吸収式冷凍機では、機内を循環する吸収液(例えば臭化リチウム水溶液)の濃度変化により冷水や温水を取り出すことができる。二重効用機は、その主たる構成が図14に示されるように、ほぼ真空に近い容器をなす蒸発器51と吸収器52、それらより少し圧力の高い容器の低温再生器53や凝縮器54、例えばバーナ1Aにより都市ガス等を燃焼させて熱エネルギを得る大気圧に近い内圧の容器をなす高温再生器1からなっている。なお、本明細書においてはJISB8622の記載に則り、吸収式冷凍機は、「・・・冷凍サイクルを構成し、水の冷却又は加熱を行う吸収冷凍機,吸収冷温水機及び吸収ヒートポンプ・・・」に属するものをいうと解釈し、吸収冷温水機や吸収ヒートポンプなる用語の使用は特に必要とする場合以外は表示しないことにする。
蒸発器51では、高真空下で蒸発器管51pの外面に流下させた冷媒液51wによって蒸発潜熱が奪われ、蒸発器管を流れる冷水55が冷却される。吸収器52では、蒸発器51で発生した冷媒蒸気51sを吸収器管52pを流れる冷却水56wで冷却することにより、吸収液12に吸収させると共に容器内を高い真空に保持する。低温再生器53では、高温再生器1で発生させた冷媒蒸気11を低温再生器管53pに流してその潜熱で吸収液12mを加熱濃縮し、冷媒蒸気53sを発生させる。高温再生器1では、吸収液12nを加熱濃縮して冷媒蒸気11を発生させる。凝縮器54では低温再生器53で蒸発した冷媒蒸気53sが凝縮器管54pを流れる冷却水56wで冷却され、凝縮液化する。なお、冷却水ポンプ57aで圧送され吸収器管52pを経て凝縮器管54pを流通した冷却水56wは、図示しない冷却塔で冷却した後に循環される。
このような吸収式冷凍機では、冷房運転のみならず、図15に示すように冷暖切換弁58a,58bを開いて高温再生器1で蒸発した冷媒蒸気11を蒸発器51へ送り、低温再生器53でも冷媒蒸気53sが発生していればそれも併せて送り、蒸発器管51pを流れる温水59を加熱すれば、暖房運転を行うこともできる。冷房・暖房のいずれの場合も、冷水55または温水59の温度制御にあたって、一般に冷温水出口温度tを基にして高温再生器1における加熱量が図示しない燃料制御弁で調整される。
ところで、上記した暖房運転では、凝縮器54において高温再生器1で発生した冷媒蒸気11や低温再生器53で発生した冷媒蒸気53sを凝縮させる必要はなく、吸収器52においても冷媒蒸気51s(図14を参照)を吸収させる必要がない。前者については、図15中に示したショートパス管路60が設けられることからも容易に理解できる。
このように暖房時には、冷媒蒸気の凝縮や冷媒蒸気の吸収が必要でないのは、冷媒蒸気11,53sをそのまま温水59の加熱に供しているからである。それゆえ、蒸発器51では冷媒蒸気が温水と熱交換して凝縮した結果生じる冷媒液51wは増える一方であり、これが冷媒溜め51rから溢れて吸収器52へ自ずと移動する。従って、吸収器の散布管52cが低温熱交換器61からの吸収液を吸収器52へ戻すために使用されるものの、その散布は蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸収液に吸収させようとするものでない。
このようなことから、吸収器管52pと凝縮器管54pとに通じる冷却水配管系62に冷却水を流す必要はなく、したがって、暖房運転時に冷却水ポンプ57aが運転されることはない。また、図14のように蒸発器51の冷媒溜め51rから冷媒液51wを汲み上げて散布する必要もなく、冷媒ポンプ51hも運転されることがない。しかしながら、吸収液は、系内で発生した冷媒蒸気によって温水が生成される間に、冷房時と同じ濃度変化をとり同じ経路をたどって循環することに変わりがない。
このような吸収式冷凍機においては二重効用の原理に基づぎ省エネ化が進められるが、その系内での熱交換効率の向上を図るため、図14に示すように、低温熱交換器61や高温熱交換器63が設置される。この高温熱交換器は高温再生器1に向かう吸収液63aを予熱するもので、その熱源として高温再生器1から導出された高温の吸収液1bが使用される。低温熱交換器61は低温再生器53に向かう吸収液1aを予熱するもので、図示の例では低温再生器53から導出された吸収液53bおよび高温熱交換器63を出た吸収液63cが吸収器52へ戻される途中で熱源として利用されている。
ところで、最近の吸収式冷凍機は性能向上が目ざましい。その反面、機器の複雑化が進み、装置や設備の重量増加を招引している。吸収式冷凍機を新設する場合は、その重量に見合った基礎を構築すればよい。しかし、置き替え需要の場合には従前の基礎にそのまま適用しなければならないことが多い。部分的な機器の交換の場合は尚更で、したがって重量増大やスペース占有率拡大は大きな問題となる。
他の問題として、冷媒蒸気を生成するために吸収液を濃縮する高温再生器での腐食の発生が挙げられる。例えば特許文献1には、二重効用直焚吸収式であって炉筒煙管型の高温再生器が開示されている。この種の高温再生器では、管板間に収容された吸収液中に伝熱管としての煙管が水平に配置され、炉筒を出た後の燃焼ガスは管板面を高温に曝して他の部分よりは吸収液温度を上昇させる。その結果、吸収液の局部濃縮により管板の煙管固定部において隙間腐食を生じさせやすくする。また、伝熱管を炭素鋼とすれば、管板に臨む煙管入口近傍で局部腐食をきたすおそれも高い。
この局部腐食を抑えようとするには、収熱量の大きい煙管入口近傍での熱負荷を和らげるのが一策である。しかし、そのために管内流速を落とすなどすれば伝熱性能が犠牲となり、装置のコンパクト化に逆行する伝熱面積の増大が余儀なくされる。ひいては重量増加もきたし、好ましくない。なお、伝熱管にステンレス鋼を採用すれば腐食は回避されるとしても、高価な材料の使用と品質確保が厳しいシール溶接の採用が、高温再生器の高騰化を助長する。
