JP5778171B2 - 氷上でのグリップが向上した冬季タイヤ - Google Patents

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Description

1.発明の分野
本発明は、車両用タイヤ、特に、スタッドを備えることなく、氷又は黒氷で覆われた地表面上で走ることができる「冬季」タイヤ("winter" tyres)(スタッドレスタイヤとしても知られている)のトレッドとして用いられるゴム組成物に関する。
より詳細には、本発明は、通常−5℃から0℃の間の温度範囲内で生じる「融氷」条件の下で走るのに特に適している冬季タイヤのトレッドに関する。このような範囲内では、車両の走行中のタイヤの圧力が氷の表面融解を引き起こし、氷は、これらのタイヤのグリップにとって有害な、水の薄い膜で覆われることが、明確に留意されるべきである。
2.現況技術
スタッドの有害な影響、特に、地表面の表面材料自体へのそれらの強い摩耗作用、及び乾いた地表面でのかなり劣る路上挙動を避けるために、タイヤ製造業者は、タイヤのトレッドを作り上げるゴム組成物の配合を変更することからなる、様々な解決策を提供している。
例として、まず第1に、例えば炭化ケイ素(例えば、US3878147を参照)のような高硬度の固体粒子(これらのいくらかは、トレッドがすり減るとトレッドの表面に現れるので、氷と接触するようになる)を組み入れるという提案がなされた。このような粒子は、よく知られた「鉤爪(claw)」効果のおかげで、実際に堅い氷上でマイクロスタッドとして働くことができるが、地表面に関しては、依然として比較的攻撃的である。それらは、融氷上の走行条件に申し分なく適しているわけではない。
このため、特に、トレッドを作り上げる組成物に水溶性粉末(すなわち、水に溶解できる粉末)を組み入れることからなる他の解決策が提案された。このような粉末は、雪又は融氷との接触で多かれ少なかれ溶解するので、一方では、地表面へのトレッドのグリップを向上させることができる細孔をタイヤトレッド表面に生成することが、他方では、タイヤと地表面との間に生じる液体の膜を取り除くためのチャネルとして働く溝を生成することが可能になる。水溶性粉末の例として、例えば、セルロース粉末、PVA(ポリビニルアルコール)粉末若しくはデンプン粉末、又は他に、グアーガム粉末又はザンサンガム粉末(例えば、特許出願JP−3−159803、JP2002−211203、EP940435、WO2008/080750及びWO2008/080751を参照)の使用を挙げることができる。
これらの全ての例において、非常に低い温度で、非常に短い時間内での、用いられる粉末の溶解性が、トレッドの満足のいく働きに不可欠な要素である。粉末が、タイヤの使用条件の下で溶けない場合、前記の機能(水をはかせるための微細孔及びチャネルの生成)は果たされず、グリップは向上しない。これらの解決策に関して知られている別の不都合は、それらが、ゴム組成物の強化にとって(したがって、その耐摩耗性にとって)、又はそのヒステリシス(したがって、その転がり抵抗)にとって、非常に不利であるということである。
3.発明の簡単な説明
彼らの研究を続けて、出願人等は、特殊な微粒子(microparticle)のおかげで、効果的な表面微小粗さ(surface micro−roughness)を生成することができ、また、強化及びヒステリシスの特性に不利であることなく、融氷条件の下で、それらを含むトレッド及びタイヤの氷上でのグリップを大きく向上させることを可能にする、ゴム組成物を見出した。
その結果として、本発明は、ジエンエラストマー、30phrを超える液体可塑剤、50から150phrの間の強化用フィラーを少なくとも含むゴム組成物をそのトレッドが含むタイヤであって、この組成物が、2から500μmの間の質量による中央値サイズを有する、少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子を35〜50phrさらに含むことを特徴とするタイヤに関する。
まず第1に、これらの中空微粒子は、トレッドの表面から突き出し、道路の表面として用いられるアスファルトに関して、非常に摩耗性であるという不都合なしに、前記の鉤爪の機能を果たす。次いで、その結果として、それらの中空構造を壊すことによってつぶれ、ゴムマトリックスから徐々に駆逐された後、前記微粒子は、氷の表面の水の膜をはかせるための保持容積として、またチャネルとして働く微細孔を生じる。これらの状態の下で、トレッド表面と氷との間の接触は、もはや潤滑されておらず、このため摩擦係数が向上する。
本発明のタイヤは、4×4(四輪駆動)車及びSUV(多目的スポーツ車)車を含めた乗用車、二輪車(特に、オートバイ)、さらには小型トラック及び大型車両(すなわち、地下鉄、バス又は大型道路輸送車両、例えば大型トラック若しくは牽引用トラック)から特に選択される産業車両に装備されることを特に目的とする。
本発明及びその利点は、以下の説明及び例示的実施形態に鑑みて、容易に理解されるであろう。
4.用いられた測定及び試験
トレッド及びこれらのトレッドを作り上げるゴム組成物は、下に示されるように、硬化の前後に特性評価される。
4.1−ムーニー塑性
フランス規格NF T 43−005(1980年11月)に記載されている振動コンシストメータが用いられる。ムーニー塑性測定は、次の原理に従って行われる:生の状態(すなわち、硬化前)の組成物が、100℃に加熱された円柱状チャンバの形に合わせて形作られる。1分間予熱した後、ローターが試験試料内で2回転/分で回転し、この動きを維持するための作業負荷トルクが、4分間の回転後に測定される。ムーニー塑性(ML 1+4)は、「ムーニー単位」(MU、1MU=0.83ニュートン.メートル)で表される。
4.2−スコーチ時間
測定は、フランス規格NF T 43−005に従って、130℃で行われる。時間の関数としてのコンシストメータによる指数(consistometric index)の変化は、パラメータT5(大きなローターの場合)によって前記規格に従って評価され、分で表され、コンシストメータによる指数(MUで表される)がこの指数に対して測定された最低値から5単位増加するのに必要な時間として定義される、ゴム組成物のスコーチ時間を求めることを可能にする。
4.3−レオメトリー
測定は、規格DIN 53529−part−3(1983年6月)に従って、150℃で、振動ディスクレオメータにより行われる。時間の関数としてのレオメータによるトルクの変化は、加硫反応の結果として組成物が硬くなる変化を表す。測定値は、規格DIN 53529−part−2(1983年3月)に従って処理される。Tiは、誘導時間、すなわち、加硫反応が始まるのに要する時間であり、Tα(例えばT90)は、α%の変換、すなわち、最低と最大のトルクの間の差のα%(例えば、90%)に達するのに要する時間である。
