以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は車両に搭載されたワイパ制御装置を説明する説明図を、図2は図1のワイパ制御装置を形成するワイパモータの構造を説明する説明図を、図3は図1のワイパ制御装置のブロック図を、図4(a)はワイパ制御装置の正常状態を、(b),(c)はワイパ制御装置の異常状態を説明する状態説明図を、図5(a),(b)は図4の破線円A部および破線円B部の拡大図をそれぞれ表している。
図1に示すように、自動車等の車両10の前方側には、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11に付着した雨水等を払拭し、運転者の視界を確保するためのワイパ制御装置12が搭載されている。
ワイパ制御装置12は、車室内等に設けたワイパスイッチ(図示せず)をオン操作することで回転駆動されるワイパモータ13と、車両10に回動自在に設けられる一対のピボット軸14と、各ピボット軸14に基端側が固定され、先端側がフロントガラス11上で揺動運動する一対のワイパアーム15と、ワイパモータ13と各ワイパアーム15との間に設けられて各ワイパアーム15を同期駆動するリンク機構16とを備えている。
リンク機構16は、各ワイパアーム15を連結して同期駆動させる連結ロッド16aと、各ワイパアーム15のうちの一方に一端側が連結された駆動ロッド16bと、一端側が駆動ロッド16bの他端側に連結され、他端側がワイパモータ13の出力軸36に連結されたクランクアーム16cとから構成されている。
各ワイパアーム15の先端側には、それぞれワイパブレード17が装着され、各ワイパブレード17は、各ワイパアーム15の内側に設けた引っ張りスプリング(図示せず)の弾性力によって、フロントガラス11に対して弾性接触するようになっている。
各ワイパブレード17は、ワイパモータ13を正逆方向に回転させることにより、フロントガラス11上の二点鎖線で示す各払拭範囲18を往復払拭動作するようになっている。つまりワイパ制御装置12は、所謂リバーシングワイパ制御装置となっている。なお、図中符号LRPは、各ワイパブレード17の下反転位置を、図中符号URPは、各ワイパブレード17の上反転位置をそれぞれ示している。
図2に示すように、ワイパモータ13は、モータ部20とこれに接続されるギヤ部30とを備えている。モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたヨーク21を備え、ヨーク21の内側には複数の永久磁石22(図示では2つみ示す)が装着されている。各永久磁石22の内側には、所定の隙間を介してアーマチュア23が回動自在に設けられ、アーマチュア23にはコイル24が巻装されている。
アーマチュア23の回転中心にはアーマチュア軸(回転軸)25が貫通して設けられ、アーマチュア軸25の一端側(図中左側)は、ラジアル軸受26を介してヨーク21の底部に回動自在に支持されている。また、アーマチュア軸25の他端側(図中右側)は、図示しない他のラジアル軸受に支持されて、ギヤ部30のケース31内に延出されている。
アーマチュア軸25の他端側にはウォーム27が一体に設けられ、ウォーム27はウォームホイール35の歯部35aに噛み合わされている。ここで、ウォーム27およびウォームホイール35は、アーマチュア軸25の回転を減速して高トルク化するとともに、高トルク化された回転をウォームホイール35の出力軸36から外部に出力するようになっている。つまり、ウォーム27およびウォームホイール35は減速機構を構成している。
アーマチュア軸25のアーマチュア23に近接する位置には、整流子28が一体に設けられ、整流子28は複数の整流子片28aをモールド成形して略円筒状に形成されている。各整流子片28aにはコイル24が電気的に接続され、整流子28を介してコイル24に駆動電流を供給することでアーマチュア23に電磁力が発生し、これによりアーマチュア軸25が正方向または逆方向に回転するようになっている。
アーマチュア軸25のウォーム27と整流子28との間には、アーマチュア軸25の回転方向に沿って複数極に着磁された多極着磁マグネット29が設けられている。多極着磁マグネット29は、アーマチュア軸25の回転方向に沿って等間隔でN極,S極,N極・・・のように交互に着磁して形成されている(例えば6極)。
