以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、以下で説明する各実施形態では、本発明に係る充電式電動工具がヘッジトリマとして構成される場合を例示して説明するが、本発明は、ヘッジトリマ以外の従来公知の各種充電式電動工具に対しても適用可能である。
[第一の実施形態]
図1〜図5を用いて、第一の実施形態に係る充電式電動工具としてのヘッジトリマ10の構成を説明する。ここで、図1は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの正面、平面及び右側面を示す斜視図であり、図2は、第一の実施形態に係るヘッジトリマを背面側から見た場合の斜視図である。また、図3は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの平面図であり、図4は、図3中のA−A断面を示す縦断面右側面図である。さらに、図5は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの内部構造を説明するために一部の構成部材を省略した概略図である。
図1〜図5に示すように、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、ハウジング11と、ハウジング11の正面側に突出して取り付けられた工具としての刈刃部21と、を有して構成されている。
ハウジング11は、図4にて詳細に示されるように、刈刃部21の駆動源となるモータ31を収納するモータハウジング11aと、このモータハウジング11aとは別体で構成されるとともにユーザからの把持を受けるハンドル部12を有するハンドルハウジング11bとが、組み合わされることによって構成されている。モータハウジング11aとハンドルハウジング11bとは、ハンドルハウジング11bがモータハウジング11aの背面側の一部を覆うようにして接続される関係にあり、また、その接続部には防振部材が設置されているので、振動源となるモータ31や刈刃部21を備えるモータハウジング11aからの振動が、ユーザからの把持を受けるハンドル部12を有するハンドルハウジング11bに対して伝わることを極力防止できる構造が採られている。
モータハウジング11aの内部に設置されたモータ31は縦向きに配置されており、このモータ31が備える出力軸32の回転を、刈刃部21での水平方向の往復直線運動に変換するために、モータ31の下方位置には、伝動部33が設置されている。
伝動部33は、モータ31の出力軸32のピニオン32aに噛み合う歯車33aと、この歯車33aの回転を刈刃部21の往復直線運動に変換するカム装置とを有する。
歯車33aは、ピニオン32aよりも歯数の多い大歯車であり、その軸穴にはカム装置のカム軸33bがブッシュ33cを介して挿入されている。この歯車33aとピニオン32aは減速装置として機能し、歯車33aはモータ31の出力軸32よりも低速で回転する。
カム装置のカム33d1,33d2は、カム軸33bに遊嵌した状態で歯車33aの底面に止めピン34で固定され、歯車33aと一体で回転する。このカム33d1,33d2は、具体的には円盤カムであり、その中心軸がカム軸33bから偏るように歯車33aに固定されている。カム33d1,33d2は、後述する二枚の可動ブレード21a,21bに各々対応するように設けられ、互いに180度位相がずれるように配置される。また、カム33d1,33d2は、可動ブレード21a,21bの枚数に応じて設けられ、例えば可動ブレードが一枚の場合は一枚のカムのみ設けられる。
カム装置のカム軸33bは、歯車33aを上方に貫通し、モータ31の出力軸32と平行に並んで配置されている。この平行に並んだ箇所において、カム軸33bは、モータ31の出力軸32とともに軸受部材35を介してモータハウジング11aのリブ等の所定箇所に支持される。
軸受部材35は、カム軸33bとモータ31との間に掛け渡される固定部材であり、二つ割りのモータハウジング11aにより挟持されることにより、モータハウジング11a内に固定される。軸受部材35は、一般にアルミニウム合金等の金属で形成されるが、合成樹脂等で形成することもできる。軸受部材35には、カム軸33bの挿通される軸穴35aと、出力軸32を軸支するボールベアリング36と関係する押さえ部35bとが形成されている。このように、出力軸32とカム軸33bは、軸受部材35を介してモータハウジング11a内で一定間隔を保って平行に保持されるので、出力軸32のトルクはカム33d1,33d2に対して滑らかに伝達されることとなる。
一方、刈刃部21は、ブレード固定板22と可動ブレード21a,21bとブレード押え23とが重なり合った状態で、モータハウジング11aの底部から前方に向かって突出するように設置されている。
