図1において、プリンタ1は、機体11、送り出しローラ12、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、記録ヘッド16、プラテンボックス17、ファン18、用紙ガイド19、および制御回路などを備える。
機体11には、ロール状に巻き取られた用紙(プリンタ用シート)PYが回転可能にセットされており、後で述べる用紙搬送装置YHによって用紙PYが引き出され、その表面に記録ヘッド16によって画像GZが印刷される。用紙PYは、両面印刷可能であり、かつ、透明または半透明であって、印刷された画像を反射光によって観察することも透過光によって観察することも可能である。
用紙PYは、ピントラクタにより搬送してその表面に印刷を行うためのものである。図4および図5に示すように、幅方向の左端部および右端部に、ピントラクタのピンが係合する送り用の複数のパンチ孔PAが、長さ方向に沿ってそれぞれ一列に、かつ左端部と右端部のパンチ孔PAがそれぞれ長さ方向に互いに同じ位置となるように、設けられている。
パンチ孔PAは、円形であり、その周縁部は円周に沿って切り取られている。つまり、パンチ孔PAの周縁部にはピンとの干渉を避けるためのギザギザなどは設けられておらず、パンチ孔PAの周縁部にピンの外周面が当接することによってこれらの位置関係が正確に決まる。
そして、長さ方向の互いに同じ位置に設けられた左右の組みであってかつ長さ方向における所定の間隔ごとの組みのパンチ孔PAの近辺に、左右のパンチ孔PAの位置の対応関係を示すためのマークMKが付されている。
つまり、マークMKは、所定数のパンチ孔PAに対して1つ設けられている。図4に示す実施形態では、5つのパンチ孔PAに対して1つのマークMKが設けられている。しかし、10個のパンチ孔PAに対して1つのマークMKを設けてもよい。このように、N個(Nは整数)のパンチ孔PAに対して1つのマークMKを設けてよい。
図4で分かるように、左端部および右端部に設けられたマークMKは、幅方向に沿った一直線上に設けられている。
ところで、図4および図5(A)には、マークMKとして、幅方向に沿って延びる直線マークMKLが示されている。直線マークMKLを用いた場合には、それが正しく一直線上に並んでいるかどうかを容易に確認することができる。しかも、幅方向、つまり搬送方向に対して直角な方向に並んでいるか、を確認することができる。
例えば、適当な定規を当てることにより、または糸または紐などを張ることにより、1つの組みの直線マークMKLが幅方向に並んでいるかを容易に確認することができる。
また、ピントラクタ14の近辺における、用紙PYが搬送される台板上に、幅方向のラインを設けておき、マークMKがそのラインに一致するか否かを確認してもよい。
このように、マークMKによって、機体11に対する用紙PYの平行度を簡単にチェックすることができる。
また、図5(B)には、マークMKとして、円形の黒ドットマークMKPが示されている。黒ドットマークMKP以外に、白ドットマーク、色ドットマークなどであってもよい。
また、マークMKとして、これら以外に、三角形、四角形、多角形、楕円形、星形、矢印、その他の種々の形状または大きさのマークMKを用いることができる。また、マークMKとして孔を設けてもよい。
また、マークMKは、左端部および右端部の各パンチ孔PAよりもそれぞれ外端縁に近い側に設けられている。
なお、マークMKの個数、位置、形状、付加方法などは、任意に選定することが可能である。
また、用紙PYの材質は、紙であってもよく、可撓性を有する合成樹脂シートであってもよい。また、用紙PYとして、ガラスからなる複数の単繊維(ガラス繊維)を束ねたガラスヤーンを用いて織られた光透過性および光拡散性を有するガラスクロスを用いてもよい。
用紙PYの材料として合成樹脂シートまたはガラス繊維を用いた場合には、弾力性のある腰の強いプリンタ用シートとすることができる。また、用紙PYの材料にガラス繊維を用いた場合には、用紙PYを不燃性とすることができる。
なお、用紙PYの材料として合成樹脂シートまたはガラス繊維を用いた場合には、その表面にインク受容層をコーティングしておくことが好ましい。
送り出しローラ12は、用紙PYを、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対して送り出す。送り出しローラ12には、パンチ孔PAに係合するピンを設けてもよく、設けなくてもよい。また、送り出しローラ12に代えてガイド板を設けてもよい。また、送り出しローラ12とともにガイド板を設けてもよい。
駆動ローラ13およびピントラクタ14は、加圧ローラ15と協働して用紙PYを正確に高精度で位置決めし、搬送する。
