a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係る透光性物体の厚さ測定装置について説明すると、図1は第1実施形態に係る厚さ測定装置の全体構成を示している。この厚さ測定装置は、測定部10、光切換えスイッチ20、第1光ヘッド30、第2光ヘッド40、光路長可変装置50、データ処理装置60及びコントローラ70を備えている。
測定部10は、レーザ光源11、コリメーティングレンズ12、集光レンズ13、光カプラ14及び受光センサ15を有する。レーザ光源11は、スーパールミネセントダイオード(SLD)又はLEDで構成されていて、レーザ駆動回路81により駆動されて、低コヒーレンスのレーザ光を出射する。この低コヒーレンスのレーザ光は、図6に示すように、2つに分岐されたレーザ光が干渉した際、2つの分岐されたレーザ光の光路長が等しいときにのみ、干渉後のレーザ光の強度が極めて大きくなる特徴を有する。コリメーティングレンズ12は、レーザ光源11からの低コヒーレンスのレーザ光を平行光に変換する。集光レンズ13は、コリメーティングレンズ12からの平行光を集光して光ファイバー16に入射させる。この場合、集光レンズ13の焦点距離は、光ファイバー16内に入射したレーザ光が光ファイバー16内で全反射するように設定されている。光ファイバー16に入射したレーザ光は、光カプラ14に導かれる。
光カプラ14は、光ファイバー16を介して入射されたレーザ光を2つに分岐させ、一方を第1光ヘッド30及び第2光ヘッド40に通じる光ファイバー17に入射させ、他方を光路長可変装置50に通じる光ファイバー18に入射させる。また、光カプラ14は、光ファイバー17を介して第1光ヘッド30及び第2光ヘッド40から導かれる反射光、及び光ファイバー18を介して光路長可変装置50から導かれる反射光を、それぞれ2つに分岐させて、それらの各一方を光ファイバー19を介して受光センサ15に導く。なお、本第1実施形態では、光カプラ14を用いて出射光及び反射光を2つに分岐させているが、出射光及び反射光を断面径の小さな平行光に変換して、ビームスプリッタを用いて2つに分岐させてもよい。
受光センサ15は、受光したレーザ光の強度を表す大きさの信号を出力する。この場合、受光センサ15に入射した2つの反射光は干渉し、レーザ光が低コヒーレンスであるため、透光性物体OBの反射位置から光カプラ14までの距離と、光路長可変装置50の反射位置(固定反射体54)から光カプラ14までの距離とが一致したときのみ強度が大きく変化する。透光性物体OBは本件の測定対象物であり、透光性材料で構成された複数の透明な層からなる表裏面が平行な板状部材である。この透光性物体OBの反射位置は、その表面、裏面及び各層間の境界面であり、反射位置の数は透光性物体OBの層数よりも「1」だけ大きな数である。
光切換えスイッチ20は、後述するコントローラ70により制御されて、光ファイバー17,21間の光接続と、光ファイバー17,22間の光接続とを切換える。
第1光ヘッド30は、コリメーティングレンズ31及び対物レンズ32を有する。コリメーティングレンズ31は、光ファイバー21から出射された低コヒーレンスのレーザ光を平行光に変換して対物レンズ32に導く。対物レンズ32は、コリメーティングレンズ31からの平行光からなるレーザ光を集光して、測定台82上に置かれた透光性物体OBの上面に上方から垂直に照射する。測定台82は、支持部材82aによって支持されるとともに上下に貫通した貫通孔82b1を有する上板部82bを有し、上板部82bの上面に透光性物体OBを載置可能としている。この透光性物体OBを上板部82bの上面に載置した状態では、前述のように、第1光ヘッド30からのレーザ光を透光性物体OBの上面側から照射可能であるとともに、第2光ヘッド40からのレーザ光を透光性物体OBの下面側から照射可能である。第1光ヘッド30によって透光性物体OBに照射された光は、透光性物体OBの表面、裏面及び各層の境界面で反射され、対物レンズ32、コリメーティングレンズ31、光ファイバー21、光切換えスイッチ20及び光ファイバー17を介して光カプラ14に戻る。
第2光ヘッド40は、コリメーティングレンズ41及び対物レンズ42を有する。コリメーティングレンズ41は、光ファイバー22から出射された低コヒーレンスのレーザ光を平行光に変換して対物レンズ42に導く。対物レンズ42は、コリメーティングレンズ41からの平行光からなるレーザ光を集光して、測定台82上に置かれた透光性物体OBの下面に下方から垂直に照射する。第2光ヘッド40によって透光性物体OBに照射された光は、透光性物体OBの表面、裏面及び各層の境界面で反射され、対物レンズ42、コリメーティングレンズ41、光ファイバー22、光切換えスイッチ20及び光ファイバー17を介して光カプラ14に戻る。
光路長可変装置50は、回転により光路長を変化させる円盤状の回転盤51を有する。回転盤51の上面には、4つの回転反射体52が周方向に90度間隔で配置されている。回転反射体52は、反射面を90度の角度をもって交差させた2枚の反射体からそれぞれなり、反射面が回転盤51に対して垂直になるように回転盤51にそれぞれ固定されている。そして、各回転反射体52の各一対の反射面の法線ベクトルの合成ベクトルが回転盤51の回転方向になる向きに設定されている。この回転反射体52の一方の反射体には、光ファイバー18を介して入射されてコリメーティングレンズ53によって平行光に変換された低コヒーレンスのレーザ光が入射されるようになっている。回転反射体52は、前記一方の反射体に入射したレーザ光を反射して他方の反射面に入射させ、他方の反射面では入射したレーザ光を反射して固定反射体54に向けて出射する、すなわち入射したレーザ光を入射したレーザ光とは逆方向に出射する。この固定反射体54に向けて出射されたレーザ光は、固定反射体54の反射面に垂直に入射する。なお、本実施形態においては、4つの回転反射体52を設けるようにしたが、コリメーティングレンズ53から回転反射体52に入射されたレーザ光が、他の回転反射体52によって遮られることなく、再びコリメーティングレンズ53に入射される構成であれば、5つ以上の回転反射体52を設けてもよく、さらには3つ以下の回転反射体52を設けるようにしてもよい。
固定反射体54は、入射したレーザ光を反射して、回転反射体52の他方の反射面に入射させる。回転反射体52は、その他方の反射面で入射したレーザ光を反射してその一方の反射面に入射させ、その一方の反射面でレーザ光を反射して、前記レーザ光の出射された光ファイバー18にコリメーティングレンズ53を介して入射させる。すなわち、この場合も、入射したレーザ光を入射したレーザ光とは逆方向に出射する。
回転盤51は、スピンドルモータ55によって回転駆動される。スピンドルモータ55は、図1では回転盤51の図示下方に示しているが、実際には回転盤51の下面の下方に配置されており、回転盤51の中心位置にて下面から垂直下方に延設された回転軸55aを介して回転盤51を水平面内にて回転させる。スピンドルモータ55内には、同モータ55すなわち回転盤51の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ55bが組み込まれている。この回転検出信号は、回転盤51の回転位置が一つの基準回転位置(すなわち4つの回転反射体52のうちの1つの回転反射体が時計における12時の位置にある状態)に来るごとに発生されるインデックス信号Indexと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すとともに互いにπ/2だけ位相のずれた1対のパルス列信号φA,φBとからなる。
このスピンドルモータ55には、スピンドルモータ制御回路56及びカウント回路57が接続されている。スピンドルモータ制御回路56は、コントローラ70の指令により作動開始し、エンコーダ55bからのパルス列信号φA,φBに基づいてスピンドルモータ55を一定回転速度で回転制御する。
カウント回路57は、エンコーダ55bから出力されるインデックス信号Index及び1対のパルス列信号φA,φBを入力し、インデックス信号Indexの入力によりカウント値を「0」に初期設定するとともに、パルス列信号φA,φBのパルス数をカウントしてカウント値を出力する。すなわち、インデックス信号Indexが入力する回転位置を「0」とした回転角度をカウント値で表してデータ処理装置60に出力する。なお、カウント値が「0」である回転盤51の回転位置は、4つの回転反射体52のうちの1つの回転反射体が時計における12時の位置にある状態である。
データ処理装置60は、光路長変化量計算回路61、増幅回路62、A/D変換回路63及びピーク間光路長計算装置64を備えている。光路長変化量計算回路61は、カウント回路57からカウント値(回転角度)を入力して、予め記憶してある基準角度に対する回転角度と、光路長の変化量(基準角度における光路長からの光路長の変化量)との関係式又は関数テーブルを用いて光路長の変化量を計算してピーク間光路長計算装置64に出力する。なお、回転反射体52が光路長可変装置50に入射されたレーザ光を反射しない回転位置にあって、光路長可変装置50からの反射光が光カプラ14に戻らない状態では、光路長変化量計算回路61は、光路長の変化量を表すデータを出力せず、NGデータを出力する。
ここで、この回転角度と光路長の変化量との関係について説明しておく。光路長の変化量は、回転角度と、回転中心から回転反射体52の2つの反射面が成す角度の2等分線と半径方向が直角に交差する点までの距離(半径値)と、前記交差する点から回転反射体52の2つの反射面の交点までの距離とから簡単な式で計算できる。回転角度以外は定数であるので、回転角度を取得すれば光路長の変化量を計算することができる。この計算式について、以下に説明する。
図7(A)〜(C)に示すように、回転反射体52を横方向(X方向)と縦方向(Y方向)に移動する場合と、回転反射体52の2つの反射面の交点を回転中心にして回転する場合とを考える。図7(A)に示すように、回転反射体52をX方向にAだけ移動した場合、左方向を正とすると、X方向の光路長は1回目の反射前に−aだけ変化し、2回目の反射後に−aだけ変化する。そして、図を見て分かるように、A=aであるために、光の光路長は−2Aだけ変化するが、回転反射体52で反射した後も同様に光路長は−2Aだけ変化するため、光路長は合計−4Aだけ変化する。一方、Y方向の光路長は、図を見て分かるように変化しない。よって、回転反射体52をX方向にAだけ移動した場合、光路長の変化量は−4Aである。
図7(B)に示すように、回転反射体52をY方向にBだけ移動した場合、下方向を正とすると、X方向の光路長は−2bだけ変化し、Y方向の光路長は+cだけ変化する。そして、回転反射体52のそれぞれの反射面は、XY方向に対して45度の角度にあるので、b=Bであり、c=2Bである。よって、X方向の光路長の変化量とY方向の光路長の変化量を加算すると「0」になり、回転反射体52をY方向に移動しても、光路長の変化量は「0」である。
図7(C)に示すように、回転反射体52を2つの反射面の交点を回転中心にしてθ度回転した場合、時計回りを正とすると、第1の反射前の光路長の変化量d、第1の反射後から第2の反射前の光路長の変化量e、及び第2の反射後の光路長の変化量fは次のようになる。
第1の反射前の光路長の変化量:d=α−α・tan(45°−θ)
第1の反射後から第2の反射前の光路長の変化量:e=(2α/cos2θ)−2α
第2の反射後の光路長変化:f=α−α・tan(45°+θ)
これらの光路長の変化量d,e,fを加算して整理すると、「0」になる。よって、回転反射体52が2つの反射面の交点を回転中心にして回転しても光路長の変化量は「0」である。よって、回転盤51にある回転反射体52が回転によりどの方向を向こうとも、光路長の変化量は回転反射体52の2つの反射面の交点のX方向への移動量のみから求めることができる。
図7(A)〜(C)の前記説明で、光路長の変化量は、回転反射体52の2つの反射面の交点(頂点)のX方向移動距離の4倍であることが分かった。次に、図7(D)を用いて、回転反射体52の2つの反射面の2等分線の方向がX方向になる回転位置(図の第1状態の位置すなわち時計で表すと12時の位置)を0度とし、その回転位置からθ回転したとき(図の第2状態の位置)の光路長の変化量を求める。回転反射体52の2つの反射面の2等分線とこの2等分線に垂直で回転中心を通る線の交点をBとし、交点Bから回転中心までの距離を半径rとする。交点Bから交点Aまでの距離をdとする。回転角度θのときのB点のX方向移動距離をaとする。
回転角度θのときの回転反射体52は、X方向にaだけ移動し、Y方向に移動して交点Bが半径rの円周に一致し、交点Bを回転中心にして回転角度θだけ回転したものとみなすことができる。回転反射体52が、X方向にaだけ移動し、Y方向に移動して交点Bが半径rの円周に一致したときと、この後、交点Bを回転中心にして回転角度θだけ回転したときの交点AのX方向の移動距離をcとする。回転反射体52の交点AのX方向の移動距離は図のように「a+c」である。そして、図から明らかなように、a=r・sinθ、c=(d−d・cosθ)である。したがって、光路長の変化量Dは下記数1により表される。
なお、rはdに比べて大きいので、光路長の変化量Dはr・sinθでほとんど定まる。r・sinθを微分すると、r・cosθとなり、−10度乃至10度の範囲内では、cosθは0.985〜1の間の値をとる。よって、光路長は回転角度θに対してほぼ直線的に変化する。そして、この計算式による光路長の変化量Dを、所定の基準角度から回転角度θの変化に応じて変化し、前記基準角度における光路長からの光路長の変化量として用いることができる。
しかし、回転盤51には組立誤差があるので、実際には上記計算式から計算するものではなく、透光性物体OBの位置に光軸方向に高精度で反射体を移動できる装置を設けて、所定の基準角度に対する回転角度θと受光信号強度がピークになるときの移動距離との関係を求めて、所定の基準角度に対する回転角度θと光路長の変化量の関係を求めて予め記憶しておくことが望ましい。なお、本第1実施形態においては、前記所定の基準角度として、例えば4つの回転反射体52にそれぞれ対応した回転盤51の4つの回転角が定められる。
