JP5775700B2 - 直接加熱式の燻煙装置 - Google Patents

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Description

本発明は、直接加熱式の燻煙装置に関する。
ハエ、カ、ゴキブリ等の衛生害虫、細菌、カビ等の微生物等の有害生物の駆除等に、燻煙装置が汎用されている。燻煙装置は、燻煙剤又は燻蒸剤(以下、燻煙剤という)と、該燻煙剤を加熱する手段とを有するものである。燻煙剤は、種々の燃焼剤又は発泡剤等を混合した発熱性基剤と、有効成分である薬剤とが主成分である。このような燻煙装置では、加熱手段により発熱性基剤を燃焼又は分解し、生じた燃焼熱又は分解熱で薬剤を気化し、空気中に放出、拡散する。あるいは、発熱性基剤の分解により発生するガス又は煙粒子の働きにより、気化した薬剤を短時間の内に空気中に放出、拡散する(以下、薬剤の空気中への放出、拡散を揮散という)。こうして揮散した薬剤により、有害生物の防除等を行うことのできる優れた製剤である。
一般的に、燻煙装置における燻煙剤の加熱方法は、燻煙剤の一部分を直接加熱して燻煙剤を燃焼させる方法(直接加熱式)、酸化カルシウム等の加熱剤の水和反応熱により燻煙剤を加熱する方法(間接加熱式)に大別される。間接加熱方式の燻煙装置としては、例えば、殺虫薬剤とアゾジカルボンアミドとを混合した組成物を酸化カルシウムの水和反応熱等により間接加熱方式で加熱し、アゾジカルボンアミドの分解生成ガスにより薬剤を揮散させる燻煙装置が提案され(例えば、特許文献1〜2)、実用に供されている。
燻煙装置は、発熱性基剤の燃焼等を利用するため、不燃性の容器が用いられている。不燃性の容器としては、アルミニウムやブリキ等の金属製缶が用いられている。昨今では、ブリキの代替として、錫を用いない鋼板であるTFS(ティンフリースティール)が用いられるようになっている。このように、容器を金属製とすることで、燻煙中に容器が発火したり、加熱により変形したりすることを防止できる。
一方で、環境負荷の低減の観点から、燻煙装置の容器を紙製とする試みもなされている。例えば、紙製の容器に燻煙剤を入れ、アルミラミネートの蓋を有する燻煙容器が提案されている(例えば、特許文献3)。また、例えば、発熱物質を収容した外容器と、外容器の内部に配置され被加熱物質を収容した内容器とを備え、外容器の壁部材が紙層、合成樹脂層及び金属層からなる自己発熱装置が提案されている(例えば、特許文献4)。紙は金属に比べて熱伝導性が低いため、薬剤の揮散が不十分になるおそれがある。このため、特許文献3、4では、容器の一部に金属素材を用いることで、紙の熱伝導性を補っている。
また、燻煙時の発熱が外部、特に床設置面に伝わりにくくするため、燻煙剤組成物収納容器部の底面から有底外装容器部の底面とを離間した燻煙発生装置が提案されている(例えば、特許文献5)。
特公昭58−28842号公報 特公昭59−49201号公報 特開平6−7065号公報 特開2000−350547号公報 特開2002−199834号公報
しかしながら、燻煙剤組成物による発熱は高温であり、燻煙剤を使用する場所の、特に設置面の温度が60℃を超えるような場合には、フローリング素材等の設置面に焦げの発生、変色等の破損や変形等を来たすおそれがある。このように、容器の外周面、特に床設置部分が高温になると、燻煙中に床材の変質を来たすおそれがあることから、燻煙剤使用時に灰皿等の伝熱性の低い部材を使用場所に設置する等、取り扱いが煩雑であるという問題がある。
加えて、直接加熱式の燻煙装置は、間接加熱式の燻煙装置に比べて高温になるため、単に特許文献1〜4の技術を直接加熱式の燻煙装置に転用すると、外周面の焦げの発生や容器の変形を防止できないという問題がある。
さらに、特許文献5の技術では、燻煙剤組成物収納容器部及び有底外装容器部が金属又は樹脂製とされており、設置面の温度上昇の抑制が満足できるものではなかった。
そこで、本発明は、薬剤を十分に揮散でき、かつ容器の設置面の温度上昇を抑え、取り扱いが容易な直接加熱式の燻煙装置を目的とする。
本発明の直接加熱式の燻煙装置(以下、単に燻煙装置という)は、燻煙剤が充填された有底筒状の容器と、該容器の開口部に設けられ、通煙孔が形成された噴流板と、前記燻煙剤に着火する点火具とを備え、前記容器は、その基材が断熱性を有し、前記容器と前記噴流板とで区画された燻煙室に対応する内面は、赤外線反射素材で被覆されていることを特徴とする。
前記赤外線反射素材は、アルミニウムであることが好ましい。