ブレード固定板22は、モータハウジング11aの底部に固定されており、このブレード固定板22の上側にスペーサ24及び固定ネジ25を介してブレード押え23が固定される。可動ブレード21a,21bは、ブレード固定板22とブレード押え23との間に挿入され、スペーサ24に刈刃部21の長さ方向に伸びる長孔を介して接する。可動ブレード21a,21bの後端には、各ブレードの幅方向に伸びる長孔24a,24bが穿設され、各長孔24a,24bにカム装置の各カム33d1,33d2が挿入される。カム33d1,33d2がカム軸33bを中心にして回転すると、カム33d1,33d2と長孔24a,24bとの摺接作用により可動ブレード21a,21bは相互に逆向きの往復直線運動を行う。この往復直線運動をする可動ブレード21a,21bにより、例えば、生け垣の植木等がトリミング可能となる。
さらに、第一の実施形態に係るハンドルハウジング11bには、上述したように、ユーザからの把持を受けるハンドル部12が形成されているが、このハンドル部12には、ユーザからの押圧/解放操作を受けることでモータ31の回転駆動を操作可能なスイッチであるトリガースイッチ13が設置されている。
このトリガースイッチ13は、ハンドルハウジング11b内に設けられたリブ形状に対してコイルばね13aを介して設置されており、常にはコイルばね13aの弾性力を受けて下方側(すなわち、ヘッジトリマ10の底面側)に突出して設けられている。そして、トリガースイッチ13がユーザからの押圧操作を受けると、この押圧力がコイルばね13aの弾性力に勝ることでトリガースイッチ13がハンドルハウジング11b内に押し込まれるので、トリガースイッチ13に形成されたスイッチノブ13bがハンドルハウジング11b内に設けられたマイクロスイッチ14の接点を押し、駆動源であるモータ31への電力供給が行われることとなる。
また、ユーザがトリガースイッチ13から手指を放すことで、トリガースイッチ13がユーザからの解放操作を受けると、コイルばね13aの弾性力によってトリガースイッチ13がハンドルハウジング11b内から下方側に突出する。すると、トリガースイッチ13に形成されたスイッチノブ13bとマイクロスイッチ14の接点との接触状態が開放されるので、駆動源であるモータ31への電力供給が停止されることとなる。
さて、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10では、ハンドルハウジング11bの背面側、すなわち、ハンドルハウジング11bにおける工具(刈刃部21)設置側とは逆側に、モータ31への電力供給を行うバッテリパック(不図示)が差込装着される差込部15が形成されている。第一の実施形態に係る充電式電動工具10の場合には、ニッカド電池を用いたバッテリパックを利用することを想定しているので、差込部15は、バッテリパック(不図示)を電動工具の前後方向に抜き差しすることができるように、前後方向に形成された穴形状とされている。
第一の実施形態に係る差込部15の内部には、バッテリパック(不図示)と電気的に接続するための接点15aが設置されており、この接点15aとトリガースイッチ13、及びモータ31が配線コードによって接続されることで、バッテリパック(不図示)内のニッカド電池に充電された電力が、モータ31へと送電できるようになっている。
ここで、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、上述したように、トリガースイッチ13とバッテリパック装着位置(差込部15)とが離れて配置されている。しかし、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、たとえトリガースイッチ13とバッテリパック装着位置(差込部15)とが離れて配置されていたとしても、バッテリパック13の挿入動作に伴うモータ31の誤動作を安定して防止することのできる新たな安全機構40が設置されている。
この安全機構40は、トリガースイッチ13と差込部15との間に設置されており、トリガースイッチ13が押圧された状態でバッテリパック(不図示)を差込部15に差込装着するときに、トリガースイッチ13の押圧状態を解放状態に変更できる機構として構成されたものである。具体的には、図4に示されるように、第一の実施形態に係る安全機構40は、トリガースイッチ13が押圧されたときに、トリガースイッチ13の押圧状態を維持するストッパ部43aを備えるストッパアーム43と、差込部15とストッパアーム43との間にスライド移動可能に設置されるスライドバー41と、を備えて構成されている。
