JP5742968B2 - 炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、二酸化炭素を還元して炭化水素を製造する方法に関するものである。
従来、二酸化炭素を還元してメタン等の炭化水素を得る方法として、例えば、特許文献1に記載のように、高温(150〜400℃)高圧(1〜6MPa)の反応条件で、且つ水素源として水素ガスを用いる方法がある。しかし、この方法では、高温高圧の反応条件が必要になることから、反応設備が複雑になり高コストになる等の問題がある。
一方、常温常圧の条件で且つ水素源としての水素ガスを必要としない方法として、特許文献2に、鉄粉を触媒とし、二酸化炭素と水とからメタン等の炭化水素を得る方法が提案されている。
なお、特許文献3、4には、粒子状のマグネシウムと水とから水素を生成する方法が記載されているが、この方法は、二酸化炭素を還元してメタン等の炭化水素を得るものではない。
しかし、特許文献2に記載の方法では、特許文献2に記載されている程のメタン等を得ることができず、炭化水素の収量が小さいものとなっていた(表3の比較例3、4参照)。
そこで、本発明は、常温常圧の条件でも、炭化水素の収量が大きい炭化水素の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の炭化水素の製造方法は、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する炭化水素の製造方法であって、マグネシウム又はマグネシウム化合物としての酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム若しくは塩基性炭酸マグネシウムと水と二酸化炭素とを接触させて、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する生成工程を有する。
生成工程における反応についての詳細までは判明していないが、例えば、メタンについては、図1に示すようにして反応が行われていると推測される。
図1に示すように、水に接触した二酸化炭素(CO2)は拡散し、一部が水(H2O)に溶解している。一方、水に接触したマグネシウム(Mg)は、表面に吸着した水と反応して酸化される途中で、酸化マグネシウムに水素が付いた遷移状態になっている。また、水に接触したマグネシウム化合物も、表面に吸着した水と反応して水素を生じさせ、マグネシウム化合物に水素が付いた遷移状態になっている。そして、水中の二酸化炭素をこの遷移状態のマグネシウムが吸着することで、二酸化炭素が水素と反応して還元され、メタンが生成される。そして、生成されたメタン(CH4)がマグネシウムから脱離すると考えられる。
また、マグネシウム化合物に、水素(H2)を接触させることによっても、この水素の一部がマグネシウム化合物に吸着して、マグネシウム化合物は水素が付いた遷移状態になると考えられる。
本発明の炭化水素の製造方法における各要素の態様を以下に例示する。
1.生成工程
生成工程は、特に限定されないが、マグネシウムと水と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成するものであってもよいし、マグネシウム化合物と水と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成するものであってもよい。
生成工程は、特に限定されないが、マグネシウムと水と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成するものであってもよいし、マグネシウム化合物と水と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成するものであってもよい。
生成工程で得られる炭化水素としては、特に限定されないが、メタン、エタン、プロパン等のアルカンや、エチレン、プロピレン等のアルケン等が例示できる。
水素は、特に限定されないが、水素ガスとして生成工程に導入されたものでもよいし、例えば、生成工程に水(水蒸気を含む)が存在する場合に、マグネシウム、ナトリウム等のイオン化傾向が水素より大きい金属が水と反応することで発生した水素ガスでもよいし、マグネシウム化合物が水と反応することで発生した水素でもよい。
また、炭化水素の収量が大きくなることから、生成工程は、セラミックビーズと共に攪拌する攪拌工程を含んでいることが好ましい。これは、攪拌工程により、マグネシウム又はマグネシウム化合物が粉砕・研磨され、これによって、マグネシウム又はマグネシウム化合物の活性を高くすることができるからである。また、生成工程が水中で行われている場合には、攪拌することにより、水中での二酸化炭素及び水素の濃度の偏りを少なくすることができる。
セラミックビーズは、特に限定されないが、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等が例示できる。また、セラミックビーズの粒径は、特に限定されないが、0.1〜10.0mmが例示できる。
2.マグネシウム
マグネシウムの形態は、特に限定されないが、比表面積が大きくなり炭化水素の収量が大きくなることから、粒子状であることが好ましい。粒子状のマグネシウムの大きさは、特に限定されないが、1〜1000μmが例示できる。
