JP5743089B2 - 蓄電デバイスの電極材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蓄電デバイスの電極材料の製造方法に関する。さらに詳しくは、既存の電極材料と比較してより高い比容量を示す蓄電デバイスの電極材料を、安価に製造するための方法に関する。
本発明電極材料は、リチウムイオン二次電池の負極材料として特に好適に使用することができる。
リチウムイオン二次電池はメモリー効果が小さいため、例えば携帯電話、携帯型デジタルオーディオプレーヤなどの繰り返し継ぎ足し充電をする電子機器の電源としての需要が高い。このような電気機器の搭載機能は年々拡大され、これと相俟って機器の消費電力は年々大きくなっており、リチウムイオン二次電池に求められる電池容量も増加の一途を辿っている。さらに近年では、電気自動車用途、大型蓄電用途などのリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスの大容量化の要請が急速に高まっている。
このように、蓄電デバイスの分野においては、大容量化は避けて通ることのできない喫緊の課題となっている。
蓄電デバイスの容量(比容量)を大きくする手段の一つとして、電極材料の変更を考えることができる。例えばリチウムイオン二次電池における負極材料としては、現在グラファイトが使用されているが、これを比容量が10倍以上も大きいシリコン材料に置き換える検討がなされている。
しかし、既存のシリコン材料を用いた検討では、期待される結果は得られていない。すなわち、電極材料としてシリコンを用いた場合には、充放電に伴う体積変化が大きいため、充放電を繰り返すうちに電極に亀裂が入り、電池性能が急速に劣化する問題がある。この問題は、シリコンを負極に用いる場合に特に顕著に現れる。
電極材料としてシリコンを用いる場合の上記のような劣化を回避する手段として、先ずシリコンを微粒子とし、得られたシリコン微粒子を炭素材料と混合して使用することにより、シリコンの体積変化の影響を緩和する方法が提案されている。シリコン微粒子の製造方法としては、種々の方法が提案されている。
例えば非特許文献1には、塊状のシリコンを、ボールミル、シェイカーミルなどによって機械的に粉砕する方法が開示されている。しかしながらこの方法によって製造されたシリコン粒子は、せいぜいサブミクロン程度の粒径までしか細かくできず、充放電の際の体積変化の影響を十分に緩和するまでには至らない。また、非特許文献2には、ポリジアルキルシランを熱分解してシリコン微粒子を得る方法が開示されている。この方法によると、シリコンとともにシリコンカーバイドが副生するために、これを電極材料として使用しても比容量は向上し難い。非特許文献3には、モノシラン(SiH)ガスを赤外線レーザーなどにより分解してシリコン微粒子を得る方法が開示されている。しかしこの方法に用いられるレーザー光源は高価であるため、得られるリチウムイオン二次電池のコスト上の問題が生ずる。さらに非特許文献4には、シクロペンタシランを熱分解してシリコン微粒子を得る方法が開示されているが、原料として用いられるシクロペンタシランが高価であり、やはりコスト上の問題がある。
グラファイトに代わる蓄電デバイスの電極材料(特にリチウムイオン二次電池の負極材料)として好適に用いることのできるシリコン系の材料は、未だ知られていない。
J.Power Sources,2006,163,pp215−218 Solid State Ionics,1994,74,pp249−254 Chem.Commun.,2005,pp1566−1568 J.Power Sources,2011,196,pp2889−2892
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存の電極材料と比較してより高い比容量を示し、繰り返し充放電によっても電池性能の劣化することのない蓄電デバイスを製造することのできる電極材料(特にリチウムイオン二次電池の負極材料)を、安価に製造するための方法を提供することにある。
本発明によると、本発明の上記目的および利点は、
4族メタロセンと
アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、アルキルマグネシウムおよびアルキルマグネシウムハライドから選ばれるアルキル化剤と
を接触させて得られる触媒ならびに
導電性炭素粒子
の存在下でSiHを重合して得たポリヒドロシラン/導電性炭素組成物を、
不活性雰囲気下で加熱する工程を経ることを特徴とする、蓄電デバイスの電極材料の製造方法によって達成される。
なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池の負極材料」などという場合、特記しない限り、リチウムイオン二次電池フルセル(full cell)における負極を製造するための電極材料を意味する。これに対して、例えば金属リチウム板を対極として用いるハーフセル(half cell)を製造する場合には、標準電極電位の関係上、本発明の方法により得られた電極材料を用いて製造された電極の側が正極として働くものであることは、当業者には自明であろう。
本発明の方法によると、真空装置、レーザー光源などの重厚・高価な特殊設備を用いずに、導電性炭素と微細なシリコン粒子とを含有する電極材料を得ることができる。本発明の方法の原料として用いられるSiHは安価であり、しかもSi−C共有結合を持たないからシリコンカーバイドの生成は回避され、その結果、高い比容量を示す電極材料を安価に製造することができる。
従って本発明の方法によって得られた電極材料は、蓄電デバイスの電極の製造のために好適に使用することができ、得られる蓄電デバイスのコストの削減にも資する。
本発明の方法によって得られた電極材料を使用して製造された蓄電デバイスは、既存の電極材料を用いて製造されたものと比較してより高い比容量を示し、多数回の充放電を繰り返して行っても電池性能の劣化が少ない。
