTの中に溜まっていた洗浄汚水DWを飛散させてしまったとしても、外側可撓性ゴム板13Bの下端が汚水ZWを床面FLより残すことなく掻き寄せて、その間に吸引穴13Hより吸引力が作用することで、汚水ZWを矢印Gの経路で完全に吸い取ることができる。
上述の動作の際に、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bと間に、隙間(空間H)が確保されているので、夫々のゴム板13A,13B同士が密着していないが、ブロアーによる吸引力によって生じる負圧は当該隙間(空間H)にも作用するため、その外側の大気圧との力関係から、図5に示す様に、外側可撓性ゴム板13Bが内側可撓性ゴム板13A側に引き寄せられる状態が生じる。
即ち、図5に示す如く、外側可撓性ゴム板13Bが内側可撓性ゴム板13A側に吸引されることにより、隙間Hが完全に閉じられたり狭められたりすると、前記外側可撓性ゴム板13Bによって上記吸引穴13H…も完全に塞がれてしまって、前述の図3(2)の様な両ゴム板13A,13Bの隙間Hに入り込んだ汚水ZWを、上述した各吸引穴13H…を通して汚水タンク4側に吸引できなくなる問題が生じる。
しかし、本発明では上記の隙間(空間H)が仮に狭くなったとしても、外側可撓性ゴム板13Bと内側可撓性ゴム板13Aが完全に密着することを防止するための手段が講じられているため、両ゴム板13A,13Bの隙間(空間H)に残留した汚水ZWが、床面FL上に残留水となって残ってしまって、床面FLを汚してしまう問題を解消することができる。
即ち、上述した内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの表面に施した撥水性を有するフッ素樹脂コーティングは、図5の様に内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが近接したとしても、フッ素樹脂コーティングの持つ撥水性・非濡性により、それらの接触部に水が湿潤した状態で介在しておらず、僅かな隙間があればその隙間を通って吸引穴13Hから矢印Gの経路で汚水ZWを吸引することができる。
一方、上述した内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの表面に対し、撥水性を有するフッ素樹脂コーティング等を施していない場合には、図5の様に内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが近接してしまうと、それらの接触部に水が湿潤した状態で介在し、僅かな隙間があったとしてもその隙間に水が入り込んでゴム板面に付着し、結果的に内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが部分的に密着状態となってしまい、吸引穴13Hから矢印Gの経路で汚水ZWを吸引することができなくなる。
然るに、本発明では図5の様に一見は内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが近接して密着している様な状態でも、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの表面に施したフッ素樹脂コーティングの効果によって、ゴム板13Aと13B同士が完全に密着することが防止でき、僅かな隙間からでも、洗浄後に前述した目地FTの影響で内側可撓性ゴム板13Aの後部に飛散した汚水ZWを、確実に吸引穴13Hから吸引して回収することができる。
次に、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの板厚と硬度を変えて組み合わせた効果を説明する。
例えば、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの板厚と硬度が同じ場合、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bは同じ様な振動特性を有することになる。即ち、外部からの振動が加わった場合、各々の固有振動数がほぼ同じ場合に、同じような振幅・周期で振動することは明らかである。もし、上述の様に内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが近接して密着状態にある場合に、その状態のままで床面を移動させて汚水回収動作を実施したり、ブロアー6Tの吸引力によって吸引気流によって振動させたりすると、吸引される汚水の飛沫がスキージ室11Wの内部で暴れて振動するが、その振動によって、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの完全な密着を防止する作用が生じるのが望ましい。