マグネシウムの形態は、特に限定されないが、比表面積が大きくなり炭化水素の収量が大きくなることから、粒子状であることが好ましい。粒子状のマグネシウムの大きさは、特に限定されないが、1〜1000μmが例示できる。
3.マグネシウム化合物
マグネシウム化合物としては、前記のとおり、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)又は塩基性炭酸マグネシウム(Mg(OH)2・MgCO3)を用い、これらは難水溶性(15℃における溶解度が0.01[g/100g−H2O]以下)のマグネシウム化合物である。
マグネシウム化合物としては、前記のとおり、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)又は塩基性炭酸マグネシウム(Mg(OH)2・MgCO3)を用い、これらは難水溶性(15℃における溶解度が0.01[g/100g−H2O]以下)のマグネシウム化合物である。
また、マグネシウム化合物の形態は、特に限定されないが、比表面積が大きくなり炭化水素の収量が大きくなることから、粒子状であることが好ましい。粒子状のマグネシウム化合物の大きさは、特に限定されないが、1〜1000μmが例示できる。
本発明によれば、常温常圧の条件でも、炭化水素の収量が大きい炭化水素の製造方法を提供することができる。
二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する炭化水素の製造方法であって、マグネシウム又はマグネシウム化合物が入れられた水に、二酸化炭素を溶解させ、マグネシウム又はマグネシウム化合物と水と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成する生成工程を有する炭化水素の製造方法。
二酸化炭素を還元して炭化水素を製造する炭化水素の製造方法であって、マグネシウム化合物が入れられた水に、二酸化炭素及び水素を溶解させ、マグネシウム化合物と水と水素と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成する生成工程を有する炭化水素の製造方法。
本発明の実施例として、まず、17種類(実施例8は欠番)の条件で反応を行い、その反応後のガス成分について分析を行った。それぞれの条件及びガス成分の分析結果を表1、2に示す。また、比較例として、22種類の条件で反応を行い、その反応後のガス成分について分析を行った。それぞれの条件及びガス成分の分析結果を表3、4に示す。実施例及び比較例とも、外部から加熱又は冷却及び加圧又は減圧の操作を行わず、常温常圧の雰囲気で反応が行われた。常温とは例えば20±15℃(5〜35℃)である。常圧とは例えば0.1±0.05MPa(0.05〜0.15MPa)である。なお、表1〜4の反応後の検出ガス成分の欄において、「ND」は不検出、即ち、分析機器の検出限界以下であることを示し、「−」は分析を行っていないことを示す。
本実施例及び比較例について説明する。
各材料等には、次に示すものを用いた。
水は、純水を用い、二酸化炭素及び水素は、純ガスを用いた。
水は、純水を用い、二酸化炭素及び水素は、純ガスを用いた。
マグネシウム(Mg)は、ナカライテスク社製で、大きさが414μm、371μm又は18μmの粒子状のものを用いた。なお、以下に説明するものを含め、粒子の大きさは、実体顕微鏡又はSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定した20個の粒子の大きさ(各粒子の最大径)の値を平均したものである。
酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、塩基性炭酸マグネシウム(Mg(OH)2・MgCO3)は、富田純薬社製で、大きさが150μmの粒子状のものを用いた。
鉄(Fe)は、和光純薬工業社製で、大きさが46μm又は36μmの粒子状のものを用いた。
アルミニウム(Al)は、和光純薬工業社製で、大きさが100μmの粒子状のものを用いた。
バリウム(Ba)は、和光純薬工業社製で、大きさが500μmの粒子状のものを用いた。
カルシウム(Ca)は、和光純薬工業社製で、大きさが500μmの粒子状のものを用いた。
ケイ素(Si)は、センセイマテック社製で、大きさが300μmの粒子状のものを用いた。
チタン(Ti)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが200μmの粒子状のものを用いた。
銅(Cu)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが130μmの粒子状のものを用いた。
ニッケル(Ni)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが150μmの粒子状のものを用いた。
アルミニウム(Al)は、和光純薬工業社製で、大きさが100μmの粒子状のものを用いた。
バリウム(Ba)は、和光純薬工業社製で、大きさが500μmの粒子状のものを用いた。
カルシウム(Ca)は、和光純薬工業社製で、大きさが500μmの粒子状のものを用いた。
ケイ素(Si)は、センセイマテック社製で、大きさが300μmの粒子状のものを用いた。
チタン(Ti)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが200μmの粒子状のものを用いた。