本発明の方法によって得られた電極材料は、リチウムイオン二次電池の負極を形成するために特に好適に用いることができる。
実施例1で製造した本発明の電極材料のTEM像。 図1のTEM像を観察するための参考図。 実施例および比較例で使用したグラファイトのTEM像。 実施例および比較例で製造したリチウムイオン二次電池の定電流充放電評価の結果を示すグラフ。
本発明の方法は、上記のとおり、
4族メタロセンと
アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、アルキルマグネシウムおよびアルキルマグネシウムハライドから選ばれるアルキル化剤と
を接触させて得られる触媒ならびに
導電性炭素粒子
の存在下でSiHを重合して得たポリヒドロシラン/導電性炭素組成物を、
不活性雰囲気下で加熱する工程を経ることを特徴とする。
上記4族メタロセンとアルキル化剤との接触は、SiHの存在下または不存在下で行うことができる。さらに、4族メタロセンとアルキル化剤との接触前または接触後に、ルイス塩基を添加してもよい。
このような、任意的にSiHおよびルイス塩基のうちの少なくとも一方の存在下における4族メタロセンとアルキル化剤との接触は、重合反応容器以外の別容器中で行うことが好ましい。そしてさらに、接触後の混合物に導電性炭素粒子を加えたうえで、重合反応容器中に添加されることが好ましい。
<4族メタロセン>
本発明で使用される4族メタロセンとしては、中心金属がチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであるメタロセンを好ましく使用することができ、例えば下記式(1−1)および(1−2)
(上記式中、Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり;
およびLは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基であり、ただしこれらの基は炭素数1〜4のアルキル基またはトリメチルシリル基で置換されていてもよく;
およびLは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニレン基、インデニレン基またはフルオレニレン基であり、ただしこれらの基は炭素数1〜4のアルキル基またはトリメチルシリル基で置換されていてもよく;
Rはメチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基またはジメチルシリレン基であり;そして
Xはハロゲン原子である。)
のそれぞれで表される錯体などを挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種を使用することができる。
上記式(1−1)中のLおよびLとしては、それぞれ、シクロペンタジエニル基、t−ブチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基またはインデニル基であることが;
上記式(1−2)中のLおよびLとしては、それぞれ、インデニレン基であることが好ましい。
上記式(1−1)および(1−2)中のXとしては、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
本発明で使用される4族メタロセンの具体例としては、例えば
ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド(CpTiCl)、
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(tBuCpTiCl)、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp TiCl)、
ビス(インデニル)チタニウムジクロリド(IndTiCl)、
ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(CpZrCl)、
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(tBuCpZrCl)、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(Cp ZrCl)、
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(IndZrCl)、
ansa−エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(ansa−IndZrCl)、
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(tBuCpHfCl)などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を好ましく使用することができる。
4族メタロセンの使用割合は、SiH1モルに対して、1×10−4〜1×10−1モルとすることが好ましく、1×10−3〜5×10−2モルとすることがより好ましい。
<アルキル化剤>
本発明で使用されるアルキル化剤は、アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、アルキルマグネシウムおよびアルキルマグネシウムハライドから選択される。
上記アルキルリチウムとしては、炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルリチウムが好ましい。このようなアルキルリチウムとしては、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウムなどを挙げることができる。
