<コントラスト向上シートの製造方法および製造装置>
先ず、実施形態におけるコントラスト向上シートの製造方法および製造装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図であり、図2は本実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図であり、図3は本実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図である。
まず、基材1上に、層厚方向断面において複数の溝2aが並設された光透過部2を形成する(図1(a))。図1(a)に示される溝2aは基材1側に向けて先細る略台形状となっている。溝2aは、略台形状に限られず、例えば、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。溝2aは基材1の長手方向に沿って延在している。光透過部2全体の幅は、500〜1500mmとすることが可能である。
基材1は、光透過部2や後述する光吸収部4を形成するためのベースとなる層である。基材1としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
この光透過部2の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部2を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、光透過部2を形成することができる。また、電離放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部2を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部2を連続的に製造することができる。
具体的には、例えば、図2に示されるように、所定ピッチで光透過部2の形に対応した形の溝を有する金型ロール10と、ニップロール11との間に基材1を送り込む。図2中の矢印は、基材1を送り込む方向を表したものである。基材1の送り込みに合わせて、金型ロール10と基材1との間に供給部12から例えば紫外線硬化型樹脂等を含む光透過部用組成物13の液滴を供給し続ける。供給部12から基材1上に光透過部用組成物13を供給するとき、金型ロール10と基材1との間に、光透過部用組成物13が溜まった組成物溜まり14が形成されるようにする。この組成物溜まり14を形成することによって、光透過部用組成物13が基材1の幅方向に広がる。
上記のようにして金型ロール10と基材1との間に供給された光透過部用組成物13は、金型ロール10とニップロール11との間の押圧力により、基材1と金型ロール10との間に充填される。その後、電離放射線照射装置15によって光透過部用組成物13に紫外線を照射し、光透過部用組成物13を硬化させて、光透過部2を形成する。光透過部2を形成した後、剥離ロール16を介して、金型ロール10から光透過部2を引き剥がす。
金型ロール10に送り込まれる基材1は、図3に示されるように粘着層6および剥離層7を備えていてもよい。粘着層6は、コントラスト向上シートを表示装置の表示部に接着させるためのものである。粘着層6に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シートを他に接着させることができれば、その材料は特に限定されるものではない。粘着剤としては、例えばアクリル系の共重合体を挙げることができる。
剥離層7は、取扱時に粘着層6が他に接触しないようにするためのものであり、粘着層6上に形成されている。剥離層7としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。
なお、次のインキ組成物の充填工程の前に、光透過部2の溝2aの表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。溝2aの表面に親水化処理を施すことにより、溝2aへインキ組成物をより充填し易くなり、インキ充填率が向上する。親水化処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ処理等のドライプロセスや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理等のウエットプロセスが挙げられる。これらの中でも、大気圧プラズマ処理が、製造効率の観点から好ましい。
基材1上に光透過部2を形成した後、溝2a内にインキ組成物3を充填する(図1(b))。図4は本実施形態に係るインキ組成物の充填工程の模式図であり、図5は図4の吸引管周辺を上流側から見た図であり、図6は図4における吸引管の吸引口と光透過部との位置関係を示した図である。図7は図4の吸引管を光透過部側から見た図であり、図8は図4の吸引管周辺を拡大した図である。図9は本実施形態に係る掻取部の断面図であり、図10は本実施形態に係る掻取部の側面図である。なお、図4、図5、図8〜図10中の矢印Aは光透過部2の移動方向を表すものであり、図4中の矢印Bはインキ組成物の循環方向を表すものである。
溝2a内へのインキ組成物3の充填は、図4に示されるコントラスト向上シートの製造装置20を用いて行うことができる。製造装置20は、搬送系30と、供給部40と、掻取部50と、インキ循環系60とを備えている。
搬送系30は、光透過部2を基材1ごと一方方向に搬送するためのものであり、搬送ロール等から構成されている。搬送系30のライン速度(搬送速度)は、インキ組成物3の供給速度にもよるが、1〜50m/分であることが好ましい。
供給部40は、インキ組成物3を光透過部2の表面2bに供給するためのものである。供給部40は、光透過部2の幅方向においてインキ組成物3を均一に供給できるものであることが好ましい。供給部40によるインキ組成物3の供給速度は、0.5〜10L/分であることが好ましい。
