JP5768084B2 - ガラス板の製造方法、及びガラス板製造装置 - Google Patents

ガラス板の製造方法、及びガラス板製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス板の製造方法、及びガラス板製造装置に関する。
ガラス板等のガラス製品の量産工程においては、ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成し、生成した熔融ガラスを成形して、ガラス板等のガラス製品が製造される。熔融ガラスが不均質であると、ガラス製品には脈理が生じる。脈理は、周囲とは屈折率や比重が異なる筋状の領域であり、液晶ディスプレイ(LCD)用基板等のフラットパネルディスプレイ向けのガラス板の用途においては、ガラス製品から厳しく排除することが求められる。脈理の発生を防ぐために、攪拌装置を用いて熔融ガラスを攪拌することが行われている。一般に攪拌装置は、チャンバーと、攪拌部材とを備えている。攪拌部材は、回転軸であるシャフトと、シャフトの側面に接続された羽根とを有している。攪拌部材が配置されたチャンバー内に熔融ガラスが導入され、羽根により熔融ガラスが攪拌され、熔融ガラスが均質化される。
特許文献1には、クランク型の攪拌翼を有する攪拌装置であって、回転軸の周囲に設けられ、かつ回転軸の直交する方向に面状に延在し、撹拌槽装置の中心部領域に存在する熔融ガラスを外周部領域に誘導する面板状の翼を有する攪拌装置が開示されている。
特開2010−100462号公報
従来から、熔融ガラスを攪拌することを目的とした攪拌装置が種々提案されている。しかし、近年、ますます高精細が求められるフラットパネルディスプレイ向けのガラス板では、脈理を極めて低レベルに抑えることが求められており、従来の攪拌装置では、熔融ガラスを攪拌する能力が十分とはいえず、攪拌効果を高めようとすると攪拌装置への負荷が過大となり、攪拌装置の破損や変形が生じてしまうという課題があった。
上述の事情に鑑み、本発明は装置の破損や変形を抑制しつつ、熔融ガラスをより均質に攪拌することを可能にする工程を含む、ガラス板の製造方法を提供することを目的とし、特にフラットパネルディスプレイ用のガラス板の製造に有利なガラス板の製造方法、ガラス板製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記側面及び前記羽根によって前記熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において変化するように設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
また、本発明は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトを前記底面に投影したときに、前記底面の周が、前記底面の周に含まれる他の点よりも前記シャフトの投影体に近い近接点を少なくとも1点含むように設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
また、本発明は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備える撹拌装置を有し、
前記シャフトは、前記側面及び前記羽根によって熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において変化するように設けられている、ガラス板製造装置を提供する。
本発明のガラス板の製造方法、又は、ガラス板製造装置によれば、装置破損や変形を抑制しつつ、より高いせん断応力を熔融ガラスに対して与えることができ、熔融ガラスの攪拌効果を高めることができる。
第1実施形態に係るガラス製造装置の構成の一例を示す図 第1実施形態に係る攪拌装置の構成の一例を示す図 第1実施形態に係る攪拌部材をチャンバーの底面に投影した図 第1実施形態に係る攪拌部材の斜視図 第1実施形態に係る攪拌部材の羽根の平面図 第1実施形態に係る攪拌部材の羽根の側面図 第1実施形態に係る攪拌部材の羽根の平面図 第1実施形態に係る攪拌部材の羽根の側面図 第1実施形態に係るチャンバー内の熔融ガラスの流れを示す図 第2実施形態に係る攪拌部材の斜視図 第2実施形態に係る羽根の平面図 第2実施形態に係る羽根の平面図 第2実施形態に係る攪拌部材の平面図 第2実施形態に係るチャンバー内の熔融ガラスの流れを示す図 第2実施形態の変形例に係る羽根の平面図 他の実施形態に係る攪拌部材の斜視図 他の実施形態に係る攪拌部材をチャンバーの底面に投影した図 他の実施形態に係る攪拌部材をチャンバーの底面に投影した図 他の実施形態に係る攪拌装置の平面図
図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<第1実施形態>
まず、本実施形態に係るガラス製造装置の全体構成について説明する。図1は本実施形態のガラス製造装置200の構成の一例を示す模式図である。ガラス製造装置200は、熔解槽40と、清澄槽41と、攪拌装置100と、成形装置42とこれらをそれぞれ連通させる導管43a、43b、43cとを備えている。熔解槽40により生成された熔融ガラス7は、導管43aを通過して清澄槽41に流入し、清澄槽41により清澄された後に導管43bを通過して攪拌装置100へと流入し、攪拌装置100により均質に攪拌された後に導管43cを通過して成形装置42に流入し、ダウンドロー法によりガラスリボン44が成形される。
(熔融工程)
図示されていないが、熔解槽40にはバーナー等の加熱手段が設置されていて、ガラス原料を熔解させて熔融ガラス7を得ることができる。ガラス原料は所望のガラスを得ることができるように適宜調整すればよい。調整されたガラス原料が、熔解槽40に投入される。熔解槽40では、ガラス原料の組成や特性に応じた設定温度でガラス原料を熔解させて、例えばフラットパネルディスプレイ用ガラスの場合、1500℃〜1610℃の熔融ガラス7を得る。
(清澄工程)
熔解槽40で得られた熔融ガラス7は、熔解槽40から導管43aを通過して清澄槽41に流入する。図示されていないが、清澄槽41には、加熱手段が設置されている。清澄槽41では、熔解槽40と比較して熔融ガラス7がさらに昇温されることで清澄される。清澄槽41において、熔融ガラス7の温度は、例えばフラットパネルディスプレイ用ガラスの場合、1550℃〜1750℃、好ましくは1600℃〜1750℃に上昇する。特に、熔融ガラス7が清澄剤として少なくともSnO2を含有する場合、清澄槽41において熔融ガラスの温度が1620℃〜1750℃、より好ましくは1650℃〜1750℃に上昇させることにより、ガラス板中の泡量を低減することができる。
(攪拌工程)
清澄槽41において清澄された熔融ガラス7は、清澄槽41から導管43bを通過して攪拌装置100に流入する。熔融ガラス7は導管43bを通過する際に冷却されて、攪拌装置100では清澄槽41における温度よりも低い温度で攪拌される。攪拌工程の条件の一例としては、フラットパネルディスプレイ用ガラスの場合、熔融ガラス7の温度は1400℃〜1600℃であり、かつ、熔融ガラスの粘度を450〜2500dPa・s(ポアズ)の範囲内に調整して、攪拌を行うことが望ましい。熔融ガラスは攪拌装置100において攪拌され、均質化される。
(成形工程)
攪拌装置100により均質化された熔融ガラス7は、攪拌装置100から導管43cを通過して成形装置42に流入する。熔融ガラス7は導管43cを通過する際に冷却され、成形に適した温度(例えば、オーバーフローダウンドロー法によるフラットパネルディスプレイ用ガラスの成形の場合、1150℃〜1300℃)まで冷却される。成形装置42では、例えば、オーバーフローダウンドロー法により熔融ガラス7が成形される。成形装置42に流入した熔融ガラス7は、成形装置42の上部から溢れて成形装置42の側壁に沿って下方へ流れる。これにより、ガラスリボン44が連続的に成形される。ガラスリボン44は下方に向かうにしたがい冷却され、最終的には所望の大きさのガラス板へと切断される。
(攪拌装置)
次に、本実施形態の攪拌装置100について説明する。図2は本実施形態の攪拌装置100の一例を示す側面図である。攪拌装置100はチャンバー1と、チャンバー1内に配置された攪拌部材2とを備えている。チャンバー1は、底面1a、底面1aから鉛直上方に延びる側面1b、側面と直交する頂面1cによって区画されており、底面1aが円である円柱状に形成されている。なお、側面1bは底面1aから上方に延びていればよく、必ずしも鉛直方向に延びている必要はない。また、頂面1cは、側面1bと直交する必要はなく、頂面1bと交わっていればよい。また、底面1aの形状は円に限定されず、チャンバーの形状も円柱には限定されない。チャンバー1の側面1bの頂面1c近傍に上流側導管3が接続されて流入口1dが形成されている。また、チャンバー1の側面1bの底面1a近傍に下流側導管4が接続されて流出口1eが形成されている。熔融ガラス7は、上流側導管3から流入口1dを介して水平方向にチャンバー1内に流入し、チャンバー1内において鉛直下方に導かれ、チャンバー1内から流出口1eを介して水平方向に下流側導管4へ流出する。流入口1dは、側面1bの底面1aの近傍に設けられている必要はなく、底面1aに設けられていてもよい。しかし、熔融ガラス7を攪拌装置100の内部に十分な時間滞留させて、熔融ガラス7に攪拌部材2によって十分なせん断応力を付与するという観点から、流入口1dは、側面1bの底面1a近傍に設けられていることが好ましい。
攪拌部材2は、円柱状の回転軸であるシャフト5とシャフト5の側面からシャフト5の半径方向に延びる羽根6a、6b、6c、6d、6eとを備えている。図示していないが、シャフト5の上端部はモーターに接続されており、攪拌部材2はシャフト5を回転軸として回転してチャンバー内1の熔融ガラス7を攪拌する。なお、本実施形態において、シャフト5は、上から見て反時計回りに回転する。羽根6a〜6eはこの順番でシャフト5の軸方向に沿って設けられている。このように、攪拌部材2は5段の羽根を備える。攪拌部材2は、各段においてシャフト5から互いに反対方向に延びる2つの羽根6a〜6eを備えている。攪拌部材2のシャフト5の軸方向に並ぶ羽根の段数は5段に限定されるものではなく、チャンバー1の大きさやシャフト5の長さなどを考慮して、適宜調整してよく、2段以上設けられていればよい。また、シャフト5の軸方向における隣接する羽根の間隔は、チャンバー1内の熔融ガラス7が効率的に攪拌されるように、例えば、3〜35mmであることが好ましい。
また、例えばフラットパネルディスプレイ用ガラスなどの場合、攪拌装置100により攪拌する熔融ガラス7の温度は1400〜1600℃程度である。そのため、上流側導管3、下流側導管4、チャンバー1及び攪拌部材2のように熔融ガラス7に接触する部材は、上記温度に耐えることができる材料により作製されることが望ましい。例えば、これらの部材は、白金、白金合金、強化白金、強化白金合金、イリジウム、イリジウム合金などにより作製される。
(攪拌部材の位置決め)