銅(Cu)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが130μmの粒子状のものを用いた。
ニッケル(Ni)は、福田金属箔粉工業社製で、大きさが150μmの粒子状のものを用いた。
セラミックビーズは、粒径が1.25mmのジルコニアビーズ(サンゴバン社製)と、粒径が0.5mmのアルミナビーズ(大明化学工業社製)とを用いた。
反応容器には、無色透明なガラス製のバイアル瓶(容量:110mL、直径:40mm、高さ:125mm)を用いた。このバイアル瓶は、中央部に穴がある樹脂製の外蓋と、ゴム製の内蓋とからなる蓋で栓をした。なお、内蓋にシリンジの針を刺し入れることで、バイアル瓶内のヘッドスペースからガスを採取できるようになっている。
ガス成分の分析には、ガスクロマトグラフィー(新コスモス電機社製の100HC)を使用した。
本実施例及び比較例は、次のようにして反応を行った。
実施例1は、バイアル瓶に50mLの水(純水)を入れた後、このバイアル瓶に大きさが414μmのマグネシウムの粒子体を0.1g入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に二酸化炭素(流量:0.8L/分)を3分間注入して(吹き込んで)、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、このバイアル瓶を屋内(約23℃に温度調整された室内)に14日間静置して、反応を行った。そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取してガス成分を分析した。
実施例2は、バイアル瓶を屋内ではなく、屋外(建家の屋上で、平均気温が約19℃)に14日間静置した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例3〜5は、粒子体を大きさが371μmのマグネシウムに変更し、バイアル瓶を屋内に3日間、7日間又は14日間静置した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例6は、粒子体を大きさが371μmのマグネシウムに変更し、バイアル瓶を屋内の暗所に3日間静置した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例7は、粒子体を大きさが18μmのマグネシウムに変更し、二酸化炭素の注入時間を1分間に変更し、バイアル瓶を屋内に7日間静置した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
実施例9は、バイアル瓶に50mLの水(純水)を入れた後、このバイアル瓶に酸化マグネシウムの粒子体を0.1g入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に二酸化炭素(流量:0.8L/分)を3分間注入して、バブリングを行った。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に水素(流量:0.8L/分)を3分間注入して、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、このバイアル瓶を屋内(約23℃に温度調整された室内)に7日間静置して、反応を行った。そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取してガス成分を分析した。
実施例10〜12は、粒子体を水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム又は塩基性炭酸マグネシウムに変更した以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
実施例13は、まず、バイアル瓶にジルコニアビーズを30g入れた。このバイアル瓶に50mLの水(純水)を入れた後、このバイアル瓶に大きさが371μmのマグネシウムの粒子体を0.1g入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に二酸化炭素(流量:0.8L/分)を1分間注入して、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、このバイアル瓶を屋内(約23℃に温度調整された室内)に3日間静置して、反応を行った。但し、3日間の静置時間中に、24時間だけ、シェーカーによりバイアル瓶を上下(振動数:10回/秒)に攪拌した。そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取してガス成分を分析した。
実施例14は、ジルコニアビーズをアルミナビーズに変更した以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。
