以下、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図16を参照して説明する。
図1乃至図16は、本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS1)を説明するものである。図1は、車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。図2は、車両用シートS1の斜視図である。図3は、クッションフレーム11の斜視図である。図4は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。図5は、シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。図6は、ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。図7乃至9は、ヘッドレスト回動機構50を示す図であり、図7は、ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図であり、図8は、後側から見たときの図であり、図9は、斜視図である。図10は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。図11は、シートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。図12及び図13は、シートバック倒伏機構70についての説明図であり、図12は、シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図であり、図13は、ロック機構72及び操作部77の斜視図である。図14は、アレンジユニット80を裏側から見たときの図である。図15A乃至図15Dは、アレンジユニット80の動作例を示す図である。図16は、配索空間ASの説明図である。
なお、図中の記号FRは車両前方を、記号RRは車両後方を、記号UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム21の幅方向と一致する方向である。また、シートバックフレーム21の高さ方向とは、シートバックフレーム21の幅方向と交差する方向であり、シートバック20の前方への倒伏により切り替わる方向である。
車両用シートS1は、乗物用シートの一例であり、図1に示すように、自動車の車体後部に荷室スペースを有する車両1に後部座席として搭載されるものであって、特に、本実施形態ではワゴン型の自動車に搭載されるものである。
車両用シートS1の構成について説明すると、本実施形態では、右側(運転席側)の車両用シートS11と、左側(助手席側)の車両用シートS12とに分かれており、各車両用シートS11,S12は、シートクッション10とシートバック20とヘッドレスト30とを備えている。なお、各車両用シートS11,S12のシートバック20間には、アームレスト40が配置されており、左側の車両用シートS12においては、図2にてアームレスト40の下方に位置した台座部20aとシートバック20とが一体化されており、図2にて台座部20aの下方位置に配置された張出部10aとシートクッション10とが一体化されている。
以上の点において右側の車両用シートS11と左側の車両用シートS12とは相違するものの、基本構成に関して言えば、両車両用シートS11,S12は共通する。そのため、以下の説明では、右側の車両用シートS11の構成についてのみ説明する。
車両用シートS1は、その姿勢を、乗員が着座可能な通常の姿勢(図1にて破線で示す姿勢であり、以下、着座姿勢)から、不使用時に荷室部3が形成されるように収納された姿勢(図1にて実線で示す姿勢であり、以下、収納姿勢)へ切り替えることが可能である。具体的に説明すると、車両用シートS1の姿勢を収納姿勢に切り替えるにあたって、シートクッション10が車両前方に向けて跳ね上げられる。また、シートクッション10の跳ね上げに連動して、シートバック20が前方に回動し、車体フロア2上の、跳ね上がる前のシートクッション10が配置されていた位置に倒伏するようになっている。さらに、ヘッドレスト30が、シートバック20の上方で略鉛直に配設された状態から約90度前方に回動し、シートバック20が車体フロア2上に倒れ込んだ際には、前方に跳ね上がったシートクッション10と倒伏したシートバック20との間に格納されるようになる。
以上の一連の動作(以下、収納動作とも言う)により、車両用シートS1は、コンパクトな姿勢で収納することが可能である。そして、上記構成の車両用シートS1をリアシートとして採用する車両1では、当該車両用シートS1の後方に、車体フロア2の一部を構成する荷室部3が形成され、この荷室部3は、車両用シートS1の収納動作によって利用可能なサイズになるまで拡張されるようになる。
以上までに説明してきた通り、車両用シートS1は、その姿勢を着座姿勢及び収納姿勢に切り替え可能に構成されている。さらに、本実施形態では、着座姿勢からヘッドレスト30のみを前方に倒した姿勢への切り替えや、収納姿勢からシートバック20のみを起こした姿勢への切り替えも可能である。こうした多彩なシートアレンジは、車両用シートS1に具備された種々の駆動機構(具体的には、後述するヘッドレスト回動機構50、シートクッション跳ね上げ機構60、シートバック倒伏機構70等)によって実現されるものである。以下、車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成について説明する。
なお、以下の説明中、シートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の着座位置とは、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある際のシートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の位置である。また、シートクッション10の跳ね上げ位置とは、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートクッション10の位置であり、収納位置に相当する。シートバック20及びヘッドレスト30の倒れ位置とは、それぞれ、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートバック20及びヘッドレスト30の位置である。
<<車両用シートS1の基本構成>>
車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成を説明するにあたり、車両用シートS1の基本構成について説明する。車両用シートS1は、前述したように、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。
シートクッション10は、図3に示すクッションフレーム11に表皮材を取り付けることにより構成される。表皮材の取り付けは、表皮材の端末に縫製された不図示のトリムコードをクッションフレーム11の外縁に掛止することによって行われる。
また、シートクッション10の下部には、図4に示すシートクッション跳ね上げ機構60が配設されている。シートクッション跳ね上げ機構60は、車体フロア2上に固定されており、シートクッション10を支持すると共に、車両用シートS1を収納するにあたり、シートクッション10を着座位置から跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。
つまり、シートクッション10は、シートクッション跳ね上げ機構60を介して車体フロア2上の着座位置に固定され、シートクッション跳ね上げ機構60が作動すると、着座位置から跳ね上げ位置に向かって跳ね上がるように構成されている。換言すると、シートクッション10は、着座位置と跳ね上げ位置との間を往復移動することが可能である。
なお、シートクッション跳ね上げ機構60は、ストライカロック機構100を備えている。ストライカロック機構100は、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にあるときにシートクッション10を着座位置に固定させるものである。シートクッション跳ね上げ機構60及びストライカロック機構100については後に詳述する。
シートバック20は、図5に示すシートバックフレーム21にクッション材としてのウレタンを当てて表皮材で覆うことにより構成される。換言すると、シートバック20は、内部にシートバックフレーム21を備えている。シートバックフレーム21は、シートバックフレーム21の基部をなす板状のパンフレーム22と、シートバックフレーム21の外枠をなすパイプフレーム23とを有する。パンフレーム22は、略矩形状の板金に対して剛性確保のためのビード加工等の加工処理を施すことにより成形される。そして、パンフレーム22の前面には、後述のヘッドレスト回動機構50やアレンジユニット80が取り付けられている。
パイプフレーム23は、パンフレーム22を囲うようにパンフレーム22の外縁に沿って取り付けられており、パンフレーム22と溶接にて接合されている。なお、パイプフレーム23のうち、上下方向においてシートバック20の下部に位置する部分、及び、左右方向において車両1の外に面する部分は、シートバック20の厚み方向においてパンフレーム22との間に隙間を設けた状態で配設されている。かかる隙間が形成されている理由は、例えば、シートバックフレーム21に当てられたクッション材としてのウレタンの端部をパンフレーム22とパイプフレーム23との間に挟み込んで保持するため等である。
さらに、シートバックフレーム21の上端部のうち、後述するピラー33の後側に位置する部分には、下向きコの字状のブラケットからなるピラー倒れ規制部25が設けられている。ピラー倒れ規制部25は、ヘッドレスト30が着座位置に位置する時にピラー33の後方への回動(倒れ)を規制する規制部に相当する。なお、ピラー倒れ規制部25は、ピラー33毎に設けられ(すなわち、2個設けられ)、パイプフレーム23の上端部に溶接止めされている。