供給部40としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、またはナイフコーターが挙げられるが、これらの中でも、光透過部2の幅方向においてインキ組成物3を光透過部2の表面2bに均一に供給できるダイコーターが好ましい。
掻取部50は、供給部40によるインキ組成物3の供給位置よりも下流側に配置されている。掻取部50は、光透過部2の表面2b上に供給されたインキ組成物3を掻き取る掻取ブレード51、掻取ブレード51に取り付けられた当板54、掻取ブレード51を保持するホルダ55等を備えている。
本実施の形態では、掻取ブレード51は、2枚の掻取ブレードから構成されている。具体的には、図8および図9に示されるように掻取ブレード51は、第1の掻取ブレード52と、第1の掻取ブレード52による掻き取り後に光透過部2の表面2bに残るインキ組成物3をさらに掻き取る第2の掻取ブレード53とから構成されている。当板54は、第2の掻取ブレード53に取り付けられている。
第2の掻取ブレード53は、図8および図9に示されるように第1の掻取ブレード52よりも光透過部2の移動方向に対して下流側に配置される。また、第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53は、溝2aの延在方向と直交するように配置されている。
第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53は薄板状のものであり、第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53の厚さは約200μm程度とすることができる。第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53としては例えばドクターブレード等を用いることができる。
図8および図9に示されるように、第1の掻取ブレード52は、第1の掻取ブレード52の先端52aが光透過部2の表面2bに接触するように配置されており、第2の掻取ブレード53は、第2の掻取ブレード53の先端53aが光透過部2の表面2bから離間するように、ホルダ55の一部である後述する保持部56に保持されていることが好ましい。
第2の掻取ブレード53の先端53aは第1の掻取ブレード52の先端53aに対して0.25mm〜0.55mm突き出していることが好ましい。ここで、第2の掻取ブレード53の先端53aが、第1の掻取ブレード52の先端52aよりも0.25mm〜0.55mm突き出しているとは、図9に示される突き出し長さL1が0.25mm〜0.55mmであることを意味する。
図9に示される第1の掻取ブレード52と第2の掻取ブレード53との間の間隔dは、0.05〜2mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この間隔dが0.05mm未満であると、第1の掻取ブレード52と第2の掻取ブレード53が重なってしまい、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがある。またこの間隔dが2mmを超えると、第1の掻取ブレード52と第2の掻取ブレード53の間にインキ組成物3が詰まってしまい、ピッチスジの原因となるおそれがあるからである。
図9に示される光透過部2の表面2bに対する第1の掻取ブレード52の先端部52bおよび第2の掻取ブレード53の先端部53bの角度α、βは、40°〜70°であることが好ましく、50°〜65°であることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、角度α、βが40°未満であると、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがあるからであり、また角度α、βが70°を超えると、第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53による掻き取り効率は向上するものの、インキ組成物3に接触する第1の掻取ブレード52および第2の掻取ブレード53の面積が小さくなるので、黒スジ不良が発生するおそれがあるからである。
当板54は、図9に示されるように第2の掻取ブレード53における第1の掻取ブレード側の面とは反対側の面に取り付けられている。当板54を構成する材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼等を用いることができる。当板54の厚さは、150〜1000μmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、当板54の厚さが150μm未満であると、当板54の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれあるからであり、また当板54の厚さが1000μmを超えると、当板54の剛性が必要以上となり、第2の掻取ブレード53のしなりを利用することができなくなり、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからである。
当板54は、第2の掻取ブレード53における当板54により覆われていない部分の縦方向の長さ、すなわち図9に示される当板54の下端54aから第2の掻取ブレード53の先端53aまでの長さL2が1〜10mmとなるように配置されていることが好ましく、さらに3〜7mmとなるように配置されていることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、長さL2が1mm未満であると、当板54による剛性向上により第2の掻取ブレード53のしなりを利用することができなくなるため、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからであり、また長さL2が10mmを超えると、当板54の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれがあるからである。