再び図1の説明に戻ると、増幅回路62は受光センサ15からの受光信号を増幅してA/D変換回路63に供給する。A/D変換回路63は、前記増幅した受光センサ15からの受光信号を入力し、予め設定された所定の短い時間間隔で受光信号の瞬時値をディジタルデータに変換してピーク間光路長計算装置64に出力する。ピーク間光路長計算装置64は、CPU、ROM、RAM及びその他の記憶装置などからなり、コントローラ70からの指令により記憶装置に記憶されている図4のデータ取得プログラム及び図5のピーク間光路長計算プログラムを実行する。これらのプログラムの実行により、ピーク間光路長計算装置64は、光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量と、A/D変換回路63からの受光信号の瞬時値とを対にして入力して、信号強度がピーク点になる光路長の変化量の値を取得して、基準ピーク点に対する複数のピーク点の光路長の変化量の差であるピーク間光路長を計算して出力する。
コントローラ70は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置などからなり、記憶装置に記憶されている図2のメインプログラム(図3の厚さ計算ルーチン)を実行して、各回路の作動を制御するとともに、透光性物体OBの各層の厚さを計算する。このコントローラ70には、入力装置71及び表示装置72が接続されている。
次に、上記のように構成した第1実施形態に係る透光性物体の厚さ測定装置の動作を説明する。作業者は、測定対象物である透光性物体OBをその表面を上方に向けて測定台82の上面に載置して、入力装置71を操作し、この透光性物体の厚さ測定装置の作動開始を指示する。この作動開始の指示により、コントローラ70は、図2のステップS10にて、メインプログラムの実行を開始し、ステップS12にてスピンドルモータ制御回路56に回転開始を指示する。
この回転開始の指示により、スピンドルモータ制御回路56はスピンドルモータ55を回転させ始める。これにより、回転盤51が図1の矢印方向に回転し始め、回転反射体52も前記矢印方向に回転し始める。このスピンドルモータ55の回転により、エンコーダ55bは、パルス列信号φA,φBをスピンドルモータ制御回路56及びカウント回路57に出力し始める。スピンドルモータ制御回路56は、このパルス列信号φA,φBを用いてスピンドルモータ55を一定回転速度で回転させ、回転盤51及び回転反射体52も一定回転速度で回転する。また、エンコーダ55bは、インデックス信号Indexもカウント回路57に出力し始める。カウント回路57は回転角度(0〜360度)を表す信号を光路長変化量計算回路61に出力し始める。
前記ステップS12の処理後、コントローラ70は、ステップS14にてレーザ駆動回路81にレーザ光の照射開始を指示し、ステップS16にて光切換えスイッチ20に対して表面側(第1光ヘッド30側)への切換えを指示する。この切換え指示により、光切換えスイッチ20は、光ファイバー17と光ファイバー21とを光接続するように切換える。なお、光切換えスイッチ20は、前記ステップS16による切換え指示前に光ファイバー17と光ファイバー21とを光接続している場合には、前記切換え制御は実質的には行われない。前記照射開始の指示により、レーザ駆動回路81は、レーザ光源11を駆動制御して、レーザ光源11に低コヒーレンスのレーザ光を出射させる。レーザ光源11から出射された低コヒーレンスのレーザ光は、コリメーティングレンズ12によって平行光に変換され、集光レンズ13により集光されて光ファイバー16に入射され、光ファイバー16を介して光カプラ14に導かれる。光カプラ14は、光ファイバー16を介して入射されたレーザ光を2つに分岐させ、一方を光ファイバー17に入射させ、他方を光ファイバー18に入射させる。
光ファイバー17に入射されたレーザ光は、光ファイバー17内を通って光切換えスイッチ20に導かれる。光切換えスイッチ20は光ファイバー17を光ファイバー21に光接続させているので、光切換えスイッチ20に導かれたレーザ光は第1光ヘッド30に導かれる。第1光ヘッド30に導かれたレーザ光は、コリメーティングレンズ31により平行光に変換され、対物レンズ32により透光性物体OBの位置に集光されて透光性物体OBに垂直に照射される。透光性物体OBに出射されたレーザ光は、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面で反射される。この透光性物体OBにおけるレーザ光の反射においては、図14(A)に示すように、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面における正規反射(図示X1〜X4)に加えて、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面における多重反射が生じる(図示X5〜X7)。このように透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面で反射されたレーザ光は、第1光ヘッド30内の対物レンズ32及びコリメーティングレンズ31を介して光ファイバー21に入力されて、光切換えスイッチ20及び光ファイバー17を介して光カプラ14に導かれる。光カプラ14は、これらの反射されたレーザ光を分岐して、その一方を光ファイバー19を介して受光センサ15に導く。
一方、光ファイバー18に入射されたレーザ光は、光ファイバー18内を通って光路長可変装置50に導かれる。光路長可変装置50においては、光ファイバー18を介して導かれたレーザ光はコリメーティングレンズ53で平行光に変換されて、回転反射体52に入射する。回転反射体52は、入射されたレーザ光を一方の反射面で反射して他方の反射面に導く。他方の反射面で反射されたレーザ光は、固定反射体54で反射されて、入射レーザ光と同じ光路を逆戻りして、コリメーティングレンズ53を介して光ファイバー18内に戻されて、光カプラ14内に導かれる。光カプラ14は、この反射されたレーザ光を分岐して、その一方を光ファイバー19を介して受光センサ15に導く。
光ファイバー19には前述のように透光性物体OBからの反射されたレーザ光も入射されており、光路長可変装置50からの反射されたレーザ光と、透光性物体OBからの反射されたレーザ光とは互いに干渉し合う。そして、干渉し合った前記2つのレーザ光が受光センサ15に導かれる。この場合、透光性物体OBにて反射されて光カプラ14に戻ったレーザ光の光路長と、光路長可変装置50の固定反射体54にて反射されて光カプラ14に戻ったレーザ光の光路長とが等しい場合に、受光センサ15で受光されるレーザ光の強度がピーク値となる(図8,14(B)参照)。なお、このレーザ光の強度のピーク値は、前述した正規反射によるものと、多重反射によるものとを含み、ピーク値の数は透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面の合計数よりも大きくなる。受光センサ15は、受光したレーザ光の強度を表す受光信号をデータ処理装置60の増幅回路62に出力する。
前記ステップS16の処理後、コントローラ70は、ステップS18にて、ピーク間光路長計算装置64に作動開始を指示する。その後、コントローラ70は、ステップS20にてピーク間光路長計算装置64から「異常」を入力したかを判定し、ステップS22にてピーク間光路長計算装置64からピーク間光路長Be(m)を入力したかを判定する。前記「異常」及びピーク間光路長Be(m)を入力していない状態では、コントローラ70は、ステップS20,S22にてそれぞれ「No」と判定し続けて、ステップS20,S22からなる判定処理を繰返し実行し続ける。
前記コントローラ70からの作動開始の指示により、ピーク間光路長計算装置64は、図4のデータ取得プログラムの実行をステップS100にて開始する。このプログラムの実行開始後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS102にて、光路長変化の回数すなわち光路長の変化量の測定回数を表す変数nを「1」に初期設定する。次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS104にて、A/D変換回路63によるA/D変換動作を開始させる。この場合、受光センサ15によって検出されたレーザ光の強度を表す受光信号が増幅回路62を介してA/D変換回路63に供給されており、A/D変換回路63は、所定の短時間ごとに前記受光信号の瞬時値をA/D変換してピーク間光路長計算装置64に供給し始める。
前記ステップS104の処理後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS106にて、光路長変化量計算回路61の作動を開始させる。光路長変化量計算回路61は、光路長可変装置50内のカウント回路57からのカウント値(回転角度)を入力して、予め記憶してある基準角度に対する回転角度と、光路長の変化量(基準角度における光路長からの光路長の変化量)との関係式又は関数テーブルを用いて光路長の変化量を計算してピーク間光路長計算装置64に出力し始める。
前記ステップS106の処理後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS108にて光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量を取込み、ステップS110にて光路長変化量計算回路61から入力したデータはNGデータであるかを判定する。すなわち、ピーク間光路長計算装置64が光路長の変化量を光路長変化量計算回路61から取り込めない状態、すなわち回転反射体52が光路長可変装置50に入射されたレーザ光を反射しない回転位置にあって、光路長可変装置50からの反射光が光カプラ14に戻らない状態では、光路長変化量計算回路61は、光路長の変化量を表すデータを出力せず、NGデータを出力するので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS110において、光路長変化量計算回路61から光路長の変化量のデータが取込まれていると、「No」と判定する。そして、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS112に進み、ステップS112にて取込んだデータを消去して、ステップS108に戻る。これにより、光路長変化量計算回路61から光路長の変化量のデータが取込まれていると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS108〜S112からなる循環処理を繰り返し実行し続ける。
この循環処理中、光路長変化量計算回路61から入力したデータがNGデータになると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS110にて「Yes」と判定してステップS114に進み、ステップS114にて再び光路長の変化量を取込み、ステップS116にて光路長の変化量が取込まれ始めたかを判定する。光路長変化量計算回路61はNGデータを出力しているので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS116にて「No」と判定してステップS118に進み、ステップS118にて取込んだデータを消去してステップS114に戻る。これにより、光路長変化量計算回路61からNGデータが取込まれていると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS114〜S118からなる循環処理を繰返し実行し続ける。この循環処理中、光路長変化量計算回路61から光路長の変化量のデータが取込まれ始めると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS116にて「Yes」と判定してステップS120に進み、ステップS120にて、受光センサ15によって検出されたレーザ光の強度を表す受光信号を表すデータをA/D変換回路63から取込んで記憶するとともに、光路長の変化量を表すデータを光路長変化量計算回路61から取込んで記憶する処理を実行し始める。このデータの記憶処理においては、A/D変換回路63からのデータの取込み時、すなわち所定の短時間ごとにA/D変換されたレーザ光の強度を表すデータをA/D変換回路63から取込んだタイミングに、同じタイミングにおける光路長の変化量を表すデータを光路長変化量計算回路61から取込んで、2つのデータを対にして順次記憶していく。ステップS108〜S118の処理を行うことにより、光路長変化量計算回路61がデータを出力開始した時点の光路長可変装置50の回転盤51の回転角度がどのような角度であっても、光路長変化量計算回路61が出力するデータがNGデータから光路長の変化量のデータになるタイミングでデータの記憶が開始される。なお、ステップS112の処理は、後述する再測定が指示された場合に、ステップS120の処理によって取込んで記憶したデータをクリアするための処理でもある。
次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS122にて、光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量を表すデータの取込みが終了したか、すなわち光路長変化量計算回路61からNGデータが出力され始めたかを判定する。光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量を表すデータを取込み続けていれば、ピーク間光路長計算装置64はステップS122にて「No」と判定し続ける。したがって、この場合には、前記ステップS120のデータの取込み及び記憶処理が続行されて、同一タイミングにおけるレーザ光の強度を表すデータ及び光路長の変化量を表すデータを対にして順次記憶し続ける。一方、回転反射体52の回転が進み、回転反射体52が光路長可変装置50に入射されたレーザ光を反射しない回転位置になって、光路長可変装置50からの反射光が光カプラ14に戻らなくなると、光路長変化量計算回路61は、光路長の変化量を表すデータを出力せず、NGデータを出力するので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS122にて「Yes」と判定してステップS124に進む。この状態では、回転反射体52の回転により光路長が連続して変化した1回の光路長の変化における、レーザ光の強度を表すデータ及び光路長の変化量を表すデータを対にした1組のデータ群が記憶されている。
