JP5773892B2 - 水処理方法及び水処理装置 - Google Patents
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Description
従って、本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、カルシウムイオンの添加量が少ないかもしくはカルシウムイオンを添加しなくても、ホウ素を高効率に除去できる水処理方法及びそれに用いる水処理装置を提供することを目的とする。
イオン交換水に、CaCl2を10mmol/L、NaHCO3を2.4mmol/L、MgCl2を53mmol/L、Na2SO4を28mmol/L、NaClを400mmol/L、NaBrを0.8mmol/L、KClを9.7mmol/L、H3BO3を0.4mmol/L溶解させた人工海水を作製した。人工海水に含まれる各イオンの濃度は表1に示す通りである。
ビーカー中の人工海水1Lに水酸化ナトリウム溶液を滴下してpHを11とした。その後、放置した。
<実験2>
ビーカー中の人工海水1Lに水酸化ナトリウム溶液を滴下してpHを11とした。5分後、塩酸を滴下してpHを9まで下げ、その後、放置した。
実験1及び実験2は、25℃の水温で行った。
図1は、実験1及び実験2におけるpHの経時変化を示したグラフである。水酸化ナトリウム溶液の滴下によりpHを11に調整した後、自然に降下させた実験1では、40分程度でpHが8まで下がり、その後も減少し続けた。一方、実験開始5分後の時点で塩酸の滴下によりpHを9まで降下させた実験2では、その後のpHの減少が緩やかとなり、pHが8に到達するのは120分後であった。
表2は、各実験のホウ酸イオン濃度及び経過時間のデータである。
また、水中の炭酸イオンとカルシウムイオンとの反応系は、以下の式で表される。
CO2(aq)+H2O⇔H2CO3(aq) (1)
H2CO3(aq)⇔HCO3 −(aq)+H+ (2)
HCO3 −(aq)⇔CO3 2−(aq)+H+ (3)
H2O⇔H++OH− (4)
Ca2+(aq)+CO3 2−(aq)⇔CaCO3(s) (5)
炭酸カルシウム結晶(CaCO3(s))の析出が起こると、式(5)の反応が右に進行し、水中の炭酸イオン(CO3 2−(aq))が減少する。すると、炭酸イオンの減少分を補うべく、式(2)及び式(3)の反応も右に進行し、水素イオン(H+)が水中に放たれるため、pHは低下するというものである。
一方、実験2では、実験開始5分後にpHを強制的に9まで低下させたので、炭酸カルシウム結晶核の生成は抑制されたものと考えられる。その後、実験1と同様に、生成した炭酸カルシウム結晶核を基点に結晶成長が進行したと考えられるが、核生成と比べて結晶成長は緩やかに反応が進行するため、pHの減少も緩やかであったと考えられる。その結果、炭酸カルシウム結晶核の結晶成長に好適なpH領域であると考えられるpH8〜9の時間が長くなり、炭酸カルシウム結晶へのホウ酸イオンの取り込み量が増加したものと考えられる。これらのことから、炭酸カルシウムの析出初期に発生する「均一核」は、炭酸カルシウムの純物質であるため、この反応が支配的な状況下では、ホウ酸イオンなど他のイオンを取り込んだ複塩の生成は進み難く、むしろ、多孔質の炭酸カルシウム結晶成長が進行する過程で、ホウ酸イオンが多く取り込まれるということが分かった。
即ち、本発明は、ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を増大させて、炭酸カルシウム結晶核を生成させる第1工程と、ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を低下させて、炭酸カルシウム結晶核の生成を抑制すると共に、第1工程で生成した炭酸カルシウム結晶核を結晶成長させつつ結晶中にホウ酸イオンを取り込む第2工程と、第2工程で得られたホウ酸イオン含有炭酸カルシウム結晶をホウ素含有水から分離する第3工程とを有することを特徴とする水処理方法である。
