JP5747835B2 - 浸出槽 - Google Patents

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Description

本発明は、浸出槽に関する。さらに詳しくは、原料中の目的金属を浸出するための浸出槽に関する。
硫化物の塩素浸出工程では、浸出槽において塩素ガスにより硫化物中の目的金属を浸出した後、生成されたスラリーを濾過機に供給して浸出液と浸出残渣とに固液分離する。そして後工程において、浸出液から目的金属を回収し、浸出残渣から主に硫黄を回収している(例えば、特許文献1)。
塩素浸出により硫化物中の目的金属を完全に浸出させることは困難であり、一部の目的金属は浸出残渣に残留する。この浸出残渣は硫黄を回収された後に系外に排出されるため、塩素浸出により浸出されなかった目的金属を損失することになる。そのため、塩素浸出における浸出率(原料に含まれる目的金属のうち、浸出液中に浸出された目的金属の割合)を向上させることが望まれている。
浸出率に影響を与える因子として浸出槽内のスラリーの対流状態が挙げられる。浸出槽内のスラリーを均一に対流させることで、十分な浸出反応時間が確保され、浸出率が向上するからである。
図5に示すように、一般的な塩素浸出設備には複数の浸出槽101、102、103が備えられている。これらの浸出槽101、102、103は、それぞれ直列に接続されており、上流の浸出槽101(102)からオーバーフローしたスラリーが下流の浸出槽102(103)に供給されるようになっている。また、各浸出槽101、102、103には撹拌機120が備えられており、浸出槽101、102、103内のスラリーを攪拌できるようになっている。
しかるに、上記のような浸出槽101、102、103では、撹拌機120の回転軸回りの旋回流が強く上下方向の軸流が弱いため、スラリーの上下方向の循環が悪い。そのため、上流から供給されたスラリーの一部は、そのまま液面付近を流れ、短時間でオーバーフローして下流に流れてしまう。そのようなスラリーは浸出槽101、102、103内の滞留時間が短いため、十分な浸出反応時間が確保されず、浸出が不十分となる。その結果、浸出残渣中の未浸出の目的金属が増加し、浸出率が低下するという問題がある。
特開平11−236630号公報
本発明は上記事情に鑑み、目的金属の浸出率を向上できる浸出槽を提供することを目的とする。
第1発明の浸出槽は、円筒形の浸出槽本体と、該浸出槽本体の中心軸に対して略平行に設けられた回転軸と、該回転軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる撹拌機と、該撹拌機により発生する旋回流の流動方向と交差するように設けられた邪魔板と、前記浸出槽本体の上端を覆う部材であって、開口が形成された屋根と、前記開口を閉塞する蓋と、を備え、前記邪魔板は、その上端が前記蓋に取り付けられていることを特徴とする。
第2発明の浸出槽は、第1発明において、前記開口は矩形であり、前記邪魔板の幅寸法は、前記開口の幅寸法より長く、対角線の長さより短いことを特徴とする。
第3発明の浸出槽は、第1または第2発明において、前記邪魔板の縦寸法は、前記浸出槽本体の高さ寸法の1/2〜1/3であることを特徴とする。
第1発明によれば、邪魔板が蓋に取り付けられているので、蓋とともに邪魔板の取り付け取り外しが可能であり、メンテナンスが容易である。
第2発明によれば、邪魔板の幅寸法が開口の幅寸法より長いので、それだけ浸出槽内のスラリーの軸流を主流にすることができる。また、邪魔板の幅寸法が対角線の長さより短いので、邪魔板を開口から挿入して浸出槽本体の内部に配置することができる。
第3発明によれば、邪魔板の縦寸法が浸出槽本体の高さ寸法の1/2以下であるので、邪魔板と蓋の取り付け部分にかかる負荷を軽減できる。
本発明の一実施形態に係る浸出槽の平面図である。 図1におけるII-II線矢視断面図である。 図1におけるIII-III線矢視断面図である。 実施例および比較例の原料中硫化物比率に対する浸出残渣中ニッケル品位を示すグラフである。 従来の塩素浸出設備の説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る浸出槽1は、硫化物の塩素浸出設備を構成する浸出槽であって、ニッケルマットなどの硫化物が含まれるスラリーに塩素ガスを供給して、硫化物に含まれるニッケルなどの目的金属を塩素浸出するものである。