ステップS124においては、ピーク間光路長計算装置64は、変数nが「5」であるかを判定する。この場合、変数nは前記ステップS102の処理によって「1」に設定されているので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS124にて「No」と判定し、ステップS126にて前記レーザ光の強度を表すデータ及び光路長の変化量を表すデータの記憶領域を変更する。次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS128にて、前記ステップS116の場合と同様に、光路長の変化量が取込まれ始めたかを判定する。光路長の変化量が取込まれ始めなければ、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS128にて「No」と判定し続ける。この場合も、ステップS120によるデータの取込み及び記憶処理は有効であるが、光路長変化量計算回路61からは光路長の変化量を表すデータが出力されず、NGデータが出力されるので、取込んだデータは後述するピーク点光路長の抽出には用いられない。
一方、光路長の変化量が光路長変化量計算回路61から取込まれ始めると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS128にて「Yes」と判定し、ステップS130にて変数nに「1」を加算して、前述したステップS122に戻り、ステップS122にて光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量の取込みが終了するまで「No」と判定し続ける。そして、光路長の変化量の取込みが終了すると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS122にて「Yes」と判定して、ステップS124にて変数nが「5」であるかを判定する。変数nが「5」に達しない状態では、前述したステップS126〜S130,S122,S124からなる循環処理が実行され続ける。この循環処理中、1回の光路長の変化におけるレーザ光の強度を表すデータ及び光路長の変化量を表すデータを対にした1組のデータ群が順次記憶される。そして、変数nが「5」になり、5組のデータ群が記憶されると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS124にて「Yes」と判定し、ステップS132にて、A/D変換回路63からのレーザ光の強度を表すデータと、光路長変化量計算回路61からの光路長の変化量を表すデータとを取込んで記憶する処理の実行を終了する。すなわち、前記ステップS120によって開始されたデータの取込み及び記憶の処理を終了する。
次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS134にて再測定が指定されたかを判定し、ステップS136にて測定終了が指定されたかを判定する。この再測定の指定及び測定終了の指定は、ピーク間光路長計算装置64において、このデータ取得プログラムと同時に実行されている図5のピーク間光路長計算プログラムによってなされる。この時点で、再測定の指定及び測定終了の指定もなされていなければ、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS134,S136にてそれぞれ「No」と判定して、ステップS134,S136からなる循環処理を実行し続ける。
次に、ピーク間光路長検査プログラムについて説明する。ピーク間光路長計算プログラムの実行は、図5のステップS200にて開始され、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS202にてピーク間光路長の測定回数を示す変数sを「1」に設定し、ステップS204にて、前述した図4のステップS120の処理によって記憶され始めたレーザ光の強度を表すデータと光路長の変化量を表すデータとからなる5組のデータ群のうちのいずれかの群を指定するための変数kを「1」に設定する。次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS206にて、新たな1組のデータ群が存在するか、すなわち前記データ取得プログラムの実行による新たな1組のデータ群の記憶が終了しているかを判定する。この新たな1組のデータ群は、ステップS206の最初の判定処理においては5組のデータ群のうちの最初の1組目のデータ群である。この場合、前記新たな1組のデータ群が存在しなければ、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS206にて「No」と判定し続けて、プログラムの進行を止める。一方、図4のデータ取得プログラムによって新たな1組のデータ群が既に存在すれば、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS206にて「Yes」と判定して、ステップS208にて、1組目のデータ群の中からレーザ光の強度のピーク点における光路長の変化量(以下、ピーク点光路長という)P(1)〜P(max)を抽出する。
このピーク点光路長P(1)〜P(max)の抽出処理においては、1組目のデータ群中のレーザ光の強度と光路長の変化量を表す複数のデータ対により表されるレーザ光の強度曲線を想定して、強度曲線における複数のピーク点を検出する。その後、複数のピーク点にそれぞれ対応したレーザ光の強度を表す複数のデータと対に記憶されている光路長の変化量を表すデータをピーク点光路長P(1)〜P(max)とする(図8(A)参照)。この場合、ピーク点光路長P(1)〜P(max)は複数のピーク点に対応した光路長の変化量を短い順に並べたものであり、値maxは検出されるピーク点の数に等しく、例えば図8(A)及び図14(B)に示す例では「7」である。
前記ステップS208の処理後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS210にて、最も短いピーク点光路長P(1)から2番目以降のピーク点光路長P(2)〜P(max)までの距離をそれぞれピーク間光路長Be(m,k)として、下記数2の演算の実行により計算する。なお、この場合、透光性物体OBの表面側からレーザ光を照射しているので、ピーク点光路長P(1)は透光性物体OBの表面に関するピーク点光路長である。
前記変数mは、「1」から「max−1」まで「1」ずつ変化する値であって、2番目以降のピーク点に関するピーク間光路長を順次指定する変数である。値maxは前述したピーク点の数に等しい。このステップS210の処理により、前記1組目のデータ群について、最初のピーク点から2番目以降のピーク点までの光路長(ピーク間光路長)Be(m,k)(m=1〜max−1)が計算される(図8(A)参照)。
前記ステップS210の処理後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS212にて変数kが「5」であるかを判定する。この場合、変数kは「1」であり、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS212にて「No」と判定して、ステップS214にて変数kに「1」を加算して、前述したステップS206の判定処理を実行する。この場合、前記ステップS206の判定処理における新たな1組のデータ群とは、5組のデータ群のうちの2組目のデータ群である。そして、2組目のデータ群が未だ存在していなければ、ステップS206の「No」との判定処理を繰り返し実行する。一方、2組目のデータ群が存在していれば、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS206にて「Yes」と判定し、ステップS208,S210の処理により、2組目のデータ群に対して、最初のピーク点から2番目以降のピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=2)を計算する。
その後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS212にて再び変数kが「5」であるかを判定する。そして、ピーク間光路長計算装置64は、変数kが「5」になるまで、ステップS212にて「No」と判定し続けて、ステップS214の処理による変数kの更新後、ステップS204〜S214の循環処理を繰返す。このステップS204〜S214の循環処理により、5番目のデータ群に関するピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=5)の計算が終了すると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS212にて「Yes」と判定して、ステップS216以降に進む。この状態では、変数k(1〜5)によって指定される5組のピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)が計算されている。
ステップS216においては、ピーク間光路長計算装置64は、変数m(1〜5)ごとに、5つのピーク間光路長Be(m,k)に含まれる2つのピーク間光路長Be(m,k)間の差Devをそれぞれ計算する。具体的には、変数mを「1」〜値(max−1)まで順次「1」ずつ換えながら、変数mによって指定される5つのピーク間光路長Be(m,1)、Be(m,2),Be(m,3)、Be(m,4),Be(m,5)の各2つずつの組み合わせの差の絶対値|Be(m,1)−Be(m,2)|,|Be(m,1)−Be(m,3)|,|Be(m,1)−Be(m,4)|,|Be(m,1)−Be(m,5)|,|Be(m,2)−Be(m,3)|,|Be(m,2)−Be(m,4)|,|Be(m,2)−Be(m,5)|,|Be(m,3)−Be(m,4)|,|Be(m,3)−Be(m,5)|,|Be(m,4)−Be(m,5)|(全部で10通り)をそれぞれ計算する。したがって、各組毎のピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1)の数(max−1)に、「5」を乗算した数(本実施形態においては、10×5個)の差Devが計算される。
次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS218にて、前記計算した全ての差Devの中から最大値を抽出して、抽出した最大値が予め決められた小さな許容値以下であるかを判定する。この場合、ピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われていれば、変数m(1〜max−1)によって指定される5つのピーク間光路長Be(m,k)(k=1〜5)はそれぞれほぼ等しい値であるので、前記全ての差Devはほぼ「0」であるはずである。
したがって、ピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われていて、前記最大の差Devが許容値以下であれば、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS218にて「Yes」と判定して、ステップS220に進む。ステップS220においては、ピーク間光路長計算装置64は、変数mを「1」〜値(max−1)まで順次「1」ずつ換えながら、変数mによって指定される5つのピーク間光路長Be(m,k)(k=1〜5)の平均値を、変数m(m=1〜max−1)にそれぞれ対応したピーク間光路長Be(m)として計算する。次に、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS222にて、前記計算したピーク間光路長Be(m)をコントローラ70に出力し、ステップS232にて測定終了を指定して、ステップS234にてこのピーク間光路長計算プログラムの実行を終了する。
そして、この場合には、前述した図4のデータ取得プログラムのステップS136において、ピーク間光路長計算装置64は「Yes」と判定して、ステップS138以降に進む。ピーク間光路長計算装置64は、ステップS138にてA/D変換回路63にその作動停止を指示し、ステップS140にて光路長変化量計算回路61にその作動停止を指示する。これらの作動停止の指示により、A/D変換回路63はA/D変換動作を停止し、光路長変化量計算回路61は光路長の変化量の計算動作を停止する。前記ステップS140の処理後、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS142にてデータ取得プログラムの実行を終了する。これにより、この場合には、データ処理装置60の動作が停止することになる。
一方、ピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われず、前記図5のステップS218の判定処理において「No」と判定されると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS224にて変数sが「3」であるかを判定する。この場合、変数sは前記ステップS202の処理によって「1」に設定されているので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS224にて「No」と判定し、ステップS226にて変数sに「1」を加算して変数sを「2」に変更した後、ステップS228にて再測定を指定して、ステップS204に戻る。そして、ピーク間光路長計算装置64は、前述のように、ステップS204にて変数kを「1」に設定し、ステップS206にて新たなデータ群が存在するかを判定する。そして、この場合、新たなデータ群が存在しないので、ピーク間光路長計算装置64は、新たなデータ群の存在が確認されるまでステップS206にて「No」と判定し続ける。
