JP5742288B2 - パージ方法 - Google Patents

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本発明は、押出機または成形機内のポリアミド樹脂を他の樹脂に置換する方法、他の樹脂からポリアミド樹脂に置換する方法に関するものである。
従来より、食品包装用のバリア性樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、EVOHと略す)が広く使用されている。一方、ポリメタキシリレンアジパミドに代表される、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とを含むポリアミド樹脂(以下、ポリアミド樹脂(A)と略す)は、高湿度下でのバリア性に優れ、またボイル・レトルト処理時のバリア性の低下がEVOHよりも小さいことから、水分の多い食品や水物食品、ボイル・レトルト処理を必要とする食品の包装用のバリア性樹脂として広く使われるようになってきている(特許文献1、2参照)。その層構成として、例えばポリオレフィン/接着性樹脂/バリア性樹脂/接着樹脂/ポリオレフィンやナイロン6/バリア性樹脂/接着樹脂/ポリオレフィンなどが一般的であり、これらは同じ製造工場で製造されることが多く、同一の成形機を用いて内容物の水分や加熱殺菌処理の条件によりバリア性樹脂を使い分ける必要がある。
樹脂の押出機または成形機において、使用樹脂を変更する場合、通常は変更用の樹脂(以下、パージ材と呼ぶ)をしばらくの間、オフスペックとして流すことにより前樹脂のパージを行い、その後に新樹脂による製造を開始している。ところが、EVOHの融点(150〜200℃付近)よりもポリアミド樹脂(A)の融点は高く(230℃付近)、さらにEVOHはゲル化、劣化、分解等を起こさずに成形できる温度範囲が限られていることから、その温度範囲はポリアミド樹脂(A)の成形温度範囲より低い。このためEVOHからポリアミド樹脂(A)に切り替える際にはEVOHの成形温度をポリアミド樹脂(A)に適した温度に上げる必要があるが、その場合、装置内のEVOHがゲル化、劣化、分解を生じ、その結果、新樹脂からなる製品中にスジが発生したり、ゲル、ブツの混入による製品不良を生じたり、樹脂流路内に存在するEVOH樹脂のゲルおよび分解物が長時間にわたり吐出されるため、正常な製品を得るのに膨大な時間と製品ロスをもたらす結果となる。
一方、ポリアミド樹脂(A)からEVOHに切り替える際、ポリアミド樹脂(A)に適した温度のままでEVOHを押し出すと、装置内のEVOHがゲル化、劣化、分解等を起こし同様の問題を生ずる結果となる。
これらを防ぐため切り替えの際に、ポリエチレンやポリスチレン、ポリアミド6等のパージ材を押し出し、その後に、EVOHまたはポリアミド樹脂(A)を押し出す方法が提案されている。しかしながらポリエチレンやポリスチレンを用いる方法ではポリアミド樹脂(A)との親和性の点から特に滞留箇所での洗浄効率が悪く、大量の樹脂と長い押出時間が必要となり、材料コスト、生産効率の面で不利であった。特に、ポリアミド樹脂(A)からEVOHへの切り替えにおいては、パージが不十分な場合、残存したポリアミド樹脂(A)は成形機内で固化するため、未溶融樹脂が製品に混入し製品不良を生じたり、樹脂流路内に存在する該樹脂が長時間にわたり吐出され同様の問題を生ずる結果となる。固化したポリアミド樹脂(A)を取り除くには樹脂経路である押出機内部及びダイ部等を2〜3日間かけて綿密に分解清掃を行わなければならず、バリア性樹脂としてポリアミド樹脂(A)とEVOHを用いた同一の成形機による併産の大きな阻害要因であった。
上記課題を解決するために、含水率を調整したポリアミド樹脂を用いるパージ方法(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、含水したポリアミド樹脂はガラス転移温度が低下することにより、押出時においてスクリューへの巻き付き、食い込み不良を生じるため押出性に劣るという欠点を有していた。
特公昭56−23792号公報 特開平1−141737号公報 特開2004−58355号公報
本発明の目的は、EVOHとポリアミド樹脂(A)との相互切り替えに関し、特にポリアミド樹脂(A)残存により、製品中にスジが発生することを抑制し、ゲル、ブツの混入による製品不良をなくし、正常な製品を短時間で効率的に得ることである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、EVOHとポリアミド樹脂(A)との相互切り替えに関し、特にポリアミド樹脂(A)からEVOHへの切り替えにおいて、特定のポリアミド樹脂組成物をパージ材として用いることで前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、押出機または成形機内の、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−1)及び炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−1)を含むポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との樹脂切り替えの際に、パージ材として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−2)及び炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−2)を含むポリアミド樹脂(B)100質量部に対して、アルカリ化合物(X)を0.01〜5質量部を含むポリアミド樹脂組成物(P)を用いることを特徴とするパージ方法に関する。