ホルダ55は、図4に示されるように、掻取ブレード51等を保持する保持部56と、保持部56の幅方向における両方の端部に設けられ、保持部56の端部よりもインキ組成物3の掻き取り側、すなわち上流側に突き出た堰部57とを備えている。堰部57は、後述するインキ溜まり3aを保持するためのものである。堰部57を設けることにより、効率良くインキ溜まり3aを保持することができる。
堰部57は、図10に示されるように、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引口57aを有している。吸引口57aの直径は、10〜16mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この直径が10mm未満であると、インキ組成物3を吸引するのに多大な時間を要するからであり、またこの直径が16mmを超えると、過剰にインキ組成物3を吸引してしまうからである。
吸引口57aは堰部57の底面57bおよび内側側面のいずれかに形成されているが、インキ溜まり3aの液面安定性を考慮すると、堰部57の底面57bに形成されていることが好ましい。吸引口57aは外側側面57cに設けられた排出口57dと連通しており、吸引口57aから吸引されたインキ組成物3は排出口57dから排出されるようになっている。排出口57dには、インキ循環系60の吸引ホース64が接続されている。
また、図10に示されるように、吸引口57aが堰部57の底面57bに形成されている場合には、堰部57は、インキ溜まり3aの一部を吸引可能なように堰部57の底面57bと光透過部2の表面2bとの間に若干隙間を有するよう配置されることが好ましい。
インキ循環系60は、掻取ブレード51の上流側かつ前記掻取ブレード51の直近に形成されるインキ組成物3からなるインキ溜まり3aの一部を回収して、再び供給部40にインキ組成物3を供給するためのものである。
インキ循環系60は、図4に示されるように、吸引管61、吸引ホース63、64、エア吸引クリーナ等のクリーナ65、ダイアフラムポンプ等のポンプ66、67、混合タンク68、未使用インキ組成物貯留タンク69およびフィルタ70等を備えている。
吸引管61は、掻取ブレード51の上流側かつ掻取ブレード51の直近に形成されるインキ溜まり3aの一部を吸引するためのものである。
吸引管61は、図5および図6に示されるように吸引管61の長手方向Cが光透過部2の幅方向D(光透過部2の長手方向に直交する方向)となるように配置されている。ここで、本明細書において、「吸引管の長手方向が光透過部の幅方向となる」とは、厳密に吸引管の長手方向が光透過部の幅方向と一致している場合のみならず、吸引管の長手方向が光透過部の幅方向と若干ずれている場合も含まれる概念である。図5および図6においては、光透過部2の幅方向Dが略水平方向となっているので、吸引管61は、長手方向Cが略水平方向となるように配置されている。吸引管61の内径は10〜15mmとすることが可能である。
光透過部2の幅が500〜1500mmである場合、吸引管61の長手方向Cの長さは、光透過部2の幅より0mm〜200mm短いことが好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、吸引管61の長さが光透過部2の幅より200mm超短いと、吸引管61による吸引が不十分となるおそれがあるからであり、また吸引管61の長さが光透過部2の幅より長いと、吸引管61を伝ったインキ組成物3により製造ラインが汚染されるおそれがあるからである。
吸引管61は、図6および図7に示されるように外周面に長手方向Cに沿って設けられた複数の吸引口61aを有している。図6および図7に示される吸引口61aは、それぞれ、吸引管61の外周面における最も光透過部2の表面2bに近い位置に形成されているが、吸引口61aは、インキ溜まり3aの一部を吸引することができる位置に設けられていれば、吸引口61の位置は特に限定されない。
図6および図7に示される吸引口61aは等間隔に設けられているが、吸引管61の中央部から端部に向けて吸引口61aの間隔が広くなっていてもよい。また、図7に示される吸引口61aは円形状となっているが、吸引口61aの形状は、特に限定されず、円形状の他、例えば、楕円形状、四角状となっていてもよい。吸引口61aは、3箇所以上設けられていることが好ましい。
吸引管61は吸引口61aが光透過部2の表面2bに近接するように配置されていることが好ましい。ここで、本明細書においては、「近接」とは、光透過部2の表面2bに近い位置に吸引口61aがあるが、吸引口61aが光透過部2の表面2bに接触していないことを意味するものとする。
吸引管61は、図4および図5に示されるように吸引管61の端部に接続された吸引ホース63を介してクリーナ65に接続されている。吸引ホース63は、光透過部2の表面2bに触れないように取り回されている。また、排出口57dに接続されている吸引ホース64は、他端がクリーナ65に接続されている。吸引ホース63、64の直径は、特に限定されないが、約10〜15mmとすることが可能である。
クリーナ65は、吸引管61の吸引口61aおよび堰部57の吸引口57aを介して、インキ溜まり3aの一部を吸引するためのものであり、ポンプ66の前段に配置されている。ポンプ66は、クリーナ65内のインキ組成物3を搬送し、混合タンク68に送出するためのものである。混合タンク68は、回収された使用済みのインキ組成物3と、未使用インキ組成物貯留タンク69に貯留されている未使用のインキ組成物3bとを混合するためのものである。