一方、この状態では、図4のデータ取得プログラムにおいては、ステップS134、S136における「No」との判定のもとに、ステップS134,S136の判定処理が繰り返し実行されている。前述のように、図5のステップS228の処理により再測定が指定されると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS134にて「Yes」と判定して、前述したステップS102〜S132の処理を実行する。そして、このステップS102〜S132の処理により、新たな5組のデータ群が取得されると、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS132にてデータの取込みを終了して、再びステップS134,S136の判定処理を繰り返し実行し始める。
また、このとき、ピーク間光路長計算装置64は、図5のピーク間光路長計算プログラムにおいて、新たなデータ群の存在を確認すると、前述したステップS206〜S214からなる処理により、5組のピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の計算を行っている。そして、前記5組のデータ群の取得終了後、5組のピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の計算が終了すると、ピーク間光路長計算装置64は、前述したように、ステップS216の変数mごとのピーク間光路長Be(m,k)の差Devの計算後、ステップS218にて再び全ての差Devの最大値が許容値以下であるかを判定する。そして、ピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われ、全ての差Devの最大値が許容値以下になれば、前述のように、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS220,S222,S232の処理後、ステップS234にてピーク間光路長計算プログラムの実行を終了する。一方、前記ステップS232の測定終了の指定により、ピーク間光路長計算装置64は、前述のように、図4のステップS138,S140の処理後、ステップS142にてデータ取得プログラムの実行を終了するとともに、ステップS138,S140の処理によりデータ処理装置60の作動も停止させる。
しかし、今回も、ピーク間光路長Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われず、全ての差Devの最大値が許容値以下でなければ、ピーク間光路長計算装置64は再びステップS218にて「No」と判定して、ステップS224に進む。この場合、変数sは「2」であるので、ピーク間光路長計算装置64はステップS224にて再び「No」と判定して、ステップS226にて変数sに「1」を加算して変数sを「3」に変更して、ステップS228にて再測定を指定する。この再測定の指定により、ピーク間光路長計算装置64は、図4のデータ取得プログラムのステップS102〜S132の処理により再び5組のデータ群を取得する。
そして、ピーク間光路長計算装置64は、図5のピーク間光路長計算プログラムのステップS204〜S216の処理により、変数mごとのピーク間光路長Be(m,k)の差Devを再び計算する。その結果、全ての差Devの最大値が許容値以下であれば、前述のように、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS218にて「Yes」と判定して、前述のように、図5のピーク間光路長計算プログラムの実行を停止し、図4のデータ取得プログラムの実行も停止させるとともに、データ処理装置60の動作を停止させる。
これとは逆に、全ての差Devの最大値が許容値以下でなければ、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS218にて「No」と判定して、ステップS224に進む。この場合、変数sは「3」であるので、ピーク間光路長計算装置64は、ステップS224にて「Yes」と判定し、ステップS230にて「異常」をコントローラ70に出力する。前記ステップS230の処理後、ピーク間光路長計算装置64は前述したステップS232にて測定終了を指定して、ステップS234にてピーク間光路長計算プログラムの実行を終了する。そして、この場合にも、図4のデータ取得プログラムにおいては、ピーク間光路長計算装置64はステップS136にて「Yes」と判定して、前述したように、ステップS138,S140の処理によりデータ処理装置60の作動も停止させる。なお、この場合には、ステップS220,S222の処理が行われないので、ピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)は計算されず、コントローラ70にもピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)は出力されない。
再び、図2のメインプログラムの説明に戻ると、コントローラ70は、ステップS20,S22の循環処理中、ピーク間光路長計算装置64から「異常」を入力すると、ステップS20にて「Yes」と判定して、詳しくは後述するステップS38に進む。一方、ピーク間光路長計算装置64からピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)を入力すると、コントローラ70は、ステップS22にて「Yes」と判定して、ステップS24にて、入力したピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)に表面からのレーザ光の照射によるデータであることを表す「1」を付加して、ピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max−1)とする。
前記ステップS24の処理後、コントローラ70は、ステップS26にて光切換えスイッチ20に対して裏面側(第2光ヘッド40側)に切換えを指示する。この切換え指示により、光切換えスイッチ20は、光ファイバー17を光ファイバー22に接続するように切換える。これにより、光ファイバー17を介して光切換えスイッチ20に導かれたレーザ光は、第2光ヘッド40に導かれる。第2光ヘッド40に導かれたレーザ光は、コリメーティングレンズ41により平行光に変換され、対物レンズ42により透光性物体OB位置に集光されて透光性物体OBにその裏面側から照射される。この場合、透光性物体OBに照射されたレーザ光は、透光性物体OBの裏面、各層の境界面及び表面で反射される。この透光性物体OBにおけるレーザ光の反射においても、透光性物体OBの裏面、各層の境界面及び表面における正規反射に加えて、透光性物体OBの裏面、各層の境界面及び表面における多重反射が生じる。このように透光性物体OBの裏面、各層の境界面及び表面で反射されたレーザ光は、第2光ヘッド40内の対物レンズ42及びコリメーティングレンズ41を介して光ファイバー22に入力されて、光切換えスイッチ20及び光ファイバー17を介して光カプラ14に導かれる。光カプラ14は、これらの反射されたレーザ光を分岐して、その一方を光ファイバー19を介して受光センサ15に導く。
また、前述したレーザ光を透光性物体OBにその表面から照射した場合と同様に、光カプラ14によって光ファイバー18に入射されたレーザ光は、光路長可変装置50において反射されて光ファイバー18内に戻されて、光カプラ14内に導かれる。そして、光カプラ14は、この反射されたレーザ光を分岐して、その一方を光ファイバー19を介して受光センサ15に導く。受光センサ15は、受光したレーザ光の強度を表す受光信号をデータ処理装置60の増幅回路62に出力する。この場合も、光路長可変装置50からの反射されたレーザ光と、透光性物体OBからの反射されたレーザ光とは互いに干渉し合う。そして、干渉し合った前記2つのレーザ光が受光センサ15に導かれるので、前記2つのレーザ光の光路長が等しい場合に、受光センサ15で受光されるレーザ光の強度がピーク値となる。
前記ステップS26の処理後、コントローラ70は、前述したステップS18〜S22の処理と同様なステップS28〜S32の処理により、ピーク間光路長計算装置64に作動開始を指示し、ピーク間光路長計算装置64から「異常」を入力したかを判定するとともに、ピーク間光路長計算装置64からピーク間光路長Be(m)を入力したかを判定する。そして、前記「異常」及びピーク間光路長Be(m)を入力していない状態では、コントローラ70は、ステップS30,S32にてそれぞれ「No」と判定し続けて、ステップS30,S32からなる判定処理を繰返し実行し続ける。
前記コントローラ70からの作動開始の指示により、ピーク間光路長計算装置64は、前述した図4のデータ取得プログラム及び図5のピーク間光路長計算プログラムを実行する。これらのプログラムの実行により、前述のように、ピーク間光路長計算装置64からコントローラ70には、「異常」又はピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)が入力される。この場合のピーク間光路長Be(m)は、透光性物体OBの裏面側からレーザ光を照射した場合の測定値である。
そして、「異常」が入力されると、コントローラ70は、ステップS30にて「Yes」と判定して、詳しくは後述するステップS38に進む。一方、ピーク間光路長計算装置64からピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)を入力すると、コントローラ70は、ステップS32にて「Yes」と判定して、ステップS34にて、入力したピーク間光路長Be(m)(m=1〜max−1)に裏面からのレーザ光の照射によるデータであることを表す「2」を付加して、ピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max−1)とする。
前記ステップS34の処理後、コントローラ70は、ステップS36にて厚さ計算ルーチンの実行を開始する。この厚さ計算ルーチンは、透光性物体OBにその裏面側からレーザ光を照射することによって得たピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max)を、複数のピーク点の配列順を逆にした、すなわち複数のピーク点の配列順を表面側から観測した場合の配列順にしたピーク間光路長Be’(m,2)(m=1〜max)(以下、反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max)という)に変換して、この変換した反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max)と、透光性物体OBにその表面側からレーザ光を照射することによって得たピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max)とが一致するものを層の厚さBe(n)(n=1〜層数)として採用するものである。これは、次の理由に基づく。透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面での正規反射によるピーク間光路長に関しては、透光性物体OBにその表面側からレーザ光を照射した場合の測定ピーク間光路長と、透光性物体OBにその裏面側からレーザ光を照射した場合の測定ピーク間光路長を、複数のピーク位置の配列順が逆になるように変換した反転ピーク間光路長とが一致するはずである。これに対して、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面での多重反射によるピーク間光路長に関しては、透光性物体OBにその表面側からレーザ光を照射した場合の測定ピーク間光路長と、透光性物体OBにその裏面側からレーザ光を照射した場合の測定ピーク間光路長を、複数のピーク点の配列順が逆になるように変換した反転ピーク間光路長とが、通常一致しない。なお、この厚さ計算ルーチンにおいて用いられる値maxは、ピーク間光路長の数であり、図5のピーク間光路長計算プログラムで用いたピーク数を表す値maxよりも「1」だけ小さな値max−1に等しい。
厚さ計算ルーチンについて説明すると、このルーチンの実行は図3のステップS50にて開始される。この実行開始後、コントローラ70は、ステップS52にて、変数aを「0」に設定し、変数bを「1」に設定し、かつ変数qを「0」に設定する。変数aは、max個のピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max)のうちの1つを長い順に基準光路長として指定する変数である。変数bは、前記基準光路長よりも短いピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max−1)を長い順に一つずつ指定する変数である。変数qは、「1」によりピーク間光路長Be(m,1), Be(m,2)(m=1〜max)の測定が正常であったこと表し、それ以外のとき前記測定が異常であったことを表す変数である。
前記ステップS52の処理後、コントローラ70は、ステップS54にて、下記数3の演算の実行により、反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max)を計算する。
ただし、前記数3において、Be(0,2)は、図5のステップS222によって計算されたピーク間光路長ではなく、予め決められた値「0」である。前記数3の演算を視覚的に示すと、図9のとおりである。
