以下、更に詳しく、本発明にかかるプリプレグおよび該プリプレグを使用した炭素繊維強化複合材料を実施するための形態について説明をする。本発明は、次の(A)、(B)成分を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維と熱硬化性樹脂とを含むことを特徴とするプリプレグである。まず、(A)、(B)成分を含むサイジング剤が塗布されてなるサイジング剤塗布炭素繊維について説明する。
本発明において用いられる(A)成分とは、(A1)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物、および/または、(A2)分子内に1個以上のエポキシ基と、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物をさす。
また、本発明で用いられる(B)成分とは、(B1)分子量が100g/mol以上である3級アミン化合物および/または3級アミン塩、(B2)一般式(I)
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、または一般式(II)
(式中、R
5は、炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R
6とR
7は、それぞれ水素、または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。)のいずれかで示されるカチオン部位を有する4級アンモニウム塩、(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物から選択される少なくとも1種の化合物をさす。
本発明において、(A)成分と(B)成分とは、(A)成分100質量部に対し、前記(B1)、(B2)、(B3)から選択される少なくとも1種の(B)成分を0.1〜25質量部を配合してなるサイジング剤を使用することが好ましい。
(A)成分と(B)成分を特定量配合したサイジング剤を炭素繊維に塗布し、特定の温度範囲で熱処理することにより接着性が向上するメカニズムは確かではないが、まず、(B)成分が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基に作用し、これらの官能基に含まれる水素イオンを引き抜きアニオン化した後、このアニオン化した官能基と(A)成分に含まれるエポキシ基が求核反応するものと考えられる。これにより、本発明で用いられる炭素繊維とサイジング剤中のエポキシ基の強固な結合が形成される。一方、マトリックス樹脂である熱硬化樹脂との関係においては、(A1)、(A2)それぞれについて、以下のとおりに説明される。
(A1)の場合、本発明で用いられる炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基が熱硬化性樹脂含有官能基と反応し共有結合を形成するか、もしくは、水素結合を形成するものと考えられる。とりわけ、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合に、(A1)のエポキシ基と熱硬化性樹脂のエポキシ基の反応、エポキシ樹脂中に含まれるアミン硬化剤を介しての反応により強固な界面が形成できると考えられる。また、(A1)の構造中に1個以上の不飽和基を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂のようなラジカル重合系樹脂の場合、(A1)の不飽和基と熱硬化性樹脂の不飽和基がラジカル反応し強固な界面を形成することが可能である。
(A2)の場合、(A2)のエポキシ基は本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基と共有結合を形成するが、残りの官能基である、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基はマトリックス樹脂に応じて、共有結合や水素結合などの相互作用を形成するものと考えられる。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であれば、(A2)の水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基と熱硬化性樹脂のエポキシ基または、アミン硬化剤とエポキシ基が反応してできた水酸基との相互作用により強固な界面を形成できると考えられる。
すなわち、(A1)の場合における、炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基が、(A2)の場合における、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基に相当する機能を有すると考えられる。
本発明において、(A)エポキシ化合物のエポキシ当量は、360g/mol未満であることが好ましく、より好ましくは270g/mol未満であり、さらに好ましくは180g/mol未満である。エポキシ当量が360g/mol未満であると、高密度で共有結合が形成され、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性がさらに向上する。エポキシ当量の下限は特にないが、90g/mol未満で接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物が、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、4個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることがより好ましい。(A)エポキシ化合物が、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基の数の上限は特にないが、10個以上では接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物が、2種以上の官能基を3個以上有するエポキシ樹脂であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ樹脂であることがより好ましい。エポキシ化合物が有する官能基は、エポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基から選択されるものが好ましい。(A)エポキシ化合物が、分子内に3個以上のエポキシ基または他の官能基を有するエポキシ樹脂であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または他の官能基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基の数の上限は特にないが、10個以上では接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物は、分子内に芳香環を1個以上有することが好ましく、芳香環を2個以上有することがより好ましい。炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料において、炭素繊維近傍のいわゆる界面層は、炭素繊維あるいはサイジング剤の影響を受け、マトリックス樹脂とは異なる特性を有する場合がある。(A)エポキシ化合物が芳香環を1個以上有すると、剛直な界面層が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との間の応力伝達能力が向上し、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性が向上する。芳香環の数の上限は特にないが、10個以上では力学特性が飽和する場合がある。
本発明において、(A1)エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、またはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのいずれかであることが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、エポキシ基数が多く、エポキシ当量が小さく、かつ、2個以上の芳香環を有しており、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることに加え、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性を向上させる。2官能以上のエポキシ樹脂は、より好ましくは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
本発明において、(A1)2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も例示される。また、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。
さらに、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびダイマー酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ樹脂としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。さらに、このエポキシ樹脂としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
本発明に使用する(A1)エポキシ化合物として、これらのエポキシ樹脂以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ樹脂が挙げられる。さらには、上に挙げたエポキシ樹脂を原料として合成されるエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ樹脂が挙げられる。
本発明において、(A2)1個以上のエポキシ基と、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物の具体例として、例えば、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基を有する化合物、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基と水酸基を有する化合物としては、例えば、ソルビトール型ポリグリシジルエーテルおよびグリセロール型ポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的にはデナコール(商標登録)EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−314およびEX−321(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とアミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルベンズアミド、アミド変性エポキシ樹脂等が挙げられる。アミド変性エポキシはジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とイミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的にはデナコール(商標登録)EX−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とウレタン基を有する化合物としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられ、具体的にはアデカレジン(商標登録)EPU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EPU−16N、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ樹脂内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基とウレア基を有する化合物としては、例えば、ウレア変性エポキシ樹脂等が挙げられる。ウレア変性エポキシはジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とスルホニル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ等が挙げられる。
エポキシ基とスルホ基を有する化合物としては、例えば、p−トルエンスルホン酸グリシジルおよび3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル等が挙げられる。
以下、(B)成分の(B1)〜(B3)について順に説明する。
本発明で用いられる(B1)分子量が100g/mol以上の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.5〜20質量部配合することが好ましく、2〜15質量部配合することがより好ましく、2〜8質量部配合することがさらに好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B1)が炭素繊維表面を覆い、共有結合形成が阻害され、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。
本発明において用いられる、(B1)分子量が100g/mol以上である3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、その分子量が100g/mol以上であることが必要であり、分子量は100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において用いられる3級アミン化合物とは、分子内に3級アミノ基を有する化合物を示す。また、本発明で用いられる3級アミン塩とは、3級アミノ基を有する化合物をプロトン供与体で中和した塩のことを示す。ここで、プロトン供与体とは、3級アミノ基を有する化合物にプロトンとして供与できる活性水素を有する化合物のことをさす。なお、活性水素とは、塩基性の化合物にプロトンとして供与される水素原子のことをさす。
プロトン供与体としては、無機酸、カルボン酸、スルホン酸およびフェノール類などの有機酸、アルコール類、メルカプタン類および1,3−ジカルボニル化合物などが挙げられる。
無機酸の具体例としては、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸およびアミド硫酸等が挙げられる。中でも、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸が好ましく用いられる。
カルボン酸類としては、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、S含有ポリカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸に分類され、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−メチルアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸等が挙げられる。
S含有ポリカルボン酸の具体例としては、チオジプロピオン酸等が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸およびひまし油脂肪酸等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、サリチル酸、マンデル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびオレイン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸の具体例としては、安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、メトキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N−メチルアミノ安息香酸、N−エチルアミノ安息香酸、N−プロピルアミノ安息香酸、N−イソプロピルアミノ安息香酸、N−ブチルアミノ安息香酸、N−イソブチルアミノ安息香酸、N−第2ブチルアミノ安息香酸、N−第3ブチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジエチルアミノ安息香酸、ニトロ安息香酸およびフロロ安息香酸等が挙げられる。
以上のカルボン酸類のうち、芳香族ポリカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましく用いられ、具体的には、フタル酸、ギ酸、オクチル酸が好ましく用いられる。
スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸と芳香族スルホン酸に分類でき、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、1価の飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、ブタンスルホン酸、イソブチルスルホン酸、tert−ブチルスルホン酸、ペンタンスルホン酸、イソペンチルスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸およびセチルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸は不飽和脂肪族スルホン酸であってもよく、不飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、エチレンスルホン酸および1−プロペン−1−スルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、2価以上の脂肪族スルホン酸の具体例としては、メチオン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸およびポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸は水酸基を有するオキシ脂肪族スルホン酸であってもよく、オキシ脂肪族スルホン酸の具体例としては、イセチオン酸および3−オキシ−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はスルホ脂肪族カルボン酸であってもよく、スルホ脂肪族カルボン酸の具体例としては、スルホ酢酸およびスルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はスルホ脂肪族カルボン酸エステルであってもよく、スルホ脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はフルオロスルホン酸であってもよく、フルオロスルホン酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロイソプロピルスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロイソブチルスルホン酸、パーフルオロ−tert−ブチルスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロイソペンチルスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸、パーフルオロ−n−オクチルスルホン酸、パーフルオロドデシルスルホン酸およびパーフルオロセチルスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、1価の芳香族スルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、o−キシレン−4−スルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、4−プロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、t−ブチルナフタレンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ベンジルスルホン酸およびフェニルエタンスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、2価以上の芳香族スルホン酸の具体例としては、m−ベンゼンジスルホン酸、1,4−ナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸およびスルホン化ポリスチレン等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はオキシ芳香族スルホン酸であってもよく、オキシ芳香族スルホン酸の具体例としては、フェノール−2−スルホン酸、フェノール−3−スルホン酸、フェノール−4−スルホン酸、アニソール−o−スルホン酸、アニソール−m−スルホン酸、フェネトール−o−スルホン酸、フェネトール−m−スルホン酸、フェノール−2,4−ジスルホン酸、フェノール−2,4,6−トリスルホン酸、アニソール−2,4−ジスルホン酸、フェネトール−2,5−ジスルホン酸、2−オキシトルエン−4−スルホン酸、ピロカテキン−4−スルホン酸、ベラトロール−4−スルホン酸、レゾルシン−4−スルホン酸、2−オキシ−1−メトキシベンゼン−4−スルホン酸、1,2−ジオキシベンゼン−3,5−ジスルホン酸、レゾルシン−4,6−ジスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸、ヒドロキノン−2,5−ジスルホン酸および1,2,3−トリオキシベンゼン−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はスルホ芳香族カルボン酸であってもよく、スルホ芳香族カルボン酸の具体例としては、o−スルホ安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、2,4−ジスルホ安息香酸、3−スルホフタル酸、3,5−ジスルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、2−メチル−4−スルホ安息香酸、2−メチル−3、5−ジスルホ安息香酸、4−プロピル−3−スルホ安息香酸、2,4,6−トリメチル−3−スルホ安息香酸、2−メチル−5−スルホテレフタル酸、5−スルホサリチル酸および3−オキシ−4−スルホ安息香酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はチオ芳香族スルホン酸であってもよく、チオ芳香族スルホン酸の具体例としては、チオフェノールスルホン酸、チオアニソール−4−スルホン酸およびチオフェネトール−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、その他官能基を有する具体例としては、ベンズアルデヒド−o−スルホン酸、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸、アセトフェノン−o−スルホン酸、アセトフェノン−2,4−ジスルホン酸、ベンゾフェノン−o−スルホン酸、ベンゾフェノン−3,3'−ジスルホン酸、4−アミノフェノール−3−スルホン酸、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸および2−メチルアントラキノン−1−スルホン酸等が挙げられる。
以上のスルホン酸類のうち、1価の芳香族スルホン酸が好ましく用いられ、具体的には、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸およびm−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
また、フェノール類としては、1分子中に1個の活性水素を含むものの具体例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ジメチルフェノール、メチル−tert−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ニトロフェノール、メトキシフェノールおよびサリチル酸メチル等が挙げられる。
1分子中に2個の活性水素を含むフェノール類の具体例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、ベンジルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、メチル−tert−ブチルヒドロキノン、ジ−tert−ブチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、メチルレゾルシノール、tert−ブチルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、ジメチルレゾルシノール、メチル−tert−ブチルレゾルシノール、ジ−tert−ブチルレゾルシノール、トリメチルレゾルシノール、メトキシレゾルシノール、メチルカテコール、tert−ブチルカテコール、ベンジルカテコール、フェニルカテコール、ジメチルカテコール、メチル−tert−ブチルカテコール、ジ−tert−ブチルカテコール、トリメチルカテコール、メトキシカテコール、ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル等のビフェノール類、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールF、ビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールADが挙げられる。
で示されるビスフェノール類等、テルペンフェノール、構造式(XX)
構造式(XXI)
で示される化合物等が挙げられる。1分子中に3個の活性水素を含むフェノール類の具体例としては、トリヒドロキシベンゼンおよびトリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。1分子中に4個の活性水素を含むフェノール類の具体例として、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。また、それ以外の具体例として、フェノール、アルキルフェノールおよびハロゲン化フェノール等とホルムアルデヒドとの反応により得られるフェノールノボラックが挙げられる。
以上のフェノール類のうち、フェノールおよびフェノールノボラックが好ましく用いられる。