4.4−引張り試験
これらの引張り試験は、弾性応力、及び破断時特性を求めることを可能にする。特に断らなければ、それらは、1988年9月のフランス規格NF T 46−002に従って行われる。公称割線弾性率(nominal secant modulus)(又は、見掛けの応力、MPa)は、2回目(すなわち、測定自体に予想される伸張度までの順応(accommodation)サイクルの後で)の伸長において、10%の伸び(M10と表される)、100%の伸び(M100と表される)、及び300%の伸び(M300と表される)で求められる。破断応力(MPa)及び破断伸び(%)もまた測定される。これらの全ての引張り測定は、フランス規格NF T 40−101(1979年12月)に従って、温度(23±2℃)及び湿度(50±5%の相対湿度)の標準条件下に行われる。
4.5−ショアA硬度
硬化後の組成物のショアA硬度は、規格ASTM D 2240−86に従って評価される。
4.6−動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992−96に従って、粘度評価装置(Metravib VA4000)で測定される。0℃の温度で、10Hzの振動数で、単純な交番正弦剪断応力を受ける、加硫した組成物試料(厚さ4mm、断面積400mm2を有する円柱状試験試料)の応答が記録される。0.1%から50%まで(全体サイクル)、次いで、50%から1%まで(戻りサイクル)の歪み振幅の掃引が行われる。用いられる結果は、損失係数tan(δ)である;0.15%と50%の歪みでの値の間で観察されるtan(δ)の最大値(tan(δ)maxと表される)(ペイン(Payne)効果)が、戻りサイクルに対して示される。
5.発明の詳細な説明
この説明において、特に断らなければ、示されている全てのパーセンテージ(%)は、質量%である。省略形「phr」は、エラストマー(いくつのエラストマーが存在する場合、これらのエラストマーの合計の)100部当たりの質量部を意味する。
さらに、表現「aからbの間」によって表されるいかなる値の区間も、「a」より大きく「b」より小さい値の範囲を表す(すなわち、端点a及びbは除かれる)のに対して、表現「a〜b」によって表されるいかなる値の区間も、「a」から「b」に及ぶ値の範囲(すなわち、限界点a及びbを含む)を意味する。
本発明によるトレッドのゴム組成物は、少なくとも、タイヤの回転中は道路に接触することが意図されているトレッド部分(その結果として、パターンが形成されている)では、上に述べたように、少なくとも、ジエンエラストマー、可塑化系、強化用フィラー、及び特殊な中空微粒子に基づいており、これらの成分は、下で詳細に説明される。
5.1−ジエンエラストマー
「ジエン」タイプのエラストマー(又はゴム、2つの用語は同義語である)は、少なくとも一部はジエンモノマー(共役していることも、していないこともある2つの炭素−炭素2重結合を有するモノマー)から得られるエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解されるべきであることが留意されるべきである。
ジエンエラストマーは、「本質的不飽和」と「本質的飽和」の2つの範疇に既知の方法で分類できる。例えばEPDM系のジエンとα−オレフィンのコポリマーのようなブチルゴムは、本質的飽和ジエンエラストマーの部類内に含まれ、低い又は非常に低く、常に15%(mol%)未満であるジエン由来単位含有量を有する。対照的に、本質的不飽和ジエンエラストマーは、少なくとも部分的には共役ジエンモノマーから得られ、15%(mol%)を超えるジエン(共役ジエン)由来単位含有量を有する、ジエンエラストマーを意味すると理解されている。「本質的不飽和」ジエンエラストマーの範疇において、「高不飽和」ジエンエラストマーは、特に、50%を超えるジエン(共役ジエン)由来単位含有量を有するジエンエラストマーを意味すると理解されている。
少なくとも1種の高不飽和タイプのジエンエラストマー、特に、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを用いることが好ましい。上記のコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、及びこのようなコポリマーの混合物からなる群から選択される。
前記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、シーケンシャル(sequential)又はマイクロシーケンシャルエラストマーであってよく、分散体又は溶液で調製され得る。それらは、結び付けられている及び/又は星形分岐していても、或いはまた、カップリング剤及び/若しくは星形分岐剤、又は機能化剤により、機能化されていてもよい。カーボンブラックとのカップリングでは、例えば、C−Sn結合を含む官能基、又は、例えばベンゾフェノンのような、アミノ化された官能基を挙げることができ;シリカのような強化用無機フィラーとのカップリングでは、例えば、シラノール官能基又はシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、US6013718に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、US5977238に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、US6815473若しくはUS2006/0089445に記載されているような)、又はポリエーテル基(例えば、US6503973に記載されているような)を挙げることができる。このような機能化エラストマーの別の例として、エポキシ化されたタイプのエラストマー(例えば、SBR、BR、NR又はIR)もまた挙げることができる。
次のものは好ましく適切である:ポリブタジエン、特に、4%から80%の間の1,2−単位含有量を有するポリブタジエン、又は80%を超えるシス−1,4−単位含有量を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、5質量%から50質量%の間、さらに特定すると20%から40%の間のスチレン含有量、4%から65%の間のブタジエン部分の1,2結合含有量、及び20%から80%の間のtrans−1,4−結合含有量を有するブタジエン/スチレンコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%から90質量%の間のイソプレン含有量、及び−40℃〜−80℃のガラス転移温度(「Tg」−ASTM D 3418−82に従って測定される)を有するブタジエン/イソプレンコポリマー;又はイソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%から50質量%の間のスチレン含有量、及び−25℃から−50℃の間のTgを有するイソプレン/スチレンコポリマー。