この数3の演算実行後、コントローラ70は、ステップS56にて、値(a+b)が値maxに等しいかを判定する。値(a+b)が値maxに等しくなければ、コントローラ70は、ステップS56にて「No」と判定して、ステップS58にて変数bに「1」を加算して、再び前記ステップS54の演算処理を実行する。このようにステップS54〜S58からなる循環処理は値(a+b)が値maxに等しくなるまで続けられ、値(a+b)が値maxに等しくなると、コントローラ70は、ステップS56にて「Yes」と判定して、ステップS60に進む。この状態では、変数aは「0」であるので、ピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max)に基づいて、反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max)が計算される。
このステップS54〜S58からなる循環処理について具体的に説明しておくと、図8(A)の例のように、6つのピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜6)が存在する場合、|Be(6,2)−Be(5,2)|、|Be(6,2)−Be(4,2)|、|Be(6,2)−Be(3,2)|、|Be(6,2)−Be(2,2)|、|Be(6,2)−Be(1,2)|、|Be(6,2)−Be(0,2)|の演算が順に実行され、6つの反転ピーク間光路長Be’(m,2)(m=1〜6)が計算される。
前記ステップS56における「Yes」との判定後のステップS60においては、コントローラ70は、変数m,pをそれぞれ独立に「1」から順に「1」ずつ増加させながら、ピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max)と反転ピーク間光路長Be’(p,2)(p=1〜max-a)とを比較して、全ての両ピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max),Be’(p,2)(p=1〜max−a)の中から、両ピーク間光路長Be(m,1),Be’(p,2)がほぼ一致する、すなわち両ピーク間光路長Be(m,1),Be’(p,2)の差が予め定めた小さな許容値以内である両ピーク間光路長Be(m,1),Be’(p,2)からなる組を抽出する。次に、コントローラ70は、ステップS62にて抽出した組数が透光性物体OBの層数に等しいかを判定する。なお、この層数は、図2のメインプログラムの実行前に、入力装置71を用いた作業者の入力操作により、コントローラ70内に予め記憶されている。この場合、前記抽出した組数が層数に等しくなければ、コントローラ70は、ステップS62にて「No」と判定してステップS64に進む。図8(B)(C)はその例を示しており、この場合の抽出組数は「0」である。
ステップS64においては、コントローラ70は、値(max−a)が層数以下であるかを判定する。この場合、値(max−a)が層数以下であれば、コントローラ70は、ステップS64にて「Yes」と判定して、前述したステップS54〜S62からなって、ピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max)と反転ピーク間光路長Be’(p,2)(p=1〜max-a)とがほぼ一致する組を抽出するための処理を今後行わない。一方、値(max−a)が層数以下でなければ、コントローラ70は、ステップS64にて「No」と判定して、ステップS66,S68の処理後、前述したステップS54〜S62からなる処理を再び実行する。これは、値(max−a)は、ステップS60の処理によりピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max)と比較される反転ピーク間光路長Be’(p,2)(p=1〜max-a)の数を示すものであり、この比較される反転ピーク間光路長Be’(p,2)(p=1〜max-a)の数が層数に至った状態では、これ以上の処理を行っても、透光性物体OBの全ての層の厚さの検出が不能であるからである。
ステップS66においては、変数aに「1」が加算される。これは、max個のピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max)のうちで、次に長いピーク間光路長を基準光路長として指定するためである。ステップS68においては、変数bが「1」に初期設定される。前記ステップS66,S68の処理後、コントローラ70は、前述したステップS54〜S58からなる循環処理により、ピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max−a)に基づいて、反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max−a)が計算される(図9参照)。そして、コントローラ70は、前述のように、ステップS60にて再びピーク間光路長Be(m,1)(m=1〜max)と反転ピーク間光路長Be’(p,2)(p=1〜max-a)とがほぼ一致する組を抽出し、ステップS62にて抽出した組数と層数が等しいかを判定する。そして、抽出した組数と層数が等しくなければ、コントローラ70は、ステップS62にて「No」と判定して、ステップS64〜S68,S54〜S62の処理を再び実行する。この処理中、値(max−a)が層数以下になれば、前述のように、コントローラ70は、ステップS64にて「Yes」と判定して、ステップS76に進む。
このようなステップS54〜S68からなる処理は、透光性物体OBの裏面からのレーザ光照射による複数のピーク位置の一つを仮に表面に対応するピーク位置として定め、この仮に定めた一つのピーク位置を順次切換えながら、仮に定めたピーク位置から他のピーク位置までの反転ピーク間光路長Be’(m,2)(m=1〜max)と、透光性物体OBの表面からのレーザ光照射による表面に対応するピーク位置から他のピーク位置までのピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max)とを順次比較する処理である。
一方、前記ステップS60の処理によって抽出した組数が層数に等しいときには、コントローラ70は、前記ステップS54〜S68の処理中、ステップS62にて「Yes」と判定して、ステップS70に進む。ステップS70においては、コントローラ70は、前記抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)の中に、ピーク間光路長Be(1,1)及び反転ピーク間光路長Be’(max,2)が含まれているかを判定する。ピーク間光路長Be(1,1)は、レーザ光を透光性物体OBに表面から照射した場合における表面に最も近い層の厚さ(すなわち、表面直下の層の厚さ)に対応したピーク間光路長である。一方、反転ピーク間光路長Be’(max,2)は、レーザ光を透光性物体OBに裏面から照射した場合における裏面に最も近い層の厚さ(すなわち、裏面直下の層の厚さ)に対応したピーク間光路長である。これらのピーク間光路長Be(1,1)及び反転ピーク間光路長Be’(max,2)は、ピーク間光路長の測定が正常に行われれば、前記ステップS60の処理によって抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)内に含まれているはずである。したがって、ピーク間光路長Be(1,1)及び反転ピーク間光路長Be’(max,2)が、前記抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)内に含まれていなければ、コントローラ70は、ステップS70にて「No」すなわち正常な測定が行われなかったと判定し、前述したステップS64〜S68,S54〜S62の処理を再び実行する。
一方、ピーク間光路長Be(1,1)及び反転ピーク間光路長Be’(max,2)が、前記抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)内に含まれていれば、コントローラ70は、ステップS70にて「Yes」と判定して、ステップS72に進む。図8(D)はこの例を示しており、この場合、抽出組数は「3」である。ステップS72においては、コントローラ70は、前記抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)を記憶し、ステップS74にて変数qに「1」を加算して、ステップS64に進み、ステップS64〜S68,S54〜S62,S72,S74の処理を再び実行する。そして、前述したように、値(max−a)が層数以下になった時点で、コントローラ70は、ステップS64にて「Yes」と判定して、ステップS76に進む。
ステップS76においては、コントローラ70は変数qが「1」であるかを判定する。この変数qは、ステップS52の初期設定によって「0」に設定され、かつステップS74の処理よって「1」加算されるものであるので、正常な測定により抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)が1回だけ記憶された場合には、「1」を示す。一方、正常な測定が行われず、抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)が1回も記憶されない場合には、変数qは「0」に維持されている。また、正常な測定が行われず、抽出したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)が2回以上記憶された場合には、変数qは「2」以上の値に設定される。
そして、変数qが「1」であれば、コントローラ70は、ステップS76にて「Yes」と判定し、ステップS78にて、前記抽出するとともに記憶したピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)であって、各組をそれぞれ構成する2つのピーク間光路長Be(m,1)及び反転ピーク間光路長Be’(p,2)の平均値Be(n)(n=1〜層数)をそれぞれ計算する。次に、コントローラ70は、ステップS80にて、隣合った平均値Be(n)の差の絶対値をそれぞれ計算するとともに、計算した差の絶対値を透光性物体OBの各層の屈折率でそれぞれ除算することにより透光性物体OBの各層の厚さを計算する。ただし、透光性物体OBの表面直下の第1層目に関しては、前記平均値Be(1)そのものを第1層目の屈折率で除算することにより厚さを計算する。そして、計算した透光性物体OBの各層の厚さを表示装置72に表示する。なお、透光性物体OBの各層の屈折率は、図1のメインプログラムの実行前に、入力装置71を用いた作業者の入力操作により、コントローラ70内に予め記憶されている。
一方、変数qが「1」でなければ、コントローラ70は、ステップS76にて「No」と判定し、ステップS82にて表示装置72に「測定異常」を表示する。次に、コントローラ70は、ステップS84にて、ピーク間光路長計算装置64に、透光性物体OBの表面及び裏面からレーザ光を照射したときの2つの波形データ(光路長の変化量に対する受光信号の強度曲線データ)を出力させる。そして、コントローラ70は、ステップS86にて前記2つの波形データにより表された受光信号の強度曲線を表示装置72に表示する。これにより、作業者は、表示装置72の受光信号の強度曲線を見て、測定異常の原因を判断する。測定異常の原因としては、透光性物体OBの各層での反射率が大き過ぎて裏面からの反射光によるピークが充分な強度で発生しない場合、層が多すぎてピークが多く出過ぎる場合などが考えられる。
前記ステップS80、S86の処理後、コントローラ70は、ステップS90にてこの厚さ計算ルーチンの実行を終了する。再び図2のメインプログラムの説明に戻ると、前記ステップS36の処理後、コントローラ70は、ステップS40にてスピンドルモータ55の回転停止をスピンドルモータ制御回路56に指示し、ステップS42にてレーザ光の照射停止をレーザ駆動回路81に指示する。これにより、スピンドルモータ制御回路56は、スピンドルモータ55の回転動作を停止させ、レーザ駆動回路81は、レーザ光源11によるレーザ光の照射を停止させる。前記ステップS42の処理後、コントローラ70は、ステップS44にてメインプログラムの実行を終了する。
また、前述のように、図5のピーク間光路長計算プログラムのステップS230の処理により、ピーク間光路長計算装置64からコントローラ70に「異常」が出力されて、コントローラ70が図2のメインプログラムのステップS20又はステップS30にて「Yes」と判定した場合には、ステップS38の処理が実行される。ステップS38においては、コントローラ70は、表示装置72に「測定異常」を表示させ、前述したステップS40、S42の処理後、ステップS44にてメインプログラムの実行を終了する。なお、この場合、メインプログラムにおいては、ステップS36の厚さ計算ルーチンは実行されず、透光性物体OBの各層の厚さの計算及び表示はなされない。それに代わり、前述のように、受光信号の強度曲線が表示装置72に表示される。
上記のように動作する第1実施形態においては、図3のステップS52〜S76の処理により、透光性物体OBの表面から入射させたレーザ光に関するピーク間光路長群の組と、透光性物体OBの裏面から入射させたレーザ光に関するピーク間光路長群の組とを比較することにより、正規反射による複数のピーク間光路長を抽出するようにした。そして、図3のステップS78,S80の処理により、抽出した複数のピーク間光路長を用いて、透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにした。
この場合、正規反射による複数のピーク間光路長の抽出においては、特に、図3のステップS60,S62の処理により、透光性物体OBの裏面からのレーザ光の照射による1組のピーク間光路長群Be(m,2)(m=1−max)を、複数のピーク点をその配列順を逆にした反転ピーク間光路長群Be’