また、アルコール類としては、1分子中に2個の水酸基を含むものが例示され、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,1−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカヒドロビスフェノールA、構造式(XXII)
で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XXIII)
で表されるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、構造式(XXIV)
で表されるドデカヒドロビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XXV)
で表されるドデカヒドロビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン等が挙げられる。また、1分子中に4個の水酸基を含むアルコール類の具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、メルカプタン類としては、1分子中に1個の活性水素を含むメルカプタン類が例示され、例えば、メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、ベンジルメルカプタン、ベンゼンチオール、トルエンチオール、クロロベンゼンチオール、ブロモベンゼンチオール、ニトロベンゼンチオールおよびメトキシベンゼンチオール等が挙げられる。
1分子中に2個の活性水素を含むメルカプタン類の具体例としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、2,2’−オキシジエタンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオールおよび1,4−ベンゼンチオール等が挙げられる。
また、1,3−ジカルボニル化合物類としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、4,6−ノナンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、2−エチル−1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、2−エチル−シクロヘキサンジオン、1,3−インダンジオン、アセト酢酸エチルおよびマロン酸ジエチル等が挙げられる。
本発明において用いられる、(B1)分子量が100g/mol以上の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、次の一般式(III)
(式中、R8は炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R9は、炭素数2〜22のアルキレン基、炭素数2〜22のアルケニレン基、または炭素数2〜22のアルキニレン基のいずれかを表す。R10は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。または、R8とR10は結合して炭素数2〜11のアルキレン基を形成してもよい)、次の一般式(IV)
(式中、R11〜R14は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、または、次の一般式(V)
(式中、R15〜R20は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R21は、水酸基、または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、一般式(VI)
(式中、R
22〜R
24は、それぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよい)、一般式(VII)
(式中、R
25は、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよい)、一般式(VIII)
(式中、R
26〜R
28は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。さらに、R
26〜R
28のいずれかに、次の一般式(IX)または(X)で示される1以上の分岐構造を有し、かつ少なくとも1以上の水酸基を含む)であることを特徴とする。
(式中、R
29、R
30は、それぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。但し、R
29とR
30の炭素数の合算値が21以下である。)
(式中、R
31〜R
33は、それぞれ水酸基または炭素数1〜19の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。但し、R
31とR
32とR
33の炭素数の合算値が21以下である。)
本発明の上記一般式(III)〜(V)、および(VIII)のR8、R11〜R20、R26〜R28は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(V)のR21は、水酸基、または炭素数1〜22の炭化水素基であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(III)のR9は、炭素数2〜22のアルキレン基、炭素数2〜22のアルケニレン基、または炭素数2〜22のアルキニレン基のいずれかを表す。炭素数を2〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。好ましくは3〜22の範囲内であり、より好ましくは3〜14の範囲内であり、さらに好ましくは3〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(III)のR10は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ベンジル基およびフェニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、炭化水素基中のCH2基が−O−により置換されたものであってもよい。炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、直鎖状のものとして、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。環状のものとして、例えば、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換されたものであってもよい。炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクリロイルオキシエチル基およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、水酸基を有していてもよく、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基およびヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
本発明において、(B1)の3級アミン化合物は、その共役酸の酸解離定数pKaが9以上のものが好ましく、より好ましくは11以上のものである。酸解離定数pKaが9以上の場合、(B1)成分が炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基から水素イオンを引き抜きやすくなるため、炭素繊維表面の官能基と(A)成分のエポキシ基との反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。このような3級アミン化合物としては、具体的には、DBU(pKa12.5)、DBN(pKa12.7)や1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(pKa12.3)等が該当する。
本発明において、(B1)の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、沸点が160℃以上のものが好ましく、より好ましくは160〜350℃の範囲内であり、さらに好ましくは160〜260℃の範囲内である。沸点が160℃未満の場合、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒熱処理する工程において、揮発が激しくなり反応促進効果が低下する場合がある。
本発明において用いられる、(B1)の3級アミン化合物および/または3級アミン塩としては、脂肪族3級アミン類、芳香族含有脂肪族3級アミン類、芳香族3級アミン類および複素環式3級アミン類と、それらの塩が挙げられる。次に、具体例を挙げる。
脂肪族3級アミン類の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジメチルドコシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルペンチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチルデシルアミン、ジエチルドデシルアミン、ジエチルテトラデシルアミン、ジエチルヘキサデシルアミン、ジエチルオクタデシルアミン、ジエチルオレイルアミン、ジエチルドコシルアミン、ジプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジプロピルエチルアミン、ジプロピルブチルアミン、ジブチルメチルアミン、ジブチルエチルアミン、ジブチルプロピルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジヘキシルプロピルアミン、ジヘキシルブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、ジシクロヘキシルプロピルアミン、ジシクロヘキシルブチルアミン、ジオクチルメチルアミン、ジオクチルエチルアミン、ジオクチルプロピルアミン、ジデシルメチルアミン、ジデシルエチルアミン、ジデシルプロピルアミン、ジデシルブチルアミン、ジドデシルメチルアミン、ジドデシルエチルアミン、ジドデシルプロピルアミン、ジドデシルブチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジテトラデシルエチルアミン、ジテトラデシルプロピルアミン、ジテトラデシルブチルアミン、ジヘキサデシルメチルアミン、ジヘキサデシルエチルアミン、ジヘキサデシルプロピルアミン、ジヘキサデシルブチルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジエチルメタノールアミン、ジプロピルメタノールアミン、ジイソプロピルメタノールアミン、ジブチルメタノールアミン、ジイソブチルメタノールアミン、ジターシャリブチルメタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジイソブチルエタノールアミン、ジターシャリブチルエタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)エタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン、ジエチルプロパノールアミン、ジプロピルプロパノールアミン、ジイソプロピルプロパノールアミン、ジブチルプロパノールアミン、ジイソブチルプロパノールアミン、ジターシャリブチルプロパノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)プロパノールアミン、メチルジメタノールアミン、エチルジメタノールアミン、プロピルジメタノールアミン、イソプロピルジメタノールアミン、ブチルジメタノールアミン、イソブチルジメタノールアミン、ターシャリブチルジメタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジメタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、イソプロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、イソブチルジエタノールアミン、ターシャリブチルジエタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノールなどが挙げられる。
脂肪族3級アミン類は、3級アミノ基を分子内に2個以上もつ化合物であってもよく、3級アミノ基を分子内に2個以上もつ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、およびトリメチルアミノエチルエタノールアミンなどが挙げられる。
芳香族含有脂肪族3級アミン類の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、N,N’−ジブチルベンジルアミン、N,N−ジヘキシルベンジルアミン、N,N−ジシクロヘキシルベンジルアミン、N,N−ジオクチルベンジルアミン、N,N−ジドデシルベンジルアミン、N,N−ジオレイルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、N,N−ジベンジルプロピルアミン、N,N−ジベンジルブチルアミン、N,N−ジベンジルヘキシルアミン、N,N−ジベンジルシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルオクチルアミン、N,N−ジベンジルドデシルアミン、N,N−ジベンジルオレイルアミン、トリベンジルアミン、N,N−メチルエチルベンジルアミン、N,N−メチルプロピルベンジルアミン、N,N−メチルブチルベンジルアミン、N,N−メチルヘキシルベンジルアミン、N,N−メチルシクロヘキシルベンジルアミン、N,N−メチルオクチルベンジルアミン、N,N−メチルドデシルベンジルアミン、N,N−メチルオレイルベンジルアミン、N,N−メチルヘキサデシルベンジルアミン、N,N−メチルオクタデシルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジエチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジプロピルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジブチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジペンチルアミノメチル)フェノール、および2,4,6−トリス(ジヘキシルアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
芳香族3級アミン類の具体例としては、例えば、トリフェニルアミン、トリ(メチルフェニル)アミン、トリ(エチルフェニル)アミン、トリ(プロピルフェニル)アミン、トリ(ブチルフェニル)アミン、トリ(フェノキシフェニル)アミン、トリ(ベンジルフェニル)アミン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン、ジフェニルブチルアミン、ジフェニルヘキシルアミン、ジフェニルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、N,N−ジシクロヘキシルアニリン、(メチルフェニル)ジメチルアミン、(エチルフェニル)ジメチルアミン、(プロピルフェニル)ジメチルアミン、(ブチルフェニル)ジメチルアミン、ビス(メチルフェニル)メチルアミン、ビス(エチルフェニル)メチルアミン、ビス(プロピルフェニル)メチルアミン、ビス(ブチルフェニル)メチルアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシブチル)アニリン、およびジイソプロパノール−p−トルイジンなどが挙げられる。
複素環式3級アミン類の具体例としては、例えば、ピコリン、イソキノリン、キノリン等のピリジン系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、モルホリン系化合物、ピペラジン系化合物、ピペリジン系化合物、ピロリジン系化合物、シクロアミジン系化合物、およびプロトンスポンジ誘導体、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
ピリジン系化合物としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ビピリジンおよび2,6−ルチジンなどが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−ベンジル−2−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−イミダゾールおよび1−アリルイミダゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、ピラゾールや1,4−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。モルホリン系化合物としては、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよび2,2’−ジモルホリンジエチルエーテルなどが挙げられる。ピペラジン系化合物としては、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンやN,N−ジメチルピペラジンなどが挙げられる。ピペリジン系化合物としては、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−ヘキシルピペリジン、N−シクロヘキシルピペリジンおよびN−オクチルピペリジンなどが挙げられる。ピロリジン系化合物としては、N−ブチルピロリジンおよびN−オクチルピロリジンなどが挙げられる。シクロアミジン系化合物としては、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、および5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBA)を挙げることができる。その他の複素環式アミン類として、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサエチレンテトラミンおよびヘキサプロピルテトラミンを挙げることができる。
上記のDBU塩としては、具体的には、DBUのフェノール塩(U−CAT SA1、サンアプロ株式会社製)、DBUのオクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ株式会社製)、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(U−CAT SA506、サンアプロ株式会社製)、DBUのギ酸塩(U−CAT SA603、サンアプロ株式会社製)、DBUのオルソフタル酸塩(U−CAT SA810)、およびDBUのフェノールノボラック樹脂塩(U−CAT SA810、SA831、SA841、SA851、881、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
前記のプロトンスポンジ誘導体の具体例としては、例えば、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジエチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジプロピルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジブチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジペンチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジヘキシルアミノ)ナフタレン、1−ジメチルアミノ−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−イソキノリン、7−メチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジン、および2,7−ジメチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジンなどが挙げられる。
前記のヒンダードアミン系化合物としては、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(例えば、LA−52(ADEKA社製))、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(例えば、LA−72(ADEKA社製)、TINUVIN765(BASF社製))、炭酸=ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシピペリジン−4−イル)(例えば、LA−81(ADEKA社製))、メタクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(例えば、LA−82(ADEKA社製))、マロン酸−2−((4−メトキシフェニル)メチレン)、1,3−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、Chimassorb119、2−ドデシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)スクシン−イミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1−ヘキサデシル−2,3,4−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1,2,3−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−4−トリデシル、デカン二酸−1−メチル−10−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、4−(エテニルオキシ)−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、2−((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−2−ブチルプロパン二酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、LA−63P(ADEKA社製)、LA−68(ADEKA社製)、TINUVIN622LD(BASF社製)、TINUVIN144(BASF社製)などが挙げられる。
これらの3級アミン化合物と3級アミン塩は、単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。
本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも1つの炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。R11〜R13のうちの少なくとも1つの炭素数が2以上であると、3級アミン化合物および/または3級アミン塩が開始剤として働く副反応、例えば、エポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。また、本発明の上記一般式(VIII)で示される化合物は、少なくとも1以上の水酸基を有することが好ましい。1以上の水酸基を有することで炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシ基との反応性を高めることができる。また、本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも2つ、好適には3つが、一般式(IX)または一般式(X)で示される分岐構造を含むことが好ましい。分岐構造を有することで立体障害性が高まり、エポキシ環同士の反応を抑え、炭素繊維表面官能基とエポキシとの反応促進効果を高めることができる。さらに、本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも2つ、好適には3つが、水酸基を有するものが好ましい。水酸基を有することで、炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシとの反応性を高めることができる。
本発明において、前記の一般式(III)で示される化合物は、N−ベンジルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)およびその塩が好ましく、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)およびその塩が好適である。
本発明において、前記の一般式(IV)で示される化合物は、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(V)で示される化合物は、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VI)で示される化合物は、2,6−ルチジン、4−ピリジンメタノールであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VII)で示される化合物は、N−エチルモルホリンであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VIII)で示される化合物は、ジブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好ましい。
これらの3級アミン化合物および3級アミン塩の中でも、炭素繊維表面官能基とエポキシ樹脂との反応促進効果が高く、かつ、エポキシ環同士の反応を抑制できるという観点から、ジブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,6−ルチジン、DBU、DBU塩、DBN、DBN塩および1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが好ましく用いられる。
次に、(B2)について説明する。
本発明で用いられる(B2)上記の一般式(I)または(II)のいずれかで示される、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.1〜8質量部配合することがより好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B2)が炭素繊維表面を覆い共有結合形成が阻害され、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。