すなわち、図2をも参照して、駆動ローラ13は、用紙PYの下面に用紙に接した状態で回転駆動する。ピントラクタ14は、駆動ローラ13の両端部に配置されており、用紙PYの両端部に設けられた送り用のパンチ孔PAに係合する複数のピンPNをそれぞれ有し、駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する。
つまり、ピントラクタ14は、駆動ローラ13の軸心と同じ軸心を持つ駆動軸によって回転駆動される。そのため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送と駆動ローラ13による用紙PYの搬送とを同期させることが容易である。
なお、本実施形態においては、ピントラクタ14の軸と駆動ローラ13の軸とは軸方向に一体に連結されているが、軸方向の適当な箇所においてカプリングや歯車などの動力伝達機構を介して連結されていてもよい。
なお、図2における左側のピントラクタ14を「ピントラクタ14a」と記載し、右側のピントラクタ14を「ピントラクタ14b」と記載することがある。
加圧ローラ15(加圧ローラ15a,15b)は、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対向して配置され、用紙PYを駆動ローラ13およびピントラクタ14に向かって押し付ける。
つまり、加圧ローラ15aは、駆動ローラ13に対して、弱く押し付けられている。これによって、駆動ローラ13と用紙PYとの接触面に大きな摩擦力が働かないようになっており、駆動ローラ13と用紙PYとの間の微小なズレが許容されるようになっている。
なお、加圧ローラ15aを駆動ローラ13に押し付ける力を弱くするためには、加圧ローラ15aを押し付けるバネの力を弱くすればよい。加圧ローラ15aの自重によって押し付ける構造の場合には、加圧ローラ15aの重量を軽くすればよい。また、加圧ローラ15aの押し付け力を調整するためのバネなどを設ければよい。または、加圧ローラ15aの個数または長さを低減すればよい。
また、加圧ローラ15aの押し付ける力を弱くすることに代え、またはこれとともに、加圧ローラ15aの表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。また、駆動ローラ13の表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。
また、加圧ローラ15bは、用紙PYをピントラクタ14に対して押し付ける。これによって、用紙PYがパンチ孔PAの位置において本体ローラ141の表面に押しつけられ、パンチ孔PAがピンPNの根元位置TNまで挿入される。これによって、ピントラクタ14の回転にともなって、パンチ孔PAの位置がピンPNの周面の後述する曲線CVに沿って正確に移動し、用紙PYは正確に高精度で搬送される。
駆動ローラ13、ピントラクタ14、および加圧ローラ15a,15bによって、用紙搬送装置YHが構成される。用紙搬送装置YHは、図示しないモータおよびギヤやベルトなどの動力伝達機構などによって、制御された速度で回転するよう回転駆動される。
用紙搬送装置YHによって、用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送するとともに、駆動ローラ13の回転によって用紙PYを前方へ送り出すこととなる。つまり、ピントラクタ14によって用紙PYの両端部が、駆動ローラ13によって用紙PYの中央部が、それぞれ同じ速度で搬送される。ピントラクタ14による搬送速度と駆動ローラ13による搬送速度とは同じであり、用紙PYは捩れたり脱落したりすることなく、制御された速度で正確に直線状に搬送される。
なお、実際には、駆動ローラ13よりもピントラクタ14による搬送が支配的であり、用紙PYはピントラクタ14のピンPNの移動に同期した速度で搬送される。つまり、ピントラクタ14と駆動ローラ13との間に、温度や湿度の変化などによる搬送速度の微小な相違が生じた場合には、ピントラクタ14による搬送速度となり、駆動ローラ13はそれとほぼ同じ速度で用紙PYを前方へ送り出すことになる。
なお、ピントラクタ14による搬送を支配的とするために、駆動ローラ13の直径を本体ローラ141の直径よりも僅かに小さくしておいてもよい。
ところで、2つのピントラクタ14についても、一方のピントラクタ14aに設けられたピンPNと他方のピントラクタ14bに設けられたピンPNとの搬送方向位置の対応関係を示すマークMKTが付されている。