本発明によれば、薬剤を十分に揮散でき、かつ容器の設置面の温度上昇を抑え、取り扱いが容易となる。
本発明の一実施形態にかかる直接加熱式の燻煙装置の断面図である。
本発明の一実施形態にかかる燻煙装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる燻煙装置8の断面図である。燻煙装置8は、燻煙剤50が充填された有底円筒状の容器10と、容器10の開口部に設けられた噴流板20と、点火具30とを備え、容器10と噴流板20とで区画された燻煙室11が形成されたものである。
噴流板20は、容器10の底面14側に設けられた噴流板下板24と、噴流板下板24の上方に、2〜15mm程度離間して設けられた噴流板上板22とを備えるものであり、噴流板20の略中央には、噴流板20に形成された露出孔を貫通して点火具30が設けられている。噴流板上板22には、燻煙剤50から揮散した薬剤を通流する通煙孔23が形成され、噴流板下板24には、燻煙剤50から揮散した薬剤を通流する通煙孔25が形成されている。点火具30は、略円柱状の点火剤36と、点火剤36の上端に設けられた着火部32と、点火剤36を噴流板20に固定する固定部34とで構成され、点火剤36の下端が燻煙剤50に挿入され配置されている。
噴流板下板24は、基材層26と、基材層26を赤外線反射素材で被覆した反射層27とで構成され、容器10は、基材層12と、基材層12の燻煙室11に対応する面を赤外線反射素材で被覆した反射層13とで構成されている。そして、反射層27と反射層13とが燻煙室11側とされることで、燻煙室11は反射層27と反射層13とで囲われたものとされる。
容器10の基材層12は、断熱性を有するものである。断熱性を有するとは、断熱性の指標である熱伝導率が、50%以下であることをいう。基材層12に用いる材質の熱伝導率は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。50%以下であれば、薬剤を効率的に揮散できると共に、容器10の外周面10aの温度上昇をより抑制できる。
基材層12の熱伝導率は、例えば、以下に示す方法により測定できる。
ヒーター(CORNING PC−400D(タイテック株式会社製))の発熱面に熱電対A(CS−11E−010−1−TC1−AMP、アンリツ株式会社製)を接触させ、ヒーターを300℃に発熱させる。
平板(40mm×40mm)状の基材層12を試料とし、この試料の一方の面に熱電対B(ST−11E−015、アンリツ株式会社製)を貼り付けたものを用意する。試料の他方の面をヒーターの発熱面に接触させ、熱電対A及び熱電対Bで測定した温度をサーモロガー(AM−8000E、アンリツ株式会社製)で記録する。ヒーターの発熱面に試料を接触させてから1分後の測定結果を用い、下記(1)式にて熱伝導率を算出する。
熱伝導率(%)=試料表面温度(℃)/ヒーター温度(℃)×100 ・・・(1)
このような材質としては、例えば、紙類又は紙類の成形加工品である紙製の材料、パルプやコットン等の不織布、コルク等を用いた木材製の材料又はこれらにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂層を設けた積層物、セラミックス等が挙げられる。中でも、基材層12は、紙製の材料又は木材製の材料が好ましく、紙製の材料がより好ましい。熱伝導性が比較的低い紙製や木材製のものを基材層12とすることで、外容器10の外周面10aの温度上昇を低減できる。加えて、紙製であれば、加工が容易である。
紙類は、JIS P0001で定義される「紙」の他、JIS P0001で定義される「板紙」を含む概念である。また、紙製とは、紙類、紙類の成形加工品でありJIS Z0104で定義される「段ボール」、JIS P0001で定義される不織布の内、紙の原料となるパルプを用いたものを含む概念である。
基材層12の材質としては、紙製の中でも、ライナー紙等の段ボール原紙、白板紙、色板紙等の紙器用板紙、防水原紙、紙管原紙等の雑板紙等の板紙、段ボールが好ましい。板紙、段ボールは、自立性を有するため成形が容易であると共に、高い断熱性を有するためである。
基材層12として板紙を用いる場合、板紙の坪量は、例えば、200〜1000g/mが好ましく、400〜1000g/mがより好ましい。200g/m以上であれば、必要な自立性を有すると共に、断熱性が高まり、薬剤をより効率的に揮散できる。1000g/m以下であれば、成形が容易である。