ストッパアーム43は、ハンドルハウジング11b内に形成された不図示の軸穴に嵌め込まれる回動軸43bを回動中心として回動可能に形成されており、また、その回動範囲は、ハンドルハウジング11b内に形成されたリブ16によって規定されている。さらに、ストッパアーム43は、ハンドルハウジング11b内に形成された別のリブ17との間に設置されたコイルばね43cから常時弾性力を受けており、常にはトリガースイッチ13が設置された方向(すなわち、図4における紙面左方向)に弾性力を受けて押された状態となっている。そして、トリガースイッチ13がユーザからの押圧を受けてハンドルハウジング11b内の方向(すなわち、図4における紙面上方向)に押し込まれ、さらに、ユーザによりストッパアーム43の方向(すなわち、図4における紙面右方向)に移動させられると、トリガースイッチ13の下方側の端部がストッパアーム43のストッパ部43aに引っ掛かり、その後にユーザがトリガースイッチ13から手指を放したとしても、トリガースイッチ13はストッパアーム43の作用によって、押圧状態を維持することができるようになっている(後述する図6の状態参照。)。
一方、安全機構40を構成するもう一つの部材であるスライドバー41は、ヘッジトリマ10の前後方向に延びて形成される棒状の部材である。このスライドバー41は、その略中心部とハンドルハウジング11b内部とがコイルばね41aによって接続されており、常にヘッジトリマ10の背面方向に向けてこのコイルばね41aの弾性力が及ぼされている。また、図4からスライドバー41を取り除いた図である図5を見て明らかな通り、スライドバー41は、ハンドルハウジング11b内に形成された2つの溝形状42a,42bに対してスライドバー41が備える凸形状41b,41cをそれぞれ嵌め合わせて設置されている。2つの溝形状42a,42bについては、ヘッジトリマ10の背面側に位置する溝形状42aが長円形をした直線的な長溝形状であり、ストッパアーム43の先端位置近傍に位置する溝形状42bが一部に略菱形をした逃し部分を有した溝形状として形成されている。つまり、スライドバー41は、2つの溝形状42a,42bに凸形状41b,41cが案内されることで、スライド移動できるように構成されている。
よって、不図示のバッテリパックが差込部15に対して未装着の時には、図4に示すように、スライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)は、差込部15におけるバッテリパック(不図示)の差込装着経路上に位置している。またこのとき、スライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)は、ストッパアーム41から離れた箇所に位置している。
一方、不図示のバッテリパックが装着された時には、スライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)がバッテリパック(不図示)に押されることになるので、スライドバー41がヘッジトリマ10の前方方向にスライド移動するとともにスライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)がストッパアーム43を押すこととなる。このとき、ストッパ部43aによるトリガースイッチ13の押圧がされてモータ31への電力供給が可能となっている場合には、この状態を解除しなければバッテリパック(不図示)を装着した途端に刈刃部21が動作を始めてしまうので危険である。しかし、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10の場合には、前述したように、差込部15に対してバッテリパック(不図示)を装着しようとすると、その過程でスライドバー41がストッパアーム43を押すので、バッテリパック(不図示)からモータ31に対して電力が供給される前にストッパアーム43が有するストッパ部43aによるトリガースイッチ13の押圧状態の維持が解除され、トリガースイッチ13の押圧状態が解放状態に変更されることとなる。
このような安全機構40の構成は、たとえ第一の実施形態で示したように、トリガースイッチ13とバッテリパック装着位置である差込部15とが離れて配置されていたとしても、バッテリパック(不図示)の挿入動作に伴うモータの誤動作を安定して防止することができる機構であり、従来にはない構成と作用効果を備えたものである。
次に、上記した構成のヘッジトリマ10の動作について、図6〜図8を参照図面に加えて説明する。ここで、図6〜図8は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの動作過程を説明するための図である。
まず、トリガースイッチ13がユーザからの押圧を受けてハンドルハウジング11b内の方向に押し込まれると、トリガースイッチ13の下方側の端部がストッパアーム43のストッパ部43aに引っ掛かり、その後にユーザがトリガースイッチ13から手指を放したとしても、トリガースイッチ13はストッパアーム43の作用によって、押圧状態を維持することとなる(図6参照)。