本発明の方法によれば、特定のポリアミド樹脂組成物(P)をパージ材として用いることで、ポリアミド樹脂(A)からEVOHへの切り替えにおいて、ポリアミド樹脂(A)の未溶融物混入による製品不良を防止することが可能となり、さらに切り替え時のパージ材料を最小限に抑えることができ、その工業的価値は非常に高い。
(ポリアミド樹脂(A)のジアミン単位)
本発明において用いるポリアミド樹脂(A)は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−1)及び炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−1)を含むポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン単位(I−1)は、優れたガスバリア性を付与する観点から、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは80モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上であり、また好ましくは100モル%以下である。
前記ポリアミド樹脂(A)を構成するメタキシリレンジアミン単位以外の、ジアミン単位(I−1)を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンが例示できるが、これらに限定されるものではない。
(ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸単位)
本発明のポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸単位(II−1)は、重合時の反応性、並びにポリアミド樹脂(A)の結晶性及び成形性の観点から、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは80モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上であり、また好ましくは100モル%以下である。
炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド樹脂(A)を構成する炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位(II−1)を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えても良い。
本発明のポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸単位(II−1)は、ガスバリア性の発現及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からはアジピン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含むことが必要であり、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モル%以上であり、また好ましくは100モル%以下である。
また、本発明のポリアミド樹脂に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性を容易にする観点からは、本発明のポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸単位(II−1)がアジピン酸を70〜99モル%及びイソフタル酸を1〜30モル%含むことが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤等を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合しても良い。ポリアミド樹脂(A)には必要に応じて他の樹脂を添加することもできる。添加する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、エラストマー、アイオノマー等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(A)は、前記ジアミン単位(I−1)を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位(II−1)を構成しうるジカルボン酸成分とを溶融重縮合することにより製造される。例えばジアミン成分とジカルボン酸成分からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。