基材層12として段ボールを用いる場合、段ボールの坪量は、例えば、両面段ボール(中芯:Aフルート)であれば、200〜1000g/mが好ましく、500〜1000g/mがより好ましい。200g/m以上であれば、必要な自立性を有すると共に、断熱性が高まり、薬剤をより効率的に揮散できる。1000g/m以下であれば、成形が容易である。
基材層12としてコルクを用いる場合、コルクの密度は、0.1〜0.5g/cmが好ましく、0.2〜0.4g/cmがより好ましい。0.1g/cm未満であると、強度が不十分となるおそれがあり、0.5g/cm超であると、断熱性が不十分となるおそれがある。
基材層12の厚みは、容器10に求める強度や断熱性等を勘案して決定でき、例えば、1〜20mmとされる。
反射層13は、基材層12の表面に設けられた赤外線反射素材の膜又は層である。赤外線反射素材とは、波長1000nmにおける反射率(25℃環境下)が、70%以上のものである。
赤外線反射率は、JIS K5602に準じて測定できる。
赤外線反射素材としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、銀(Ag)、ニッケル・クロム(Ni−Cr)等の金属箔又は金属蒸着膜等が挙げられる。あるいは、これらの金属蒸着膜を形成した樹脂フィルムをガラス基材に貼り付けてなる熱線反射ガラスが挙げられる。中でも、赤外線の反射効率、製造の簡便性等の観点から、金属箔又は金属蒸着膜が好ましい。さらに、前記金属箔又は前記金属蒸着膜の材質としては、赤外線反射率80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましい。このような材質としては、アルミニウム、銀等が挙げられ、中でも、加工が容易であり、かつ安価であるアルミニウムがより好ましい。
反射層13の厚みは、例えば、1〜50μmとされる。
噴流板下板24の基材層26の材質は、容器10の基材層12と同様である。
基材層26の厚みは、噴流板下板24に求める強度等を勘案して決定でき、例えば、1〜20mmとされる。
噴流板下板24の反射層27は、反射層13と同様である。
通煙孔25の形状は、特に限定されず、円形、楕円形や、三角形、四角形等の多角形とすることができる。
通煙孔25の数は、燻煙剤50の種類に応じて決定できる。
通煙孔25の大きさは、燻煙剤50の種類に応じて決定でき、例えば、5〜15mmφとされる。
噴流板上板22の材質は、基材層26と同様である。
通煙孔23の形状は、通煙孔25と同様である。通煙孔25の数は、通煙孔23と同様である。通煙孔23の大きさは、通煙孔23と同様である。
なお、通煙孔23と25とは、形状、数、大きさがそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の燻煙剤装置は、燻煙剤50を直接的に加熱して使用される。
燻煙剤50は自己燃焼継続性を有するため、点火具30は、燻煙剤50の一部分を直接加熱し、燻煙を開始させるだけの熱を発生させるものとされる。即ち、点火具30を用いて燻煙剤50の一部分を加熱し、燻煙を開始させるだけの熱を発生させると、その後、外部から加熱しなくても、発熱性基剤の作用により燻煙剤50の燃焼が継続する。
点火剤36としては、発熱剤を金属製容器又はセラミック製容器等に充填したものが挙げられる。使用される発熱剤は、例えば、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、鉛丹、酸化鉄又は酸化銅等の酸化剤と、糖類、珪素、鉄、珪素鉄又はアルミニウム等の還元剤とを混合したものが挙げられる。
着火部32としては、マッチ頭薬等の容易に着火可能なものであれば、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。マッチ頭薬を有する着火部32とする場合、マッチ側薬(スリ板)を備えたスライド部材で着火部32を摩擦することにより着火するようなものとすることができる。マッチ側薬(スリ板)は、蓋や包装容器等の任意の位置に設けることができる。
固定部34は、着火部32を噴流板上板22の上方に位置させ、かつ点火剤36の下端を燻煙剤50に挿入した状態で支持できるものであれば特に限定されない。