このような状態から、バッテリパック61を差込部15に対して差し込むと、バッテリパック61の差込側の先端がスライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)を押すことになるので、図7に示すように、スライドバー41はヘッジトリマ10の前方側にスライド移動を行うこととなる。またこのとき、スライドバー41の凸形状41b,41cは、2つの溝形状42a,42bに沿って移動するが、特に、凸形状41cは溝形状42bの上側の溝に沿って移動する。さらに、図7の状態では、スライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)が、ストッパアーム43の先端部を押す直前の位置にまで移動している。
図7の状態から、さらにバッテリパック61を差し込んで差込部15に完全に装着すると、図8に示すように、スライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)がストッパアーム43の先端部を押すので、スライドバー41によって押されたストッパアーム43が回動してストッパ部43aによるトリガースイッチ13の保持状態が解除される。したがって、第一の実施形態では、差込部15に対してバッテリパック61を装着する過程で安全機構40が作用し、トリガースイッチ13の押圧状態が必ず解除されるので、安全性を確実に維持することが可能である。
なお、バッテリパック61を差込部15から抜く場合、スライドバー41はヘッジトリマ10の後方側にスライド移動を行うこととなるが、このとき、スライドバー41の凸形状41b,41cは、2つの溝形状42a,42bに沿って移動するとともに、特に、前方側にある凸形状41cは溝形状42bの略菱形をした逃し部分を通って移動できるので、スライドバー41は、ストッパアーム43に係止することなく図6で示された状態に復帰することが可能となっている。
図8で示したようにバッテリパック61が装着されると、トリガースイッチ13を押しこむことでモータ31への電力供給が開始される。モータ31が起動すると、その出力軸32の回転がピニオン32aと歯車33aとの噛み合いを介し減速され、歯車33aと一体のカム33d1,33d2がモータ31の出力軸32の回転する速度よりも少ない速度で回転する。カム33d1,33d2は、可動ブレード21a,21bの長孔24a,24b内で回転し、カム33d1,33d2と長孔24a,24bとの摺接により、可動ブレード21a,21bが互いに逆向きにヘッジトリマ10の前後方向に往復直線運動を行う。往復直線運動をする可動ブレード21a,21bにより、例えば、植木等のトリミングが可能となる。
以上、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10の具体的な構成と動作を説明した。上述したヘッジトリマ10については、ニッカド電池を用いたバッテリパックを利用することを想定していたので、第一の実施形態に係る差込部15は、バッテリパックを電動工具の前後方向に抜き差しすることができるように、前後方向に形成された穴形状とされているものであった。したがって、第一の実施形態に係るスライドバー41は、バッテリパック61の差込方向と略平行方向にスライド移動可能である構成を有するものであった。
しかしながら、本発明に係る安全機構を備える充電式電動工具は、バッテリパックを電動工具の前後方向に抜き差しする構成のみではなく、バッテリパックを電動工具の上下方向にスライドさせて抜き差しする構成のものに対しても適用可能である。すなわち、スライドバーが、バッテリパックの差込方向と略垂直方向にスライド移動可能である構成も実現可能である。そこで、図9〜図11を用いることで、バッテリパックを電動工具の上下方向にスライドさせて抜き差しする場合の構成例である、第二の実施形態に係るヘッジトリマ90についての説明を行うこととする。
[第二の実施形態]
図9は、第二の実施形態に係るヘッジトリマを背面、正面及び左側面から見た場合の斜視図である。また、図10は、第二の実施形態に係るヘッジトリマの内部構造を説明するために、右側面側のハウジングを取り外した状態を示した右側面図である。さらに、図11は、第二の実施形態に係るヘッジトリマの内部構造を説明するために一部の構成部材を省略した概略図である。なお、以下の説明では、上述した第一の実施形態に係るヘッジトリマ10と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
図9に示すように、第二の実施形態に係るヘッジトリマ90は、バッテリパックを電動工具の上下方向にスライドさせて抜き差しすることができる差込部95を有して構成されている。この差込部95については、リチウム−イオン電池用のバッテリパックが装着されることを想定したものである。