また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミド樹脂の融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。また、ポリアミド樹脂(A)は溶融重縮合により製造したものを、分子量をさらに高める目的で固相重合しても良い。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱装置より、気密性に優れ高度に酸素とポリアミド樹脂との接触を絶つことができる回分式加熱装置が好ましく、特にタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(A)は、相対粘度が1.5〜4.5の範囲の物を用いることができる。相対粘度が1.5〜4.5の範囲であると、ポリオレフィンやナイロン、ポリエステルなどといった他樹脂とのブレンドや多層構造物の作製に適している。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式(1)で示される。
相対粘度=t/t・・・・(1)
ポリアミド樹脂(A)の形状は、ペレット状、粉末状、フレーク状のいずれかであることが好ましいが、ペレット状のものが取り扱い性に優れることから特に好ましい。
(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)
次に、本発明で使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、EVOHと略す)について説明する。本発明においては、エチレン含有量が通常10〜60モル%、好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは25〜55モル%であり、酢酸ビニル成分のケン化度が通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上のEVOHが使用される。
EVOHのエチレン含有量が10モル%以上であれば、得られるフィルムの耐水性は良好なものとなる。また、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上であれば、得られるフィルムの耐水性は良好なものとなる。
特に、EVOHに含まれるNaとK金属含有量の和が0.01〜30ppmの範囲であるEVOHが好適に使用される。より好ましくは上記の金属含有量の和が0.1〜10ppmである。
EVOH中の上記金属含有量の和が0.01ppm以上であれば、押出加工時に着色(黄変)が低く抑えられる。また、該金属含有量が30ppm以下であれば、ゲルの発生頻度を低く抑えられるので、それに起因する延伸時のフィルム破断の発生が抑制される。
またNa,K以外の金属含有量は特に制限されないが、5〜300ppmのCa及び/又は5〜200ppmのMgの含有は、ゲルの発生抑制の効果を奏するために好ましい。
本発明で使用するEVOHは、必要に応じて種々変性されていてもよく、また、変性EVOHと未変性EVOHの混合物でもよい。上記の変性EVOHとしては、例えば、プロピレン、イソブテン等による変性EVOH、炭素数3〜30のα−オレフィンの少なくとも1種または当該オレフィンの少なくとも1種のエチレンによる変性EVOH、アクリル酸エステルのグラフト重合による変性EVOH、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、シアノエチル基によりEVOHの水酸基を変性した変性EVOH、ポリエステルとビニルアルコールとを解重合反応とて得られるポリエステルグラフト物を含有する変性EVOH、酢酸ビニル−エチレン−ケイ素含有オレフィン性不飽和単量体の共重合体をケン化して得られる変性EVOH、ピロリドン環含有単量体−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、アクリルアミド−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、酢酸アリル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、酢酸イソプロペニル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、EVOHの末端にポリエーテル成分を付加してなる変性EVOH、ポリエーテル成分がEVOHの枝ポリマーとしてグラフト状に付加している変性EVOH、アルキレンオキサイドがEVOHに付加した変性EVOHなどの各種の変性EVOHが挙げられる。
また、本発明で使用するEVOHは、上記以外のα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニ
トリル、アミド、無水物、不飽和スルホン酸またはその塩などのコモノマーを含んでいても差支えない。
(パージ材)
本発明では、パージ材として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−2)及び炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−2)を含むポリアミド樹脂(B)100質量部に対し、アルカリ化合物(X)を0.01〜5質量部含むポリアミド樹脂組成物(P)を使用する。
なお、後述するように、本発明においては、アルカリ化合物(X)として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、アルコキシド、炭酸塩及び炭酸水素塩、さらにこれらの無水塩、含水塩が使用できるが、本発明においては、含水塩であってもアルカリ化合物(X)の無水塩として、ポリアミド樹脂(B)に対する含有量を算出する。
(ポリアミド樹脂(B))
パージ材を構成するポリアミド樹脂(B)は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−2)と炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−2)とを含むポリアミド樹脂である。