実施例15は、まず、バイアル瓶にジルコニアビーズを30g入れた。このバイアル瓶に50mLの水(純水)を入れた後、このバイアル瓶に酸化マグネシウムの粒子体を0.1g入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に二酸化炭素(流量:0.8L/分)を1分間注入して、バブリングを行った。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に水素(流量:0.8L/分)を1分間注入して、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、このバイアル瓶を屋内(約23℃に温度調整された室内)に3日間静置して、反応を行った。但し、3日間の静置時間中に、24時間だけ、シェーカーによりバイアル瓶を上下(振動数:10回/秒)に攪拌した。そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取してガス成分を分析した。
実施例16〜18は、粒子体を水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム又は塩基性炭酸マグネシウムに変更した以外は、実施例15と同じ条件で反応を行った。
比較例1は、バイアル瓶に粒子体を入れなかった以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
比較例2は、バイアル瓶に粒子体を入れなかった以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
比較例3〜11は、粒子体を大きさが46μm若しくは36μmの鉄、アルミニウム、ケイ素、チタン、銅、ニッケル、バリウム又はカルシウムに変更した以外は、実施例2と同じ条件で反応を行った。
比較例12、13は、粒子体を大きさが46μm又は36μmの鉄に変更し、バイアル瓶を屋内に14日間静置した以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
比較例14〜22は、粒子体を大きさが46μm若しくは36μmの鉄、アルミニウム、ケイ素、チタン、銅、ニッケル、バリウム又はカルシウムに変更し、二酸化炭素の注入時間を3分間に変更し、バイアル瓶を屋外に14日間静置した(但し、14日間の静置時間中に、24時間だけ、シェーカーによりバイアル瓶を上下(振動数:10回/秒)に攪拌した。)以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。
マグネシウムの存在下で行われた実施例1〜7、13、14は、鉄の存在下で行われた比較例3、4、14、15より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きい(約140倍以上)ことから、メタンの収量が大きかった。また、これらの実施例は、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン等のメタン以外の炭化水素も得ることができた。
また、セラミックビーズと共に24時間攪拌した実施例13、14は、セラミックビーズとの攪拌を行わなかった実施例1〜8より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きいことから、メタンの収量が大きかった。
また、セラミックビーズと共に24時間攪拌した実施例13、14は、セラミックビーズとの攪拌を行わなかった実施例1〜8より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きいことから、メタンの収量が大きかった。
酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム又は塩基性炭酸マグネシウムの存在下で行われた実施例9〜12、15〜18は、鉄の存在下で行われた比較例12、13より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きい(約3倍以上)ことから、メタンの収量が大きかった。また、これらの実施例は、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン等のメタン以外の炭化水素も得ることができた。
また、セラミックビーズと共に24時間攪拌した実施例15〜18は、セラミックビーズとの攪拌を行わなかった実施例9〜12より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きいことから、メタンの収量が大きかった。
また、セラミックビーズと共に24時間攪拌した実施例15〜18は、セラミックビーズとの攪拌を行わなかった実施例9〜12より、バイアル瓶内のヘッドスペースにおけるメタンの濃度が大きいことから、メタンの収量が大きかった。
総括的にいえば、いずれの実施例1〜18も、常温常圧の条件で炭化水素の収量が大きかったと評価できる。これにより、必ずしも外部から加熱又は冷却及び加圧又は減圧の操作を行わなくとも、所定量の炭化水素を得ることができるため、例えば実用時に反応設備を単純にでき低コストにできる等の利点が得られる。
次に、上記実施例1〜18を踏まえて、マグネシウム化合物を用いる場合の水素の注入の適否、セラミックビーズの小径化、反応期間の短縮、炭化水素の収量の増加等についてさらに検討するため、実施例19〜26を行い、分析を行った。それぞれの条件及びガス成分の分析結果を表5に示す。いずれの実施例も、外部から加熱又は冷却及び加圧又は減圧の操作を行わず、常温常圧の雰囲気で反応が行われた。常温常圧については実施例1〜18で説明したとおりである。