本発明で用いられる(B2)上記の一般式(I)または(II)のいずれかで示される、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩の配合により共有結合形成が促進されるメカニズムは明確ではないが、特定の構造を有する4級アンモニウム塩のみでかかる効果が得られる。したがって、上記一般式(I)または(II)のR1〜R5が、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基であることが必要であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、また、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が23以上になると、理由は明確ではないが、接着性が不十分となる。ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ベンジル基およびフェニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクリロイルオキシエチル基およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基、ヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
なかでも、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR1〜R5の炭素数は、1〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜8の範囲内である。炭素数が14未満であると、4級アンモニウム塩が反応促進剤として働く際に、立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(I)で示される(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR3とR4の炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。炭素数が2以上であると、4級アンモニウム塩が開始剤としてはたらくことによるエポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(II)で示される(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR6とR7は、それぞれ水素、または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。水素または炭素数が8未満であると、分子中における活性部位の比率が高く、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のカチオン部位の分子量は、100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。カチオン部位の分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、カチオン部位の分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、上記の一般式(I)で示される4級アンモニウム塩のカチオン部位としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルオレイルアンモニウム、ドコシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジメチルアンモニウム、ジメチルジペンチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジシクロヘキシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、エチルデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、エチルドデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、エチルテトラデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、エチルオクタデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、エチルジメチルオレイルアンモニウム、ジドコシルジメチルアンモニウム、ドコシルエチルジメチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム、ベンジルエチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルプロピルアンモニウム、ベンジルブチルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルオレイルアンモニウム、ジメチルジフェニルアンモニウム、エチルジメチルフェニルアンモニウム、ジメチルプロピルフェニルアンモニウム、ブチルジメチルフェニルアンモニウム、デシルジメチルフェニルアンモニウム、ドデシルジメチルフェニルアンモニウム、テトラデシルジメチルフェニルアンモニウム、ヘキサデシルジメチルフェニルアンモニウム、ジメチルオクタデシルフェニルアンモニウム、ジメチルオレイルフェニルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、ブチルトリエチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、トリエチルシクロヘキシルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、デシルトリエチルアンモニウム、ドデシルトリエチルアンモニウム、テトラデシルトリエチルアンモニウム、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム、トリエチルオレイルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、ジエチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジエチルアンモニウム、ジエチルジペンチルアンモニウム、ジエチルジヘキシルアンモニウム、ジエチルジシクロヘキシルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジエチルアンモニウム、ジドデシルジエチルアンモニウム、ジテトラデシルジエチルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム、ジエチルジオレイルアンモニウム、ジベンジルジエチルアンモニウム、ジエチルジフェニルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、メチルトリプロピルアンモニウム、エチルトリプロピルアンモニウム、ブチルトリプロピルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウム、フェニルトリプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリブチルエチルアンモニウム、トリブチルプロピルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、トリブチルフェニルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルトリオクチルアンモニウム、トリオクチルプロピルアンモニウム、ブチルトリオクチルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウム、ジオクチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、テトラドデシルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリエチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリプロピルアンモニウム、ポリオキシエチレントリブチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジプロピルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジブチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジエチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジプロピルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジブチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)メチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)エチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)プロピルアンモニウム、およびトリス(ポリオキシエチレン)ブチルアンモニウムが挙げられる。
また、上記一般式(II)で示される4級アンモニウム塩のカチオン部位としては、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−エチル−4−メチルピリジニウム、1−エチル−2,4−ジメチルピリジニウム、1−エチル−2,4,6−トリメチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウム、1−ブチル−2,4,6−トリメチルピリジニウム、1−ペンチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−シクロヘキシルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1−デシルピリジニウム、1−ドデシルピリジニウム、1−テトラデシルピリジニウム、1−ヘキサデシルピリジニウム、1−オクタデシルピリジニウム、1−オレイルピリジニウム、および1−ドコシルピリジニウム、および1−ベンジルピリジニウムが挙げられる。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のアニオン部位としては、例えば、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンのハロゲンイオンが挙げられる。また、例えば、水酸化物アニオン、酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、硫酸アニオン、安息香酸アニオン、ヨウ素酸アニオン、メチルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、およびトルエンスルホン酸アニオンが挙げられる。
なかでも、対イオンとしては、サイズが小さく、4級アンモニウム塩の反応促進効果を阻害しないという観点から、ハロゲンイオンであることが好ましい。
本発明において、これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いても良いし複数種を併用しても良い。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド、トリメチルオクタデシルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、トリメチルオクタデシルアンモニウム安息香酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウムテトラクロロヨウ素酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム硫酸水素塩、トリメチルオクタデシルアンモニウムメチルスルファート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムアセタート、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルアンモニウム安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムクロリド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムブロミド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、1−ヘキサデシルピリジニウムクロリド、1−ヘキサデシルピリジニウムブロミド、1−ヘキサデシルピリジニウムヒドロキシド、および1−ヘキサデシルピリジニウム−p−トルエンスルホナート等が挙げられる。
本発明において、前記の一般式(I)で示される化合物は、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミドが好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリドが好適である。
本発明において、前記の一般式(II)で示される化合物は、1−ヘキサデシルピリジニウムクロリドが好ましい。
次に、(B3)について説明する。
本発明で用いられる(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.1〜8質量部配合することがより好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B3)が炭素繊維表面を覆い、共有結合形成が阻害され、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。
本発明で用いられる(B3)4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物は、好ましくは、次の一般式(XI)または(XII)
(上記化学式中、R34〜R40は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)のいずれかで示されるカチオン部位を有する4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物である。
本発明者等は、上記(A)成分100質量部に対し、(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物、好ましくは上記一般式(XI)または(XII)のいずれかで示される(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物を0.1〜25質量部配合したサイジング剤を用い、これを炭素繊維に塗布し、かつ、特定の条件で熱処理を施した場合においてのみ、2官能以上のエポキシ樹脂と、炭素繊維表面に元来含まれる、あるいは、酸化処理により導入されるカルボキシル基、水酸基等の酸素含有官能基との間に共有結合形成が促進される結果、熱硬化性樹脂との接着性が大幅に向上することを見出した。
本発明において、4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物の配合により共有結合形成が促進されるメカニズムは明確ではないが、前記特定の構造を有する4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物を用いることにより、好適に本発明の効果が得られる。すなわち、本発明に用いられる(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物として、上記一般式(XI)または(XII)のR34〜R40が、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が23以上になると、理由は明確ではないが、接着性が不十分となる場合がある。ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ビニル基、2−プロピニル基、ベンジル基、フェニル基、シンナミル基、およびナフチルメチル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、直鎖状のものとして、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基、およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。また、環状のものとして、例えば、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセパン、および1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクリロイルオキシエチル基、およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基、およびヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
なかでも、(B3)4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物のR34〜R40の炭素数は、1〜14の範囲内であることが好ましい。炭素数が14未満であると、4級アンモニウム塩が反応促進剤として働く際に、立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(XI)で示される(B3)4級ホスホニウム塩のR34〜R37の炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。炭素数が2以上であると、4級ホスホニウム塩が開始剤としてはたらくことによるエポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(XII)で示される(B3)ホスフィン化合物のR39とR40は、それぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が8未満であると、分子中における活性部位の比率が高く、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩のカチオン部位の分子量は、100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。カチオン部位の分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、カチオン部位の分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、上記の一般式(VII)で示される脂肪族系4級ホスホニウム塩のカチオン部位としては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリプロピルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム、ジメチルジプロピルホスホニウム、ジメチルジブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウム、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム、トリブチル−n−オクチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチル(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)ホスホニウム、ジ−t−ブチルジメチルホスホニウム、およびトリヘキシルテトラデシルホスホニウムおよびビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウム等が挙げられる。
また、上記の一般式(VII)で示される芳香族系4級ホスホニウム塩のカチオン部位としては、テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、イソプロピルトリフェニルホスホニウム、ビニルトリフェニルホスホニウム、アリルトリフェニルホスホニウム、トリフェニルプロパギルホスホニウム、t−ブチルトリフェニルホスホニウム、ヘプチルトリフェニルホスホニウム、トリフェニルテトラデシルホスホニウム、ヘキシルトリフェニルホスホニウム、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシベンジルトリフェニルホスホニウム、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム、(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム、シンナミルトリフェニルホスホニウム、シクロプロピルトリフェニルホスホニウム、2−(1,3−ジオキサン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウム、1−(1,3−ジオキソラン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウム、(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルトリフェニルホスホニウム、4−エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム、およびエトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム等が挙げられる。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩のアニオン部位としては、例えば、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンのハロゲンイオンが挙げられる。また、例えば、水酸化物アニオン、酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、硫酸水素アニオン、安息香酸アニオン、ヨウ素酸アニオン、メチルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、およびトルエンスルホン酸アニオンが挙げられる。
本発明において、これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いても良いし複数種を併用しても良い。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩としては、例えば、トリメチルオクタデシルホスホニウムクロリド、トリメチルオクタデシルホスホニウムブロミド、トリメチルオクタデシルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルオクタデシルホスホニウムアセタート、トリメチルオクタデシルホスホニウム安息香酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、トリメチルオクタデシルホスホニウム塩酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウムテトラクロロヨウ素酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウム硫酸水素塩、トリメチルオクタデシルホスホニウムメチルスルファート、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルホスホニウムアセタート、ベンジルトリメチルホスホニウム安息香酸塩、ベンジルトリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセタート、テトラブチルホスホニウム安息香酸塩、テトラブチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムクロリド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムヒドロキシド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムブロミド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムヒドロキシド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムブロミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムクロリド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムブロミド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムヒドロキシド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、テトラフェニルホスホニウムブロミド、およびテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
また、上記一般式(XI)以外の(B3)4級ホスホニウム塩として、アセトニトリルトリフェニルホスホニウムクロリド、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、トランス−2−ブテン−1,4−ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(2,4−ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、N−メチルアニリノトリフェニルホスホニウムヨージド、およびフェナシルトリフェニルホスホニウムブロミド等が例示され、これらの4級ホスホニウム塩も本発明の(B3)4級ホスホニウム塩として使用可能である。