混合タンク68においては、使用済みのインキ組成物3と、未使用のインキ組成物3bとは、混合比が1:4〜4:1となるように混合されることが好ましい。また、混合タンク68においては、混合後のインキ組成物3の粘度が好ましくは2500〜5000mPa・sとなるように、より好ましくは3000〜4000mPa・sとなるようにインキ組成物3の粘度が調整される。この数値範囲が好ましいとしたのは、インキ組成物3の粘度が2500mPa・s未満であると、溝2aにインキ組成物3が充填させることが困難となるおそれがあり、またインキ組成物3の粘度が5000mPa・sを超えると、インキ溜まり3aの一部を吸引することが困難となるおそれがある。
ポンプ67は、混合タンク68内の混合後のインキ組成物3を供給部40に送出するためのものであり、フィルタ70はポンプ67と供給部40との間に介在している。
次に、インキ組成物3について説明する。なお、未使用のインキ組成物3bもインキ組成物3と同様の組成となっている。インキ組成物3は、透明な電離放射線樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものである。電離放射線硬化型樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、視認性向上シートの光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択すればよい。
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
光吸収粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる光吸収粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
電離放射線硬化型樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
上記した各成分を含むインキ組成物3は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の光吸収粒子を混合し、所望により重合開始剤等を添加することにより調製される。光吸収粒子の添加量は、インキ組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れるコントラスト向上シートを実現することができる。光吸収粒子の含有量が少なすぎると、光吸収部の光遮光性が不十分となる場合があり、光吸収粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
このような製造装置20およびインキ組成物3を使用して、光透過部2の溝2aにインキ組成物3を充填する。
具体的には、まず、図4および図5に示されるように、供給部40および掻取部50に対して、搬送系30によりシート状の光透過部2を基材1ごと移動させながら、光透過部2の表面2bに供給部40からインキ組成物3を連続的に供給し、供給部40の下流に位置する掻取部50により光透過部2の表面2b上のインキ組成物3を掻き取る。これにより、溝2aにインキ組成物3が充填されるとともに、光透過部2の表面2bに存在する余剰のインキ組成物3が掻き取られる。
ここで、インキ組成物3の供給は、掻取ブレード51(第1の掻取ブレード52)の上流側かつ掻取ブレード51(第1の掻取ブレード52)の直近にインキ組成物3からなるインキ溜まり3aが形成されるように行われる。具体的には、インキ溜まり3aは、供給部40から比較的過剰にインキ組成物3を光透過部2の表面2bに供給することにより形成される。
また、供給部40によるインキ組成物3の供給および掻取部50によるインキ組成物3の掻き取りを行いながら、インキ溜まり3aの一部を、吸引管61の吸引口61aを介してクリーナ65により吸引する。また、同時に、インキ溜まり3aの一部を、堰部57の吸引口57aを介してクリーナ65により吸引する。吸引管61および堰部57の吸引口57aから吸引された使用済みのインキ組成物3は、ポンプ66により、混合タンク68に送られる。
混合タンク68に送られた使用済みのインキ組成物3は、混合タンク68にて、未使用のインキ組成物3bと混合され、その後、ポンプ67によりフィルタ70を介して供給部40に送られる。そして、再び、供給部40から光透過部2の表面2bに供給される。
溝2aにインキ組成物3を充填した後、電離放射線を放射して、溝2a内のインキ組成物3を硬化させて、略台形の断面形状を有する光吸収部4を形成する(図1(c))。これにより、コントラスト向上シート5が作製される。インキ組成物3の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
インキ溜まりを形成すると、時間が経つにつれてインキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度が上昇し、またはインキ溜まり中に粘度ムラが生じてしまい、これらが充填ムラおよびスジ不良の一因となると考えられる。これに対し、本実施形態によれば、インキ組成物3を連続的に供給しながら、インキ溜まり3aの一部を、吸引管61の吸引口61aを介して吸引するので、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の粘度上昇および粘度ムラを抑制することができる。これにより、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
インキ溜まりを構成するインキ組成物の粘度上昇は、インキ組成物の短寿命化引き起こすが、本実施形態によれば、インキ溜まり3aの一部を吸引しているので、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3の粘度上昇を抑制することができ、インキ組成物3の長寿命化を図ることができる。