マークMKTは、各ピンPNに対して、色または形などを互いに異ならせて識別できるようにする。例えば、黒、赤、緑、青、黄、紫などの各色のドットまたは矢印などを印字し、または刻印して用いることができる。また、各ピンPNに対して番号または符号を付してもよい。
また、マークMKTとして、所定数のピンPNに対して1つ設けてもよい。例えば、3つのピンPNに対して1つのマークMKTを設ける。
なお、マークMKTは、マークMKTの付された左右のピンPNが長手方向について同じ位置にあることを示すものである。したがって、左右のいずれのピンPNが同じ位置にあるかを示すことができる限りにおいて、マークMKTの個数、位置、形状、付加方法などを任意に選定することが可能である。
記録ヘッド16は、用紙搬送装置YHによって送り出された直後において、用紙PYの表面にインクジェット方式でカラーの印刷を行う。記録ヘッド16は、図示しないレールに沿って往復移動するキャリッジに取り付けられており、プラテンボックス17の上方において、用紙PYとの間に僅かな間隙を有して、用紙PYを幅方向に横切るように往復移動する。記録ヘッド16のインクノズルはプラテンボックス17の上面と対向しており、プラテンボックス17の上面に吸着された用紙PYにインクを噴射して画像GZを印刷する。
用紙PYの搬送方向をX方向とすると、記録ヘッド16の移動方向はそれと直交するY方向であり、用紙PYのX方向の移動と記録ヘッド16のY方向の移動によって、用紙PYの表面であるXY平面に画像GZが印刷される。
印刷位置が正確であるためには、記録ヘッド16から噴射されるインクによって描かれる画像GZと、用紙PYのXY方向の位置とが一定の正しい関係にあることが必要である。また、同じ用紙PYの両面に印刷する画像GZの位置を互いに正確に高精度で位置合わせをするためには、用紙PYが、用紙搬送装置YHに対して正確な位置に精度よくセットされ、ズレのないように正確に搬送される必要がある。
本実施形態の用紙搬送装置YHでは、ピントラクタ14によって用紙PYを搬送するので、用紙PYのパンチ孔PAに係合したピンPNによって用紙PYの位置が正確に定まり、しかも搬送時のズレがない。
しかも、後述するように、ピンPNの形状は、用紙PYのパンチ孔PAがピンPNから抜け出始めるときのピンPNの前方側の根元位置からピンPNの移動後における用紙PYの移動方向に沿った線上におけるピンPNの前方側の位置までの距離が、ピンPNの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状となっている。
つまり、ピンPNの形状は、ピンPNがパンチ孔PAに挿入された状態から抜け出る際に、ピンPNの移動とともにその前方側がパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動するような形状となっている。
このため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送速度は、駆動ローラ13の周速度と同じになり、用紙PYは一定の速度で滑らかに送り出される。
なお、プラテンボックス17の下部にファン18が設けられており、ファン18によってプラテンボックス17の内部の空気が排気されて圧力が低下する。プラテンボックス17の上面には細かい多数の孔が設けられており、用紙PYが負圧によって吸着され、プラテンボックス17の上面に密着する。つまり、用紙PYは、プラテンボックス17の上面に密着した状態で搬送される。
記録ヘッド16によって表面に画像GZが印刷された用紙PYは、用紙ガイド19に沿って排出される。
図2および図3に示されるように、駆動ローラ13は、その両端部から直線状に延びる駆動軸13a,13bを一体的に有している。駆動軸13a,13bは、その端部において、機体11に取り付けられたベアリング21a,21bによって回転可能に支持され、図示しない動力伝達機構などによって回転駆動される。
なお、駆動ローラ13の表面はローレット加工が施されており、用紙PYとの間に適当な摩擦力が生じるようになっている。このような駆動ローラ13は、例えば、中空のパイプの両端の内周面にネジを設け、このネジに螺合するボスまたはネジ軸をネジ込むことによって一体化したものでもよい。
一方の駆動軸13aには、その表面に軸方向に設けられたキー溝にキー22が嵌入して取り付けられている。ピントラクタ14aには、キー22に係合するキー溝23が設けられており、キー溝23がキー22に係合しかつキー22に沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピントラクタ14aには、止めネジ24が設けられており、ピントラクタ14aの軸方向の位置を調整した後、止めネジ24を締め付けることによって、軸方向の位置が固定される。