ギヤ部30は有底のケース31を備え、ケース31は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することで所定形状に形成されている。ケース31のヨーク21側には、プラスチック等の樹脂材料よりなるブラシホルダ32が装着され、ブラシホルダ32には一対のブラシ33が径方向に移動自在に設けられている。各ブラシ33は整流子28に摺接するようになっており、各ブラシ33は、整流子28に駆動電流を安定して供給するために、各スプリング34の弾性力により整流子28に向けて所定圧で押圧されている。
ケース31には、ウォームホイール35が回転自在に収容されている。ウォームホイール35の歯部35aにはウォーム27が噛み合わされ、これによりウォーム27の回転がウォームホイール35に伝達される。ウォームホイール35の回転中心には出力軸36が一体回転可能に設けられ、出力軸36の一端側はケース31のボス部(図示せず)を介して外部に延出されている。出力軸36の外部に延出された部分には、リンク機構16を形成するクランクアーム16cの他端側(図1参照)が連結されている。
ウォームホイール35における出力軸36の周囲には、リングマグネット37が一体回転可能に設けられている。リングマグネット37は、ウォームホイール35の回転方向に沿って2極(N極,S極)を有するよう着磁して形成されている。なお、S極に着磁された部分は周方向に沿って略3/4を占めており、残りの略1/4はN極に着磁されている。
ケース31には、当該ケース31の開口部分を閉塞するカバー(図示せず)が装着され、カバーの内側にはウォーム27およびウォームホイール35と対向する回路基板38(図中二点鎖線)が設けられている。回路基板38には、コントローラ50や、トランジスタ,抵抗等の複数の電子部品(図示せず)が装着されている。
回路基板38の多極着磁マグネット29と対向する部位には、回転パルス発生手段としての第1回転軸センサ39aおよび第2回転軸センサ39bが設けられている。各回転軸センサ39a,39bは、それぞれ多極着磁マグネット29の回転方向に沿って所定間隔で設けられている。各回転軸センサ39a,39bは、多極着磁マグネット29(アーマチュア軸25)の回転に伴う磁極の切り替わりにより、矩形波形状の回転パルス信号(電圧信号)をそれぞれ発生し、各回転パルス信号はコントローラ50に送出される。各回転軸センサ39a,39bを多極着磁マグネット29の回転方向に沿って所定間隔で設けることにより、回転パルス信号を異なるタイミングで出現させるようにしている。
多極着磁マグネット29,第1回転軸センサ39aおよび第2回転軸センサ39bは、アーマチュア軸25の回転状態を検出する相対位置検出センサを形成し、コントローラ50により回転パルス信号を積算(加減算)することで、各ワイパブレード17(各ワイパアーム15)の揺動角度を検出し、これに基づきモータ部20を正逆方向に回転させるのに用いられる。
一方、回路基板38のリングマグネット37と対向する部位には、第1出力軸センサ40aおよび第2出力軸センサ40bが設けられている。各出力軸センサ40a,40bは、それぞれリングマグネット37の回転方向に沿って所定間隔で設けられている。各出力軸センサ40a,40bは、リングマグネット37の回転に伴う磁極の切り替わりにより、矩形波形状の回転パルス信号(電圧信号)をそれぞれ発生し、各回転パルス信号はコントローラ50に送出される。各出力軸センサ40a,40bをリングマグネット37の回転方向に沿って所定間隔で設けることにより、回転パルス信号を異なるタイミングで出現させるようにしている。
リングマグネット37,第1出力軸センサ40aおよび第2出力軸センサ40bは、各ワイパブレード17のフロントガラス11に対する位置を検出する絶対位置検出センサを形成し、各ワイパブレード17の停止位置等を検出するために用いられる。ここで、第1出力軸センサ40aおよび第2出力軸センサ40bにおいても、本発明における回転パルス発生手段を構成しており、各出力軸センサ40a,40bは、アーマチュア軸25の回転に伴い、ウォーム27およびウォームホイール35を介して回転パルス信号を発生するようになっている。
図2および図3に示すように、回路基板38に設けたコントローラ50には、各回転軸センサ39a,39b,各出力軸センサ40a,40b,ワイパスイッチ51および電源52がそれぞれ配線(詳細図示せず)を介して電気的に接続されている。また、コントローラ50とモータ部20との間には、コントローラ50からモータ部20の各ブラシ33に向けて駆動電流を供給する給電線(詳細図示せず)が電気的に接続され、コントローラ50はモータ部20をDuty制御するようになっている。