燻煙剤50は、薬剤を含有し、この薬剤は、例えば、殺虫剤、忌避剤、誘引剤、昆虫成長調節剤等の害虫駆除剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤等の微生物駆除剤、芳香剤、消臭剤等が挙げられる。害虫駆除剤としては、例えば、ペルメトリン、アレスリン、レスメトリン、サイフェノトリン、プラレスリン、フェノトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系薬剤、フェニトロチオン、ジクロルボス(DDVP)、ダイアジノン、プロチオホス、バイテックス等の有機リン系薬剤、プロポクスル、メトキサジアゾン等のカーバメイト系薬剤等が挙げられる。微生物駆除剤としては、例えば、イソフタロニトリル、プロシミドン、バイレトン、モレスタン等の農薬用殺菌剤、サイアベンダゾール、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、IF−1000等の環境衛生用殺菌剤等が挙げられる。
これらの薬剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
燻煙剤50中の薬剤の配合量は、薬剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、1〜30質量%の範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、所望する薬剤効果が発揮されると共に、薬剤を効率的に揮散できる。
燻煙剤50には、必要に応じ発熱性基剤を配合できる。発熱性基剤としては、従来、燻煙剤に用いられる公知の発熱性基剤が挙げられ、中でも、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に炭酸ガスや窒素ガス等(以下、総じてガスという)を発生するものが用いられる。発熱性基剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ニトロセルロース、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。これらの発熱性基剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、中でも、ニトロセルロースとアゾジカルボンアミドとの組み合わせが好ましい。
燻煙剤50中の発熱性基剤の配合量は、薬剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、50〜85質量%の範囲で決定することが好ましく、60〜75質量%の範囲で決定することがより好ましい。上記範囲内であれば、所望する薬剤効果が発揮されると共に、薬剤を効率的に揮散できる。
燻煙剤50には、本発明の効果を阻害しない範囲で、発熱助剤、安定剤、結合剤、賦形剤、香料、色素等の添加剤を配合できる。これらのうち、特に、発熱助剤、安定剤、結合剤及び賦形剤のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましい。
発熱助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、尿素等が挙げられる。
燻煙剤50中、発熱助剤の含有量は、燻煙剤の総質量の0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
安定化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等)等が挙げられる。
結合剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
賦形剤としては、クレー(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク、珪藻土、カオリン、ベントナイト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
燻煙剤50の充填量は、燻煙の対象とする空間の規模、燻煙剤50中の薬剤の種類や配合量等を勘案して決定でき、例えば、6〜8畳(10〜13m)当たり10〜30gとされる。
燻煙剤50は、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として調製される。固形製剤は、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法を用いて調製することができる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒物の製造方法により製造できる。
