JP5782312B2 - コーティング用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、防湿性や製剤安定性を付与しつつ、良好な崩壊性を備えさせ得るコーティング用組成物に関する。また、本発明は、当該コーティング用組成物を使用した、医薬、食品、農薬等のコーティング製品に関する。
医薬品や、サプリメント等の栄養補助剤には、光や湿気に対する安定性向上、ウィスカーの発生の防止、腸溶化や徐放化など薬効発現の調節、不快な味や臭気の遮蔽等を目的として、フィルムコーティングが施されている。医薬や食品分野では、目的に応じた種々のフィルムコーティング用組成物が開発されており、フィルムコーティングを施した製品が広く実用化されている。
一方、一般的なフィルムコーティング製品では、防湿性や製剤安定性を備えさせ得る反面、口腔内で好ましくない残存感を与えたり、崩壊性に悪影響を及ぼす場合もある。
従来、防湿機能、ガスバリア機能、防臭機能等を備えたフィルムコーティングとして、特定のポリビニルアルコール(PVA)共重合体を基材として使用する技術が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、当該フィルムコーティング技術において、崩壊性を向上させる手法については十分に検討されておらず、更なる改善の余地がある。
また、フィルムコーティングを施すことにより、裸錠や顆粒の呈味をマスクできるものの、フィルムコーティング自体は、良好な呈味を有するものではないため、優れた矯味効果を付与することはできない。裸錠や顆粒等に上述の機能の他に矯味効果を併せて備えさせる技術として糖衣コーティングが知られているが、糖衣コーティング工程には、多大な時間を必要とするため製造コストが上昇するばかりでなく、多量の糖衣層により製品重量やサイズが増大するため、作業性のみならず携帯性が悪くなるという欠点がある。また、糖衣コーティング工程は、高温多湿の状態が長時間に亘って行われるため、活性成分の安定性に影響を及ぼすこともある。更に、一般的に糖衣製剤は、糖衣の脆性強度を増加させる目的でゼラチン等の添加剤がコーティング層に配合されているため、前述するフィルムコーティング製品と同様、崩壊時間が遅延化するという欠点も抱えている。
国際公開第2005/019286号パンフレット
本発明は、裸錠や顆粒等に対して、防湿性や製剤安定性を付与しつつ、良好な崩壊性を備えさせ得るコーティング用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該コーティング用組成物を使用した、医薬、食品等のコーティング製品を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合したグラフト共重合体と、甘味料とを配合することによって調製したコーティング用組成物は、裸錠や顆粒等に対して、防湿性や製剤安定性を付与でき、しかも顕著に優れた崩壊性を備えさせ得ることを見出した。また、当該コーティング用組成物は、良好な矯味効果を有しつつ、コーティング工程に要する時間が、一般的な糖衣コーティング工程に比べて短縮化されることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様のコーティング用組成物、及び各種コーティング製品を提供する。
項1.(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される重合性ビニル単量体を重合又は共重合したグラフト共重合体と、
[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子或いは炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基を示す。]
(B)甘味料と
を含有し、
前記(A)グラフト共重合体100重量部当たりの前記(B)甘味料の比率が0.2〜5重量部である、
ことを特徴とするコーティング用組成物。
項2.前記(B)甘味料が、ショ糖の甘味度を100とした場合における甘味度が5000以上の甘味料である、項1に記載のコーティング用組成物。
項3.前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載のコーティング用組成物。
項4.コーティング用組成物の総量当たり、前記(A)グラフト共重合体の含有割合が40重量%以上である、項1〜3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
項5.食品、医薬品、又は農薬のコーティングに使用される、項1〜のいずれかに記載のコーティング用組成物。
本発明によれば、錠剤や顆粒等に対して、防湿性や製剤安定性を付与でき、しかも顕著に優れた崩壊性を備えさせ得るコーティング用組成物が提供される。また、本発明のコーティング用組成物によれば、良好な矯味を有しており、しかも芯物質の臭気を抑制できるので、摂取し易いコーティング製品を製造することが可能になる。更に、本発明のコーティング用組成物を用いたコーティング工程は、一般的な糖衣コーティングに比べて工程時間を短縮化できるので、より簡便で安価なコストでコーティング製品を製造することができる。
試験例1において、実施例1、8−11、及び比較例2−9の製剤の崩壊性を評価した結果を示す。 試験例2において、実施例1−3及び比較例1の製剤の防湿能を評価した結果を示す。 試験例3において、実施例8−10及び比較例1の製剤の防湿能を評価した結果を示す。 試験例4において、実施例6及び比較例11−13の製剤の防湿能を評価した結果を示す。 試験例5において、実施例4−6、比較例11、14及び15の製剤のビタミンC安定性を評価した結果を示す。 試験例6において、実施例7、比較例11及び12の製剤について、保存前後に断面構造を観察した結果を示す。
本発明のコーティング用組成物は、(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で少なくとも1種の特定構造の重合性ビニル単量体を重合又は共重合したグラフト共重合体と、(B)甘味料とを含有することを特徴とする。以下、本発明のコーティング用組成物について、詳述する。