さて、第二の実施形態に係るヘッジトリマ90が有する安全機構100は、トリガースイッチ13と差込部95との間に設置されており、トリガースイッチ13が押圧された状態でバッテリパック(不図示)を差込部95に差込装着するときに、トリガースイッチ13の押圧状態を解放状態に変更できる機構として構成されたものである。具体的には、図10に示されるように、第二の実施形態に係る安全機構100は、トリガースイッチ13が押圧されたときに、トリガースイッチ13の押圧状態を維持するストッパ部43aを備えるストッパアーム43と、ストッパアーム43に対して接離可能であるとともにヘッジトリマ90の前後方向で往復スライド運動可能に設けられるスライドバー41と、差込部95とスライドバー41との間にあってヘッジトリマ90の上下方向にスライド移動可能に設置される第二スライドバー141と、を備えて構成されている。
ストッパアーム43とスライドバー41とは、上述した第一の実施形態と同様の構成を有するとともに同様の作用を発揮する部材である。すなわち、ストッパアーム43は、ハンドルハウジング11b内に形成された不図示の軸穴に嵌め込まれる回動軸43bを回動中心として回動可能に形成されており、また、その回動範囲は、ハンドルハウジング11b内に形成されたリブ16によって規定されている。さらに、ストッパアーム43は、ハンドルハウジング11b内に形成された別のリブ17との間に設置されたコイルばね43cから常時弾性力を受けており、常にはトリガースイッチ13が設置された方向(すなわち、図10における紙面左方向)に弾性力を受けて押された状態となっている。そして、トリガースイッチ13がユーザからの押圧を受けてハンドルハウジング11b内の方向(すなわち、図10における紙面上方向)に押し込まれ、さらに、ユーザによりストッパアーム43の方向(すなわち、図10における紙面右方向)に移動させられると、トリガースイッチ13の下方側の端部がストッパアーム43のストッパ部43aに引っ掛かり、その後にユーザがトリガースイッチ13から手指を放したとしても、トリガースイッチ13はストッパアーム43の作用によって、押圧状態を維持することができるようになっている(後述する図12の状態参照。)。
また、スライドバー41は、ヘッジトリマ90の前後方向に延びて形成される棒状の部材である。このスライドバー41は、その略中心部とハンドルハウジング11b内部とがコイルばね41aによって接続されており、常にヘッジトリマ90の背面方向に向けてこのコイルばね41aの弾性力が及ぼされている。また、図10からスライドバー41を取り除いた図である図11を見て明らかな通り、スライドバー41は、ハンドルハウジング11b内に形成された2つの溝形状42a,42bに対してスライドバー41が備える凸形状41b,41cをそれぞれ嵌め合わせて設置されている。2つの溝形状42a,42bについては、ヘッジトリマ90の背面側に位置する溝形状42aが長円形をした直線的な長溝形状であり、ストッパアーム43の先端位置近傍に位置する溝形状42bが一部に略菱形をした逃し部分を有した溝形状として形成されている。つまり、スライドバー41は、2つの溝形状42a,42bに凸形状41b,41cが案内されることで、スライド移動できるように構成されている。
さらに、第二スライドバー141は、スライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)と接触するとともに、差込部95における不図示のバッテリパックの装着経路上に突出/退避自在な部材である。第二スライドバー141の外形は、スライドバー41と接触する箇所が上下方向に広がり前方方向を向く平面として構成されており、また、差込部95側に位置する箇所が2つの略三角形をつなげたような形状をした部材である。この第二スライドバー141についても、スライドバー41と同様にその略中心部とハンドルハウジング11b内部とがコイルばね141aによって接続されており、常にヘッジトリマ90の背面側の上方方向に向けてこのコイルばね141aの弾性力が第二スライドバー141に対して及ぼされた状態となっている。また、図10から第二スライドバー141を取り除いた図である図11を見て明らかな通り、第二スライドバー141は、ハンドルハウジング11b内に形成された2つの溝形状142a,142bに対してスライドバー41が備える凸形状141b,141cをそれぞれ嵌め合わせて設置されている。2つの溝形状142a,142bについては、各々が長円形をした直線的な長溝形状として形成されている。つまり、第二スライドバー141は、2つの溝形状142a,142bに凸形状141b,141cが案内されることで、スライド移動できるように構成されている。
よって、不図示のバッテリパックが差込部95に対して未装着の時には、図10に示すように、第二スライドバー141の一端側(すなわち、背面側の部位)は、差込部95におけるバッテリパック(不図示)の差込装着経路上に位置している。またこのとき、第二スライドバー141の他端にある前方方向を向いた平面(すなわち、正面側の面)は、スライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)と接触するとともにスライドバー41に対して押圧力を及ぼさない状態となっている。