以上のような構成のシートバック20は、その回動軸20bを、車体フロア2に固定されたシートバック支持ユニット90(例えば、図12参照)の孔部に嵌合させ、シートバック支持ユニット90に回動可能に支持されている。これにより、シートバック20は、車体フロア2に対して前後方向へ回動可能となり、着座位置と倒れ位置との間を移動することが可能となる。換言すると、本実施形態に係るシートバック20は、前方に倒伏することが可能なように構成されている。
なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してシートバック20が前方に倒伏するようになっている。さらに、本実施形態では、シートバック20のみを単独で前方に倒すことも可能である。
ヘッドレスト30は、シートバック20(換言すると、シートバックフレーム21)の上方に設けられており、図6に示す逆U字状の内部フレーム31と表皮材との間に発泡剤を充填することにより構成される。逆U字状の内部フレーム31の両側にある脚部31aは中空状であり、各脚部31aの内部には中空棒状のガイド32を収容する空間が形成されている。ガイド32は、脚部31a内に収容され、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bに設けられた挿入孔(不図示)を通じて進退自在に構成されている。なお、ヘッドレスト30の表皮材には、ガイド32の末端部が表皮材の外側に位置するように通し孔(不図示)が設けられている。
以上のような構成のヘッドレスト30において、ガイド32が内部フレーム31の脚部31a内で最も後退した位置に位置している状態(下端フランジ32aを除き、脚部31a内に収納された状態)では、ヘッドレスト30の表皮材のうち、上記の通し孔周りの部分が、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bとガイド32の下端フランジ32aとに挟まれるようになっている。
また、本実施形態において、ヘッドレスト30は、金属棒からなる一対のピラー33(図5参照)がガイド32内に挿入された状態で当該ピラー33に支持され、さらに、各ピラー33は、後述のヘッドレスト回動機構50のケーシング51に回動自在に支持されている。
そして、ヘッドレスト30は、ヘッドレスト回動機構50により、シートバック20の上方で起立した状態から前方に約90度倒れた状態になるまで回動することが可能である。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してヘッドレスト30が前方に倒れるように回動可能となっており、さらには、ヘッドレスト30のみを単独で前方に倒すことも可能である。
<<ヘッドレスト回動機構>>
次に、ヘッドレスト回動機構50について説明する。
ヘッドレスト回動機構50は、第3動作機構に相当し、ピラー33を前方に回動させることにより、ヘッドレスト30を前方に倒伏させるための動作を実行する機構である。このヘッドレスト回動機構50は、不図示の樹脂カバーに覆われた状態でシートバックフレーム21の前側上部に固定されている。
ヘッドレスト回動機構50は、図7乃至図9に示すように、ケーシング51と、付勢バネ52と、ロック部材53と、スライド部材54と、を有する。
ケーシング51は、ヘッドレスト回動機構50の筐体をなし、本実施形態では略矩形状の金属プレートを重ね合せて構成されており、その内部にはロック部材53やスライド部材54が収容されている。また、ケーシング51は、上部にて、ピラー33を回動可能に支持している。付勢バネ52は、ピラー33を前方に付勢する付勢部材の一例であり、ケーシング51の裏面(後面)側に設けられている。
ロック部材53は、付勢バネ52の付勢力に抗してピラー33を起立状態で維持しておくためにピラー33と係合する金属片部材である。ここで、起立状態とは、ヘッドレスト30が起立してシートバック20の上方に位置している際のピラー33の配置状態(換言すると、ヘッドレスト30が着座位置に位置している状態)を意味している。
ロック部材53の構成についてより詳しく説明すると、図9に示すように、ピラー33は、車両用シートS1の高さ方向(換言すると、シートバックフレーム21の高さ方向)に沿って伸びた鉛直部33aと、鉛直部33aの下部に隣接し左右方向(換言すると、シートバックフレーム21の幅方向)に沿って延びた水平部33bと、水平部33bの端部には略扇状のピラー側係合部33cを有する。そして、ロック部材53は、ピラー側係合部33cに形成された切欠き33dに嵌まり込むことで、ピラー33と係合してピラー33を起立状態に維持する。
さらに、ロック部材53は、ケーシング51内で揺動自在に支持されており、ケーシング51の外に一部を露出させてピラー側係合部33cの切欠き33dに嵌め込むことが可能な位置(係合位置)と、露出させていた部分をケーシング51内に収めて切欠き33dから脱した位置(解除位置)との間を移動する。
スライド部材54は、ケーシング51内に収容された長尺体(具体的にはラチェットレバー)であり、ロック部材53を揺動させるためにシートバックフレーム21の幅方向に沿ってスライド移動するものである。スライド部材54は、通常時には、ロック部材53を係合位置に至らせるポジションにある。そして、スライド部材54がその長手方向一端側にスライドすると、ロック部材53を解除位置に至らせるようになる。
以上のような構成のヘッドレスト回動機構50において、ロック部材53が係合位置にてピラー33のピラー側係合部33cと係合している間は、付勢バネ52の付勢力に抗してピラー33を起立状態で維持し、これにより、ヘッドレスト30が着座位置に保持されるようになる。
一方、スライド部材54のスライド移動によってロック部材53が係合位置から解除位置へ揺動すると、ロック部材53とピラー側係合部33cとの係合が解除され、付勢バネ52の付勢力によりピラー33が前方に回動し、これに伴ってヘッドレスト30が前方に倒れるようになる。これら一連の動作が、ヘッドレスト30を前方に倒伏させるための動作であり、第3動作に相当する。
ところで、本実施形態では、スライド部材54に対してスライド移動するための駆動力を付与する経路が2系統用意されている。一方の経路は、乗員がヘッドレスト30のみを単独で前方に倒すために行う操作を受け付けて、当該操作を直接スライド部材54に伝達してスライドさせるため経路である。
具体的に説明すると、本実施形態に係る車両用シートS1には、乗員によるスライド部材54をスライドさせるための操作を受け付ける帯状部材ST1が設けられ、スライド部材54の長手方向一端部54aには帯状部材ST1が締結される。そして、乗員が帯状部材ST1を引張ることにより、スライド部材54がスライドし、これに従動する形でロック部材53が解除位置へ揺動するようになる。
なお、帯状部材ST1は、その延出範囲の中途位置で、シートバックフレーム21に取り付けられた引掛け棒24に当接することで略直角に曲げられている。つまり、引掛け棒24は、帯状部材ST1と当接して帯状部材ST1を曲げる曲げ部材に相当する。
帯状部材ST1は、シートバック20の表皮材に設けられた通し穴を通り、シートバック20の上端面のうち、ヘッドレスト30よりも車両1の外側に位置する部分から突出している(図2参照)。そして、帯状部材ST1を上下方向に沿って引張る操作が、引掛け棒24との当接により左右方向に沿った帯状部材ST1の動きに変換され、最終的には、スライド部材54をシートバックフレーム21の幅方向に沿ってスライドさせる駆動力としてスライド部材54に伝達されることになる。かかる意味で、上記の引掛け棒24は、上下方向に沿った引張り操作を、シートバックフレーム21の幅方向に沿ったスライド部材54のスライド移動に変換するための変換部に相当するものである。
スライド部材54に対してスライド移動するための駆動力を付与する他の経路は、乗員が車両用シートS1を収納するための操作(以下、収納操作とも言う)を受け付けて、当該収納操作をシートクッション10の跳ね上げ動作を介してスライド部材54にまで伝達するものである。すなわち、本経路は、車両用シートS1を収納するにあたり、先ず、シートクッション10を跳ね上げ位置(収納位置)に跳ね上げるための動作が行われ、かかる動作をスライド部材54に伝達して、スライド部材54をスライド移動させ、最終的にヘッドレスト30を前方に倒すためのものである。
具体的に説明すると、乗員による車両用シートS1を収納するため動作を受け付ける収納操作用帯状部材ST2(図11参照)が設けられ、かかる収納操作用帯状部材ST2は、後述のシートクッション跳ね上げ機構60側に締結されている。なお、収納操作用帯状部材ST2は、車両用シートS1の、車両1の外に面する側方から延出し、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある際にはシートクッション10の下部に位置する。
一方、シートクッション跳ね上げ機構60(より具体的には、後述する可動ユニット120のリンク121)にはケーブルCの一端が取り付けられており、当該ケーブルCの他端は、後述のアレンジユニット80に取り付けられている。また、アレンジユニット80からは別のケーブルCが伸出しており、その先端は、スライド部材54の長手方向他端側(帯状部材ST1が締結されている側とは反対側)において長手方向と交差する方向に延出した延出部54bの側壁に掛止されている。
以上の構成の下で、乗員が収納操作用帯状部材ST2を車両1の外側に向けて引張ると、シートクッション跳ね上げ機構60が作動してシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げる。そして、このシートクッション跳ね上げ機構60がシートクッション10を跳ね上げるために行う動作(詳しくは、後述するリンク121の前方への回動動作)が、ケーブルC及びアレンジユニット80を経由して、スライド部材54に伝達される。すなわち、シートクッション10を跳ね上げるために行われる動作により、シートクッション跳ね上げ機構60に取り付けられたケーブルCが引張られ、このケーブルCの引張り動作によってアレンジユニット80が作動し、アレンジユニット80の作動によってスライド部材54の延出部54bに掛止されたケーブルCが引張られる。このような一連の動きにより、スライド部材54がスライドし、最終的には、ロック部材53が解除位置に向けて揺動するようになる。