上記アルキルアルミニウムとしては、炭素数2〜6のアルキル基を有するジアルキルアルミニウムヒドリド、炭素数2〜6のアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。ここで、炭素数2〜6のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを挙げることができる。アルキルアルミニウムとしては、炭素数3〜5のアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムが好ましい。
上記アルキルマグネシウムとしては、例えば炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルマグネシウムを挙げることができる。
上記アルキルマグネシウムハライドとしては、例えば炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルマグネシウムクロリド、アルキルマグネシウムブロミド、アルキルマグネシウムヨージドを挙げることができる。
本発明におけるアルキル化剤としては、アルキルリチウムおよびアルキルアルミニウムから選択されるアルキル化剤を使用することが好ましく、炭素数3〜5の直鎖のアルキル基を有するアルキルリチウムを使用することがより好ましく、特に好ましくはn−ブチルリチウムである。
アルキル化剤の使用割合は、4族メタロセン1モルに対して、1〜20モルとすることが好ましく、1.5〜10モルとすることがより好ましく、2〜3モルとすることがさらに好ましい。
<ルイス塩基>
本発明において任意的に使用されるルイス塩基としては、窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を1〜6個有する有機化合物を挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
上記窒素原子を有する有機化合物としては、芳香族環を構成するメンバーとして窒素原子を有する複素芳香族化合物、トリアルキルアミン、テトラアルキルアルキレンジアミン、ペンタアルキルジアルキレントリアミンなどを挙げることができる。このトリアルキルアミン、テトラアルキルアルキレンジアミン、ペンタアルキルジアルキレントリアミンの有するアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく;
アルキレン基としては、炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましく、1,2−エチレン基または1,2−プロピレン基であることがより好ましい。
本発明におけるルイス塩基としての窒素原子を有する有機化合物の具体例としては、上記窒素原子を有する複素芳香族化合物として例えばピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ビピリジン、ターピリジン、ビキノリン、フェナントロリンなどを;
トリアルキルアミンとして例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソペンチルメチルアミン、ピペラジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンなどを;
テトラアルキルアルキレンジアミンとして例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどを;
ペンタアルキルジアルキレントリアミンとして例えばN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンなどを、それぞれ挙げることができる。
酸素原子を有する有機化合物としては、例えば芳香族環を構成するメンバーとして酸素原子を有する複素芳香族化合物、エーテルなどを挙げることができる。上記エーテルとしては、ジアルキルエーテル、ジアルコキシアルキレン、ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル、環状エーテルなどを挙げることができる。上記ジアルキルエーテル、ジアルコキシアルキレンおよびポリアルキレンオキシドジアルキルエーテルの有するアルキル基またはアルコキシ基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
本発明におけるルイス塩基としての酸素原子を有する有機化合物の具体例としては、
上記酸素原子を有する複素芳香族化合物として例えばフランなどを;
ジアルキルエーテル鎖状のモノエーテルとして例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどを;
ジアルコキシアルキレンとして例えばジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどを;
ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテルとして例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどを;
環状エーテルとして例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどを、それぞれ挙げることができる。
リン原子を有する有機化合物としては、例えば下記式(P−1)または(P−2)
P (P−1)
P−R−PR (P−2)
(上記式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数とヘテロ原子数との合計が6〜12の芳香族基であり;
はメチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。)
で表される化合物を挙げることができる。