なお、ピントラクタ14bにおいても、ピントラクタ14aの場合と同様な止めネジが設けられており、軸方向の位置を調整した後、止めネジを締め付けることによって位置が固定される。
また、駆動ローラ13とピントラクタ14aとの間には、その間の空間を埋めるためのローラ131,132が挿入されている。ローラ131,132は、その外径が駆動ローラ13の外径と同一である。ローラ131,132においても、キー22に係合するキー溝が設けられており、キー22に沿って軸方向に移動可能である。また、ローラ131,132には止めネジが設けられており、止めネジを締め付けることによって軸方向の位置が固定される。
なお、ローラ131,132の軸方向の長さ、個数などは、適当なものを選定して用いることが可能である。このようなローラ131,132は、駆動ローラ13を駆動軸13a,13bとともに機体11から取り外した状態で、駆動軸13aに挿入すればよい。または、ローラ131,132を2つ割りとし、ネジなどで結合することによって駆動軸13aに取り付けるようにしてもよい。
図6において、ピントラクタ14の本体ローラ141には、複数個のピンPNが互いに等角度ピッチで設けられている。つまり、ピントラクタ14は、ピン付きローラである。本体ローラ141の外径は、駆動ローラ13の外径と同一である。
図6によく示されるように、ピンPNは、外周面が円周面であって、根元位置TNから先端位置TSまで滑らかな曲線を描いて収束する砲弾型である。
次に、ピンPNの形状について詳しく説明する。
すなわち、図6に示すように、図の中央のピンPNに注目すると、ピンPNは、用紙PYのパンチ孔PAに挿入され、ピンPNの前方側の根元位置TNが用紙PYのパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態である。ピンPNの根元位置TNの外径をDNとし、パンチ孔PAの内径をDAとすると、DA>DNである。したがって、ピンPNの後方側の根元位置TNとパンチ孔PAの後側の周縁部との間には、間隙が形成される。
寸法の具体例をあげると、本体ローラ141の外径が28mm程度の場合に、ピンPNの外径の最大値が3mm程度、パンチ孔PAの内径が3.2mm程度、したがってピンPNとパンチ孔PAの周縁部との間の間隙は0.2mm程度となる。ピンPNの高さは2.5mm程度である。
この状態で、ピントラクタ14は、図の右側(矢印M1方向)に回転する。これによって、用紙PYは、図の右方向(矢印M2方向)に搬送される。
図6の中央のピンPNに対して、1ピッチ分前方にあるピンPN(これを「ピンPNZ」と記載することがある)は、丁度、ピンPNZの外周面を延長した仮想面MKと先端位置TSを通る平面MHとが交差する稜線が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態となる。つまり、この状態が、ピンPNZがパンチ孔PAから抜け出る瞬間である。
なお、根元位置TNは、ピンPNの周方向の位置によって異なる高さ位置となるが、微小な差異であるのでここでは無視する。
ピンPNに対して、1ピッチ分後方にあるピンPNを「ピンPNG」と記載することがある。
図7には、ピントラクタ14の回転にともなって用紙PYが搬送される様子が示されている。
図7(A)は、上に述べた図6と同じ状態である。この状態で、破線の円で囲った部分において、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。図7(B)〜(F)は、ピントラクタ14が所定角度ずつ矢印M1方向に回転した状態をそれぞれ示す。図7(F)の次は図7(A)の状態に戻る。それらの図において、破線の円で囲った部分でおいて、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。
図7(A)〜図7(D)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接するのは1つのピンPNのみであるが、図7(E)〜図7(F)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが2つのピンPN,PNGについて接する。この間に、用紙PYの搬送および位置決めが、ピンPNからピンPNGに移る。
この間において、ピンPNの前方側の周面が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動している。