(m,2)(m=1−max)に変換して、変換した反転ピーク間光路長群Be’
(m,2)(m=1−max)に含まれる複数のピーク間光路長と、透光性物体OBの表面からのレーザ光の照射による1組のピーク間光路長群Be(m,1)(m=1−max)に含まれる複数のピーク間光路長とがそれぞれ一致し、かつ一致した数が透光性物体OBの層数と一致することを条件に、透光性物体OBの正規反射による複数のピーク間光路長を抽出するようにした。
より具体的には、透光性物体OBの裏面からのレーザ光照射による複数のピーク位置の一つを仮に表面に対応するピーク位置として定め、仮に定めたピーク位置から他のピーク位置までの前記変換した反転ピーク間光路長Be’ (m,2)(m=1〜max)と、透光性物体OBの表面からのレーザ光照射による複数のピーク位置のうちの一つのピーク位置と他のピーク位置までのピーク間光路長Be (m,1)(m=1〜max)とを順次比較するようにした。そして、このような比較を前記仮に定めるピーク位置を順次切換えながら行い、2組のピーク間光路長Be’ (m,2)(m=1〜max),Be (m,1)(m=1〜max)とがそれぞれ一致し、かつ一致した数が透光性物体OBの層数と一致することを条件に、透光性物体OBの正規反射による複数のピーク間光路長を抽出するようにした。その結果、上記第1実施形態によれば、短時間で、正規反射のみによる複数のピーク間光路長を抽出することができるようになり、多重反射による影響をなくして、透光性物体OBの各層の厚さを測定することができるようになる。
さらに、前記条件に加えて、図3のステップS70の処理により、前記抽出した複数のピーク間光路長の中に、透光性物体OBの表面直下及び裏面直下の2つの層に対応するピーク間光路長が含まれていることを条件に、透光性物体OBの正規反射によるピーク間光路長を抽出するようにした。これにより、正規反射のみによる複数のピーク間光路長を、短時間でさらに精度よく抽出することができる。
また、上記第1実施形態においては、図3のステップS76、S82〜S86の処理により、ピーク間光路長の測定に異常がある場合には、表示装置72に、「測定異常」が表示されるとともに、透光性物体OBの表面及び裏面からレーザ光を照射したときの2組の受光信号の強度曲線が表示される。これによれば、正規反射によるピーク間光路長を抽出することができなかった場合、その原因を受光信号の強度曲線から判断することができるようになる。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る透光性物体の厚さ測定装置について説明すると、図10は第2実施形態に係る厚さ測定装置の全体構成を示している。この厚さ測定装置は、第1測定部110、第2測定部120、データ処理装置130及びコントローラ140を備えている。
第1測定部110は、レーザ光源111、コリメーティングレンズ112、集光レンズ113、コリメーティングレンズ114及び受光センサ115を有する。レーザ光源111は、レーザダイオード、LEDなどのレーザ光を発光する一般的な素子で構成されていて、レーザ駆動回路151により駆動されてレーザ光を出射する。なお、この場合には、レーザ光源111に代えて、レーザ光以外の光を発光する発光素子を用いることもできる。コリメーティングレンズ112はレーザ光源111からのレーザ光を平行光に変換し、集光レンズ113はコリメーティングレンズ112からの平行光を集光する。コリメーティングレンズ114は、集光レンズ113の焦点位置に近い位置に配置され、入射したレーザ光を小さな断面径の平行光に変換して、透光性物体OBの表面に所定の入射角θoで入射させる。
透光性物体OBは、上記第1実施形態の同様に、複数の透明な層からなる。そして、この透光性物体OBは、上記第1実施形態の測定台82と同様に構成した、支持部材153a及び貫通孔153b1を有する上板部153bからなる測定台153の上板部153b上に表面を上にして載置される。透光性物体OBの下面(すなわち、裏面)は、貫通孔153b1を介して下方からレーザ光が照射されるようになっている。
受光センサ115は、透光性物体OBからの反射光を受光する位置に図示左右方向に予め決められた等間隔で配置された多数の受光素子からなるCCD、CMOSなどで構成されている。受光センサ115は、受光面が透光性物体OBの表面(すなわち測定台153の上板部153bの表面)に平行に配置されている。そして、受光センサ115は、測定対象物OBの表面等からの反射光を受光して、受光した反射光の強度を表す受光信号を、受光位置に対応させてデータ処理装置130に出力する。したがって、この受光信号は、レーザ光が透光性物体OBに表面から照射された際における、図示左右方向の多数の位置の反射光の強度を表す信号である。
この受光センサ115によって検出される受光信号(反射光の強度)についてさらに説明しておく。図13(A)に示すように、レーザ光源111から出射されて表面から透光性物体OBに入射したレーザ光は、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面における正規反射により、透光性物体OBの表面から層数よりも「1」だけ大きな数の反射光X1〜X4を出射させる。また、この場合も、図13(B)に示すように、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面における多重反射が生じて、透光性物体OBの表面からは多重反射による反射光X5〜X7も出射される。図13(A)(B)においては、上記第1実施形態の場合と同様に、層数が「3」の透光性物体OBを例にしている。これにより、受光センサ115の受光面には、正規反射による反射光X1〜X4と、多重反射による反射光X5〜X7が照射されることになり、受光センサ115の受光面には、図13(A)(B)の矢印先端位置にて反射光X1〜X7が入射され、受光センサ115は、前記矢印先端位置すなわち反射光の受光位置をピークとする受光信号(反射光の強度)をデータ処理装置130に出力することになる。
第2測定部120は、第1測定部110と同様に構成され、レーザ光源121、コリメーティングレンズ122、集光レンズ123、コリメーティングレンズ124及び受光センサ125を有する。ただし、第2測定部120においては、レーザ光源121はレーザ駆動回路152により駆動され、レーザ光源121から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ122、集光レンズ123及びコリメーティングレンズ124を介して透光性物体OBの裏面に入射される。この場合のレーザ光の透光性物体OBに入射される入射角は、第1測定部110の場合と同じθoである。なお、この第2測定部120においても、レーザ光源121に代えて、レーザ光以外の光を発光する発光素子を用いることもできる。また、受光センサ125は、受光面が透光性物体OBの裏面及び表面に対して平行になるように図示左右方向に延設されて配置される。また、受光センサ125の受光面は、図示左右方向の位置を受光センサ115の受光面と一致させている。そして、受光面にある多数の受光素子は、測定対象物OBの裏面からの反射光をそれぞれ受光して、受光した反射光の強度を表す受光信号をデータ処理装置130にそれぞれ出力する。したがって、この受光信号は、レーザ光が透光性物体OBに裏面から照射された際における、図示左右方向の多数の位置の反射光の強度を表す信号である。すなわち、この場合も、前記第1測定部110と同様に、受光センサ125は、反射光の受光位置をピークとする受光信号(反射光の強度)をデータ処理装置130に出力することになる。
データ処理装置130は、切換え回路131、センサ信号取出し回路132、A/D変換回路133及びピーク間距離計算装置134からなる。切換え回路131は、コントローラ140により制御されて、第1測定部110の受光センサ115からの受光信号と、第2測定部120の受光センサ125からの受光信号とを切換えてセンサ信号取出し回路132に出力する。すなわち、センサ信号取出し回路132には、切換え回路131から供給される受光センサ115及び受光センサ125からの受光信号、すなわち受光センサ115及び受光センサ125を構成する多数の受光素子からの反射光の強度を表す信号が供給される。
センサ信号取出し回路132は、その作動がピーク間距離計算装置134によって制御され、多数の受光素子からの受光信号を、所定の短時間ごとに、図示右位置から左位置に向かって順に取出して出力する。これにより、取出された受光信号は、右端の受光素子から順番に左端の受光素子に向かう各受光素子の位置における反射光の強度を表す受光素子ごとの受光信号となる。また、各受光素子の間隔は予め決められた等間隔で左右方向に配列されているので、この受光信号は、右端から何番目の受光素子によるものであるかにより、右端の受光素子からの距離も表すことになる。この第2実施形態においては、右端の受光素子の位置を基準位置(すなわち、距離「0」)として、各受光素子までの距離を表すものとする(図13(A)(B)のL1〜L7を参照)。
また、センサ信号取出し回路132は、前記右端から左端までの多数の受光素子からの受光信号の取出しを繰返し実行する。この右端から左端までの多数の受光素子からの受光信号の1回の取出しを1回の受光信号のスキャンとすると、このスキャンを繰返し実行することになる。そして、この繰り返しスキャンにおいては、各スキャンごとに所定の待ち時間をもって次のスキャンが行われる。
A/D変換回路133は、その作動がピーク間距離計算装置134によって制御され、センサ信号取出し回路132によって順次出力された受光信号(反射光の強度)の瞬時値を、前記センサ信号取出し回路132による受光信号の取出しに同期して、前記受光信号の取出しの場合と同じ所定の短時間間隔でA/D変換してピーク間距離計算装置134に出力する。また、前記センサ信号取出し回路132による各スキャン間の待ち時間中には、センサ信号取出し回路132からは受光信号が取出されないので、A/D変換回路133はこの待ち時間中にはNG信号(受光信号でないことを表す)をピーク間距離計算装置134に出力する。
ピーク間距離計算装置134は、CPU、ROM、RAM及びその他の記憶装置などからなり、コントローラ140からの指令により記憶装置に記憶されている図12のデータ取得プログラム及び図5のピーク間光路長計算プログラムを変更したピーク間距離計算プログラムを実行する。なお、図12のデータ取得プログラムは、上記第1実施形態に係る図4のデータ取得プログラムの一部を変更したもので、同一部分については同一符号を用いている。これらのプログラムの実行により、ピーク間距離計算装置134は、A/D変換回路133からの受光センサ115,125による受光信号(反射光の強度)の瞬時値を順次入力して、反射光の強度がピークとなる複数のピーク位置を検出し、複数のピーク位置の中から最初にピークとなる1つの位置を基準ピーク位置として定めて、基準ピーク位置から他の複数のピーク位置までの距離を計算して複数のピーク間距離として繰返し出力する。
コントローラ140は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置などからなり、記憶装置に記憶されている図11のメインプログラムを実行して、各回路の作動を制御するとともに、透光性物体OBの各層の厚さを計算する。なお、図11のメインプログラムは、上記第1実施形態に係る図2のメインプログラムの一部を変更したものであり、同一部分については同一符号を用いている。このコントローラ140には、入力装置141及び表示装置142が接続されている。
次に、上記のように構成した第2実施形態に係る透光性物体の厚さ測定装置の動作を説明する。作業者は、上記第1実施形態の場合と同様に、測定対象物である透光性物体OBをその表面を上方に向けて測定台153の上面に載置して、入力装置141を操作し、この透光性物体の厚さ測定装置の作動開始を指示する。この作動開始の指示により、コントローラ140は、図11のメインプログラムの実行をステップS10にて開始する。
前記メインプログラムの実行開始後、コントローラ140は、ステップS14’にて、レーザ駆動回路151,152にレーザ光の照射開始をそれぞれ指示する。これにより、レーザ駆動回路151,152は、レーザ光源111,121をそれぞれ駆動制御して、レーザ光源111,121にレーザ光をそれぞれ出射させる。レーザ光源111から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ112、集光レンズ113及びコリメーティングレンズ114により断面径の小さな平行光に変換されて、透光性物体OBの表面に入射角θoで入射する。一方、レーザ光源121から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ122、集光レンズ123及びコリメーティングレンズ124により断面径の小さな平行光に変換されて、透光性物体OBの裏面に入射角θoで入射する。
これらの透光性物体OBへの表面側及び裏面側からのレーザ光の入射により、透光性物体OBの表面、各層の境界面及び裏面における正規反射及び多重反射による反射光が受光センサ115,125に入射され、受光センサ115,125は反射光を受光した位置にピークを有する受光信号(反射光の強度)を切換え回路131に出力し始める。
前記ステップS14’の処理後、コントローラ140は、ステップS16’にて、切換え回路131に表面側すなわち受光センサ115からの受光信号を選択出力するように指示する。これにより、切換え回路131は、前記受光センサ115から出力された受光信号をセンサ信号取出し回路132に出力する。なお、切換え回路131が、前記切換え指示前に受光センサ115による受光信号をセンサ信号取出し回路132に出力している場合には、前記切換え制御は実質的には行われない。
次に、コントローラ140は、ステップS18’にて、ピーク間距離計算装置134に作動開始を指示する。そして、コントローラ140は、ステップS20,S22’にてピーク間距離計算装置134からの「異常」又はピーク間距離Be(m)(m=max−1)の入力を待つ。なお、この第2実施形態においては、上記第1実施形態のピーク点光路長P(1)〜P(max)及びピーク間光路長Be(m,k),Be(m)は、ピーク点距離P(1)〜P(max)及びピーク間距離Be(m,k),Be(m)に読み換えられる。