上記式(P−1)で表される化合物としては、例えばジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルピリジルホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンなどを;
上記式(P−2)で表される化合物としては、例えば1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタンなどを、それぞれ挙げることができる。
硫黄原子を有する有機化合物としては、例えばジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、チオフェン、チオベンゾフェノン、スルフランなどを挙げることができる。
本発明におけるルイス塩基としては、窒素原子、酸素原子またはリン原子を1〜6個有する有機化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましく、特にトリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ピリジン、ビピリジン、ビキノリン、ジメトキシエタン、ジフェニルメチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種を使用することがより好ましい。
ルイス塩基の使用割合は、4族メタロセン1モルに対して、100モル以下とすることが好ましく、0.1〜50モルとすることがより好ましい。ルイス塩基のさらに好ましい使用割合は、使用するルイス塩基の種類に応じて異なり、4族メタロセン1モルに対する使用量としてそれぞれ以下のとおりである。
窒素原子を有する有機化合物:さらに好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは1〜5モル
酸素原子または硫黄原子を有する有機化合物:さらに好ましくは1〜50モル、特に好ましくは5〜20モル
リン原子を有する有機化合物:さらに好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは1〜5モル
<4族メタロセンとアルキル化剤との接触(触媒の調製)>
本発明において使用される触媒は、上記の如き4族メタロセンとアルキル化剤とを、接触させることにより調製される。4族メタロセンとアルキル化剤との接触は、SiHの存在下または不存在下で行うことができる。さらに、4族メタロセンとアルキル化剤との接触前または接触後に、上記の如きルイス塩基を添加してもよい。ルイス塩基は、4族メタロセンとアルキル化剤とを接触させて得られた触媒に導電性炭素粒子を添加した後に加えてもよい。
このような4族メタロセンとアルキル化剤との接触は、溶媒の存在下または不存在下に行うことができるが、より高活性の種を均一に生成するとの観点から、溶媒の存在下に行うことが好ましい。
4族メタロセンとアルキル化剤との接触において使用することのできる溶媒としては、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒などを挙げることができる。上記脂肪族炭化水素溶媒の具体例としては例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、シクロオクテン、n−デカン、デカリンなどを;
上記芳香族炭化水素溶媒の具体例としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン、インダン、テトラリンなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
溶媒の使用割合としては、4族メタロセン1モルに対して、10L以上とすることが好ましく、80〜1,000Lとすることがより好ましく、さらに100〜1,000Lとすることが好ましい。なお、上記式(1−1)および(1−2)のそれぞれで表される、ジハロゲン化物である4族メタロセンは上記の溶媒に対する溶解度が低く、溶媒の使用割合を4族メタロセン1モルに対して80L未満とすると4族メタロセンは溶解しきらずに固体として残存することがある。しかしながらアルキル化剤と接触してアルキル化された後の4族メタロセンの溶解度は一般に高いから、溶媒の使用割合が少ない場合であっても接触後には均一な溶液を得ることができる。
4族メタロセンとアルキル化剤との接触を、SiHの存在下で行う場合、4族メタロセンとアルキル化剤とを接触させる容器中に存在するSiHの量は、4族メタロセンの1モルに対して、10モル以下とすることが好ましく、2〜10モルとすることがより好ましく、特に5〜10モルとすることが好ましい。
SiHの存在下および不存在下ならびにルイス塩基の存在下および不存在下のいずれの場合であっても、接触温度は−78〜50℃とすることが好ましく、−78〜30℃とすることがより好ましい。
<導電性炭素粒子>
本発明において使用される導電性炭素粒子を構成する導電性炭素としては、
実質的に炭素からなり、
導電性を有し、
SiH、上記触媒、ポリヒドロシラン(SiHの重合体)、シリコン、および後述の電極形成用組成物に含有される各成分と反応せず、
後述のポリヒドロシラン/導電性炭素組成物を加熱温度において変性(例えば分解、軟化、重合など)せず、そして
シリコンの体積変化を緩和するための空隙、空孔、窪みまたは構造欠陥を有する
ものを、好ましく使用することができる。ここで、実質的に炭素からなるとは、導電性炭素における炭素の純度が、75重量%以上であることをいう。導電性炭素の炭素純度は、85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、94重量%以上であることがさらに好ましく、特に97重量%以上であることが好ましい。
このような導電性炭素としては、例えばグラファイト(黒鉛)、アセチレンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。