また、本発明は、ホウ素含有水を受け入れる処理槽と、ホウ素含有水のpHを計測するpH計測手段と、処理槽にアルカリを添加するアルカリ添加手段と、処理槽に酸を添加する酸添加手段と、pH計測手段で計測されたpH値に基づいてアルカリ添加手段によるアルカリの添加量及び酸添加手段による酸の添加量を制御する制御手段であって、受け入れたホウ素含有水のpHが10超になるまでアルカリを添加した後、ホウ素含有水のpHが10に低下した時点で酸の添加を開始し、pHが8超10未満になったら酸の添加を停止する制御手段と、処理槽中のホウ素含有水から炭酸カルシウム結晶を分離する分離手段とを備えることを特徴とする水処理装置である。
図2は、実施の形態1による水処理装置を説明するための図である。本実施の形態による水処理装置は、ホウ素含有水(例えば海水)を受け入れて、ホウ素除去処理を行うための処理槽1と、処理槽1中のホウ素含有水のpHを計測するためのpH計2とを備えている。pH計2は、信号線2aを介してコントローラ3と接続されている。処理槽1には、ホウ素含有水を処理槽1に導くための配管1aと、処理後のホウ素含有水を処理槽1から排出するための配管1bとが接続されている。これらの配管1a及び配管1bにはそれぞれ導入用弁4及び排出用弁5が設けられている。導入用弁4及び排出用弁5はそれぞれ信号線4a及び信号線5aを介してコントローラ3と接続されている。更に、処理槽1には、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム溶液)を貯えておくためのアルカリ貯留槽6が配管6aを介して接続されると共に、酸(例えば塩酸溶液)を貯えておくための酸貯留槽7が配管7aを介して接続されている。これらの配管6a及び配管7aの途中にはそれぞれアルカリ供給用ポンプ8及び酸供給用ポンプ9が設置されている。アルカリ供給用ポンプ8及び酸供給用ポンプ9はそれぞれ信号線8a及び信号線9aを介してコントローラ3と接続されている。コントローラ3は、pH計2で計測されたホウ素含有水のpH値に基づくアルカリ供給用ポンプ8及び酸供給用ポンプ9の駆動と停止、並びにホウ素含有水の導入と排出を制御するものである。
なお、アルカリとしては水酸化ナトリウム溶液に限定されるものではなく、水酸化カリウム溶液等の他のアルカリ性溶液を用いることができる。また、酸としても塩酸溶液に限定されるものではなく、硫酸溶液等の他の酸性溶液を用いることができる。
処理槽1から排出されたホウ素含有水に浮遊しているホウ酸イオン含有炭酸カルシウム結晶を分離する第3工程は、特に限定されるものではなく、沈降分離、膜分離又は吸着材への吸着により行うことができる。
図3は、実施の形態2による水処理装置を説明するための図である。実施の形態2による水処理装置では、ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を増大させて、炭酸カルシウム結晶核を生成させる第1工程と、ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を低下させて、炭酸カルシウム結晶核の生成を一旦停止すると共に、第1工程で生成した炭酸カルシウム結晶核を結晶成長させつつ結晶中にホウ酸イオンを取り込む第2工程とを別個の処理槽で行う点が実施の形態1と異なる。
なお、アルカリとしては水酸化ナトリウム溶液に限定されるものではなく、水酸化カリウム溶液等の他のアルカリ性溶液を用いることができる。また、酸としても塩酸溶液に限定されるものではなく、硫酸溶液等の他の酸性溶液を用いることができる。
ここで、第1処理槽1Aは、アルカリの添加により制御されるホウ素含有水のpHに応じて、ホウ素含有水の滞留時間が1〜10分となるような容量に設計されている。例えば、ホウ素含有水のpHを10.1程度に維持する場合、第1処理槽1Aは、ホウ素含有水の滞留時間が10分程度となるような容量に設計され、ホウ素含有水のpHを12程度に維持する場合、第1処理槽1Aは、ホウ素含有水の滞留時間が1分程度となるような容量に設計される。これにより、第1処理槽1A内で、炭酸カルシウム結晶核の適度な生成を維持することができる。