次に、ヘッドレスト回動機構50の取り付けについて説明する。ヘッドレスト回動機構50は、前述したように、シートバックフレーム21の上部に取り付けられており、特に、本実施形態では、シートバックフレーム21の前側にスタッドボルトBsにて取り付けられている。
より具体的に説明すると、本実施形態では、ヘッドレスト回動機構50の各構成要素が個別に取り付けられるのではなく、ユニットとして一体化された状態でシートバックフレーム21に取り付けられる。なお、ヘッドレスト回動機構50は、ピラー33が組み付けられた状態でシートバックフレーム21に取り付けられる。
ここで、本実施形態では、ヘッドレスト回動機構50を取り付ける前段階で、取付用のスタッドボルトBsがシートバックフレーム21の前側に予めセットされている。一方、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の上部及び下部には、外側に向かって張り出したボルト受け部51aが設けられている。そして、ヘッドレスト回動機構50をシートバックフレーム21に取り付ける際には、ボルト受け部51aに形成されたボルト穴に上記スタッドボルトBsを通して、シートバックフレーム21の前側からヘッドレスト回動機構50を取り付ける。このように本実施形態では、ヘッドレスト回動機構50を、一ユニットとして取り付けることが可能であり、更に、シートバックフレーム21の前側から取り付けることが可能である。これにより、ヘッドレスト回動機構50の取付が容易になり、その組み付け性が向上する。
なお、本実施形態では、ボルト受け部51aの設置箇所(換言すると、ヘッドレスト機構50のシートバックフレーム21への固定箇所)が3箇所であり、具体的には、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の上側に2箇所あり、ケーシング51の下側に1箇所ある。ここで、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の上側に設けられたボルト受け部51aが受けるスタッドボルトBsは、前述したピラー倒れ規制部25に設置されている。すなわち、本実施形態では、ヘッドレスト回動機構50が、ピラー倒れ規制部25に固定されている。
より具体的に説明すると、シートバックフレーム21の上部には、ピラー33毎にピラー倒れ規制部25が設けられており、各ピラー倒れ規制部25の前側表面には、スタッドボルトBsが当該前側表面から幾分突出した状態でセットされている。このスタッドボルトBsを、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の上側に設けられたボルト受け部51aのボルト穴に通し、上記スタッドボルトBsにてケーシング51を各ピラー倒れ規制部25の前側表面に取り付けることにより、ヘッドレスト回動機構50が各ピラー倒れ規制部25に固定されることになる。
このように本実施形態では、ピラー倒れ規制部25が設けられているスペースを有効利用してヘッドレスト回動機構50を固定している。これにより、車両用シートS1を小型化することが可能になる。より詳しく説明すると、各ピラー倒れ規制部25は、左右方向(シートバックフレーム21の幅方向)において、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の両端よりも内側に位置している。このようにヘッドレスト回動機構50のケーシング51の両端よりも内側に位置するピラー倒れ規制部25に、ヘッドレスト回動機構50の固定箇所が設けられることにより、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の両端よりも外側に固定箇所が設けられる場合に比して、車両用シートS1をより小型化することができる。
また、ピラー33は、シートバックフレーム21の高さ方向に伸びた鉛直部33aを有し、シートバックフレーム21の幅方向において鉛直部33aが位置する位置に、ピラー倒れ規制部25の前側表面の中央部が位置し、かかる位置にスタッドボルトBsがセットされている。つまり、本実施形態において、スタッドボルトBsは、ピラー33の鉛直部33aの軸線上に存在していることになる。これにより、車両用シートS1をより一層小型化することができる。具体的に説明すると、シートバックフレーム21の幅方向において、ピラー33(特に鉛直部33a)を配置するために充てられた領域を、ピラー33以外の部材であるスタッドボルトBsをセットするために有効利用することにより、当該スタッドボルトBsをセットするスペースを別途確保する必要がないので、車両用シートS1の小型化が可能になる。
さらに、ピラー33のうち、上記の鉛直部33aと隣接しシートバックフレーム21の幅方向に伸びた水平部33bよりも、シートバックフレーム21の高さ方向において下側位置に、ピラー倒れ規制部25の前側表面の下端部が位置し、かかる位置にスタッドボルトBsがセットされている。これにより、更なる車両用シートS1の小型化を図ることができる。具体的に説明すると、鉛直部33aと水平部33bとの接合位置(換言すると、ピラー33が曲がる位置)の下には、空きスペースが形成される。この空きスペースをスタッドボルトBsの設置に利用すれば、当該スタッドボルトBsをセットするスペースを別途確保する必要がなく、車両用シートS1の小型化が可能になる。
一方、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の下側に設けられたボルト受け部51aが受けるスタッドボルトBsは、シートバックフレーム21のパンフレーム22にセットされている。特に、本実施形態では、パンフレーム22のうち、後述の補強板26が重なっている部位にスタッドボルトBsがセットされている。このように本実施形態では、パンフレーム22のうち、より高剛性の部位にスタッドボルトBsがセットされ、かかるスタッドボルトBsによりヘッドレスト回動機構50を固定するので、ヘッドレスト回動機構50が適切に設置され、ヘッドレスト回動機構50各部が安定して作動するようになる。
<<シートクッション跳ね上げ機構>>
シートクッション跳ね上げ機構60は、第1動作機構の一例であり、乗員による車両用シートS1の収納操作が受け付けられると、車両用シートS1を収納するための開始動作としてシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。このシートクッション跳ね上げ機構60は、不図示の樹脂カバーで覆われており、シートクッション10が着座位置に位置する際にはシートクッション10の下方位置に位置するように車体フロア2上に設置されている。
シートクッション跳ね上げ機構60は、図4、図10、図11に示すように、2つのサブユニットから構成されており、一方のサブユニットは、車体フロア2に取り付けられる取付ユニット110であり、他方のサブユニットは、取付ユニット110上に配置され、取付ユニット110(換言すると、車体フロア2)に対してスイング動作(回動動作)をする可動ユニット120である。
取付ユニット110は、上面視でL字状の外観をなした取付板111を主たる構成要素として有する。取付板111のうち、車両1の前後方向に沿って延びた第1板部112は、車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsによって車体フロア2に固定されている(図11参照)。ここで、第1板部112の後端部には長穴状の取付穴114が形成されており、予め車体フロア2にセットされたボルトBo及びワッシャWsが取付穴114に嵌め込まれることにより、取付ユニット110が車体フロア2上に配置される。
なお、取付穴114の長手方向の中央部114bは、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。かかる構成を利用し、ボルトBo及びワッシャWsを取付穴114に嵌め込む際には、先ず取付穴114の長手方向の中央部114bにボルトBo及びワッシャWsを通し、その後に、ボルトBoが取付穴114の長手方向の前端部114aに嵌合するように取付ユニット110の位置をずらして取付ユニット110の位置決めを行う。
また、第1板部112の長手方向の略中央部には、ストライカロック機構の100のロック部101が取り付けられている。このロック部101は、鉤状のロック片102と、ロック片102を揺動可能な状態で収容するハウジング103とを有している。ロック片102が後述のストライカ105と係合している状態では、シートクッション10が着座位置にて車体フロア2上に固定されていることになる。一方で、ロック片102が揺動すると、ストライカ105は、ロック片102との係合状態を脱するようになり、シートクッション10は、車体フロア2上に固定された状態から解放されて可動状態となる。
さらに、第1板部112は、その一側部に立ち壁部112aを有し、立ち壁部112aのうち、ロック部101が取り付けられた位置よりも幾分前方位置に、前述した収納操作用帯状部材ST2を通すためのスリット112bが形成されている。このスリット112bに通された収納操作用帯状部材ST2は、第1板部112と交差するように第1板部112上に配置される。また、収納操作用帯状部材ST2の端部(第1板部112から見て車両1の内側の端部)にはケーブルCの一端部が接続されており、当該ケーブルCを配索する際に配索経路を規定するための経路規定部112cが第1板部112の側部(立ち壁部112aが位置する側とは反対側の側部)に適宜な間隔で設けられている。
そして、上記のケーブルCの他端部は、前述のロック片102と連結している連結片104に接続されている。これにより、収納操作用帯状部材ST2が引張られると、ケーブルCが連結片104を介してロック片102を引張るようになる結果、ロック片102が揺動し、ロック片102とストライカ105との係合が解除されることになる。
