本発明に係る凹版印刷機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
[主な実施形態]
本発明に係る凹版印刷機の主な実施形態を図1〜8に基づいて説明する。
図1に示すように、シートである紙1が積載された給紙装置10には、当該給紙装置10のサッカ機構で上層から一枚ずつ送り出された紙1を受けて搬送するフィーダボード11が連絡している。フィーダボード11の前記紙1の搬送方向下流側端部には、当該フィーダボード11上の紙1をくわえて揺動するスイング装置12が配設されている。
前記スイング装置12には、くわえ爪を周方向に沿って等間隔で3つ配設されて3枚のゴム製のブランケットを取り付けできる、いわゆる3倍胴の圧胴14が渡胴13を介して連絡している。渡胴13には、上記圧胴14の上記くわえ爪と同様なくわえ爪が設けられており、スイング装置12からくわえ替えた紙1を圧胴14のくわえ爪にくわえ替えさせることができるようになっている。
前記圧胴14には、周方向に沿って3枚の凹版を取り付けできる、いわゆる3倍胴の版胴15が対接している。版胴15の上記凹版には、周方向に沿って4枚のゴム製のブランケットを取り付けできる、いわゆる4倍胴のインキ集合胴16が対接しており、当該インキ集合胴16及び上記圧胴14は、上記版胴15に対して、対接(胴入れ)及び離反(胴抜き)できるように移動可能に支持されている。
前記インキ集合胴16には、圧胴14のブランケットや版胴15の凹版の長さに対応した周面長をなす、いわゆる単一胴のシャブロン胴17が周方向にわたって5つ対接している。これらシャブロン胴17には、インキを供給するインキ装置18がそれぞれ対接している。これらインキ装置18内には、互いに異なる色のインキが各々充填されている。
前記圧胴14には、排紙胴21が対接している。排紙胴21には、排紙装置22の図示しないスプロケットが同軸をなして設けられている。排紙装置22の上記スプロケットとスプロケット22aには、一対の排紙チェーン22bが張架されている。排紙チェーン22bには、図示しない排紙爪が設けられている。排紙チェーン22bの走行方向下流側には、排紙台22cが複数設けられている。
このような本実施形態においては、前記インキ集合胴16、前記シャブロン胴17、前記インキ装置18等により、インキ供給手段を構成している。
図1,2に示すように、前記版胴15の下方には、当該版胴15の外周面の前記凹版に対接するワイピングローラ111と、前記ワイピングローラ111を上部で駆動回転可能に支持すると共に内部にワイピング液を貯留するワイピングタンク112と、前記ワイピングタンク112の上部に支持されて前記ワイピングローラ111の外周面に付着残存するワイピング液を掻き落とすスキージ113とを備えたワイピング装置110が配設されている。
図2〜4に示すように、前記版胴15を回転可能に支持する印刷機本体の操作側のフレーム100A及び原動機側のフレーム100Bの当該操作側のフレーム100Aには、前記ワイピング装置110の通行を可能にする切欠き100Aaが形成されている。
前記ワイピング装置110の下方のベッド101上には、前記版胴15の軸方向に沿って長手方向を向けた一対のガイドレール121が敷設されており、当該ガイドレール121は、前記操作側のフレーム100Aだけでなく当該フレーム100Aの外側を覆うように配設されているカバー102及び開閉可能なシャッタ103よりもさらに外側にも位置するように延設されている。前記ガイドレール121は、前記カバー102及び前記シャッタ103よりも外側に延設されている下部が、長手方向に沿って所定の間隔で配設されている支柱122を介して床面109上に支持されている。
前記ガイドレール121には、当該ガイドレール121の長手方向に沿って摺動移動可能なスライダ123が複数係合している。これらスライダ123は、連結部材124を介して前記ワイピングタンク112の下部に連結されており、当該ワイピングタンク112は、上記連結部材124及び上記スライダ123を介して前記ガイドレール121に沿ってスライド移動できるようになっている。
前記ワイピングタンク112の下方の前記ベッド101上には、前記ガイドレール121の軸方向に沿って長手方向を向けた油圧シリンダ125が、対をなす当該ガイドレール121の間に位置するように配設されており、当該油圧シリンダ125は、基端側が、前記原動機側のフレーム100Bの外側に配設された油圧機器(図1〜4中、図示なし)へ接続されると共に、先端側が、ブラケット126を介して前記ベッド101に固定されている。前記油圧シリンダ125の先端側のロッド125aは、ブラケット127を介して前記ワイピングタンク112の底面に連結固定されている。
