JP5754105B2 - 反射防止フィルム用組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、このような複数層を用いる技術においても幾つかの問題点があった。まず第1に、反射防止効果に優れた複数層を形成するには、通常、真空蒸着法などを用いて成膜する必要があるため、表示装置を製造するに際して真空設備を備えることが必要となってしまうという問題点があった。また、真空蒸着法では、成膜時間も長時間になるのが一般的であったことから製造効率の問題も指摘されていた。特に周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては高い反射防止性能が要請されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があり、製造コストが著しく高くなってしまうという問題点があった。
第2に、技術的観点からしても複数層による反射防止技術は光の干渉現象を利用するものであるため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響してしまい、望みどおりの反射防止効果を得ることが困難であるという問題点があった。
なお、上記モスアイ構造に用いられる凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形などの錐形体が一般的である。
光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、
前記潤滑剤が、HLB値が10で、動粘度が910mm 2 ・s −1 〜1600mm 2 ・s −1 であるエチレンオキサイド単位及びプロピレンオキサイド単位を含むポリエーテル変性シリコーンオイルであり、前記潤滑剤の含有量が、前記光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して0.3質量部〜1.0質量部の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム用組成物を提供する。
また、本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いることにより、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、上記反射防止フィルムを製造する際、表面に複数の微細孔を有する金型(以下、単に金型と称して説明する場合がある。)を用い、上記反射防止フィルム用組成物からなる反射防止層に微細凹凸を賦型し、上記金型および上記反射防止層を剥離する工程において、上記金型および反射防止層を容易に剥離することができるので、上記反射防止フィルムの製造工程を容易な工程とすることができる。
また、本発明の反射防止フィルムは、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、容易な製造工程で製造することが可能となる。
まず、本発明の反射防止フィルム用組成物について説明する。
本発明の反射防止フィルム用組成物は、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、上記反射防止層を形成する際に用いられ、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とするものである。
なお、以下の説明においては、上記モスアイ構造を有する反射防止フィルムを、単に反射防止フィルムと称して説明する場合がある。
HLB値=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは新油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。
また、上記反射防止フィルムは上記反射防止層の耐擦傷性が十分ではない場合が多く、上記反射防止フィルムを表示装置に用いた場合、上記反射防止フィルムの反射防止層に傷がつくことにより、所望の反射防止機能を発揮することが困難である場合があるといった問題があった。
ここで、変性シリコーンオイルの新油性および親水性は、変性シリコーンオイル中に含まれるエチレンオキサイド(EO)およびプロピレンオキサイド(PO)に影響されるものであり、EO比率が大きくなるほど親水性を示し、PO比率が大きくなるほど親油性を示すものである。また、上述したように、変性シリコーンオイルのHLB値は、変性シリコーンオイルの親水性または新油性の大きさを示す値であり、HLB値が小さいほど新油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなることを示すものであることから、HLB値が小さいほど変性シリコーンオイル中のPO比率が大きくなり、HLB値が大きくなるほど変性シリコーンオイル中のEO比率は大きくなる。
また、ここで変性シリコーンオイル中に含まれるプロピレンオキサイドは、重合しやすい性質があり、また銀、銅等の金属に触れた場合、よりその重合は促進されやすくなる。そのため、変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲に満たない場合は、変性シリコーン中のPO比率が大きくなることから、金属表面でプロピレンオキサイドが重合し、変性シリコーンオイルを含む樹脂が金属表面に残存するため、反射防止フィルムの離型性が低下することが考えられる。
一方、変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲を超える場合は、変性シリコーンオイル中のEO比率が高くなることから親水性は大きくなるが、新油性が消失し、反射防止フィルムのすべり性が低下するため、耐擦傷性が低下することが考えられる。
また、本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いることにより、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、上記反射防止フィルムを製造する際、金型を用い、上記反射防止フィルム用組成物からなる反射防止層に微細凹凸を賦型し、上記金型および上記反射防止層を剥離する工程において、上記金型および反射防止層を容易に剥離することができるので、上記反射防止フィルムの製造工程を容易な工程とすることができる。
以下、本発明の反射防止フィルム用組成物に用いられる各成分について説明する。
本発明に用いられる潤滑剤は、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルである。また、上記潤滑剤は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層表面の潤滑性を向上させることによって、耐擦傷性を向上させるために用いられるものである。また、上記潤滑剤は、上記反射防止層表面の潤滑性を向上させることにより、上記反射防止層の離型性を向上させるためにも用いられる。
動粘度(mm2・s−1)=粘度計定数×流出時間(秒)
本発明においては、なかでも、上記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることが好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることにより、上記反射防止層の離型性および耐擦傷性をより優れたものとすることができる。
次に本発明に用いられる光硬化性アクリル樹脂について説明する。
次に、本発明に用いられる光重合開始剤について説明する。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて反射防止層を製造することができるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な反射防止フィルムの製造の際に用いられる光重合開始剤と同様とすることができる。具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等が挙げられる。
本発明の反射防止フィルム用組成物は、上述した潤滑剤、光硬化性アクリル樹脂、および光重合開始剤を含有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な成分を適宜追加することが可能である。このような成分としては、例えば、スリップ剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらの成分については、一般的な樹脂製部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の反射防止フィルムについて説明する。
本発明の反射防止フィルムは、上記「A.反射防止フィルム用組成物」の項で説明した反射防止フィルム用組成物を用いて形成されていることを特徴とするものである。