上記した特許文献1は、隙間腐食や局部腐食を回避するために、吸収液を上端が液溜めに開口する垂直な液管に流通させ、燃焼ガスを液管周囲に流して加熱する炉筒液管型とすればよいと説き、そうすれば管板も必要でないと教示する。この機構原理を採用したものが、例えば特許文献2に記載されている。高温再生器の稼働中液管内は真空に近いが、燃焼ガス流通部や気液溜めは三重効用機の場合一気圧を少し上回ることがあっても、二重効用機では一気圧より少し低い程度であることから、いずれにしても炉筒は必ずしも円筒形でなければならないというほどのものでない。特許文献2に開示された高温再生器では、まさに円筒形を廃した角筒形とした炉筒となっている。
角筒形であれば工作上は部材形状の単純化、曲面加工量の減少が図られ、また組立ての自動化も容易となって低廉化を進めやすくなるだけでなく、据付けや設置においてデッドスペースの発生を抑えた高い空間活用率を発揮させる利点がある。しかしながら、炉殻もしくは炉壁は平らな板材で構成される関係で内外面の圧力差に耐えるべく面剛性を上げたり高強度材を導入したり、発生する熱応力を考慮して固定部での支持剛性を高めたりする必要があって、厚板材の採用が避けられない。また、スティフナによる補強も随所に要求されることになる。これでは、高性能化を図るうえで不可避な重量増大化を助長し、コストアップ要因も増やしてしまう。
ちなみに、上記したごとく液管群を立設するにしても、金属管腐食の発生を完全に排除できるとは限らず、次に述べるように液管においては依然として腐食の可能性が残る。また、加熱のために投じたエネルギが部分的とはいえ消散させてしまったり、過剰なエネルギの投入が余儀なくされるなどして、省エネ効果向上の観点から好ましくない問題も付随する。特許文献3は、液管が円形断面であれば、個々の液管中で液・蒸気流動が下から上の方向にしか形成されず、管全体が沸騰上昇流となる一次元的なものにならざるを得ないと説明し、管内で沸騰が始まり蒸気発生量が多くなると溶液の濃度が上がり、溶液が結晶化して空炊き状態になりやすく、伝熱面の腐食をきたすおそれが高いという。それを回避するためには、液管を偏平なものにして二次元的流れが生じるように、すなわち垂直面内で回転する渦巻き状の流れを管内に呈させることができるようにしておけばよいと提案する。たとえ部分的に空炊き状態が発生しようとも、渦流を常時存在させておくことができるなら、空炊き部に吸収液を自ずと補填できるというのである。
液管内流れに渦巻きを伴わせるためには、液管断面に円形のときの1より大きい縦横比を与えなければ、すなわち、液管の平面形を細長い長方形に近づけておかなければ実効性が薄れる。液管は側方から見て燃焼ガス流入側である上流縁、燃焼ガス流出側である下流縁、さらに気液溜めに臨む上端縁、吸収液を取り込む開口となる下端縁で囲まれる矩形となるから、渦流を発生させることができると説明する。
検討するに、まず、液管の上流縁壁近傍が燃焼ガスから熱エネルギを先取りする結果、下流縁壁近傍を通過する燃焼ガスはその保有熱エネルギのかなりを消失していることを念頭に置く。渦は上流側での強い加熱により発生する上昇流の流勢と下流側での弱い加熱によるそれとの差の結果生じる自然対流と考えれば、渦巻きは大まかに言って上流縁、上端縁、下流縁、下端縁の順をたどる回転となる。沸騰して空炊きとなっている部分での蒸気圧は高くなるが、気液溜めに出さえすれば蒸気圧は一時的に低下し、吸収液の自然補填も可能となる。しかし、補填直後にその箇所で沸騰が再び起こればたちまち空炊きもしくはその寸前の状態が再現されるから、結局は空炊き前後の不安定な状態が繰り返されると考えられる。したがって、吸収剤の析出、沸騰や突沸現象による腐食の発生、熱疲労の蓄積といったことを考慮すれば、管肉厚が従前よりも極めて大きいものになり、ひいては偏平であるとはいえ液管の直径よりもかなり大きい幅で嵩張ったものとならざるを得ない。
ところが、この回転規模が如何にあれ常時維持されれば、発生した蒸気は吸収液から浮上離脱して気液溜めに向かい、煮詰まった吸収液の一部も気液溜めに至り、残部は下流側に位置する加熱度合いの低い吸収液と混ざり合うことになる。この混合部では吸収液同士で熱エネルギの授受が行われるから、加熱に投じたエネルギは部分的とはいえ消失してしまう。
特許文献3においては、高温熱交換器からの吸収液が高温再生器の気液溜めに供給される。炉胴は箱形の内筒とそれを覆う箱形の外筒から構成される結果、液管に流入する吸収液は、気液溜めから内筒壁と外筒壁との隙間である対面空間をたどって流下し、内筒の下方に回り込み、外筒底部に到達したものとなる。一連の吸収液溜まりを自然流下して液管下端開口にたどりつく吸収液は、胴内で最も温度が低くなっているはずである。液管に温度降下の少ない状態にある吸収液を導入して加熱すると想定した場合に比べれば、過大な量のエネルギ投入となることは否めない。
ちなみに、内筒上方の気液溜めの吸収液は高温再生器内で最も温度が高いが、逆流防止の観点からも高温熱交換器からの吸収液は気液溜めの液面より高い位置から供給される(特許文献2の図2中の符号105、特許文献3の図1中の符号5を参照)。この気液溜めに導入された吸収液は高温熱交換器により温められてきているとはいえ、依然として冷媒蒸気を発生させまた滞留させている気液溜めの高温の吸収液を部分的ではあるが降温させてしまい、気液溜めで吸収液が保有する高い熱エネルギは減殺される。