次に、攪拌工程における攪拌部材2のシャフト5の位置決めの態様について説明する。図2に示すように、攪拌部材2のシャフト5は、円柱状のチャンバー1の中心軸よりも流出口1e側にずらして位置決めされている。図3を参照しつつ、シャフト5の位置決めについて詳細に説明する。図3は、攪拌部材2を底面1aに投影した図である。図3において、破線で示された円は、シャフト5の中心O2を中心とし、シャフト5からシャフト5の半径方向に最も離れた羽根の端Eを円周上の任意の点とする仮想円Cである。O1は形状が円である底面1aの中心を示している。図3に示す通り、シャフト5の位置は、底面1aの周が、底面1aの周に含まれる他の点よりもシャフト5の投影体に近い近接点Nを含むように、シャフト5が位置決めされている。図3には、このような近接点のうち、シャフト5の投影体に最も近い近接点Nを図示している。このようにシャフト5が位置決めされていると、攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとチャンバー1の側面1bとの距離が局所的に短くなる領域が形成される。この領域では、攪拌部材2とチャンバー1の側面1bとの間でより高いせん断応力を熔融ガラス7に対して与えることができる。熔融ガラス7に対するせん断応力を局所的に高めることで、熔融ガラス7の攪拌効果を高めることができる。換言すると、攪拌装置100において、シャフト5は、側面1b及び攪拌部材2の羽根6a〜6eによって熔融ガラス7にかかるせん断応力が側面1bの周方向において変化するように、設けられている。また別の観点から、シャフト5は、シャフト5からシャフト5の半径方向に最も離れた羽根6a〜6eの端と側面1bとの距離が側面1bの周方向において変化するように、設けられている、ということもできる。
例えば、シャフト5をチャンバー1の中心軸に沿って位置決めし、図3に記載の底面1aより小さい径の円である底面でチャンバー1を形成して、仮想円Cの円周と底面1aの周との距離を底面1aの周全体で短くし、熔融ガラス7に対するせん断応力を高めることが考えられる。しかしながら、この様にしてチャンバー1の側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離を側面1bの全体で短くしてしまうと、羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bが熔融ガラス7から受ける負荷(応力)が大きくなってしまい、羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bが破損もしくは変形してしまうおそれがある。本実施形態では、羽根6a〜6e及びチャンバー1の底面1a、側面1b及び頂面1cは白金、白金合金等の材料で作製されている。羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bにかかる負荷が大きくなると、羽根6a〜6e又はチャンバー1の側面1bから白金等が剥離して熔融ガラス7中に混入してしまうおそれがある。あるいは、羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bの劣化が促進されてしまう。その結果、例えばディスプレイ用ガラス基板などのガラス製品の欠陥を招いてしまう。あるいは、チャンバー1の側面1bの劣化により、チャンバー1の側面1bが破損してしまうおそれがある。チャンバー1は、白金、白金合金などの高価な材料で作製されている。従って、コスト低減のために例えば、チャンバーは0.5mm〜5mm程度の厚さの壁で構成されるため、上記のチャンバー1の側面の破損の問題が顕著となる。上記のようにシャフト5を位置決めすれば、チャンバー1の側面1bにおいて側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離が局所的に短い領域が形成されるものの、それ以外の領域では側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離はより長くなる。その結果、羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bが熔融ガラス7から受ける負荷が攪拌装置全体で大きくなることを抑制できる。さらに、側面1bにおいて側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離が局所的に短い領域が形成されると、側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離が一定である場合と比較して、チャンバー1内の熔融ガラスの流れが乱れ、攪拌効果が向上し、脈理を低減することが可能となる。
本実施形態では、近接点Nは底面1aの流出口1eに対応する側面1bの部分に含まれていることが好ましい。換言すると、攪拌部材2のシャフト5は、チャンバー1の側面1bの流出口1eに対応する部分(流出口1eからシャフト5の回転軸と平行な方向に延びている側面1bの部分)で羽根6a〜6eの端Eが側面1bと最も近接するように、位置決めされていることが好ましい。つまり、シャフト5は、シャフト5からシャフト5の半径方向に最も離れた羽根6a〜6eの端Eと側面1bとの距離が側面1bのうち流出口1eに対応する部分で最小となるように、設けられている。本実施形態では、チャンバー1の底面1aの形状が円であるので、シャフト5が底面1aの中心から流出口1e側に寄るように、シャフト5が位置決めされているということもできる。
ところで、流出口1eはチャンバー1の側面1bが開口して形成されている場合、この部分で攪拌部材2と対向する面が存在しない。例えば、底面1aの中心にシャフト5を位置決めした場合、流出口1e付近の領域での熔融ガラス7に対するチャンバー1の側面1bとの羽根6a〜6eによるせん断応力は、他の領域での熔融ガラス7に対するチャンバー1の側面1bと羽根6a〜6eによるせん断応力よりも小さくなる。その結果、流出口1e付近の領域で、例えば周囲の熔融ガラス7と屈折率や比重の異なる部分が生じて、脈理が発生してしまうおそれがある。これに対し本実施形態では、上記のようにシャフト5を位置決めすることで、流出口1e近傍の側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eによる十分なせん断応力を熔融ガラス7に対して与えることができる。その結果、熔融ガラス7をより均質に攪拌して攪拌効果が向上し、脈理の発生が低減される。
側面1bと攪拌部材2との距離が短すぎると、攪拌部材2及びチャンバー1の側面1bが熔融ガラス7から受ける負荷が大きくなってしまう。一方、側面1bと攪拌部材2との距離が長すぎると、側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eによって局所的に高いせん断応力を熔融ガラス7に与えることが難しくなる。このような観点から、シャフト5の中心軸と底面1aの中心における底面に対する法線との距離Lは、シャフト5の中心軸と底面1aの中心における底面に対する法線とが一致するようにシャフト5を位置決めしたときのシャフト5からシャフト5の半径方向に最も離れた羽根6a〜6eの端Eと側面1bとの距離Dに対して、0%より大きく、かつ、45%以下の範囲とすることが望ましく、10〜40%がより望ましく、15〜30%がさらに望ましい。
具体的には、近接点Nとシャフト5から最も離れた羽根6a〜6eの端Eとの距離が、3〜25mmであることが好ましく、5〜20mmであることがより好ましく、8〜15mmであることがさらに好ましい。これにより、攪拌装置への負荷を過剰にすることなく、より高いせん断応力を熔融ガラスに対して与えることができ、熔融ガラスの攪拌効果を高めることができる。
以上のことから、本実施形態では、攪拌部材2とチャンバー1の側面1bとの距離が局所的に短くなる領域が形成され、この領域では、攪拌部材2とチャンバー1の側面1bとの間でより高いせん断応力を熔融ガラスに対して与えることができ、熔融ガラスの攪拌効果を高めることができる。また、それ以外の領域ではチャンバー1の側面1bと攪拌部材2との距離はより長くなる。その結果、羽根及びチャンバー1の側面1bが熔融ガラスから受ける応力が攪拌装置全体で大きくなることを低減できる。
本実施形態の位置決め作業を実施する時期は特に限定されない。攪拌工程の開始前に行ってもよいし、攪拌工程中に行ってもよい。攪拌装置100の製造過程で実施してもよいし、攪拌装置100のメンテナンス作業の一工程として実施してもよい。
(攪拌部材)
次に、攪拌部材2の羽根6a〜6eの構成及びチャンバー1内での熔融ガラス7の流れについて具体的に説明する。なお、攪拌部材2の構成は下記構成に限定されるものではないが、攪拌部材2の羽根は、攪拌部材2の羽根6a〜6eとチャンバー1の側面1bとによって熔融ガラスにせん断力を付与することができるように一定以上の長さの又は一定以上の面積のチャンバー1の側面1bと対向する部分を有していることが好ましい。本実施形態の攪拌装置100は、チャンバー1の側面1bと攪拌部材2の羽根6のシャフト5のチャンバー1の側面1bと対向する面との間に形成されるクリアランス(間隔)において熔融ガラスにせん断応力を与え、攪拌効果を得ている。
羽根6a、6c、6eは互いに同一形状であり、羽根6b、6dは互いに同一形状である。図4は、攪拌部材2の斜視図である。図5は、羽根6a、6c、6eの平面図であり、図6は、羽根6a、6c、6eの側面図である。図7は、羽根6b、6dの平面図であり、図8は、羽根6b、6dの側面図である。羽根6a〜6eは、シャフト5の側面からシャフト5の半径方向に延びる支持板8と支持板8の主面上に設けられた補助板9とを備えている。
支持板8は、シャフト5を回転軸として攪拌部材2が回転した場合に、熔融ガラス7を上方に押し上げ、又は、下方に押し下げる形態を有している。ここで、シャフト5の軸方向に沿った方向が上下方向である。
図4に示すように、羽根6a、6c、6eと羽根6b、6dとでは支持板8の傾斜方向が互いに異なる。上から見て反時計回りにシャフト5が回転した場合に、羽根6a、6c、6eの支持板8は熔融ガラス7を押し下げるが、羽根6b、6dの支持板8は熔融ガラスを押し上げる。
シャフト5を回転軸として攪拌部材2が回転した場合に、最下段の羽根6eにより熔融ガラス7を押し下げる態様となっている。最下段の羽根6e付近の熔融ガラス7に下方への流れを生じさせることで、熔融ガラス7がチャンバー1の底面と衝突し、熔融ガラス7の攪拌が促進される。
支持板8の主面には貫通孔12が形成されている。シャフト5を回転軸として攪拌部材2を回転させた場合に、熔融ガラス7の一部が貫通孔12を通過することにより、熔融ガラス7には上方又は下方への流れが生じる。
補助板9は、その主面が支持板8の主面に対して垂直となるように、支持板8の主面上に設けられている。図5及び図7に示されているように、補助板9は、一つの支持板8の上方主面及び下方主面にそれぞれ2枚ずつ設けられている。図5及び図7において、下方主面に設けられた補助板9は破線で示されている。補助板9は、シャフト5に最も近い端部9aと、端部9aの反対側の端部である端部9bとを有し、端部9aから端部9bまで延びる形状を有している。補助板9は、熔融ガラス7にシャフト5の半径方向の流れを生じさせることができればよく、補助板9の主面は平面又はその他の形状であってもよい。
図9において、各羽根6a〜6eの間の矢印は、補助板9によって生じる熔融ガラス7の流れを示している。熔融ガラス7には、補助板9によって、シャフト5側からチャンバー1の側面1b側への流れ、又は、チャンバー1の側面1b側からシャフト5側への流れが生じる。
図9において、最下段の羽根6eとチャンバー1の底面1aとの間の矢印はこの領域における熔融ガラス7流れを模式的に示している。最下段の羽根6eの下方主面に設置された補助板9が上記の形態であるので、熔融ガラス7がチャンバー1から下流側導管4へ円滑に流出されるように、シャフト5側からチャンバー1の側面1b側へと熔融ガラス7を導くことができる。その結果、チャンバー1の下部における熔融ガラス7の流れが円滑となり、熔融ガラス7がより均質に攪拌される。
図9の最上段の羽根6aと頂面1cとの間の矢印は、この領域における熔融ガラス7の流れを模式的に示している。羽根6aの支持板8は、熔融ガラス7を下方に押し下げる形態を有している。また、シャフト5を回転軸として上から見て反時計回りに攪拌部材2が回転した場合に、羽根6aの支持板8の上方主面に設置されている補助板9は、熔融ガラス7をチャンバー1の側面1b側からシャフト5側へとかき込む態様を有している。攪拌部材2が回転した場合に、これら支持板8及び補助板9によって熔融ガラス7に流れが生じ、それらの流れが合成されることによって、上部空間21において、図9に示すように、シャフト5周辺では熔融ガラス7が上方に向かい、チャンバー1の側面1b周辺では熔融ガラス7が下方へ向かう流れ(循環流)が生じる。循環流が生じることにより、上流空間21では熔融ガラス7が攪拌され、滞留しにくい。