本発明のコーティング用組成物に使用される(A)グラフト共重合体は、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で、少なくとも1種の特定構造の重合性ビニル単量体を重合又は共重合することにより得られるものである。当該グラフト共重合体は、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の側鎖として存在する−OCOCH基に特定構造の重合性ビニル単量体がグラフト重合した構造を有する。なお、このグラフト共重合体において、少なくとも1種の特定構造の重合性ビニル単量体が重合又は共重合した重合体を介して、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体同士が結合していてもよい。即ち、本発明に使用されるグラフト共重合体は、少なくとも1種の特定構造の重合性ビニル単量体が重合して、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体同士を架橋した構造を有してもよい。
当該(A)グラフト共重合体の製造原料として使用されるポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の重量平均分子量については、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が約5000〜300000、好ましくは20000〜100000、更に好ましくは30000〜70000が挙げられる。ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の重量平均分子量は、GPC法(非水系サイズ排除クロマトグラフィー法)により測定した値である。具体的には、次のようにして測定する。即ち、10mmol/Lの塩化リチウム濃度のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を濃度1mg/mLとなるように加え、40℃で30分間加熱しながら撹拌し、一晩室温にて静置した後、PTFEカートリッジフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、GPC法で分子量分布を測定する。
また、当該ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体のケン化度についても、特に制限されず、例えば、ケン化度が78〜96mol%、好ましくは85〜90mol%、更に好ましくは86〜89mol%が挙げられる。
当該ポリビニルアルコールは、市販品を使用することもできる。ポリビニルアルコールの市販品としては、例えば、ゴーセノールEG05、EG25(日本合成化学工業(株)製)、PVA203((株)クラレ製)、PVA204((株)クラレ製)、PVA205((株)クラレ製)、JP−04(日本酢ビ・ポバール(株)製)、JP−05(日本酢ビ・ポバール(株)製)等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコールの誘導体としては、具体的には、アミン変性ポリビニルアルコール、エチンン変性ポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、チオール変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。これらのポリビニルアルコールの誘導体は、市販品を使用してもよく、また当該分野で公知の方法で製造したものを使用することができる。
当該(A)グラフト共重合体の製造原料として、ポリビニルアルコール及びその誘導体の中から、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
当該(A)グラフト共重合体の製造原料として使用される重合性ビニル単量体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。
一般式(1)中、Rは、水素原子、或いは炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基を示す。Rとして、好ましくは水素原子或いは炭素数1〜3の直鎖又は分岐状のアルキル基;更に好ましくは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基;特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
一般式(1)で表される重合性ビニル単量体の好適な具体例として、R及びRが水素原子である重合性ビニル単量体(アクリル酸)、R及びRがメチル基である重合性ビニル単量体(メタクリル酸メチル)、並びにRがメチル基であり、且つRが水素原子である重合性ビニル単量体(メタクリル酸)が例示される。
これらの重合性ビニル単量体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。防湿性、製剤安定性、及び崩壊性をより一層高めるという観点から、好ましくは、当該重合性ビニル単量体として、R及びRが水素原子である重合性ビニル単量体(アクリル酸)と、Rがメチル基であり、Rが炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基である重合性ビニル単量体(メタクリル酸アルキル)との組み合わせ;更に好ましくはR及びRが水素原子である重合性ビニル単量体(アクリル酸)と、Rがメチル基であり、Rが炭素数1〜3のアルキル基である重合性ビニル単量体(メタクリル酸アルキル)との組み合わせ;特に好ましくはR及びRが水素原子である重合性ビニル単量体(アクリル酸)と、Rがメチル基であり、Rがメチル基である重合性ビニル単量体(メタクリル酸メチル)との組み合わせが例示される。当該重合性ビニル単量体としてアクリル酸及びメタクリル酸メチルを組み合わせて用いる場合は、得られるグラフト共重合体は、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体が、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の−OCOCH基を介して結合した構造を有する。