なお、ピンPNは、砲弾型としたが、円錐形状でもよい。また、先端位置TSの側から見た形状は円形であるが、円形ではなく、四角形または多角形などとしてもよい。
上に述べたピントラクタ14は、本体ローラ141に複数個のピンPNが設けられたピン付きローラであるが、タイミングベルトを用いたものでもよい。
次に、タイミングベルトを用いたピントラクタ14Bについて説明する。
図8において、ピントラクタ14Bは、ケーシング31、ケーシング31に対して回転可能にボルトBTで取り付けられた2つのローラ32,33、2つのローラ32,33の間に掛け渡されたタイミングベルト34、および、ケーシング31に対して回転可能に設けられ、駆動軸13aによって回転駆動されてタイミングベルト34を回転駆動するタイミングギヤ35を有する。
タイミングベルト34の外周面には、用紙PYに設けられたパンチ孔PAに係合するピンPNが設けられている。
タイミングベルト34は、タイミングギヤ35とローラ33との間において、用紙PYと平行であり、タイミングギヤ35とローラ32との間において、用紙PYから徐々に離れるように緩やかに傾斜している。
ピントラクタ14Bの上方には、プリンタに付属する抑えローラ15B、軸44を中心として回動可能に設けられた抑えレバー43、およびバネ44などからなる用紙抑え装置SAが設けられている。
駆動軸13aが回転すると、タイミングギヤ35が一体的に回転し、これに噛み合うタイミングベルト34が走行する。タイミングベルト34の走行によって、パンチ孔PAに係合したピンPNが用紙PYを走行させる。
用紙PYは、タイミングギヤ35とローラ33との間の平行部分において、複数のパンチ孔PAがピンPNと十分に係合して正確に矢印M2方向に送られる。タイミングギヤ35とローラ32との間の傾斜部分において、タイミングベルト34は用紙PYから徐々に離れ、これにともなってピン36がパンチ孔PAから円滑に抜け出る。
なお、ピントラクタ14Bの構造または形状などは、上に述べた以外の種々のものとすることができる。例えば、タイミングギヤ35が設けられた位置に、ローラ32,33と同様なローラを設け、そのローラとローラ32との間にタイミングギヤ35を設けてタイミングベルト34を駆動する。
次に、プリンタ1によって用紙PYの両面に画像GZを印刷する方法について説明する。
上に述べたように、両端部に送り用のパンチ孔PAが設けられた用紙PY、および、用紙PYに接した状態で回転駆動する駆動ローラ13、およびパンチ孔PAに係合する複数のピンPNを有し駆動ローラ13の両端部に配置されて駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタ14a,14bを有する用紙搬送装置YHを用いる。
2つのピントラクタ14a,14bの位置は、使用する用紙PYのパンチ孔PAの位置に合わせて調整しておく。
用紙PYを用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの一方の表面HM1に画像GZ1を印刷する〔図9(A)参照〕。
用紙PYの一方の表面UM1への印刷が終わると、その位置において巻き取り紙みから切断する。切断した用紙PYを裏返し、用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの他方の表面(裏面)UM2に画像GZ2を印刷する〔図9(B)参照〕。
このとき、用紙PYの裏面UM2に印刷される画像GZ2は、表面UM1に印刷された画像GZ1を裏返した画像つまり鏡像である。つまり、画像GZ2は、画像GZ1と同じ内容の画像であり、画像GZ1を左右反転させた画像である。なお、用紙PYの天地の向きを反転した場合には、画像GZ2も天地を反転させればよい。
そして、画像GZ1と画像GZ2とは、同じ位置に重なるように印刷される。つまり、用紙PYを透かして見た状態で、裏面UM2に印刷される画像GZ2の原点GG2の位置は、表面UM1に印刷された画像GZ1の原点GG1の位置と同じ位置である。
つまり、例えば、用紙PYにおける1つのパンチ孔PA11を基準とすると、このパンチ孔PA11と原点GG1またはGG2との位置関係が、用紙PYの表裏において同じになればよい。
また、表面UM1の印刷時にパンチ孔PA11に挿入されるピンPN11には、裏面UM2の印刷時にはその左右に反対側のパンチ孔PA21が挿入される。したがって、画像GZ2について、左上端位置を原点GG21とした場合には、この原点GG21とピンPN11との位置関係を規定すればよいことになる。画像GZ2について、原点GG2と原点GG21との位置関係は既知であるので、これらに基づいて原点GG21とピンPN11との位置関係を設定すればよい。