さらに、上記の通り、底面1aの周は、底面1aの周に含まれる他の点よりもシャフト5の投影体に近い近接点Nを含むように、シャフト5が位置決めされている。換言すると、攪拌装置100において、シャフト5は、側面1b及び攪拌部材2の羽根6a〜6eによって熔融ガラス7にかかるせん断応力が側面1bの周方向において変化するように、設けられている。また別の観点から、シャフト5はシャフト5からシャフト5の半径方向に最も離れた羽根6a〜6eの端と側面1bとの距離が側面1bの周方向において変化するように設けられている、ということもできる。このようにシャフト5が位置決めされていると、攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとチャンバー1の側面1bとの距離が局所的に短くなる領域が形成される。この領域では、攪拌部材2とチャンバー1の側面1bとの間でより高いせん断応力を熔融ガラス7に対して、与えることができる。熔融ガラス7に対するせん断応力を局所的に高めることで、熔融ガラス7の攪拌効果を高めることができる。また、それ以外の領域では側面1bと攪拌部材2の羽根6a〜6eの端Eとの距離はより長くなる。その結果、羽根6a〜6e及びチャンバー1の側面1bが熔融ガラス7から受ける負荷が攪拌装置100全体で大きくなることを低減できる。
(ガラス組成)
本実施形態のガラス製造装置200で製造されるガラスは特に限定されない。しかし、本実施形態のガラス製造装置は、以下に例示する組成又は特性を有するガラスの製造に有利である。
本実施形態を適用するガラスの一例は、アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、及びK2O)を0〜2.0質量%(Li2O、Na2O、及びK2Oの合計量)を含有するガラスである。このガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含まない無アルカリガラス、又は、アルカリ金属酸化物を原料として添加しているものの、アルカリ金属酸化物の含有量の合計量が2質量%以下である微アルカリガラスである。ここで、無アルカリガラスについて「実質的に含まない」とは、アルカリ金属酸化物を原料として意図的に添加しないことを意味し、アルカリ金属酸化物を全く含まない場合はもちろん、例えば製造上の理由で微量にアルカリ酸化物が混入してしまう場合を許容する趣旨である。具体的にはアルカリ金属酸化物の許容される含有率は0.1質量%未満である。無アルカリガラス及び微アルカリガラスの熔融工程における粘度は、アルカリ金属酸化物を2質量%を超えて(比較的多く)含むアルカリガラスの熔融工程における粘度より高くなりやすい。そのため、無アルカリガラス及び微アルカリガラスは、熔融工程において均質化がされにくく未熔解物が残存して脈理が生じやすい。さらに、攪拌工程における無アルカリガラス及び微アルカリガラスの熔融ガラスの粘度は、アルカリガラスの熔融ガラスの粘度よりも高いため、熔融ガラスから攪拌装置に加わる応力が大きくなる。そこで、本実施形態の製造方法又は製造装置をこのガラスに適用することで、攪拌装置の破損などを抑制しつつ、熔融ガラスがより均質に攪拌されて、脈理の発生を低減することができる。
また、本実施形態を適用するガラスの一例は、熔融ガラスの粘度が102.5dPa・s
のときの熔融ガラスの温度が1450〜1750℃であるガラスである。このような特性を持つガラスは熔融工程において均質化されがたく未熔解物が残存して脈理が生じやすい。さらに、このような特性を持つガラスは、102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1450℃未満のガラスと比較して攪拌工程における熔融ガラスの粘度が高いため、熔融ガラスから攪拌装置に加わる応力が大きくなる。つまり、102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1450〜1750℃であるガラスの製造には本実施形態が好適であり、102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1500〜1750℃であるガラスには本実施形態がより好適であり、102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1530〜1750℃であるガラスには本実施形態がさらに好適である。本実施形態の製造方法又は製造装置をこのような特性を有するガラスに適用することで、攪拌装置の破損などを抑制しつつ、熔融ガラスがより均質に攪拌されて、脈理の発生を低減することができる。
また、本実施形態を適用するガラスの一例は、
SiO2:50〜70質量%、
23:5〜18質量%、
Al23:10〜25質量%、
MgO:0〜10質量%、
CaO:0〜20質量%、
SrO:0〜20質量%、
BaO:0〜10質量%、
MgO+CaO+SrO+BaO:5〜20質量%、
酸化スズ、酸化鉄、及び酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物をそれぞれSnO2、Fe23及びCeO2に換算して合計で0.05〜1.5質量%含有するガ
ラスである。このガラスも、熔融工程において均質化されがたく未熔解物が残存して脈理が生じやすい。さらに、熔融ガラスの粘度が高いため、熔融ガラスから攪拌装置に加わる応力が大きくなる。本実施形態の製造方法又は攪拌装置をこのガラスに適用することで、攪拌装置の破損などを抑制しつつ、熔融ガラスがより均質に攪拌されて、脈理の発生を低減することができる。
このガラスは、例えば液晶ディスプレイあるいは有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用ガラス基板として利用され得る。TFT(薄膜トランジスタ)などのフラットパネルディスプレイの素子の劣化を抑制する観点から、このガラスは、アルカリ成分を実質的に含まない無アルカリガラスであることが望ましい。他方、清澄性を向上させるために微量のアルカリ成分を含有させていてもよい。この場合、Li2O、Na2O及びK2Oの含有量の総和(Li2O+Na2O+K2O)が0.05〜2.0質量%であることが望ましく、0.1〜2.0質量%であることがより望ましい。また、環境負荷の観点から、清澄剤としてAs23、PbOを実質的に含まないことが望ましい。また、清澄剤として少なくともSnO2を含有することが望ましい。また、ガラス中の酸化鉄の含有量がFe23に換算して0.01〜0.2質量%であることが望ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、原料として意図的に添加しないことを示し、当該成分を全く含まない場合はもちろん、例えば製造上の理由で微量に当該成分が混入することを許容する趣旨である。
なお、フラットパネルディスプレイの軽量化の観点から、SrO+BaOが0〜10質量%であることが望ましい。さらに、環境負荷の観点も考慮すると、BaOは0〜2質量%であることがさらに望ましい。
上述の組成範囲とすることで、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のガラス板に要求される特性を満たすことができる。より詳細には、歪点650℃以上、より好ましくは660℃以上であるガラス板を実現できる。また、密度2.6g/cm3以下、より好ましくは2.5g/cm3以下を満たすガラス板を実現できる。また、ヤング率が70GPa以上のガラス板を実現できる。ここで、歪点は、ガラスの粘度が1014.5dPa・sであるときの温度と定義される。密度は、アルキメデス法により測定されるものを意味する。ヤング率はJIS(日本工業規格)R1602に従って測定されるものを意味する。さらに、失透温度1250℃以下を実現できるので、オーバーフローダウンロード法を適用してガラス板を製造できる。ただし、失透温度が1050℃未満を実現しつつ、フラットパネルディスプレイ用ガラス板に要求される上述した特性を満たすことは困難であるため、このガラスの失透温度1050℃〜1250℃であることが好ましく、1100℃〜1230℃であることが好ましい。
また、本実施形態を適用するガラスの一例は、
SiO2:52〜78質量%、
23:3〜25質量%、
Al23:3〜15質量%、
MgO+CaO+SrO+BaO:3〜20質量%、
質量比(SiO2+Al23)/B23が7.5以上であり、歪点が670℃以上である、ガラスである。このガラスも、熔融工程において均質化されがたく未熔解物が残存して脈理が生じやすい。さらに、上記したガラス組成よりもさらに熔融ガラスの粘度が高くなりやすいため、攪拌工程時の熔融ガラス温度も高く、熔融ガラスから攪拌装置に加わる応力が大きくなる。例えば、攪拌工程時の熔融ガラス温度は、1450〜1550℃である。本実施形態の製造方法又は攪拌装置をこのガラスに適用することで、攪拌装置の破損などを抑制しつつ、熔融ガラスがより均質に攪拌されて、脈理の発生を低減することができる。
近年、ディスプレイの高精細化のためにα‐Si(アモルファスシリコン)・TFTに替えてp‐Si・TFTや酸化物半導体を用いたフラットパネルディスプレイが求められている。p‐Si・TFTや酸化物半導体の形成では、α‐Si・TFTの形成工程よりも高温な熱処理工程が存在する。そのため、p‐Si・TFTや酸化物半導体が形成されるガラス板には熱収縮率が小さいことが求められる。熱収縮率を小さくするためには、ガラスの歪点を高くすることが望ましいが、歪点が高いガラスは高温域における熔融ガラスの粘度が高くなりやすい。そのため、脈理の発生が顕著となる。p‐Si・TFTや酸化物半導体が形成されるガラス板の歪点としては、例えば670℃以上であり、680℃以上がより望ましく、690℃以上がさらに望ましい。また、製造上の理由から、熔融ガラスの粘度が102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1500〜1750℃であることが望ましく、1550〜1750℃であることがより望ましい。歪点が670℃以上であり、かつ、102.5dPa・sのときの熔融ガラスの温度が1500〜1750℃であるガラスの一例としては上記の組成のガラスを挙げることができる。
このガラスはさらに以下の組成、特性を備えていてもよい。熔融工程においてガラスではなく熔融槽に電流が流れてしまわないように、Li2O、Na2O、及びK2Oの含有量の総和(Li2O+Na2O+K2O)を0.01〜0.8質量%としてガラスの比抵抗を低下させることが望ましい。また、ガラスの比抵抗を低下させるためにFe23の含有量を0.01〜1質量%とすることが望ましい。さらに、高い歪点を実現しつつ失透温度の上昇を抑制するために、CaO/RO(MgO+CaO+SrO+BaO)は0.65以上とするのが望ましい。また、高い歪点を実現しつつ失透温度の上昇を抑制するために、質量比(SiO2+Al23)/B23を7.5〜20の範囲とすることが望ましい。また、失透温度を1250℃以下としてオーバーフローダウンロード法の適用を可能にすることが望ましい。また、軽量化の観点から、SrO及びBaOの含有量の合計が0〜2質量%であることが望ましい。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る攪拌装置300について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は攪拌部材302が以下に説明する構成である点を除き、第1実施形態と同様の構成である。