ここで、第2処理槽1Bは、酸の添加により制御されるホウ素含有水のpHに応じて、ホウ素含有水の滞留時間が90分〜120分となるような容量に設計されている。これにより、第2処理槽1B内で、炭酸カルシウム結晶核の成長を促し、ホウ酸イオンの取り込みを十分に行うことができる。
第2処理槽1Bから排出されたホウ素含有水に浮遊しているホウ酸イオン含有炭酸カルシウム結晶の分離方法は、特に限定されるものではなく、沈降分離、膜分離又は吸着材への吸着により行うことができる。
Claims (6)
- ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を増大させて、炭酸カルシウム結晶核を生成させる第1工程と、
ホウ素含有水における炭酸カルシウムの過飽和度を低下させて、炭酸カルシウム結晶核の生成を抑制すると共に、第1工程で生成した炭酸カルシウム結晶核を結晶成長させつつ結晶中にホウ酸イオンを取り込む第2工程と、
第2工程で得られたホウ酸イオン含有炭酸カルシウム結晶をホウ素含有水から分離する第3工程と
を有することを特徴とする水処理方法。 - 前記第1工程では、ホウ素含有水のpHを10超に調整することにより、炭酸カルシウムの過飽和度を増大させ、前記第2工程では、ホウ素含有水のpHを8超10未満に調整することにより、炭酸カルシウムの過飽和度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
- 前記第1工程における炭酸カルシウム結晶核の生成を、ホウ素含有水のpHが10になるまで続けた後、前記第2工程に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の水処理方法。
- 前記第1工程では、ホウ素含有水を加熱することにより、炭酸カルシウムの過飽和度を増大させ、前記第2工程では、ホウ素含有水を冷却することにより、炭酸カルシウムの過飽和度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
- ホウ素含有水を受け入れる処理槽と、
ホウ素含有水のpHを計測するpH計測手段と、
処理槽にアルカリを添加するアルカリ添加手段と、
処理槽に酸を添加する酸添加手段と、
pH計測手段で計測されたpH値に基づいてアルカリ添加手段によるアルカリの添加量及び酸添加手段による酸の添加量を制御する制御手段であって、受け入れたホウ素含有水のpHが10超になるまでアルカリを添加し、炭酸カルシウム結晶核を生成させ、ホウ素含有水のpHが10に低下した時点で酸の添加を開始し、炭酸カルシウム結晶核の生成を抑制すると共に、炭酸カルシウム結晶核を結晶成長させつつ結晶中にホウ酸イオンを取り込み、pHが8超10未満になったら酸の添加を停止する制御手段と、
処理槽中のホウ素含有水から炭酸カルシウム結晶を分離する分離手段と
を備えることを特徴とする水処理装置。 - ホウ素含有水を受け入れる第1処理槽と、
第1処理槽中のホウ素含有水のpHを計測する第1pH計測手段と、
第1処理槽にアルカリを添加するアルカリ添加手段と、
第1pH計測手段で計測されるpH値が10超を維持するように、アルカリ添加手段からのアルカリ添加量を制御することにより炭酸カルシウム結晶核を生成させる第1制御手段と、
第1処理槽から排出されたホウ素含有水を受け入れる第2処理槽と、
第2処理槽中のホウ素含有水のpHを計測する第2pH計測手段と、
第2処理槽に酸を添加する酸添加手段と、
第2pH計測手段で計測されるpH値が8超10未満を維持するように、酸添加手段からの酸添加量を制御することにより炭酸カルシウム結晶核の生成を抑制すると共に、炭酸カルシウム結晶核を結晶成長させつつ結晶中にホウ酸イオンを取り込む第2制御手段と、
第2処理槽中のホウ素含有水から炭酸カルシウム結晶を分離する分離手段と
を備えたことを特徴とする水処理装置。
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