当該重合性ビニル単量体として、アクリル酸とメタクリル酸アルキルとを組み合わせて使用する場合、その比率については特に制限されないが、例えば、アクリル酸100重量部に対して、メタクリル酸アルキルが通常300〜2000重量部、好ましくは500〜1000重量部、更に好ましくは600〜800重量部が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体と、上記重合性ビニル単量体とを重合又は共重合する際、これらの混合比については、特に制限されないが、例えば、当該ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の総量100重量部当たり、上記重合性ビニル単量体の総量が5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、更に好ましくは20〜30重量部が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体と、上記重合性ビニル単量体との重合又は共重合は、溶液重合法、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等のラジカル重合によって行うことができる。当該ラジカル重合反応は、通常、重合開始剤の存在下で、必要に応じて還元剤、連鎖移動剤、分散剤等を共存させて、水、有機溶媒又はこれらの混合液中で実施される。また、合成されたグラフト共重合体の精製、乾燥、粉砕方法等も公知の方法で行うことができる。
上記重合反応に使用される重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物;過酢酸、ターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記重合反応に使用される連鎖移動剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ラウリルメルカプタン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記重合反応に使用される分散剤としては、例えば、ソルビタンエステル、ラウリルアルコール等の界面活性剤が挙げられる。これらの分散剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記重合反応に使用される還元剤としては、例えば、エリソルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記重合反応に使用される有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、セロソルブ、カルビトール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において使用される(A)グラフト共重合体は、前述する方法で製造したものを使用してもよく、また市販品を使用してもよい。当該グラフト共重合体の市販品としては、具体的には、POVACOAT(登録商標)TypeF(大同化成工業(株)製)(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体)が例示される。
本発明のコーティング用組成物において、(A)グラフト共重合体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のコーティング用組成物において、(A)グラフト共重合体の含有割合については、特に制限されないが、例えば、当該コーティング用組成物の総量当たり、通常40重量%以上、好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜90重量%が挙げられる。
本発明のコーティング用組成物に使用される(B)甘味料としては、可食性であり、甘味を呈するものであることを限度として特に制限されないが、例えば、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等の糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース等のオリゴ糖;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトール等の糖アルコール;ステビア、甘草、サッカリン、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料等が挙げられる。
これらの甘味料の中でも、防湿性、製剤安定性を損なわず、且つ崩壊性をより一層高めるという観点から、高甘味度甘味料が好適である。また、高甘味度甘味料は、少量の添加でも、コーティング用組成物に所望の甘味を備えさせ得る点でも、利点がある。高甘味度甘味料とは、ショ糖に比べて数十倍から数千倍の甘味を呈する甘味料であり、具体的には、ステビア(甘味度約20000)、甘草(甘味度約5000)、サッカリン(甘味度約50000)、アスパルテーム(甘味度約20000)、アセスルファムカリウム(甘味度約20000)、スクラロース(甘味度約60000)等が挙げられる。なお、括弧中の甘味度の数値は、ショ糖の甘味度を100とした場合における各高甘味度甘味料の甘味度を示す。これらの高甘味度甘味料の中でも、ショ糖の甘味度を100とした場合における甘味度が5000以上のもの、特にアセスルファムカリウム、ステビア及びスクラロースが好適である。
本発明のコーティング用組成物において、(B)甘味料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、防湿性、製剤安定性を損なわず、且つ崩壊性をより一層高め、砂糖の味に近く良好な矯味効果を付与するという観点から、好ましくは、スクラロース、或いはアセスルファムカリウムとスクラロースと還元パラチノースとの組み合わせが挙げられる。
本発明のコーティング用組成物において、上記(A)グラフト共重合体と(B)甘味料の比率については、例えば、(A)グラフト共重合体100重量部当たり、(B)甘味料が0.01〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.2〜5重量部が例示される。このような比率を充足することにより、防湿性、製剤安定性、及び崩壊性をより一層向上させることが可能になる。
また、本発明のコーティング用組成物において、(B)甘味料の含有割合については、使用する甘味料の種類、前述するグラフト共重合体と甘味料の比率等に応じて適宜設定されるが、例えば、当該コーティング用組成物の総量当たり、通常0.01〜25重量%、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.2〜5重量%が挙げられる。