一方、取付板111のうち、車両1の左右方向(車両用シートS1の幅方向)に沿って延びた第2板部113は、可動ユニット120の土台をなす部分であり、その長手方向中央部には、シートクッション10に着座した乗客が車両1の衝突事故時に腰ベルトの下に潜り込むサブマリン現象を防止するためのサブマリンブラケット115が設けられている。
可動ユニット120は、略門型の構造を有し、取付板111の第2板部113にボルト止めされる。可動ユニット120は、一対のリンク121と、一対のパイプロッド122と、リンク121間を連結する連結バー123と、シートクッション10を取り付けるための取付ブラケット124と、リンク121及びパイプロッド122を回動自在に支持する一対の支持機構125とを有する。これらの構成要素はユニットとして一体化するように組み合わされており、取付板111の第2板部113に取り付ける際にはユニットとして一体的に取り付けることになる。
一対のリンク121の各々は、板金部材にビード加工等の処理を施して構成される長尺体であり、可動ユニット120の両側部に位置する。各リンク121は、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Aが嵌合されることにより回動自在に支持されている。また、各リンク121の上端部には、リンク121間を連結する連結バー123が取り付けられている。さらに、各リンク121の上端部には、その外側表面に取付ブラケット124が取り付けられている。なお、連結バー123及び取付ブラケット124は、リンク121の上端部に共締形式でボルト止めされることによって取り付けられている。
一対のパイプロッド122の各々は、リンク121と並べて配置され、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Bが嵌合されることにより、リンク121の回動方向と同じ方向に回動可能に支持されている。また、各パイプロッド122の上端部には取付ブラケット124がピン止めされている。つまり、本実施形態では、シートクッション10が取付ブラケット124を介して一対のリンク121及び一対のパイプロッド122に支持されることになる。そして、各パイプロッド122は、リンク121の回動に従動して、リンク121の回動方向と同一方向に回動することになる。
さらに、一対のリンク121及びパイプロッド122のうち、車両1の外に面する側のリンク121及びパイプロッド122に取り付けられた取付ブラケット124の下面には、前述したストライカロック機構100のストライカ105が取り付けられている。そして、リンク121及びパイプロッド122が回動軸126A,126Bから見て後方に倒れるように回動すると、上記のストライカ105が、取付板111(より具体的には第1板部112)に設けられたロック部101のロック片102に係合可能な位置に到達することになる。
一対の支持機構125の各々は、リンク121及びパイプロッド122を回動可能に支持するものであり、図4、図10、図11に示すように、前述の回動軸126A,126Bの他、ベースブラケット127と、ダンパーゴム129とを有する。
ベースブラケット127は、上面視で略Z字状の板金部材であり、可動ユニット120の土台をなし、取付板111の第2板部113にボルト止めされている。また、ベースブラケット127のうち、車両1の前後方向に沿って延びている部分は立ち壁部127aになっており、この立ち壁部127aに回動軸126A,126Bが固定されている。
ダンパーゴム129は、リンク121が渦巻きバネ128の付勢力により前方に回動して前方限界位置に至った際にリンク121の前端と当接して、リンク121に生じる衝撃を吸収するものである。ダンパーゴム129は、リンク121の、回動支点となる部位よりも幾分前方に位置するように、前述のベースブラケット127に固定されている。
なお、本実施形態では、ダンパーゴム129へのリンク121の当接(衝突)によるダンパーゴム129の切損を防止するため、リンク121の長手方向において、ダンパーゴム129に当接する位置にある部分(以下、当接部位121a)を折り曲げて、当接部位121aの前端に丸みを帯びさせている。
一対の支持機構125のうち、車両1の外側に位置する支持機構125には、渦巻きバネ128が備えてられている。渦巻きバネ128は、リンク121を前方に倒すように付勢する付勢部材である。渦巻きバネ128の一端部は、回動軸126Aに係止されており、他端部は、リンク121が後側に倒れている状態(換言すると、シートクッション10が跳ね上がる前の状態)では、リンク121の側表面から突出した突出部(不図示)に係止される。
上記の構成により、シートクッション10は、ストライカ105とロック片102とが係合した状態にある際には、リンク121を介して渦巻きバネ128の付勢力を受けながらも(換言すると、渦巻きバネ128の付勢力に抗して)着座位置に保持されるようになる。
一方で、ロック片102を引張ってロック片102を揺動させることにより、ストライカ105とロック片102との係合が解除されると、渦巻きバネ128の付勢力により、リンク121が前方に回動する。この結果、シートクッション10が跳ね上げ位置に向けて跳ね上がるようになる。これらの一連の動作が、シートクッション10を跳ね上げるための一連の動作であり、第1動作に相当する。
なお、図4、図10、図11に示すケースでは、一対のリンク121のうち、一方のみに対して渦巻きバネ128を設けることとしたが、これに限定されるものではなく、両方のリンク121に対して、それぞれ、渦巻きバネ128を設ける構成であってもよい。
さらに、本実施形態では、一方のリンク121(車両1の外側に位置する方のリンク121)の長手方向中途位置には、差込孔121bが形成されており、当該差込孔121bにケーブルCの一端部が差し込まれている。このケーブルCの他端部は、後述のアレンジユニット80(より具体的には、第1回動部材83)に接続されている。したがって、シートクッション10を跳ね上げるにあたって、上記のリンク121が回動をすることにより、リンク121に連結されたケーブルCが牽引され、最終的には、当該ケーブルCが接続されたアレンジユニット80では、ケーブルCの牽引力を利用してユニット各部が作動するようになる。なお、アレンジユニット80の構成及び動作については後に詳述する。
<<シートバック倒伏機構>>
次に、シートバック倒伏機構70について説明する。
シートバック倒伏機構70は、第2動作機構の一例であり、図12に示すシートバック支持ユニット90に回動可能に支持されたシートバック20を前方に回動させて倒伏させるための動作を実行する機構である。このシートバック倒伏機構70は、構成要素として、図12に示す付勢バネ71と、図13に示すロック機構72と、を有する。
付勢バネ71は、着座位置に位置した状態にあるシートバック20を前方に付勢するものであり、具体的には、シートバック支持ユニット90側に設けられた渦巻きバネである。この付勢バネ71の一端部71aは、シートバック20の回動軸20bに係止され、付勢バネ71の他端部71bは、シートバック支持ユニット90に突出形成された係止ピン91に掛止されている。
ロック機構72は、ブラケット(不図示)を介して、シートバックフレーム21の、車両1の外に面する側部に取り付けられている。このロック機構72は、車両本体側に設けられたストライカ74に係合するロック片73を備え、ロック片73とストライカ74とを係合させることにより、前述の付勢バネ71の付勢力に抗して、シートバック20を着座位置に保持するものである。ここで、車両本体とは、車両1のうち、車両用シートS1を除いた部分を意味する。
ロック機構72の構成についてより詳しく説明すると、ロック機構72は、図13に示すように、ロック片73と、ベース部75と、連結部76とを有する。ロック片73は、上述の如く、ストライカ74に係合する鉤状部材であり、ベース部75に対して回動可能に支持されている。ここで、ロック片73は、ベース部75に立設された支持軸(不図示)を中心にして、ストライカ74と係合可能な位置(係合可能位置)と、ストライカ74と係合不能な位置(係合不能位置)とを往来するように回動する。
なお、このロック片73は、不図示の捻りバネにより、その回動方向において係合可能位置に向かう向きに付勢されている。一方で、捻りバネの付勢力に抗してロック片73を係合可能位置から係合不能位置に向かう向きに回動させれば、ロック片73とストライカ74との係合状態を解除することが可能になる。
連結部76は、長円状の金属板部材からなり、ベース部75に対して上下方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられている。この連結部76の下端部76a(一端部)側には、ロック片73が取り付けられており、連結部76が上方にスライド移動すると、ロック片73が係合不能位置に向かう向きに回動するように構成されている。また、連結部76の上端部76b(他端部)には、後述する操作部77の連結ロッド77c、及びアレンジユニット80側から伸出したケーブルCが接続されている。
以上のようなシートバック倒伏機構70では、ロック片73とストライカ74が係合した状態にある際には、シートバック20が付勢バネ71の付勢力に抗して着座位置に保持される。
一方、連結部76が上方にスライド移動することに伴って、ロック片73が係合可能位置から係合不能位置に向かうように回動すると、ロック片73とストライカ74との係合が解除されるため、シートバック20は、付勢バネ71の付勢力により回動軸20bを中心として前方に回動して倒伏し、最終的に倒れ位置に位置するようになる。これら一連の動作が、シートバック20を前方に倒伏させるための動作であり、第2動作に相当する。
なお、本実施形態では、シートバック支持ユニット90側に不図示のダンパー機構が設けられており、シートバック20の倒れ角度が所定角度に達した以降は、当該ダンパー機構の作用により、倒れ速度(回動速度)が徐々に緩和されるようになっている。これにより、シートバック20は、緩慢な速度にて倒れ位置に達するようになるので、万一、シートバック20と車体フロア2の間に人や物が存在した状態でシートバック20が倒伏した場合であっても、シートバック20との衝突による事故を防ぐことが可能になる。