なお、上記のようにワイパスイッチ51をコントローラ50に直接接続し、ワイパスイッチ51のオン/オフ操作によりワイパモータ13を直接駆動しなくとも、例えば、車両10に車載LANが構築されているのであればこれを用いることもできる。つまり、コントローラ50をLANケーブルに接続し、マスタコントローラ(車載コントローラ)からのワイパスイッチ情報によりワイパモータ13を駆動することもできる。
コントローラ50は、演算部53およびデータ格納部54を備えている。演算部53は、コントローラ50に入力される種々の入力信号(ワイパスイッチ信号,センサ信号,積算値,種々の閾値等)に基づいて、モータ部20への最適な駆動電流(最適なDuty比)を演算するようになっている。
データ格納部54は、各回転軸センサ39a,39bおよび各出力軸センサ40a,40bからの回転パルス信号を積算処理(加減算処理)し、それを記憶保持するようになっている。また、データ格納部54は、各ワイパブレード17(図1参照)のフロントガラス11に対する停止位置を示す停止位置閾値や、その他の種々の閾値を記憶保持している。これらの閾値は、車両10の仕様、つまりフロントガラス11の形状やワイパモータ13の搭載位置等に応じて決定されている。
演算部53は、データ格納部54に記憶保持された回転パルス信号の積算値と、データ格納部54に記憶保持された種々の閾値とを比較するデータ比較部(位置比較手段)53aを備えている。また、演算部53は、データ比較部53aの比較結果に応じて、各ワイパブレード17をフロントガラス11に対する所定の停止位置で停止させるための駆動電流を算出し、当該駆動電流をワイパモータ13に出力する停止位置保持駆動部(停止位置保持手段)53bを備えている。
なお、図3における「駆動力」の矢印は、ギヤ部30から各ワイパブレード17に伝達される伝達トルクを表し、「反力」の矢印は、各ワイパブレード17からギヤ部30に伝達される負荷を表している。各ワイパブレード17からギヤ部30に伝達される「反力」としては、各ワイパブレード17とフロントガラス11との摺動抵抗による負荷,各ワイパブレード17に加わる雪等の重さによる負荷,ワイパブレード17に加わる車両10の走行風による負荷などが挙げられる。
ここで、上述のような種々の負荷(反力)が各ワイパブレード17に負荷された場合におけるリンク機構16等の状態について、図面を用いて詳細に説明する。
〔正常状態〕
図4(a)は、フロントガラス11上に雪溜まり等の障害物が無く、さらに車両10が低速走行(例えば60km/h未満)する等して走行風が弱い場合を示している。
正常状態においては、各ワイパブレード17は所定の停止位置(下反転位置LRP)に停止される。このとき、図5(a)に示すように、リンク機構16の駆動ロッド16bの中心線C1と、クランクアーム16cの中心線C2とは一致した状態となっている。したがって、例えば、各ワイパブレード17が強い走行風を受けて上反転位置URP側(図1参照)に押圧されたとしても、その押圧力F1(反力)によってクランクアーム16cが破線矢印(×矢印)の方向に揺動し難くなっている。つまり、正常状態においては、走行風等の反力によって各ワイパブレード17がフロントガラス11の停止位置からずれ難くなっており、コントローラ50の演算部53に設けた停止位置保持駆動部53b(図3参照)が動作することは殆ど無い。
〔異常状態I(雪溜まりSが有る場合)〕
図4(b)は、例えば、車両10のルーフ等に降り積もった雪がフロントガラス11上に落雪し、フロントガラス11の前端部分に雪溜まりSが形成された場合を示している。
異常状態Iにおいては、雪溜まりSが障害物となり、これにより各ワイパブレード17は下反転位置LRPに到達できなくなる。このとき、ワイパモータ13は、停止位置保持駆動部53bの動作により、各ワイパブレード17を下反転位置LRPに位置させようとして継続して回転駆動される。その後、リンク機構16等を撓ませながらワイパモータ13は回転し、雪溜まりSの量が少ない等、場合によっては、各ワイパブレード17が下反転位置LRPに到達したと認識し、ワイパモータ13が停止することがある。
ここで、ワイパモータ13には、比較的大きな反力が負荷されているため、図5(b)に示すように、駆動ロッド16bの中心線C1とクランクアーム16cの中心線C2とは、所定角度ずれた状態となっている。したがって、リンク機構16の撓みが元に戻ろうとする復元力F2(反力)によって、クランクアーム16c(ワイパモータ13)が実線矢印(○矢印)の方向に回転し易くなっている。復元力F2によりワイパモータ13が回転すると、停止位置保持駆動部53bが動作するようになり、ひいてはワイパモータ13の停止(オフ)と回転(オン)とが繰り返されるチャタリング現象が発生することになる。