本実施の形態によれば、長手方向Cが光透過部2の幅方向Dとなるように吸引管61を配置した状態で、外周面に長手方向Cに沿って設けられた複数の吸引口61aを介して、インキ溜まり3aの一部を吸引するので、堰部57に設けられた吸引口57aのみから吸引した場合に比べて、均一にインキ組成物3を吸引することができる。
さらに、本実施形態によれば、以下の理由から、特にピッチスジ不良および黒スジ不良をさらに低減することができる。
例えば、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.55mmを超えて突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードと光透過部の表面との間の隙間に、インキ組成物が滞留し、または詰まってしまい、インキ組成物の濃度ムラが形成され、これにより、光吸収部にピッチスジ不良が発生するおそれがある。
また、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm未満突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、光透過部上にインキ組成物が残存し、黒スジ不良が発生するおそれがある。
さらに、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm以上0.55mm以下突き出るように調整した場合であっても、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードが光透過部の表面に押し込まれた状態となるので、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、黒スジ不良が発生するおそれがある。
これに対し、本実施形態のように、第2の掻取ブレード53の先端53aを第1の掻取ブレード52の先端52aよりも0.25mm〜0.55mm突き出るように調整し、第1の掻取ブレード52の先端52aが光透過部2の表面2bに接触するように第1の掻取ブレード52を配置し、かつ第2の掻取ブレード53の先端53aが光透過部2の表面2bから離間するように第2の掻取ブレード53を配置した場合には、第1の掻取ブレード52と光透過部2の表面2bとの間の隙間におけるインキ組成物3の滞留または詰まりを低減することができる。これにより、ピッチスジ不良をより低減することができる。また、第2の掻取ブレード53には当板54が取り付けられているので、光透過部2の移動による第2の掻取ブレード53の移動を抑制することができ、第2の掻取ブレード53による掻き取り性を向上させることができる。これにより、黒スジ不良をより低減することができる。
<コントラスト向上シート>
上記のようにして得られたコントラスト向上シート5は、基材1と、基材1上に形成され、かつ複数の溝2aを有する光透過部2と、溝2a内に形成された光吸収部4とを備えている。
光吸収部4は、光透過部2の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部2と光吸収部4との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部2に入射した光源からの映像光を光吸収部4と光透過部2との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光透過部2と光吸収部4との境界面で反射せずに、光吸収部4の内側に入射した迷光が、光吸収部4中の光吸収材によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。
また、コントラスト向上シートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各コントラスト向上シートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目のコントラスト向上シートと2層目のコントラスト向上シートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や光吸収粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、1層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
本発明によるコントラスト向上シートは、従来の光学シートや視野角拡大部材に採用されている他の機能層を含んでいてもよい。具体的には、反射防止層、粘着層、電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、ハードコート層などを適宜組み合わせてもよい。これらの各機能層の積層順や積層数は、用途に応じて適宜決定することができる。
本発明によるコントラスト向上シートは、例えば、表示装置の表示部上に配置することができる。具体的には、コントラスト向上シートは、例えば、表示装置用光学フィルタとして使用することができる。表示装置の表示部としては、例えばプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プロジェクションテレビ等が挙げられる。
<表示装置用光学フィルタおよび表示装置>
以下、本発明によるコントラスト向上シートを表示装置用光学フィルタとして表示装置の表示部に取り付けた例について説明する。図11は本実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。図11に示される表示装置71は、上記した製造方法により製造されたコントラスト向上シート5を備えている。コントラスト向上シート5は、基材1が映像光源側となるように表示装置71の表示部72に接着層73を介して貼り付けられている。コントラスト向上シート5の前面側には、帯電防止層74、反射防止層75、防眩層76等が配置されている。なお、本実施の形態においては、コントラスト向上シート5の前面に帯電防止層74等が配置されているが、これらに限られず、電磁波、赤外線、またはネオン線を遮断する層を配置してもよい。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。本実施例においては、上記実施の形態と同様の方法でコントラスト向上シートを作製し、コントラスト向上シートの外観観察を行った。