用紙搬送装置YHにおいては、ピントラクタ14によって用紙PYの位置が正確に高精度で定まりかつ搬送されるので、上のように表裏における画像GZ1,2の印刷位置を決定して印刷を行うことにより、それらがズレることなく正確に一致する。
つまり、サイズの大きい用紙PYであっても小さい用紙PYであっても、高い位置精度で搬送して画像GZの両面印刷を行うことができる。
なお、両面印刷が終わった用紙PYについては、パンチ孔PAの設けられた両端部分を裁断して切り離しておけばよい。
また、裏面UM2に印刷する画像GZ2は、その濃度を調整しておくことが好ましい。
図10には、表面用の画像(入力画像)GZ1に対する裏面用の画像(出力画像)GZ2の濃度の関係が示されている。
図10において、入力画像の濃度に対して、出力画像の濃度は、そのダイナミックレンジが狭くなっている。つまり、入力画像に対して、出力画像の濃度はND1〜ND2%に圧縮されている。つまりグレースケールまたは各原色の明度のスケールにおける中間部分の濃度ND1〜ND2になるよう、濃度分布が限定されている。
ただし、入力画像の濃度0〜2%程度に対しては、つまり最も明るい濃度に対しては、同様に最も明るい濃度が得られるようになっている。これは、最も明るい部分については、そのまま明るい部分としておく必要があるからである。
濃度ND1の具体的な範囲は、例えば10〜20%程度、濃度ND2については、例えば50〜80%程度である。したがって、入力画像に対し、出力画像の濃度を20〜70%程度の範囲に限定することができる。このように出力画像の濃度を限定し、これを裏面用の画像GZ2の濃度とすることにより、用紙PYの両面に印刷された画像を透過光で観察した場合に、自然な濃度で鮮明に観察できる。
なお、画像GZの幅方向の端部に、画像のズレを検出するためのマーカを設けてもよい。その場合に、マーカを作画サイズの外周に自動的に印字するようにしてもよい。また、印刷を開始した後で印刷位置にズレが生じた場合に、その印字位置をコンピュータのキーボードの操作により補正可能としておけばよい。
印刷位置の修正を行う場合に、主走査方向(X方向)については、例えば原点GGを移動し、副走査方向(Y方向)については、例えば駆動ローラ13を駆動するモータに対して位置補正信号を出力すればよい。
このようにすることによって、画像GZ1,2の印刷位置を自動的に一致させることができ、用紙PYの表裏に画像GZ1,2を自動的に印刷することができる。
なお、本実施形態では用紙PYの両面に同じ画像GZ1,2を印刷したが、同じ画像ではなく、互いに異なる画像を印刷してもよい。また、用紙PYの両面に印刷することなく、用紙PYの同じ表面に2回または3回以上印刷を行ってもよい。例えば、用紙PYの表面に印刷した画像GZ1に対して、同じ表面に追加の画像を印刷してもよい。追加の画像を印刷する際に、色を例えば金色に変更するようにしてもよい。用紙PYの同じ表面に複数回の印刷を行う場合でも、用紙PYの位置を高精度に維持することができるので、印刷される画像の位置を正確に合わせることができる。
上に述べた実施形態において、用紙PYに設けたパンチ孔PAのピッチは、ピンPNのピッチと同じにしたが、ピンPNのピッチよりも小さいピッチとしてもよい。
次に、プリンタ1Bによって用紙PYBの両面に画像GZを印刷する他の方法について説明する。
ここで用いられるプリンタ1Bは、上に述べたプリンタ1と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、ピントラクタ14が備えられておらず、駆動ローラ13のみの摩擦力で用紙PYBを搬送するプリンタ1Bであってもよい。この場合には、用紙PYBにはパンチ孔PAが設けられていなくてもよい。
図11に示すように、用紙PYBは、透明または半透明のプリンタ用シートである。まず、用紙PYBの一方の表面(裏面)UMA1に、用紙PYBの幅方向の端部に配置される位置合わせのための第1色の第1マークMKA1を印刷する。
次に、用紙PYBの他方の表面(表面)UMA2に、用紙PYBの幅方向の端部に配置される位置合わせのための第2色の第2マークMKA2を印刷する。
用紙PYBを透かして見たときに第1マークMKA1の印刷位置と第2マークMKA2の印刷位置とが合うように、搬送装置である駆動ローラ13、送り出しローラ12などを調整する。この調整は、用紙PYBの表面UMA2への第2マークMKA2の印刷の後に行ってもよく、その印刷と同時にと並行して行ってもよい。
第1マークMKA1および第2マークMKA2において、第1色は、例えば青色であり、第2色は、例えば赤色である。これらと異なる色を用いてもよい。同じ色であってもよい。線の太さは、互いに同じ太さとしてよく、例えば0.1mm〜1mm程度とすればよい。