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合に、5質量%から50質量%の間、さらに特定すると10%から40%の間のスチレン含有量、15質量%から60質量%、さらに特定すると20%から50%の間のイソプレン含有量、5質量%から50質量%、さらに特定すると20%から40%の間のブタジエン含有量、4%から85%の間のブタジエン部分の1,2−単位含有量、6%から80%の間のブタジエン部分のtrans−1,4−単位含有量、5%から70%の間のイソプレン部分の1,2−と3,4−単位を合わせた含有量、及び10%から50%の間のイソプレン部分のtrans−1,4−単位の含有量を有するブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー、より一般的には、−20℃から−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適切である。
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
より特別で好ましい実施形態によれば、ゴム組成物は、50〜100phrの天然ゴム又は合成ポリイソプレンを含み、この天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、特に、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエンの多くても50phrとのブレンド(混合物)として用いられることが可能である。
別の特別で好ましい実施形態によれば、ゴム組成物は、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエンを50〜100phr含み、このポリブタジエンは、特に、天然ゴム又は合成ポリイソプレンの多くても50phrとのブレンドとして用いられることが可能である。
ジエンエラストマー以外の合成エラストマーが、さらに言えばエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーさえもが、僅かな量で、本発明によるトレッドのジエンエラストマーと混合され得る。
5.2−可塑化系
本発明のゴム組成物は、別の絶対必要な特徴として、液体である(20℃で)可塑剤を少なくとも30phr含むという特徴を有し、これの役割は、エラストマー及び強化用フィラーを希釈することによってマトリックスを軟らかくすることである;マトリックスのTgは、定義によって、−20℃未満、好ましくは−40℃未満である。
芳香族であれ非芳香族性であれ、いかなる伸展油も、ジエンエラストマーに関してその可塑化特性の故に知られているいかなる液体可塑剤も用いることができる。雰囲気温度(20℃)で、これらの可塑剤又はこれらのオイルは、特に、雰囲気温度で本来固体である可塑化用炭化水素樹脂とは対照的に、多かれ少なかれ、粘性を有し、液体(すなわち、念のために言えば、いつかはそれらの容器の形状になることができる物質)である。
ナフテン油(低又は高粘度、特に、水素添加されたか又はそうでない)、パラフィン油、MES(中度抽出ソルベート、Medium Extracted Solvate)油、TDAE油(処理された、留出物からの芳香族抽出物、Treated Distillate Aromatic Extract)、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される液体可塑剤が、特に適切である。
ホスフェート可塑剤として、例えば、12から30個の間の炭素原子を含むもの、例えば、リン酸トリオクチルを挙げることができる。エステル可塑剤の例として、特に、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、フタル酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、グリセロールのトリエステル、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される化合物を挙げることができる。上のトリエステルの中で、不飽和C18脂肪酸から、すなわち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの酸の混合物からなる群から選択される不飽和脂肪酸から、好ましくは主に(50質量%を超える、より好ましくは80質量%を超える)なるグリセロールトリエステルを挙げることができる。より好ましくは、合成由来であれ天然由来(例えば、ヒマワリ又はナタネ植物油の場合)であれ、用いられる脂肪酸は、50質量%を超え、より好ましくは、さらに80質量%を超えるオレイン酸からなる。高含有量でオレイン酸を含むこのようなトリエステル(トリオレイン酸エステル)は、よく知られている;例えば、それらは、公報WO02/088238に、タイヤのトレッドにおける可塑剤として記載されている。
本発明の組成物における液体可塑剤の含有量は、好ましくは40phrを超え、より好ましくは、50〜100phrの範囲内に含まれる。
別の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、また、固体である(20℃で)可塑剤として、例えば公報WO2005/087859、WO2006/061064及びWO2007/017060に記載されているような、+20℃を超え、好ましくは+30℃を超えるTgを示す炭化水素樹脂を含み得る。
炭化水素樹脂は、それらが「可塑化する」と追加で示されている場合には、本質的に炭素と水素に基づくので、ジエンエラストマー組成物に本来混和性である、当業者によく知られたポリマーである。それらは、例えば、R.Mildenberg、M.Zander及びG.Collinによる「Hydrocarbon Resins」という表題の著作(ニューヨーク、VCH、1997年、ISBN 3−527−28617−9)に記載されており、その5章は、特にタイヤゴムの分野におけるそれらの用途に充てられている(5.5.「Rubber Tires and Mechanical Goods」)。それらは、脂肪族若しくは芳香族系であるか、又は脂肪族/芳香族系(すなわち、脂肪族及び/又は芳香族モノマーに基づく)でもあり得る。それらは、天然又は合成であり得る、また、石油系であることも、そうでないこともある(石油系である場合には、石油樹脂の名称でもまた知られている)。それらは、好ましくは、炭化水素だけに限られている、すなわち、それらは炭素及び水素原子だけを含む。