図1に示すように、本発明の反射防止フィルム10は、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層2とを有するものである。
また、本発明の反射防止フィルムは、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、容易な製造工程で製造することが可能となる。
以下、本発明の反射防止フィルムの各部材についてそれぞれ説明する。
本発明に用いられる反射防止層は、後述する光透過性基板上に形成されるものであり、その表面に複数の微細凹凸を有するものである。
また、上記反射防止層は、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有し、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルである反射防止フィルム用組成物を用いて形成されるものである。
なお、図2は、本発明の反射防止フィルムの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、錐形の構造物が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図1におけるP、Q、およびRで表される距離を指すものである。
なお、上記周期の微細凹凸はすべて規則性があるのではなく、単位面積におけるピッチの平均値を指すものとする。
なお、上記間隔はすべての微細孔において均一ではない場合があるが、その場合における上記間隔は、単位面積あたりに形成された微細孔間の平均距離を指すものとする。
次に、本発明に用いられる光透過性基板について説明する。本発明に用いられる光透過性基板は上述した反射防止層を支持するものであり、上記反射防止層と相まって本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
ここで、上記光透過率は、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
なお、本発明に用いられる光透過性基板の屈折率の値は、上述した硬化性樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから特に好ましい値はないが、通常1.30〜1.70の範囲内とされる。
本発明の反射防止フィルムは、上述した反射防止層および光透過性基板を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な反射防止フィルムを適宜選択して用いることが可能である。このような部材としては、例えば、上記反射防止層および光透過性基板を接着させるための接着剤層を挙げることができる。上記接着剤層については、一般的な反射防止フィルムに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明の反射防止フィルムを製造する方法としては、上述した「A.反射防止フィルム用組成物」を用い、モスアイ構造が用いられた反射防止フィルムの製造方法として公知の方法を用いることにより製造することが可能である。
まず、上記光透過性基板上に上記反射防止フィルム用組成物を塗布して塗膜を形成し、表面に複数の微細孔を有する金型を上記塗膜に押し当てることで微細凹凸を賦型し、上記塗膜を硬化させて反射防止層を形成した後、上記金型と上記反射防止層とを剥離する方法を挙げることができる。
(反射防止フィルム用組成物の調製)
固形分として、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、潤滑剤、および添加剤を下記表1および表2に示すように配合する反射防止フィルム用組成物を調製した。なお、表1および表2中の数値は、配合の割合を質量部で表したものである。また、表1および表2中の空欄は0質量部を表すものである。
この際、光硬化性アクリル樹脂としては、アクリル樹脂A(ペンタエリスリトールトリアクリレート/HDIヌレート体、デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン製、(「HDI」は、ヘキサメチレンジイソシアネートを示す))、アクリル樹脂B(ポリエチレングリコールジアクリレート)、アクリル樹脂C(1,4−ブタンジオールジアクリレート、SR213、サートマー社製)を用いた。また、光重合開始剤としては、光重合開始剤A(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルス(株)製)、光重合開始剤B(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、イルガキュア907,チバスペシャリティーケミカルス(株)製)を用いた。また、潤滑剤としては、変性シリコーンオイルとして、下記表3に示す変性シリコーンオイルを用いた。なお、下記表3に示す変性シリコーンオイルはいずれも、信越化学工業製のものである。
また、変性シリコーンオイル以外の潤滑剤としては、潤滑剤B−1(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、メガファックF443,DIC製)を用いた。また、添加剤としては、添加剤(ヒンダードアミン系光安定化剤、TINUVIN765、チバ・ジャパン製)を用いた。
複数の微細孔を有する反射防止フィルム製造用金型(以下、金型とする。)を準備し、上述した反射防止フィルム用組成物を上記金型表面に一定量塗布し、その上に厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタック「T80SZ」)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をローラー(フジプラ製、ラミパッカー「LPA3301」)で圧着し、金型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認して、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂組成物を光硬化させ、反射防止層を形成した。その後、上記反射防止層および金型を剥離して反射防止フィルムを得た。なお、比較例5および比較例9の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止フィルムについては、上記金型に目詰まりを生じてしまった。
実施例7、参考例1〜6、参考例8〜9、および比較例1〜比較例9の反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムに対して、耐スチールウール性評価を行うことにより、反射防止フィルムの耐擦傷性について評価を行った。
ここで、上記耐スチールウール性評価とは、以下のような手順により耐擦傷性を評価するものである。まず、先端径がφ11.3mmである耐スチールウール性評価用治具に、スチールウール#0000(ボンスターポンド製)を取り付ける。次に、反射防止フィルムの評価面(微細凹凸面)が上側を向くようにガラス板にサンプルを置き、エアーが入らないよう注意しながら、その四辺のテープ留めを行う。重量が100gとなるように調整した上記耐スチールウール性治具を用いて、走査速度が20〜30mm/secで、同一箇所を10往復するよう横方向にスライドさせながら、サンプル表面を擦る。評価したサンプル面とは反対側に黒テープを貼り付け、三波長管を用いて、サンプル表面の擦られたキズ本数を観察し、カウントする。
結果を表1および表2に示す。なお、上記反射防止フィルム上に形成されたキズが12本以下の場合は、反射防止フィルムの耐擦傷性が良好であるものとし、キズが12本を超える場合は、反射防止フィルムの耐擦傷性が劣るものとした。
2 … 反射防止層
10 … 反射防止フィルム
Claims (2)
- 光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、前記反射防止層を形成する際に用いられ、
光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、
前記潤滑剤が、HLB値が10で、動粘度が910mm 2 ・s −1 〜1600mm 2 ・s −1 であるエチレンオキサイド単位及びプロピレンオキサイド単位を含むポリエーテル変性シリコーンオイルであり、前記潤滑剤の含有量が、前記光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して0.3質量部〜1.0質量部の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム用組成物。 - 請求項1に記載の反射防止フィルム用組成物を用いて形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。
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