また、上記一般式(XII)で示されるホスフィン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、ジメチルプロピルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジメチルデシルホスフィン、ジメチルドデシルホスフィン、ジメチルテトラデシルホスフィン、ジメチルヘキサデシルホスフィン、ジメチルオクタデシルホスフィン、ジメチルオレイルホスフィン、ジメチルドコシルホスフィン、ジエチルプロピルホスフィン、ジエチルブチルホスフィン、ジエチルペンチルホスフィン、ジエチルヘキシルホスフィン、ジエチルシクロヘキシルホスフィン、ジエチルオクチルホスフィン、ジエチルデシルホスフィン、ジエチルドデシルホスフィン、ジエチルテトラデシルホスフィン、ジエチルヘキサデシルホスフィン、ジエチルオクタデシルホスフィン、ジエチルオレイルホスフィン、ジエチルドコシルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジプロピルメチルホスフィン、ジプロピルエチルホスフィン、ジプロピルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、ジブチルエチルホスフィン、ジブチルプロピルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジヘキシルエチルホスフィン、ジヘキシルプロピルホスフィン、ジヘキシルブチルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、ジシクロヘキシルエチルホスフィン、ジシクロヘキシルプロピルホスフィン、ジシクロヘキシルブチルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジオクチルエチルホスフィン、ジオクチルプロピルホスフィン、ジデシルメチルホスフィン、ジデシルエチルホスフィン、ジデシルプロピルホスフィン、ジデシルブチルホスフィン、ジドデシルメチルホスフィン、ジドデシルエチルホスフィン、ジドデシルプロピルホスフィン、ジドデシルブチルホスフィン、ジテトラデシルメチルホスフィン、ジテトラデシルエチルホスフィン、ジテトラデシルプロピルホスフィン、ジテトラデシルブチルホスフィン、ジヘキサデシルメチルホスフィン、ジヘキサデシルエチルホスフィン、ジヘキサデシルプロピルホスフィン、ジヘキサデシルブチルホスフィン、トリメタノールホスフィン、トリエタノールホスフィン、トリプロパノールホスフィン、トリブタノールホスフィン、トリヘキサノールホスフィン、ジエチルメタノールホスフィン、ジプロピルメタノールホスフィン、ジイソプロピルメタノールホスフィン、ジブチルメタノールホスフィン、ジイソブチルメタノールホスフィン、ジ−t−ブチルメタノールホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールホスフィン、ジメチルエタノールホスフィン、ジエチルエタノールホスフィン、ジプロピルエタノールホスフィン、ジイソプロピルエタノールホスフィン、ジブチルエタノールホスフィン、ジイソブチルエタノールホスフィン、ジ−t−ブチルエタノールホスフィン、ジ−t−ブチルフェニルホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)エタノールホスフィン、ジメチルプロパノールホスフィン、ジエチルプロパノールホスフィン、ジプロピルプロパノールホスフィン、ジイソプロピルプロパノールホスフィン、ジブチルプロパノールホスフィン、ジイソブチルプロパノールホスフィン、ジ−t−ブチルプロパノールホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)プロパノールホスフィン、メチルジメタノールホスフィン、エチルジメタノールホスフィン、プロピルジメタノールホスフィン、イソプロピルジメタノールホスフィン、ブチルジメタノールホスフィン、イソブチルジメタノールホスフィン、t−ブチルジメタノールホスフィン、(2−エチルヘキシル)ジメタノールホスフィン、メチルジエタノールホスフィン、エチルジエタノールホスフィン、プロピルジエタノールホスフィン、イソプロピルジエタノールホスフィン、ブチルジエタノールホスフィン、イソブチルジエタノールホスフィン、t−ブチルジエタノールホスフィン、(2−エチルヘキシル)ジエタノールホスフィン、イソプロピルフェニルホスフィン、メトキシジフェニルホスフィン、エトキシジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニル−t−ブチルホスフィン、ジフェニルペンチルホスフィン、ジフェニルヘキシルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、フェノキシジフェニルホスフィン、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、およびトリス−2,6−ジメトキシフェニルホスフィン等が挙げられる。
また、上記一般式(XII)以外の(B3)ホスフィンとして、フェニル−2−ピリジルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキサイド、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、および1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等が挙げられる。
本発明において、前記の一般式(XI)で示される化合物は、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミドが好ましい。
本発明において、前記の一般式(XII)で示される化合物は、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
本発明において、サイジング剤は、(A)成分と、(B)成分以外の成分を1種類以上含んでも良い。例えば、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、高級アルコール、多価アルコール、アルキルフェノール、およびスチレン化フェノール等にポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが付加した化合物、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。また、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル樹脂、および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
本発明において、サイジング剤を溶媒で希釈して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
本発明において、サイジング剤の付着量は、炭素繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3質量部の範囲である。サイジング剤の付着量が0.1質量部以上であると、炭素繊維をプリプレグ化する際に、通過する金属ガイド等による摩擦に耐えることができ、毛羽発生が抑えられ、炭素繊維シートの平滑性などの品位が優れる。一方、サイジング剤の付着量が10質量部以下であると、炭素繊維束周囲のサイジング剤膜に阻害されることなくエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が炭素繊維束内部に含浸され、得られる複合材料においてボイド生成が抑えられ、複合材料の品位が優れ、同時に機械物性が優れる。
本発明において、炭素繊維に塗布され乾燥されたサイジング剤層の厚さは、2〜20nmの範囲内で、かつ、厚さの最大値が最小値の2倍を超えないことが好ましい。このような厚さの均一なサイジング剤層により、安定して大きな接着性向上効果が得られ、さらには、安定して高次加工性が優れる。
本発明において、サイジング剤を塗布する炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
次に、PAN系炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あるいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体の溶液や懸濁液等を用いることができる。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸、凝固、水洗、延伸して前駆体繊維とし、得られた前駆体繊維を耐炎化処理と炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1400〜3000℃である。
本発明において、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるという観点から、細繊度の炭素繊維が好ましく用いられる。具体的には、炭素繊維の単繊維径が、7.5μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、さらには5.5μm以下であることが好ましい。単繊維径の下限は特にないが、4.5μm以下では工程における単繊維切断が起きやすく生産性が低下する場合がある。
得られた炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。
酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、(A)エポキシ化合物と、炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、炭素繊維をアルカリ性電解液で電解処理した後、または酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄した後、サイジング剤を塗布することが好ましい。電解処理した場合、炭素繊維表面において過剰に酸化された部分が脆弱層となって界面に存在し、複合材料にした場合の破壊の起点となる場合があるため、過剰に酸化された部分をアルカリ性水溶液で溶解除去することにより共有結合形成が促進されるものと考えられる。また、炭素繊維表面に酸性電解液の残渣が存在すると、残渣中のプロトンが(B)成分に補足され、本来果たすべき役割である(B)成分による炭素繊維表面の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜く効果が低下する場合がある。このため、酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で酸性電解液を中和洗浄することが好ましい。上記の理由から、特定の処理を施した炭素繊維とサイジング剤の組み合わせにより、さらなる接着向上を得ることができる。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5モル/リットルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1モル/リットルの範囲内である。電解液の濃度が0.01モル/リットル以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の濃度が5モル/リットル以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率の炭素繊維に処理を施す場合、より大きな電気量が必要である。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は、電解処理液中の炭素繊維の表面積1m2当たり1.5〜1000アンペア/m2の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜500アンペア/m2の範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m2以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が1000アンペア/m2以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、(A)エポキシ化合物と、炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、酸化処理の後、炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄することが好ましい。なかでも、酸性電解液で液相電解処理し、続いてアルカリ性水溶液で洗浄することが好ましい。
本発明において、洗浄に用いられるアルカリ性水溶液のpHは、7〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜14の範囲内である。アルカリ性水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。なかでも、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい態様である。
本発明において、炭素繊維を電解処理またはアルカリ性水溶液で洗浄した後、水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは250℃以下、さらに好ましくは210℃以下で乾燥することが好ましい。
サイジング剤の炭素繊維への付与(塗布)手段としては、例えば、ローラを介してサイジング液に炭素繊維を浸漬する方法、サイジング液の付着したローラに炭素繊維を接する方法、サイジング液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度および糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に、炭素繊維を超音波で加振させることも好ましい態様である。
本発明においては、炭素繊維にサイジング剤を塗布した後、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒間熱処理することが必要である。熱処理条件は、好ましくは170〜250℃の温度範囲で30〜500秒間であり、より好ましくは180〜240℃の温度範囲で30〜300秒間である。熱処理条件が、160℃未満および/または30秒未満であると、サイジング剤のエポキシ樹脂と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。一方、熱処理条件が、260℃を超えるおよび/または600秒を超える場合、3級アミン化合物および/または3級アミン塩の揮発が起きて、共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱硬化性樹脂との接着性が不十分となる。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能である。マイクロ波照射および/または赤外線照射により炭素繊維を加熱処理した場合、マイクロ波が炭素繊維内部に侵入し、吸収されることにより、短時間に被加熱物である炭素繊維を所望の温度に加熱できる。また、マイクロ波照射および/または赤外線照射により、炭素繊維内部の加熱も速やかに行うことができるため、炭素繊維束の内側と外側の温度差を小さくすることができ、サイジング剤の接着ムラを小さくすることが可能となる。
本発明において、得られた炭素繊維束のストランド強度が、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPa以上である。また、得られた炭素繊維束のストランド弾性率が、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280GPa以上である。
本発明において、上記の炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めることができる。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、130℃、30分を用いる。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
本発明において、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.05〜0.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.06〜0.30の範囲内のものであり、さらに好ましくは0.07〜0.20の範囲内ものである。表面酸素濃度(O/C)が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、マトリックス樹脂との強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度(O/C)が0.5以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を、1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
続いて、本発明にかかるプリプレグおよび該プリプレグを使用した炭素繊維強化複合材料について説明する。本発明にかかるプリプレグは、上述のサイジング剤塗布炭素繊維とマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂とを含む。
本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、熱により架橋反応が進行して、少なくとも部分的に三次元架橋構造を形成する樹脂であれば特に限定されない。かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂および熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられ、これらの変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。また、これらの熱硬化性樹脂は、加熱により自己硬化するものであっても良いし、硬化剤や硬化促進剤などを配合するものであっても良い。
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などの中から1種以上を選択して用いることができる。
ここで、ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物の2つのフェノール性水酸基がグリシジル化されたものであり、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、もしくはこれらビスフェノールのハロゲン、アルキル置換体、水添品等が挙げられる。また、単量体に限らず、複数の繰り返し単位を有する高分子量体も好適に使用することができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、828、834、1001、1002、1003、1003F、1004、1004AF、1005F、1006FS、1007、1009、1010(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、“jER(登録商標)”505、5050、5051、5054、5057(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、ST5080、ST4000D、ST4100D、ST5100(以上、新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、807、4002P、4004P、4007P、4009P、4010P(以上、三菱化学(株)製)、“エポトート(登録商標)”YDF2001、YDF2004(以上、新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、YSLV−80XY(新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−154(DIC(株)製)などが挙げられる。
また、アミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン、アルキノール置換体、水添品などが挙げられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)、YH434L(新日鐵化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY720、MY721(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)などが挙げられる。トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、ELM120(以上、住友化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)などが挙げられる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品の市販品としては、TETRAD−X、TETRAD−C(以上、三菱ガス化学(株)製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”152、154(以上、三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、N−770、N−775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”YX4000H、YX4000、YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”HP7200L(エポキシ当量245〜250、軟化点54〜58)、“エピクロン(登録商標)”HP7200(エポキシ当量255〜260、軟化点59〜63)、“エピクロン(登録商標)”HP7200H(エポキシ当量275〜280、軟化点80〜85)、“エピクロン(登録商標)”HP7200HH(エポキシ当量275〜280、軟化点87〜92)(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、XD−1000−L(エポキシ当量240〜255、軟化点60〜70)、XD−1000−2L(エポキシ当量235〜250、軟化点53〜63)(以上、日本化薬(株)製)、“Tactix(登録商標)”556(エポキシ当量215〜235、軟化点79℃)(Vantico Inc社製)などが挙げられる。
イソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するXAC4151、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)やACR1348((株)ADEKA製)などが挙げられる。
テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂の市販品としては、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂である“jER(登録商標)”1031(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としては、“タクチックス(登録商標)”742(ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ(株)製)などが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β−不飽和ジカルボン酸を含む酸成分とアルコールとを反応させて得られる不飽和ポリエステルを、重合性不飽和単量体に溶解したものが挙げられる。α,β−不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等及びこれらの酸無水物等の誘導体等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてα,β−不飽和ジカルボン酸以外の酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等の誘導体をα,β−不飽和ジカルボン酸と併用してもよい。
アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド(1〜100モル)付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
不飽和ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略す)付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略す。)付加物との縮合物及びフマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのEO及びPO付加物(EO及びPOの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物等が含まれ、これらの縮合物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。不飽和ポリエステル樹脂の市販品としては、“ユピカ(登録商標)”(日本ユピカ(株)製)、“リゴラック(登録商標)”(昭和電工(株)製)、“ポリセット(登録商標)”(日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
ビニルエステル樹脂としては、前記エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸とをエステル化させることで得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。α,β−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸及び桂皮酸等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。ビニルエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート変性物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とが反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等)等が含まれ、これらの変性物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。ビニルエステル樹脂の市販品としては、“ディックライト(登録商標)”(DIC(株)製)、“ネオポール(登録商標)”(日本ユピカ(株)製)、“リポキシ(登録商標)”(昭和高分子(株)製)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン樹脂としては、o−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−m−トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−3,5−ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。ベンゾオキサジン樹脂の市販品としては、BF−BXZ、BS−BXZ、BA−BXZ(以上、小西化学工業(株)製)等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン及びカテコール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びフルフラール等のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂が挙げられ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等が挙げられる。ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。フェノール樹脂の市販品としては、“スミライトレジン(登録商標)”(住友ベークライト(株)製)、レヂトップ(群栄化学工業(株)製)、“AVライト(登録商標)”(旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