そこで、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの板厚と硬度を変えて組み合わせたことで、各々のゴム板13A,13Bの特に厚みに違いによってその断面二次モーメントが相違することになり、その特性差が振動特性を相違させることになる。具体的には、各々のゴム板13A,13Bの固有振動数(共振周波数)は、ブレードの長さと断面積とによって導かれる、断面二次モーメントと、ヤング率に影響される。本発明の実施例においてゴムの板厚を2mm対3mmで変化させたことで、お互いの断面二次モーメントはその3乗の差となり、板厚の違い1.5倍に対して、3.375倍の違いが発生する。固有振動数にはその平方根で寄与するので、約1.8倍の差異となり、お互いの振動特性に大きな差異が生じることになる。それにより、微妙な振動、例えば床面FLの凹凸部を通過する際にその部分に引っ掛かることによって振動する影響や、前述の気流の影響などにおって、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bが異なる振動モードで振動することで、お互いの密着を防止する作用が生じる。
さらに、内側可撓性ゴム板13Aと外側可撓性ゴム板13Bの板厚と硬度を変えるにあたって、内側可撓性ゴム板13A側をゴム板の厚みを厚くし、硬度を下げているが、これはさらに異なる相乗効果を発揮する。即ち、主たるスキージ汚水回収性能に寄与する内側可撓性ゴム板13A側のゴム板の硬度を下げたことで、微細な凹凸を有する床面FL’(図6参照)への追従性が格段に向上する効果を発揮している。
図6に微細な凹凸のある床面FL’の洗浄動作時に、図3(3)のC矢視より見た断面図であり、図6には後部側ブレード13の内側可撓性ゴム板13Aをスキージ室11W内部から正視した状態が示されている。図の様に微細な凹凸のある床面FL’へのスキージブレードの追従性を高めるには、ブレードのゴム硬度を下げてゴム表面の追従性を向上させるより他に方法はない。ただし、通常のゴム板の厚みのままでゴム硬度を下げると、ゴム硬度は即ちゴムの弾性力に影響し、ゴム硬度が低ければヤング率も低くなり、通常の床面への追従力が減少することになる。
そこで本発明の実施例では、硬度を通常の50度から40度に下げる一方で、ゴム板の厚みを2mmから3mmに増加させている。これにより、硬度の低下によるヤング率の低下(およそ1.5分の1に低下)したことを、断面二次モーメントの増加(板厚の増加の3乗寄与する)によってこれを補い、通常の床面FLへの追従力が減少をも押さえている。実際には、床面FLへの追従力は従来よりも増加させることも実現できている。
以上のように、本発明は、フッ素樹脂コーティングによる密着防止手段と、振動特性の差異による動作時の密着防止手段と、ゴム硬度の低下による微細な凹凸のある床面FL’への追従性の向上と、ゴム厚みの増加による通常床面への追従性の向上と、複数の作用と効果によって、スキージ10の全体性能の向上に寄与する優れた特徴を有する発明である。
なお、図5の如く外側可撓性ゴム板13Bが内側可撓性ゴム板13A側に吸引されることにより、両ゴム板13A,13Bが完全に密着状態に重なって、上述した隙間Hが狭まった結果、複数箇所開口形成された吸引穴13H…の何れもが完全に閉じてしまうことを防止するために、別途間隔保持手段を設けても良い。
本発明では下記のような問題も解決することができる。即ち、床面FLに図3(2)に示す目地FTや凹溝等があったとしても、床面FLの汚水DWは勿論のこと、目地FTや凹溝等に溜まっていた汚水DWも効率よく回収することができるので、床面FLが綺麗に清掃でき、更に、目地FTや凹溝に溜まっていた汚水DWを清掃した床面FLに残すようなことも無くなり、回収性能の高い床面洗浄機等用のスキージ10を提供することができる。
さらに本発明では、床面FLにスリップ防止の微細な凹凸溝等があったとしても、床面FLの汚水DWを効率よく回収することができ、加えて上述の目地FTのある床面FLにも同時に対応可能であるので、様々な状態の床面FLが綺麗に清掃できて、どのような箇所においても汚水DWを清掃した床面FLに残し難くなり、様々な条件で一様に回収性能の高い床面洗浄機等用のスキージ10を提供することができる。
なお、本発明の実施例で示した撥水性を有する表面処理としては、フッ素樹脂コーティングに限定するものではなく、他のコーティングであったり、ゴム板材そのものをフッ素系のゴム板とするなども、本発明の権利範囲に含まれることは云うまでも無い。