(実施例)
<インキ組成物の調製>
光硬化型プレポリマーとして、エポキシアクリレートオリゴマーOxirane,2,2'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis-,homopolymer,2-propenoate20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化してインキ組成物を得た。
このインキ組成物の25℃での粘度は、4000mPa・sであった。なお、本発明において、粘度は、JIS K-5400の回転粘度計法に基づいて測定した。具体的には、株式会社東京計器製のBL型粘度計、No.4ロータを使用し、25℃で12rpm、1分後の粘度計の指示値を測定し、測定した粘度計指示値に換算乗数(本条件では500)を乗じた値を粘度とした。
なお、このインキ組成物の光吸収粒子を除いた組成物を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.547であった。
<光透過部用組成物の調整>
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化型プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)3質量部と、を混合し、均一化して光透過部用組成物を得た。
なお、この光透過部用組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
<コントラスト向上シートの作製>
上記、光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
次いで、実施形態で説明した製造装置を用いて、光透過部の溝にインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、掻取ブレードとしての金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、長手方向が光透過部の幅方向となるように長手方向の長さが1200mmの吸引管を配置した状態で、吸引管の外周面に設けられた吸引口を介して、エア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。この吸引口は、吸引管の長手方向に沿って、等間隔に、12箇所に設けられたものであった。また、ドクターブレードの両端に設けられた堰部の吸引口を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例1のコントラスト向上シートを作製した。
(比較例1)
まず、実施例と同様に、実施例の光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
次いで、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、掻取ブレードとしての金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行った。比較例1では、インキ溜まりは吸引しなかった。
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例1のコントラスト向上シートを作製した。
(比較例2)
まず、実施例と同様に、実施例の光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
次いで、15m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、7.5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、掻取ブレードとしての金属製のドクターブレードを用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、ドクターブレードの両端に設けられた堰部の吸引口を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例2のコントラスト向上シートを作製した。
外観観察
このようにして作製された実施例および比較例1、2のコントラスト向上シートの外観を観察して、充填ムラ、スジ不良の発生を確認した。なお、この評価の基準は以下の通りとした。
(1)充填ムラ
○:充填ムラが確認されなかった。
△:充填ムラが若干観察されたが、実用上問題のない程度であった。
×:充填ムラが多数確認された。
(2)スジ不良
○:スジ不良が確認されなかった。
△:スジ不良が若干確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:スジ不良が多数確認された。
以下、結果について述べる。
表1に示されるように比較例1に係るコントラスト向上シートは充填ムラおよびスジ不良ともに抑制できなかった。また、比較例2に係るコントラスト向上シートにおいては、充填ムラおよびスジ不良が若干観察された。これに対し、実施例に係るコントラスト向上シートには、充填ムラおよびスジ不良が観察されず、良好な状態であった。
これらの結果から、吸引管の長手方向が光透過部の幅方向となるように吸引管を配置した状態で、吸引管の長手方向に沿って設けられた複数の吸引口を介して、インキ溜まりの一部を吸引した場合には、充填ムラおよびスジ不良が低減できることが確認された。