つまり、前記油圧シリンダ125の前記ロッド125aを伸長させると、前記ワイピング装置110を前記フレーム100A,100Bの内側の規定のワイピング位置(図3中、実線位置)のワイピング空間から前記フレーム100Aの前記切欠き100Aaを介して前記カバー102及び前記シャッタ103の外側の露出位置(図3中、二点鎖線位置)にまで前記ガイドレール121に沿って移動させることができ、前記油圧シリンダ125の前記ロッド125aを短縮させると、前記ワイピング装置110を前記フレーム100A,100Bの内側の前記ワイピング位置110の前記ワイピング空間に位置付けるように前記ガイドレール121に沿って移動させることができるようになっているのである。
図2に示すように、前記ワイピングローラ111の上方には、軸方向に沿って所定の間隔で複数の噴射口を外周面に形成されたエアパイプ128が当該ワイピングローラ111の軸方向に沿って長手方向を向けつつ上記噴射口を当該ワイピングローラ111の外周面側へ向けるようにして前記フレーム100A,100B間に着脱可能に支承されている。このエアパイプ128には、図示しないエアコンプレッサが接続されており、当該エアコンプレッサを作動させることにより、当該エアパイプ128の上記噴射口からワイピングローラ111の外周面へ向けてエアを吹き付けて当該ワイピングローラ111を乾燥及び冷却することができるようになっている。
また、前記フレーム100A,100B間の前記エアパイプ128の近傍には、上端側を回動可能に支持された安全カバー104が配設されており、当該安全カバー104を開放することにより、作業者は前記エアパイプ128の着脱作業を行って前記版胴15に対する作業を行うことができるようになっている。
図2,4に示すように、前記フレーム100A,100B間の前記ベッド101上の前記ワイピング装置110と前記給紙装置10との間には、ステップ105が敷設されている。このステップ105の前記ワイピング装置110側の端部には、ステップ部材である補助ステップ106の基端側が前記版胴15の軸回りで回動できるようにピン結合されている。前記補助ステップ106の先端側には、握り手106aが設けられている。前記ベッド101上の前記油圧シリンダ125の近傍には、倒伏した前記補助ステップ106の先端側を支承する支承部材107が立設されている。
前記補助ステップ106の前記原動機側のフレーム100B側の端部の前記先端寄りには、当該補助ステップ106の表面側へ向けて突出するフランジ106bが設けられている。上記補助ステップ106の上記フランジ106bには、前記版胴15の軸方向へ向けて長手方向を向けた係合ピン131が当該版胴15の軸方向に沿って摺動移動できるように支持されている。前記係合ピン131と前記補助ステップ106の前記フランジ106bとの間には、当該フランジ106bに対して当該係合ピン131を前記原動機側のフレーム100B側へ向けて付勢する図示しない圧縮コイルばねが介在している。
また、前記補助ステップ106が起立しているときに、当該補助ステップ106の前記フランジ106bと対向する前記原動側のフレーム100B部分には、前記係合ピン131と着脱可能に係合する穴132aを有する係合プレート132が取り付けられている。前記係合プレート132の前記ワイピング装置110寄りは、当該ワイピング装置110側ほど薄い厚さとなるように、前記ステップ105側がテーパ状の面132bに形成されている。
つまり、前記補助ステップ106は、起立している状態、すなわち、前記ワイピング空間内から退避した退避位置に位置しているときに、前記係合ピン131を前記係合プレート132の前記穴132aに差し込むことにより、起立状態を維持するように前記原動機側のフレーム100Bに対して保持され(図5参照)、前記圧縮コイルばねの付勢力に抗して引っ張るように前記係合ピン131を前記係合プレート132の前記穴132aから引き抜くことにより、前記原動機側のフレーム100Bに対する保持から解放され、前記ワイピング装置110が前記ワイピング位置に位置していないときに、前記ステップ105と面一となるように基端側が回動されることにより、先端側が前記支承部材107に支承されるように倒伏、すなわち、前記ワイピング空間内に位置する作動位置に位置し(図4参照)、前記握り手106aを把持して先端側が引き起こされるように基端側が回動されることにより、前記係合ピン131の先端が前記係合プレート132の前記テーパ面132bに接触し、さらに回動されることにより、当該係合ピン131が上記テーパ面132bの形状に倣って前記圧縮コイルばねの付勢力に抗するように押し戻され、当該係合ピン131の先端が当該係合プレート132の前記穴132a上に位置することにより、当該圧縮コイルばねの付勢力によって当該係合ピン131の先端側が当該穴132a内に自動的に差し込まれ(図5参照)、これによって、起立状態を維持するように前記原動機側のフレーム100Bに対して再び保持されるようになっているのである。