ところで、本実施形態では、連結部76に対して上方にスライド移動するための駆動力(換言すると、ロック片73を係合不能位置に向けて回動させるための駆動力)を付与する経路が2系統用意されている。一方の経路は、乗員がシートバック20のみを単独で前方に倒すために行う操作を受け付けて、当該操作を、連結部76を介してロック片73に伝達するための経路である。
具体的に説明すると、乗員がシートバック20のみを単独で前方に倒すために行う操作を受け付ける操作部77が、シートバック20の上端部に設けられている。なお、シートバック20の上端面において、操作部77が配置されている位置は、ヘッドレスト30から見て帯状部材ST1よりも車両1の外側に位置している(図2参照)。操作部77は、図13に示すように、操作カバー77aと、操作カバー77aに対して回動可能に支持される操作レバー77bとを有している。操作カバー77aは、操作レバー77bが収容可能なように凹形状を有する。そして、操作カバー77aは、その鍔部がシートバック20の上端面に当接した状態でシートバック20に固定されており、より具体的には、シートバックフレーム21の肩位置に設けられた取付ブラケット27(図5参照)に固定されている。
操作レバー77bは、不図示の付勢手段により、操作レバー77bの回動方向において操作カバー77a内に収納される向き(具体的には、操作カバー77a内で前方に向かう向き)に付勢された状態にある。また、操作レバー77bの所定位置には、略稲妻状に形成された金属部材からなる連結ロッド77cが連結されている。この連結ロッド77cは、操作レバー77bの上方への回動操作(具体的には、操作カバー77a内で操作レバー77bを後方に向けて回動させる操作)に連動して、上方に移動するように構成されている。
以上のような構成の操作部77において、乗員が操作レバー77bを上方に回動させる操作を行うと、連結ロッド77cが上方に移動する結果、上記の操作が、連結部76を上方にスライド移動させる駆動力として、連結部76に伝達されることになる。そして、最終的には、連結部76の上方へのスライド移動がロック片73に伝達されて、ロック片73が捻りバネの付勢力に抗して、係合不能位置に向けて回動するようになる。これにより、それまでストライカ74と係合していた状態にあったロック片73は、その係合状態を脱する。この結果、シートバック20のみが単独で前方に倒れるように回動することとなる。すなわち、本実施形態に係る車両用シートS1は、乗員が操作レバー77bを上方に回動させる操作を行うと、シートバック20が単独で前方に倒れるように構成されている。
なお、ロック片73とストライカ74との係合が一旦解除されると、その後、ロック片73は、反対向きに回動して係合可能位置に戻ってくるまで、ストライカ74との係合が不能な状態に維持されることになる。
連結部76に対してスライド移動するための駆動力を付与する他の経路は、乗員が車両用シートS1を収納するための操作を受け付けて、当該操作を連結部76に伝達する経路である。つまり、本経路は、車両用シートS1を収納するにあたり、シートクッション10を跳ね上げ位置に跳ね上げるための動作が行われ、かかる動作を連結部76に伝達するためのものである。
具体的に説明すると、ヘッドレスト回動機構の項で説明したように、車両用シートS1には、車両用シートS1の収納操作を受け付ける収納操作用帯状部材ST2が設けられている。一方、シートクッション跳ね上げ機構60(より具体的には、可動ユニット120のリンク121)には、ケーブルCの一端が取り付けられており、当該ケーブルCの他端は、後述のアレンジユニット80に取り付けられている。また、アレンジユニット80からは別のケーブルCが伸出しており、その先端は、連結部76の上端部76bに接続されている。
以上のような構成の下で、乗員が収納操作用帯状部材ST2を引張ると、シートクッション跳ね上げ機構60が作動してシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げ、この跳ね上げ動作が、ケーブルC及びアレンジユニット80を経由して、連結部76に伝達される。具体的に説明すると、シートクッション跳ね上げ機構60により跳ね上げ動作が実行されると、シートクッション跳ね上げ機構60に取り付けられたケーブルCが牽引され、このケーブルCの牽引動作によってアレンジユニット80が作動し、アレンジユニット80の作動によって連結部76の上端部76bに掛止されたケーブルCが引張られる。
以上のような一連の動きにより、最終的には、連結部76が上方にスライドして、ロック片73が係合不能位置に向かって回動するようになる。そして、上述した操作部77の場合と同様、それまでストライカ74と係合していた状態にあったロック片73が、その係合状態を脱する結果、シートバック20が前方に倒れ、跳ね上げ前のシートクッション10の位置に至るまで回動する。以降、ロック片73は、反対向きに回動して係合可能位置に戻ってくるまで、ストライカ74との係合が不能な状態に維持される。
<<アレンジユニット>>
次に、アレンジユニット80について説明する。
アレンジユニット80は、駆動機構に相当し、車両用シートS1を収納する際に、シートクッション10の跳ね上げ動作に、シートバック20の前方への倒伏動作及びヘッドレスト30の前方への倒伏動作を連動させるための機構である。
具体的に説明すると、アレンジユニット80は、シートクッション跳ね上げ機構60の跳ね上げ動作(第1動作)を利用して、シートバック倒伏機構70にシートバック20を前方に倒伏させるための動作(第2動作)を実行させ、かつ、ヘッドレスト回動機構50にヘッドレスト30を前方に倒伏させるための動作(第3動作)を実行させるために動作する。
より具体的には、アレンジユニット80内の可動部材(例えば、後述の第1回動部材83や第2回動部材84)は、シートクッション10を跳ね上げるために行われる動作としての、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121の回動動作を駆動力として動作する。そして、上記の可動部材の動作により、ヘッドレスト回動機構50のロック部材53が解除位置に揺動するようになり、かつ、シートバック倒伏機構70のロック片73が係合不能位置に向かって回動するようになる。すなわち、アレンジユニット80は、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121の回動動作を、ヘッドレスト回動機構50及びシートバック倒伏機構70に伝達して、これらの機構を作動させるための装置である。
アレンジユニット80は、上記の機能を実現するために、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121、ヘッドレスト回動機構50のスライド部材54、及び、シートバック倒伏機構70の連結部76の各々と、線状部材としてのケーブルCを介して繋がっている。さらに、アレンジユニット80は、線状部材としてのケーブルCにて、倒れ角度検出機構130(倒れ角度検出機構130については後述する)に繋がっている。すなわち、アレンジユニット80からは、4本のケーブルCが伸出していることになる。
なお、以降の説明では、説明の便宜上、アレンジユニット80から伸出した4本のケーブルCを区別するため、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121に接続されているものを第1ケーブルC1と、ヘッドレスト回動機構50のスライド部材54に接続されているものを第2ケーブルC2と、シートバック倒伏機構70の連結部76に接続されているものを第3ケーブルC3と、倒れ角度検出機構130に接続されているものを第4ケーブルC4と呼ぶこととする。
本実施形態において、アレンジユニット80は、図5に示すように、シートバックフレーム21を構成するパンフレーム22の前面のうち、シートバックフレーム21の幅方向において中央よりも、やや車両1の外側寄りの部位にボルト止めされている。アレンジユニット80の取付については、後に詳述する。
アレンジユニット80の具体的な構成について説明すると、図14に示すように、アレンジユニット80は、主たる構成要素として、ケーシング81、回動軸82、第1回動部材83、第2回動部材84、第3回動部材85、係合ピン86、緩衝ゴム87、第1コイルバネ88a、第2コイルバネ88b、及び、第3コイルバネ88cを有する。また、前述したように、アレンジユニット80は、第1ケーブルC1によりシートクッション跳ね上げ機構60と、第2ケーブルC2によりヘッドレスト回動機構50と、第3ケーブルC3によりシートバック倒伏機構70と、第4ケーブルC4により後述の倒れ角度検出機構130と、それぞれ繋がっている。以下、各構成要素について説明する。
ケーシング81は、上面視で略扇状の外形形状を有し、アレンジユニット80の可動要素(具体的には、第1回動部材83、第2回動部材84、第3回動部材85等)の前側で当該可動要素をカバーするものである。また、ケーシング81は、回動軸82を取り付けるために形成された取付穴(図14中では不図示)を有している。
また、ケーシング81の、外縁に程近い部分には、円弧状のガイドスリット81bが設けられている。このガイドスリット81bは、第1回動部材83が回動する際の案内部として機能し、第1回動部材83の回動方向に沿って形成されている。なお、本実施形態では、ガイドスリット81bの位置において段差が形成されており、ガイドスリット81bと隣接したケーシング81の中央領域81cが、ケーシング81の厚み方向において、ガイドスリット81bよりも外側に位置する外側領域81dよりも幾分裏側に窪んだ状態となっている。
回動軸82は、第1回動部材83及び第2回動部材84を回動自在に支持する部材であり、ケーシング81に着脱可能に取り付けられている。なお、本実施形態において、ケーシング81の裏面のうち、回動軸82が取り付けられる部分は、その周囲よりも一段浮き上がっており、回動軸82の台座(不図示)を形成している。第1回動部材83は、回動軸82を中心に回動する金属片部材であり、回動軸82から前述のガイドスリット81bに向かって延出している。第1回動部材83の延出方向一端部(ガイドスリット81b側の端部)には、第1ケーブルC1の一端を係止するケーブル係止部83aと、ガイドスリット81bを通ってケーシング81の裏面から表面に回り込んだ舌状部83bとが設けられている。