尿素樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。尿素樹脂の市販品としては、UA−144((株)サンベーク製)等が挙げられる。
メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる樹脂が挙げられる。メラミン樹脂の市販品としては、“ニカラック(登録商標)”((株)三和ケミカル製)等が挙げられる。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、少なくとも主構造にイミド環を含み、かつ末端又は主鎖内にフェニルエチニル基、ナジイミド基、マレイミド基、アセチレン基等から選ばれるいずれか一つ以上を含む樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、PETI−330(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという利点を有するため、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。特に多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂および芳香族ジアミン硬化剤を含有するエポキシ樹脂が好ましい。多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂および芳香族ジアミン硬化剤を含有するエポキシ樹脂は、架橋密度が高く、炭素繊維強化複合材料の耐熱性および圧縮強度を向上させることができる。
多官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリン、N,N−ジグリシジル−4−(4−メチルフェノキシ)アニリン、N,N−ジグリシジル−4−(4−tert−ブチルフェノキシ)アニリンおよびN,N−ジグリシジル−4−(4‐フェノキシフェノキシ)アニリン等が挙げられる。これらの樹脂は、多くの場合、フェノキシアニリン誘導体にエピクロロヒドリンを付加し、アルカリ化合物により環化して得られる。分子量の増加に伴い粘度が増加していくため、取扱い性の点から、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリンが特に好ましく用いられる。
フェノキシアニリン誘導体としては、具体的には、4−フェノキシアニリン、4−(4−メチルフェノキシ)アニリン、4−(3−メチルフェノキシ)アニリン、4−(2−メチルフェノキシ)アニリン、4−(4−エチルフェノキシ)アニリン、4−(3−エチルフェノキシ)アニリン、4−(2−エチルフェノキシ)アニリン、4−(4−プロピルフェノキシ)アニリン、4−(4−tert−ブチルフェノキシ)アニリン、4−(4−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(3−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(2−シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4−(4−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(3−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(2−メトキシフェノキシ)アニリン、4−(3−フェノキシフェノキシ)アニリン、4−(4−フェノキシフェノキシ)アニリン、4−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4−(2−ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4−(1−ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4−[(1,1′−ビフェニル−4−イル)オキシ]アニリン、4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(3−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(2−ニトロフェノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−ニトロ−4−(4−ニトロフェノキシ)アニリン、4−(2,4−ジニトロフェノキシ)アニリン、3−ニトロ−4−フェノキシアニリン、4−(2−クロロフェノキシ)アニリン、4−(3−クロロフェノキシ)アニリン、4−(4−クロロフェノキシ)アニリン、4−(2,4−ジクロロフェノキシ)アニリン、3−クロロ−4−(4−クロロフェノキシ)アニリン、および4−(4−クロロ−3−トリルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品として、例えば、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)、YH434L(東都化成(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)製)、および“jER(登録商標)604”(三菱化学(株)製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールとしては、例えば、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100(住友化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)製)、および“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。
芳香族ジアミン硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化剤として用いられる芳香族ジアミン類であれば特に限定されるものではないが、具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸エステル等を使用することができる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ジアミン硬化剤以外の硬化剤としては、脂環式アミンなどのアミン、フェノール樹脂、ジシアンジアミドまたはその誘導体、酸無水物、ポリアミノアミド、有機酸ヒドラジド、イソシアネートを用いてもよい。
硬化剤として使用するフェノール樹脂としては、マトリックス樹脂として上記で例示したフェノール樹脂を任意に用いることができる。
また、硬化剤の総量は、全エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対し、活性水素基が0.6〜1.2当量の範囲となる量を含むことが好ましく、より好ましくは0.7〜0.9当量の範囲となる量を含むことである。ここで、活性水素基とは、硬化剤成分のエポキシ基と反応しうる官能基を意味し、活性水素基が0.6当量に満たない場合は、硬化物の反応率、耐熱性、弾性率が不足し、また、繊維強化複合材料のガラス転移温度や強度が不足する場合がある。また、活性水素基が1.2当量を超える場合は、硬化物の反応率、ガラス転移温度、弾性率は十分であるが、塑性変形能力が不足するため、炭素繊維強化複合材料の耐衝撃性が不足する場合がある。
また、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、さらに、硬化を促進させることを目的に、硬化促進剤を配合することもできる。
硬化促進剤としては、ウレア化合物、第三級アミンとその塩、イミダゾールとその塩、トリフェニルホスフィンまたはその誘導体、カルボン酸金属塩や、ルイス酸類やブレンステッド酸類とその塩類などが挙げられる。中でも、保存安定性と触媒能力のバランスから、ウレア化合物が好適に用いられる。
ウレア化合物としては、例えば、N,N‐ジメチル‐N’‐(3,4‐ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’‐メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、3‐フェニル‐1,1‐ジメチルウレアなどを使用することができる。かかるウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土谷化学(株)製)、“Omicure(登録商標)”24、52、94(以上、Emerald Performance Materials, LLC製)などが挙げられる。
ウレア化合物の配合量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して1〜4質量部含むことが好ましい。かかるウレア化合物の配合量が1質量部に満たない場合は、反応が十分に進行せず、硬化物の弾性率と耐熱性が不足することがある。また、かかるウレア化合物の配合量が4質量部を超える場合は、エポキシ樹脂の自己重合反応が、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を阻害するため、硬化物の靭性が不足することや、弾性率が低下することがある。
本発明のプリプレグには、靱性や流動性を調整するために、熱可塑性樹脂が含まれていることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、フェノキシ樹脂、ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、熱可塑性樹脂のオリゴマーを含ませることができる。また、エラストマー、フィラーおよびその他の添加剤を配合することもできる。なお、熱可塑性樹脂は、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂に含まれていると良い。さらに、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂が用いられる場合、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂や、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子等を配合することができる。かかるエポキシ樹脂に可溶性の熱可塑性樹脂としては、樹脂と炭素繊維との接着性改善効果が期待できる水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂として、アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂やスルホニル基を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。
かかるアルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂を挙げることができ、また、アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドンを挙げることができ、さらに、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンを挙げることができる。ポリアミド、ポリイミドおよびポリスルホンは、主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子に置換基を有してもよい。
エポキシ樹脂に可溶で水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品を例示すると、ポリビニルアセタール樹脂として、デンカブチラール(電気化学工業(株)製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)、フェノキシ樹脂として、“UCAR(登録商標)”PKHP(ユニオンカーバイド(株)製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト(登録商標)”(ヘンケル白水(株)製)、“アミラン(登録商標)”(東レ(株)製)、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(ジェネラル・エレクトリック(株)製)、“Matrimid(登録商標)”5218(チバ(株)製)、ポリスルホンとして“スミカエクセル(登録商標)”(住友化学(株)製)、“UDEL(登録商標)”、RADEL(登録商標)”(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)、ポリビニルピロリドンとして、“ルビスコール(登録商標)”(ビーエーエスエフジャパン(株)製)を挙げることができる。
また、アクリル系樹脂は、エポキシ樹脂との相溶性が高く、増粘等の流動性調整のために好適に用いられる。アクリル樹脂の市販品を例示すると、“ダイヤナール(登録商標)”BRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M,M100,M500(松本油脂製薬(株)製)、“Nanostrength(登録商標)”E40F、M22N、M52N(アルケマ(株)製)などを挙げることができる。
本発明に好ましく用いられるエポキシ樹脂には、ゴム粒子を配合することもできる。かかるゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子の市販品としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(JSR(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(新日鐵化学(株)製)等を使用することができる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(以上、武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“PARALOID(登録商標)”EXL−2611、EXL−3387(以上、Rohm&Haas社製)、“カネエース(登録商標)”MX(カネカ(株)製)等を使用することができる。
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミド粒子やポリイミド粒子が好ましく用いられ、ポリアミド粒子の市販品として、SP−500(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”(アルケマ(株)製)等を使用することができる。
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、エポキシ樹脂組成物の増粘等の流動性調整のため、エポキシ樹脂組成物に、シリカ、アルミナ、スメクタイトおよび合成マイカ等の無機粒子を配合することができる。
また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、炭素繊維強化複合材料にしたときの耐熱性、ねじり強さを向上させる観点から、(D)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、(E)平均エポキシ当量が1000g/mol以上、10000g/mol以下であるエポキシ樹脂、および(F)硬化剤を含む熱硬化性樹脂であることが好ましい。
本発明で用いられる熱硬化性樹脂を構成する(D)成分としてのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂として単独で使用しうるものとして上記で例示したものが使用される。(D)成分は、全エポキシ樹脂100質量部中、5〜55質量部含まれるのが好ましく、10〜50質量部がさらに好ましい。5質量部より低いと熱安定性の向上効果が小さく、耐熱性が低下すると共に初期のタック値が低くなる場合がある。55質量部よりも多いと残留熱応力が大きくなるため炭素繊維強化複合材料の物性が低下する場合がある。
本発明で用いられる熱硬化性樹脂を構成する(E)成分は、平均エポキシ当量が1000g/mol以上、10000g/mol以下であることが好ましいが、1200g/mol以上、8000g/mol以下であることがより好ましく、1500g/mol以上、5000g/mol以下であることがさらに好ましい。平均エポキシ当量が1000g/mol未満であると熱安定性の向上効果が小さくなると共に、タックの保持率が低下する場合がある。10000g/molを超えるとプリプレグ製造工程において、樹脂の含浸性が不十分となり、炭素繊維強化複合材料の物性が低下する場合がある。
(E)成分の平均エポキシ当量が1000g/mol以上、10000g/mol以下であるエポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”1005F(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量1000)、ST−5100(東都化成(株)製、平均エポキシ当量1000)、ST−4100D(東都化成(株)製、エポキシ当量1000)、“jER(登録商標)”1005H(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量1290)、“jER(登録商標)”5354(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量1650)、DER−667(ダウケミカル日本(株)製、平均エポキシ当量1775)、EP−5700(旭電化工業(株)製、平均エポキシ当量1925)、”エピクロン(登録商標)“7050(大日本インキ(株)製、平均エポキシ当量1925)、YD−017(東都化成(株)製、平均エポキシ当量1925)、“jER(登録商標)”1007(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量1950)、“jER(登録商標)”5057(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量2250)、“jER(登録商標)”4007P(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量2270)、DER−668(ダウケミカル日本(株)製、平均エポキシ当量2750)、YD−019(東都化成(株)製、平均エポキシ当量2850)、EP−5900(旭電化工業(株)製、平均エポキシ当量2850)、“jER(登録商標)”1009(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量3300)、“jER(登録商標)”4110P(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量3800)、YD−020N(東都化成(株)製、平均エポキシ当量3900)、“jER(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン、平均エポキシ当量4000)、“jER(登録商標)”4010P(ジャパンエポキシレジン(株)製、平均エポキシ当量4400)、DER−669(ダウケミカル日本(株)製、平均エポキシ当量4500)、YD−020H(東都化成(株)、平均エポキシ当量5250)、“jER(登録商標)”1256(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量7700)、“jER(登録商標)”4250(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量8500)、“jER(登録商標)”4275(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量8500)、“jER(登録商標)”5203(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量9000)、“jER(登録商標)”4210(三菱化学(株)製、平均エポキシ当量10000)等を挙げることができる。
(E)成分は、全エポキシ樹脂100質量部中、5〜55質量部が好ましく、10〜50質量部含まれるのがより好ましい。配合量が5質量部に満たない場合には、熱安定性の向上効果が低下すると共に、プリプレグのタック保持率が低下する場合がある。また、配合量が55質量部を超えるとプリプレグ製造工程において、炭素繊維への樹脂の含浸性が不十分となり、炭素繊維強化複合材料の物性が低下する場合がある。
(F)成分は特に限定されず、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤を用いることができる。中でもアミン系硬化剤であるジシアンジアミドが熱安定性の点から好ましい。
また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、プリプレグとした際の硬化物の靭性や炭素繊維強化複合材の耐衝撃性を向上させるために、(G)S−B−M、B−M、およびM−B−Mからなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(以下略して、ブロック共重合体と記すこともある)を含むことが好ましい。S−B−M、B−M、およびM−B−Mは、特表2003−535181号公報あるいは国際公開2006/077153号パンフレットに記載されたブロック共重合体である。
ここで、前記のS、B、および、Mで表される各ブロックは共有結合によって連結されているか、何らかの化学構造を介して共有結合によって連結されている。
ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むコポリマーである。
かかる(G)成分であるブロック共重合体の配合量は、力学特性やコンポジット作製プロセスへの適合性の観点から、マトリックス樹脂中のエポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、より好ましくは2〜7質量部、さらに好ましくは、3〜6質量部の範囲である。
(G)成分であるブロック共重合体のブロックMに、メタクリル酸メチル以外のモノマーを共重合成分として導入することは、エポキシ樹脂との相溶性および硬化物の各種特性制御の観点から好適に実施される。かかるモノマー共重合成分は、特に限定されるものではなく、上記観点から適宜選択可能だが、通常は、極性の高いエポキシ樹脂への相溶性を得るために、極性の高いモノマー、特に水溶性のモノマーが好適に使用される。中でも、アクリルアミド誘導体が好適に使用でき、特にジメチルアクリルアミドがアクリル系モノマーに限定されるものではなく、また反応性のモノマーも適用可能である。
ここで反応性モノマーとは、エポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の官能基と反応可能な官能基を有するモノマーを意味する。具体的な例をあげると、オキシラン基、アミノ基またはカルボキシル基等の反応性官能基をあげることが出来るが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーは、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸とアクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸と略記)、または加水分解により(メタ)アクリル酸を生成可能な他の任意のモノマーにすることができる。反応性のモノマーを用いることで、エポキシ樹脂との相溶性やエポキシ−ブロック共重合体界面での接着が良くなるため好ましく用いられる。
ブロックMを構成する他のモノマーの例としては、メタクリル酸グリシジルまたはtert−ブチルメタクリレートが挙げられるが、ブロックMは少なくとも60%がシンジオタクティックPMMA(ポリメタクリル酸メチル)から成るのが好ましい。
ブロックBを構成するポリマーのガラス転移温度Tgは、20℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−40℃以下である。かかるガラス転移温度Tgは、硬化物の靱性の観点では低ければ低いほど好ましいが、−100℃を下回ると繊維強化複合材料とした際に切削面が荒れるなどの加工性に問題が生じる場合がある。
ブロックBを構成するポリマーは、エラストマーであることが好ましく、かかるエラストマーを合成するのに用いられるモノマーはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよび2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されることが好ましい。
このブロックBは、ポリジエン、特にポリブタジエン、ポリイソプレンおよびこれらのランダム共重合体または部分的または完全に水素化されたポリジエン類の中から選択するのが、硬化物の靱性の観点から好ましい。ポリブタジエンの中では1,2−ポリブタジエン(Tg:約0℃)なども挙げられるが、ガラス転移温度Tgが最も低い例えば1,4−ポリブタジエン(Tg:約−90℃)を使用するのがより好ましい。ガラス転移温度Tgがより低いブロックBを用いることは、繊維強化複合材料の耐衝撃性や硬化物の靱性の観点から有利だからである。ブロックBは水素化されていてもよい。この水素化は通常の方法に従って実行される。