前記ステップS18’のピーク間距離計算装置134の作動開始の指示により、ピーク間距離計算装置134は、図12のデータ取得プログラムの実行をステップS100にて開始し、ステップS102にて、上記第1実施形態の場合と同様に、変数nを「1」に設定し、ステップS104にてA/D変換回路133にA/D変換の開始を指示し、ステップS106’にてセンサ信号取出し回路132に受光信号の取込み動作の開始を指示する。これらにより、A/D変換回路133はA/D変換動作を開始し、センサ信号取出し回路132は切換え回路131から受光センサ115又は受光センサ125による受光信号(反射光の強度)の取出し動作を開始する。この時点では、切換え回路131は受光センサ115による受光信号(反射光の強度)を選択出力するように設定されているので、受光センサ115による受光信号(反射光の強度)が、センサ信号取出し回路132によって取り出されて、A/D変換回路133によってA/D変換されて、ピーク間距離計算装置134に供給され始める。
前記ステップS106’の処理後、ピーク間距離計算装置134は、ステップS120’にて、受光センサ115によって検出された反射光の強度を表す受光信号を表すデータをA/D変換回路133から取込んで記憶する処理を実行し始める。このデータの記憶処理においては、A/D変換回路133から所定の短時間ごとに出力される反射光の強度を表すデータを順次記憶していく。なお、ピーク間距離計算装置134がセンサ信号取出し回路132に受光信号の取出し動作の開始を指示したとき、センサ信号取出し回路132は、受光センサ115,125にある多数の受光素子の先頭(右端の受光素子)から受光信号の取出しを開始するので、第1実施形態の図4におけるステップS108〜S118に相当する処理は、本実施形態では不要である。
次に、ピーク間距離計算装置134は、ステップS122’にて、A/D変換回路133から受光信号(反射光の強度を表すデータ)の取込みが終了したか、すなわち受光センサ115による受光信号の1回のスキャンが終了してA/D変換回路133からNGデータが出力され始めたかを判定する。A/D変換回路133からの反射光の強度を表すデータを取込み続けていれば、ピーク間距離計算装置134はステップS122’にて「No」と判定し続ける。したがって、この場合には、前記ステップS120’のデータの取込み及び記憶処理が続行されて、反射光の強度を表すデータが順次記憶され続ける。一方、受光センサ115による受光信号の1回のスキャンが終了してA/D変換回路133からNGデータが出力され始めると、A/D変換回路133は、反射光の強度を表すデータを出力せず、NGデータを出力するので、ピーク間距離計算装置134は、ステップS122’にて「Yes」と判定してステップS124に進む。この状態では、センサ信号取出し回路132による1回のスキャンによる反射光の強度を表すデータが1組のデータ群として記憶されている。
次に、ピーク間距離計算装置134は、上記第1実施形態の場合と同様に、変数nが「5」になるまで、ステップS126,S128’,S130,S122’,S124からなる循環処理を実行する。この循環処理においては、ステップS126の処理によりデータの記憶領域が変更されるとともに、ステップS128’の処理によってセンサ信号取出し回路132による次のスキャンが開始されて新たな受光信号が供給され始めたことを条件に、ステップS130にて変数nが「1」増加されて、センサ信号取出し回路132による次のスキャンによる反射光の強度を表すデータが1組のデータ群として記憶される。このようにして、5組のデータ群が記憶されると、ピーク間距離計算装置134は、ステップS124にて「Yes」と判定し、ステップS132’にて、A/D変換回路133から反射光の強度を表す受光信号データを取込んで記憶する処理の実行を一旦終了する。
そして、上記第1実施形態の場合と同様に、ピーク間距離計算装置134は、ステップS134,S136の処理により、図5のピーク間光路長計算プログラムを一部変更したピーク間距離計算プログラムにより、再測定の指定及び測定終了の指定がなされたかを判定する。再測定が指定された場合には、ピーク間距離計算装置134は、ステップS134にて「Yes」と判定して上述したS102〜S132’の処理を再び実行して新たな5組のデータ群を取得する。一方、測定終了が指定されれば、ピーク間距離計算装置134は、ステップS136にて「Yes」と判定し、ステップS138にてA/D変換回路133にA/D変換動作を停止させ、ステップS140’にてセンサ信号取出し回路132に受光信号の取出し動作を停止させ、ステップS142にてこのデータ取得プログラムの実行を終了する。
次に、このデータ取得プログラムと同時にピーク間距離計算装置134により実行されているピーク間距離計算プログラムについて説明する。前述のように、このピーク間距離計算プログラムは図5のピーク間光路長計算プログラムの一部を変更したもので、このピーク間距離計算プログラムにおいては、上記第1実施形態のピーク点光路長P(1)〜P(max)及びピーク間光路長Be(m,k),Be(m)は、ピーク点距離P(1)〜P(max)及びピーク間距離Be(m,k),Be(m)に読み換えられる。
図5のステップS202〜S214からなる上記第1実施形態と同種な処理により、5組のBe(m,k)(m=1〜max−1)を計算する。この5組のピーク間距離Be(m,k)(m=1〜max−1)の計算においては、ステップS208にてピーク点距離P(1)〜P(max)を抽出する。このピーク点距離P(1)〜P(max)の抽出処理においては、1組目のデータ群中の反射光の強度を表す複数のデータにより表される反射光の強度曲線を想定して、強度曲線における複数のピーク点を検出する。その後、検出した複数のピーク点に関するデータを用いて、所定の基準位置からピーク点距離P(1)〜P(max)を計算する。
具体的な例を挙げて声明すると、反射光の強度のピーク点は、例えば図13(A)(B)で示されるように、正規反射X1〜X4及び多重反射X5〜X7が受光面と交差する位置(図13(A)(B)の矢印先端部)となる。そして、受光センサ115,125の多数の受光素子のうちの図10にて右端位置の受光素子の位置を基準位置と定めると、基準位置から各ピーク点までの距離はそれぞれL1〜L7となる。この場合、反射光の強度を表す1群のデータは、前記右端の受光素子から左方向へ配列された各受光素子による反射光の強度を表すデータであり、各受光素子は等間隔で配列されているので、ピーク点のデータが何番目のデータであるかにより前記距離L1〜L7が計算される。そして、これらの計算された距離L1〜L7を短い順にピーク点距離P(1)〜P(max)とする。もちろん、図13(A)(B)の反射光X1〜X7は一つの例であり、検出されるピーク点の数は「7」でない場合もあるので、ピーク点距離P(1)〜P(max)の値maxは検出されたピーク点の数に依存する。
前記ステップS208のピーク点距離P(1)〜P(max)の抽出後、ピーク間距離計算装置134は、ステップS210にて、最も短いピーク点距離P(1)から2番目以降のピーク点距離P(2)〜P(max)までの距離をそれぞれピーク間距離Be(m,k) (m=1〜max−1)として、上記第1実施形態の場合と同様に上記数2の演算の実行により計算する(図8(A)参照)。なお、この場合、透光性物体OBの表面側からレーザ光を照射しているので、ピーク点距離P(1) 〜P(max)は透光性物体OBの表面に関するピーク点距離である。
その後、ピーク間距離計算装置134は、ステップS216にて、上記第1実施形態と同様に、変数m(1〜5)ごとに、5つのピーク間距離Be(m,k)に含まれる2つのピーク間距離Be(m,k)間の差Devをそれぞれ計算する。そして、ステップS218〜S232の処理により、上記第1実施形態の場合と同様に、この計算した差Devを用いて、ピーク間距離Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われたか否かを判定するとともに、前記測定が正確に行われなかったと判定された場合には、再測定が行われたり、「異常」がコントローラ140に出力されたりした後、ステップS234にてピーク間距離計算プログラムの実行が終了される。
また、ピーク間距離Be(m,k)(m=1〜max−1,k=1〜5)の測定が正確に行われた場合には、ステップS220の処理により、ピーク間距離計算装置134は、変数kによって指定される5つのピーク間距離Be(m,k)(k=1〜5)の平均値を、変数m(m=1〜max−1)にそれぞれ対応したピーク間距離Be(m)として計算する。そして、ピーク間距離計算装置134は、ステップS222にて、前記計算したピーク間距離Be(m)をコントローラ140に出力し、ステップS234にてこのピーク間距離計算プログラムの実行を終了する。
再び、図11のメインプログラムの説明に戻ると、コントローラ140は、ステップS20,S22’の循環処理中、ピーク間距離計算装置134から「異常」を入力すると、ステップS20にて「Yes」と判定して、上記第1実施形態の場合と同様なステップS38の「測定異常」の表示処理を実行する。一方、ピーク間距離計算装置134からピーク間距離Be(m)(m=1〜max−1)を入力すると、コントローラ140は、ステップS22’にて「Yes」と判定して、ステップS24’にて、ピーク間距離Be(m)(m=1〜max−1)に表面からのレーザ光の照射によるデータであることを表す「1」を付加して、ピーク間距離Be(m,1)(m=1〜max−1)とする。
前記ステップS24’の処理後、コントローラ140は、ステップS26’にて、切換え回路131に裏面側すなわち受光センサ125からの受光信号を選択出力するように指示する。これにより、切換え回路131は、前記受光センサ125から出力された受光信号をセンサ取出し回路132に出力する。次に、コントローラ140は、ステップS28’にて、ピーク間距離計算装置134に作動開始を指示し、ステップS30,S32’にてピーク間距離計算装置134からの「異常」又はピーク間距離Be(m)(m=max−1)の入力を待つ。
前記コントローラ140からの作動開始の指示により、ピーク間距離計算装置134は、前述した図12のデータ取得プログラム及び図5のピーク間光路長計算プログラムを変更したピーク間距離計算プログラムを実行する。これらのプログラムの実行により、前述のように、ピーク間距離計算装置134からコントローラ140には、「異常」又はピーク間距離Be(m)(m=1〜max−1)が入力される。この場合のピーク間距離Be(m)は、透光性物体OBの裏面側からレーザ光を照射した場合の測定値である。
そして、「異常」が入力されると、コントローラ140は、ステップS30にて「Yes」と判定して、上記第1実施形態の場合と同様なステップS38の「測定異常」の表示処理を実行する。一方、ピーク間距離計算装置134からピーク間距離Be(m)(m=1〜max−1)を入力すると、コントローラ140は、ステップS32’にて「Yes」と判定して、ステップS34’にて、ピーク間距離Be(m)(m=1〜max−1)に裏面からのレーザ光の照射によるデータであることを表す「2」を付加して、ピーク間距離Be(m,2)(m=1〜max−1)とする。
前記ステップS34の処理後、コントローラ140は、ステップS36にて厚さ計算ルーチンの実行を開始する。この厚さ計算ルーチンは、上記第1実施形態の図3の厚さ計算ルーチンを一部変更したものである。特に、この第2実施形態に係る厚さ計算ルーチンにおいては、上記図3の厚さ計算ルーチンにおけるピーク間光路長Be(m,2)(m=1〜max及び反転ピーク間光路長Be’(m,2)(m=1〜max)は、ピーク間距離Be(m,2)(m=1〜max)及び反転ピーク間距離Be’
(m,2)(m=1〜max)と読み換えられる。なお、この場合も、厚さ計算ルーチンにおいて用いられる値maxは、ピーク間距離の数であり、図5のピーク間光路長計算プログラムで用いたピーク数を表す値maxよりも「1」だけ小さな値max−1に等しい。
この第2実施形態に係る厚さ計算ルーチンにおいても、コントローラ140は、ステップS52〜S76の処理により、ピーク間距離Be(m,1), Be(m,2)(m=1〜max)の測定が正常であったかを判定する。具体的には、まず、ステップS54〜S58の処理により、上記第1実施形態の反転ピーク間光路長Be’
(m,2)(m=1〜max)と同様に、透光性物体OBにその裏面側からレーザ光を照射することによって得たピーク間距離Be(m,2)(m=1〜max)を、表面側からの反転ピーク間距離Be’
(m,2)(m=1〜maxに変換する。そして、ステップS60,S62の処理により、両ピーク間距離Be(m,1),Be’(p,2)の差が予め定めた小さな許容値以内である両ピーク間距離Be(m,1),Be’(p,2)からなる組を抽出して、抽出した組数が透光性物体OBの層数に等しいかを判定する。また、ステップS60,S70の処理により、ピーク間距離Be(1,1)及び反転ピーク間距離Be’(max,2)が、前記ステップS60の処理によって抽出したピーク間距離Be(m,1)及び反転ピーク間距離Be’(p,2)内に含まれているかも判定する。
前記ステップS52〜S76の処理後、ピーク間距離Be(m,1), Be(m,2)(m=1〜max)の測定が正常であった場合には、コントローラ140は、ステップS78にて、前記ステップS60の処理により抽出したピーク間距離Be(m,1)及び反転ピーク間距離Be’(p,2)であって、各組をそれぞれ構成する2つのピーク間距離Be(m,1)及び反転ピーク間距離Be’(p,2)の平均値Be(n)(n=1〜層数)をそれぞれ計算する。次に、コントローラ70は、ステップS80にて、隣合った平均値Be(n)の差の絶対値をそれぞれ計算するとともに、計算した差の絶対値を用いて透光性物体OBの各層の厚さを計算する。ただし、この場合も、透光性物体OBの表面直下の第1層目に関しては、隣合った平均値Be(n)の差の絶対値ではなく、平均値Be(1)そのものを用いて厚さを計算する