押出し造粒法による製造方法の具体例としては、燻煙剤50の各成分を、ニーダー等により混合し、さらに適量の水を加えて混合し、得られた混合物を一定面積の開孔を有するダイスを用い、前押し出しあるいは横押し出し造粒機を用い造粒する。該造粒物は、さらにカッター等を用いて一定の大きさに切断し乾燥してもよい。
次に、燻煙装置8を用いた燻煙方法について、発熱性基剤として、加熱により熱分解して熱及びガスを発生するものを用いた場合について説明する。
まず、燻煙装置8を使用する場所に静置し、着火部32をマッチ側薬で擦り着火する。着火部32が着火すると、点火剤36の内部が加熱され、これに伴い点火剤36と燻煙剤50との接触部分から燻煙剤50に熱が伝播する。そして、任意の熱量が燻煙剤50に伝播すると、燻煙剤50は燃焼する。その後、燻煙剤50は、燃焼が継続され、燻煙剤50全体に燃焼熱が伝達される。この際、容器10及び噴流板下板24は、その内面が赤外線反射素材により被覆されているため、燃焼熱が燻煙室11内に反射される。反射された燃焼熱は、容器10外に放熱されずに速やかに燻煙剤50全体に伝達される。
燻煙剤50は、任意の温度に達すると、薬剤が気化すると共に、発熱性基剤が分解しガスを発生する。そして、気化した薬剤はガスと共に通煙孔から流出し、空気中に拡散する。
本発明によれば、容器の基材が断熱性を有するため、容器の底面の温度上昇を抑制できる。加えて、燻煙剤の燃焼熱が赤外線反射素材により燻煙室内に蓄積されるため、燻煙剤を任意の温度まで急速に加熱し、薬剤を十分に揮散できる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、噴流板下板が、断熱性を有する基材に赤外線反射素材を被覆したものとされているが、例えば、噴流板下板は、断熱性を有しない基材に赤外線反射素材を被覆したものであってもよい。ただし、効率的に薬剤を揮散させる観点から、噴流板下板は、断熱性を有する基材に赤外線反射素材を被覆したものが好ましい。
また、上述の実施形態では、噴流板上板が紙製とされているが、例えば、噴流板上板が金属、セラミックス等であってもよいし、紙製の基材に赤外線反射素材を被覆したものであってもよい。
上述の実施形態では、容器が有底円筒状とされているが、有底筒状であればよく、例えば、有底多角筒状であってもよい。また、容器の底面は、凹面又は凸面とされていてもよい。
燻煙装置は、その流通中に、噴流板に形成された通煙孔から燻煙剤が漏出する場合がある。このため、噴流板に形成された通煙孔を塞ぐ部材が設けられていてもよい。この部材は、例えば、噴流板下板の燻煙室に対応する面に設けられ、燻煙剤の燃焼により溶融するフィルム等が挙げられる。
以下に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(使用原料)
[燻煙剤]
<薬剤>
・ペルメトリン:エクスミン(商品名)、住友化学株式会社製
<発熱性基剤>
・ニトロセルロース:TV綿(商品名)、T.N.C INDUSTRIAL CO.,LTD製
・アゾジカルボンアミド(ADCA):ダイブローAC.2040(C)(商品名)、大日精化工業株式会社製
<発熱助剤>
・酸化亜鉛:日本薬局方 酸化亜鉛、真比重5.6g/cm(20℃)、堺化学工業株式会社製
<結合剤>
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC):メトローズ60SH−50(商品名)、信越化学工業株式会社製
<賦形剤>
・クレー:NK−300(商品名)、昭和KDE株式会社製
[燻煙装置]
<容器>
≪仕様A−1≫
・基材層:ライナー紙、厚み1.3mm、坪量400g/m、熱伝導率44.7%
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm、赤外線反射率94%
≪仕様A−2≫
・基材層:ライナー紙、厚み3mm、坪量800g/m、熱伝導率23.8%
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm、赤外線反射率94%
≪仕様A−3≫
・基材層:段ボール;両面段ボール(表面及び裏面;坪量180g/m、中芯;坪量160g/m、Aフルート)、厚み5mm、坪量520g/m、熱伝導率;25.5%
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm、赤外線反射率94%
≪仕様A−4≫
・基材層:コルク、厚み2mm、密度0.24g/cm、熱伝導率31.5%