エラストマーのブロックBを合成するのに用いるモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートを用いることもまた好ましい。具体例としては、アクリル酸エチル(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)および2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)を挙げることができる。ここで、各アクリレートの名称の後のカッコ中に示した数値は、それぞれのアクリレートを用いた場合に得られるブロックBのTgである。これらの中では、ブチルアクリレートを用いるのが好ましい。これらのブロックBを合成するモノマーとしてのアクリレートは、メタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むブロックMのアクリレートとは非相溶である。中でもBブロックは、主として1,4−ポリブタジエン、ポリブチルアクリレート、またはポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)から成ることが好ましい。
本発明の(G)成分であるブロック共重合体としてトリブロック共重合体S−B−Mを用いる場合、ブロックSは、ブロックBおよびMに非相溶で、そのガラス転移温度Tgは、ブロックBのガラス転移温度Tgよりも高いものが好ましい。ブロックSのTgまたは融点は、23℃以上であることが好ましく、50℃以上であるのがより好ましい。なお本発明においてブロックSのガラス転移温度Tgは、上記ブロックBのTgの場合と同様にして測定されたものとする。ブロックSの例として、芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるもの、アルキル鎖が1〜18の炭素原子を有するアルキル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルから得られるものを挙げることができる。後者のアルキル鎖が1〜18の炭素原子を有するアルキル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルから得られるものは、メタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むブロックMとは互いに非相溶である。
本発明の(G)成分であるブロック共重合体としてトリブロック共重合体M−B−Mを用いる場合、トリブロック共重合体M−B−Mの二つのブロックMは互いに同一でも異なっていてもよい。また、同じモノマーによるもので分子量が異なるものにすることもできる。
本発明の(G)成分であるブロック共重合体としてトリブロック共重合体M−B−Mとジブロック共重合体B−Mを併用する場合には、このトリブロック共重合体M−B−MのブロックMはジブロック共重合体B−MのMブロックと同一でも、異なっていてもよく、また、M−B−MトリブロックのブロックBはジブロック共重合体B−MのブロックBと同一でも異なっていてもよい。
本発明の(G)成分であるブロック共重合体としてトリブロック共重合体S−B−Mとジブロック共重合体B−Mおよび/またはトリブロック共重合体M−B−Mを併用する場合には、このトリブロック共重合体S−B−MのブロックMと、トリブロック共重合体M−B−Mの各ブロックMと、ジブロック共重合体B−MのブロックMとは互いに同一でも異なっていてもよく、トリブロック共重合体S−B−Mと、トリブロック共重合体M−B−Mと、ジブロック共重合体B−Mとの各ブロックBは互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明の(G)成分であるブロック共重合体は、アニオン重合によって製造でき、例えば欧州特許第EP524,054号公報や欧州特許第EP749,987号公報に記載の方法で製造することができる。
トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、アルケマ社製の“Nanostrength(登録商標)” M22や、極性官能基をもつ“Nanostrength(登録商標)” M22Nが挙げられる。トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、アルケマ社製の“Nanostrength(登録商標)” 123、“Nanostrength(登録商標)” 250、“Nanostrength(登録商標)” 012,“Nanostrength(登録商標)” E20,“Nanostrength(登録商標)” E40が挙げられる。
本発明で用いられる熱硬化性樹脂が、前記(G)成分であるブロック共重合体を含む場合、アミン型エポキシ樹脂を10〜60質量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂を40〜90質量部、ジシアンジアミドまたはその誘導体1〜10質量部、前記(G)S−B−M、B−M、およびM−B−Mからなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体を1〜10質量部含むことで、樹脂硬化物においては高弾性率が得られ、かつ(G)成分の微細な相分離構造形成に起因した高伸度、高靭性が得られ好ましい。
また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、(H)軟化点が90℃以上のビスフェノール型エポキシ樹脂、(I)3個以上の官能基を有するアミン型エポキシ樹脂、(J)数平均分子量450以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂、および(K)硬化剤を含むエポキシマトリックス樹脂であって、(H)〜(J)の合計が100質量部に対して、(H)20〜50質量部、(I)30〜50質量部および(J)10〜40質量部の配合比を満たす、エポキシマトリックス樹脂であることが好ましい。
本発明の(I)成分である3個以上の官能基を有するアミン型エポキシ樹脂とは、エポキシ基に加えて、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも3個以上の官能基を有するアミン型エポキシ樹脂を意味する。
ここで、(H)成分、(I)成分および(J)成分は、硬化前において互いに均一に相溶している状態であったとしても、硬化過程においてスピノーダル分解し、(H)成分のリッチ相と(I)成分のリッチ相とで相分離構造を形成することが好ましい。また、その相分離構造周期は1nm〜5μmであることがより好ましく、さらに好ましい相分離構造周期は1nm〜1μmである。(H)成分、(I)成分、(J)成分および(K)成分からなるエポキシ樹脂組成物の硬化過程において、(J)成分は(H)成分および(I)成分の相溶化剤として機能する。
(H)成分のリッチ相と(I)成分のリッチ相とが形成する相分離構造の構造周期が1nm未満の場合は、キャビテーション効果を発揮できず、靱性が不足するだけでなく、弾性率も不足しやすい。また、(H)成分のリッチ相と(I)成分のリッチ相とが形成する相分離構造の構造周期が5μmを超える場合では、その構造周期が大きいために、亀裂が島相への進展なく、海相のみの領域で進展するのでキャビテ―ション効果を発現できず、樹脂硬化物の靱性が不充分である場合がある。すなわち、エポキシマトリックス樹脂の硬化物が、(H)成分のリッチ相と(I)成分のリッチ相とを含み、かつ、微細な相分離構造を有することにより、樹脂硬化物の弾性率と靭性の両立が可能となるのである。
本発明において、相分離構造とは、(H)成分のリッチ相と(I)成分のリッチ相とを含む2相以上の相が分離して形成されている構造をいう。ここで、(H)成分のリッチ相および(I)成分のリッチ相とは、それぞれ(H)成分および(I)成分を主成分とする相のことをいう。また、ここで主成分とは、当該相において最も高い含有率で含まれている成分のことをいう。相分離構造は、(H)成分および(I)成分以外の成分を主成分とする相をさらに含む3相以上の相分離構造であっても良い。これに対し、分子レベルで均一に混合している状態を、相溶状態という。
樹脂硬化物の相分離構造は、樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察することができる。必要に応じて、オスミウムなどで染色しても良い。染色は、通常の方法で行うことができる。
本発明において、相分離の構造周期は、次のように定義するものとする。なお、相分離構造には、両相連続構造と海島構造が有るので、それぞれについて定義する。
相分離構造が両相連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線をランダムに3本引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とする。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍でサンプルの写真を撮影し、写真上で引いた20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)を直線の所定の長さとする。同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上で20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)を直線の所定の長さとする。相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上で20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)を直線の所定の長さとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
相分離構造が海島構造の場合、顕微鏡写真の上の所定の領域をランダムに3箇所選出し、その領域内の島相サイズを測定し、これらの数平均値を構造周期とする。島相のサイズは、相界面から一方の相界面へ島相を通って引く最短距離の線の長さをいう。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、相界面から一方の相界面へ島相を通る最短の距離を島相サイズとする。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。相分離構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20,000倍でサンプルの写真を撮影し、写真上で4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)を所定の領域とする。同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2,000倍で写真撮影し、写真上で4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)を所定の領域とする。相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上で4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)を所定の領域とする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて再度測定する。
本発明のプリプレグは、炭素繊維同士の接触確率を高め炭素繊維強化複合材料の導電性を向上させる目的で、導電性フィラーを混合して用いることも好ましい。このような導電性フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長法炭素繊維(VGCF)、フラーレン、金属ナノ粒子などが挙げられ、単独で使用しても併用してもよい。なかでも安価で効果の高いカーボンブラックが好ましく用いられ、かかるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に用いられる。
特に、導電性を向上させるためのプリプレグとして、下記(1)、(2)の少なくともいずれか一方を満たすプリプレグであることが好ましい。
(1)(L)熱可塑性樹脂の粒子または繊維、および(M)導電性の粒子または繊維をさらに含み、[(L)の配合量(質量部)]/[(M)の配合量(質量部)]で表される重量比が1〜1000である。
(2)(N)熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維をさらに含む。
ここで、(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維の具体例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長法炭素繊維(VGCF)、フラーレン、金属ナノ粒子などが挙げられ、単独で使用しても併用してもよい。なかでも安価で効果の高いカーボンブラックが好ましく用いられ、かかるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に用いられる。
前記(1)を満たす態様では、(L)成分として熱可塑性樹脂の粒子または繊維を用いているため、優れた耐衝撃性を実現することができる。本発明の(L)成分である熱可塑性樹脂の粒子または繊維の素材としては、熱硬化性樹脂に混合、溶解して用いる熱可塑性樹脂として先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。なかでも、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上できる、ポリアミドは最も好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11やナイロン6/12共重合体は、[B]熱硬化性樹脂との接着強度が特に良好であることから、落錘衝撃時の炭素繊維強化複合材料の層間剥離強度が高く、耐衝撃性の向上効果が高いため好ましい。
(L)成分として熱可塑性樹脂の粒子を用いる場合、熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状でも非球状でも多孔質でも針状でもウイスカー状でも、またはフレーク状でもよいが、球状の方が、熱硬化性樹脂の流動特性を低下させないため炭素繊維への含浸性が優れることや、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離がより低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分がより少ないことから、高い耐衝撃性を発現する炭素繊維強化複合材料が得られることから好ましい。
(L)成分として熱可塑性樹脂の繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂繊維の形状としては、短繊維あるいは長繊維ともに用いることができる。短繊維の場合特開平2−69566号公報に示されるように短繊維を粒子同様に用いる方法、あるいはマットに加工して用いる方法が可能である。長繊維の場合、特開平4−292634号公報に示されるように長繊維をプリプレグ表面に平行に配列する方法、国際公開番号94016003号公報に示されるようにランダムに配列する方法が可能である。さらに特開平2−32843号公報に示されるような織物、国際公開番号94016003号公報に示されるような不織布、あるいは編物などのシート状の基材に加工して用いることもできる。また、短繊維チップ、チョップドストランド、ミルドファイバー、あるいは短繊維を紡績糸とし、平行あるいはランダムに配列する、織物、編物に加工して使用する方法も用いることができる。
本発明で(M)成分として導電性の粒子を用いる場合、導電性の粒子は、電気的に良好な導体として振る舞う粒子であれば良く、導体のみからなるものに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が10〜10−9Ωcmであり、より好ましくは1〜10−9Ωcmであり、さらに好ましくは10−1〜10−9Ωである粒子である。体積固有抵抗が高すぎると、炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。導電性の粒子は、例えば、金属粒子、ポリアセチレン粒子、ポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子、ポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子、カーボン粒子の他、無機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子、有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子を使用することができる。これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、カーボン粒子、無機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子、有機材料の核が導電性物質で被覆されてなる粒子が特に好ましく用いられる。
特に、後述する前記(2)を満たす態様のように、有機材料として熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆されてなる粒子を採用すれば、得られる炭素繊維強化複合材料においてさらに優れた耐衝撃性を実現出来るため好ましい。
本発明で(M)成分として導電性の繊維を用いる場合、導電性の繊維は、電気的に良好な導体として振る舞う繊維であれば良く、導体のみからなるものに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が10〜10−9Ωcmであり、より好ましくは1〜10−9Ωcmであり、さらに好ましくは10−1〜10−9Ωである繊維である。体積固有抵抗が高すぎると、炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。導電性の繊維は、例えば、金属繊維、炭素繊維、無機材料の芯が導電性物質で被覆されてなる繊維、有機材料の芯が導電性物質で被覆されてなる繊維などを使用することができる。特に、後述する本発明の(2)を満たす態様のように、有機材料として熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂の芯が導電性物質で被覆されてなる繊維を採用すれば、得られる炭素繊維強化複合材料においてさらに優れた耐衝撃性を実現出来る。
ここでいう、体積固有抵抗とは、サンプルを4探針電極を有する円筒型セルにセットし、試料に60MPaの圧力を加えた状態で試料の厚さと抵抗値を測定し、その値から算出した体積固有抵抗とする。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の粒子または繊維において、導電性の粒子または繊維は、核または芯である無機材料や有機材料と導電性物質からなる導電性層とから構成され、必要に応じてその核または芯と導電性層の間に後述するような接着層を設けてもよい。
導電性物質が被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の粒子または繊維において、核または芯として用いる無機材料としては、無機酸化物、無機有機複合物、および炭素などを挙げることができる。
無機酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等、単一の無機酸化物、および2種以上の複合無機酸化物が挙げられる。
無機有機複合物としては、例えば、金属アルコキシドおよび/または金属アルキルアルコキシドを加水分解して得られるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
また、炭素としては、結晶質炭素、非晶質炭素が好ましく用いられる。非晶質炭素としては、例えば、“ベルパール”(登録商標)C−600、C−800、C−2000(鐘紡(株)製)、“NICABEADS”(登録商標)ICB、PC、MC(日本カーボン(株)製)などが具体的に挙げられる。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)導電性の粒子または繊維において、核または芯として有機材料を用いる場合、核または芯として用いる有機材料としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、および、ジビニルベンゼン樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、ここで挙げた材料を2種類以上複合して用いても良い。なかでも、優れた耐熱性を有するアクリル樹脂やジビニルベンゼン樹脂、および優れた耐衝撃性を有するポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
前記(2)を満たす態様では、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維を必須成分として用いているため、(L)成分として熱可塑性樹脂の粒子または繊維を加えずとも、炭素繊維強化複合材料に高い耐衝撃性と導電性とを発現することができる。本発明で用いられる(N)成分である導電性の粒子または繊維の核または芯の素材として用いる熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂に混合、溶解して用いる熱可塑性樹脂として先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。なかでも、歪みエネルギー開放率(G1c)が1500〜50000J/m2の熱可塑性樹脂を核または芯の素材として用いることが好ましい。より好ましくは、3000〜40000J/m2、さらに好ましくは、4000〜30000J/m2である。歪みエネルギー開放率(G1c)が小さすぎると、炭素繊維強化複合材料の耐衝撃性が不十分な場合があり、大きすぎると、炭素繊維強化複合材料の剛性が低下する場合がある。かかる熱可塑性樹脂が、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等が好ましく用いられ、ポリアミドが特に好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11やナイロン6/12共重合体が好ましく用いられる。G1cの評価は(N)の核または芯の素材である熱可塑性樹脂を成形した樹脂板を用い、ASTM D 5045−96に定められたコンパクトテンション法またはダブルテンション法により行う。
(N)成分として熱可塑性樹脂の核が導電性物質で被覆された導電性の粒子を用いる場合、熱可塑性樹脂粒子の核の形状としては、球状でも非球状でも多孔質でも針状でもウイスカー状でも、またはフレーク状でもよいが、球状の方が、熱硬化性樹脂の流動特性を低下させないため炭素繊維への含浸性が優れる。また、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離がより低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分がより少なくなることや、積層層内の炭素繊維との接触確率が高く、導電パスを形成し易いことから、高い耐衝撃性と導電性とを発現する炭素繊維強化複合材料が得られる点で好ましい。
(N)として熱可塑性樹脂の芯が導電性物質で被覆された導電性の繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂繊維の芯の形状としては、短繊維あるいは長繊維ともに用いることができる。
短繊維の場合特開平2−69566号公報に示されるように短繊維を粒子同様に用いる方法、あるいはマットに加工して用いる方法が可能である。長繊維の場合、特開平4−292634号公報に示されるように長繊維をプリプレグ表面に平行に配列する方法、国際公開番号94016003号公報に示されるようにランダムに配列する方法が可能である。さらに特開平2−32843 号公報に示されるような織物、国際公開番号94016003号公報に示されるような不織布、あるいは編物などのシート状の基材に加工して用いることもできる。また、短繊維チップ、チョップドストランド、ミルドファイバー、あるいは短繊維を紡績糸とし、平行あるいはランダムに配列する、織物、編物に加工して使用する方法も用いることができる。
熱可塑性樹脂繊維の芯を導電性物質で被覆する際、熱可塑性樹脂繊維の芯を上記形状に加工した後、導電性物質を被覆する方法、あるいは熱可塑性樹脂繊維の芯に導電性物質を被覆した後、上記形状に加工する方法がある。短繊維、長繊維、チョップドストランド、ミルドファイバーは、どちらの方法も好ましく用いられる。織物、編物、不織布は、熱可塑性樹脂繊維の芯に導電性物質を被覆した後、上記形状に加工する方法が好ましく用いられる。織物、編物、不織布の場合、熱可塑性樹脂繊維の芯をかかる形状に加工した後、導電性物質を被覆すると、被覆ムラが発生し、(N)の導電性が低下する場合があり、好ましく用いられないからである。
(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維において、前述の核または芯を被覆する導電性の物質としては、金属または炭素を挙げることができる。また、かかる(N)成分においては、熱可塑性樹脂の核または芯の表面に前記導電性物質により導電性層が構成されているが、かかる導電性層は金属や炭素の連続した膜状であっても良いし、導電性繊維、カーボンブラック、金属微粒子など、繊維状または粒子状の導電性物質が集合したものであっても良い。また、核または芯である熱可塑性樹脂と導電性層との間に後述するような接着層を設けてもよい。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維において導電性層を構成する導電性物質としては、電気的に良好な導体として振る舞う物質であれば良く、導体のみからなるものに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が10〜10−9Ωcmであり、より好ましくは1〜10−9Ωcmであり、さらに好ましくは10−1〜10−9Ωである物質である。体積固有抵抗が高すぎると、炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。例えば、炭素、または、金属が挙げられ、かかる導電性層は炭素や金属の連続した膜状であっても良いし、繊維状または粒子状の導電性物質が集合したものであっても良い。
導電性物質として、炭素を用いる場合、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、中空カーボンファイバー等が好ましく用いられる。なかでも、中空カーボンファイバーが好ましく用いられ、その外形は、好ましくは0.1〜1000nmであり、より好ましくは1〜100nmのものである。中空カーボンファイバーの外径が小さすぎても、大きすぎても、そのような中空カーボンファイバーを製造することが困難であることが多い。