図2,6に示すように、前記ワイピングタンク112の前記版胴15側の側面の前記原動機側のフレーム100B寄りには、当該原動機側のフレーム100Bに取り付けられたリミットスイッチ141と接触可能なドグ140が取り付けられており、当該ドグ140は、前記ワイピング装置100が、前記版胴15をワイピングする前記ワイピング位置に位置しているときに上記リミットスイッチ141を「入」とするように当該リミットスイッチ141に接触し、前記ワイピング位置以外に位置しているときに上記リミットスイッチ141を「切」とするように当該リミットスイッチ141から離反するようになっている。
図4に示すように、前記操作側のフレーム100Aの内面の前記切欠き100Aaの前記給紙装置10側(図4中、下側)には、前記ガイドレール121の長手方向に沿うように前記原動機側のフレーム100Bへ向けて(図4中、右方向)光線を上下方向に所定の間隔で水平方向に複数出射する光センサの投光部142aと、前記版胴15側(図4中、上側)の前記ガイドレール121の前記原動機側のフレーム100B側の端部側へ向けて(図4中、右上方向)光線を上下方向に所定の間隔で水平方向に複数出射する光センサの投光部143aとがブラケット142aa,143aaを介してそれぞれ取り付けられている。
また、前記操作側のフレーム100Aの内面の前記切欠き100Aaの前記版胴15側(図4中、上側)には、前記給紙装置10側の前記ガイドレール121の前記原動機側のフレーム100B側の端部側へ向けて(図4中、右下方向)光線を上下方向に所定の間隔で水平方向に複数出射する光センサの投光部144aがブラケット144aaを介して取り付けられている。
他方、前記原動機側のフレーム100Bの内面には、前記投光部142aからの各光線を受ける前記光センサの受光部142bと、前記投光部143aからの各光線を受ける前記光センサの受光部143bと、前記投光部144aからの各光線を受ける前記光センサの受光部144bとがブラケット142ba,143ba,144baを介してそれぞれ取り付けられている。
前記エアパイプ128の近傍には、当該エアパイプ128の装着の有無を検出するエアパイプ検出手段であるエアパイプセンサ145が配設されている。前記安全カバー104の回動軸部分には、当該安全カバー104の閉鎖の有無を検出する安全カバー検出手段である安全カバーセンサ146が配設されている。図4に示すように、前記油圧シリンダ125には、前記ロッド125aの先端を所定の位置にまで伸長させた、すなわち、前記ワイピング装置110を前記露出位置に位置付けたことを検出する油圧ロッドセンサ147が設けられている。
図2,4,7に示すように、前記ステップ105と前記補助ステップ106とのピン連結部分には、円弧部148aa及び平坦部148abを形成されたカム面を有するカム148が設けられており、当該カム148は、前記補助ステップ106が起立しているとき、すなわち、前記退避位置に位置しているときに、前記平坦部148aaが下側に位置し(図7中、実線部分)、前記補助ステップ106が倒伏しているとき、すなわち、前記作動位置に位置しているときに、前記平坦部148abが前記給紙装置10側に位置するように(図7中、二点鎖線部分)、当該補助ステップ106の前記回動と一体的に回動することができるようになっている。
前記ステップ105の下面には、先端部を前記カム148の前記カム面に当接させたリミットスイッチ149が取り付けられており、当該リミットスイッチ149は、前記補助ステップ106が起立しているとき、すなわち、前記退避位置に位置しているときに、前記カム148の前記カム面の前記円弧部148aaが当接することにより、先端部が押し込まれて「入」状態となり(図7中、実線部分)、前記補助ステップ106が倒伏しているとき、すなわち、前記作動位置に位置しているときに、前記カム148の前記カム面の前記平坦部148abが当接することにより、先端部が突出して「切」状態となるように(図7中、二点鎖線部分)、設定されている。