一方、不図示のバッテリパックが装着された時には、第二スライドバー141の一端側(すなわち、背面側の部位)がバッテリパック(不図示)に押されることになるので、第二スライドバー141がヘッジトリマ90の前方方向にスライド移動するとともに第二スライドバー141の他端にある前方方向を向いた平面(すなわち、正面側の面)がスライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)を押すこととなる。第二スライドバー141からの押圧力を受けたスライドバー41は、ヘッジトリマ90の前方方向にスライド移動するとともにスライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)がストッパアーム43を押すこととなる。このとき、ストッパ部43aによるトリガースイッチ13の押圧がされてモータ31への電力供給が可能となっている場合には、この状態を解除しなければバッテリパック(不図示)を装着した途端に刈刃部21が動作を始めてしまうので危険である。しかし、第二の実施形態に係るヘッジトリマ90の場合には、前述したように、差込部95に対してバッテリパック(不図示)を装着しようとすると、その過程で第二スライドバー141がスライドバー41を押し、さらに第二スライドバー141から押されたスライドバー41がストッパアーム43を押すので、バッテリパック(不図示)からモータ31に対して電力が供給される前にストッパアーム43が有するストッパ部43aによるトリガースイッチ13の押圧状態の維持が解除され、トリガースイッチ13の押圧状態が解放状態に変更されることとなる。
このような安全機構100の構成は、たとえ第二の実施形態で示したように、トリガースイッチ13とバッテリパック装着位置である差込部95とが離れて配置されていたとしても、バッテリパック(不図示)の挿入動作に伴うモータ31の誤動作を安定して防止することができる機構であり、従来にはない構成と作用効果を備えたものである。
次に、上記した構成のヘッジトリマ90の動作について、図12〜図14を参照図面に加えて説明する。ここで、図12〜図14は、第二の実施形態に係るヘッジトリマの動作過程を説明するための図である。
まず、トリガースイッチ13がユーザからの押圧を受けてハンドルハウジング11b内の方向に押し込まれると、トリガースイッチ13の下方側の端部がストッパアーム43のストッパ部43aに引っ掛かり、その後にユーザがトリガースイッチ13から手指を放したとしても、トリガースイッチ13はストッパアーム43の作用によって、押圧状態を維持することとなる(図12参照)。
このような状態から、バッテリパック161を差込部95に対して差し込むと、バッテリパック161の差込側が第二スライドバー141の一端側(すなわち、背面側の部位)を押すことになるので、図13に示すように、第二スライドバー141はヘッジトリマ90の前方側に向けてスライド移動を行うこととなる。またこのとき、第二スライドバー141の凸形状141b,141cは、2つの溝形状142a,142bに沿って移動するので、第二スライドバー141は、ヘッジトリマ90の前方側に向けてスムーズにスライド移動を行うことができる。
第二スライドバー141がスライド移動すると、第二スライドバー141の他端にある前方方向を向いた平面(すなわち、正面側の面)がスライドバー41の一端側(すなわち、背面側の端部)を押すので、スライドバー41についてもヘッジトリマ90の前方側に向けてスライド移動を行うこととなる。なお、図13の状態では、スライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)が、ストッパアーム43の先端部を押す直前の位置にまで移動している。
図13の状態から、さらにバッテリパック161を差し込んで差込部95に完全に装着すると、図14に示すように、第二スライドバー141に押されたスライドバー41の他端側(すなわち、正面側の端部)がストッパアーム43の先端部を押すので、スライドバー41によって押されたストッパアーム43が回動してストッパ部43aによるトリガースイッチ13の保持状態が解除される。したがって、第二の実施形態では、差込部95に対してバッテリパック161を装着する過程で安全機構100が作用し、トリガースイッチ13の押圧状態が必ず解除されるので、安全性を確実に維持することが可能となっている。