本発明のコーティング用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、上記(A)グラフト共重合体以外のコーティング基剤を含んでいてもよい。このようなフィルムコーティング基剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース系ポリマー;アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーエマルジョン等のアクリル系ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のビニル系ポリマー等が挙げられる。
更に、本発明のコーティング用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、上記(A)グラフト共重合体と(B)甘味料以外に、必要に応じて、当該分野で使用される添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、界面活性剤、遮光剤、着色剤、香料等が挙げられる。より具体的には、酸化チタン、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール、大豆レシチン、アラビアゴム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、グリセリン、レシチンマクロゴール、ポリソルベート80、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、水溶性食用タール色素(例えば、食用赤色2号及び3号、食用黄色4号及び5号、食用青色1号及び2号)、水不溶性レーキ色素(上記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩等)、天然色素(例えば、β-カロチン、クロロフィル等)、レモン油、オレンジ油、dl-又はl-メントール等が例示される。
本発明のコーティング用組成物は、芯物質(食品、医薬品、農薬等)の表面を被覆するコーティング層を形成するものであり、コーティング剤として使用される。即ち、当該コーティング用組成物により芯物質をコーティングすることによりコーティング製品が提供される。
本発明のコーティング用組成物によりコーティングされる芯物質としては、常温固体で存在する物質であればよく、食品、医薬品、農薬等の何れであってもよい。また、当該芯物質の形状については、経口摂取又は経口投与が可能である限り、如何なる形状であってもよく、例えば、錠剤状、顆粒状、粉末状、カプセル状が挙げられる。
芯物質が医薬品の場合、当該医薬品に含まれる有効成分については、経口投与可能な薬理学的有効成分である限り、特に制限されず、例えば、抗生物質、化学療法剤、催眠鎮静剤、抗精神病剤、抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、骨格筋弛緩剤、自律神経用剤、鎮けい剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管補強剤、血管収縮剤、血管拡張剤、脂質異常症用剤、鎮咳去たん剤、気管支拡張剤、止しゃ剤、整腸剤、消化性潰瘍剤、健胃消化剤、制酸剤、利胆剤、胃腸薬、ビタミン剤、滋養強壮薬、肝臓疾患用剤、痛風治療剤、糖尿病用剤、腫瘍用薬、抗ヒスタミン剤、生薬、骨粗鬆症用剤等が挙げられる。特に、本発明のコーティング用組成物は、酸素や水蒸気の透過性が低く、酸化分解や加水分解を受けやすい有効成分に対して安定性を備えさせつつ製剤化することができるので、酸化分解や加水分解を受けやすい医薬品のコーティングに好適に使用される。
芯物質が食品の場合、当該食品に含まれる成分、組成、形状等については、特に制限されず、一般食品の他、機能性食品、健康保健用食品、機能性食品、栄養補助食品、病者用食品等のいずれであってもよい。本発明のコーティング用組成物は、酸化分解や加水分解を受けやすい食品成分の保存安定性を顕著に向上させ得るので、当該食品成分を含む食品のコーティングに、とりわけ有用である。
上記コーティング製品において、本発明のコーティング用組成物のコーティング量については、当該コーティング用組成物の組成、芯物質の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、芯物質の総重量100重量部当たり、当該コーティング用組成物の総量が1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部となる量が例示される。このような量を充足すると、製造時のコーティング工程を短時間で行うことを可能にしつつ、所望の防湿性、製剤安定性及び崩壊性を備えさせることができる。
また、上記コーティング製品において、本発明のコーティング用組成物を用いて1層のコーティングが施されていればよいが、必要に応じて他のコーティング層との多層コーティングにも使用できる。
本発明のコーティング用組成物を用いて芯物質をコーティングするには、当該技術分野で一般的に採用されているコーティング方法を使用すればよい。コーティング方法としては、湿式コーティング及び乾式コーティングの何れであってもよいが、好ましくは湿式コーティングが挙げられる。湿式コーティングを行う場合には、本発明のコーティング用組成物を、水等の希釈媒体に溶解又は分散させたコーティング液を調製し、当該コーティング液で芯物質を被覆して乾燥すればよい。当該コーティング液中の本発明のコーティング用組成物の濃度については、特に制限されないが、例えば3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%が挙げられる。本発明のコーティング用組成物は、従来の糖衣コーティング製剤と同等の矯味を呈するにも拘らず、従来の糖衣コーティング製剤のコーティング時間に比して、大幅に短縮できるので、製造時間やコストの点で大きな利点がある。
本発明のコーティング用組成物を用いて芯物質を湿式コーティングを行う手法は、一般に汎用されるパンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置、流動層コーティング装置、転動流動層コーティング装置等による通常の方法のいずれでもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造例