そして、図8に示すように、前記リミットスイッチ141,149、前記光センサの前記受光部142b〜144b、前記センサ145〜147は、制御手段である制御装置150の入力部に電気的に接続している。この制御装置150の出力部は、前記圧胴14や前記版胴15等を始めとする印刷機本体を駆動させる駆動モータ151と、前記油圧シリンダ125を伸縮させる前記油圧機器の油圧源129とにそれぞれ電気的に接続している。
さらに、前記制御装置150の入力部には、操作盤上に設置されて印刷運転作動の信号を出力する印刷運転作動指示手段である印刷開始スイッチ152と、操作盤上に設置されて紙送り等の準備運転作動(空転作動)の信号を出力する準備運転作動(空転作動)指示手段である準備運転(空転)スイッチ153と、操作盤上及び前記ワイピング装置110の前記ワイピング位置の近傍の前記フレーム100A,100Bに設置されて前記圧胴14や前記版胴15等を低速の印刷速度よりも極めて遅い速度(緩動)の保守点検速度で正回転(寸動)させる保守点検作動の信号を操作時のみ出力する寸動ボタン154と、操作盤上及び前記ワイピング装置110の前記ワイピング位置の近傍の前記フレーム100A,100Bに設置されて前記圧胴14や前記版胴15等を低速の印刷速度よりも極めて遅い速度(緩動)の保守点検速度で逆回転(逆寸)させる保守点検作動の信号を操作時のみ出力する逆寸ボタン155とがそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置150は、前記リミットスイッチ141からの信号に基づいて、前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号の有効性と無効性とを切り替え、前記リミットスイッチ149からの信号に基づいて、前記油圧源129の作動を制御すると共に、当該光センサの当該受光部142b〜144b、前記エアパイプセンサ145、前記安全カバーセンサ146、上記リミットスイッチ149からの信号に基づいて、前記ボタン154,155及び前記スイッチ152,153からの信号の有効性及び無効性を切り替え、当該ボタン154,155及び当該スイッチ152,153からの信号に基づいて、印刷機本体の前記駆動モータ151の作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
なお、本実施形態においては、前記ガイドレール121、前記スライダ123、前記連結部材124等により、ワイピング装置移動手段を構成し、前記油圧シリンダ125、前記油圧源129を含む前記油圧機器等により、ワイピング装置移動駆動手段を構成し、前記ドグ140、前記リミットスイッチ141等によりワイピング装置位置検出手段を構成し、前記光センサの前記投光部142a〜144a及び前記受光部142b〜144b等により有体物検出手段を構成し、前記寸動ボタン154、前記逆寸ボタン155等により保守点検作動指示手段を構成し、前記カム148、前記リミットスイッチ149等によりステップ部材位置検出手段を構成している。
このような本実施形態に係る凹版印刷機の作動を次に説明する。
まず、前記印刷開始スイッチ152を「入」にして印刷を開始すると、前記制御装置150は、前記インキ集合胴16及び前記圧胴14を前記版胴15に対して対接(胴入れ)させるように移動させた後、紙1に対して印刷を施すように前記駆動モータ151を作動させる。これにより、紙1は、給紙装置10からフィーダボード11上へ一枚ずつ送り出されてスイング装置12から渡胴13を経て圧胴14のくわえ爪にくわえ替えられて保持されながら搬送される一方、各インキ装置18のインキがシャブロン胴17を介してインキ集合胴16に転写されて版胴15の前記凹版面上に供給され、当該インキの余剰分がワイピング装置110のワイピングローラ111で取り除かれてワイピングタンク112内に洗い落され、上記紙1が圧胴14と凹版胴15との間を通過することにより、当該紙1に上記インキが転写されて印刷され、当該紙1が排紙胴21を介して排紙装置22の排紙チェーン22bで搬送されて排紙台22c上に排紙される。
ここで、前記制御装置150は、前記エアパイプ128が取付支持されると共に、前記安全カバー104が閉じ、前記補助ステップ106が起立しているので、前記エアパイプセンサ145及び前記安全カバーセンサ146並びに前記リミットスイッチ149からの信号に基づき、前記印刷開始スイッチ152からの信号による前記駆動モータ151の作動を可能にしている、すなわち、前記印刷運転作動を可能にしている一方、前記ワイピング装置110が前記ワイピング位置(図3中、実線位置)に位置している、すなわち、前記リミットスイッチ141が前記ドグ140と接触して「入」状態となっているので、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号を無効にしている。