上記グラファイトとしては、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよいが、不純物の含有割合の低い方が得られる電極の比容量を大きくすることができるとの観点から、人造黒鉛を用いることが好ましい。
このようなグラファイトは、市販品として入手することができ、例えばSECカーボン(株)製のSGシリーズ、SGBシリーズ、SNシリーズ、SCシリーズ、SCBグレードなど;
大阪ガスケミカル(株)製のMCMBなど;
SGLカーボンAG社製のリチウムイオン電池用負極材など;
日本カーボン(株)製のリチウムイオン電池負極材など;
(株)中越黒鉛工業所製のAPR、S−3、AP−6、300F、G−6S、G−3、G−150、G−30などを、挙げることができる。
上記アセチレンブラック、炭素繊維およびカーボンナノチューブとしては、それぞれ市販品を好適に使用することができ、それらの例としては
アセチレンブラックとして、例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック、東海カーボン(株)製のトーカブラックなどを;
炭素繊維として、例えば東レ(株)製のトレカ、(株)クレハ製のクレカなどを;
カーボンナノチューブとして、例えばシグマ−アルドリッチ社製の多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ:CNano Technology社製のFlo Tubeシリーズなどを、それぞれ挙げることができる。
本発明において、導電性炭素粒子としてはグラファイトからなる粒子を使用することが好ましい。
本発明における導電性炭素粒子の平均粒径としては、0.2〜15μmであることが好ましく、0.5〜1μmであることがより好ましい。このような粒径の導電性炭素粒子を得るためには、例えば乳鉢、ボールミル、ビーズミルなどの公知の機械粉砕法によることができる。
導電性炭素粒子の使用割合としては、SiHの100重量部に対して、50〜1,000重量部とすることが好ましく、100〜800重量部とすることがより好ましく、特に200〜600重量部とすることが好ましい。
導電性炭素粒子は、適当な手段によって例えば50〜200℃程度に加熱することにより、表面の吸着水などを除去した後に使用に供することが好ましい。
<触媒と導電性炭素粒子との混合>
上記の如き導電性炭素粒子は、SiHの重合反応容器に直接加えてもよいが、分散性のより良好な電極材を得るためには、調製された触媒と予め混合したうえで、触媒とともに重合反応容器に添加されることが好ましい。
触媒と導電性炭素粒子との混合は、公知の混合手段、例えば磁気撹拌機、機械撹拌機、震とう機、超音波の印加など、によって行うことができる。
<SiHの重合>
好ましくは上記のようにして得られた触媒と導電性炭素粒子との混合物を重合反応容器に注入することによって、導電性炭素粒子の存在下におけるSiHの重合が開始される。
SiHの重合に際しては、重合反応容器に、4族メタロセンとアルキル化剤との接触の際に使用することのできる溶媒として上記したものと同様の溶媒を添加して希釈下で重合することも許容される。
SiHの重合の際に使用することのできる溶媒の割合は、溶液中のSiH仕込み量が20重量%以下となる割合とすることが好ましく、10重量%以下となる割合とすることがより好ましく、特に5重量%以下となる割合とすることが好ましい。
重合温度は、好ましくは−78〜100℃であり、より好ましくは−5〜50℃である。重合時間は、好ましくは0.5〜72時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
<ポリヒドロシラン/導電性炭素組成物>
上記のようにして、少なくともポリヒドロシランと、導電性炭素と、触媒(またはその残滓)とを含有するポリヒドロシラン/導電性炭素組成物が得られる。このポリヒドロシラン/導電性炭素組成物は、特に精製することなく、次工程の加熱工程に供することにより、蓄電デバイスの電極材料を得ることができる。
<ポリヒドロシラン/導電性炭素組成物の加熱工程>
上記のポリヒドロシラン/導電性炭素組成物を、次いで不活性雰囲気下で加熱することにより、蓄電デバイスの電極材料を得ることができる。
ここで不活性雰囲気とは、例えば不活性気体中または不活性気体と還元性気体との混合気体中を挙げることができ、前記不活性気体としては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなどを;
前記還元性気体としては、例えば水素などを、それぞれ挙げることができる。
加熱の際の圧力は特に制限されず、2×10〜2×10Paの範囲で任意に設定することができるが、減圧〜常圧の範囲とすることが好ましく、より好ましくは5×10〜1×10Paの範囲である。
加熱温度は例えば330℃以上、好ましくは350〜550℃、より好ましくは400〜500℃とすることができ、加熱時間は例えば10分以上、好ましくは20〜90分、より好ましくは30〜60分とすることができる。
<蓄電デバイスの電極材料>
上記のような方法により、本発明における蓄電デバイスの電極材料を得ることができる。
本発明の方法により得られた電極材料は、少なくとも
(a)シリコン原子と、
(b)炭素原子と、
(c)周期表の第4族に属する原子と、
(d)リチウム、アルミニウムおよびマグネシウムから選ばれる原子と
を含有する。この電極材料中に占める上記(a)ないし(d)の原子の合計重量の割合は80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、特に90重量%以上であることが好ましい。電極材料に含まれる上記(a)ないし(d)の原子以外の他の原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子などを挙げることができるほか、SiHの重合をルイス塩基の存在下で行った場合には、使用したルイス塩基に由来する例えばリン原子、硫黄原子などをも挙げることができる。しかしながらこれらの他の原子の存否は、本発明の効果に影響するものではない。