なお、バッテリパック161を差込部95から抜く場合、第二スライドバー141は後方側に向けてスライド移動するので、当然にスライドバー41はヘッジトリマ90の後方側にスライド移動を行うこととなるが、このとき、スライドバー41の凸形状41b,41cは、2つの溝形状42a,42bに沿って移動するとともに、特に、凸形状41cは溝形状42bの略菱形をした逃し部分を通って移動するので、スライドバー41は、ストッパアーム43に接触することなく図12で示された状態に復帰することが可能となっている。
図14で示したようにバッテリパック161が装着されると、トリガースイッチ13を押しこむことでモータ31への電力供給が開始される。モータ31が起動すると、その出力軸32の回転がピニオン32aと歯車33aとの噛み合いを介し減速され、歯車33aと一体のカム33d1,33d2がモータ31の出力軸32の回転する速度よりも少ない速度で回転する。カム33d1,33d2は、可動ブレード21a,21bの長孔24a,24b内で回転し、カム33d1,33d2と長孔24a,24bとの摺接により、可動ブレード21a,21bが互いに逆向きにヘッジトリマ90の前後方向に往復直線運動を行う。往復直線運動をする可動ブレード21a,21bにより、例えば、植木等のトリミングが可能となる。
以上、第二の実施形態に係るヘッジトリマ90の具体的な構成と動作を説明した。上述したヘッジトリマ90については、リチウム−イオン電池を用いたバッテリパックを利用することを想定していたので、第二の実施形態に係る差込部95は、バッテリパックを電動工具の背面側で上下方向に抜き差しすることができるように構成されたものであった。このように、本発明に係る安全機構は、どのような形態の充電式電動工具であっても、適用することが可能である。
また、上述した第一及び第二の実施形態では、スライドバー41がバッテリパック61,161の差込方向に対して略平行又は略垂直方向にスライド移動可能である場合を例示して説明したが、本発明の安全機構を構成するスライドバーのバッテリパック差込方向に対するスライド移動方向については、傾いた方向にスライド移動可能であるように構成することも可能である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、上述した第一及び第二の実施形態で示したスライドバー41とストッパアーム43については、別部材で構成される場合を例示したが、この2部材については、リンク接続した状態とすることもできる。すなわち、図15及び図16に示すように、スライドバー41とストッパアーム43とをジョイント部151によりリンク接続し、また、スライドバー41が有する凸形状152をハウジング側に形成された溝形状153に嵌め合わせることで、上述した第一の実施形態と同様の作用効果を発揮することのできる安全機構を実現することができる。具体的には、バッテリパック61装着前である図15の状態から、図16に示すようにバッテリパック61を装着すると、バッテリパック61からの押圧力を受けたスライドバー41は、溝形状153に案内される凸形状152の作用によって一旦充電式電動工具の前方向(すなわち、図15の紙面右方向)に移動した後に、バッテリパック61に乗り上げてバッテリパック61の挿入経路を避けた位置に移動することとなる。この移動過程で、スライドバー41とリンク接続するストッパアーム43も充電式電動工具の前方向(すなわち、図15の紙面右方向)に回動するので、ストッパ部43aによるトリガースイッチ13の押圧状態の維持が解除され、トリガースイッチ13の押圧状態が解放状態に変更されることとなる。
また例えば、図15及び図16で例示したリンク接続されるスライドバー41及びストッパアーム43については、2つのコイルばね41a,43cを有していた。しかしながら、リンク接続されるスライドバー41及びストッパアーム43は、一体化された部材であるので、図17で示すように、1つのコイルばね171を用いて構成しても、図15及び図16で例示した場合と同様の作用効果を発揮することができる。この場合、1つのコイルばね171は、スライドバー41に対して斜めに傾けて設置することになる。図17で示す構成例の場合、構成部品であるコイルばねを1つに削減することができるので、コスト削減効果を得られる点で好適である。
さらに例えば、本発明に係る安全機構の別形態として、図18に示す構成を採用することができる。この形態例は、上述したスライドバー41及びストッパアーム43を一体化部材として1つのL字形部材181とし、このL字形部材181が回動できるようにハウジングに対して回動軸181aを介して接続する。また、このL字形部材181には、トリガースイッチ13の押圧状態を維持するストッパ部181bが形成されるとともにコイルばね181cが設置されているので、上述した第一及び第二の実施形態で示したスライドバー41及びストッパアーム43と同様の作用効果を発揮することができる。さらに、図18に示すL字形部材181には、バッテリパック186に形成された突起186aと係合するための回動レバー182が設置されている。