〔異常状態II(強い走行風Wを受けた場合)〕
図4(c)は、例えば、車両10が高速走行中(例えば150km以上)に、各ワイパブレード17が走行風Wを受けた場合を示している。このような異常状態IIにおいても、ワイパモータ13は、図4(b)で示した異常状態Iと同様の挙動を示し、チャタリング現象が発生することになる。
本実施の形態に係るワイパ制御装置12においては、〔異常状態I〕および〔異常状態II〕に示したワイパモータ13のチャタリング現象の発生を抑制し、ワイパモータ13が過負荷の状態で連続通電されるのを防止するようにしている。以下、第1実施の形態に係るワイパ制御装置12の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
図6は第1実施の形態に係るワイパ制御装置の制御内容を示すフローチャート図(上流側)を、図7は第1実施の形態に係るワイパ制御装置の制御内容を示すフローチャート図(下流側)を、図8は第1実施の形態に係るワイパ制御装置の動作内容を示すタイミングチャート図をそれぞれ表している。
図6および図7に示すフローチャート図は、演算部53の停止位置保持駆動部53bの動作内容、つまりワイパ制御装置12の停止位置保持機能の動作内容を示している。この停止位置保持機能は、例えばワイパスイッチ51をオフ操作することにより動作を開始し、各ワイパブレード17を下反転位置LRPに位置させるよう動作するものである。
ステップS1では、ワイパスイッチ51がオフ操作され、停止位置保持機能がオンの状態であるか否かを判定する。ステップS1でNoと判定した場合には、ステップS2に進み、当該ステップS2においては、ワイパスイッチ51がオフ操作されたか否か、つまりワイパスイッチ51の切り替えがあったか否かを判定する。
ステップS2でYesと判定した場合、つまりワイパスイッチ51がオフ操作されたと判定した場合にはステップS3に進み、当該ステップS3では停止位置保持機能をオンにする。ここで、停止位置保持機能をオンにすると、各ワイパブレード17を下反転位置LRPに位置させるべく、停止位置保持駆動部53bが動作を開始する。この停止位置保持駆動部53bの動作開始タイミングは、図8に示す時間t1となる。
ステップS2でNoと判定した場合にはステップS1に戻り、ワイパスイッチ51がオフ操作されるまで、ステップS2およびステップS1の処理を繰り返す。この間、ワイパ制御装置12は、別の制御ロジック(図示せず)に基づいて通常の制御(往復払拭動作)を行い、つまり演算部53において最適のDuty比を決定し、この決定したDuty比に基づきアーマチュア軸25を回転駆動(PI制御)するようになっている。ステップS3で停止位置保持機能をオンにするとステップS1でYes判定となり、ステップS4に進む。
ステップS4では、演算部53のデータ比較部53aによって、各出力軸センサ40a,40bの回転パルス信号の積算値、および停止位置閾値としての目標位置(積算値30)をデータ格納部54から呼び出し、呼び出した積算値と目標位置とを比較する比較処理を実行する。ここで、目標位置から若干ずれたとしても目標位置とするために、データ格納部54には所定の許容範囲(積算値27〜31)が格納されている。つまり、この許容範囲は不感帯となっており、例えば、回転パルス信号の積算値が27〜31の範囲内にある場合は、データ比較部53aは、各ワイパブレード17は目標位置にあると判定するようになっている。
ステップS4で、積算値が許容範囲に入っていないか否か、つまり各ワイパブレード17の停止位置が大きくずれているか否かを判定し、許容範囲内である場合(No判定)にはステップS5に進む。一方、積算値が許容範囲外である場合、つまり積算値が目標位置を超えたと判定(Yes判定)した場合には、ステップS6に進む。
ステップS5では、積算値が許容範囲内にあるため、各ワイパブレード17は所定の停止位置にあるとして、ワイパモータ13への駆動電流のDuty比を「0」、つまりワイパモータ13への駆動電流の供給を停止(非通電)する。ここで、各ワイパブレード17が所定の停止位置にある場合には、リンク機構16は図5(a)に示す状態、すなわち制動状態にあるため、停止位置保持機能をオンにしておく必要が無い。これにより、ワイパモータ13への駆動電流の供給を停止して省エネルギ化を実現している。