以下に記載する方法で、各種製剤(実施例1−11、比較例1−16)を準備又は調製した。
1.芯物質
プラセボ錠
プラセボ錠は、(株)リプロス製の錠剤(Φ8.1mm、1錠当たりの重量195mg)を使用した。当該プラセボ錠には、乳糖67重量%、コンスターチ20重量%、結晶セルロース10.5重量%、ステアリン酸カルシウム2重量%、及び微粒二酸化ケイ素0.5重量%を含む素錠に、微量のセラックコーテイングが施されている。
ビタミンC錠
ビタミンC錠は、市販の錠剤(Φ10.0mm、1錠当たりの重量450mg)を使用した。当該ビタミンC錠には、ビタミンC55重量%、ローズヒップ、セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、酸化ケイ素が含まれている。
ビタミンB 2
ビタミンB2錠は、市販の錠剤(Φ9.0mm、1錠当たりの重量300mg)を使用した。当該ビタミンB2錠には、ビタミンB24.7重量%、乳糖、セルロース、ショ糖脂肪酸エステルが含まれている。
糖衣ビタミン錠1
糖衣ビタミン錠1は、市販の糖衣錠剤(1錠当たりの重量630〜690mg程度)を使用した。当該糖衣ビタミン錠1には、1錠あたりビタミンC75mgが含まれている。
糖衣ビタミン錠2
糖衣ビタミン錠2は、市販の糖衣錠剤を使用した。当該糖衣ビタミン錠2には、1錠あたりビタミンB75mgが含まれている。
糖衣ビタミン錠3
糖衣ビタミン錠3は、市販の糖衣錠剤を使用した。当該糖衣ビタミン錠3には、1錠あたりビタミンC83mgが含まれている。
糖衣ビタミン錠4
糖衣ビタミン錠4は、市販の糖衣錠剤を使用した。当該糖衣ビタミン錠4には、1錠あたりビタミンC56mgが含まれている。
2.コーティング液
コーティング液1
ポリビニルアルコールのグラフト共重合体35.0gと、アセスルファムカリウム:スクラロース:還元パラチノース=45:15:40の混合物(サンスイート
SA−5050(登録商標)、三栄源F・F・I(株)製)0.45gと、タルク(クラウンタルク(登録商標)、松村産業(株)製)15gとを、450gの精製水に溶解させてコーティング液を調製した。
なお、本コーティング液1において、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体として、POVACOAT(登録商標) Type F(大同化成工業(株)製)を使用した。当該グラフト共重合体は、部分けん化ポリビニルアルコールとメチルメタクリレートとアクリル酸とを重合比80:17.5:2.5でグラフト共重合させたポリマーである。
コーティング液2
サンスイートSA−5050 0.45gに代えてスクラロース0.075gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液2を調製した。
コーティング液3
サンスイートSA−5050 0.45gに代えてスクラロース0.175gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液3を調製した。
コーティング液4
サンスイートSA−5050 0.45gに代えてスクラロース0.25gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液4を調製した。
コーティング液5
サンスイートSA−5050 0.45gに代えてステビア0.45gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液5を調製した。
コーティング液6
サンスイートSA−5050 0.45gに代えて塩化ナトリウム0.45gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液6を調製した。
コーティング液7
サンスイートSA−5050 0.45gに代えてクエン酸0.45gを添加すること以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液7を調製した。
コーティング液8
サンスイートSA−5050を添加しないこと以外は、コーティング液1と同様の方法で、コーティング液8を調製した。
3.コーティング方法
上記芯物質とコーティング液を所望の割合で使用し、傾斜型ドラム式コーティング装置パウレックコーター((株)パウレック、PRC−05)を用いて、コーティング製品を調製した。コーティング条件は以下の通りである。
給気温度:70〜85℃
給気風量:0.60〜0.70m/分
排気温度:45〜60℃
スプレー空気圧:0.3〜0.4MPa
4.準備・調製した製剤
実施例1
コーティング液1を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、9重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は4時間であった。
実施例2
コーティング液1を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、12重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は8.5時間であった。
実施例3
コーティング液1を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、44重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は13時間であった。
実施例4
コーティング液1を使用して、ビタミンC錠100重量部当たり、18重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3.5時間であった。
実施例5
コーティング液1を使用して、ビタミンC錠100重量部当たり、31重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は8.5時間であった。
実施例6
コーティング液1を使用して、ビタミンC錠100重量部当たり、50重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は13時間であった。
実施例7