なお、第1マークMKA1の印刷と同時に、裏面UMA1用の画像GZA1を印刷する。第1マークMKA1は、裏面UMA1用の画像GZA1と干渉しない位置に印刷される。
また、第2マークMKA2の印刷と同時に、表面UMA2用の画像GZA2を印刷する。第2マークMKA1は、表面UMA2用の画像GZA2と干渉しない位置に印刷される。
また、この例では、用紙PYBの裏面UMA1に先に印刷を行い、その後で表面UMA2に印刷を行った。このようにすると、表面UMA2への印刷が最後になるので、表面UMA2に印刷された画像の傷みが最小限に抑えられる。つまり、表面UMA2への印刷を先に行った場合には、その後に裏面UMA1への印刷を行うときに、表面UMA2に印刷された画像を傷つけるおそれがあるからである。しかし、表面UMA2への印刷を先に行ってもよい。
なお、裏面UMA1には、用紙PYBの上端縁に沿って横方向(幅方向)の直線MKA1Aが印刷される。直線MKA1Aは、表面UMA2への印刷を行う際に、プリンタ1Bのプラテンボックス17の上面に表示された直線と一致するように、用紙PYBのセット位置を調整するためのものである。
つまり、裏面UMA1に印刷される直線MKA1Aは、プラテンボックス17の上面に表示された直線と一致するように印刷される。このような直線は、例えば、記録ヘッド16による印字位置に表面しておけばよい。したがって、表面UMA2への印刷を行う際に、この直線MKA1Aがプリンタ1Bのプラテンボックス17の上面に表示された直線と一致するようにすると、用紙PYBの表裏の印刷位置が一致する。しかし、これは印刷位置を精密に調整するものではないので、第1マークMKA1および第2マークMKA2による位置合わせを行う。
また、画像GZA1,2の印刷を、第1マークMKA1または第2マークMKA2の印刷と同時に行うことなく、搬送装置による搬送位置が調整された後で行ってもよい。この場合には、第1マークMKA1または第2マークMKA2の印刷を、搬送装置による搬送位置の調整のためのみに行い、搬送位置の調整が行われた後で画像GZA1,2の印刷を行う。
図12〜図14にも示すように、第1マークMKA1は、用紙PYBの縦方向(長さ方向)に沿って延びる第1縦線MKA1Tと、第1縦線MKA1Tに沿った等間隔位置において第1縦線MKA1Tから横方向に延びる複数の第1横線MKA1Yとを有する。
第2マークMKA2は、第1縦線MKA1Tに対応した位置に配置され用紙PYBの縦方向に沿って延びる第2縦線MKA2Tと、第2縦線MKA2Tに沿った等間隔位置において第1横線MKA1Yに対応した位置に配置され、第2縦線MKA2Tから横方向に延びる複数の第2横線MKA2Yとを有する。
第1横線MKA1Yおよび第2横線MKA2Yは、第1縦線MKA1Tまたは第2縦線MKA2T上の点をそれぞれの起点として、横方向の互いに逆方向に延びている。
図13に示すように、裏面UMA1の画像GZA1の印刷位置と表面UMA2の画像GZA2の印刷位置とがぴたりと一致するときには、第1縦線MKA1Tと第2縦線MKA2Tとがぴたりと一致し、かつ、第1横線MKA1Yと第2横線MKA2Yとは一直線上に配置される。
図14に示すように、裏面UMA1の画像GZA1の印刷位置と表面UMA2の画像GZA2の印刷位置とが一致しないときには、第1縦線MKA1Tと第2縦線MKA2Tとに横方向のずれが生じ、かつ、第1横線MKA1Yと第2横線MKA2Yとにおいても一直線上に配置されずにずれが生じる。
ずれの方向によって、画像GZA1と画像GZA2とのずれの方向が分かる。また、第1縦線MKA1Tと第2縦線MKA2Tとが平行であるか否かによって、画像の傾きの有無も分かる。
このように、第1マークMKA1および第2マークMKA2を印刷することにより、用紙PYBの表裏に印刷する画像GZA1,2の印刷位置を容易に精密に合わせることが可能である。従来のような十字マークを用いた場合よりも、位置のずれが分かり易く、正確に合わせることが可能である。
上に述べた実施形態において、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、ピンPN、用紙PY,PYB、パンチ孔PA、マークMK、第1マークMKA1、第2マークMKA2、またはプリンタ1,1Bの全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、組成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。