好ましくは、可塑化用炭化水素樹脂は、次の特性の少なくとも1つ、より好ましくは全てを示す。
− 20℃を超えるTg(より好ましくは、40から100℃の間);
− 400から2000g/molの間の数平均分子量(Mn)(より好ましくは、500から1500g/molの間);
− 3未満、より好ましくは2未満の多分散指数(PI)(注意:PI=Mw/Mn、Mwは質量平均分子量)。
Tgは、規格ASTM D3418(1999年)に従って、DSC(示差走査熱量計)によって、知られている様に測定される。炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn及びPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC):溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/l;流量1ml/min;溶液は、注入の前に、0.45μmの細孔のフィルターを通して濾過される;ポリスチレン標準によるMoore較正;直列の3つの「Waters」カラム(「Styragel」HR4E、HR1及びHR0.5)のセット;示差屈折率計(「Warers 2410」)と関連するその作動ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出;によって求められる。
特に好ましい実施形態によれば、可塑化用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと省略される)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPDと省略される)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びこれらの樹脂の混合物からなる群から選択される。上のコポリマー樹脂の中で、より好ましくは、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C9留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及びこれらの樹脂の混合物からなる群から選択されるものが用いられる。
用語「テルペン」は、ここでは、知られている様に、α−ピネン、β−ピネン及びリモネンモノマーを1つにまとめている;好ましくは、リモネンモノマーが用いられ、この化合物は、知られている様に、3つの可能な異性体(L−リモネン(左旋性エナンチオマー)、D−リモネン(右旋性エナンチオマー)、でなければジペンテン)、右旋性及び左旋性エナンチオマーのラセミ体の状態で存在する。ビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、オルト−、メタ−又はパラ−メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ−(tert−ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分(若しくは、より一般的には、C8−C10留分)から得られる任意のビニル芳香族モノマーが、適切である。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、スチレン、又はC9留分(若しくは、より一般的には、C8−C10留分)から得られるビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、考えられているコポリマーにおいて、モル分率で表すと、主要でないモノマーである。
炭化水素樹脂の含有量は、好ましくは、3から60phrの間、より好ましくは3から40phrの間、特に、5から30phrの間である。
全可塑剤(すなわち、液体可塑剤と、適切である場合、固体炭化水素樹脂とを合わせたもの)の含有量は、好ましくは、40から100phrの間であり、より好ましくは、50〜80phrの範囲内に含まれる。
5.3−フィラー
タイヤの製造に使用できるゴム組成物を強化するその能力の故に知られているいかなるタイプの強化用フィラーも、例えば、有機フィラー(例えば、カーボンブラック)、又は強化用無機フィラー(例えば、シリカ)も用いることができ、これと共に、カップリング剤が、知られている様に、組み合わせられる。
このような強化用フィラーは、通常、ナノ粒子からなり、それらの平均サイズ(質量による)は、500nm未満で、一般的には20から200nmの間、特に、好ましくは20から150nmの間である。
全てのカーボンブラック、特に、タイヤ、又はタイヤのトレッドに通常用いられるブラック(「タイヤ−グレード」ブラック)が、カーボンブラックとして適切である。後者の中で、より詳細には、100、200又は300シリーズ(ASTM等級)の強化用カーボンブラック、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347又はN375ブラックが挙げられ得る。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマーにすでに組み入れられていることもある(例えば、公報WO97/36724又はWO99/16600を参照)。
カーボンブラック以外の有機フィラーの例として、公報WO2006/069792、WO2006/069793、WO2008/003434、及びWO2008/003435に記載されている機能化ポリビニル有機フィラーを挙げることができる。
用語「強化用無機フィラー」は、ここでは、その色及びその由来(天然若しくは合成)が何であれ、カーボンブラックとは対照的に、「白色」フィラー、「透明」フィラー、又はさらに「ノンブラック」フィラーとしてもまた知られており、仲介カップリング剤以外の手段なしに、それ自体によって、タイヤの製造に向けられるゴム組成物を強化することができる、別の言い方をすると、その強化の役割において、通常のタイヤグレードのカーボンブラックに取って代わることができる、任意の無機又は鉱物フィラーを意味すると理解されるべきである;このようなフィラーは、知られている様に、その表面のヒドロキシル(−OH)基の存在によって、一般的に特徴付けられる。