ところで、高温再生器を略箱形の内筒とそれを覆う箱形に近い外筒から構成させるにしても、これは工場出荷段階ですでに高真空とされている蒸発器や吸収器と配管を介して一体化されるのが一般的である。このような吸収式冷凍機を稼働させていた状態で運転を停止すべく高温再生器での吸収液の加熱を止めれば、冷媒蒸気の発生がなくなるから、その胴内圧は真空に向けて急減する。このとき、内筒の壁面と外筒の壁面との間の対面間に形成された吸収液溜まりには、厚肉剛強な壁面板で囲まれて形成される容積に相当する量の吸収液が残存することになる。したがって、次回の運転立ち上げ時も、吸収液溜まりの吸収液全量を加熱の対象としなければならなくなる。迅速な立ち上げを図るためには、伝熱性の高められた液管以外に滞留する吸収液量は少なくしておくに越したことはないが、吸収液溜まりの容積が常時一定であるかぎりは、それを加熱するに十分なエネルギと時間も要することになって、運転立ち上げの迅速化は期待しがたくなる。
本発明は上記の幾つかの問題に鑑みなされたもので、その目的は、性能向上に伴う機器の重量化を抑えて置き替え需要に対しても応えやすくすること、吸収液が部分的に煮詰められることのないようにして結晶化するのを回避し、管系における腐食の発生を抑制できる構造とすること、熱交換効率の向上や炉殻の損傷回避が可能になること、炉筒形状の簡素化による製作コストの低減や設置時のスペース効率向上が図られることを実現する高温再生器を備えた吸収式冷凍機を提供することである。
本発明は、吸収器、再生器、凝縮器、蒸発器を備え、吸収液を加熱して発生させた冷媒蒸気の凝縮液を蒸発器内の蒸発器管に散布し、その伝熱面における凝縮液の気化によって蒸発器管内で冷水を得る冷房運転においては、冷媒蒸気を発生させることにより生じた吸収液を高温再生器に向かう吸収液と高温熱交換器で熱交換させた後、その吸収液に冷水を得る際に生じた冷媒蒸気を吸収させて吸収器ならびにそれに連なる蒸発器を高真空にするようにしている吸収式冷凍機における高温再生器に適用される。その特徴とするところは、図1および図2を参照して、高温再生器1は内筒2と外筒3からなる二重胴であり、内筒2には、高温ガス13を群をなして立設された液管6の間に流過させることにより各液管内の吸収液12を加熱する液管式熱交換ゾーン4が形成され、内筒2を包囲する外筒3には、内筒2上方に吸収液から発生した冷媒蒸気を気液分離器8へ送出させるまで収容する気液溜め9が形成される。
内筒2は前壁15A、上壁10、下壁16A、左壁17A、右壁18Aを有して角筒状に形成され、それらによって囲まれるゾーンの全部もしくは一部が液管式熱交換ゾーン4に充てられ、外筒3は内筒2の前壁15A、下壁16A、左壁17A、右壁18Aのそれぞれと間隔をあけて対面する前壁15B、下壁16B、左壁17B、右壁18Bを有し、これらによって下半部が箱形をなす一方、上半部は気液溜め9を画成する天蓋壁19で覆われる。
内筒2の前壁15A、下壁16A、左壁17A、右壁18Aと外筒3の前壁15B、下壁16B、左壁17B、右壁18Bのそれぞれの対面スペースが内筒2を取り囲む吸収液流通用ジャケットとされ、そのうちの下壁ジャケット21は液管6の下端および前壁、左壁、右壁の各ジャケット22,23,24の下端と連通し、液管6の上端および前壁、左壁、右壁の各ジャケットの上端は気液溜め9と連通する。
前壁、左壁、右壁、下壁の各ジャケット22,23,24,21にはスペーサ26が介在され、前壁、左壁、右壁の各ジャケットにおけるスペーサ26が上下方向に延びて前後方向に複数の通路27を画成させ、下壁のジャケットにおけるスペーサは左右方向へ延びて前後方向に複数の通路28を画成させ、この下壁ジャケット21にあっては、外筒3の下壁16Bを通して高温熱交換器からの吸収液12を供給するための導入口31が設けられる。そして、
その導入口から下壁ジャケット21に導入された吸収液12を、液管6および下壁、前壁、左壁、右壁の各ジャケット21,22,23,24内でスペーサ26に沿うようかつ押し込み的に流通させ、ジャケットでは吸収液12が個々に連続して供給されることにより上昇流の停滞が抑制され、空炊きの発生を回避して伝熱面の腐食のおそれを除去できるようにし、発生させた冷媒蒸気11(図4の(b)を参照)とともに吸収液12が気液溜めに一次元的な流動によって浮上できるようにしていることである。
図8に示すように、内筒2には、バーナ44により高温の燃焼ガス46を発生させる燃焼ゾーン47も備えられ、その燃焼ゾーンは熱交換ゾーン4の上流側に位置して両ゾーンが前後方向に連続するようにしておくこともできる。
図1に戻って、スペーサ26は溶接によって内筒2の前壁15A、左壁17A、右壁18Aに固定され、その溶接ビード33は不連続に施され、非溶接部分は切欠きとされて各壁に対して非密着部34を形成する。
図7の(a)に示すように、内筒2および外筒3の少なくとも一方の前壁15Aまたは15B、左壁17Aまたは17B、右壁18Aまたは18Bには薄鋼板35が使用され、吸収液の加熱が停止された時点で真空圧に向かう胴内圧の低下により各通路27の容積を同図(b)のごとく縮小させるように薄鋼板35が変形し、次の運転立ち上げから定格運転に至るまでは各ジャケット22,23,24に滞留しかつ流通する吸収液量を少なくしておき、定格運転に入れば上昇した胴内圧によって容積を回復し、薄鋼板35の形が復元されるようにしておくとよい。
図3に示すように、スペーサはフラットバー26Aとし、背部を外筒3から突出させ、その突出部全周が外筒に溶接される(全周溶接部36を参照)。
また、スペーサ26はフラットバーとし、背部が外筒にプラグ溶接されるようにしてもよい(切欠き43を参照)。
スペーサは図10のごとくチャンネル状もしくはハット状の形鋼26Bとし、その溝形空間26aが内筒2の前壁15A、下壁16A、左壁17A、右壁18Aによって閉止される姿勢に配設される(図12も参照)。この場合、図11のように、形鋼26Bの背部は、外筒3にプラグ溶接するようにしておくとよい(切欠き48を参照)。