また、第1回動部材83の延出方向中間位置には、第1回動部材83の側部から延出して第2回動部材84の表面(詳しくは、第2回動部材84の最外縁部84dの表面)に係合する舌状係合部83cを有する。さらに、第1回動部材83の延出方向一端部には、第1コイルバネ88aが取り付けられており、当該第1コイルバネ88aは、第1回動部材83を、その回動範囲の一端位置(具体的には、通常時に第1回動部材83が位置する位置)に向かうように付勢する。
以上のような構成により、第1回動部材83は、通常時には、第1コイルバネ88aに付勢されて、その回動範囲の一端位置に位置するようになる。一方で、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121の回動移動によって第1ケーブルC1が当該リンク121側に牽引されると、ケーブル係止部83aを通じて第1回動部材83の延出方向一端部が引張られる結果、第1回動部材83は、第1コイルバネ88aの付勢力に抗して回動範囲の一端位置から他端位置に向かうように回動する。
なお、第1回動部材83が回動する際、第1回動部材83の舌状部83bが、ガイドスリット81bに沿ってガイドスリット81b内を移動し、第1回動部材83の舌状係合部83cが、第2回動部材84の表面上を当該表面に沿って移動する。これにより、第1回動部材83は、設定された回動範囲内で適切に回動することが可能になる。
分かり易く説明すると、第1回動部材83では、支点である回動軸82からやや離れた位置(具体的には、延出方向一端部)に、第1コイルバネ88aが取り付けられ、さらには第1ケーブルC1が繋がれている。このため、第1回動部材83は、その延出方向が曲がるように座屈する可能性があり、座屈してしまった場合には適切な回動範囲で回動することが困難になる。かかる事態を回避するため、本実施形態では、ケーシング81にガイドスリット81bを設けて当該ガイドスリット81bに第1回動部材83の舌状部83bを通すとともに、第1回動部材83の舌状係合部83cを第2回動部材84の最外縁部84dに係合させて第2回動部材84の表面上を移動させることとしている。これにより、第1回動部材83は、上述した座屈が規制されるので、設定された回動範囲を適切に回動することが可能になる。
なお、第1回動部材83の延出方向の中途位置に位置する部分には、他の部分よりも外側に僅かに飛び出した突出部83dが形成されている。この突出部83dは、第1回動部材83が第1コイルバネ88aの付勢力により回動範囲の他端位置から一端位置に戻る際、後述の緩衝ゴム87と衝突する部分である。第1回動部材83の延出方向の中途部分には、また、円弧状の穴(以下、円弧穴83e)が形成されており、円弧穴83eには後述の係合ピン86が通っている。さらに、円弧穴83eの近傍には、第3回動部材85の回動軸85aを取り付けるための取付穴(不図示)が形成されている。
第2回動部材84は、ケーシング81とは反対側で第1回動部材83に重ねられて(図14に示す状態では第1回動部材83の上に重ねられている)、回動軸82を中心にして回動する略扇状の金属片部材である。第2回動部材84の外縁部には、第2ケーブルC2及び第3ケーブルC3の端部を接続するために形成された接続孔84eが形成されている。そして、第2回動部材84が、その回動範囲の一端位置から他端位置に向かうように回動すると、上記2本のケーブルCを牽引するようになる。
また、第2回動部材84の外縁部のうち、第2ケーブルC2及び第3ケーブルC3が繋がった位置の近傍には、第2コイルバネ88bが取り付けられている。当該第2コイルバネ88bは、第2回動部材84を、その回動範囲の一端位置(具体的には、通常時に第2回動部材84が位置する位置)に向かうように付勢する。
また、第2回動部材84には、後述の係合ピン86が通る通し穴84aが第2回動部材84の回動方向に沿って形成されている。この通し穴84aは、係合ピン86の外径に比して十分大きな幅を有しており、特に、通し穴84aのうち、第2回動部材84の回動方向における一端側に位置する端部は、それ以外の部分よりも幅広となっている。つまり、本実施形態では、通し穴84aの、第2回動部材84の回動方向における一端寄りの位置で、段差が形成されている。換言すると、第2回動部材84の、通し穴84aの周縁に位置する部分のうち、第2回動部材84の回動方向における一端側には、通し穴84aの内側に向かって突出した凸部84bが形成されている。
係合ピン86は、後述の第3回動部材85に立設されており、第3回動部材86と一体的に動く。そして、係止ピン86は、凸部84bに係止されることによって第2回動部材84と係合する一方で、凸部84bを乗り越えるように通し穴84a内を移動することによって第2回動部材との係合状態を解除する。
以上のような構成の第2回動部材84は、通常時には、第2コイルバネ88bに付勢されて回動範囲の一端位置に位置するようになる。この際、係合ピン86は、凸部84bの脇(より具体的には、第2回動部材84の回動方向において凸部84bよりも一端側の位置)に位置している。そして、係合ピン86が凸部84bに係止するように通し穴84a内を移動すると、第2回動部材84は、係合ピン86により、その回動範囲の一端位置から他端位置に向けて押圧されるようになる。この係合ピン86の押圧力により、第2回動部材84は、第2コイルバネ88bの付勢力に抗して回動範囲の他端位置に向かうように回動し、これに伴って第2ケーブルC2及び第3ケーブルC3を牽引するようになる。
一方、係合ピン86が凸部84bを乗り越えるように通し穴84a内を移動すると、第2回動部材84と係合ピン86との係合が解除されるようになる。これにより、第2回動部材84は、係合ピン86による押圧から解放される一方で第2コイルバネ88bに付勢されて、回動範囲の一端位置に戻るようになる。
なお、第2回動部材84の外縁のうち、第2回動部材84の回動方向の一端に位置する部分には、突出部84cが形成されている。この突出部84cは、第2回動部材84が第2コイルバネ88bの付勢力により回動範囲の他端位置から一端位置に戻る際、後述の緩衝ゴム87と衝突する部分である。また、第2回動部材84のうち、回動軸82から最も離れた最外縁部84dは、円弧状をなし、その表面上には、前述した第1回動部材83の舌状係合部83cが配置され、舌状係合部83cは、上記最外縁部84dに係合しながら最外縁部84dの表面に沿って移動する。
第3回動部材85は、略瓢箪型の外形形状を有し、第1回動部材83に取り付けられた回動軸85aを中心に回動する金属片部材である。この第3回動部材85は、ケーシング81が位置する側で第1回動部材83に重ねられており(図14に示す状態では第1回動部材83の下に重ねられている)、その表面からは円柱状の係合ピン86が立設されている。係合ピン86は、第1回動部材83に形成された円弧穴83eを通り、また、第2回動部材84の通し穴84aを通っている。
また、第3回動部材85の一端部には、第3コイルバネ88cが取り付けられている。第3コイルバネ88cは、その他端部が第1回動部材83の延出方向他端部(回動軸82が位置する側の端部)に掛けられており、係合ピン86の外周面が円弧穴83eの内縁に当接するように第3回動部材85を付勢する。この第3回動部材85の付勢力により、第3回動部材85が第1回動部材83に対して相対的に回動し、通常時には、係合ピン86の外周面が円弧穴83eの内縁に押し当たるようになる。かかる状態で第1回動部材83が回動すると、第3回動部材85及び係合ピン86は、第1回動部材83と一体的に回動することとなる。
また、第3回動部材85が第1回動部材83とともに回動範囲の一端位置から他端に向けて(換言すると、第1回動部材83が第1コイルバネ88aの付勢力に抗して回動する向きと同じ向きに)回動すると、係合ピン86は、第2回動部材84の凸部84bに係止されて、第2回動部材84と係合する(図15B参照)。これにより、係合ピン86は、第2回動部材84を回動範囲の一端位置から他端位置に向かうように押圧するようになる。すなわち、本実施形態のアレンジユニット80では、第2回動部材84が係合ピン86と係合した状態で第1回動部材83が回動すると、係合ピン86が、第1回動部材83の回動を利用して、第2コイルバネ88bの付勢力に抗して第2回動部材84を回動範囲の一端位置から他端位置に向けて回動させる。
一方、係合ピン86の先端には第4ケーブルC4が繋がれており、第4ケーブルC4は、前述したように、倒れ角度検出機構130に接続されており(図5参照)、シートバック20が前方に倒れると、係合ピン86を車体フロア2側に引張る。ここで、倒れ角度検出機構130は、一端が車体フロア2に掛止された掛止部(不図示)を有し、当該掛止部の他端はシートバックフレーム21側に固定されている。そして、倒れ角度検出機構130は、シートバック20が前方へ倒伏すると、当該倒伏動作に連動して、係合ピン86を第4ケーブルC4を介して車体フロア2側に引張る機構である。
倒れ角度検出機構130が係合ピン86を引張る際の引張り力は、シートバック20の倒れ角度が増加するほど大きくなり、当該倒れ角度が予め設定された設定角度に達した時点で、係合ピン86と第2回動部材84の凸部84bとの係止力を上回るようになる。かかる状況に至ると、第3回動部材85は、第4ケーブルC4の牽引力により、係合ピン86が凸部84bの頂部を乗り越えるように第1回動部材83に対して相対的に回動するようになる。
なお、上記の設定角度は、任意に設定することが可能であり、例えば、第4ケーブルC4のケーブル長、凸部84bの形状及び倒れ角度検出機構130の設置位置等を調整することによって設定することが可能である。
そして、係合ピン86が凸部84bの頂部を乗り越えると、第2回動部材84が、係合ピン86による押圧から解放されて、第2コイルバネ88bに付勢されて、回動範囲の一端位置に戻るようになる。なお、係合ピン86が凸部84bの頂部を乗り越えると、第3回動部材85が再び第1回動部材83と一体的に回動するようになり、これに伴って、係合ピン86は、凸部84bが位置する側とは反対側に向かいながら通し穴84aの内縁に沿って移動する。