強化用無機フィラーとして、特に、ケイ質系、特にシリカ(SiO2)、又はアルミナ質系、特にアルミナ(Al23)の鉱物フィラーが、適切である。用いられるシリカは、当業者に知られている任意の強化用シリカ、特に、450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/g、特に60から300m2/gの間のBET表面積及びCTAB比表面積の両方を示す任意の沈降又は熱生成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)として、例えば、Degussaによる「Ultrasil」7000及び「Ultrasil」7005シリカ、Rhodiaによる「Zeosil」1165MP、1135MP及び1115MPシリカ、PPGによる「Hi−Sil」EZ150Gシリカ、Huberによる「Zeopol」8715、8745及び8755シリカが挙げられ得る。強化用アルミナの例として、Baikowskiによる「Baikalox A125」若しくは「Baikalox CR125」アルミナ、Condeaによる「APA−100RDX」アルミナ、Degussaによる「Aluminoxid C」アルミナ、又はSumitomo Chemicalsによる「AKP−G015」アルミナを挙げることができる。
好ましくは、全強化用フィラー(カーボンブラック及び/又は強化用無機フィラー)の含有量は、60から120phrの間、特に、70から100phrの間である。
特定の実施形態によれば、フィラーは、シリカ、カーボンブラック、又はカーボンブラックとシリカの混合物を含む。
別の特定の実施形態によれば、強化用フィラーは、主として、カーボンブラックを含む;このような場合には、カーボンブラックは、強化用無機フィラー、例えば、僅かな量のシリカと組み合わせて、又は強化用無機フィラーなしに、好ましくは60phrを超える含有量で存在する。
別の特定の実施形態によれば、強化用フィラーは、主に無機フィラーを、特にシリカを含む。このような場合には、無機フィラー、特にシリカは、僅かな量のカーボンブラックと組み合わせて、又はカーボンブラックなしに、好ましくは70phrを超える含有量で存在する。カーボンブラックは、それが存在する場合、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば、0.1から10phrの間)の含有量で用いられる。
本発明の第1の態様、すなわち、融氷上での最も効果的なグリップの研究とは独立に、強化用無機フィラー、例えばシリカを、主に用いることは、濡れた又は雪の積もった地表面でのグリップの観点からもまた利点がある。
本発明の別の可能な実施形態によれば、強化用フィラーは、カーボンブラックとシリカのような強化用無機フィラーとの同じような量のブレンドを含む。このような場合において、無機フィラー、特にシリカの含有量、及びカーボンブラックの含有量は、好ましくは、それぞれ25から75phrの間、さらに特定するとそれぞれ30から50phrの間である。
強化用無機フィラーをジエンエラストマーに結び付けるために、よく知られている様に、無機フィラー(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間の、化学的及び/又は物理的性質の十分な結合をもたらすことを意図して、少なくとも1種の二官能性カップリング剤(又は、接合剤)が用いられる。特に、二官能性有機シラン又はポリオルガノシロキサンが用いられる。
特に、例えば、公報WO03/002648(又はUS2005/016651)及びWO03/002649(又はUS2005/016650)に記載されているように、それらの特定の構造に応じて、「対称」又は「非対称」と呼ばれる、シランポリスルフィドが用いられる。
次の一般式(I)に対応する「対称」シランポリスルフィド:
(I)Z−A−Sx−A−Z
{式中、
− xは、2〜8(好ましくは、2〜5)の整数であり、
− Aは、2価の炭化水素基(好ましくは、C1−C18アルキレン基、又はC6−C12アリーレン基、より特別には、C1−C10、特に、C1−C4アルキレン、殊にプロピレン)であり、
− Zは、下の式:
Figure 0005778171
[式中、
− R1基は、無置換であるか若しくは置換されており、互いに同じであるか若しくは異なり、C1−C18アルキル、C5−C18シクロアルキル若しくはC6−C18アリール基(好ましくは、C1−C6アルキル、シクロヘキシル若しくはフェニル基、特に、C1−C4アルキル基、より特別には、メチル及び/又はエチル)を表し、
− R2基は、無置換であるか若しくは置換されており、互いに同じであるか若しくは異なり、C1−C18アルコキシ若しくはC5−C18シクロアルコキシ基(好ましくは、C1−C8アルコキシ及びC5−C8シクロアルコキシから選択される基、より一層好ましくは、C1−C4アルコキシから選択される基、特にメトキシ及びエトキシ)を表す]
の1つに相当する}
が適切であるが、上の定義は、限定ではない。
より詳細には、シランポリスルフィドの例として、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)若しくはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられ得る。これらの化合物の中で、特に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと省略される)、又はビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPDと省略される)が用いられる。また、好ましい例として、特許公報WO02/083782(又はUS2004/132880)に記載されている、ビス(モノ(C1−C4)アルコキシルジ(C1−C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド若しくはテトラスルフィド)、より詳細には、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられ得る。
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤として、特に、特許公報WO02/30939(又は、US6774255)及びWO02/31041(又は、US2004/051210)に記載されているような、二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)若しくはヒドロキシシランポリスルフィド(上の式(I)において、R2=OH)、又は、例えば、特許公報WO2006/125532、WO2006/125533及びWO2006/125534に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を有するシラン若しくはPOSが挙げられ得る。
本発明によるゴム組成物において、カップリング剤の含有量は、好ましくは2から12phrの間、より好ましくは3から8phrの間である。