図1、図2および図3に示すように、浸出槽1は、浸出槽本体10と、撹拌機20と、塩素吹込管30と、静水塔40と、邪魔板50とを備えている。
浸出槽本体10は有底円筒形の槽である。浸出槽本体10の上端は屋根11により覆われている。この屋根11には、供給配管12が接続されており、浸出槽本体10の内部にスラリーを供給できるようになっている。また、浸出槽本体10の側壁にはオーバーフロー配管13が接続されており、浸出槽本体10内部からスラリーが排出されるようになっている。
また、屋根11には、その中心から四方に4つの点検口14が形成されている。また、各点検口14は矩形であり、その開口を閉塞する矩形の蓋15が備えられている。
なお、点検口14は、特許請求の範囲に記載の開口に相当する。
撹拌機20は、モータ21と、そのモータ21の駆動により回転する回転軸22と、回転軸22に取り付けられた攪拌羽根23とから構成されている。モータ21は、屋根11の略中心に設けられており、回転軸22は浸出槽本体10の中心軸上に設けられている。この撹拌機20により、浸出槽本体10内のスラリーを攪拌できるようになっている。
塩素吹込管30は、蓋15を貫通し、蓋15に対して垂直に取り付けられている。塩素吹込管30が取り付けられた蓋15で点検口14を閉じることで、塩素吹込管30は浸出槽本体10の中心軸と平行に配置されるようになっている。また、塩素吹込管30の一端が浸出槽本体10内のスラリーに挿入され、他端が浸出槽本体10の外部に配置されるようになっている。
塩素吹込管30は、その一端が浸出槽本体10の底部近傍に達する長さを有しており、他端には塩素ガス供給源が接続されている。そのため、浸出槽本体10の底部近傍から塩素ガスをスラリーに吹きこむことができるようになっている。
なお、塩素吹込管30は、撹拌機20に干渉しない位置に配置されている。また、塩素吹込管30は、4つの蓋15のうち、オーバーフロー配管13から離れた3つの蓋15に取り付けられている。
オーバーフロー配管13に近い残り1つの蓋15には、静水塔40が取り付けられている。静水塔40は、断面がコの字型の長尺部材であり、その上端が蓋15の裏面に取り付けられている。そして、静水塔40が取り付けられた蓋15で点検口14を閉じることにより、静水塔40を浸出槽本体10の内部に配置し、静水塔40の開口部分を浸出槽本体10の内壁に押し付けることができるようになっている。
静水塔40を浸出槽本体10の内部に配置すると、静水塔40と浸出槽本体10の内壁とで縦長の筒が形成される。また、浸出槽本体10の側壁の静水塔40で囲まれた位置には開口が形成されており、その開口にオーバーフロー配管13が接続されている。
この静水塔40により、静水塔40の下端から流入したスラリーのみがオーバーフロー配管13に排出されるようになっている。そのため、液面付近のスラリーがオーバーフローすることを防止できる。
邪魔板50は、縦長の板部材であり、その上端が蓋15の裏面に取り付けられている。邪魔板50が取り付けられる蓋15は、塩素吹込管30が取り付けられた3つの蓋15のうちの1つである。邪魔板50が取り付けられた蓋15で点検口14を閉じると、邪魔板50が浸出槽本体10の内壁と撹拌機20の攪拌羽根23との間に設けられる。また、邪魔板50は、その幅方向が浸出槽本体10の半径方向に沿うように設けられる。そのため、邪魔板50は浸出槽本体10の周方向に対して面するように配置される。
後述のごとく、この邪魔板50により浸出槽本体10内のスラリーの流れは軸流が主流となる。軸流を主流にするためには、邪魔板50の縦寸法は長い方がよい。しかし、邪魔板50の縦寸法が長くなると、邪魔板50と蓋15の取り付け部分にかかる負荷が大きくなる。そのため、邪魔板50の縦寸法を浸出槽本体10の高さ寸法の1/2〜1/3にして、負荷を軽減することが好ましい。
また、邪魔板50の幅寸法を長くした方がスラリーの軸流を主流にすることができる。ここで、邪魔板50は点検口14から挿入されることから、邪魔板50の幅寸法は点検口14の寸法に制限される。本実施形態のように点検口14が矩形である場合には、邪魔板50の幅寸法は、点検口14の対角線の長さより短ければよい。このようにすれば、邪魔板50の幅寸法を点検口14の幅寸法より長くしたとしても、邪魔板50を回転させることで、点検口14から挿入して浸出槽本体10の内部に配置することができる。
また、本実施形態の点検口14は、2辺が浸出槽本体10の半径方向と直交するように配置されている。すなわち、点検口14の対角線は浸出槽本体10の直径方向と交差する。一方、邪魔板50は、その幅方向が浸出槽本体10の半径方向に沿うように蓋15に取り付けられている。そのため、邪魔板50の上端の幅寸法は点検口14の幅寸法(浸出槽本体10の半径方向と直交する2辺間の寸法)に制限される。