図10は、本実施形態に係る攪拌装置300の攪拌部材302の斜視図である。攪拌部材302は、軸回転する円柱状のシャフト305と、シャフト305の側面に設けられた羽根306a、306b、306c、306d、306eとを備えている。羽根306a〜羽根306eは、シャフト305の半径方向に延びるように設けられている。シャフト305は、その回転軸が鉛直方向に沿うようにチャンバー301内に配置されている。チャンバー301は第1実施形態と同一の構成を有している。シャフト305は、第1実施形態と同様の位置決め工程によって、チャンバー301に対して位置決めされる。羽根306a〜306eは、シャフト305の軸方向(回転軸方向)に沿って、上方から下方に向かってこの順序で等間隔に配置されている。すなわち、攪拌部材302では、羽根306a〜306eがシャフト305の軸方向に沿って5段配置されている。
羽根306a、306c、306eは互いに同一の形状を有し、羽根306b、306dが互いに同一の形状を有している。図11は、シャフト305の回転軸に沿って見た場合における、306a、306c、306eの平面図である。また、図12は、シャフト305の回転軸に沿って見た場合における、羽根306b、306dの平面図である。各羽根306a〜306eは、シャフトの305の径方向外側に向かって放射状に延びるように配置されている。各羽根306a〜306eは、シャフト105の軸方向に対して直交する3枚の支持板308と、各支持板308の上側の主面上に設置された1枚の上側補
助板319aと、各支持板308の下側の主面上に設置された1枚の下側補助板319bとからなる。以下、上側補助板319a及び下側補助板319bをまとめて補助板309と呼ぶ。なお、図11及び図12において、下側補助板319bは破線で示されている。
3枚の支持板308は、各羽根306a〜306eを平面視した場合に、シャフト305の回転軸に対して3回対称となる位置において、シャフト305の側面に直接接続されている。各支持板308は、その主面の法線がシャフト305の軸方向に沿うようにシャフト305に接続されている。すなわち、各支持板308は水平に配置されている。各羽根306a〜306eの3枚の支持板308は、図10〜図12に示されるように、シャフト305の周囲において、連結部310によって互いに接続されている。すなわち、3枚の支持板108は、実質的に1つの部品を構成する。
また、3枚の支持板308は、シャフト305からチャンバー301の内壁に向かって放射状に設けられ、かつ、隣接する2つの段に配置される羽根306a〜306eの支持板308のそれぞれをチャンバー301の底面301aに投影した場合に、支持板308と支持板308との間隔が小さくなるように配置されている。具体的には、シャフト305の回転軸に沿って隣接している2つの羽根306a〜306eの支持板308は、シャフト305の回転軸に沿って見た場合に、互いに重ならないように配置されている。例として、図13に、攪拌部材302をシャフト305の回転軸に沿って上面視した場合における、羽根306a及び羽根306bの位置関係を示す。図13に示されるように、羽根306aの支持板308は、羽根306bの支持板308の間に位置するように配置されている。すなわち、羽根306a及び羽根306bの6枚の支持板308は、シャフト305の回転軸に対して6回対称となる位置に配置されているように見える。
補助板309は、その主面が支持板308の主面に対して垂直となるように、支持板308の主面上に配置されている。また、補助板309は、シャフト305から支持板308の外周縁に向かって延びている。各補助板309は、シャフト305に最も近い内側端部309aと、内側端部309aの反対側の端部であって支持板308の外周縁に最も近い側の外側端部309bとを有している。各補助板309は、内側端部309aから外側端部309bに向かうにしたがって、シャフト305の回転軸が位置する中心点と内側端部309aとを結ぶ直線311から、その主面が離れていくように設けられている。
具体的には、306a、306c、306eでは、図11に示されているように、攪拌部材302を上面視した場合に、上側補助板319aは、その主面が直線311から反時計回りに離れていくように設置され、かつ、下側補助板319bは、その主面が直線311から時計回りに離れていくように設置されている。一方、306b、306dでは、図12に示されているように、攪拌部材302を上面視した場合に、上側補助板319aは、その主面が直線311から時計回りに離れていくように設置され、かつ、下側補助板319bは、その主面が直線311から反時計回りに離れていくように設置されている。すなわち、各羽根306a〜306eにおいて、上側補助板319a及び下側補助板319bは互いに逆回りに延びるように設置されている。また、シャフト305の回転軸に沿って隣接している2つの羽根306a〜306eの間において対向する一対の補助板309は、その主面が直線311から互いに同じ方向に離れていくように設置されている。例えば、羽根306aの下側補助板319bと、羽根306bの上側補助板319aとは、共に、それらの主面が直線311から時計回りに離れていくように設置されている。
また、補助板309は、その主面と支持板308の主面との接続部が、支持板308の端部に位置しないように設置されている。すなわち、シャフト305の回転軸に沿って羽根306a〜306eを見た場合に、補助板309は、内側端部309a及び外側端部309bを除いて、支持板308の外周縁から離れた位置に設置されている。
図14を参照しつつ、攪拌装置300の動作について説明する。図14は、攪拌装置300内における熔融ガラス7の流れを表す図である。チャンバー301内には、上流側導管303から熔融ガラス7を水平方向に流入させる。攪拌部材302のシャフト305の上端部は外部のモーター等と連結されていて、攪拌部材302は、シャフト305を回転軸として上から見て反時計回りに回転する。チャンバー301内において熔融ガラス7は、上方から下方に徐々に導かれながら、攪拌部材302によって攪拌される。攪拌された熔融ガラス7を、チャンバー301内から下流側導管304へ水平方向に流出させる。
チャンバー301内では、羽根306a〜306eがシャフト305を回転軸として回転することで、熔融ガラス7が攪拌される。具体的には、各羽根306a〜306eの補助板309が、熔融ガラス7を、チャンバー301の側面301b側からシャフト305側へかき込み、又は、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側へ押し出す。本実施形態では、各羽根306a〜306eにおいて、上側補助板319a及び下側補助板319bのいずれか一方が、熔融ガラス7をチャンバー301の側面301b側からシャフト305側へかき込み、他方が熔融ガラス7をシャフト305側からチャンバー301の側面301b側へ押し出す。すなわち、各羽根306a〜306eの支持板308の上方及び下方において、シャフト305の半径方向の流れは互いに逆方向になっている。また、シャフト305の軸方向に沿って隣接する2つの段に配置される羽根306a〜306eにおいて、上段に位置する羽根の下側補助板319b及び下段に位置する上側補助板319aの一対の補助板309によって生じる熔融ガラス7のシャフト305の半径方向の流れは、共に同じ方向となっている。その結果、シャフト305の半径方向に熔融ガラス7を十分に移動させてより高い攪拌効果を得ることができる。
本実施形態では、図14に示されるように、シャフト305の最上段に位置する羽根306aの上側補助板319aは、熔融ガラス7をチャンバー301の側面301b側からシャフト305側へかき込む流れを生じさせる。そのため、羽根306aの下側補助板319bと、一段下に位置する羽根306bの上側補助板319aとは、熔融ガラス7をシャフト305側からチャンバー301の側面301b側へ押し出す流れを生じさせる。同様に、羽根306bの下側補助板319bと、羽根306cの上側補助板319aとは、熔融ガラス7を、チャンバー301の側面301b側からシャフト305側へかき込む流れを生じさせる。そして、最下段に位置する羽根306eの下側補助板319bは、熔融ガラス7をシャフト305側からチャンバー301の側面301bへ押し出す流れを生じさせる。すなわち、最下段に位置する羽根306eとチャンバー301の底面301aとの間の下部空間において、熔融ガラス7は図14で示される矢印の方向に流れる。
また、本実施形態において、図14に示されるように、攪拌部材302の軸回転によって、最上段に位置する羽根306aの上側補助板319aは、羽根306aの支持板308の上方において、チャンバー301の側面301b側からシャフト305側に向かって熔融ガラス7を移動させる流れを生じさせる。そして、羽根306aの上側補助板319aは、この熔融ガラス7を、さらにシャフト305の側面301bに沿って上昇させる流れを生じさせる。熔融ガラス7の液面近傍まで上昇した熔融ガラス7は、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側へ向かって流れ、さらに、チャンバー301の側面301bに沿って下降する。すなわち、最上段に位置する羽根306aと熔融ガラス7の液面との間の上部空間において、熔融ガラス7は、図14で示される循環流を形成する。この循環流によって、上部空間において熔融ガラス7が攪拌される。
本実施形態では、第1実施形態と同様にシャフト305が位置決めされている。すなわち、図3の図示と同様に、シャフト305の位置は、底面301aの周が、底面301aの周に含まれる他の点よりもシャフト305の投影体に近い近接点Nを少なくとも1点含むように、位置決めされている。つまり、攪拌装置300において、シャフト305は、側面301b及び攪拌部材302の羽根306a〜306eによって熔融ガラス7にかかるせん断応力が側面301bの周方向において変化するように、設けられている。また別の観点から、シャフト305はシャフト305からシャフト305の半径方向に最も離れた羽根306a〜306eの端と側面301bとの距離が側面301bの周方向において変化するように設けられている、ということもできる。このようにシャフト305が位置決めされていると、攪拌部材302の羽根306a〜306eの端とチャンバー301の側面301bとの距離が局所的に短くなる領域が形成される。この領域では、攪拌部材302とチャンバー301の側面301bとの間でより高いせん断応力を熔融ガラス7に対して、与えることができる。熔融ガラス7に対するせん断応力を局所的に高めて、熔融ガラス7の攪拌効果を高めることができる。また、これ以外の領域では、側面301bと攪拌部材302の羽根306a〜306eの端Eとの距離はより長くなる。その結果、羽根306a〜306e及びチャンバー301の側面301bが熔融ガラス7から受ける負荷が攪拌装置全体で大きくなることを抑制できる。
本実施形態では、上流側導管303からチャンバー301内に流入した熔融ガラス7は攪拌部材302の軸回転によって、隣接する2つの羽根306a〜306eの間において、チャンバー301の側面301b側からシャフト305側へかき込まれ、又は、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側へ押し出される。シャフト305の半径方向の熔融ガラス7の流れは、チャンバー301内を上方から下方に向かうに従って、段ごとに反対に入れ替わる。すなわち、熔融ガラス7は、チャンバー301内を上方から下方に導かれながら、シャフト5の半径方向に交互に移動させられることで攪拌される。
従って、本実施形態に係る攪拌装置300は、複雑な構成を備えることなく、熔融ガラスをより均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態において、攪拌部材302が回転すると、チャンバー301内の熔融ガラス7には、補助板309によってシャフト305の半径方向の動きが与えられる。具体的には、支持板308の近傍の熔融ガラス7は、補助板309によってかき込まれ、又は、押し出されることで、支持板308の主面に沿って半径方向に移動する。これにより、熔融ガラス7は、各羽根306a〜306eの補助板309によって十分に攪拌される。