この各層の厚さの計算に関しては、上記第1実施形態とは異なり、各層の厚さは次のようにして計算される。まず、前記計算した絶対値の差及び第1層目の厚さを距離Yi(i=1〜max)とする。この場合、値maxは透光性物体OBの層数である。Yiは反射光の隣合うピーク位置間の距離であり、図13(A)の例を参照して具体的に説明すると、Y1=L2−L1、Y2=L3−L2、Y3=L4−L3である。そして、これらの距離Yi(i=1〜max)を用いた下記数4の演算の実行により、透光性物体OBの各層の厚さDi(i=1〜max)をそれぞれ計算する。なお、この数4は公知の事項であり、上記特許文献2(特開2003−222506号公報)にも紹介されている。
ただし、前記数4中、θoはレーザ光の透光性物体OBへの入射角であり、Niは透光性物体OBの該当する層の屈折率であり、Noは透光性物体OBの外部(空気)の屈折率である。そして、前記入射角θo、屈折率Ni(i=1〜max)及び屈折率Noは、測定前に入力装置141を用いてコントローラ140内に入力されて予め記憶されている値である。
なお、前記数4は、受光センサ115,125の受光面と、透光性物体OBの表面及び裏面とが平行である場合の演算式であり、受光センサ115,125の受光面と、透光性物体OBの表面及び裏面とが平行でない場合には、さらに受光センサ115,125の受光面に対する反射光の入射角が必要となる。
一方、ピーク間距離Be(m,1), Be(m,2)(m=1〜max)の測定が正常でなかった場合には、コントローラ140は、上記第1実施形態の場合と同様に、ステップS82〜86の処理により、表示装置72に、「測定異常」を表示するとともに、透光性物体OBの表面及び裏面からレーザ光を照射したときの2つの波形データ(位置に対する受光信号の強度曲線データ)を表示する。前記ステップS80、S86の処理後、コントローラ140は、ステップS90にてこの厚さ計算ルーチンの実行を終了する。
再び図11のメインプログラムの説明に戻ると、前記ステップS36の処理後、コントローラ140は、ステップS42’にてレーザ光の照射停止をレーザ駆動回路151,152に指示して、レーザ光源111,121によるレーザ光の照射を停止させる。前記ステップS42’の処理後、コントローラ140は、ステップS44にてメインプログラムの実行を終了する。
また、前述のように、前記図5のピーク間光路長計算プログラムを変形したピーク間距離計算プログラムの実行により、ピーク間距離計算装置134がステップS230にて「異常」をコントローラ140に出力した場合について説明する。この場合、コントローラ140は、上記第1実施形態の場合と同様に、図11のステップS20,S30にて「Yes」と判定して、ステップS38にて表示装置142に「測定異常」を表示する。そして、前記ステップS42’の処理により、レーザ光源111,121によるレーザ光の照射を停止させて、ステップS44にてメインプログラムの実行を終了する。なお、この場合も、メインプログラムにおいては、ステップS36の厚さ計算ルーチンは実行されず、透光性物体OBの各層の厚さの計算及び表示はなされない。
上記のように動作する第2実施形態においては、図3のステップS52〜S76の処理を一部変更した処理により、透光性物体OBの表面から入射させたレーザ光に関するピーク間距離群と、透光性物体OBの裏面から入射させた第1レーザ光に関するピーク間距離群とを比較することにより、正規反射による複数のピーク間距離を抽出するようにした。そして、図3のステップS78,S80の処理を一部変更した処理により、抽出した複数のピーク間距離を用いて、透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにした。
この場合、正規反射による複数のピーク間距離の抽出においては、特に、図3のステップS60,S62の処理を一部変更した処理により、透光性物体OBの裏面からのレーザ光の照射による1組のピーク間距離群Be(m,2)(m=1−max)を、複数のピーク点をその配列順を逆にした反転ピーク間距離群Be’
(m,2)(m=1−max)に変換して、変換した反転ピーク間距離群Be’
(m,2)(m=1−max)に含まれる複数のピーク間距離と、透光性物体OBの表面からのレーザ光の照射による1組のピーク間距離群Be(m,1)(m=1−max)に含まれる複数のピーク間距離とがそれぞれ一致し、かつ一致した数が透光性物体OBの層数と一致することを条件に、透光性物体OBの正規反射による複数のピーク間距離を抽出するようにした。
より具体的には、透光性物体OBの裏面からのレーザ光照射による複数のピーク位置の一つを仮に表面に対応するピーク位置として定め、仮に定めたピーク位置から他のピーク位置までの前記変換した反転ピーク間距離Be’ (m,2)(m=1〜max)と、透光性物体OBの表面からのレーザ光照射による複数のピーク位置のうちの一つのピーク位置と他のピーク位置までのピーク間距離Be (m,1)(m=1〜max)とを順次比較するようにした。そして、このような比較を前記仮に定めるピーク位置を順次切換えながら行い、2組のピーク間距離Be’ (m,2)(m=1〜max),Be (m,1)(m=1〜max)とがそれぞれ一致し、かつ一致した数が透光性物体OBの層数と一致することを条件に、透光性物体OBの正規反射による複数のピーク間距離を抽出するようにした。その結果、上記第2実施形態によっても、短時間で、正規反射のみによる複数のピーク間距離を抽出することができるようになり、多重反射による影響をなくして、透光性物体OBの各層の厚さを測定することができるようになる。
さらに、前記条件に加えて、図3のステップS70の処理を一部変更した処理により、前記抽出した複数のピーク間距離の中に、透光性物体OBの表面直下及び裏面直下の2つの層に対応するピーク間距離が含まれていることを条件に、透光性物体OBの正規反射によるピーク間距離を抽出するようにした。これにより、正規反射のみによる複数のピーク間距離を、短時間でさらに精度よく抽出することができる。
また、上記第2実施形態においては、図3のステップS76、S82〜S86の処理を一部変更した処理により、ピーク間距離の測定に異常がある場合には、表示装置72に、「測定異常」が表示されるとともに、透光性物体OBの表面及び裏面からレーザ光を照射したときの2組の受光信号の強度曲線が表示される。これによれば、正規反射によるピーク間距離を抽出することができなかった場合、その原因を受光信号の強度曲線から判断することができるようになる。
c.変形例
さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記第1及び第2実施形態においては、図3のステップS54〜S60の処理により、透光性物体OBの裏面からのレーザ光照射による信号曲線を逆向きにして、逆向きにした信号曲線のピーク位置と、表面からのレーザ光照射による信号曲線のピーク位置とを比較するようにした。しかし、逆に、透光性物体OBの表面からのレーザ光照射による信号曲線を逆向きにして、逆向きにした信号曲線のピーク位置と、裏面からのレーザ光照射による信号曲線のピーク位置とを比較するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態においては、図2及び図11のステップS20,S30,S38、並びに図3のステップS76,S82〜S86の処理により、測定に異常があったときにのみ波形データ(信号曲線)を表示装置72,142に表示させるようにしたが、測定の正常及び異常に関係なく、測定ごとに波形データ(信号曲線)を表示装置72,142に表示させるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においては、図3のステップS72,S78,S80の処理により、透光性物体OBの表面及び裏面からのレーザ光照射による抽出したピーク間光路長Be
(m,1),Be’ (m,2)の両方を用いて、透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにした。また、上記第2実施形態においては、図3のステップS72,S78,S80の処理の一部を変更した処理により、透光性物体OBの表面及び裏面からのレーザ光照射による抽出したピーク間距離Be
(m,1),Be’ (m,2)の両方を用いて、透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにした。しかし、これらに代えて、ピーク間光路長Be (m,1),Be’ (m,2)のいずれか一方、及びピーク間距離Be (m,1),Be’ (m,2)のいずれか一方を用いて、透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、図5のステップS210の処理及びその一部を変更した処理により、最初のピーク点光路長P(1)及びピーク点距離P(1)を基準にして、複数のピーク間光路長Be (m,k)及びピーク間距離Be (m,k)を、Be
(m,k)=|P(m+1)−P(1)|なる演算の実行により計算するようにした。しかし、この場合の基準とするピーク点光路長及びピーク点距離に関しては、ピーク点光路長P(1)〜P(max)及びピーク点距離P(1) 〜P(max)のうちのいずれのピーク点光路長及びピーク点距離を採用してもよい。
また、ピーク間光路長Be
(m,k)及びピーク間距離Be (m,k)に関しては、隣合うピーク点間の光路長及び距離を、ピーク間光路長Be
(m,k)及びピーク間距離Be (m,k)として採用してもよい。この場合、図3のステップS60の処理及びその一部を変更した処理においては、隣合うピーク点間の光路長及び距離を適宜加算しながら、ほぼ一致するピーク間光路長Be
(m,1),Be’ (m,2)及びピーク間距離Be (m,1),Be’
(m,2)の組を抽出するようにするとよい。
また、上記第1及び第2実施形態においては、プログラム処理により表面からのレーザ光照射による信号曲線のピーク位置と裏面からのレーザ光照射による信号曲線のピーク位置とを比較して正規のピーク位置を抽出し、透光性物体OBの各層の厚さを計算して表示装置72,142に表示するようにした。しかし、これに代えて、測定に多少多くの時間が費やしてもよければ、表示装置72,142に2つの信号曲線を表示し、作業者に目視でピーク位置を比較させて正規のピーク位置を抽出させ、抽出させたピーク位置を用いて透光性物体OBの各層の厚さを計算するようにしてもよい。さらに、正規のピーク位置に基づいて透光性物体OBの各層の厚さをマニュアルで作業者に計算させるようにしてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態においては、図4及び図12のデータ取得プログラムにおいて、ステップS102〜S132(S132’)の処理により5組のデータ群を取得するようにしたが、データ群は5組に限らず、他の組数でもよい。さらに、上記第1及び第2実施形態においては、図5のピーク間光路長計算プログラム及びピーク間距離計算プログラムにおいてピーク間光路長及びピーク間距離の測定が正確に行われないと判定された場合には、図4及び図12のデータ取得プログラムにおけるデータの取込みを3回行うようにしたが、この測定の回数も3回に限らず、他の回数でもよい。
また、上記第1実施形態においては、光路長可変装置50として三角状の回転反射体52を搭載した回転盤51を回転させる装置を用いたが、光路長を変化させることができ、光路長の変化量を検出できれば、どのような装置を用いてもよい。例えば、レーザ光を入射方向の反対方向に反射させる反射体を、レーザ光の入射方向に移動させる装置を用いてもよい。また、上記第1実施形態における光路長可変装置50に代えて、固定された反射体に測定部10から出射されるレーザ光を反射させて、測定部10に反射体から戻されるレーザ光の光路長を一定とし、透光性物体OBに入射するレーザ光を光軸方向に移動させる装置を設ける、すなわち透光性物体OB側にレーザ光の光路長を可変させる光路長可変装置を設けるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においては、光路長可変装置50の回転反射体52を反時計回りにして光路長を小さい側から大きくなる側に変化させたが、反時計回りに回転させて光路長を小さい側から大きい側に変化させてもよい。
さらに、上記第1実施形態においては、回転反射体52を2つの平面ミラーを90度の角度で配置したものにしたが、レーザ光を同様に反射させることができれば、どのような反射体を用いてもよい。例えば、90度の角度をなす2つの反射面を有するプリズムを2つの反射面が回転盤51の上面に対して垂直になるように回転盤51の上面に固定し、プリズムの2つの面を反射面として利用してもよい。この場合も、プリズムの2つの反射面の法線ベクトルの合成ベクトルを回転盤51の回転方向になる向きに設定するとともに、入射するレーザ光の光軸を前記2つの反射面に垂直な平面に対して平行になるように設定する。
また、上記第1実施形態及び前記変形例では、入射したレーザ光を入射方向と逆方向に出射する回転反射体52又はプリズムを回転盤51上に配置するとともに、入射するレーザ光の光軸が回転反射体52又はプリズムの2つの反射面に垂直な平面に対して平行になるように設定した。しかし、この回転反射体52又はプリズムの機能は、入射したレーザ光を反射して入射したレーザ光とは逆方向にレーザ光を出射することにあり、入射したレーザ光を反射して入射したレーザ光とは逆方向にレーザ光を出射する反射体であれば、いかなる反射体を用いてもよい。例えば、3つの反射面がそれぞれ互いに90度の角度をなすレトロリフレクタ(レトロ反射体)を用いることもできる。この場合、レトロリフレクタを、3つの反射面の法線ベクトルの合成ベクトルの方向(3つの反射面の交点を頂点とした3角錐の垂線方向)が回転盤51の回転方向になるように光路長可変装置50に配置すればよい。