本発明における蓄電デバイスの電極材料は、
上記(a)ないし(d)の原子の合計重量中に占める(a)シリコン原子の重量の割合が10重量%以上、好ましくは15〜30重量%であり、且つ
上記(a)ないし(d)の原子の合計重量中に占める(b)炭素原子の重量の割合が40重量%以上、好ましくは50〜70重量%である。ここで、
上記(a)ないし(d)の原子の合計重量中に占める(a)シリコン原子および(b)炭素原子の合計重量の割合は、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、特に85重量%以上であることが好ましい。
電極材料中の上記(a)シリコン原子の重量(WSi)と(b)炭素原子の重量(W)との比(WSi/W)は、0.1〜0.5であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。
このような組成の電極材料であることにより、高い比容量の電極を製造することができることとなり、好ましい。
また、本発明の方法により得られた電極材料は、比較的大きな粒径を有する導電性炭素粒子上に、シリコンが極めて微細な粒子として分散している。このシリコン粒子の粒径は、100nm以下とすることができ、好ましくは75nm以下とすることができ、さらには50nm以下とすることができる。従って、このような微細なシリコンを含む電極材料を用いて製造された蓄電デバイスは、充放電の際のシリコンの体積変化が十分に緩和されたものであるから、極めて多数回の充放電を繰り返しても、電池性能が劣化することが少ないこととなり、好ましい。
<蓄電デバイス>
電極材料として本発明の方法によって上記のようにして得られた電極材料を使用するほかは、公知の方法に従って蓄電デバイスを製造することができる。
例えばリチウムイオン二次電池フルセルは、負極および正極が電解液を介して対向し、両極の間はセパレータで離隔されている構造を有する。以下に、リチウムイオン二次電池フルセルの製造方法について説明する。
負極は、本発明の方法によって得られる電極材料を使用して製造することができる。負極は、適当な基材上に本発明の方法によって得られた電極材料および適当な溶媒を含有する電極形成用組成物を塗布し、加熱して溶媒を除去した後、好ましくはプレスして密度を向上することにより製造することができる。
上記基材としては、例えば金属、金属/炭素複合材料などを挙げることができる。上記金属としては、例えばニッケル、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などを挙げることができる。本発明における負極を製造するために使用される基材としては、上記金属からなる多孔質膜であることが好ましい。この多孔質膜は、孔径が10〜1,000μm程度の孔を多数有し、下記数式で定義される気孔率が70%以上であるものを使用することが好ましい。
気孔率(%)=[1−{(多孔質膜の見かけ比重)÷(多孔質膜を構成する金属の比重)}]×100
このような金属からなる多孔質膜の市販品としては、例えば住友電気工業(株)製の「セルメット」、三菱マテリアル(株)製の発泡金属などを挙げることができる。
上記基材の膜厚は、例えば0.1〜50mmとすることができる。
上記電極形成用組成物は、電極材料および溶媒のほかに、導電材、バインダーなどを含有することができる。上記導電材としては、導電性炭素粒子を構成する導電性炭素として上述した材料と同じものを使用することができるほか、カーボンブラック、カーボンファイバー、金属粒子などを使用することができる。金属粒子を構成する金属としては、例えば銀、アルミニウムなどを挙げることができる。本発明における電極形成用組成物に含有される導電材としては、アセチレンブラックを使用することが好ましい。
導電材は微粒子状であることが好ましい。その粒径としては、50nm〜15μmであることが好ましく、50nm〜1μmであることがより好ましく、さらに50nm〜0.5μmであることが好ましい。
上記バインダーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スチレンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。
電極形成用組成物における溶媒以外の成分の合計重量に対する各成分の割合は、それぞれ以下の通りである。
電極材料:好ましくは50重量%以上、より好ましくは70〜90重量%
導電材:好ましくは50重量%以下、より好ましくは5〜15重量%
バインダー:好ましくは20重量%以下、より好ましくは5〜15重量%
電極形成用組成物における溶媒としては、極性溶媒を好ましく使用することができ、その例として例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。電極形成用組成物の固形分濃度(組成物における溶媒以外の成分の合計重量が組成物の全重量に対する割合)は、5〜75重量%とすることが好ましく、10〜50重量%とすることがより好ましく、10〜30重量%とすることが特に好ましい。
基材上への塗布は、公知の方法、例えばドクターブレード法、スラリーキャスト法、テープキャスト法、スクリーン印刷法などの、スラリー状の組成物を数μm程度の厚さで均一に塗布し得る適当な手法によって行うことができる。塗布後の加熱条件は、使用溶媒および塗布量などによって適宜に設定されるべきであるが、例えば25〜350℃、好ましくは25〜130℃において、0.5〜12時間の加熱を行うことができる。加熱後に任意的に行われるプレスは、例えば1〜100MPaにおいて10〜60分間行うことができる。
