JP5742014B2 - 柱状インゴットの鋳造装置および柱状インゴットの製造方法 - Google Patents
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インベストメント鋳造においては、その溶解単位が小さいため、特定サイズのマスターメタルを多数準備しておく必要がある。このようなマスターメタルを鋳造する手法としてマトリックス状(行列状)に配置した鋳型に、同時に上注ぎ鋳造する鋳造方法が提案されている。
例えば、特許文献1に記載される複数鋳塊の同時造塊装置は、並置立設された複数の鋳型と各鋳型に向かうノズル口を有する溶湯分配用のタンディッシュとの間に連通湯道をもつ耐火材製の平盤体を介在させるものである。この方法では複数の鋳型に同時に鋳造することが可能なため、鋳造時間が短く、かつ各鋳型に均一に鋳造して、押し湯不足を生じさせないという利点がある。
一方、本発明者の検討によれば、以下の課題が生産性を低下させる原因となっていることを突き止めた。
多数の鋳塊を同時に製造する場合、溶湯を分配させるタンディッシュに強度を必要とするため、溶湯を受けるタンディッシュは、溶湯が直接接触する耐火物と、それを補強する枠を要する。この場合、溶湯に対してタンディッシュそのものが冷却体となるために、鋳造後の押し湯内の溶湯はタンディッシュに熱を奪われ、鋳型鋳塊内に溶湯供給を十分に行う前に凝固してしまい、押し湯が有効に作用せずに鋳塊内に引け巣が発生する。引け巣の発生したマスターメタルは切断時に、切断粉が引け巣内へ浸入するため、これを再溶解した際の不良の原因となる。これを解決するために、押し湯を大きくした場合、品質に悪影響は及ぼさないが歩留損失を生じる。
また、タンディッシュから鋳型へと繋がるノズルの径が小さいと、炉中から溶湯に混入したスカム・耐火物等によるノズルの閉塞、狭窄が発生して鋳型内に溶湯が入らない場合がある。ノズル径を単純に大きくするだけでは、タンディッシュの残湯と鋳塊とが強固に繋がってしまい、作業性が悪くなる。鋳塊肌の改善を行うには鋳造速度の増加が有効であるが、そのためにはノズル径を大きくする必要があり、この場合にも上記の問題が発生する。
本発明は、タンディッシュの底面が、金属支持枠で覆われている場合に適用することが特に好ましい。
図3において、タンディッシュの底部が接触する断熱枠4は、個々の鋳型に対して独立して設けている。これはタンディッシュのノズル3と断熱枠4の間に別の湯道を形成するような部材が存在すると、その部分に発生する凝固金属により鋳造後の分離性を損なう恐れがあるためである。
本発明における断熱枠4は鋳型本体に連続する断熱筒体4aと、前記ノズル3からの溶湯を鋳型に導く開孔連通部4cを有し、開孔連通部4cの鋳型側は断熱筒体4aに対して全周オーバーハング形状となる断熱蓋部4bを設けている。このとき、開孔連通部4cの直径は、ノズル3の直径より小さくすることが好ましい。これにより、タンディッシュと鋳塊とを分離する作業が容易になる。
また、本発明は、オーバーハング形状となる断熱蓋部4bを設けることで、タンディッシュ耐火物1を支持しているタンディッシュ枠2と鋳型内の溶湯が接触しなくなるため、鋳塊上部からタンディッシュへと熱を奪われなくなり、断熱枠が鋳塊に対して有効に作用し、健全な鋳塊を得ることができる。また、本発明は、タンディッシュから鋳型へと繋がるノズルの閉塞を防ぐことができるため、鋳型への満注後に溶湯が凝固をし始めて鋳塊内部に引けが生じたときにも、断熱枠4内へタンディッシュから溶湯を補給することができる。このため、本発明は、断熱枠4を大きくすることなく、鋳塊内の引け巣の発生を効果的に防ぐことができる。
断熱蓋部4bおよび断熱筒体4aの材質は、断熱性能が高い断熱材を用いることが好ましく、例えばシリカファイバーやセラミックファイバーやアルミナファイバー等で構成されるものが適用でき、軟らかいものが望ましい。
なお、本発明の断熱蓋部4bのオーバーハング形状が、開孔連通部4cに向かってテーパー状に狭まる形状であって、オーバーハング形状を形成する壁面の角度が垂直に近づくと図4に示す鋳塊の上部角部9が断熱蓋部4bのオーバーハング形状に沿って繋がってしまい、タンディッシュと鋳塊とが強固に繋がってしまう恐れが強くなる。
そのため、オーバーハング形状としては、タンディッシュ底面と水平になるようにするのが好ましい。また、テーパーを設ける場合にも、開孔連通部4cの周囲にはタンディッシュ底面と水平な部分を設けることが好ましい。
また、タンディッシュと鋳塊はノズル残湯10の部位で切断されるが、ノズル径を大きくすると鋳塊自重での切断が不可能となり、タンディッシュと鋳塊とを分断する作業に困難が生じる。
また、タンディッシュと鋳塊を鋳塊自重で分断する場合、作業は赤熱状態で行う必要があり、このときノズル残湯10の下部で分断された際に、鋳塊内の引け巣表面が高温酸化されるため、品質に悪影響を及ぼす、といった問題が確認されている。
まず、冷し金6を配置した定盤7を準備し、その上に中空円柱状の鋳型5を設置する。次いで鋳型5の上部に上述した断熱筒体4aと断熱蓋部4bとなる開孔連通部4cを有する断熱材を置く。その後、タンディッシュ枠2を前記断熱枠に接触させた状態でタンディッシュ2に図示しない別のタンディッシュより溶湯を注湯し、複数本の柱状鋳型5に同時に上注ぎ鋳造する。
鋳造終了後、タンディッシュ枠2を断熱枠4から上方に離間させる。
このとき、図3に記載するように、断熱蓋部4bによりオーバーハング形状が形成されているため、鋳塊形状は図4のような形状となり、前記ノズルから断熱枠の間で自重により分離させる。最後に鋳型から抜塊して柱状インゴットを得ることができる。
2.タンディッシュ枠
3.ノズル
4.断熱枠 4a.断熱筒体 4b.断熱蓋部 4c.開孔連通部
5.鋳型
6.冷し金
7.定盤
8.引け巣
9.角部
10.ノズル残湯
Claims (3)
- 複数本の柱状鋳型と、個々の該鋳型に対応する複数のノズルを底部に有し該底部が前記鋳型の上部に設けた断熱枠に接触離間可能なタンディッシュとを具備し、前記鋳型の断熱枠は個々の該鋳型に対して独立して設けられ、鋳型本体直上に連続して置かれた断熱筒体と、前記ノズルからの溶湯を鋳型に導く開孔連通部を有し、該開孔連通部の鋳型側は前記断熱筒体に対して全周オーバーハング形状となる断熱蓋部とを具備することを特徴とする柱状インゴットの鋳造装置。
- タンディッシュの底面は、金属支持枠で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の柱状インゴットの鋳造装置。
- 請求項1または2に記載の柱状インゴットの鋳造装置を用いた柱状インゴットの製造方法であって、前記タンディッシュを前記断熱枠に接触させた状態で前記複数本の柱状鋳型に同時に上注ぎ鋳造し、ついでタンディッシュを断熱枠から離間させ、前記ノズルから断熱枠間で分離させることを特徴とする柱状インゴットの製造方法。
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