(ポリアミド樹脂のジアミン単位)
前記ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン単位(I−2)には、ポリアミド樹脂(A)との親和性の観点から、メタキシリレンジアミン単位が70モル%以上含まれることが必要であり、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モル%以上である。ジアミン単位(I−2)中のメタキシリレンジアミンが70モル%以上であると、結晶性の低下を避けることが出来、固相重合による分子量調整を行うことが出来る。
前記ポリアミド樹脂(B)を構成する、メタキシリレンジアミン単位以外の、ジアミン単位((I−2))を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンが例示できるが、これらに限定されるものではない。
(ポリアミド樹脂(B)のジカルボン酸単位)
ポリアミド樹脂(B)を構成するジカルボン酸単位(II−2)は、ポリアミド樹脂(A)との親和性、EVOHの押出温度以下の融点とする観点から、炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位が70モル%以上含まれていることが必要であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。ポリアミド樹脂(B)の融点をEVOHの押出温度以下とすることにより、パージ材であるポリアミド樹脂(B)がたとえ滞留箇所に残存していても、溶融することにより未溶融としての異物混入を抑えることが出来、外観不良を回避できる。
炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸を例示出来るが、ジカルボン酸のコスト面からセバシン酸が特に好ましい。アジピン酸単位以外のジカルボン酸単位(II−2)を構成しうる化合物としては、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えても良い。
ポリアミド樹脂(B)には、本発明の効果を損なわない範囲で滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤等を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合しても良い。ポリアミド樹脂(B)には必要に応じて他の樹脂を添加することもできる。添加する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、エラストマー、アイオノマー等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(B)は、相対粘度が1.5〜4.5、好ましくは2.0〜3.5、より好ましくは2.2〜3.0の範囲である。相対粘度を上記範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)との置換を速やかに行うことが出来る。
ポリアミド樹脂(B)の形状は、ペレット状、粉末状、フレーク状のいずれかであることが好ましいが、ペレット状のものが取り扱い性に優れることから特に好ましい。
本発明のパージ材であるポリアミド樹脂組成物(P)は、ポリアミド樹脂(B)及びアルカリ化合物(X)を含有する。アルカリ化合物(X)は、押出機や成形機の樹脂流路内での、樹脂の滞留による溶融粘度増加を抑制する観点でポリアミド樹脂(B)に含有する。本発明に用いられるアルカリ化合物(X)の好ましい具体例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、アルコキシド、炭酸塩、炭酸水素塩又はカルボン酸塩が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の好ましい具体例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物としては、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドとしては、炭素数1〜4のアルコキシドが好ましく、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、リチウム−t−ブトキシド、マグネシウム−t−ブトキシド、カルシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、さらにこれらの無水塩、含水塩が使用できる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩としては、炭素数1〜10のカルボン酸塩が好ましく、無水塩、含水塩が使用できる。カルボン酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコ酸、ベヘン酸、モンタン酸、トリアコンタン酸などの直鎖飽和脂肪酸;12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸誘導体;シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、メバロン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ピロメット酸、トリメリット酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸等が挙げられる。