緩衝ゴム87は、第1回動部材83及び第2回動部材84が、それぞれに対応するコイルバネ88a、88bによって付勢されて回動範囲の一端位置(通常時に位置する位置)に戻る際に、第1回動部材83の突出部83dや第2回動部材84の突出部84cと当接して、各回動部材に掛かる衝撃を軽減するダンパーである。この緩衝ゴム87は、円筒状の外形形状を有し、ケーシング81の裏面に立設された支持軸87aに支持されている。なお、本実施形態に係る緩衝ゴム87は、第1回動部材83及び第2回動部材84が衝突する際の衝突音を抑えるために、硬質なゴム材質にて構成されている。
以上までに説明してきた構成のアレンジユニット80各部の動作例について図15A〜図15Dを参照しながら説明する。
通常時(車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある時)には、図15Aに示すように、第1回動部材83、第2回動部材84及び第3回動部材85は、それぞれ、第1コイルバネ88a、第2コイルバネ88b及び第3コイルバネ88cのうち、対応するコイルバネにより付勢されて初期位置に位置している。
ここで、第1回動部材83の初期位置とは、その回動範囲の一端位置であり、具体的には、第1回動部材83の突出部83dが緩衝ゴム87に当接する位置である。同様に、第2回動部材84の初期位置とは、その回動範囲の一端位置であり、具体的には、第2回動部材84の突出部84cが緩衝ゴム87に当接する位置である。第3回動部材85の初期位置とは、係合ピン86が第1回動部材83に形成された円弧穴83eの内縁に押し当たり、かつ、第2回動部材84に形成された通し穴84aのうち、第2回動部材84の回動方向における一端側に配置された状態にある位置である。
各回動部材83、84、85が各々の初期位置にある際にシートクッション跳ね上げ機構60による跳ね上げ動作が行われると、第1ケーブルC1が接続されたリンク121の回動によって、第1ケーブルC1が当該リンク121側に牽引されるようになる。この結果、第1回動部材83が第1コイルバネ88aの付勢力に抗して、その回動範囲の他端位置に向かって回動する。この際、係合ピン86が第1回動部材83の円弧穴83eの内縁に押し付けられた状態にあるので、第3回動部材85が第1回動部材83とともに回動するようになる。
一方、第3回動部材85が第1回動部材83とともに回動することにより、係合ピン86が、第2回動部材84に形成された通し穴84a内を移動して、図15Bに示すように、凸部84bに係止されて第2回動部材84と係合するようになる。その後、第1回動部材83が回動範囲の他端位置に向かって更に回動すると、係合ピン86が、第2回動部材84を押圧するようになる。この係合ピン86の押圧力により、第2回動部材84は、第2コイルバネ88bの付勢力に抗して回動範囲の一端位置から他端位置に向かうように回動するようになる。この第2回動部材84により、第2ケーブルC2及び第3ケーブルC3が牽引されるようになる。
第3ケーブルC3が牽引されると、前述した通り、ロック機構72のロック片73が係合不能位置に回動し、当該ロック片73とストライカ74との係合状態が解除される結果、シートバック20が付勢バネ71の付勢力を受けて前方に倒れるようになる。シートバック20が前方に倒れ出すと、係合ピン86に繋がれた第4ケーブルC4が、倒れ角度検出機構130によって車体フロア2側に牽引されるようになり、その牽引力は、シートバック20の倒れ角度の増加に伴って徐々に大きくなる。
そして、シートバック20の倒れ角度が設定角度に到達すると、係合ピン65に作用する引張り力が、係合ピン86と第2回動部材84の凸部84bとの係止力を上回るようになる。かかる状況に至ると、第3回動部材85は、第4ケーブルC4の牽引力により、第3コイルバネ88cの付勢力に抗して第1回動部材83に対して相対的に回動する。この第3回動部材85の相対回動によって、係合ピン86は、図15Cに示すように、凸部84bの頂部を乗り越えるようになる。これにより、係合ピン86と第2回動部材84との係合状態が解除され、第2回動部材84は、第2コイルバネ88bの付勢力によって回動範囲における一端位置(すなわち、初期位置)に戻るようになる。
なお、係合ピン86が凸部84bの頂部を乗り越えた後、第3回動部材85は、再び第1回動部材83と一体的に回動し、これに伴って、係合ピン86が、凸部84bが位置する側とは反対側に向かいながら、第2回動部材84に形成された通し穴84aの内縁に沿って移動する(図15D参照)。
ところで、第2回動部材84が回動範囲における一端位置に戻ると、第2ケーブルC2及び第3ケーブルC3が、第2回動部材84による牽引から解放され、これによって、ロック機構72のロック片73が、係合不能位置から係合可能位置に戻るように回動する。
つまり、本実施形態では、シートバック20が前方に倒れてから、その倒れ角度が設定角度に達するまでの間は、係合ピン86が第2回動部材84の凸部84bに係止され続けるので、第2回動部材84が第3ケーブルC3を牽引し続ける結果、第3ケーブルC3に接続されたロック片73は、係合不能位置に留まるようになる。すなわち、シートバック20が前方に倒れ出してから、その倒れ角度が設定角度に達するまでの間に、乗員がシートバック20を起こす操作を行ったとしても、ロック片73が係合不能位置に位置することから、当該ロック片73をストライカ74に係合させてシートバック20を再び着座位置で固定することができない。
一方、シートバック20の倒れ角度が設定角度に到達して、係合ピン86が上記の凸部84bを乗り越えると、係合ピン86と第2回動部材84との係合が解除されて、第2回動部材84が回動範囲における一端位置に戻るようになる。これにより、以降、もはや第2回動部材84が第3ケーブルC3を牽引することもなくなり、第3ケーブルC3に接続されたロック片73は、再び係合可能位置に位置するようになる。すなわち、シートバック20の倒れ角度が設定角度に到達した後に乗員がシートバック20を起こす操作を行えば、ロック片73をストライカ74に係合させ、これにより、シートバック20を再び着座位置にて固定(再ロック)することが可能になる。
以上のように、本実施形態では、上述した構成により、車両用シートS1の収納動作の実行中において、車両本体に固定されたストライカ74との係合が解除された状態のシートバック20を、ストライカ74と係合可能な状態に復帰させるための復帰動作(キャンセル動作)を行うことが可能である。そして、本実施形態では、上記の復帰動作が、シートバック20が前方に倒れた際の倒れ角度に応じて行われ、より具体的には、当該倒れ角度が設定角度に達した時点で自動的に行われる。
次に、アレンジユニット80の取り付けについて説明する。本実施形態では、アレンジユニット80の各構成要素が個別に取り付けられるのではなく、ユニットとして一体化された状態でパンフレーム22に取り付けられる。ここで、アレンジユニット80を取り付ける前段階で、取付用のスタッドボルトBsが、パンフレーム22の前面に予めセットされて、パンフレーム22の前面から突出した状態で準備されている。一方、アレンジユニット80のケーシング81には、その外周に沿って適宜な間隔で複数箇所にボルト受け部81aが設けられている。
そして、アレンジユニット80をパンフレーム22に取り付ける際には、ボルト受け部81aに形成されたボルト穴に上記スタッドボルトBsを通し、当該スタッドボルトBsにより、パンフレーム22の前面側からアレンジユニット80を取り付けている。このように、本実施形態では、アレンジユニット80を、一ユニットとして取り付けることが可能であり、更に、パンフレーム22の前面側から取り付けることが可能である。これにより、アレンジユニット80の取付が容易になり、その組み付け性が向上する。
なお、本実施形態では、ボルト受け部81aの設置箇所(換言すると、アレンジユニット80のパンフレーム22への固定箇所)が3箇所であり、各設置箇所は、三角形の頂点上に位置するように設定されている。ここで、ボルト受け部81aの設置箇所を頂点とする三角形状の領域内では、当該領域内に配置した部材の作動を安定させることが可能になるので、当該領域内に前述の係合ピン86を配置し、当該領域内で係合ピン86の可動範囲を設定すれば、係合ピン86の動作が安定して行われるようになる。
また、本実施形態では、ボルト受け部81aの設置箇所の一つが、緩衝ゴム87の近傍に位置している。換言すると、アレンジユニット80の固定箇所の近傍で、可動部材(具体的には、第1回動部材83及び第2回動部材84)が緩衝ゴム87に衝突する。このように、部材同士の衝突が起こる位置の近傍に、アレンジユニット80の固定箇所が存在することにより、上記の衝突が起こったとしてもアレンジユニット80の配置位置が変化するのを抑え、アレンジユニット80をパンフレーム22上に安定して配置しておくことが可能になる。なお、上記の効果をより有効に発揮する上で、緩衝ゴム87の支持軸87aの配置位置が、可動部材と緩衝ゴム87との衝突位置とボルト受け部81aの設置箇所とを結んだ延長線上に位置している方がより好ましい。
さらに、本実施形態では、シートバックフレーム21の高さ方向において、パンフレーム22の前面の中央部にアレンジユニット80が取り付けられている。これにより、アレンジユニット80各部の作動安定性が向上する。
具体的に説明すると、ヘッドレスト30を単独で前方に倒す操作を受け付ける帯状部材ST1がシートバック20の上端に設けられていることから、帯状部材ST1を引張ることによって動作するヘッドレスト回動機構50は、シートバック20の上端近傍に配置されることになる。また、ヘッドレスト回動機構50を駆動させるために動作するアレンジユニット80についても、作動安定性の面から、ヘッドレスト回動機構50の近く(すなわち、シートバック20の上端部)に配置させた方が好ましい。一方、アレンジユニット80は、シートクッション跳ね上げ機構60による跳ね上げ動作をヘッドレスト回動機構50やシートバック倒伏機構70に伝達するものであり、かかる観点では、シートクッション10(より正確には、シートクッション跳ね上げ機構60)の近く、すなわち、シートバック20の下端近傍に配置させた方が望ましい。