当業者は、別の特質の、特に有機質の強化用フィラーが、もし、この強化用フィラーが、フィラーとエラストマーの間の結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とする、無機層、例えばシリカにより被覆されるか、さもなければ、その表面に、官能性サイト、特にヒドロキシルを含むのであれば、この節に記載された強化用無機フィラーと同等のフィラーとして使用され得ることを理解するであろう。
5.4−金属酸化物中空微粒子
本発明によるゴム組成物は、少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子(又は、マイクロスフィア)を35〜50phr含むという絶対必要な特徴を有し、酸化物という用語は、言うまでもなく、水酸化物を含み、これらの微粒子は、2から500μmの間の質量による中央値サイズを有する。
微粒子は、定義により、また一般的に、マイクロメートルのサイズの粒子、すなわち、平均サイズ又は中央値サイズ(どちらも質量による表現で)が1μmから1mmの間である粒子を意味すると理解されている。
上で示された最小値未満では、目標とする技術的効果(すなわち、適切な微小粗さを生じること)が不十分であり得るのに対して、示された最大値を超えると、特にゴム組成物がトレッドとして用いられる場合、様々な不都合が生じる。あり得る美しさの低下(粒子がトレッドの表面で余りに目立つ)、及び比較的大きなトレッドパターンエレメントの回転の間の凝集力の低下の危険とは別に、融氷上のグリップ性能が損なわれ得ることが見出される。
これらの全ての理由の故に、中空微粒子は、5〜200μmの範囲内に含まれる中央値サイズ(質量による)を有することが、好ましい。この特に好ましいサイズの範囲は、一方では、望まれる表面粗さと、他方では、ゴム組成物と氷の間の良好な接触との間の最適な妥協に対応すると思われる。
好ましい実施形態によれば、金属酸化物の金属は、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、遷移金属、及びこれらの金属の混合からなる群から選択される。遷移金属は、より詳細には、スカンジウムから亜鉛までの範囲の第4周期からの金属を、好ましくはチタン及び亜鉛を意味すると理解されている。より一層好ましくは、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム及び亜鉛が適切である。
より好ましい実施形態によれば、金属酸化物は、アルミニウム酸化物及び/又は水酸化物、ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、アルミニウム・ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、並びにこのような酸化物及び/又は水酸化物の混合物からなる群から選択される。より一層好ましくは、用いられる金属酸化物はアルミノケイ酸塩である。
例えば、レーザー回折(例えば、規格ISO−8130−13又は規格JIS K5600−9−3を参照)によって、微粒子の粒子サイズの分析及び中央値サイズ(又は、実質的に球状であると仮定される微粒子では、中央値直径)の計算には、知られている様々な方法が適用可能である。
簡単に、その上、好ましくは、機械的篩分けによる粒子サイズの分析が用いられ得る。作業は、一定量の試料(例えば、200g)を、振動テーブル上で、30分間、様々な篩の口径により(例えば、1.26に等しい漸増比による、1000、800、630、500、400、・・・100、80、及び63μmのメッシュによる)、篩分けすることからなる。それぞれの篩で捕集されたサイズ超えのものが、精密天秤で秤量される。それにより、製品の全質量に対する、それぞれのメッシュの口径に対するサイズ超えのものの%が、推定される。最後に、中央値サイズ(若しくは中央値直径)又は平均サイズ(若しくは、平均直径)が、粒子サイズ分布のヒストグラムから既知の方法で計算される。
5.5−様々な添加剤
本発明のゴム組成物は、また、タイヤ、特に冬季タイヤのトレッドの製造を目的とするエラストマー組成物に広く用いられる通常の添加剤(例えば、保護剤、例えば、抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、強化用樹脂、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)若しくはメチレン供与体(例えば、HMT若しくはH3M)、硫黄又は硫黄供与体及び/若しくは過酸化物及び/若しくはビスマレイミドのいずれかに基づく架橋系、加硫促進剤、又は加硫活性化剤)の全て、又は一部も含む。
これらの組成物は、また、カップリング剤が用いられる場合にはカップリング活性化剤、ゴムマトリックスにおけるフィラーの分散を向上させ、また組成物の粘度を低下させるおかげで、生の状態における組成物の加工特性を知られている様に向上させることができる、無機フィラーを被覆するための作用剤又はより一般的には加工助剤も含み得る。これらの作用剤は、例えば、加水分解性シラン、例えば、アルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、アミン、又はヒドロキシル化若しくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
5.6−ゴム組成物及びトレッドの製造
本発明のゴム組成物は、当業者によく知られている一般的手順に従って、2つの逐次調製段階を用い、適切なミキサーで製造される:130℃と200℃、好ましくは145℃から185℃の間の最大温度までの高温での熱機械的な捏ねる作業又は混練り(「ノンプロ(non−productive)」段階と呼ばれることがある)の第1段階、その後の、通常120℃未満、例えば、60℃から100℃の間の、より低い温度での第2段階の機械的な捏ねる作業(「プロ(productive)」段階と呼ばれることがある)、架橋又は加硫系が組み入れられる仕上げ段階。
このような組成物の製造のために用いられ得る方法は、例えば、好ましくは、
− ミキサーにおいて、ジエンエラストマーに、30phrを超える液体可塑剤、50から150phrの間の強化用フィラー、及び2から500μmの間の中間値サイズ(質量による)を有する、金属酸化物中空微粒子を35〜50phr組み入れるステップであって、130℃から200℃の間の最大温度に達するまで、全てが、1回で、又は複数回で、熱機械的に混練りされる、ステップ;
− 一緒になった混合物を、100℃未満の温度まで冷却するステップ;
− 次に架橋系を組み入れるステップ;
− 120℃未満の最大温度に達するまで全てを混練りするステップ;
− こうして得られたゴム組成物を、特にタイヤトレッドの形に、押出加工又はカレンダー加工するステップ
を含む。