本発明に用いられるアルカリ化合物(X)は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ポリアミド樹脂(B)中への分散性の観点及びゲル化抑制効果の観点から、炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、経済性及びゲル化抑制効果の観点から、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物がより好ましい。また、炭酸ナトリウムも好ましく、炭酸ナトリウム十水和物がより好ましい。特に好ましいのは、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物及び炭酸ナトリウム十水和物である。
ポリアミド樹脂(B)にアルカリ化合物(X)を添加する方法としては、特に限定されず任意の方法により行うことができる
ポリアミド樹脂(B)とアルカリ化合物(X)とを押出機により溶融混練する場合、押出機としては、バッチ式混練機、ニーダー、コニーダー、プラネタリ押出機、単軸もしくは二軸押出機等、任意の押出機を用いることができる。これらの中でも、混練能力及び生産性の観点から、単軸押出機や二軸押出機が好ましく用いられる。
押出機にポリアミド樹脂(B)及びアルカリ化合物(X)を供給する手段としては特に限定されないが、ベルトフィーダー、スクリューフィーダー、振動フィーダー等を用いることができる。ポリアミド樹脂(B)及びアルカリ化合物(X)は、それぞれ単独のフィーダーを用いて供給してもよく、ドライブレンドして供給してもよい。
ドライブレンドにより供給されたポリアミド樹脂(B)及びアルカリ化合物(X)を含むポリアミド樹脂混合物(M)は、押出機内で溶融混合され、ポリアミド樹脂組成物(P)となる。
また、アルカリ化合物(X)は、ポリアミド樹脂(B)中に均一に分散できるのであればその形状に制限はなく、そのまま添加してもよく、加熱し融解させてから添加してもよく、溶剤に溶解してから添加してもよい。粉体をそのまま添加する場合、その粒径は、好ましくは0.01mm〜5.0mm、より好ましくは0.02〜3.0mmである。アルカリ化合物(X)を溶剤に溶解してから添加する場合、押出機に液添加用のフィーダー等の装置を用いて添加することや、タンブラー等で予めブレンドすることもできる。溶剤としては、水や任意の有機溶剤を使用することができる。
ポリアミド樹脂(B)とアルカリ化合物(X)は、パージ時にドライブレンドとして投入してもよい。なお、ドライブレンド後のポリアミド樹脂(B)とアルカリ化合物(X)との混合物の分離を防止するために、粘性のある液体を展着剤としてポリアミド樹脂(B)に付着させた後、アルカリ化合物(X)を添加、混合してもよい。展着剤としては特に限定されず、界面活性剤等を用いることができる。
また、ポリアミド樹脂(B)を高濃度のアルカリ化合物(X)と共に押出機等を用いて溶融混練してペレットとした後、該ペレットをポリアミド樹脂(B)とブレンドして成形加工に供してもよい。または、前記ペレットをポリアミド樹脂(B)とブレンドして固相重合させた後、成形加工に供してもよい。
ポリアミド樹脂組成物(P)におけるポリアミド樹脂(B)とアルカリ化合物(X)との配合比(ポリアミド樹脂(B)100質量部に対するアルカリ化合物(X)の添加量)は、押出性、滞留時の溶融粘度増加抑制、コゲやゲルの生成及び着色を抑制する観点から、好ましくは5〜0.01質量部、より好ましくは3〜0.03質量部、更に好ましくは2〜0.05質量部である。アルカリ化合物(X)を上記範囲とすることにより、押出時におけるポリアミド樹脂組成物(P)とポリアミド樹脂(A)との溶融粘度差を小さくし、且つポリアミド樹脂組成物(P)滞留時における溶融粘度上昇を抑制することができることから、パージ性に優れる。
ポリアミド樹脂組成物(P)を用いた、ポリアミド樹脂(A)のパージにおいては、パージ材であるポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度が重要である。本発明のポリアミド樹脂組成物(P)の260℃、6分滞留、122s−1における溶融粘度は、200〜3000(Pa・s)が好ましく、より好ましくは250〜2000(Pa・s)、さらに好ましくは300〜1500(Pa・s)である。ポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度をこの範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)を効率よく置換することができる。
またポリアミド(A)からEVOHに切り替えを行う際の、パージ材であるポリアミド樹脂組成物(P)は、配管やダイスなどに滞留することによる置換不良を抑制する観点から、滞留前後の溶融粘度比も重要である。
本発明におけるパージ樹脂であるポリアミド樹脂組成物(P)について、260℃、122s−1における6分滞留後の溶融粘度(MV(6)と呼ぶ)、及び60分滞留後におけるポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度(MV(60)と呼ぶ)から、次式(1)により溶融粘度比Rを算出する。
溶融粘度比 R=MV(60)/MV(6)・・・(1)
ポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度比Rの範囲は、0.1<R<1.0が好ましく、より好ましくは0.3<R<0.95、さらに好ましくは0.453<R<0.95である。である。ポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度比Rをこの範囲とすることにより、その後の置換樹脂であるポリエチレン等よりも溶融粘度が低下するため、滞留部におけるポリアミド樹脂組成物(P)からポリエチレンなどへの置換も短時間で行うことができる。
本発明において、パージを行う際には、上述したポリアミド樹脂組成物(P)に加え、ナイロン6もしくはポリエチレン樹脂を併用することがより好ましい。またポリアミド樹脂(A)からEVOHの切り替えの他に、EVOHからポリアミド樹脂(A)への切り替えにも使用することができる。次に具体的なパージ方法を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
ポリアミド樹脂(A)からEVOHへ切り替える場合は、ポリアミド樹脂(A)の押出温度(250〜300℃)のまま、ポリアミド樹脂組成物(P)を押出し、十分に置換する。その後、樹脂をポリエチレンに切り替え、該樹脂を押出ながら温度を下げ、200〜220℃に設定する。次に、樹脂をEVOHに切り替え、EVOHを押出しながらEVOHの押出温度である180〜230℃に設定する。このような手順で樹脂を置換することで、EVOHの熱による変質を防ぎ、短時間でポリアミド樹脂(A)からEVOHへの置換を終えることが出来る。
EVOHからポリアミド樹脂(A)へ切り替える場合は、EVOHの押出温度(180〜230℃)のまま、ポリエチレンに切り替えてEVOHを十分に置換する。その後、押出温度を更に上げて250〜300℃とする。樹脂をポリアミド樹脂組成物(P)に切り替え、十分に置換した後、ポリアミド樹脂(A)に切り替える。このような手順で樹脂を置換することで、EVOHの熱による変質、ポリアミド樹脂(A)の残存によるスジ発生などの製品不良を抑え、短時間でポリアミド樹脂(A)からEVOH、又はEVOHからポリアミド樹脂(A)への置換を終えることが出来る。
本置換方法は、通常の単軸押出機、二軸押出機、Tダイス、円筒ダイス、射出成形機などの成形機に適用できる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例等における評価方法について記す。
(1)相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを採り、25℃±0.03℃の恒温槽中で10分放置後、落下時間(t)を測定した。また96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式(1)により相対粘度を求めた。
相対粘度=t/t0 ・・・・(1)
(2)溶融粘度
使用した測定機器は、東洋精機社製キャピログラフ1Dであり、ダイスとして1mmφ×10mmHのものを使用し、測定温度は260℃、ピストン降下速度を10mm/min.として、剪断速度122s−1における溶融粘度(Pa・s)を測定した。
<ポリアミド樹脂の製造>
製造例1
(ポリアミド樹脂1の溶融重合)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸(AAと略記する)15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaHPO・HO)12.98g(0.122mol、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として150ppm)、酢酸ナトリウム7.03g(0.0857mol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.70)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン(MXDAと略記する)13928g(102.26mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂を得た。
<ポリアミド樹脂の固相重合>
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミド樹脂と蒸留水1.2kgを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド樹脂1を得た。得られたポリアミド樹脂1の相対粘度は2.7、融点は239℃であった。結果を表1に示す。
製造例2
<ポリアミド樹脂2>
ポリアミド樹脂1のジカルボン酸成分をアジピン酸(AA)が94モル%とイソフタル酸(IPAと略記する)が6モル%とした以外は製造例1と同様にしてポリアミド樹脂2を得た。得られたポリアミド樹脂2の相対粘度は2.7、融点は231℃であった。結果を表1に示す。
製造例3
<ポリアミド樹脂3>
ポリアミド樹脂1のジカルボン酸成分をアジピン酸が90モル%とイソフタル酸が10モル%とした以外は製造例1と同様にしてポリアミド樹脂3を得た。得られたポリアミド樹脂3の相対粘度は2.6、融点は226℃であった。結果を表1に示す。
製造例4
<ポリアミド樹脂4>
ポリアミド樹脂1の固相重合条件を210℃で180分保持する以外は製造例1と同様にしてポリアミド樹脂4を得た。得られたポリアミド樹脂4の相対粘度は3.8、融点は239℃であった。結果を表1に示す。