この回動レバー182は、L字形部材181に対して回動軸182aを介して回動自在に接続されるとともに、L字形部材181と回動レバー182との間にはコイルばね182bが設置されており、さらに回動レバー182には回動範囲を規制するための回動ストッパ182cが設置されている。したがって、回動レバー182は、バッテリパック186から押された時には回動ストッパ182cの作用によって回動せず、バッテリパック186からの押圧力はダイレクトにL字形部材181に伝わるので、L字形部材181は回動軸181aを回動中心として図18の紙面に対して時計回りに回動するので、ストッパ部181bによるトリガースイッチ13の規制が解除されることとなる。一方、バッテリパック186を抜くときには、バッテリパック186に形成された突起186aが回動レバー182をヘッジトリマの背面方向に押すが、回動レバー182はL字形部材181に対する紙面時計回りの回動を規制されていないので、バッテリパック186はスムーズに抜き取ることが可能である。
また例えば、図1〜図18で例示した充電式電動工具であるヘッジトリマ10,90では、ユーザからのオン/オフ操作を受けるスイッチが、トリガースイッチ13として構成される場合を例示して説明した。しかしながら、本発明に係る充電式電動工具が備えるスイッチについては、スライドスイッチを採用することも可能である。具体的には、図19に示すように、ハンドルハウジング11bに対してシーソー式のスライドスイッチ191を設けることができる。このシーソー式のスライドスイッチ191は、図19における紙面左側に位置するときにはスライドスイッチ191に連設されたスライドスイッチノブ191aがマイクロスイッチ14から離れており、マイクロスイッチ14はオフ状態となっている。一方、シーソー式のスライドスイッチ191が、図19における紙面右側に位置するときにはスライドスイッチ191に連設されたスライドスイッチノブ191aがマイクロスイッチ14に接触し、マイクロスイッチ14をオン状態とするように構成されている。さらに、このマイクロスイッチ14は、図19における紙面右側にスライド移動されるとともに、ユーザによって移動方向の先端部分を紙面下方側に押し込まれることによって、ストッパアーム43に形成されたストッパ部43aに係合するので、スライドスイッチ191によるマイクロスイッチ14の押圧状態(すなわち、オン状態)が維持されることとなる(図19の状態参照。)。このような状態から、バッテリパック61を差込部に差し込んで装着しようとすると、その差込過程において、バッテリパック61はスライドバー41の一端側(すなわち、紙面左側の端部)を押すことになるので、スライドバー41の他端側(すなわち、紙面右側の端部)がストッパアーム43の先端部を押し、さらに、スライドバー41によって押されたストッパアーム43が回動して、ストッパ部43aによるスライドスイッチ191の保持状態が解除されることとなる。つまり、図19で示す実施形態であっても、差込部に対してバッテリパック61を装着する過程で安全機構40が作用し、スライドスイッチ191のオン状態が必ず解除されるので、安全性を確実に維持することが可能な充電式電動工具を実現することが可能となっている。
なお、図19で例示したスライドスイッチ191については、ストッパアーム43に形成されたストッパ部43aによってオン状態が維持される形態を有していたが、例えば図20で例示するスイッチの場合には、オン状態を維持する機構が設置されていない。しかしながら、このような構成のスイッチに対しても、本発明に係る安全機構は適用可能である。すなわち、図20で示されるスライドスイッチ201は、スイッチノブ201aが図20における紙面の右側に移動しているときにはオン状態となり、スイッチノブ201aが図20における紙面の左側に移動しているときにはオフ状態となるように構成されている。そして、スイッチノブ201aがオン状態となっているときに、バッテリパック61を差込部に差し込んで装着する過程において、バッテリパック61はスライドバー41の一端側(すなわち、紙面左側の端部)を押すことになるので、スライドバー41の他端側(すなわち、紙面右側の端部)がストッパアーム43の先端部を押し、さらに、スライドバー41によって押されたストッパアーム43が回動することになる。ストッパアーム43が回動すると、ストッパアーム43がスイッチノブ201aを押してスイッチノブ201aが紙面の左側に移動することになるので、スライドスイッチ201はオフ状態となる。つまり、図20で示す実施形態であっても、差込部に対してバッテリパック61を装着する過程で安全機構40が作用し、スライドスイッチ201のオン状態が必ず解除されるので、安全性を確実に維持することが可能な充電式電動工具を実現することが可能である。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。