本発明によれば、少なくとも前壁、左壁、右壁の各ジャケットにはスペーサが介在され、これによって複数の通路を画成させるが、このスペーサの存在によって各壁の補強作用を発揮するスティフナの導入は必要でなくなる。壁面板を厚くしなくても耐圧性を保有させることも容易となる。加えて、スペーサに沿うよう流通させることができ、吸収液の無秩序な斜行や交錯した流れの発生は防止される。
下壁ジャケットには高温熱交換器からの吸収液を受ける導入口が設けられているから、液管はもちろんのこと、前壁、左壁、右壁の各ジャケットにも吸収液が個々に連続して供給されることになる。上昇流の停滞を起こさせないだけでなく、吸収液流通用ジャケットを流過する吸収液によって内筒壁の焼損も防止される。逆に言えば、このジャケットは液管外にありながら吸収液の加熱にも貢献する。なお、スペーサは各ジャケットにおける吸収液に対して伝熱面積を拡大させるようにも機能するから、ジャケットにおける熱交換性の向上にも寄与する。
導入口から液管へは高温熱交換器から高温再生器に吸収液を送る吸収液ポンプにより吸収液が押し込み的に供給され、管内液の新陳代謝が積極的に図られる。液管内での空炊きの発生は管の断面形状の如何を問わず回避され、伝熱面の腐食のおそれを取り除く。すなわち、液管内では渦巻き流を必要とせず、発生した冷媒蒸気と吸収液が二相化しても、後続する吸収液が気液溜めに一次元的な流れのまま押し上げる。吸収液ポンプにより与えられた流動エネルギは、管内での液流対向によって減殺されることもない。吸収液流通用ジャケットにおける上昇流も同じく安定的に生じるから、ポンプ負担を増大させることもない。
下壁ジャケットにもスペーサが介在され、そのスペーサが左右方向へ延びて前後方向に複数の通路を画成させ、導入口がその通路ごとに設けられるので、吸収液流は導入口から通路をたどって液管や前壁、左壁、右壁の各ジャケットへ向かうにおいて交錯した流れが抑制され、液管への流入も極めて円滑となる。
内筒には、液管式熱交換ゾーンのほかに、バーナにより高温の燃焼ガスを発生させる燃焼ゾーンも備えるようにしておけば、外部から高エネルギの排ガス等を導入できない場合でも、直焚高温再生器として稼働させることができる。燃焼ゾーンは熱交換ゾーンの上流側に位置してこれらが前後方向に連続し、すなわち熱ガスを水平に流過させることになるので、燃焼ゾーンを熱交換ゾーンと上記した吸収液流通用ジャケットおよび気液溜めによって包囲させることができる。燃焼ゾーンから発生する熱エネルギの散逸面をなくして、投入エネルギの利用度増進が大いに図られる。熱交換ゾーンの液管群と吸収液流通用ジャケットとは吸収液が積極的に上昇する流れとなるから、ゾーンやジャケットを画成し構成する部材に及ぶ熱負荷は軽減される。
スペーサは溶接によって内筒の前壁、下壁、左壁、右壁に固定されるが、その溶接ビードを不連続にし、非溶接部分は切欠きとされて各壁に対して非密着部を形成させるようにしておけば、ビードのない箇所で吸収液に多少の出入りの流れを生じさせることができ、溶接量を抑えた場合でもスペーサと内筒との間に進入する吸収液に煮詰まりが生じにくくして、スペーサ取付箇所における腐食の発生要因を予め排除しておくことができる。
内筒および外筒の少なくとも一方の前壁、左壁、右壁に薄鋼板を使用すれば、壁面板の大幅な重量軽減が図られる。稼働形態に着目すると、吸収液の加熱が停止された時点で真空圧に向かう胴内圧の低下により薄鋼板は変形され、通路容積を縮小させておくことができる。運転立ち上げから定格運転に至るまでは吸収液流通用ジャケットに送り込む吸収液量が少なくて済むことになり、それだけ吸収液の加熱を早める。その間に要する時間の短縮化、すなわち立ち上がりの迅速化が図られる。
スペーサはフラットバーとし、背部を外筒から突出させ、その突出部全周を外筒に溶接するようにしておく。内筒との間の狭い空間でする外筒内側での難しい全周溶接を回避することができる。外筒が内筒に固定されることになるから、壁面板厚を上げなければならないこともなく、耐圧性も高まる。したがって、炉殻の溶接品質の確認のための加圧テストは行いやすくなり、ひいては運転時の胴内圧が一気圧を上回る三重効用機にも適用させることができるようになる。
フラットバーの背部が外筒にプラグ溶接されれば、スペーサが内筒と外筒に固定されるので、外筒と内筒との一体化が図られる。全周溶接する場合に比べれば溶接量を格段に減らすことができるだけでなく、フラットバーとしての鋼材消費量も低減される。炉胴の剛性が上がるから、壁面板の軽量化も進めやすくなる。もちろん、溶接品質確認のための加圧テスト等も可能となる。
スペーサはチャンネル状もしくはハット状の形鋼とし、その溝形空間が内筒の前壁、下壁、左壁、右壁によって閉止される姿勢に配設しておくようにすれば、溝形空間を通過する吸収液も内筒壁に直接触れ、スペーサの存在が原因となって熱交換性を低下させるようなことはなくなる。
形鋼スペーサの背部が外筒にプラグ溶接されていれば、スペーサが内筒と外筒に固定されるから、外筒と内筒との一体化が図られる。炉胴の剛性を上げることができ、したがって、壁面板の軽量化も図りやすくなる。もちろん、溶接品質確認のための加圧テスト等も行いやすい。