コーティング液1を使用して、ビタミンB2錠100重量部当たり、18重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3.5時間であった。
実施例8
コーティング液2を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、7重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は2.5時間であった。
実施例9
コーティング液3を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、7重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3時間であった。
実施例10
コーティング液4を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、6重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は2.5時間であった。
実施例11
コーティング液5を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、6.8重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3.5時間であった。
比較例1
プラセボ錠をコーティングすることなく使用した。
比較例2
コーティング液8を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、4.7重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は2時間であった。
比較例3
コーティング液8を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、7重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3時間であった。
比較例4
コーティング液6を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、4.9重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は2.5時間であった。
比較例5
コーティング液6を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、7.4重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3時間であった。
比較例6
コーティング液6を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、9.1重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は4時間であった。
比較例7
コーティング液7を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、4.6重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は2.5時間であった。
比較例8
コーティング液7を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、6.8重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3.2時間であった。
比較例9
コーティング液7を使用して、プラセボ錠100重量部当たり、8.6重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は4.5時間であった。
比較例10
コーティング液8を使用して、ビタミンB2錠100重量部当たり、16重量部のコーティング層を形成させるコーティングを行うことにより、コーティング製品を調製した。コーティング開始から乾燥までに要した時間は3.6時間であった。
比較例11
糖衣ビタミン錠1をそのまま使用した。
比較例12
糖衣ビタミン錠2をそのまま使用した。
比較例13
ビタミンC錠をコーティングすることなく使用した。
比較例14
糖衣ビタミン錠3をそのまま使用した。
比較例15
糖衣ビタミン錠4をそのまま使用した。
比較例16
ビタミンB錠をコーティングすることなく使用した。
試験例1:崩壊性の評価
実施例1、8−11、及び比較例2−9の製剤を用いて、以下の方法で崩壊性の評価を行った。崩壊試験は、第十五改正日本薬局方の崩壊試験法に基づき実施した。試験液には水を使用し、補助盤を用いて錠剤が崩壊するまでの時間を測定した。
得られた結果を図1に示す。図1に示すように、甘味料を配合していないコーティング用組成物でコーティングした製剤(比較例2−3)では、コーティング量の増加に伴って、崩壊時間が長くなる傾向が認められた。また、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と塩化ナトリウムを配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(比較例4−6)、及びポリビニルアルコールのグラフト共重合体とクエン酸を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(比較例7−9)でも、比較例2−3と同様の傾向が認められた。これに対して、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例1、8−11)では、崩壊時間が顕著に短縮化され、コーティング量を増加しても、崩壊時間の延長が殆ど認められなかった。
以上の結果から、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物によれば、優れた崩壊性を備えたコーティング製品の製造が可能になることが明らかとなった。
試験例2:防湿機能の評価(1)
実施例1−3及び比較例1の製剤を用いて、以下の方法で防湿機能の評価を行った。各製剤を40℃の乾燥機で2日間乾燥させた後、25℃75%RH(相対湿度)の条件下で7時間保存し、経時的に各製剤の吸湿量(保存前の製剤の総重量に対する増加重量の割合;%)を測定した。