なお、このときのワイパ制御装置12の動作状態は図8に示す時間t1〜t2の間となるが、時間t1で非通電としてから積算値が減算されている。これは、ワイパモータ13の慣性力に起因するものである。つまり、非通電とした直後は、ワイパモータ13はその慣性力により継続して回転しており、これにより積算値が減算されている。
ステップS6では、停止位置保持駆動部53bの動作により積算値が目標位置に近づいたか否かを判定する。ステップS6で積算値が目標位置に近づいていないと判定(No判定)した場合にはステップS7に進み、積算値が目標位置に近づいたと判定(Yes判定)した場合にはステップS8に進む。
ステップS7では、ステップS6とは逆に積算値が目標位置から離れたか否かを判定する。ステップS7で積算値が目標位置から離れていないと判定(No判定)した場合には、ステップS9に進み、積算値が目標位置から離れたと判定(Yes判定)した場合にはステップS10に進む。
ステップS8では、演算部53で設定済みの現在のDuty比が、下限以下であるか否かを判定する。ステップS8で比較する比較値(下限Duty比)は、例えば10%に設定され、この比較値はデータ格納部54に予め記憶保持されている。ステップS8で下限以下であると判定(Yes判定)した場合は、ステップS11に進み、ステップS8で下限以下でないと判定(No判定)した場合には、ステップS12に進む。
ステップS11では、現在のDuty比を下限Duty比(10%)に設定し、これにより、アーマチュア軸25を小さい駆動トルクで駆動(省電力駆動)し、この状態のもとで各ワイパブレード17を下反転位置LRPに近づける。ステップS12では、現在のDuty比(例えば20%)を減少させ、例えば15%に設定する。これにより、アーマチュア軸25を小さい駆動トルクで駆動し、この状態のもとで各ワイパブレード17を下反転位置LRPに近づける。
このように、ステップS11およびステップS12においては、ステップS6でのYes判定、つまり積算値が目標位置に近づいているとの判定に基づいて、ワイパモータ13を省電力駆動するようにしている。
ステップS9では、ステップS3で停止位置保持機能をオンとしてからDuty比を変更し、その後一定時間経過したか否かを判定する。ここで、ステップS9で比較する比較値は10ms(図8参照)に設定され、この比較値は、データ格納部54に予め記憶保持されている。ステップS9で一定時間経過したと判定(Yes判定)した場合にはステップS10に進み、ステップS9で一定時間経過していないと判定(No判定)した場合にはステップS13に進む。
ステップS10では、ステップS7でのYes判定、つまり積算値が目標位置から離れた場合や、ステップS9でのYes判定、つまり積算値が目標位置に近づきもせず離れもしない状態で一定時間経過した場合を受けて、まず、演算部53で設定済みの現在のDuty比が、上限以上であるか否かを判定する。
ステップS10で比較する比較値(上限Duty比)は、例えば40%に設定され、この比較値はデータ格納部54に予め記憶保持されている。ステップS10で上限以上であると判定(Yes判定)した場合は、ステップS14に進み、ステップS10で上限以上でないと判定(No判定)した場合には、ステップS15に進む。ここで、上限Duty比を40%としているが、これは、ワイパモータ13の仕様等によって設定され、また、車両10が中速走行(60km/h以上150km/h未満)する際の走行風(風圧)により、各ワイパブレード17を上反転位置URP側に移動させないために、ワイパモータ13に必要な回転トルクを出力させるためのDuty比となっている。
ステップS14では、現在のDuty比を上限Duty比(40%)に設定し、これにより、アーマチュア軸25を大きい駆動トルクで駆動(戻し駆動)する。また、ステップS15では、現在のDuty比(例えば20%)を増加させ、例えば30%に設定する。これにより、下反転位置LRPから離れていく各ワイパブレード17を下反転位置LRPに近づけたり、下反転位置LRPから離れた位置で停止している各ワイパブレード17を下反転位置LRPに近づけたりすることができる。
なお、このときのワイパ制御装置12の動作状態は、図8に示す時間t2で各ワイパブレード17が徐々に押し上げられていき、その後、時間t3で積算値が許容範囲27〜31を超えた(目標位置を超えた)場合の動作状態となる。具体的には、例えば、フロントガラス11の前端部分の雪溜まりS(図4(b)参照)によってリンク機構16等が撓み、リンク機構16等に蓄えられた復元力(図5(b)のF2参照)によって各ワイパブレード17が押し上げられ、その後、積算値が許容範囲27〜31を超えてしまうような動作状態である。