上記のように、邪魔板50の幅寸法を点検口14の幅寸法より長くするためには、邪魔板50の上端に切欠き51を形成し、邪魔板50の上端の幅寸法のみを点検口14の幅寸法より短くなるように構成すればよい。このようにすれば、邪魔板50の幅寸法を点検口14の幅寸法より長くできるので、それだけスラリーの軸流を主流にすることができる。
上記構成の浸出槽1にスラリーを供給し、撹拌機20を駆動すると、浸出槽本体10内部のスラリーに回転軸22回りの旋回流sが発生する。この旋回流sの流動方向は浸出槽本体10の周方向と同一であり、この旋回流sの流動方向と直交するように邪魔板50が設けられている。そのため、旋回流sが邪魔板50に当たり、流れの向きが上下方向に変えられる。このようにしてスラリーの軸流aが主流となる。また、スラリーの軸流aが主流になると、浸出槽本体10内のスラリーが均一に対流するので、全体として十分な浸出反応時間を確保でき、浸出率が向上する。
また、スラリーに挿入される塩素吹込管30および静水塔40も、邪魔板50と同様に、スラリーの軸流aを主流にする効果がある。
スラリーに挿入される塩素吹込管30、静水塔40および邪魔板50は、スラリーによい腐食され、摩耗するため、定期的に交換する必要がある。本実施形態のように、塩素吹込管30、静水塔40および邪魔板50を蓋15に取り付ければ、蓋15とともに取り付け取り外しが可能であるので、交換などのメンテナンスが容易となる。
(その他の実施形態)
上記実施形態においては、塩素吹込管30、静水塔40および邪魔板50は、蓋15に取り付けたが、これを浸出槽本体10の側壁や屋根11に取り付けても良い。
また、塩素吹込管30の数、邪魔板50の数は、任意に設定することができる。
また、撹拌機20の回転軸22は、浸出槽本体10の中心軸に対して略平行に設けられればよく、中心軸からずれた位置に設けられてもよい。
さらに、本発明の浸出槽は硫化物の塩素浸出以外の浸出にも用いられる。
実施例として、上記浸出槽1を用いてニッケル硫化物の塩素浸出を行った。また、比較例として、上記浸出槽1において邪魔板50を取り付けていない浸出槽を用いてニッケル硫化物の塩素浸出を行った。
図4は、実施例および比較例において、原料中硫化物比率(浸出槽に供給する原料中の硫化物の比率)を横軸とし、浸出残渣中ニッケル品位(浸出槽から排出されたスラリーを固液分離して得られた浸出残渣中のニッケルの割合)を縦軸としたグラフである。
図4より、実施例および比較例ともに、原料中硫化物比率が上昇すると、浸出残渣中ニッケル品位が線形に上昇することが分かる。また、実施例と比較例とを、同一の原料中硫化物比率で比較すると、実施例は比較例に比べて浸出残渣中ニッケル品位が約1.9重量%低いことが分かる。
浸出残渣中ニッケル品位が約1.9重量%低くなると、例えば、排出される浸出残渣が300t/月となる操業を行うと、損失するニッケルを5.7t/月少なくできる。
以上より、本発明を適用することで、浸出率を向上できることが確認された。
1 浸出槽
10 浸出槽本体
11 屋根
12 供給配管
13 オーバーフロー管
14 点検口
15 蓋
20 撹拌機
21 モータ
22 回転軸
23 攪拌羽根
30 塩素吹込管
40 静水塔
50 邪魔板

Claims (3)

  1. 円筒形の浸出槽本体と、
    該浸出槽本体の中心軸に対して略平行に設けられた回転軸と、該回転軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる撹拌機と、
    該撹拌機により発生する旋回流の流動方向と交差するように設けられた邪魔板と、
    前記浸出槽本体の上端を覆う部材であって、開口が形成された屋根と、
    前記開口を閉塞する蓋と、を備え、
    前記邪魔板は、その上端が前記蓋に取り付けられている
    ことを特徴とする浸出槽。
  2. 前記開口は矩形であり、
    前記邪魔板の幅寸法は、前記開口の幅寸法より長く、対角線の長さより短い
    ことを特徴とする請求項記載の浸出槽。
  3. 前記邪魔板の縦寸法は、前記浸出槽本体の高さ寸法の1/2〜1/3である
    ことを特徴とする請求項1または2記載の浸出槽。
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