製造例5
(ポリアミド樹脂5の溶融重合)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(SAと略記する)15000g(74.2mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaHPO・HO)11.24g(0.106mol、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として150ppm)、酢酸ナトリウム6.09g(0.074mol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.70)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン(MXDAと略記する)10063g(73.89mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂を得た。
<ポリアミド樹脂の固相重合>
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミド樹脂と蒸留水1.7kgを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約90分かけてペレット温度を110℃に昇温した後、110℃で180分間保持することにより結晶化を行った。次いで、系内の圧力を1torr以下に減圧して昇温を行い、約180分かけてペレット温度を130℃まで昇温した。次いで、約180分かけてペレット温度を160℃まで昇温し、ペレット温度が160℃に到達した後、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド樹脂5を得た。得られたポリアミド樹脂5の相対粘度は2.5、融点は190℃であった。結果を表1に示す。
製造例6
<ポリアミド樹脂6>
ポリアミド樹脂1の固相重合条件を160℃で240分保持する以外は製造例5と同様にしてポリアミド樹脂6を得た。得られたポリアミド樹脂6の相対粘度は2.8、融点は190℃であった。結果を表1に示す。
<マスターバッチの製造>
製造例7
<マスターバッチ(Y1)>
ポリアミド樹脂(B)として、ポリアミド樹脂5を5000gと酢酸ナトリウム200g(ポリアミド樹脂5を100質量部に対して4質量部)を、東芝製二軸押出機TEM37Bを用い220℃にて溶融混練し、マスターバッチ(Y1)を得た。
製造例8
<マスターバッチ(Y2)>
アルカリ化合物(X)として炭酸ナトリウム10水和物を270g(ポリアミド樹脂5を100質量部に対して、炭酸ナトリウムとして2質量部)とした以外は、製造例7と同様にして、マスターバッチ(Y2)を得た。
製造例9
<マスターバッチ(Y3)>
ポリアミド樹脂(B)として、ポリアミド樹脂6を使用した以外は、製造例5と同様にして、マスターバッチ(Y3)を得た。
<ポリアミド樹脂組成物の調整1>
ポリアミド樹脂(B)として、ポリアミド樹脂5〜6のいずれかを使用し、ポリアミド樹脂(B)10000gに対し展着材として日油製ノニオンLT−221を400g加えて混合撹拌後、表3記載のアルカリ化合物(X)を加えて混合撹拌することによりポリアミド樹脂混合物(M1〜M5)を調整した。結果を表3に示す。
<ポリアミド樹脂組成物の調整2>
ポリアミド樹脂(B)として、ポリアミド樹脂5〜6のいずれかを使用し、ポリアミド樹脂(B)10000gに対し表4記載のマスターバッチ(Y)を加えて混合撹拌することによりポリアミド樹脂混合物(M6〜M10)を調整した。結果を表4に示す。
(ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度測定)
ポリアミド樹脂組成物P1〜P10について、260℃、122s−1、6分滞留後のポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度(以下、(MV(6)と呼ぶ)、及び60分滞留後のポリアミド樹脂組成物(P)の溶融粘度(以下、MV(60)と呼ぶ)を測定した。そして、MV(6)及びMV(60)の値溶融粘度比Rを求めた。
溶融粘度比 R=MV(60)/MV(6)
200mm幅のTダイスを備えた25mm単軸押出機(プラスチック工学研究所製PTM−25)を用いて、ポリアミド樹脂(A)としてポリアミド1を260℃で押し出した。260℃のまま、ポリアミド樹脂混合物(M1)に切り替えて、ポリアミド樹脂組成物(P1)として15分間押し出した。樹脂をポリエチレン(日本ポリエチレン製:ノバテックLL UF240、以下LLDPEと呼ぶ)に切り替え、260℃のままフィルム外観の白濁が無くなるまで押し出しを行った。所要時間は40分であった。次いで、25分かけて220℃まで温度を下げた。その後、樹脂をエチレンビニルアルコール共重合樹脂(クラレ製:エバールF−104B、以下EVOHと呼ぶ)に切り替え10分間押し出したところ、押し出されたEVOH中には、ポリアミド樹脂1(A1)の未溶融物やゲルを生じることなく置換を終了した。置換に要した時間は90分であった。結果を表5に示す。
実施例2〜11
ポリアミド樹脂(A)としてポリアミド1〜4を用い、パージ樹脂として表5記載のポリアミド樹脂組成物P1〜P10又はLLDPE(UF240)とした以外は実施例1と同様に260℃にてLLDPEをフィルム外観の白濁が無くなるまで押出を行った。更に実施例1と同様の押出温度にてLLDPEからEVOHへの切り替えを行い、押し出されたEVOH中のポリアミド樹脂(A)の未溶融物やゲルの有無を確認した。結果を表5に示す。