ステップS13では、ステップS3で停止位置保持機能をオンにしてから、停止位置保持のための駆動電流のワイパモータ13への供給が、初回であるか否かを判定する。そして、ステップS13で初回であると判定(Yes判定)した場合にはステップS16に進み、ステップS13で初回でないと判定(No判定)した場合にはステップS17に進む。
ステップS16では、停止位置保持のための初期Duty比として、例えば20%に設定する。一方、ステップS17では、停止位置保持のための駆動電流のワイパモータ13への供給が初回では無く、前回出力のDuty比を一定時間(10ms)保持するために、前回出力のDuty比と同じDuty比のままとする。
図7のステップS18では、図6のステップS14で設定した上限Duty比(40%)が所定時間継続して出力されているか否かを判定する。つまり、前回出力で図6のステップS7→ステップS10→ステップS14を辿って上限Duty比に設定したにも関わらず、今回出力でも図6のステップS7→ステップS10→ステップS14を辿って上限Duty比に設定するような場合は、前回出力開始から今回出力開始までが一定時間以内(例えば10ms以内)となり、ステップS18においてYes判定となる。
一方、前回出力に対して今回出力のDuty比が変更されるような場合、つまり、図8の時間t3〜t4の間に示すように、徐々にDuty比を増加させ、積算値を目標位置に戻す出力、つまり各ワイパブレード17を下反転位置LRPに戻す戻し出力(復路側)を実行している間は、ステップS18においてNo判定となる。そして、ステップS18でYesと判定された場合にはステップS19に進み、ステップS18でNoと判定された場合にはステップS20に進む。
ステップS19では、一定時間内に上限Duty比が繰り返し出力され、チャタリング現象が発生しているとする処理、つまり「チャタリング中」のフラグを立てる。ステップS20では、連続で一定時間「チャタリング中」が発生したか否かを判定する。ステップS20でYesと判定した場合にはステップS21に進み、ステップS20でNoと判定した場合にはステップS1に進む。
ステップS21では停止位置保持機能をオフにし、これによりワイパモータ13への駆動電流の供給を停止、つまり図8に示す時間t4以降は積算値を目標位置に戻すことを諦めて、停止位置保持のためのワイパモータ13の制御を停止(制御停止)して非通電とする。これにより、アーマチュア軸25が上限Duty比で繰り返し回転駆動されるのを防止(チャタリング現象を防止)し、ワイパモータ13の焼き付き等が防止される。
以上詳述したように、第1実施の形態に係るワイパ制御装置12によれば、ワイパモータ13のアーマチュア軸25の回転に伴い回転パルス信号を発生する各出力軸センサ40a,40bと、回転パルス信号の積算値と目標位置とを比較するデータ比較部53aと、データ比較部53aにより積算値が目標位置を超えたと判定した場合に、積算値を目標位置に近づけるようアーマチュア軸25を制御する停止位置保持駆動部53bとを備え、停止位置保持駆動部53bは、アーマチュア軸25の制御中において、積算値が目標位置に近づかない場合に、アーマチュア軸25の制御を停止する。したがって、雪溜まりSによってリンク機構16等が撓んだ場合や車両10が高速走行している場合等において、位置保持制御が継続されるのを抑制、つまりワイパモータ13が過負荷状態で連続通電されるのを抑制することができ、ひいてはワイパモータ13の焼き付き等を未然に防いでワイパモータ13を保護することができる。
また、第1実施の形態に係るワイパ制御装置12によれば、停止位置保持駆動部53bは、ワイパモータ13の出力値を最大(上限Duty比40%)としても積算値が目標位置に近づかない場合に、アーマチュア軸25の制御を停止するので、ワイパモータ13の出力値が最大となるのを抑制できる。したがって、ワイパモータ13の焼き付き等を確実に防いで、ワイパモータ13をより確実に保護することができる。
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の部分には同一の記号を付し、第1実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
図9は第2実施の形態に係るワイパ制御装置の動作内容を示すタイミングチャート図を、図10は第2実施の形態に係るワイパ制御装置の制御内容を示すフローチャート図(下流側)をそれぞれ表している。