このような紙1への印刷を終えて、前記ワイピング装置110の保守点検や清掃等の作業や、紙送りや版交換作業等の印刷準備等の作業を行う場合には、前記制御装置150は、前記油圧シリンダ125のロッド125aを伸長させるように前記油圧源129を作動制御することにより、前記ワイピング装置110を前記ワイピング位置(図3中、実線位置)の前記ワイピング空間から前記露出位置(図3中、二点鎖線位置)に位置させるように前記ガイドレール121に沿って移動させる。
これにより、前記ドグ140が前記リミットスイッチ141から離れて当該リミットスイッチ141が「切」の状態となるので、前記制御装置150は、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号を有効にする。
そして、前記ワイピング装置110の保守点検や清掃等の作業は、当該ワイピング装置110が印刷機本体の前記フレーム100A,100Bの外側に引き出されて、周辺に障害物のない環境に位置付けられるので、非常に容易に行うことができる。
このとき、前記光センサの前記投光部142a〜144aからの光線が前記ワイピング空間内ですべて遮られることなく前記受光部142b〜144bに受光されているので、前記制御装置150は、当該光センサの上記受光部142b〜144bからの信号に基づき、前記印刷開始スイッチ152からの信号を無効にする、すなわち、前記印刷運転作動を不能にすると共に、前記準備運転スイッチ153及び前記ボタン154,155からの信号を有効にする、すなわち、前記準備運転作動及び前記保守点検作動を可能にする。
そして、前記準備運転スイッチ153を「入」にすると、前記制御装置150は、前記圧胴14を前記版胴15に対して離反(胴抜き)させた状態と、前記インキ集合胴16を前記版胴15に対して離反(胴抜き)させた状態、すなわち、前記インキ集合胴16から前記版胴15へインキが供給されない状態とのままで前記駆動モータ151を作動させる。これにより、紙1を前記給紙装置10から渡胴13を介して前記圧胴14に受け渡し、前記版胴15に接触させることなく前記排紙胴21を介して前記排紙装置22の排紙チェーン22bで排紙台22c上に排紙することができる。
このため、前記ワイピング装置110が印刷機本体の前記フレーム100A,100Bの外側に引き出されて保守点検や清掃等の作業を行われているときでも、印刷機本体の紙送り作業等の印刷準備作業を行うことができる。
さらに、版交換作業を行うため、前記係合ピン131を前記係合プレート132の前記穴132aから引き抜いて前記補助ステップ106を倒伏させ、有体物となる作業者が、前記ステップ105側から前記フレーム100A,100Bの内側に入り込んで、前記補助ステップ106上に位置して前記ワイピング空間内に位置した状態で、前記安全カバー104を開放すると共に前記エアパイプ128を取り外すと、(1)前記リミットスイッチ149が「切」状態、(2)前記光センサの前記投光部142a〜144aから前記受光部142b〜144bへの光線のうちの少なくとも一つが作業者によって当該ワイピング空間内で遮断、(3)前記安全カバーセンサ146が前記安全カバー104の閉鎖を不検出、(4)前記エアパイプセンサ145が前記エアパイプ128の装着を不検出、のうちの少なくとも一つ(本実施形態では上記(1)〜(4)のすべて)に該当するようになるので、前記制御装置150は、前記エアパイプセンサ145及び前記安全カバーセンサ146並びに前記リミットスイッチ149からの信号及び前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号に基づき、前記準備運転スイッチ153からの信号を無効にし、前記ボタン154,155からの信号のみを有効にする、すなわち、前記準備運転作動を不能にして、前記保守点検作動のみを可能にする。
加えて、前記制御装置150は、前記リミットスイッチ149からの信号に基づき、前記油圧シリンダ147を伸縮不可にするように前記油圧源129の作動をロック制御する。
これにより、前記制御装置150が、前記ボタン154,155からの信号のみに基づいて、前記駆動モータ151の作動を制御することができると共に、前記油圧シリンダ147の誤作動による前記ワイピング装置110の移動を防止することができるので、作業者が前記フレーム100A,100Bの間の前記ワイピング空間内に入り込みながら前記ボタン154,155を操作して版交換作業等を行うことが安全にできる。