従って、本実施形態に係る攪拌装置300は、複雑な構成を備えることなく、熔融ガラス7をより均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態において、上述の通り上段に位置する羽根306aと熔融ガラス7の液面との間の上部空間において、図14に示されるような熔融ガラス7の循環流が形成される。
仮に、シャフト305の最上段に位置する羽根306aが、熔融ガラス7を半径方向にかき込む構成でない場合、例えば、支持板308上に補助板が設けられていない構成である場合、又は、攪拌部材302の回転方向が本実施形態とは逆方向であって、熔融ガラス7を半径方向に押し出す構成である場合、最上段に位置する羽根306aの上方における熔融ガラス7は、支持板308によって受ける遠心力や補助板309による熔融ガラス7の半径方向の押出しにより、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側に押し出される。この場合、押し出された熔融ガラス7は、チャンバー301の側面301bに沿って上昇して上部空間に流れ込む。すなわち、半径方向に押し出された熔融ガラス7は、チャンバー301の側面301bに沿って移動する際に、流れ込みやすい方向であるチャンバー301の上方に向かい、その後、熔融ガラス7の液面に達する。チャンバー301の側面301bに沿って熔融ガラス7の液面に達した熔融ガラス7は、液面に沿ってチャンバー301の側面301b側からシャフト側へ向かい、最後にシャフト305に沿ってチャンバー301の下方へ向かう流れを形成する。すなわち、本実施形態における循環流とは逆向きの熔融ガラス7の循環流が生じる。
そして、熔融ガラス7の逆向きの循環流が生じた場合、シャフト305の周囲に形成される熔融ガラス7の下降流は、熔融ガラス7の表面に存在する泡や、揮発しやすい成分が揮発した結果、相対的にシリカ成分が多くなったシリカリッチ層を巻き込みつつ、液面近傍の熔融ガラス7を、チャンバー301の下方へ引き込んでしまう。その結果、製造されたガラス基板の泡品質の悪化、脈理品質の悪化を招くおそれがある。
従って、本実施形態では、シャフト305の周囲において熔融ガラス7の上昇流を形成することで、上部空間の熔融ガラス7がシャフト305の側面に沿って急下降して十分に攪拌されない状態で下流側導管304から流出してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、上部空間で熔融ガラス7の循環流を形成することで、熔融ガラス7の液面近傍で熔融ガラス7が滞留することを抑制することができる。
従って、本実施形態では、熔融ガラス7をより均質に攪拌することができる。これにより脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態では、最下段に位置する羽根306eとチャンバー301の底面301aとの間の下部空間において、熔融ガラス7は、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側へと押し出される。すなわち、羽根306eの下側補助板319bは、下流側導管304への熔融ガラス7の流出を促進するように、シャフト305の半径方向外側への流れを熔融ガラス7に生じさせる。一方、羽根306eの上側補助板319a、及び、羽根306eの一段上に位置する羽根306dの下側補助板319bは、下流側導管304への熔融ガラス7の流出を抑制するように、シャフト305の半径方向内側への流れを熔融ガラス7に生じさせる。
これにより、本実施形態では、攪拌された熔融ガラス7は、下部空間から下流側導管304へと流出するので、熔融ガラス7がチャンバー301内の底部に滞留することを抑制することができる。仮に、チャンバー301内の底部に熔融ガラス7が滞留すると、チャンバー301内の熔融ガラス7に対して組成成分のバランスが崩れた異質生地が、滞留した熔融ガラスに含まれる場合がある。このようなチャンバー301内の底部に滞留した熔融ガラス7には、組成の不均質なジルコニアリッチ層などの異質生地を含むものがある。異質生地を含む熔融ガラス7が下流側導管304から流出すると、成形装置42で成形されるガラスリボン44において脈理が発生し、品質上の問題が生じるおそれがある。また、滞留によってジルコニアが高濃度に濃縮された異質生地を含む熔融ガラス7が後工程の成形装置に流れると、成形装置42における失透発生の原因にもなり、品質問題が生じるだけでなく、安定的な操業が困難になり、最悪の場合は操業を停止してメンテナンスを行う必要が生じる。
また、本実施形態では、熔融ガラス7が下部空間より上方の空間から下流側導管304に流出することが抑制される。これにより、下部空間の熔融ガラス7は上方の熔融ガラス7と常に入れ換えられるので、熔融ガラス7が、チャンバー301内の底部に滞留することが抑制される。すなわち、熔融ガラス7は、隣接する支持板308の間の空間の各段をショートカットしてしまうことがなく、各段において確実に攪拌される。これにより、攪拌が不十分な熔融ガラス7が攪拌装置300から流出してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、図14に示されているように、最上段に位置する羽根306aの高さ位置の近傍に上流側導管303が配置されている。最上段に位置する羽根306aの高さ位置は、熔融ガラス7の液面から所定距離だけ離間するように設定される。仮に、羽根306aの高さ位置が液面に近い場合、攪拌部材302の回転によって熔融ガラス7の液面が振動すると、液面に浮かぶ泡等が熔融ガラス7中に引き込まれやすくなる。一方、羽根306aの高さ位置が液面から遠い場合、熔融ガラス7の循環流が液面近傍に達することができず、液面近傍の熔融ガラス7が停滞し、その結果、不均質な熔融ガラス7が液面近傍に滞留することになる。そこで、攪拌部材302の回転数や羽根306a〜306eのサイズによって、熔融ガラス7の液面に対する羽根306aの高さ位置は、適宜決定される。
また、本実施形態では、熔融ガラス7の液面が、上流側導管303の頂部近傍に位置するように熔融ガラスの流量を設定し、かつ、上流側導管303の径の中央より下方側に、羽根306aの支持板308が設けられるように設定した。より具体的には、図14に示されるように、上流側導管303の底部に対して同程度の高さ位置に、羽根306aの支持板308が設けられるように設定した。これにより、最上段に位置する羽根306aの上側補助板319aは、上流側導管303からの熔融ガラス7の流入を促進するように、シャフト305の半径方向への流れを熔融ガラス7に生じさせる。
従って、本実施形態に係る攪拌装置300は、熔融ガラス7をより均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態では、シャフト305の回転軸に沿って隣接している2つの羽根306a〜306eの支持板308は、シャフト305の回転軸に沿って見た場合に、互いに重ならないように配置されている。例えば、図13に示されているように、羽根306aの支持板308は、羽根306bの2枚の支持板308の間に位置するように配置されている。これにより、チャンバー301内におけるシャフト305の軸方向(鉛直方向)の熔融ガラス7の流れが抑えられて、チャンバー301内の熔融ガラス7の滞留時間が増加する。言い換えると、チャンバー301内の熔融ガラスの上下方向の流れが、各羽根306a〜306eの支持板308によって一端堰き止められるので、隣接する羽根306a〜306eの間の空間において、熔融ガラス7は一時的に滞留する。これにより、熔融ガラス7のショートパスが発生することなく、隣接する支持板308の間の空間の各段において、熔融ガラス7は、各羽根306a〜306eの補助板309によってシャフト305の半径方向に十分移動させられる。
また、本実施形態では、各羽根306a〜306eのこのような配置によって、上部空間の熔融ガラス7がシャフト305の側面に沿って急下降して、十分に攪拌されていない状態で下流側導管304から流出してしまうことを抑制することできる。従って、本実施形態に係る攪拌装置300は、熔融ガラス7をより均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態では、シャフト305の回転軸に沿って攪拌部材302を見た場合に各羽根306a〜306eの補助板309は、内側端部309a及び外側端部309bを除いて、支持板308の外周縁から離れた位置に設置されている。これにより、羽根306a〜306eの上側補助板319aの主面に沿って鉛直方向下向きに流れる熔融ガラス7は、支持板308の上側の主面に衝突しやすく、また、羽根306a〜306eの下側補助板319bの主面に沿って鉛直方向上向きに流れる熔融ガラス7は、支持板308の下側の主面に衝突しやすいので、チャンバー301内における熔融ガラスの上下方向の移動が抑制される。すなわち、支持板308は、チャンバー301内を上方から下方へ、又は、下方から上方へ流れる熔融ガラス7を、互いに隣接する羽根306a〜306eの間の各段において、一旦堰き止める作用がある。その結果、熔融ガラス7のショートパスが発生することなく、隣接する支持板308の間の空間の各段において、熔融ガラス7は、各羽根306a〜306eの補助板309によって十分に攪拌される。
従って、本実施形態において、熔融ガラス7をより均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態では、攪拌部材302の各羽根306a〜306eにおいて、3枚の支持板308は、シャフト305の周囲において連結部310によって互いに接続されているので、実質的に1つの部品を構成する。これにより、羽根306a〜306eの強度を向上させることができる。また、シャフト305の周囲の攪拌効果は小さいので、熔融ガラス7は、シャフト305回りにおいて攪拌されずにチャンバー内を下降しやすい。本実施形態では、各羽根306a〜306eの連結部によって、シャフト305回りの熔融ガラス7の下降流を抑制することができる。
従って、本実施形態では、熔融ガラス7より均質に攪拌することができる。これにより、脈理の発生を抑制して、高品質のガラス製品を得ることができる。
本実施形態では、攪拌部材302の羽根306a〜306eの段数は、チャンバー301の大きさやシャフト305の長さなどを考慮して適宜決定してよい。また、シャフト305の軸方向に沿って隣接する2枚の羽根306a〜306e同士の間隔も、チャンバーの大きさ等を考慮して適宜決定してもよい。
本実施形態において、各羽根306a〜306eは2枚又は4枚以上の支持板308を有してもよい。また、例えば、各羽根306a〜306eが4枚の支持板308から構成される場合、本実施形態と同様に、シャフト305の軸方向に沿って攪拌部材302を見た場合に、隣接する各羽根306a〜306eの支持板308の位置が互いに異なるようにしてもよい。
本実施形態における各羽根306a〜306eの支持板308は、主面に貫通孔312が形成されてもよい。図15は、貫通孔312を有する羽根306a、306c、306eの平面図である。図15に示した変形例では、シャフト305を回転軸として攪拌部材302が回転した場合に、熔融ガラス7の一部が貫通孔312を通過する。熔融ガラス7の一部が貫通孔312を通過することにより、熔融ガラス7に上方又は下方へ向かう流れが生じる。その結果、チャンバー301内の熔融ガラス7には、補助板309によるシャフト305の半径方向の流れに加えて、貫通孔312によるシャフト105の軸方向の流れが生じる。これにより、熔融ガラス7にはより複雑な流れが生じるので、高い攪拌効果を得ることができる。また、貫通孔312によって、攪拌部材302が回転した際に熔融ガラス7から受ける抵抗が小さくなることが期待でき、より少ない動力で目的の流れを熔融ガラス7に生じさせることができる。