本発明に係る吸収式冷凍機用角筒型高温再生器を、具体例をもとに詳細に説明する。その高温再生器は、背景技術のところで述べたとおりの例えば以下の作用をする二重効用吸収式冷凍機に適用される。冷凍機全体についてはすでに触れたので、ここでは符号を用いての説明としない。吸収式冷凍機は、吸収器、再生器、凝縮器、蒸発器を備え、吸収液を加熱して発生させた冷媒蒸気の凝縮液を真空に近い状態にある蒸発器内の蒸発器管に散布し、その伝熱面における凝縮液の気化によって蒸発器管内の流通水を冷却して冷水を得る冷房運転をする。その冷媒蒸気を発生させることにより生じた濃吸収液は高温再生器に向かう中濃吸収液と高温熱交換器で熱交換された後、その濃吸収液に冷水を得る際に生じた冷媒蒸気を吸収させて吸収器ならびにそれに連なる蒸発器を高真空にするようにしている(図14を参照)。このような作用に加えて、吸収液を加熱して発生させた高温の冷媒蒸気を蒸発器に供給し、蒸発器管内の流通水を昇温させて温水を得る暖房運転する場合にも適用することができる。冷媒蒸気を発生させることにより生じた濃吸収液を高温再生器に向かう中濃吸収液と高温熱交換器で熱交換させた後、その濃吸収液に温水を得て生じた凝縮水を混入させた稀吸収液を吸収器に貯留させるようにしている(図15を参照)。
以下に、図1等の実施の形態を表した図面を参照しながら、吸収式冷凍機用角筒型高温再生器を詳細に説明する。高温再生器1は内筒2とこの内筒を包囲する外筒3からなる二重胴構造のプール沸騰式熱交換装置となっている。この例では、その内筒2のほぼ全域が液管式熱交換ゾーン4に充てられる。その液管式熱交換ゾーンは、高温再生器1の外部に存在する高温の排ガスなどをガス入口5を介して内筒に導入し、群をなし立設された液管6の間を実質水平方向に流過させることにより、各管内で上昇する吸収液を加熱するための空間をなす。
その高温ガスは例えばボイラ排ガスであったり、タービンなどの発電用エンジンの排気ガスなどであり、ガス出口7に至った時点では、それが保有する熱エネルギのかなりが消失されるほどに熱交換が図られる。その液管6の単体は、内筒2の天板(上壁)10を除去するとともに右壁下流側を切除して液管群も俯瞰できるようにした図2中の右に表されたようなもので、伝熱面積を拡大するためのフィン6aが幾つも設けられている。そのフィン形状は液管周囲の狭隘なことを考慮して一方向へのみ延びるものとなっているが、スペース的に可能なら、このような片側フィンチューブに代えて環状フィンチューブを採用してもよいことは言うまでもない。
内筒2を包囲する外筒3には、内筒上方に吸収液から発生した冷媒蒸気を図3に示す気液分離器8へ送出するまで収容する気液溜め9が形成される。後で詳しく述べるが、その気液溜めは内筒2の上壁10(図1を参照)すなわち天板の上方に位置しており、図4に示すように、液管6内を浮上した冷媒蒸気11や吸収液12が、内筒2を流過する高温ガス13に曝された上壁10を介して伝わる熱により保温され、また沸騰が助長される。
図1中の実線表示部分に着目して、内筒2はそれぞれが密閉構造をなす前壁15A、上壁10、下壁16A、左壁17A、右壁18Aを有して角筒状に形成される。それらの壁によって囲まれるスペースの大部分が液管式熱交換用となっていることが把握される。一方、一点鎖線で表示された外筒3は、内筒2の前壁、下壁、左壁、右壁のそれぞれと例えば10ミリメートル程度の間隔をあけて対面する前壁15B、下壁16B、左壁17B、右壁18Bを有する。これらによって下半部が箱形をなし、上半部は気液溜め9を画成する天蓋壁19で覆われる。本例では天蓋はアーチ状をなしているが、一気圧前後の胴内圧となる気液溜め9が方形をなすように、天蓋をフラットにしておいても特に差し支えはない。
内筒2の前壁、下壁、左壁、右壁と外筒3の前壁、下壁、左壁、右壁のそれぞれの対面スペースが、内筒2を取り囲む冷却用ジャケットを形成する。このジャケットには液管6に供給される吸収液と同じ吸収液を流過させるようにしているので、吸収液流通用のジャケットとしても機能する。そして、図4および図5から分かるように、下壁ジャケット21は液管6の下端および前壁ジャケット22、左壁ジャケット23、右壁ジャケット24の下端と連通し、液管6の上端および前壁ジャケット、左壁ジャケット、右壁ジャケットの上端は気液溜め9に連通されている。したがって、吸収液流通用ジャケットも液管も気液溜めと同じ胴内圧を呈する。
その前壁、下壁、左壁、右壁の各ジャケット22,21,23,24には、図1に示すようにスペーサ26が介在され、前壁、左壁、右壁の各ジャケットにあってはそのスペーサが上下方向に延びて前後方向に複数の通路27を画成させている。下壁ジャケット21にあっては左右方向に延びて前後方向に複数の通路28を画成させている。そして、下壁ジャケット内に配置したスペーサによって画成された通路ごとに、その外筒下壁16Bを通して図示しない高温熱交換器からの吸収液を供給するための導入口31が設けられている。ちなみに、高温熱交換器の受熱側とこの導入口との間には図3に示した逆U字管32が設けられ、吸収液ポンプ停止時、高温再生器内残圧で気相が逆流するのを防止するようにしている。したがって、逆U字管の頂部は気液溜め9の液面より高くなるように設定される。
導入口31から下壁ジャケット21に導入された吸収液は、図4に示すように、液管6および前壁、左壁、右壁の各ジャケット22,23,24内でスペーサ26に沿うよう、そして吸収液ポンプ(図14中の符号64を参照)によって押し込み的に流される。いずれにおいても上昇する流れの停滞はなくなるから、液管ならびにジャケットでの空炊きが発生したとしても直ちに解消され、伝熱面の腐食のおそれはなくなる。発生させた冷媒蒸気とともに吸収液が気液溜め9に一次元的な流動によって浮上するからにほかならない。図6はスペーサを省いて描かれているジャケットにおける吸収液流通図であり、上昇流が二次元的流れを起こすことはほとんどない。背景技術の項において述べた液管やジャケットにおける渦巻き状流動を、敢えて起こさせる必要のないことも分かる。