各材料等には、実施例1〜18において示したものと同様のものを用いたが、セラミックビーズには、粒径が0.5mmのジルコニアビーズ(サンゴバン社製)を用いた。
反応容器には、実施例1〜18において示したものとは寸法の異なる、無色透明なガラス製のバイアル瓶(容量:150mL、直径:50mm、高さ:95mm)を用いた。このバイアル瓶は、中央部に穴がある樹脂製の外蓋と、ゴム製の内蓋とからなる蓋で栓をした。なお、内蓋にシリンジの針を刺し入れることで、バイアル瓶内のヘッドスペースからガスを採取できるようになっている。また、シール漏れしないように、金属板(3mm厚のステンレス鋼板)によってバイアル瓶を固定した。
ガス成分の分析には、実施例1〜18と同じく、ガスクロマトグラフィー(新コスモス電機社製の100HC)を使用した。
本実施例19〜26は、次のようにして反応を行った。
実施例19は、まず、容量150mLのバイアル瓶に粒径0.5mmのジルコニアビーズを30g入れた。このバイアル瓶に90mLの水(純水)を入れた後、このバイアル瓶に酸化マグネシウムの粒子体を0.2g入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に二酸化炭素(流量:0.8L/分)を1分間注入して、バブリングを行った。その後、水素の注入は行わなかった。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、このバイアル瓶を屋内(約23℃に温度調整された室内)で1日間、シェーカーによりバイアル瓶を上下(振動数:10回/秒)に攪拌しながら、反応を行った。そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取してガス成分を分析した。
実施例20は、二酸化炭素のバブリング後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中に水素(流量:0.8L/分)を1分間注入して、バブリングを行った以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
実施例21は、ジルコニアビーズを入れず、バイアル瓶を攪拌しないで静置して反応を行った以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
実施例22は、粒子体を水酸化マグネシウム0.6gに変更した以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
実施例23は、粒子体を炭酸マグネシウム0.6gに変更した以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
酸化マグネシウムを用いた実施例19は、同じ酸化マグネシウムを用いた実施例15に対し、水素を注入しない点と、より小径のジルコニアビーズを用いた点において、特に大きく異なるものであるが、反応期間が1日間に短縮されたにもかかわらず、メタンの濃度が大きく(約35倍以上)、すなわちメタンの収量が大きかった。実施例19に対し水素を注入した実施例20では、メタンの濃度が低下した。また、実施例19に対しジルコニアビーズの使用と撹拌をやめた実施例21でも、メタンの濃度が低下した。
水酸化マグネシウムを用いた実施例22は、同じ水酸化マグネシウムを用いた実施例16に対し、水素を注入しない点と、より小径のジルコニアビーズを用いた点において、特に大きく異なるものであるが、反応期間が1日間に短縮されたにもかかわらず、メタンの濃度が大きく(約5倍)、すなわちメタンの収量が大きかった。
炭酸マグネシウムを用いた実施例23は、同じ炭酸マグネシウムを用いた実施例17に対し、水素を注入しない点と、より小径のジルコニアビーズを用いた点において、特に大きく異なるものであるが、反応期間が1日間に短縮されたにもかかわらず、メタンの濃度が大きく、すなわちメタンの収量が大きかった。
上記の結果は、第1に、マグネシウム化合物を用いる場合でも水素ガスを注入する必要はなく、むしろ水素ガスを注入しない方が、メタンの収量が大きくなることを示している。これは、次のように考察される。
実施例15〜17では、水素ガスを注入したことにより、マグネシウム化合物に水素が付いた遷移状態にするというプラスの作用はあったと考えられるが、先に注入されて溶解していた二酸化炭素の一部が脱気されるというマイナスの作用もあったために、メタンの収量があまり大きくなかったと考えられる。
これに対し、実施例19、21〜23では、水素を注入しなくても、マグネシウム化合物が水と反応して生じた水素がマグネシウム化合物に付いて、マグネシウム化合物が遷移状態になったと考えられる。酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物は、触媒の担体としても用いられるほどの吸着性などの反応活性に優れているため、拡散性の高い水素ガスを用いるよりも、マグネシウム化合物表面を覆う水と反応しやすいと考えられるからである。また、水素を注入しないことにより、二酸化炭素の脱気が起こらなかったため、メタンの収量が大きくなったと考えられる。このように、水素源を水素ガスから安価な水に変えることにより、より低コストでのメタン合成が可能になる。