また、図15に示した変形例では、熔融ガラス7に含まれる泡は、貫通孔312を通過して、チャンバー301内の熔融ガラス7の液面まで上昇することができる。すなわち、熔融ガラス7に含まれる泡を効果的に除去することができる。例えば、攪拌部材302を検査及び改修する際や、新たな攪拌部材302を使用する際に、チャンバー301の熔融ガラス7中に、貫通孔312を備える本変形例の攪拌部材を投入する場合を考える。この場合、攪拌部材302の投入によって巻き込まれた空気の泡は、攪拌部材302の羽根306a〜306eと羽根306a〜306eとの間だけでなく、羽根306a〜306eに設けられた貫通孔312を通っても浮上することができる。そのため、安定的な操業までに要する時間を短縮することが可能となる。
また、本変形例では、図15に示されるように、支持板308同士を接続するシャフト305周りの連結部310にも、貫通孔312が形成されてもよい。
本実施形態に係る攪拌装置300では、チャンバー301は熔融ガラス7を排出するための機構を備えてもよい。例えば、チャンバー301の底面にジルコニアリッチ層を含む熔融ガラスを排出するための排出口が設けられてもよく、又は、チャンバー301の側面301bに泡やシリカリッチ層を含む熔融ガラス7を排出するための排出口が設けられていてもよい。
例えば、熔融ガラス7中には、熔融ガラス7全体の平均的な組成に対して、シリカ等の比率が高い異質生地が含まれる場合がある。これは、熔融工程において生じた熔融ガラス7の組成ムラによるものか、又は、熔融ガラス7から揮発しやすい成分が揮発したことによるものと考えられる。特に、熔融ガラス7の液面には、熔融ガラス7から揮発しやすい成分が揮発したことによる上記の異質生地が生じやすい。
本実施形態における循環流が生じている場合、上記の異質生地や、熔融ガラス7の液面に浮遊している泡や、その他の異物が液面に存在しても、液面近傍の熔融ガラス7は、液面に沿ってシャフト305側からチャンバー301の側面301bに向かって流れる。そのため、本変形例のように、この流れの延長線上に排出口を設けることにより、熔融ガラス7に含まれる異質生地等を排出することができる。例えば、チャンバー301には、最上段の羽根306aよりも上方の位置、好ましくは、熔融ガラス7の液面又は液面の直下において、チャンバー301の内周面の一部が半径方向外側に向かって突出して形成された、排出口が設けられてもよい。
通常、熔融ガラス7中の異物を回収する際には、攪拌装置300の運転を停止する必要がある。しかし、シャフト305の周囲に循環流が形成され、熔融ガラス7の液面において、シャフト305側からチャンバー301の側面301b側への流れが形成される場合、上記の排出口を設けることで、攪拌装置300の運転を停止することなく、異質生地等を含む熔融ガラス7をチャンバー301内から排出することができる。例えば、上流工程である清澄工程から、泡を含む清澄不十分な熔融ガラスが攪拌工程に流れ込んできたとしても、操業を止めることなく、泡を含む熔融ガラス7をチャンバー301内から排出することができ、攪拌装置300の稼働を維持することができる。
本実施形態では、3枚の支持板308は、主面の面積に応じて、支持板308と支持板308とが重なる部分の面積が小さくなるように配置されてもよい。この場合、シャフト305の回転軸に沿って隣接する2つの羽根306a〜306eの支持板308は、シャフトの回転軸に沿って見た場合に、互いに一部が重なっているように配置されている。本変形例においても、チャンバー301内の熔融ガラス7の上下方向の流れが各羽根306a〜306eの支持板308によって一旦堰き止められるので、隣接する羽根306a〜306eの間の空間において、熔融ガラス7は一時的に滞留する。これにより、熔融ガラス7のショートパスが発生することなく、隣接する支持板308の間の空間の各段において、熔融ガラス7は、各羽根306a〜306eの補助板309によってシャフト305の半径方向に十分に移動させられる。
本実施形態では、補助板309の内側端部309aは、シャフト305に対して離間しているが、攪拌部材302及び羽根306a〜306eの強度を向上させるために、シャフト305に補助板309が直接接続されていてもよい。
<その他の実施形態>
本発明は、上記実施形態に限定されず様々な態様で実施できる。
図16に示すように、攪拌部材の羽根は、シャフト505の軸方向に延びる縦棒状の第1翼506と、シャフト505から水平に延びて第1翼506とシャフト505とを接続する横棒状の第2翼507から構成されていてもよい。すなわち、攪拌部材はクランク型のものであってもよい。図16には、2本の第1翼506が図示されているが、第1翼506の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、図16には、複数の第2翼507が図示されているが、第2翼507の数は少なくとも1つ以上であればよい。図16に示すように、シャフト505と直交する方向にシャフト505から延びる円盤状の第3翼508をさらに備えていてもよいが、備えなくてもよい。このような攪拌部材を第1実施形態と同様に位置決めしても、熔融ガラスに対するせん断応力を局所的に高めて、熔融ガラス7の攪拌効果を高めることができる。また、チャンバー及び攪拌部材が熔融ガラスから受ける負荷が大きくなることを抑制することができる。
上記実施形態において、攪拌装置のチャンバーの底面の形状は円に限定されない。図17に示すように、チャンバー1の底面1aの周は半円周よりも長い円弧部とその円弧部よりも円弧部の円の中心に近い位置で円弧の両端を結ぶ弦部とからなっていてもよい。図17は、図3と同様に、チャンバー1の底面1aに攪拌部材2を投影した図である。この場合、近接点Nのうちシャフト5に最も近い近接点Nは弦部の中心と一致する。そして、近接点Nは底面1aの周の流出口1eに対応する部分に含まれている。本形態によれば、シャフト5の中心軸とチャンバー1の底面1aの円弧部を形成する円の中心における底面1aに対する法線とを一致するようにシャフト5が位置決めされても、シャフト5に最も近い近接点Nが底面1aの周の流出口1eに対応する部分に含まれる。もちろん、シャフト5の中心軸とチャンバー1の底面1aの円弧部を形成する円の中心における底面1aに対する法線とをずらすように、シャフト5を位置決めしてもよい。上記弦部は直線でもよいし、曲線であってもよい。このような態様によっても、チャンバー及び攪拌部材が熔融ガラスから受ける負荷が大きくなることを抑制しつつ、チャンバーの側面と攪拌部材によるせん断応力を高めて、高い攪拌効果を得ることができる。また、流出口近傍でチャンバーの側面と攪拌部材による十分なせん断応力を熔融ガラスに与えることができる。
また、図18に示すように、チャンバー1の底面1aの形状は楕円であってもよい。図18は、図3と同様に、チャンバー1の底面1aに攪拌部材2を投影した図である。この場合には、近接点Nのうちシャフト5に最も近い近接点Nは楕円状の底面1aの短軸上に存在する。また、シャフト5に最も近い近接点Nは底面1aの周の流出口1eに対応する部分に含まれている。このような態様によれば、シャフト5の中心軸がチャンバー1の底面1aの中心における底面1aに対する法線と一致するようにシャフト5が位置決めされても、近接点Nが底面1aの周の流出口1eに対応する部分に含まれる。もちろん、シャフト5の中心軸をチャンバーの底面1aの中心における底面1aに対する法線からずらすように、シャフト5を位置決めしてもよい。このような態様によっても、チャンバー及び攪拌部材が熔融ガラスから受ける負荷が大きくなることを抑制しつつ、チャンバーの側面と攪拌部材によるせん断応力を高めて、高い攪拌効果を得ることができる。また、流出口近傍でチャンバーの側面と攪拌部材による十分なせん断応力を熔融ガラスに与えることができる。
チャンバーの底面は、多角形状であってもよい。すなわち、チャンバーは、多角柱状に形成されていてよい。このような態様によっても、チャンバー及び攪拌部材が熔融ガラスから受ける負荷が大きくなることを抑制しつつ、チャンバーの側面と攪拌部材によるせん断応力を高めて、高い攪拌効果を得ることができる。
図19は、他の実施形態に係る攪拌装置700の平面図である。特に説明する点を除き、攪拌装置700は第1実施形態と同様の構成を有している。図15では説明のため、チャンバー701の頂面701aは省略して図示している。図中の矢印は、攪拌部材702の回転方向を示している。図19に示すように、上流側導入管703と下流側導入管704とは互いに90°ずれた位置に配置されている。従って、流入口701dと流出口701eとは互いに90°ずれた位置に配置されている。図15に示されているように、攪拌部材702は上から見て反時計回りに回転する。換言すると、攪拌部材702の回転方向は、流入口から見て流出口に近づく方向である。流入口701dからチャンバー702に流入した直後の熔融ガラス7は、チャンバー701に流れ込む際に有する運動量をある程度保持している。図15において、攪拌部材702を時計方向回りに回転させる場合、つまり、攪拌部材702を流入口701dから見て流出口701eに遠ざかる方向に回転させる場合、攪拌部材702が流入口701dから流出口701eまで270°回転する間に、チャンバー702に流入直後の熔融ガラス7がチャンバー701に流れ込む際に有する運動量はほとんど消失してしまう。従って、このように攪拌部材702を回転させると、流入口701dから流出口701eまで270°回転して、流出口701eからチャンバー702に流入直後の熔融ガラス7の一部が流出してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態のように攪拌部材702が回転すれば、流入口701dから流出口701eまで90°しか回転せず、熔融ガラス7はチャンバー701に流れ込む際に有する運動量をある程度保持した状態で流出口701eを通過するため、チャンバー701に流入直後の熔融ガラス7が流出口701eから流出してしまうおそれは小さい。従って、上記のように、攪拌部材702を回転させることで、チャンバー701に熔融ガラス7が滞留する時間が長くなって熔融ガラスの攪拌効果が高まり、より均質に熔融ガラス7を攪拌できる。その結果、脈理の発生を低減できる。流入口701dと流出口701eのずれは90°に限定されない。例えば、このずれが30°以上180°未満の範囲であって、かつ、攪拌部材702の回転方向が流入口から見て流出口に近づく方向であれば、熔融ガラスが滞留する時間が長くなって熔融ガラスの攪拌効果が高まり、より均質に熔融ガラスを攪拌できる。なお、この実施形態に係るガラスの製造方法において、攪拌部材の702の位置決めの態様は第1実施形態の通りでもよいし、これと異なっていてもよい。つまり、攪拌部材702のシャフト705は、円柱状のチャンバー705の中心軸に一致するように位置決めされていてもよい。
上記実施形態では、チャンバーの上方から熔融ガラスが流入し、チャンバーの下方から熔融ガラスが流出するが、これとは逆に、チャンバーの下方から熔融ガラスが流入し、チャンバーの上方から熔融ガラスが流出する態様としてもよい。この場合においても、第1実施形態で説明したとおり、チャンバーの底面に攪拌部材を投影したときに、底面の周が、底面の周に含まれる他の点よりもシャフトの投影体との距離が近い近接点を少なくとも1つ含むように、シャフトが位置決めされていればよい。
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス板が下記の組成となるように、熔融槽においてガラス原料を熔融して熔融ガラスを得た。
SiO2:60質量%、
23:10質量%、
Al23:19.5質量%、