ところで、スペーサ26は溶接によって内筒2の前壁、下壁、左壁、右壁に固定され、図1のごとくその溶接ビード33は不連続に施される。そして、非溶接部分は切欠きとされて各壁に対して非密着部34を形成させている。したがって、ビードのない箇所で吸収液に多少の出入りを生じさせることにより、スペーサと内筒との間に進入した吸収液に煮詰まりが生じるといったことのないようにしておくことができる。スペーサ取付箇所における腐食の発生要因は、このようにして予め取り除いておくことができる。ちなみに、ビード不連続による溶接量の低減は製造工数の削減につながり、コスト低減に寄与することも言うまでもない。
内筒2の前壁、左壁、右壁およびそれに対向する外筒3の各壁には、例えば4ミリメートル厚前後の薄鋼板35(図7を参照)が使用される。内筒や外筒の鋼板は通常6ミリメートル以上の厚いものが使用されるが、この発明の態様においては上記したスペーサによる補剛作用も寄与して壁面板の所望外な面変形も抑制され、厚板の採用を排除して装置の軽量化が図られる。最近の吸収式冷凍機の性能向上に付随した重量増加を抑えることができるゆえに、設備の置き替えの場合であっても機器の部分的な交換でも、従前の基礎をそのまま使用できるケースが増え、リニューアル費の高騰化を抑えることができる。
一方、運転形態について述べれば、図7に簡略化して示すように、運転中は同図(a)であった形状が、停止時には誇張して示した同図(b)のごとく薄鋼板35が変形する。これは、吸収液の加熱が停止された時点で冷媒蒸気の発生が止まり、胴内圧が一気圧近くあったところから真空圧に向かうように降下するからである。熱交換ゾーンは外筒の外部と同圧であるから、大気圧に挟まれる各ジャケットを画成する薄鋼板は面圧を受け、ジャケット容積を縮小させるのである。この状態は、次の運転が再開されるまで維持される。したがって、次の運転立ち上げから定格運転に至るまでは各ジャケットに滞留しかつ流通する吸収液量は少ない状態から徐々に増えていくものの、その間吸収液流通用ジャケットに新たに送り込まれる吸収液の量は少なくて済む。ジャケットでの吸収液加熱に費やすエネルギが少なくてもよいことになれば、高い伝熱性能を有する液管における加熱にエネルギを集中させることができる。加熱による冷媒蒸気の発生が急速に進めば、定格運転に入るまでに要する時間を短縮し、すなわち運転立ち上げの迅速化が図られる。
定格運転に入ったころには、冷媒蒸気の発生で胴内圧は所定値に達するから、薄鋼板35の内外圧差がなくなり、その時点で薄鋼板の形は同図(a)のように復元される。ジャケットにその容積相当の吸収液が流通し、かつ熱交換ゾーンから受ける加熱で所定量の吸収液の昇温も図られる。ちなみに、スペーサ26の取付位置は壁面板の強度上必要とされる間隔で与えられるが、上記した変形時にも通路としての空間を残しておくことを考慮して選定される。逆に言えば、スペーサ26は薄鋼板35が変形しても、通路27が狭くなり過ぎないようにも機能する。
なお、下壁ジャケット21を画成する壁面板に薄鋼板を適用することが可能な場合にはその全部もしくは一部を薄鋼板としておいてもよい。しかし、一般的には、下壁ジャケット21を画成する壁面板に薄鋼板が適用されることは多くない。図2に示すように、導入口31が外筒3の下壁16Bに設けられ、内筒2の下壁16Aには液管6の下端が固定されるからである。強いて言えば、内筒壁面に薄鋼板を適用できたとしても、外筒下壁は変形度の低い厚板材としておくべきである。それに関連して述べれば、上記では内筒と外筒のいずれの前壁、左壁、右壁にも薄鋼板を充てているが、内筒および外筒の少なくともいずれか一方を薄鋼板とし、他方は厚くして変形の生じないようにしておいてもよい。強度向上を図りやすくするなどのための厚鋼板の選定選択は、個々の機械ごとの仕様に基づいて決めればよい。
上記のスペーサは、例えば図1に示すように、フラットバー26Aとしておく。スペーサは、図1、図4の(a)や図5の(a)に示すように、各ジャケットにおける吸収液の流通路長よりやや短く選定される。例えば内筒2の右壁部で言えば壁高よりも短く、下壁部で言えば壁幅より短くされる。これは、下壁ジャケット21からの吸収液が前壁ジャケット22、左壁ジャケット23、右壁ジャケット24へ移行しやすくするためである。すなわち、外筒3の左右の下隅部29(図4を参照)で停滞しがちとなる吸収液に刺激を与えやすくしておき、また次通路への進入時の合流・分流を許容して、この部分で混合もできるようにしている。外筒下壁に設けられた導入口31で時として導入量差が生じても、その後に通過する通路での流通量の均等化や平準化が図られやすくなる。
フラットバーの幅は、ジャケット幅よりも大きいものが使用される。これはフラットバーとしてのスペーサは内筒2に固定しておくことで十分であるとはいえ、図3に示すように、外筒3にも確実に固定しておくためである。外筒に対して全周溶接するにあたり外筒内側のジャケットの狭隘な空間で連続して隅肉溶接するのは至難の技であるからで、背部を外筒3から突出させ、その突出部全周を作業容易な外部空間から隅肉溶接できるようにしている(全周溶接部36を参照)。もちろん、外筒壁には図示されないスリットが、フラットバーを挿通させるため予め形成される。なお、外筒は外観を和らげまた防塵するなどのために、保温材で取り巻いたうえで化粧ケース等(図示せず)で覆われる。
この溶接によって外筒3が内筒2に固定されることになるから、壁面板の厚みを増やさなくても耐圧性を高めておくことができる。したがって、無用な変形が抑止される意味でも、炉胴の溶接品質の確認のための加圧テストが行いやすくなる。多少の正圧にも耐える容器となるから、運転時の胴内圧が一気圧を少し上回る三重効用機に適用することもできる。壁面板厚を必ずしも上げなければならないというものでないから、外筒の壁面板の厚み増加ひいては重量増加も可及的に抑えられる。ちなみに、壁面板が元々厚くされている場合や二重効用機であるなど大気圧以下で稼働する場合には外筒との一体性が特に問題とならないことがあり、したがって、その場合には背部を外筒からあえて突出させる必要もない(図4中のスペーサ26を参照)。