上記の結果は、第2に、セラミックビーズの粒径は、マグネシウム化合物の粒径に対して、大きすぎるよりも近い方が、メタンの収量が大きくなることを示している。これは、次のように考察される。
実施例15〜17では、ジルコニアビーズの粒径1.25mmが、酸化マグネシウムの粒径150μmに対して大きすぎたため、攪拌工程において、ジルコニアビーズがマグネシウム化合物を粉砕・研磨する効率が高くなかったと考えられる。これに対し、実施例19、22、23では、ジルコニアビーズの粒径0.5mmが、酸化マグネシウムの粒径150μmに対して近かったため、攪拌工程において、ジルコニアビーズがマグネシウム化合物を粉砕・研磨する効率が高く、マグネシウム化合物の活性をより高めたと考えられる。
次に、実施例24は、粒子体をマグネシウム0.2gに変更した以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
実施例25は、粒子体をマグネシウム0.4gに変更した以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
実施例26は、粒子体をマグネシウム0.2gと酸化マグネシウム0.2gとの混合に変更した以外は、実施例19と同じ条件で反応を行った。
マグネシウムを用いた実施例24は、実施例13に条件が近いものであるが、反応期間が1日間に短縮されたにもかかわらず、メタンの濃度はさほど低下していない。ここでも、上記のとおりジルコニアビーズの粒径がマグネシウムの粒径に近いことによる効果が含まれると考えられる。よって、セラミックビーズの粒径は、マグネシウム化合物の粒径に対して、1〜6倍が好ましく、1.3〜3.5倍がより好ましいと考えられる。マグネシウムの量を実施例24よりも増やした実施例25では、メタンの濃度がより大きかった。マグネシウムの量は実施例24のままにして酸化マグネシウムを加えた実施例26では、メタンの濃度がさらに大きかった。
総括的にいえば、いずれの実施例19〜26も、常温常圧の条件で炭化水素の収量が大きかったと評価できる。これにより、必ずしも外部から加熱又は冷却及び加圧又は減圧の操作を行わなくとも、所定量の炭化水素を得ることができるため、例えば実用時に反応設備を単純にでき低コストにできる等の利点が得られる。
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)前記実施例は、全て常温常圧の雰囲気で反応が行われたが、常温常圧以外の雰囲気で反応が行われるようにしてもよい。常温常圧以外となる二例を下に挙げる。
・反応に伴う発熱又は吸熱等による温度変化や、反応容器内のガス量の変化(ガスの生成又は分解)等による圧力変化によって、常温常圧以外となる例。この例でも、前段落で述べた利点が得られる。
・外部から加熱や冷却又は加圧や減圧の操作を行って、常温常圧以外とする例。
(2)前記実施例は、全て水中で行ったが、水蒸気等を用いてもよい。水蒸気等を用いる二例を下に挙げる。
・二酸化炭素が存在する気中にマグネシウム又はマグネシウム化合物を入れ、そのマグネシウム又はマグネシウム化合物に水蒸気や水を噴霧して二酸化炭素から炭化水素を生成する。
・二酸化炭素及び水素が存在する気中にマグネシウム化合物を入れ、そのマグネシウム化合物に水蒸気や水を噴霧して二酸化炭素から炭化水素を生成する。
(1)前記実施例は、全て常温常圧の雰囲気で反応が行われたが、常温常圧以外の雰囲気で反応が行われるようにしてもよい。常温常圧以外となる二例を下に挙げる。
・反応に伴う発熱又は吸熱等による温度変化や、反応容器内のガス量の変化(ガスの生成又は分解)等による圧力変化によって、常温常圧以外となる例。この例でも、前段落で述べた利点が得られる。
・外部から加熱や冷却又は加圧や減圧の操作を行って、常温常圧以外とする例。
(2)前記実施例は、全て水中で行ったが、水蒸気等を用いてもよい。水蒸気等を用いる二例を下に挙げる。
・二酸化炭素が存在する気中にマグネシウム又はマグネシウム化合物を入れ、そのマグネシウム又はマグネシウム化合物に水蒸気や水を噴霧して二酸化炭素から炭化水素を生成する。
・二酸化炭素及び水素が存在する気中にマグネシウム化合物を入れ、そのマグネシウム化合物に水蒸気や水を噴霧して二酸化炭素から炭化水素を生成する。
Claims (4)
- 二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する炭化水素の製造方法であって、
マグネシウム又はマグネシウム化合物としての酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム若しくは塩基性炭酸マグネシウムと水と二酸化炭素とを接触させて、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する生成工程を有する炭化水素の製造方法。 - 前記生成工程は、マグネシウム化合物と水と水素と二酸化炭素とを接触させて炭化水素を生成する請求項1記載の炭化水素の製造方法。
- 前記マグネシウム及びマグネシウム化合物は、粒子状である請求項1又は2記載の炭化水素の製造方法。
- 前記生成工程は、セラミックビーズと共に攪拌する攪拌工程を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法。
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