以上のような事情により、本実施形態では、シートバックフレーム21の上端及び下端の中間位置にアレンジユニット80を取り付けて、アレンジユニット80の作動安定性の向上を図っている。
さらに、本実施形態では、作動安定性を向上する観点で、左右方向(すなわち、シートバックフレーム21の幅方向)において、車両1の外寄りの位置にアレンジユニット80を取り付けている。これは、アレンジユニット80から伸出している第1ケーブルC1の端部が、シートクッション跳ね上げ機構60に設けられた一対のリンク121のうち、車両1の外側に位置する方のリンク121に取り付けられており、ケーブル長を極力短くして作動安定性を向上させるための構成である。
アレンジユニット80の取り付けに関して更に言及すると、本実施形態では、パンフレーム22の剛性を高めるための補強板26を、パンフレーム22の高さ方向(シートバックフレーム21の高さ方向に相当する)の中央よりもやや上側寄りの位置に取り付けている。そして、パンフレーム22のうち、補強板26が敷設された部分(すなわち、剛性が高まった部分)にアレンジユニット80の一部が掛かるようにアレンジユニット80が取り付けられている。具体的には、アレンジユニット80の取付箇所(すなわち、ボルト受け部81aの設置箇所)のうちの1箇所が、補強板26上に位置している。つまり、本実施形態では、アレンジユニット80が、パンフレーム22の前面のうち、パンフレーム22と補強板26とが重なった部分、すなわち、より剛性が高くなった部分に取り付けられている。
以上のようにアレンジユニット80の取付箇所の剛性が高まる結果、アレンジユニット80の各可動部材(具体的には、後述の第1回動部材83や第2回動部材84)の動作を安定させることが可能になる。これにより、上述したアレンジユニット80の機能(シートクッション跳ね上げ機構60による跳ね上げ動作をヘッドレスト回動機構50やシートバック倒伏機構70に伝達する機能)が適切に発揮されるようになる。
なお、上記の補強板26は、シートバックフレーム21の幅方向に沿って長い矩形形状を有しており、その長手方向一端部は、パイプフレーム23に差し掛かって、当該位置にてパイプフレーム23に接合されて固定されている。これにより、補強板26による補強効果を高め、アレンジユニット80の取付箇所の剛性を更に高めることが可能になる。
さらに、本実施形態では、ヘッドレスト回動機構50が、シートバックフレーム21の高さ方向において、アレンジユニット80の上方に位置した状態でパンフレーム22に固定されている。このようにアレンジユニット80とヘッドレスト回動機構50とが上下に並んで配置されることにより、パンフレーム22の剛性が一層向上することになる。
上記の配置に加えて、アレンジユニット80は、その上部が補強板26に差し掛かった状態でパンフレーム22に取り付けられ、ヘッドレスト回動機構50は、その下部が補強板26に差し掛かった状態でパンフレーム22に取り付けられている。より具体的には、シートバックフレーム21の高さ方向において、補強板26の上端がアレンジユニット80(正確には、アレンジユニット80のケーシング81)の上端よりも上方に位置し、かつ、ヘッドレスト回動機構50(正確には、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51)の上端が補強板26の上端よりも上方に位置している。すなわち、シートバックフレーム21の高さ方向において、補強板26が、ヘッドレスト回動機構50とアレンジユニット80とに挟み込まれた位置に敷設されるようになる。これにより、パンフレーム22の剛性は、より一層向上することになる。
次に、アレンジユニット80から伸出した各ケーブルCの配索経路について図5を参照しながら説明する。
アレンジユニット80から伸出したケーブルCのうち、シートクッション跳ね上げ機構60のリンク121に繋がれた第1ケーブルC1は、図5に示すように、アレンジユニット80のケーシング81の下部から伸出し、シートバックフレーム21の幅方向においてパンフレーム22の略中央部を通るように配索されている。
ヘッドレスト回動機構50に繋がれた第2ケーブルC2は、図5に示すように、アレンジユニット80のケーシング81の側部(正確には、車両1の外側に面した方の側部)から伸出した後に折り返されて、その先端がヘッドレスト回動機構50のスライド部材54に向かうように配索されている。
シートバック倒伏機構70に繋がれた第3ケーブルC3は、図5に示すように、アレンジユニット80のケーシング81の側部(正確には、車両1の外側に面した方の側部)から伸出し、シートバックフレーム21の肩位置に設けられた取付ブラケット27に向かって配索されている。その後、第3ケーブルC3は、取付ブラケット27の脇で折り返されて、その先端がシートバック倒伏機構70の連結部76に繋ぎ込まれている。
倒れ角度検出機構130に繋がれた第4ケーブルC4は、図5に示すように、アレンジユニット80のケーシング81の下部から伸出し、パンフレーム22の、車両1の外に面する側の端部(シートバックフレーム21の幅方向における一端部に相当する)側を通るように配索されている。
ここで、第4ケーブルC4のうち、アレンジユニット80を出てから、倒れ角度検出機構130に繋ぎ込まれるまでの間の部分は、シートバック20の倒伏動作に連動して屈伸するようになる(図5には、くの字状に屈曲している状態の第4ケーブルC4が図示されている)。すなわち、第4ケーブルC4は、その中途位置に余長部分(いわゆる遊び)が設けられており、シートバック20が倒伏すると動く(具体的には、屈曲する)ことになる。換言すると、第4ケーブルC4は、シートバック20の前後方向における回動に伴って、屈伸動作(バタツキ動作)をすることになる。
以上のように、第4ケーブルC4がシートバックフレーム21の表面上で屈伸動作をする(ばたつく)ので、シートバックフレーム21において、第4ケーブルC4が屈伸動作をしても第4ケーブルC4を収容するだけのスペースを確保する必要がある。このため、本実施形態では、図16に示すように、パンフレーム22の、車両1の外に面する側の端部と、当該端部の前方に位置するパイプフレーム23との間には配索空間ASが設けられている。この配索空間ASは、第4ケーブルC4が動いた際に第4ケーブルC4の一部を収容する空間である。つまり、第4ケーブルC4は、シートバック20の前方への倒伏に伴って動く際には、配索空間AS内に潜り込むように動くことになる。
本実施形態では、上記の配索空間ASが形成されていることにより、第4ケーブルC4が屈伸動作(特に、屈曲動作)をしたとしても、同空間内に第4ケーブルC4を収め、第4ケーブルC4を適切に配索することが可能になる。さらに、配索空間ASが形成されていることによって、第4ケーブルC4は、屈曲する際にパイプフレーム23の下に潜り込むようになり、パイプフレーム23との接触を回避することが可能になる。これにより、ケーブルCがパイプフレーム23に当たることによって異音が発生するのを抑制することが可能になる。
なお、パンフレーム22の、配索空間ASを構成する部分の外縁部(すなわち、シートバックフレーム21の幅方向におけるパンフレーム22の一端部のうち、パンフレーム22の外縁に位置する部分)には、壁の一例としての立ち壁状のケーブル返し壁22aが形成されている。このケーブル返し壁22aが形成されていることにより、配索空間AS内に潜り込んだ第4ケーブルC4がパンフレーム22の外にはみ出すのを規制することが可能になる。これにより、第4ケーブルC4は、パンフレーム22の外縁の内側に収まるように適切に配索されるようになる。
また、本実施形態では、配索空間ASが、シートバックフレーム21の幅方向両端部のうち、アレンジユニット80により近い側の端部、すなわち、車両1の外に面する側の端部に設けられている。換言すると、シートバックフレーム21の幅方向において配索空間ASが形成されたパンフレーム22の一端部は、パンフレーム22の他端部よりアレンジユニット80の取付位置に近くなっている。これにより、配索空間ASを設けた効果がより有効に奏されることになる。
具体的に説明すると、前述したように、アレンジユニット80は、シートバックフレーム21の幅方向において、やや車両1の外側寄りの位置に取り付けられている。また、アレンジユニット80から伸出した第4ケーブルC4については、操作安定性を確保する観点では、極力短い経路にて倒れ角度検出機構130まで配索させる必要がある。以上の事項を考慮して、本実施形態では、パンフレーム22の、車両1の外側に面した方の側部を通るように第4ケーブルC4を配索している。したがって、第4ケーブルC4のバタツキは、パンフレーム22の、車両1の外側に面する側の端部上で生じるため、当該バタツキを吸収する配索空間ASを、車両1の外側に面する側の端部に設けておければ、その効果をより有効に発揮させることが可能になる。
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、本発明の乗物用シートとして車両用シートS1を一例に挙げて説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
また、上記の実施形態では、ヘッドレスト回動機構50とアレンジユニット80は、それぞれ個別のケーシング51、81を有しており、各ケーシング51、81の、シートバックフレーム21への取付箇所は、互いに異なる位置であることとした。ただし、これに限定されるものではなく、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51の取付箇所と、アレンジユニット80のケーシング81の取付箇所とが同じ位置であってもよい。換言すると、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51に設けられたボルト受け部51aと、アレンジユニット80のケーシング81に設けられたボルト受け部81aとが、同一のスタッドボルトBsを受け、当該スタッドボルトBsによって共締めされることとしてもよい。
さらに、ヘッドレスト回動機構50とアレンジユニット80とが、ケーシングを共有する(つまり、ヘッドレスト回動機構50のケーシング51とアレンジユニット80のケーシング81とが一体化されている)構成であってもよい。