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm、赤外線反射率94%
≪仕様A−5≫
・単層:TFS板(Tin Free Steel、缶飲料用で汎用の鋼板)、厚み;0.25mm、赤外線反射率72%、熱伝導率62.5%
≪仕様A−6≫
・単層:ライナー紙、厚み1.3mm、坪量400g/m、熱伝導率44.7%
≪仕様A−7≫
・単層:ライナー紙、厚み3mm、坪量800g/m、熱伝導率23.8%
<噴流板>
≪仕様B−1≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−1の基材層に用いたライナー紙
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−1の基材層に用いたライナー紙
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm
≪仕様B−2≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−2の基材層に用いたライナー紙
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−2の基材層に用いたライナー紙
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm
≪仕様B−3≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−3の基材層に用いた段ボール
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−3の基材層に用いた段ボール
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm
≪仕様B−4≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−4の基材層に用いたコルク
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−4の基材層に用いたコルク
・反射層:アルミニウム箔、厚み9μm
≪仕様B−5≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−5に用いたTFS板
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−5に用いたTFS板
≪仕様B−6≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−6に用いたライナー紙
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−6に用いたライナー紙
≪仕様B−7≫
[噴流板上板]
・点火具の着火部の露出孔:φ8mm×1個
・通煙孔:露出孔の周縁回りにφ6mmの通煙孔を等間隔で4個形成
・基材層:仕様A−7に用いたライナー紙
[噴流板下板]
・点火具の着火部の露出孔:φ13mm×1個
・通煙孔:露出孔を中心に、幅2mm×長さ9mmの長方形のスリットを放射状に15個形成
・基材層:仕様A−7に用いたライナー紙
<点火具>
市販の直接加熱式の燻煙剤装置(商品名:バルサンSPジェット25g、ライオン株式会社製)に付属の点火具を用いた。
(実施例1〜4、比較例1〜4)
[燻煙剤の調製]
表1に示す燻煙剤混合物の組成に従い、水以外の成分をらいかい機(石川式攪拌らいかい機)に投入し混合した。混合後、水を加えさらに混合し、燻煙剤混合物を得た。得られた燻煙剤混合物を直径2mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機(EXK−1、株式会社不二パウダル製)を用い造粒し造粒物を得た。得られた造粒物を長さ2〜5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(RT−120HL、アルプ株式会社製)により、109.5質量部から100質量部にまで乾燥させ、顆粒状の燻煙剤を得た。
[燻煙装置の作製]
表1の仕様に従い、図1の燻煙装置8と同様の燻煙装置を作製した。各仕様の容器材質を直径65mm、高さ50mmの有底円筒形に成形して、容器を作製した。