吸収液流通用ジャケットには液管を上昇するのと同じ吸収液が流通するが、これは内筒壁の冷却用ジャケットとしての機能を発揮しつつ吸収液を加熱する。図4および図5に示したように、気液溜め9では液管6からの気液二相と冷却用ジャケット24等を流通した吸収液が合流するが、これらは内筒を通過する熱ガスにより加熱された上壁10によって再度加熱もしくは保温状態におかれる。熱交換効率は向上し、気液溜めにおける冷媒蒸気11の発生が安定的に持続される。なお、気液溜め9の冷媒蒸気は図3に示す導出口37を経て気液分離器8に至り、図示しない低温再生器の再生器管に送給され、そこでの冷媒蒸気の発生の熱源に供される。気液分離器8で分離された液滴は配管38を介するなどして、気液溜め9から堰越した濃吸収液出口箱39(図4の(a)を参照)の配管40を介して流出される濃吸収液とともに、高温熱交換器の放熱側へ送られる。ちなみに、気液分離器にはエリミネータにより冷媒蒸気を分離するものや、本例の図にあるようなサイクロン式セパレータ(内部構造は略す)としたものなどが使用される。
前壁、下壁、左壁、右壁の各ジャケットにスペーサが介在されるが、これによって複数の通路が画成される。このスペーサは各壁の補強作用を発揮するためスティフナの導入を完全もしくは一部排除し、壁面板の耐圧性を保持しまた高める。吸収液はこのスペーサに沿うように流通する結果、無秩序な斜行や交錯した流れの発生は抑止される。下壁ジャケット内に配置したスペーサによって画成された通路ごとに吸収液を高温熱交換器から受け入れるための導入口が設けられているから、吸収液流通用ジャケットでは吸収液が個々に連続して押し込み的に供給される。それゆえ、上昇流が断続することのない吸収液で内筒壁の焼損が防止される。それとともに、このジャケットは液管外にありながら気液溜めに向かう吸収液の加熱にも寄与する。内筒内に持ち込まれた熱エネルギが効率よく吸収液に転化される点で、高温再生器における熱エネルギ利用率も向上したものとなる。
下壁ジャケットの各通路に設けられた導入口から液管へも吸収液が連続して供給されることにより管内液の新陳代謝が積極的に図られ、液管内での空炊きの発生は管の断面形状を問わず回避され、伝熱面の腐食のおそれが取り除かれる。液管内では渦巻き状流動の発生を必要としなく、発生した冷媒蒸気と吸収液が二相化しても後続する吸収液で気液溜めに一次元的な流れとして押し上げられる。高温熱交換器から高温再生器に吸収液を送るポンプによって与えられた流動エネルギが、管内での対向液流により減殺されるということもない。吸収液流通用ジャケットにおける上昇流も同じように安定的に生じるから、高温再生器に吸収液を送るポンプの負担を増やすこともない。
以上詳細に構造ならびに作用等を述べたが、それから分かるように、高温再生器を内筒と外筒からなる二重胴構造としているから、熱交換ゾーンが形成された内筒を冷却するジャケットを周囲に設けやすくする。炉胴は角筒形であるから丸筒形胴に比べれば構成品の形状はシンプル化して製作が容易となりかつ軽量化も図りやすくなることは勿論のこと、据付けスペースの活用効率も高くすることができる。加熱される吸収液は液管内で気液二相化して浮上するから管路抵抗は問題とならず、また濃度が高まるといえども押し上げ流の追従による攪拌作用もあって析出物が管内に付着する余地も残さなくなる。
ところで、下壁ジャケットにおけるスペーサは、通路を形成する仕切りとなるが、下壁ジャケット内にスペーサを設けるにあたり、上記した例にかぎらず、前後方向に延びて通路を左右に幾つか形成させたり、スペーサをT字形や干字形配置にするなど、適宜選択することもできる。スペーサの存在によって剛性が上がり、スティフナを無くしたり少なくしておくことができるようにもなる。
溶接ビードについては、不連続にしておけば溶接量は少なくなるが、図2中の符号41の非溶接部分のようにフラットバーの端面を内筒壁に面接触しただけの状態におくことは好ましいことでない。非溶接部分41に吸収液が進入するからで、それが内筒壁の熱で結晶してしまう可能性が極めて高く、腐食の原因を残すことにもなるからである。したがって、内筒2への溶接においても図2中に示した全周溶接部42とすることも差し支えはない。一方、外筒3との溶接については、図3の全周溶接部36に代えて、図中に符号43で示した切欠きに肉盛りするプラグ溶接とすることもできる。スペーサによって内筒と外筒との一体性に如何ほどの剛性を与えておくかによって採否を決めればよいが、全周溶接する場合に比べれば溶接量を格段に減らすことは言うまでもない。フラットバーとしての鋼材の消費量も削減できる。
管内付着物発生の抑制ないしは回避によって保守が軽減される高温再生器となるが、その内筒で液管群に流される高温ガスはボイラ排ガスなどであると説明した。それはあくまでも吸収液を加熱する熱源であればよいことを意味するから、それに代えて、ガスタービンのジャケット冷却水といった排温水を使用することもできる。原理的には液体を流通させて吸収液を加熱するようにしていれば、特に問題が出るものでない。