比較例1
ポリアミド樹脂組成物(P1)を使用せずにLLDPE(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240)を押し出した以外は実施例1と同様にしてLLDPEへの切り替えを行った。次いで実施例1と同様にしてLLDPEからEVOHへの切り替えを行った。EVOH押出時において、ポリアミド樹脂1の未溶融物の混入が1時間経っても消えず、スジの外観不良を生じた。
比較例2、3
実施例1と同様にパージ樹脂であるポリアミド樹脂組成物(P)を変更してLLDPEへの切り替えを経てEVOHへの切り替えを行った。パージ後のEVOH押出時におけるポリアミド樹脂(A)の未溶融物やゲルの有無を確認した。結果を表5に示す。
Figure 0005742288
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パージ樹脂としてLLDPEのみを用いた比較例1では、LLDPE押出時におけるフィルム外観の白濁が無くなる迄に60分要した。更にEVOHへ切り替えた後においてもスジの外観不良を生じ、押出時間の経過と共に滞留箇所に残存していたポリアミド樹脂1の未溶融物の混入が認められた。
アルカリ化合物を0.008質量%配合したポリアミド樹脂組成物(P4)を用いた比較例2ではEVOHへの切り替え当初には外観不良は無かったが、押出時間の経過と共に滞留箇所に残存していたポリアミド樹脂1とEVOHとのゲル化物の混入が認められた。
アルカリ化合物を6質量%配合したポリアミド樹脂組成物(P5)を用いた比較例3では、ポリアミド樹脂組成物(P5)の260℃、122s−1における6分滞留後の溶融粘度が100pa・sと低いことから、LLDPE押出時におけるフィルム外観の白濁が無くなるまでの時間は40分と実施例1と同様であった。しかしながら、流路壁面や滞留部におけるポリアミド樹脂(A)の置換が不十分でありEVOHへの切り替え後においてポリアミド樹脂1の未溶融物が多量に混入した。
これに対し、アルカリ化合物(X)を0.01質量%〜5質量%としたポリアミド樹脂組成物(P)を用いた実施例1〜11では、ポリアミド樹脂(A)の置換性が良好であり、かつ滞留箇所においてパージ樹脂であるポリアミド樹脂組成物(P)の増粘を抑制できることから、EVOHへの切り替え後の異物の混入なく、短時間で行うことができた。

Claims (7)

  1. 押出機または成形機内の、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−1)及び炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−1)を含むポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との樹脂切り替えの際に、パージ材として、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位(I−2)及び炭素数8〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位(II−2)を含むポリアミド樹脂(B)100質量部に対してアルカリ化合物(X)を0.01〜5質量部を含むポリアミド樹脂組成物(P)を用いるパージ方法であって、前記アルカリ化合物(X)が、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム十水和物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属塩である、パージ方法
  2. ポリアミド樹脂組成物(P)の260℃、122s-1の6分滞留後における溶融粘度が、200〜3000(pa・s)であり、かつポリアミド樹脂(P)の滞留6分後の溶融粘度(MV(6))と滞留60分後の溶融粘度(MV(60))との溶融粘度比R(R=MV(60)/MV(6))が0.1<R<1である、ポリアミド樹脂組成物(P)を用いた請求項1記載のパージ方法。
  3. 前記アルカリ化合物(X)が、炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩である、請求項1または2に記載のパージ方法。
  4. 前記ポリアミド樹脂(B)のジカルボン酸単位(II−2)が、セバシン酸単位を70モル%以上含む、請求項1〜のいずれかに記載のパージ方法。
  5. 前記ポリアミド樹脂(B)の融点が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂の押出加工温度以下である、請求項1〜のいずれかに記載のパージ方法。
  6. 前記ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸単位(II−1)が、アジピン酸単位を70モル%以上含む、請求項1〜のいずれかに記載のパージ方法。
  7. 前記ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸単位(II−1)が、アジピン酸単位を70〜99モル%及びイソフタル酸を1〜30モル%含む、請求項1〜のいずれかに記載のパージ方法。
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