第1実施の形態では、各出力軸センサ40a,40bの回転パルス信号の積算値を用い、これを目標位置(積算値)と比較するようにした。また、第1実施の形態では、アーマチュア軸25を上限Duty比(40%)で駆動し、上限Duty比で繰り返し駆動されるチャタリング現象が一定時間発生した場合に、ワイパモータ13の制御を停止するようにした。
これに対し、第2実施の形態では、各回転軸センサ39a,39bの回転パルス信号の積算値(モータ角度)を用い、これを目標位置(モータ角度)と比較するようにしている(図9参照)。また、第2実施の形態では、上述したチャタリング現象を検出する[チャタリング検出ロジック]に加え、ワイパモータ13に対して上限Duty比(40%)を連続して一定時間出力し、それでも積算値が目標位置に近づかない場合に、ワイパモータ13の制御を停止する[最大出力継続ロジック]を設けている。
第2実施の形態においては、データ格納部54(図3参照)は、停止位置閾値としての目標位置(図9のモータ角度15.0°)を格納している。さらに、データ格納部54は、停止位置保持駆動部53bを動作させるための戻し開始閾値(図9のモータ角度16.0°)と、停止位置保持駆動部53bを停止させるための戻し終了閾値(図9のモータ角度15.5°)とを格納している。
つまり、目標位置(15.0°)から各ワイパブレード17が徐々に上反転位置URP(図1参照)側に移動し、戻し開始閾値(16.0°)を超えたら停止位置保持駆動部53bを動作させる(図9の時間t3)。また、停止位置保持駆動部53bを動作させた後、各ワイパブレード17が徐々に目標位置15.0°つまり下反転位置LRP(図1参照)側に戻り、戻し終了閾値(15.5°)を超えたら停止位置保持駆動部53bを停止させる。このように、目標位置から若干ずれたとしても目標位置とするために、第2実施の形態においても不感帯を設けている。
第2実施の形態においては、図10に示すように、ステップS18からステップS21に示す[チャタリング検出ロジック]に引き続き、ステップS30からステップS32に示す[最大出力継続ロジック]を行うようになっている。
ステップS30では、ステップS20で「チャタリング中」が連続で一定時間発生していないとの判定(No判定)に基づき、現在のDuty比が上限Duty比(40%)であるか否かを判定する。ステップS30で上限Duty比であると判定(Yes判定)した場合は、ステップS31に進み、ステップS30で上限Duty比でないと判定(No判定)した場合は、ステップS1に進む。
ステップS31では、上限Duty比でアーマチュア軸25が大きい駆動トルクを発生している駆動状態が、一定時間連続で経過したか否かを判定する(図9の時間t4〜t5)。ここで、ステップS31の比較で用いる一定時間は、本発明における所定時間を構成しており、例えば50msに設定されて、データ格納部54に予め格納されている。
ステップS31でYesと判定した場合は、ワイパモータ13が焼き付き等の不具合を発生する虞があるとしてステップS32に進む。ステップS32では、停止位置保持機能をオフにし、これによりワイパモータ13への駆動電流の供給を停止する。一方、ステップS31でNoと判定した場合は、アーマチュア軸25を大きい駆動トルクでさらに駆動できるとして、ステップS1に進む。つまり、アーマチュア軸25を大きい駆動トルクで継続して駆動し、ワイパモータ13に対して戻し出力(復路側)を試みる。
以上詳述したように、第2実施の形態においても、上述した第1実施の形態と略同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態においては、停止位置保持駆動部53bは、チャタリング現象が発生していない場合において、出力値を最大(上限Duty比40%)としてから一定時間(50ms)経過しても積算値が目標位置に近づかない場合に、アーマチュア軸25の制御を停止する。したがって、第1実施の形態に比して、ワイパモータ13の焼き付きをより確実に防止することができ、ワイパ制御装置の信頼性をより向上させることが可能となる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ワイパ制御装置12を、自動車等の車両10のフロントガラス11を払拭するものとして説明したが、本発明はこれに限らず、車両10のリヤガラスを払拭するものにも適用できる。
さらに、上記各実施の形態においては、ワイパ制御装置12を、自動車等の車両10に搭載されるものとして説明したが、本発明はこれに限らず、鉄道車両,建設機械,船舶,航空機等に搭載されるものにも適用できる。