得られた結果を図2に示す。図2から明らかなように、コーティングを施していない製剤(比較例1)では経時的に吸湿したが、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例1−3)では、経時的な吸湿量の増加が僅かであり、格段に優れた防湿性を備えていることが確認された。
試験例3:防湿機能の評価(2)
実施例8−10及び比較例1の製剤を用いて、試験例2と同様の方法で防湿機能の評価を行った。
得られた結果を図3に示す。図3から明らかなように、上記試験例2の結果と同様に、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例8−10)では、格段に優れた防湿性を備えていることが確認された。
試験例4:防湿機能の評価(3)
実施例6及び比較例11−13の製剤を用いて、試験例2と同様の方法で防湿機能の評価を行った。
得られた結果を図4に示す。図4から明らかなように、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例6)では、従来の糖衣製剤とほぼ同等の防湿性を備えていることが分かった。
試験例5:製剤安定性(ビタミンCの安定性)の評価
実施例4−6、比較例11、14及び15の製剤を用いて、以下の方法でビタミンCの安定性について評価した。各製剤を40℃75%RH(相対湿度)の条件下で13週間保存し、ビタミンCの残存率を経時的に測定したビタミンCの定量は、第十五改正日本薬局方のアスコルビン酸の定量法に従い、滴定により測定した。即ち、錠剤1錠をメタリン酸水溶液(1→50)50mLに溶かし、デンプン試液1mLを指示薬に用いて、0.05mol/Lヨウ素液で滴定し、算出した。
結果を図5に示す。図5から分かるように、従来の糖衣製剤(比較例11、14及び15)では、ビタミンCの残存率が経時的に減少し、ビタミンCを安定に保持できなかった。これに対して、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例4−6)では、保存13週間後でも、ビタミンCの残存率が高い値を維持しており、ビタミンCが安定に保持されていた。また、上記条件で保存した各製剤について、外観形状を観察したところ、比較例11、14及び15の製剤では3〜10週間後に糖衣層にひび割れが発生していたが、実施例4−6の製剤では、外観形状に変化は認められず、外観形状も安定に維持されていた。
試験例6:製剤安定性(伸長率)の評価
実施例7、比較例11及び12の製剤を用いて、以下の方法で製剤の伸長率の変化について評価した。各製剤を40℃75%RH(相対湿度)の条件下で7週間保存した。保存前後での錠剤の厚さを測定し、保存後の伸長率(保存前の製剤の厚さに対する保存後の製剤の厚さの割合;%)を測定した。
得られた結果を表1及び図6に示す。図6には、保存前後での各製剤の断面を観察した結果を示す。従来の糖衣製剤(比較例12)では、保存後に製剤が膨潤し、表面が著しく軟化していた。また、比較例11の製剤では、表面が褐色に変化し、側面に割れが生じていた。これに対して、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例7)では、保存後の膨潤が著しく抑制できており、しかも外観形状に変化がなく、製剤が安定に保持されていた。
試験例7:矯味の評価
実施例1、9及び10の製剤を用いて、以下の方法で製剤の矯味効果について評価した。各製剤1錠を成人男女20名に服用させ、その矯味効果の評価を行った。矯味の評価は、(1)美味しい又は好ましい味、(2)不味い又は不快な味、(3)糖衣に近い味、(4)不快な触感、の4項目について、各製剤が該当するか否かを判断させることにより行った。
得られた結果を表2に示す。この結果から、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例1、9及び10)では、良好な矯味が感じられ、糖衣にも近い味を呈することが確認された。
試験例8:臭いの評価
実施例7、比較例10−12及び16の製剤を用いて、以下の方法で製剤の臭気について評価した。各製剤3錠を成人男女3名によって、その臭気の評価を行った。臭気の評価は、ビタミンBの臭いを感じるか否かを判断させることにより行った。
得られた結果を表3に示す。この結果から、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体と甘味料を配合したコーティング用組成物でコーティングした製剤(実施例7)では、従来の糖衣製剤と同様に、ビタミンBの臭いが十分に抑制できていることが確認された。また、実施例7の製剤は、比較例10の製剤と臭気の評価結果が同等であったことから、ポリビニルアルコールのグラフト共重合体を含むコーティング用組成物に甘味料を添加しても、臭気の抑制効果は低減しないことも確認された。

Claims (5)

  1. (A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される重合性ビニル単量体を重合又は共重合したグラフト共重合体と、
    [式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子或いは炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基を示す。]
    (B)甘味料と
    を含有し、
    前記(A)グラフト共重合体100重量部当たりの前記(B)甘味料の比率が0.2〜5重量部である、
    ことを特徴とするコーティング用組成物。
  2. 前記(B)甘味料が、ショ糖の甘味度を100とした場合における甘味度が5000以上の甘味料である、請求項1に記載のコーティング用組成物。
  3. 前記重合性ビニル単量体が、アクリル酸、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のコーティング用組成物。
  4. コーティング用組成物の総量当たり、前記(A)グラフト共重合体の含有割合が40重量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
  5. 食品、医薬品、又は農薬のコーティングに使用される、請求項1〜のいずれかに記載のコーティング用組成物。
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