CaO:5.3質量%、
SrO:5質量%、
SnO2:0.2質量%
そして、熔融ガラスを清澄槽にて1650℃以上に昇温させて清澄を行った。
次に、清澄後の熔融ガラスを上記実施形態2に示すような攪拌装置にて攪拌した。なお、攪拌部材の回転数は、12.5rpmであった。このとき、攪拌槽である内径350mmの円柱状のチャンバーの側面と攪拌部材の羽根との距離を流出口に対応する位置で最も短い15mmとし、チャンバー側面と攪拌部材の羽根との距離の最大値を25mmとするように、予め攪拌部材のシャフトの位置決めを行った。つまり、攪拌部材のシャフトをチャンバーの底面に投影したとき、攪拌部材のシャフトの中心とチャンバーの底面の中心との距離Lは5mmであった。また、攪拌部材のシャフトの中心とチャンバーの底面の中心とが一致するように攪拌部材のシャフトを位置決めしたときのシャフトから最も離れた攪拌部材の羽根の端とチャンバーの側面との距離Dは20mmであった。従って、LはDの25%であった。攪拌工程後に熔融ガラスを成形装置へ供給し、オーバーダウンロード法にてガラスリボンを形成した。さらにガラスリボンを切断して、厚さが0.7mm、大きさが2200mm×2500mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板を製造した。
本実施例では、製造した1000枚のフラットパネルディスプレイ用ガラス板について、脈理が原因で発生するガラス板表面の粗さを測定した。この測定には、表面粗さ測定機(東京精密社製:サーフコム1400−D)を用い、ピーク高さを測定し、ピーク高さの平均値を算出した。その結果、液晶ディスプレイ用ガラス板として良品と判断されるピーク高さの基準値を1とした場合、本実施例のガラス板のピーク高さの平均値は0.85〜0.9であり、脈理が改善されていることが確認できた。なお、実施例1における攪拌装置の寿命は約2.3年であった。
(実施例2)
攪拌槽である円筒状のチャンバーの側面と攪拌部材の羽根との距離を流出口に対応する位置で最も短い10mmとし、チャンバー側面と攪拌部材の羽根との距離の最大値を30mmとするように、予め攪拌部材のシャフトの位置決めした以外は、実施例1と同様にして厚さが0.7mm、大きさが2200mm×2500mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板を製造した。そして、実施例1と同様に、ガラス板表面の粗さを測定した。その結果、液晶ディスプレイ用ガラス板として良品と判断されるピーク高さの基準値を1とした場合、比較例1のガラス板のピーク高さの平均値は0.8であり、脈理が改善されていることが確認できた。なお、実施例2における攪拌装置の寿命は約1年であり、実施例1と比較すると攪拌装置の寿命は短かった。
(比較例)
チャンバーの側面と攪拌部材の羽根との距離がチャンバーの側面の周全体で20mmと均一になるように、シャフトを位置決めした以外は、実施例1と同様にして、厚さが0.7mm、大きさが2200mm×2500mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板を製造した。そして、実施例1と同様に、ガラス板表面の粗さを測定した。その結果、液晶ディスプレイ用ガラス板として良品と判断されるピーク高さの基準値を1とした場合、比較例1のガラス板のピーク高さの平均値は1.2〜1.4であり、脈理が発生していていることが確認された。なお、比較例2における攪拌装置の寿命は約3.5年であった。
<本発明の実施態様のまとめ>
上記開示から、本発明は少なくとも以下の態様を提供する。
本発明の第1態様は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記側面及び前記羽根によって前記熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において変化するように設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第2態様は、前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトから前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が、前記側面の周方向において変化するように、設けられている、前記第1態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第3態様は、前記チャンバーの前記側面には、流出口が形成されており、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトから前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が前記側面のうち前記流出口に対応する部分で最小となるように、設けられている、前記第1態様又は前記第2態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第4態様は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトを前記底面に投影したときに、前記底面の周が、前記底面の周に含まれる他の点よりも前記シャフトの投影体に近い近接点を少なくとも1点含むように設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第5態様は、前記近接点が、前記底面の周の前記流出口に対応する部分に含まれる、前記第4態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の6態様は、前記底面の形状が円又は楕円であり、前記底面の中心と前記シャフト底面の中心との距離をL、前記シャフト底面の中心と前記底面の中心とが一致するように前記シャフトを位置決めしたときの前記シャフトから最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離をDとすると、前記シャフトは、Lが、Dの0%よりも大きく、かつ、45%以下となるように、設けられている、前記第1態様〜前記第5態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第7態様は、前記底面の形状が円又は楕円であり、前記底面の中心における前記底面に対する法線と前記シャフトの中心軸との距離をL、前記底面の中心における前記底面に対する法線と前記シャフトの中心軸とが一致するように前記シャフトを位置決めしたときの前記シャフトから最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離をDとすると、前記シャフトは、Lが、Dの0%よりも大きく、かつ、45%以下となるように、設けられている、前記第1態様〜前記第6態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第8態様は、前記底面の周が、半円周よりも長い円弧部と前記円弧部よりも前記円弧部を形成する円の中心に近い弦部とからなり、前記近接点が前記弦部の中心に存在する、前記第4態様又は前記第5態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第9態様は、前記底面の形状が楕円であり、前記近接点が楕円の短軸上にある、前記第4態様又は前記第5態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第10態様は、複数段の前記羽根が前記シャフトの軸方向に並んで設けられており、前記羽根は、前記シャフトから前記シャフトの半径方向に延びる支持板と、前記支持板の両側の主面上に設けられた補助板とを有し、前記攪拌工程において、前記補助板は前記シャフトの半径方向への流れを前記熔融ガラスに生じさせ、かつ、隣接する2つの段の前記羽根の前記支持板同士の間に設けられる一対の前記補助板は共に同じ方向の流れを前記熔融ガラスに生じさせる、前記第1態様〜前記第9態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第11態様は、前記羽根は、前記支持板の上方の主面上及び下方の主面上に設置された前記補助板を有し、前記攪拌工程において、前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材が回転することにより、それぞれの前記羽根において、前記支持板の上方の主面上に設置された前記補助板及び前記支持板の下方の主面上に設置される前記補助板のうち、一方の前記補助板は、前記チャンバーの前記側面から前記シャフトに向かう流れを前記熔融ガラスに生じさせ、他方の前記補助板は、前記シャフトから前記チャンバーの前記側面に向かう流れを前記熔融ガラスに生じさせる、前記第10態様のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第12態様は、前記支持板は、前記シャフトから前記チャンバーの内壁に向かって放射状に設けられ、かつ、隣接する2つの段に配置される前記羽根の前記支持板のそれぞれを前記チャンバーの底面に投影した場合に、前記支持板と前記支持板との間隔が小さくなるように、または、前記支持板と前記支持板とが重なる部分の面積が小さくなるように、配置されている、前記第10態様又は前記第11態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第13態様は、前記支持板は、放射状に複数枚設けられ、複数枚の前記支持板は、前記シャフトの周囲においてそれぞれ連結されている、前記第12態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第14態様は、前記攪拌工程において、前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材が回転することにより、最上段に位置する前記羽根の前記支持板の上方の主面上に設置された前記補助板は、最上段に位置する前記羽根の前記支持板の上方において、前記チャンバーの前記側面から前記シャフトに向かって前記熔融ガラスを移動させる第1の流れを生じさせ、かつ、前記第1の流れによって移動した前記熔融ガラスを前記シャフトの側面に沿って上昇させる第2の流れを生じさせる、前記第10態様〜前記第13態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第15態様は、ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得る熔融工程と、前記熔融ガラスを攪拌装置の内部で攪拌する攪拌工程と、前記攪拌工程で攪拌された前記熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
前記攪拌装置は、前記熔融ガラスを上方から下方へと、または、下方から上方へと導くためのチャンバーと、前記チャンバー内の前記熔融ガラスを攪拌するための攪拌部材とを備え、
前記攪拌部材は、回転軸であるシャフトと、前記シャフトの側面に、前記シャフトの軸方向に沿って最上段から最下段まで複数段配置される羽根とを有し、
前記羽根は、前記シャフトの軸方向に対して直交する支持板と、前記支持板の主面上に設置される補助板とを有し、
前記攪拌工程では、前記シャフトを回転軸として前記攪拌器が回転することにより、最上段に位置する前記羽根の前記支持板の上方の主面上に設置された前記補助板は、最上段に位置する前記羽根の前記支持板の上方において、前記チャンバーの側面から前記シャフトに向かって前記熔融ガラスを移動させる第1の流れを生じさせ、かつ、前記第1の流れによって移動した前記熔融ガラスを前記シャフトの側面に沿って上昇させる第2の流れを生じさせる、ガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第16態様は、