電極形成用組成物の基材上への塗布量としては、単位面積あたりの溶媒除去後の重量として、0.2〜20mg/cmとすることが好ましく、1〜5mg/cmとすることがより好ましい。
このようにして得られた負極は、これらが使用される電池の形状およびサイズに適合するように打ち抜いたうえで使用される。
上記正極としては、適当な基材(例えばアルミニウム箔)上に、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePOなどからなる層を形成したものを用いることができる。
上記電解液としては、リチウム塩を極性溶媒に溶解してなる溶液を使用することができる。ここでリチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、Li(SOCF)、LiN(SOCFなどを;
極性溶媒としては、例えば、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、ジメチルカルボナート、ジエチルカルボナート、エチルメチルカルボナート、炭酸ビニレンなどを、それぞれ挙げることができる。
上記セパレータとしては、リチウムイオンが追加し得る微孔を多数有する微多孔性の高分子膜を使用することができ、その例として例えば微多孔性ポリオレフィン膜、微多孔性ポリアミド膜、微多孔性ポリエステル膜などを挙げることができる。
本発明の方法によって得られた電極材料を使用して製造された上記のようなリチウムイオン二次電池は、既存の負極材料(例えばグラファイト)を用いて製造されたものと比較してより高い比容量を示し、繰り返し充放電によっても電池性能が劣化することがない。
なお上記において、対向電極として例えば金属リチウム板を使用するほかは上記と同様にして実施することにより、リチウムイオン二次電池ハーフセルを製造することができる。この場合、本発明の方法により得られた電極材料を用いて製造された電極の側が正極として働くものであることは、当業者には自明であろう。
<使用原料>
グラファイトは、SECカーボン(株)製の黒鉛化カーボンブラック(SCBグレード)を乳鉢ですりつぶして微粒子とした後に、窒素気流下、100℃において1時間加熱して乾燥したものを用いた。
アセチレンブラックは、電気化学工業(株)製のデンカブラックFX−35を精製することなくそのまま用いた。
ポリフッ化ビニリデンは、キシダ化学(株)製のPVDF#1100(重量平均分子量=280,000、融点=175℃、結晶化温度=138℃)を精製することなくそのまま用いた。
電解液は、キシダ化学(株)製のLBG−0024(エチレンカルボナート(EC)およびジメチルカルボナート(DMC)からなる混合溶媒(EC:DMC=1:1(体積比))中にLiPFを濃度1mol/Lで含有する電解液)を精製することなくそのまま用いた。
その他の原料は、市販の試薬を精製することなくそのまま用いた。
<SiHの重合>
SiH(モノシラン)は高圧ガス保安法にて指定された特殊高圧ガスに該当するため、以下の重合反応はすべて、国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)内に設置され、石川県知事の許可を受けたオートクレーブ(内容量約27mL、耐圧約0.3MPaG)内で、室温(23〜27℃)にて行った。このオートクレーブは、チャージ/サンプリング用セプタム、給気管および排気管を有し、排気管から排出されたガスは乾式除害設備によって無害化されたうえで外気に排出される。
以下の実施例および比較例において、上記シランの重合および各種分析以外の操作は、特記した場合を除き、すべて窒素雰囲気(酸素濃度<10ppm、露点<−40℃)のグローブボックス中で行った。
以下の実施例および比較例では、金属リチウム板を対極とするリチウムイオン二次電池ハーフセルを製造して評価を行った。従って、本発明の方法により得られた材料を用いて製造された電極は正極として働く。
実施例1
<電極材料の製造>
内容量6mLのガラス容器中で、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロリドのトルエン溶液(濃度7.5mmol/L)の4mLおよびn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度1.6mol/L)の40μLを混合して、触媒溶液を得た。次いでこの触媒溶液中に、導電性炭素粒子としてグラファイト粒子90mgを添加して懸濁し、懸濁液を得た。
内容量27mLのオートクレーブ中に、圧力0.01MPaGのSiHを充填した。このオートクレーブ中に上記懸濁液の全量を、シリンジによりセプタムから注入し、SiHの重合を開始した。重合開始から4時間後にオートクレーブを開放して、暗緑色の懸濁液を回収した。
上記の操作を繰り返して合計7回実施して、得られた懸濁液をフラスコに集め、減圧にて揮発成分を除去し、黒色の固体(ポリヒドロシラン/導電性炭素組成物)を得た。
この固体を、グローブボックス中に設置した電気炉中で450℃において1時間加熱することにより、黒色粉末状の電極材料522mgを得た。
得られた電極材料につき、重量法、燃焼赤外分光分析およびICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって分析したところ、以下の組成を有していることが分かった。
Si:21.4重量%
C :66.7重量%
Ti:1.62重量%
Li:0.49重量%
この電極材料の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)を図1に示した。図2は、図1のTEM像を観察するための参考図である。図2を参照しつつ図1を見ると、シリコンの粒子はいずれも径50nm程度以下の極めて微細な状態でグラファイト上に分散して存在していることが分かる。なお、機械的粉砕による場合、シリコン粒子の径は200nm程度が限界であるといわれている。