そして、前記作業を終え、作業者が前記エアパイプ128を取り付けて前記安全カバー104を閉めた後、前記ワイピング空間内から前記フレーム100A,100Bの外側へ出て、前記補助ステップ106の握り手106aを把持して当該補助ステップ106を起立させると、(1)前記エアパイプセンサ145が前記エアパイプ128の装着を検出、(2)前記安全カバーセンサ146が前記安全カバー104の閉鎖を検出、(3)前記光センサの前記投光部142a〜144aからの光線を前記受光部142b〜144bがすべて受光、(4)前記リミットスイッチ149が「入」状態、のうちの少なくとも一つ(本実施形態では上記(1)〜(4)のすべて)に該当するようになるので、前記制御装置150は、前記エアパイプセンサ145及び前記安全カバーセンサ146並びに前記リミットスイッチ149からの信号及び前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号に基づき、前記準備運転スイッチ153からの信号を再び有効にする、すなわち、前記準備運転作動を可能にする。
ここで、前記補助ステップ106は、先に説明したように、前記係合ピン131の先端が前記係合プレート132の前記テーパ面132bに接触して当該テーパ面132bの形状に倣って前記圧縮コイルばねの付勢力に抗するように押し戻され、前記穴132a上に位置したときに、当該圧縮コイルばねの付勢力によって当該穴132a内に自動的に差し込まれることにより、起立状態を維持するように前記原動機側のフレーム100Bに対して自動的に保持される。
引き続き、前記制御装置150は、前記リミットスイッチ149からの信号に基づき、前記油圧シリンダ147の伸縮を可能にするように前記油圧源129の作動のロックを解除制御した後、前記油圧シリンダ125のロッド125aを短縮させるように前記油圧源129を作動制御すると、前記ワイピング装置110が前記露出位置(図3中、二点鎖線位置)から前記ワイピング位置(図3中、実線位置)の前記ワイピング空間に位置するように前記ガイドレール121に沿って移動する。
これにより、前記ドグ140が前記リミットスイッチ141に接触して当該リミットスイッチ141が「入」の状態となるので、前記制御装置150は、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの前記受光部142a〜144aからの信号を無効にすると共に、前記印刷開始スイッチ152からの信号を有効にする、すなわち、前記印刷運転作動を可能にする。
このため、本実施形態に係る凹版印刷機においては、ワイピング装置110を前記フレーム100A,100Bの内側から外側へ引き出しているときであっても、紙送りや版交換作業等のような印刷機本体の駆動モータ151を作動させる印刷準備等の作業を行うことができるので、ワイピング装置110の保守点検や清掃等の作業と並行して印刷機本体の上記印刷準備等の作業を行うことができると共に、前記ワイピング装置110の前記ワイピング空間を利用して印刷機本体の上記印刷準備等の作業を実施することができる。
したがって、本実施形態に係る凹版印刷機によれば、ワイピング装置110を前記フレーム100A,100Bの内側から外側へ引き出していても、前記駆動モータ151を作動させる印刷準備等の作業を安全且つ容易に行うことができる。
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、前記リミットスイッチ141が前記ドグ140と接触して「入」状態となっているときには、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号を無効にする一方、前記リミットスイッチ141が前記ドグ140から離れて「切」状態となっているときには、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの前記受光部142b〜144bからの信号を有効にするようにした前記制御装置150を適用した場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記リミットスイッチ141が前記ドグ140と接触して「入」状態となっているときには、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの作動を停止して前記投光部142a〜144aからの投光を停止する一方、前記リミットスイッチ141が前記ドグ140から離れて「切」状態となっているときには、当該リミットスイッチ141からの信号に基づき、前記光センサの作動を開始して前記投光部142a〜144aからの投光を開始するようにした制御手段を適用することも可能である。