上記の中空カーボンファイバーは、表面にグラファイト層を形成したものでもよい。その際、構成するグラファイト層の総数は、好ましくは1〜100層であり、より好ましくは1〜10層であり、さらに好ましくは、1〜4層であり、特に好ましいものは、1〜2層のものである。
導電性物質として、金属を用いる場合、何れの金属でも良いが、好ましくは標準電極電位が−2.0〜2.0Vであり、より好ましくは−1.8〜1.8Vである。標準電極電位が低すぎても、不安定であり安全上好ましくない場合があり、高すぎても加工性、生産性が低下する場合がある。ここで、標準電極電位とは、金属をその金属イオンを含む溶液中に浸した際の電極電位と、標準水素電極(1気圧で水素ガスと接触している1規定のHCl溶液に浸した白金よりなる電極)電位との差で表される。例えばTi:−1.74V、Ni:−0.26V、Cu:0.34V、Ag:0.80V、Au:1.52Vである。
上記金属を用いる場合、メッキして使用される金属であることが好ましい。好ましい金属としては、炭素繊維との電位差による金属の腐蝕を防止できることから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム等が用いられ、これらの中でも、体積固有抵抗が10〜10−9Ωcmという高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、またはチタンが特に好ましく用いられる。なお、これら金属は単独で用いられても良いし、これら金属を主成分とする合金として用いられても良い。
上記の金属を用いて金属メッキを施す方法としては、湿式メッキと乾式メッキが好ましく用いられる。湿式メッキとしては、無電解メッキ、置換メッキおよび電気メッキ等の方法を採用することができるが、なかでも不導体にもメッキを施すことが可能であることから、無電解メッキによる方法が好ましく用いられる。乾式メッキとしては、真空蒸着、プラズマCVD(chemical vapor deposition)、光CVD、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法を採用することができるが、低温においても優れた密着性が得られることからスパッタリングによる方法が好ましく用いられる。
また、金属メッキは、単一の金属の被膜であっても複数の金属からなる複数層の被膜であってもよい。金属メッキをする場合は、最表面を金、ニッケル、銅、またはチタンからなる層とするメッキ被膜が形成されてなることが好ましい。最表面を上記の金属とすることにより、接続抵抗値の低減化や表面の安定化を図ることができる。例えば、金層を形成する際は、無電解ニッケルメッキによりニッケル層を形成し、その後、置換金メッキにより金層を形成する方法が好ましく用いられる。
また、導電性層を構成する導電性物質として金属微粒子を用いることも好ましい。この場合、金属微粒子として使用される金属は、炭素繊維との電位差による腐食を防ぐことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム、またはこれらを主成分とする合金、若しくは酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム・錫(ITO)等が好ましく用いられる。これらの中でも、高い導電性および安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタンまたはこれらを主成分とする合金が特に好ましく用いられる。なお、ここで、微粒子とは、(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が、導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維の平均径よりも小さい(通常、0.1倍以下であることを言う)平均径を有する粒子のことをいう。
上記の金属微粒子で核または芯を被覆する方法として、メカノケミカルボンディング方法が好ましく用いられる。メカノケミカルボンディングとは、複数の異なる素材粒子を、機械的エネルギーを加えて、メカノケミカル的に分子レベルで結合させ、その界面で強固なナノ結合を創成し、複合微粒子を創出する方法であり、本発明では、無機材料や有機材料の核または芯に金属微粒子を結合させ、かかる核または芯を金属微粒子で被覆する。
無機材料や有機材料(熱可塑性樹脂を含む)の核に金属微粒子を被覆する場合、この金属微粒子の粒径は、好ましくは核の平均粒径の1/1000〜1/10倍であり、より好ましくは1/500〜1/100倍のものである。粒径があまりに小さい金属微粒子を製造することは困難な場合があり、逆に金属微粒子の粒径が大きすぎると被覆ムラが発生する場合がある。さらに、無機材料や有機材料の芯に金属微粒子を被覆する場合、この金属微粒子の粒径は、好ましくは芯の平均繊維径の1/1000〜1/10倍であり、より好ましくは1/500〜1/100倍のものである。粒径があまりに小さい金属微粒子を製造することは困難な場合があり、逆に金属微粒子の粒径が大きすぎると被覆ムラが発生する場合がある。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維において、核または芯と導電性層の間に接着剤層は存在してもしなくとも良いが、核または芯と導電性層が剥離しやすい場合は存在させても良い。この場合の接着剤層の主成分としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂、ポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、SBR、再生ゴム、ブチルゴム、水性ビニルウレタン、α−オレフィン、シアノアクリレート、変成アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−フェノール、ブチラール−フェノール、ニトリル−フェノールなどが好ましく、中でも酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル樹脂およびエポキシ樹脂等が挙げられる。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維において、導電性物質で被覆されてなる導電性の粒子または繊維としては、[核または芯の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比が、好ましくは0.1〜500、より好ましくは1〜300、さらに好ましくは5〜100であるものを用いるのが良い。かかる体積比が0.1に満たないと得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、樹脂調合中に均一に分散できない場合があり、逆に500を超えると得られる炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られない場合がある。
本発明で用いられる導電性の粒子または繊維((M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維)の比重は大きくとも3.2であることが好ましい。導電性の粒子または繊維の比重が3.2を超えると得られる炭素繊維強化複合材料の重量が増加するだけでなく、樹脂調合中に均一に分散できない場合がある。かかる観点から、導電性の粒子または繊維の比重は、好ましくは、0.8〜2.2である。導電性の粒子または繊維の比重が0.8に満たないと、樹脂調合中に均一に分散できない場合がある。
(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維として、粒子を用いる場合、形状は、球状でも非球状でも多孔質でも針状でもウイスカー状でも、またはフレーク状でもよいが、球状の方が、熱硬化性樹脂の流動特性を低下させないため炭素繊維への含浸性が優れる。また、炭素繊維強化複合材料への落錘衝撃(または局所的な衝撃)時、局所的な衝撃により生じる層間剥離がより低減されるため、かかる衝撃後の炭素繊維強化複合材料に応力がかかった場合において応力集中による破壊の起点となる前記局所的な衝撃に起因して生じた層間剥離部分がより少なくなることや、積層層内の炭素繊維との接触確率が高く、導電パスを形成し易いことから、高い耐衝撃性と導電性とを発現する炭素繊維強化複合材料が得られる点で好ましい。
(M)成分である導電性の粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維として、繊維を用いる場合、形状は、短繊維あるいは長繊維ともに用いることができる。短繊維の場合特開平2−69566号公報に示されるように短繊維を粒子同様に用いる方法、あるいはマットに加工して用いる方法が可能である。長繊維の場合、特開平4−292634号公報に示されるように長繊維をプリプレグ表面に平行に配列する方法、国際公開番号94016003号公報に示されるようにランダムに配列する方法が可能である。さらに特開平2−32843 号公報に示されるような織物、国際公開番号94016003号公報に示されるような不織布、あるいは編物などのシート状の基材に加工して用いることもできる。また、短繊維チップ、チョップドストランド、ミルドファイバー、あるいは短繊維を紡績糸とし、平行あるいはランダムに配列する、織物、編物に加工して使用する方法も用いることができる。
導電性物質で被覆されてなるタイプの(M)成分である導電性の繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂繊維の芯が導電性物質で被覆された導電性の繊維において、素材の芯を導電性物質で被覆する際、導電性の繊維の芯を上記形状に加工した後、導電性物質を被覆する方法、あるいは導電性の繊維の芯に導電性物質を被覆した後、上記形状に加工する方法がある。短繊維、長繊維、チョップドストランド、ミルドファイバー等は、どちらの方法も好ましく用いられる。織物、編物、不織布は、導電性の繊維の芯に導電性物質を被覆した後、上記形状に加工する方法が好ましく用いられる。導電性の繊維の芯を上記形状に加工した後、導電性物質を被覆する方法は、被覆ムラが発生し、(M)成分、および、(N)成分として用いる導電性の繊維の導電性が低下する場合があり、好ましくない。
本発明の(1)を満たす態様((L)成分の熱可塑性樹脂の粒子または繊維と、(M)成分の導電性の粒子または繊維とを併用)においては、[(L)成分である熱可塑性樹脂の粒子または繊維の配合量(質量部)]/[(M)成分である導電性の粒子または繊維の配合量(質量部)]で表される質量比を1〜1000、好ましくは10〜500、より好ましくは10〜100とする。かかる質量比が1よりも小さくなると、得られる炭素繊維強化複合材料において十分な耐衝撃性を得ることができず、かかる質量比が1000よりも大きくなると、得られる炭素繊維強化複合材料において十分な導電性が得られなくなるためである。
本発明の(1)を満たす態様((L)成分の熱可塑性樹脂の粒子または繊維と、(M)成分の導電性の粒子または繊維とを併用)においては、(M)成分である導電性の粒子または繊維の平均径(平均粒径または平均繊維径)が、(L)成分である熱可塑性樹脂の粒子または繊維の平均径(平均粒径または平均繊維径)と同じかもしくは大きく、その平均径は大きくとも150μmが好ましい。(M)成分である導電性の粒子または繊維の平均径が(L)成分である熱可塑性樹脂の粒子または繊維の平均径よりも小さい場合、絶縁性である(L)成分の熱可塑性樹脂の粒子または繊維に(M)成分の導電性の粒子または繊維が層間に埋もれてしまい、層内の炭素繊維と(M)成分である導電性の粒子または繊維との導電パスが形成されにくく、十分な導電性向上効果をもたらさないことがある。
また、本発明においては、(L)成分である熱可塑性樹脂粒子または繊維、(M)成分である導電性粒子または繊維、および、(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維の平均径は、大きくとも150μmであることが好ましい。かかる平均径が150μmを超えると、強化繊維の配列を乱したり、後述するように粒子層がプリプレグの表面付近部分に形成するようにした場合、得られる複合材料の層間を必要以上に厚くするため、複合材料に形成されたとき、その物性を低下させる場合がある。平均径は、好ましくは1〜150μmであり、さらに好ましくは3〜60μmであり、特に好ましくは5〜30μmである。かかる平均径が小さすぎると、強化繊維の繊維間に粒子が潜り込み、プリプレグ積層体の層間部分に局在化せず、粒子の存在効果が十分に得られず、耐衝撃性が低くなる場合がある。
ここで、平均径の測定法を、対象が粒子の場合、繊維の場合それぞれについて説明する。
粒子の平均径(平均粒径)については、例えば、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)として求めることができる。また、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性粒子の核の平均粒径を前記手法にて測定する、あるいは導電性粒子の平均径(平均粒径)を前記手法にて測定する。その後、導電性物質で被覆されてなる導電性粒子の断面を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し写真撮影し、導電性層の厚さを測定(n=10)し、その平均値を計算する。かかる測定は、上記無作為に選んだ導電性粒子(n=50)について実施する。導電性粒子の核の平均粒径と導電性層の厚さの平均値の2倍を足し合わせることで導電性粒子の平均径(平均粒径)とする、あるいは導電性粒子の平均径(平均粒径)と導電性層の厚さの平均値の2倍を引くことで導電性粒子の核の平均径(平均粒径)とする。そして、導電性粒子の核の平均径(平均粒径)と導電性粒子の平均径(平均粒径)を用いて、[核の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算することができる。
繊維の平均径(平均繊維径)については、例えば、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて繊維断面を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に繊維断面を選び、その繊維断面の外接する円の直径を繊維径とし、その繊維径の平均値(n=50)として求めることができる。また、導電性物質で被覆されてなる導電性繊維の[芯の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を求める際は、まず導電性繊維の芯の平均繊維径を前記手法にて測定する、あるいは導電性繊維の平均径(平均繊維径)を前記手法にて測定する。その後、導電性物質で被覆されてなる導電性繊維の断面を走査型顕微鏡にて1万倍に拡大し写真撮影し、導電性層の厚さを測定(n=10)し、その平均値を計算する。かかる測定は、上記無作為に選んだ導電性繊維(n=50)について実施する。導電性繊維の芯の平均径(平均繊維径)と導電性層の厚さの平均値の2倍を足し合わせることで導電性繊維の平均径(平均繊維径)とする、あるいは導電性繊維の平均径(平均繊維径)と導電性層の厚さの平均値の2倍を引くことで導電性繊維の芯の平均径(平均繊維径)とする。そして、導電性繊維の芯の平均径(平均繊維径)と導電性繊維の平均径(平均繊維)径を用いて、[芯の体積]/[導電性層の体積]で表される体積比を計算することができる。
本発明のプリプレグにおいて、(L)成分である熱可塑性樹脂の粒子または繊維、(M)成分である導電性の粒子または繊維、および(N)成分である熱可塑性樹脂の核または芯が導電性物質で被覆された導電性の粒子または繊維は、いずれもプリプレグの表面部分に局在していることが好ましい。言い換えれば、前記(L)成分、(M)成分、および(N)成分の粒子または繊維に富む層、すなわち、その断面を観察したときに、前記(L)成分、(M)成分、および(N)成分の粒子または繊維が局在している状態が明瞭に確認しうる層(以下、層間形成層と記すことがある。)が、プリプレグの表面部分に形成されていることが好ましい。これにより、プリプレグを積層してマトリックス樹脂を硬化させて炭素繊維強化複合材料とした場合に、炭素繊維層の間に前記(L)成分、(M)成分、および(N)成分の粒子または繊維が局在した層間が形成され、それにより、炭素繊維層間の靱性が高められると共に、層間形成層に含まれる前記(M)成分、および(N)成分の粒子または繊維が炭素繊維層間に導電パスを形成することが出来るので、得られる炭素繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性と導電性とが発現されるようになる。
本発明のプリプレグは、一方向に揃えて並べた炭素繊維束に、未硬化の熱硬化性樹脂を含浸せしめたものを意味するが、炭素繊維束を、織物、編物、組み紐、ウェブ、マットおよびチョップド等の形態としたものを含みうる。プリプレグは、例えば、熱硬化性樹脂をメチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウェット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)等により作製することができる。
ウェット法は、炭素繊維をマトリックス樹脂の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、また、ホットメルト法は、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を直接強化繊維に含浸させる方法、または熱硬化性樹脂から作製したコーティングフィルムを一旦離型紙等の上に載置しておき、次いで炭素繊維の両側又は片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい方法である。
本発明のプリプレグを用いて炭素繊維強化複合材料を成形するには、プリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら熱硬化性樹脂を加熱硬化させる方法等を用いることができる。ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法および真空圧成形法等が採用される。
オートクレーブ成形法は、所定の形状のツール板にプリプレグを積層して、バッギングフィルムで覆い、積層物内を脱気しながら加圧加熱硬化させる方法である。オートクレーブ成形法は、繊維配向が精密に制御でき、またボイドの発生が少ないため、力学特性に優れ、また高品位な成形体が得られる。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法である。ラッピングテープ法は、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き取って管状体を得る方法である。
また、内圧成型法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。本方法は、ゴルフシャフト、バッド、テニスやバドミントン等のラケットの如き複雑な形状物を成形する際に好ましく用いられる。
また、本発明のプリプレグは、プリプレグの幅が1〜50mmのヤーンプリプレグとすることも可能である。ヤーンプリプレグとする場合、幅が1mmより短いと、成形時の操作が複雑になり、満足な成形品強度が得られず、幅が50mmより長いと、曲率が大きい成形品を成形した場合に品位が低下するためである。ヤーンプリプレグのより好ましい幅は、2mm〜25mmである。
本発明のヤーンプリプレグにおいて、幅の変動が標準偏差で0.3mm以下であることが好ましい。幅の標準偏差が0.3mmを超えると、ヤーンプリプレグとしての外観が低下するのみならず、成形品の品位、強度が低下するためである。より好ましい幅精度は、0.1mm以下である。
本発明のヤーンプリプレグの幅および標準偏差は、例えば読み取り顕微鏡により、精度0.01mmで間隔10cm、サンプル数20で幅測定して得られた数値の平均値および標準偏差である。あるいは、レーザー光を用いた一次元測長器により、0.01mmで間隔1m程度で走行しながら測定される数値の平均値および標準偏差を使用することもでき、この場合は、サンプル数100以上とする。
本発明のヤーンプリプレグは、図1に示す製造装置により製造することができる。図1は、本発明のヤーンプリプレグを製造する装置の一例を示す概略図である。
製造装置100では、クリール1に仕掛けられた炭素繊維の連続繊維束2が引き出されて、溝付きローラ3の下部に接触し、次いで駆動ローラ8とフリーローラ8’を通じて、ワインダ9に導かれて巻き取られる。巻き取りの際、好ましくは幅規制のガイドが用いられ、冷却機構の付加されたガイドまたはローラは、11および/または11’の位置に設置される。溝付きローラ3に外接する上部には、ブレードを先端に有し、溶融した熱硬化性樹脂を貯蔵する樹脂溜め部4を備える溶融樹脂供給部5が配置されている。また、溶融樹脂供給部5の上方に、樹脂供給装置7が配置されている。樹脂供給装置7は、加熱ローラ7Aと、加熱ローラ7Aにより加熱されて溶融樹脂を供給する樹脂ブロック7Bと、溶融樹脂を加熱ローラ7Aに押し当てる仕切板7Cとを備える。樹脂供給装置7は、仕切板7Cにより、溶融樹脂を計量しながら、樹脂溜め部4に溶融樹脂を供給する。
溝付ローラ3は、連続繊維束2が接する面に溝部を有し、該溝部に溶融樹脂供給部5から供給された溶融樹脂が、溝付きローラ3の回転により連続的に所定量供給され、該溝部に接触して走行する連続繊維束2に溶融樹脂を含浸させて、本発明にかかる幅が1〜50mmのヤーンプリプレグを製造することができる。 本発明のプリプレグは、一方向に引き揃えた炭素繊維束が樹脂組成物に含浸され、繊維方向にスリットされたスリットテーププリプレグとすることも可能である。スリットテープとすることにより、真空形成においてもボイドの欠点を少なくすることができる。そのメカニズムは明らかではないが、スリットテーププリプレグは、ヤーンプリプレグに比べて幅精度が優れており、積層時にプリプレグ同士の重なりや、逆に隙間の発生がヤーンプリプレグに比べて少なくなるために、成形体中のボイドが少なくなると考えられる。
プリプレグ同士の粘着を防止し、ボビンからの解舒性を良好にするため、スリットテープにはカバーフィルムを貼付しておくことが好ましい。該カバーフィルムはスリットする前にプリプレグに貼付した後にスリットしても良いし、またスリットしてからカバーフィルムを貼付しても良い。カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどから得られ、10〜80ミクロンの厚みを有するものが好ましく使用される。また、カバーフィルムの幅は、スリットテープの幅より狭いと、スリットテープ同士が粘着してボビンからの解舒性が悪くなるのを防ぐために、スリットテープの幅以上とするのが好ましい。
スリットテーププリプレグの幅は2〜150mmが好ましいが、ファイバープレースメント法などで複雑な形状の部材を製造する用途には2〜5mmの、より細幅のスリットテーププリプレグが好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化複合材料は、上記のようにして製造したプリプレグを成形してなる。本発明の炭素繊維強化複合材料の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。なお、後述する実施例20は参考実施例である。
<炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率>
炭素繊維束のストランド引張強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
<炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)>
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、溶媒で表面に付着している汚れを除去した炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。続いて、X線源としてAlKα1、2を用い、光電子脱出角度を90°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
<サイジング付着量の測定方法>
約2gのサイジング付着炭素繊維束を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1−W2によりサイジング付着量を求める。このサイジング付着量を炭素繊維束100質量部に対する量に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の質量部とした。測定は2回おこない、その平均値をサイジング剤の質量部とした。
<プリプレグの作製に使用する原料>
エポキシ樹脂および硬化剤
・N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン:“アラルダイト(登録商標)”MY720(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”825、三菱化学(株)製
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”828、三菱化学(株)製
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”834、三菱化学(株)製
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”1007、三菱化学(株)製
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”1004、三菱化学(株)製
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”4004P、三菱化学(株)製
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:“エポトート(登録商標)”YDF2001、東都化成(株)製
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:“エピクロン(登録商標)”HP7200L、大日本インキ化学工業(株)製
・トリグリシジル−p−アミノ−o−メチルフェノール:“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、住友化学工業(株)製
・トリグリシジル−m−アミノフェノール:“スミエポキシ(登録商標)”ELM120、住友化学工業(株)製
・ポリビニルホルマール:“ビニレック(登録商標)”PVF−K、JNC(株)製)
・3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS):三井化学ファイン(株)製