比較のため、グラファイト(粉砕および乾燥後のもの)のみのTEM像を図3に示した。
<リチウムイオン二次電池ハーフセル(コインセル)の製造>
グローブボックス内に設置した磁気撹拌式の自動乳鉢に、上記で得られた電極材料108mg、導電材としてアセチレンブラック114mg、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン24mgおよび溶媒としてN−メチルピロリドン1mLを仕込み、30分間混合して電極形成用組成物スラリーを調製した。得られたスラリーを、ドクターブレード法によって厚さ20μmの銅箔上に塗布し、室温下で一晩静置して乾燥し、塗膜付き銅箔を得た。この塗膜付き銅箔を、平滑な面を有する2枚の金属板に挟み、油圧ジャッキを用いて1MPaの圧力下で10分間プレスして、銅箔と塗膜とを密着させた。
電極打ち抜き器(電極面積1cm)を用い、上記プレス後の塗膜付き銅箔の型抜きをした。型抜き後の塗膜付き銅箔を、真空乾燥機中、60℃において一晩真空乾燥することにより、電極(正極)を得た。この電極上の電極形成用組成物の量は、1.06mg/cmであった。
上記で製造した電極を正極とし、対極(負極)として厚さ約0.3mmのリチウム箔と、セパレータとしてポリポア(株)製のCelgard#2400と、電解液としてキシダ化学(株)製のLBG−0024と、を用いて、コインセルを組み立てた。このコインセルの作製には、宝泉(株)製のコインセルかしめ器およびコインセル部材(2032)を用いた。
<リチウムイオン二次電池ハーフセル(コインセル)の評価>
上記で製造したコインセルにつき、北斗電工(株)製の電池充放電装置「HJ1001SD8」を用いて定電流充放電(73.92μA)を行って評価した。ここでカットオフ電圧は、放電時0.02V、充電時1.50Vに設定し、定温で充放電を繰り返した。
結果を図4に示した。
比較例1
上記実施例1の<リチウムイオン二次電池ハーフセル(コインセル)の製造>の電極用混合物スラリーの調製において、電極材料としてグラファイト148mg、導電材としてアセチレンブラック142g、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン34mgおよび溶媒としてN−メチルピロリドン1.5mLを用いたほかは実施例1と同様にして電極用混合物スラリーを調製し、これを用いてリチウムイオン二次電池ハーフセル(コインセル)を製造して評価した。
評価結果を図4に示した。
図4から明らかなように、本発明の電極材料を用いて製造されたリチウムイオン二次電池ハーフセルは、グラファイトのみからなる電極材料を用いて製造されたものよりも比容量(活物質の単位重量あたりの静電容量)が大きいことが分かった。なお、ここで「活物質」とは、塗布・乾燥後の電極形成用組成物から導電材(アセチレンブラック)およびバインダー(ポリフッ化ビニリデン)を除いた部分を意味する。

Claims (6)

  1. 4族メタロセンと
    アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、アルキルマグネシウムおよびアルキルマグネシウムハライドから選ばれるアルキル化剤と
    を接触させて得られる触媒ならびに
    導電性炭素粒子
    の存在下でSiHを重合して得たポリヒドロシラン/導電性炭素組成物を、
    不活性雰囲気下で330℃以上の温度で加熱する工程を経ることを特徴とする、蓄電デバイスの電極材料の製造方法。
  2. 上記導電性炭素粒子がグラファイトからなる粒子である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記4族メタロセンが、下記式(1−1)および(1−2)
    (上記式中、Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり;
    およびLは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基であり、ただしこれらの基は炭素数1〜4のアルキル基またはトリメチルシリル基で置換されていてもよく;
    およびLは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニレン基、インデニレン基またはフルオレニレン基であり、ただしこれらの基は炭素数1〜4のアルキル基またはトリメチルシリル基で置換されていてもよく;
    Rはメチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基またはジメチルシリレン基であり;そして
    Xはハロゲン原子である。)
    のそれぞれで表される錯体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 上記蓄電デバイスの電極材料が、
    少なくとも(a)シリコン原子と、
    (b)炭素原子と、
    (c)周期表の第4族に属する原子と、
    (d)リチウム、アルミニウムおよびマグネシウムから選ばれる原子と
    を含有し、そして
    上記(a)ないし(d)の原子の合計重量の割合が80重量%以上であり、
    上記(a)ないし(d)の原子の合計重量中に占める(a)シリコン原子の重量の割合が10重量%以上であり、そして
    上記(a)ないし(d)の原子の合計重量中に占める(b)炭素原子の重量の割合が40重量%以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって製造されたことを特徴とする、蓄電デバイスの電極材料。
  6. 請求項に記載の電極材料から形成された電極を有することを特徴とする、蓄電デバイス。


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