例として、第1(ノンプロ)段階は、熱機械的な1つの段階として実施され、その間に、必須の構成成分の全て、任意選択のさらなる被覆剤若しくは加工助剤、及び様々な他の添加剤が、架橋系を除いて、適切なミキサー、例えば、通常のインターナルミキサーに導入される。ノンプロ第1段階の間にこうして得られた混合物を冷却した後、次に、架橋系が、低温で、通常はエクスターナルミキサー、例えばオープンミルに導入される;次いで、全てが、数分間、例えば5から15分の間、混合される(プロ段階)。
適切な架橋系は、好ましくは、硫黄及び1次加硫促進剤、特にスルフェンアミド系促進剤に基づく。この加硫系に加えられるのは、知られている様々な2次促進剤又は加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)などであり、ノンプロ第1段階の間及び/又はプロ段階の間に、組み入れられる。硫黄の含有量は、好ましくは、0.5から3.0phrの間であり、1次促進剤の含有量は、0.5から5.0phrの間である。
促進剤(1次又は2次)として、硫黄の存在下にジエンエラストマーの加硫の促進剤として働くことができる任意の化合物、特に、チアゾール系及びそれらの誘導体の促進剤、チウラム系の促進剤、又はジチオカルバミン酸亜鉛を挙げることができる。これらの促進剤は、より好ましくは、2−メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と省略される)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」と省略される)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
こうして得られる最終組成物は、次に、特に実験室での特性評価のために、例えばシート又は板の形に、でなければ、冬季タイヤトレッドとして直接用いることができるゴム異形エレメントの形に押出成形される。
加硫(又は硬化)は、知られている様に、通常130℃から200℃の間の温度で、特に、硬化温度、採用された加硫系及び考えられている組成物の加硫反応速度に応じて、例えば5から90分の間で変わり得る十分な時間、行われる。
配合が異なるいくつかのゴム組成物から形成されるコンポジット型のトレッドの場合には、本発明による前記ゴム組成物は、本発明によるトレッドの一部のみを、少なくとも、タイヤの回転中に道路と接触させるつもりのトレッドの部分(その結果として、パターンが形成されている)として構成し得る。
本発明は、生の状態(すなわち、硬化の前)及び硬化した状態(すなわち、架橋又は加硫の後)の両方における、前記のタイヤに関する。
6.本発明の実施例
6.1−ゴム組成物の調製
これらの組成物の製造に、次の手順を用いた:加硫系は除いて、強化用フィラー(カーボンブラック、シリカ及びそれに関連するカップリング剤)、液体可塑剤、中空金属酸化物微粒子、ジエンエラストマー(又は、ジエンエラストマーのブレンド)、並びに様々な他の成分を、順次、約60℃の容器初期温度を有するインターナルミキサー内に導入する;こうして、ミキサーは、満杯の約70%(体積%)になる。次いで、熱機械的に捏ねる作業(ノンプロ段階)を1段階で行い、これは、165℃の最高「降下(dropping)」温度に達するまで、全体で約3〜4分間続く。こうして得られる混合物を回収し、冷却し、次いで、30℃のエクスターナルミキサー(ホモフィニッシャ)で、硫黄及びスルフェンアミド系の促進剤を組み入れ、全てを適切な時間(例えば、5分から12分の間)混合する(プロ段階)。
6.2−ゴムの試験及び氷上での摩擦試験
これらの試験では、ジエンエラストマー(NRと、95%を超えるシス−1,4結合の含有量を備えるBRとのブレンド)に基づく2つの組成物(C−1及びC−2とする)が比較され、これらの組成物は、シリカ及びカーボンブラックのブレンドにより強化され、40phrの中空アルミノケイ酸塩微粒子が混合される、又は混合されない。
2つの組成物の配合(表1−様々な製品の含有量は、phrで表されている)、及び硬化(150℃で30分)の前後のそれらの特性が、表1及び2に与えられている;加硫系は硫黄及びスルフェンアミドからなる。
まず第1に、表2の様々な結果を調べると、本発明の組成物(C−2)のゴムの特性は、高含有量の金属酸化物微粒子の存在にもかかわらず、いかなる有意な劣化も示しておらず、これは、当業者にとっては、すでに、予想外の結果をなす。
− 生の状態での加工性(ムーニー塑性)は、ほんの僅かであるが、実際に増加する。
− レオメータによる(硬化)特性は、実質的に変わらない。
− 硬化後、引張り弾性率は類似の値に留まる。ショア硬度は、用いられた微粒子の量の点から見ると、驚くべきことに、ほんの僅かしか増加していない。
− 最後に、ヒステリシス(tan(δ)max)は増加していない。
次いで、2つの組成物に、氷上でのそれらの摩擦係数を測定することからなる実験室での試験を行う。原理は、所定の速度(例えば、5km/h)で氷の走路上を滑る、荷重(例えば、3kg/cm2に等しい)を加えられたゴム組成物のブロックに基づく。試験の前に、試験ブロックの表面は、0.5mmの厚さを削り取ることによって準備され、その後、実際の乾燥地表面(アスファルト)上で、前記の荷重(例えば、3kg/cm2)を加えて繰り返し滑らせることによる一連の摩擦運動を行う。ブロックの運動方向(Fx)及び運動に直交する方向(Fz)に発生する力が測定される。Fx/Fzの比が、氷上での試験試料の摩擦係数を決める。測定中の温度は、−2℃に設定される。
この試験(その原理は、当業者によく知られている、例えば、特許出願EP1052270及びEP1505112を参照)は、トレッドが同じゴム組成物からなるタイヤを装着した車両での走行試験の後で得られると想定される、融氷上でのグリップを、代表的な条件の下で評価することを可能にする。
結果は、表3に示されている。コントロール(組成物C−1)の値(任意に100とした)を超える値は、向上した結果を、すなわち、より短い制動距離に対する性能を示す。本発明による組成物C−2では、アルミノケイ酸塩微粒子を含まないコントロール組成物C−1に対して、氷上での摩擦係数が非常に明確に増加(23%)していることが認められる。
結論として、本発明による組成物は、タイヤ及びそれらのトレッドに、かなり改善された融氷上でのグリップをもたらす。
Figure 0005778171

(1)4.3%の1,2−;2.7%のtrans;97%のシス−1,4−を有するBR(Tg=−104℃);
(2)天然ゴム(しゃく解された(peptised));
(3)シリカ「Zeosil 1115MP」、Rhodia、「HDS」タイプ(BET及びCTAB:約120m2/g);
(4)カップリング剤TESPT(「Si69」、Degussa);
(5)アルミノケイ酸塩(「Fillite 200/7」、Japan Fillite)(粒子の中間値サイズ:約90μm);