・ジシアンジアミド:DICY7、三菱化学(株)製
上記以外の成分
・ポリエーテルスルホン:PES5003P、住友化学(株)製
・M−B−M共重合体:“Nanostrength(登録商標)”M22N、Bがブチルアクリレート、Mがメタクリル酸メチルと極性官能基含有モノマーの共重合体、アルケマ(株)製
・DCMU99:3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、保土谷化学工業(株)製
・下記の製造方法で得られたエポキシ変性ポリアミド粒子
ポリアミド(商品名“グリルアミド(登録商標)”TR55、エムスケミー社製)96質量部、エポキシ樹脂(商品名“jER(登録商標)”828、三菱化学(株)製)3質量部および硬化剤(商品名“トーマイド(登録商標)”#296、富士化成工業(株)製)1質量部を、クロロホルム300質量部とメタノール100質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に、得られた均一溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、よく撹拌して3000質量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンで良く洗浄した後に、100℃の温度で24時間の真空乾燥を行い、平均粒径16μmの真球状のエポキシ変性ポリアミド粒子を得た。
(参考例1)プリプレグAの作製方法
表1〜4に記載される配合割合のエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。
サイジング剤塗布炭素繊維束を一方向に引き揃え、両側から前記樹脂フィルムではさみ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付190g/m2、炭素繊維含有率65質量%の一方向プリプレグを得た。
一方向プリプレグを裁断し、所定の構成で積層し、オートクレーブを用いて加熱硬化(昇温速度1.5℃/分、0.59MPaの圧力下、温度180℃で2時間成形)させ、積層板を作製した。
(参考例2)プリプレグBの作製方法
表5のエポキシ樹脂組成物について、エポキシ変性ポリアミド粒子以外の成分を混合してベース樹脂組成物を作製し、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して目付31g/m2の樹脂フィルム(一次樹脂フィルム)を作製した。
サイジング剤塗布炭素繊維束を一方向に引き揃え、両側から樹脂フィルムではさみ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付190g/m2の一次プリプレグを得た。
次に、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の組成が表5の配合になるように、エポキシ変性ポリアミド粒子を加えた熱硬化性樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂目付21g/m2の樹脂フィルム(二次樹脂フィルム)を作製した。二次樹脂フィルムを、一次プリプレグの両側に貼りあわせることにより、炭素繊維目付190g/m2、炭素繊維含有率65質量%の一方向プリプレグを得た。
一方向プリプレグを裁断し、所定の構成で積層し、オートクレーブを用いて加熱硬化(昇温速度1.5℃/分、0.59MPaの圧力下、温度180℃で2時間成形)させ、積層板を作製した。
(参考例3)プリプレグCの作製方法
表6に記載される配合割合のエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。
サイジング剤塗布炭素繊維束を一方向に引き揃え、両側から前記樹脂フィルムではさみ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付125g/m2、炭素繊維含有率76質量%の一方向プリプレグを得た。
一方向プリプレグを裁断し、所定の構成で積層し、オートクレーブを用いて加熱硬化(昇温速度1.5℃/分、0.59MPaの圧力下、温度135℃で2時間成形)させ、積層板を作製した。
(参考例4)プリプレグDの作製方法
表7に記載される配合割合のエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。
サイジング剤塗布炭素繊維束を一方向に引き揃え、両側から前記樹脂フィルムではさみ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付125g/m2、炭素繊維含有率76質量%の一方向プリプレグを得た。
一方向プリプレグを裁断し、所定の構成で積層し、オートクレーブを用いて加熱硬化(昇温速度1.5℃/分、0.59MPaの圧力下、温度135℃で2時間成形)させ、積層板を作製した。
(参考例5)プリプレグEの作製方法
表8に記載される配合割合のエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。
サイジング剤塗布炭素繊維束を一方向に引き揃え、両側から前記樹脂フィルムではさみ、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付125g/m2、炭素繊維含有率76質量%の一方向プリプレグを得た。
一方向プリプレグを裁断し、所定の構成で積層し、オートクレーブを用いて加熱硬化(昇温速度1.5℃/分、0.59MPaの圧力下、温度135℃で2時間成形)させ、積層板を作製した。
以下、炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性測定方法について説明する。
<90°曲げ強度の測定>
前記のようにプリプレグを一方向積層、加熱加圧硬化して1mm厚の積層板を作成した。
この積層板から、長さ方向を90°方向にし、幅15±0.2mm、長さ60mm±0.2mmの90°方向材試験片を作製し、JIS−K−7017(1999)に従い、支点間40mmで、3点曲げ試験を行った。曲げ試験機のクロスヘッドスピードは1mm/分として測定した。5個のサンプルについて測定し、平均値を求めた。また測定については、室温乾燥状態(25℃±2℃、相対湿度50%)で行った。
<層間剪断強度の測定>
前記のようにプリプレグを一方向積層、加熱加圧硬化して、2mm厚の積層板を作成した。
層間剪断強度は、JIS−K−7078(1991)に従い3点曲げ試験で測定した。積層板から、長さ14±0.4mm、幅10±0.2mmの0゜方向材試験片を作成し、スパン(l)と試験片厚み(d)の比はl/d=5±0.2とし、曲げ試験機のクロスヘッドスピードは1mm/分として測定した。5個のサンプルについて測定し、平均値を求めた。また測定については、室温乾燥状態(25℃±2℃、相対湿度50%)で行った。
<衝撃後圧縮強度(CAI)の測定>
前記のようにプリプレグを、(+45°/0°/−45°/90°)3S構成で24枚積層、加熱加圧硬化して、積層板を作製した。この積層体から、縦150mm×横100mmのサンプルを切り出し、JIS K 7089(1996年)に従い、サンプルの中心部に6.67J/mmの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度を求めた。また測定については、室温乾燥状態(25℃±2℃、相対湿度50%)で行った。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は、下記のとおりである。
・(A1)成分:A−1〜A−7
A−1:“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)
フェノールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:175g/mol、エポキシ基数:3
A−2:“EPICLON(登録商標)”N660(DIC(株)製)
クレゾールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:206g/mol、エポキシ基数:3
A−3:“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:4
A−4:“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/mol、エポキシ基数:2
A−5:“jER(登録商標)”1001(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:475g/mol、エポキシ基数:2
A−6:“デナコール(登録商標)”EX−810(ナガセケムテックス(株)製)
エチレングリコールのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:2
A−7:TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)
テトラグリシジルメタキシレンジアミン
エポキシ当量:100g/mol、エポキシ基数:4
・(A1)成分、(A2)成分の両方に該当:A−8
A−8:“デナコール(登録商標)”EX−611(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/mol、エポキシ基数:4
水酸基数:2
・(A2)成分:A−9、A−10
A−9:“デナコール(登録商標)”EX−731(ナガセケムテックス(株)製)
N−グリシジルフタルイミド
エポキシ当量:216g/mol、エポキシ基数:1
イミド基数:1
A−10:“アデカレジン(登録商標)”EPU−6((株)ADEKA製)
ウレタン変性エポキシ
エポキシ当量:250g/mol、エポキシ基数:1以上
ウレタン基:1以上。
・(B1)成分:B−1〜B−13、B−25〜B−27
B−1:“DBU(登録商標)”(サンアプロ(株)製)、式(III)に該当
1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、分子量:152
B−4:1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(アルドリッチ社製)
別名:プロトンスポンジ、分子量:214.31、式(IV)に該当
B−5:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(東京化成工業(株)製)
別名:DMP−30、分子量:265.39、式(V)に該当
B−6:DBN(サンアプロ(株)製)、分子量:124、式(III)に該当
1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン
B−7:イミダゾール系化合物
1−ベンジル−イミダゾール(東京化成工業(株)製)、分子量:158.2、式(III)に該当
B−8:U−CAT SA1(サンアプロ(株)製)(式(III)に該当)
DBU−フェノール塩、分子量:246.11
B−9:U−CAT SA102(サンアプロ(株)製)(式(III)に該当)
DBU−オクチル酸塩:分子量:296.45
B−10:U−CAT SA506(サンアプロ(株)製)(式(III)に該当)
DBU−p−トルエンスルホン酸塩、分子量:324.44
B−11:N−エチルモルホリン(東京化成工業(株)製)、分子量:115.17、式(VII)に該当
B−12:2,6−ルチジン(東京化成工業(株)製)、分子量:107.15、式(VI)に該当
B−13:4−ピリジンメタノール(東京化成工業(株)製)、分子量:109.13、式(VI)に該当
B−25:トリイソプロパノールアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:191.27、式(VIII)に該当
B−26:トリエタノールアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:149.19、式(VIII)に該当
B−27:N,N−ジイソプロピルエチルアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:129.24、式(VIII)に該当
・(B2)成分:B−14〜B−20
B−14:ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が7、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−15:テトラブチルアンモニウムブロミド(R1〜R4の炭素数がそれぞれ4、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−16:トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が18、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−17:(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド(R1の炭素数が4、R2〜R4の炭素数がそれぞれ2、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−18:(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(R1の炭素数が4、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、(式(I)に該当))
B−19:(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が2、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−20:1−ヘキサデシルピリジニウムクロリド(R5の炭素数が16、R6とR7がそれぞれ水素原子、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(II)に該当)
・(B3)成分:B−21〜B−24
B−21:テトラブチルホスホニウムブロミド(R25〜R28の炭素数がそれぞれ4、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製)分子量:339、式(XI)に該当
B−22:テトラフェニルホスホニウムブロミド(R25〜R28の炭素数がそれぞれ6、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製)、分子量: 419、式(XI)に該当
B−23:トリブチルホスフィン(R29〜R31の炭素数がそれぞれ4、東京化成工業(株)製)、分子量: 202、式(XII)に該当
B−24:トリフェニルホスフィン(R29〜R31の炭素数がそれぞれ6、東京化成工業(株)製)、分子量: 262、式(XII)に該当
・(C)成分(その他成分):C−1〜C−2
C−1:“デナコール(登録商標)”EX−141(ナガセケムテックス(株)製)
フェニルグリシジルエーテル エポキシ当量:151g/mol、エポキシ基数:1
C−2:ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:116
(実施例1)
本実施例は、次の第Iの工程〜第IIIの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数24,000本、総繊度1,000テックス、比重1.8、ストランド引張強度6.2GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1モル/lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維1g当たり100クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを炭素繊維Aとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
前記の(A−1)と前記の(B−1)を質量比100:1で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で90秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表1に示す。
(実施例2〜5)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表1に示すように、(A−1)と(B−1)の質量比を100:3〜100:20の範囲で変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。
(比較例1)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1の第IIの工程で、(A−1)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表1に示す。
(比較例2)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
実施例1の第IIの工程で、(A−1)と(B−1)の質量比を100:30に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表1に示す。
(実施例6)〜(実施例15)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表2に示すように、(A)成分として(A−1)〜(A−10)、(B)成分として(B−10)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表2に示す。
(比較例3)〜(比較例7)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表2に示すように、サイジング剤成分を変更した以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表2に示す。
(実施例16)、(実施例19)〜(実施例41)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表3−1、表3−2に示すように、(A)成分として(A−2)、(B)成分として(B−1)、(B−4)〜(B−9)、(B−11)〜(B−27)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表3−1、表3−2に示す。
(比較例8)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表3−2に示すように、(A−2)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表3−2に示す。
(実施例42)〜(実施例44)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表4に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表4に示す。
(実施例45)〜(実施例47)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり20クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表4に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表4に示す。
(実施例48)〜(実施例50)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例45で得られた炭素繊維Bをテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(pH=14)に浸漬し、超音波で加振させながら引き上げた。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.17であった。これを炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表4に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表4に示す。
以上のように、炭素繊維Aを用いた場合の力学特性は、炭素繊維Bを用いた場合に比べて優れていることがわかる。また、炭素繊維Bをテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(pH=14)に浸漬し、超音波で加振させながら引き上げた炭素繊維Cを用いることで、炭素繊維Aと同等の力学特性をもつことがわかる。
(比較例9)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例45と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表4に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例45と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表4に示す。
(比較例10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例48と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表4に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例48と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例1に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表4に示す。
(実施例51)〜(実施例53)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表5に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例2に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表5に示す。
(比較例11)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表5に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例2に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度、衝撃後圧縮強度(CAI)ともに低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表5に示す。
以上のように、実施例51〜53、比較例11は、エポキシ変性ポリアミド粒子を用いたことにより、いずれの水準も衝撃後圧縮強度(CAI)は高い値を示した。中でも実施例51〜53は、比較例11に比べて衝撃後圧縮強度が高く、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。また、90°曲げ強度は実施例42〜44とほぼ同等の値を示す。
(実施例54)〜(実施例56)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表6に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例3に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表6に示す。
(比較例12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表6に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例3に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表6に示す。
(実施例57)〜(実施例59)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表7に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例4に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表7に示す。
(比較例13)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表7に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例4に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表7に示す。
(実施例60)〜(実施例62)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表8に示すように、(A)成分として(A−1)、(B)成分として(B−1)、(B−17)、(B−22)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、サイジング剤が均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このサイジング剤のアセトン溶液を用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例5に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は高い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が良好であることを示している。結果を表8に示す。
(比較例14)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様にした。
・第IIの工程:サイジング剤を炭素繊維に付着させる工程
表8に示すように、(A−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でサイジング剤塗布炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように調整した。
・第IIIの工程:プリプレグの作製、成形、評価
参考例5に従い実施した。得られた炭素繊維強化複合材料積層板の力学特性を評価した結果、90°曲げ強度は低い値であった。このことは、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が不良であることを示している。結果を表8に示す。