次いで、「[燻煙剤の調製]」で得られた燻煙剤25gを容器に充填した。容器の開口部に、反射層が容器の底面に向くように、各仕様の噴流板下板を装着し、さらに各仕様の噴流板上板を装着した。噴流板に形成された点火具の露出孔に点火具を挿入して装着し、燻煙装置を作製した。作製した燻煙装置にて燻煙を行い、薬剤の揮散率及び容器底面の最高到達温度(底面温度)を測定した。求めた揮散率及び底面温度を表1に示す。
(評価方法)
[薬剤の揮散率]
各例で作製した燻煙装置を、内容積6.38m(6380L)試験室の中央に設置した。市販の直接加熱式燻煙剤製品(「バルサンSPジェット25g」(ライオン株式会社製)付属のスリ板薬を用いて着火部を着火し、燻煙剤を自己燃焼させ、燻煙を開始した。燻煙開始5分後に、試験室内の空気をファンで攪拌した。攪拌後、真空ポンプを用いて試験室内の空気20Lを回収用カラムに通流した。該回収用カラムは、Sep−Pak Plus(PS−2 Cartridge、ウォーターズ社製)を使用し、試験室内に揮散した薬剤を吸着させた。
次いで、薬剤を吸着させた後、アセトンを回収用カラムに通流し、通流したアセトンを回収した。こうして、クロマト用シリカゲルに吸着した薬剤を溶出させた。回収したアセトンを試料として、ガスクロマトグラフ法によりアセトン中の薬剤量(A)を定量した。一方、燻煙剤中の薬剤量(B)をガスクロマトグラフ法により定量した。これらの定量結果から、下記(2)式により揮散率を算出した。
揮散率(質量%)=(A/20L)×(1/B)×6380L×100%・・・(2)
[容器底面の温度(底面温度)]
各例の燻煙装置を、縦3.42m×横3.82m×高さ2.40mの試験室の中央に設置した。各例の燻煙装置の容器底面に熱電対静止表面用温度センサ(ST−23E−015−TS1−ANP、安立計器株式会社製、以下、単に温度センサという)を耐熱テープで貼付した。温度センサを貼付した燻煙装置で燻煙を開始し、燻煙中の容器底面の温度は、温度センサにより1秒毎の経時温度として計測した。計測データは、データロガー(COMPACT THERMO LOGGER AM−8000E、安立計器株式会社製)により取得した。燻煙終了後、データロガーに記録された計測温度中から、最高到達温度を抽出し、その結果を表1に底面温度として記載した。
Figure 0005775700
表1に示すとおり、本発明を適用した実施例1〜4は、いずれも薬剤の揮散率が75質量%以上であり、かつ底面温度が60℃以下に抑えられていた。
一方、容器をTFS製とした比較例1は、薬剤の揮散率が65質量%と高いものの、熱伝導率が高いことから底面温度は164℃に達していた。また、噴流板下板に反射層を有しない比較例2は、底面温度が54℃であったものの、薬剤の揮散率が67質量%と低かった。また、容器を厚み1.3mmの紙製とし、容器内面に反射層を設けなかった比較例3は、底面温度が127℃であり、薬剤の揮散率は60質量%と低いものであった。また、容器の厚みを3mmの紙製とした比較例4は、底面温度が83℃だったが、容器内面に反射層を設けなかったため薬剤の揮散率が54質量%と低いものであった。
以上の結果から、容器の基材が断熱性を有し、かつ燻煙室に対応する面が赤外線反射素材で被覆された本発明の燻煙装置は、薬剤を十分に揮散でき、かつ床設置面の温度上昇を抑え、取り扱いが容易となることが判った。
8 直接加熱式の燻煙装置
10 容器
11 燻煙室
12、26 基材層
13、27 反射層
20 噴流板
23、25 通煙孔
30 点火具
50 燻煙剤

Claims (2)

  1. 燻煙剤が充填された有底筒状の容器と、該容器の開口部に設けられ、通煙孔が形成された噴流板と、前記燻煙剤に着火する点火具とを備え、
    前記容器と前記噴流板とで区画されて燻煙室が形成され、
    前記容器は、その基材が断熱性を有し、前記燻煙室に対応する内面が赤外線反射素材で被覆され、
    前記噴流板は、前記燻煙室に対応する面が赤外線反射素材で被覆されていることを特徴とする直接加熱式の燻煙装置。
  2. 前記噴流板は、噴流板下板と、前記噴流板下板の上方に、該噴流板下板と離間して設けられた噴流板上板と、を備え、
    前記容器と前記噴流板下板とで区画されて燻煙室が形成され、
    前記噴流板下板は、前記燻煙室に対応する面が赤外線反射素材で被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載の直接加熱式の燻煙装置。
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