(6)グレード ASTM N234(Cabot);
(7)MESオイル(「Catenex SNR」、Shell);
(8)ジフェニルグアニジン(Perkacit DPG、Flexsys);
(9)N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン(Santoflex 6−PPD、Flexsys);
(10)N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「Santocure CBS」、Flexsys)。
Figure 0005778171
Figure 0005778171
本発明は、更に以下の態様であり得る。
〔1〕ジエンエラストマー、30phrを超える液体可塑剤、50から150phrの間の強化用フィラーを少なくとも含むゴム組成物がそのトレッドに含まれるタイヤであって、前記組成物が、2から500μmの間の質量による中央値サイズを有する、少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子を35〜50phrさらに含むことを特徴とするタイヤ。
〔2〕ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、前記〔1〕に記載のタイヤ。
〔3〕前記組成物が、50〜100phrの天然ゴム又は合成ポリイソプレンを含む、前記〔2〕に記載のタイヤ。
〔4〕天然ゴム又は合成ポリイソプレンが、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエンの多くても50phrとのブレンドとして用いられる、前記〔3〕に記載のタイヤ。
〔5〕前記組成物が、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエンを50〜100phr含む、前記〔2〕に記載のタイヤ。
〔6〕ポリブタジエンが、多くても50phrの天然ゴム又は合成ポリイソプレンとのブレンドとして用いられる、前記〔5〕に記載のタイヤ。
〔7〕液体可塑剤の含有量が40phrを超え、好ましくは50〜100phrの範囲内に含まれる、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔8〕液体可塑剤が、ナフテン油、パラフィン油、MES油、TDAE油、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔9〕強化用フィラーが主にカーボンブラックを含み、カーボンブラックの含有量が好ましくは60phrを超える、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔10〕強化用フィラーが主に強化用無機フィラーを含み、強化用無機フィラーの含有量が好ましくは70phrを超える、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔11〕全強化用フィラーの含有量が、60から120の間、好ましくは70から100phrの間である、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔12〕金属酸化物の金属が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、遷移金属、及びこれらの金属の混合物からなる群から選択される、前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のタイヤ。
〔13〕金属酸化物が、アルミニウム酸化物及び/又は水酸化物、ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、アルミニウム・ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、並びにこのような酸化物及び/又は水酸化物の混合物からなる群から選択される、前記〔12〕に記載のタイヤ。
〔14〕金属酸化物が、アルミノケイ酸塩である、前記〔13〕に記載のタイヤ。
〔15〕中空金属酸化物微粒子が、5〜200μmの範囲内に含まれる中央値サイズを有する、前記〔1〕から〔14〕のいずれか1項に記載のタイヤ。

Claims (11)

  1. ジエンエラストマー、30phrを超える液体可塑剤、50から150phrの間の強化用フィラーを少なくとも含むゴム組成物がそのトレッドに含まれる冬季タイヤであって、前記組成物が、2から500μmの間の質量による中央値サイズを有する、中空金属酸化物微粒子を35〜50phrさらに含むことを特徴とする冬季タイヤ。
  2. ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の冬季タイヤ。
  3. 前記組成物が、50〜100phrの天然ゴム又は合成ポリイソプレンを含む、請求項2に記載の冬季タイヤ。
  4. 前記組成物が、90%を超えるシス−1,4結合含有量を有するポリブタジエンを50〜100phr含む、請求項2に記載の冬季タイヤ。
  5. 液体可塑剤の含有量が40prを超える、請求項1から4のいずれか1項に記載の冬季タイヤ。
  6. 液体可塑剤が、ナフテン油、パラフィン油、MES油、TDAE油、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の冬季タイヤ。
  7. 全強化用フィラーの含有量が、60から120phrの間である、請求項1から6のいずれか1項に記載の冬季タイヤ。
  8. 金属酸化物の金属が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、遷移金属、及びこれらの金属の混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の冬季タイヤ。
  9. 金属酸化物が、アルミニウム酸化物及び/又は水酸化物、ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、アルミニウム・ケイ素酸化物及び/又は水酸化物、並びにこのような酸化物及び/又は水酸化物の混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の冬季タイヤ。
  10. 金属酸化物が、アルミノケイ酸塩である、請求項9に記載の冬季タイヤ。
  11. 中空金属酸化物微粒子が、5〜200μmの範囲内に含まれる中央値サイズを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の冬季タイヤ。
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