前記チャンバーは、最上段に位置する前記羽根よりも上方の位置において、前記側面に排出口を有し、
前記熔融ガラスの液面近傍の前記熔融ガラスを前記排出口から排出する、前記第15態様に記載のガラス基板の製造方法を提供する。
本発明の第17態様は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画され前記側面に流入口及び流出口が形成されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトから前記シャフトの半径方向へ延びる羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用いるガラス板の製造方法であって、
ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得る熔融工程と、
前記熔融ガラスを前記流入口から前記チャンバーへ流入させ、前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の前記熔融ガラスを攪拌する攪拌工程と、
前記流出口から流出した前記攪拌工程で攪拌された熔融ガラスをガラス板へと成形する成形工程と、を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記側面及び前記羽根によって前記熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において変化するように、設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第18態様は、
底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画され前記側面に流入口及び流出口が形成されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトから前記シャフトの半径方向へ延びる羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用いるガラス板の製造方法であって、
ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得る熔融工程と、
前記熔融ガラスを前記流入口から前記チャンバーへ流入させ、前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて前記チャンバー内の前記熔融ガラスを攪拌する攪拌工程と、
前記流出口から流出した前記攪拌工程で攪拌された熔融ガラスをガラス板へと成形する成形工程と、を備え、
前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトを前記底面に投影したときに、前記底面の周が、前記底面の周に含まれる他の点よりも前記シャフトの投影体に近い近接点を少なくとも1点含むように設けられている、ガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第19態様は、前記チャンバーを上面から見て、前記流入口及び前記流出口が30°以上、180°未満の角度ずれた位置にそれぞれ形成されており、前記攪拌工程において、前記攪拌部材の回転方向が前記流入口から見て前記流出口に近づく方向である、前記第1態様〜前記第18態様のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第20態様は、前記ガラス板のアルカリ金属の含有率が0〜2.0質量%以下である、前記第1態様〜前記第19態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第21態様は、前記熔融ガラスの粘度が102.5dPa・sであるときの前記熔融ガラスの温度が、1450〜1750℃である、前記第1態様〜前記第20態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第22態様は、前記攪拌工程における前記熔融ガラスの粘度が450〜2500dPa・sである、前記第1態様〜前記第21態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第23態様は、前記ガラス板が、
SiO2:50〜70質量%、
23:5〜18質量%、
Al23:10〜25質量%、
MgO:0〜10質量%、
CaO:0〜20質量%、
SrO:0〜20質量%、
BaO:0〜10質量%、
MgO+CaO+SrO+BaO:5〜20質量%、
酸化スズ、酸化鉄、及び酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物をそれぞれSnO2、Fe23及びCeO2に換算して合計で0.05〜1.5質量%、を含有する、前記第1態様〜前記第22態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第24態様は、前記ガラス板が、
SiO2:52〜78質量%、
23:3〜25質量%、
Al23:3〜15質量%、
MgO+CaO+SrO+BaO:3〜20質量%、
質量比(SiO2+Al23)/B23が7.5以上であり、歪点が670℃以上である、前記第1態様〜前記第22態様のいずれか1つの態様に記載のガラス板の製造方法を提供する。
本発明の第25態様は、ガラス原料を熔解する熔解装置と、底面、前記底面から上方に延びる側面及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトから前記シャフトの半径方向へ延びる羽根を有する攪拌部材と、を備え、前記チャンバーへ熔融ガラスが流入する流入口及び前記チャンバーから熔融ガラスが流出する流出口が前記側面に形成されており、前記シャフトは、前記側面及び前記羽根によって熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において変化するように、設けられている、熔融ガラスの攪拌装置と、を有するガラス板製造装置を提供する。
本発明の第26態様は、ガラス原料を熔解する熔解装置と、底面、前記底面から上方に延びる側面及び前記側面と交わる頂面で区画されたチャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトから前記シャフトの半径方向へ延びる羽根を有する攪拌部材と、を備え、前記チャンバーへ熔融ガラスが流入する流入口及び前記チャンバーから熔融ガラスが流出する流出口が前記側面に形成されており、前記シャフトは、前記シャフトを前記底面に投影したときに、前記底面の周が、前記底面の周に含まれる他の点よりも前記シャフトの投影体に近い近接点を少なくとも1点含むように設けられている、熔融ガラスの攪拌装置と、を有するガラス板製造装置を提供する。
本発明のガラス板の製造方法、ガラス板製造装置は、例えばフラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造に適用でき、脈理の発生を低減できる。さらに、本発明のガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス基板の製造にも適用することができる。
1 チャンバー
1a 底面
1b 側面
1c 頂面
1d 流入口
1e 流出口
2 攪拌部材
3 上流側導管
4 下流側導管
5 シャフト
6a〜6e 羽根
7 熔融ガラス
100 攪拌装置
200 ガラス製造装置
N 近接点

Claims (6)

  1. アルカリ金属酸化物の含有量が0〜2.0質量%であるガラス板の製造方法であって、
    白金、白金合金、強化白金、強化白金合金、イリジウム、及びイリジウム合金の少なくともいずれかで形成された、円又は楕円の形状を有する底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画された、チャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
    攪拌工程の開始前に位置決めされた前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて、前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
    前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトから前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が前記側面の周方向において変化することで、前記側面及び前記羽根によって前記熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において局所的に高くなる領域が形成されるように、かつ、当該領域において前記シャフトから前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が3〜25mmであるように設けられている、
    ガラス板の製造方法。
  2. 前記チャンバーの前記側面には、流出口が形成されており、
    前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフトから前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が前記側面のうち前記流出口に対応する部分で最小となるように、設けられている、請求項に記載のガラス板の製造方法。
  3. アルカリ金属酸化物の含有量が0〜2.0質量%であるガラス板の製造方法であって、
    白金、白金合金、強化白金、強化白金合金、イリジウム、及びイリジウム合金の少なくともいずれかで形成された、円又は楕円の形状を有する底面、前記底面から上方に延びる側面、及び前記側面と交わる頂面で区画された、チャンバーと、回転軸であるシャフト及び前記シャフトに設けられた羽根を有する攪拌部材と、を備えた攪拌装置を用い、
    攪拌工程の開始前に位置決めされた前記シャフトを回転軸として前記攪拌部材を回転させて、前記チャンバー内の熔融ガラスを攪拌する攪拌工程を備え、
    前記攪拌工程において、前記シャフトは、前記シャフト及び前記羽根を前記底面に投影したときに、前記底面の周が、前記底面の周に含まれる他の点よりも前記シャフトの投影体に近い近接点を含むことによって、前記側面及び前記羽根によって前記熔融ガラスにかかるせん断応力が前記側面の周方向において局所的に高くなる領域が形成されるように、かつ、当該領域において前記シャフトの半径方向に最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離が3〜25mmであるように設けられている、
    ガラス板の製造方法。
  4. 前記近接点が、前記底面の周の前記流出口に対応する部分に含まれる、請求項に記載のガラス板の製造方法。
  5. 記底面の中心における前記底面に対する法線と前記シャフトの中心軸との距離をL、前記底面の中心における前記底面に対する法線と前記シャフトの中心軸とが一致するように前記シャフトを位置決めしたときの前記シャフトから最も離れた前記羽根の端と前記側面との距離をDとすると、
    前記シャフトは、Lが、Dの0%よりも大きく、かつ、45%以下となるように、設けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  6. 前記攪拌工程における前記熔融ガラスの粘度が450〜2500dPa・sである、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
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