図8は内筒2に、群をなして立設された液管6内の吸収液12を加熱する液管式熱交換ゾーン4のほかに、バーナ44の火炎45により高温の燃焼ガス46を発生させる燃焼ゾーン47も備えた例である。外部から高いエネルギの排ガス等を導入することができない場合でも、高温再生器を稼働させることができる。図9に示すように、燃焼ゾーン47を熱交換ゾーン4の上流側に位置してこれらが前後方向に連続し、原則的に燃焼ガス46を水平に流過させる。この燃焼ゾーンと熱交換ゾーンとはすでに述べた吸収液流通用ジャケット21,22,23,24および気液溜め9によって包囲されることになり、燃焼ゾーンから放散される熱エネルギの逸失面を存在させないようにしておくことができる。これによって、投入エネルギの活用度向上が図られることは言うまでもない。さらに、熱交換ゾーンと吸収液流通用ジャケットとは吸収液を積極的に上昇させる流れとしているから、それらを画成し構成する部材ならびにスペーサやその溶接部に及ぶ熱負荷は軽減されることにもなって極めて都合がよい。すなわち、吸収液が停滞することはないし、冷却用ジャケットとしても機能するからである。
図10は、スペーサをチャンネル状(溝形状)もしくはハット状の形鋼26Bとした例である。その溝形空間26aが内筒2の前壁15A、下壁16A、左壁17A、右壁18Aによって閉止されるように、形鋼は配設されている(図12もを参照)。このようにしておけば、溝形空間を通過する吸収液も内筒壁に直接触れ、スペーサの存在が原因となって熱交換性を低下させるようなことはない。なお、スペーサは各ジャケットにおける吸収液に対して伝熱面積を拡大させたようにも機能するから、ジャケットにおける熱交換率向上にも寄与する。とりわけ、スペーサをこの種の形鋼としておけば、吸収液流通量に制約を加えることもない。
その形鋼の背部は、図11に示すように外筒3にプラグ溶接しておく。そのため、外筒3の壁面板には溶接栓用切欠き48が予め形成され、そこに溶接肉盛が施される。この場合も壁面板が厚い場合や大気圧以下で常時稼働させる場合に形鋼を外筒3に溶接しておく必要性は乏しいが、壁面板として薄鋼板が使用される場合には、内筒2と外筒3との一体性が図られ、内外筒の溶接品質検査の際の無用の加圧変形を抑止しておくこともできる。言うまでもなく、炉殻の剛性向上は、外筒3のみならず内筒2の各壁面板の厚み増加も可及的に抑えられ、軽量化も図りやすくなる。このような固定構造にしておけば、炉胴溶接部の加圧漏れ検査も可能となるだけでなく、中間再生器も備えた三重効用機のように大気圧を少し越える胴内圧となる高温再生器にも適用可能となることは、前述の例と異ならない。
この場合も運転形態について述べれば、図7と同様の図12に示すように、運転中は同図(a)であったものが、吸収液の加熱を止めた後には同図(b)で示すように、その通路容積を縮小させるように薄鋼板35が変形する。運転立ち上げから定格運転に至るまでは各ジャケットが減容状態におかれる結果、その状態での吸収液の流通量は少なくしておくことができる。定格運転に至れば、上昇した胴内圧に基づいて容積が回復されるように薄鋼板の形を復元させることができる。ちなみに、フラットバーをスペーサとしたときに比べれば、壁面板の変形が若干少なくならざるを得ないが、逆に内筒壁の剛性は高めやすくなる。
図13は、図9の場合と同様に、内筒2に液管式熱交換ゾーン4のほかに燃焼ゾーン47も備える例である。すなわち、炉筒液管式直焚高温再生器であって、外部から高いエネルギの排ガス等を導入することができない場合でも、高温再生器として稼働させることができる。しかし、図9のところで述べた効果のほかに、チャンネル状もしくはハット状の形鋼26Bをスペーサとして使用している関係で、燃焼ゾーンの高温化に起因する熱変形の抑制効果がフラットバーの場合よりも向上したものとなる。図示はしないが、燃焼ゾーンには形鋼のスペーサを、熱交換器ゾーンにはフラットバーのスペーサを採用するということや、その逆配置を採用することもできる。伝熱作用や蓄熱効果なども考慮して採用を決めればよい。
スペーサを形鋼26Bとした場合でも図10のように不連続な溶接ビード33とし、その非溶接部分に切欠き34を与えて非密着部を形成しておくことは、フラットバーの場合と同様である。なお、図13中の符号41の非溶接部分を残さないようにするためにも、全周溶接部42とすることも必要となることがある。ちなみに、この形鋼のスペーサも下壁ジャケットにおける配置は、フラットバーのところで述べたごとくのバリエーションを採ることができるのは言うまでもない。溶接それ自体に触れるなら、アーク溶接される場合がほとんどであるが、それに代えて可能な場合にはろう付(鑞付け)とすることもできる。
ところで、本発明は、図14および図15に表されたごとく、冷媒蒸気を発生させることにより高温再生器で生じた濃吸収液を、吸収器に戻る前に通過する低温熱交換器の手前で、低温再生器から高温再生器に向かう中濃吸収液と高温熱交換器で熱交換させるリバースフロータイプの吸収式冷凍機を例にして説明した。しかし、図14のみの動作をする狭義の吸収冷温水機や、説明を省くがこの種装置ですでによく知られた吸収ヒートポンプの高温再生器にも、この角筒型を使用することができる。そして、二重効用機のみならず上ですでに触れた三重効用機での採用も排除されるものでない。
そのリバースフロータイプにかぎらず、冷媒蒸気を発生させることにより高温再生器で生じた濃吸収液を、低温再生器に向かう途中で、吸収器から低温熱交換器を経て高温再生器に向かう稀吸収液と高温再生器の手前の高温熱交換器で熱交換させるシリーズフロータイプで使用される高温再生器にも適用することができる。また、冷媒蒸気を発生させることにより高温再生器で生じた濃吸収液を、吸収器に戻る前に通過する低温熱交換器の手前で、吸収器から低温熱交換器を経た後に分岐して低温再生器および高温再生器に向かう稀吸収液のうち高温再生器に向かう稀吸収液と高温熱交換器で熱交換させるパラレルフロータイプで使用される高温再生器にも、特段の技術要素の付加を伴うことなく適用することができる。