JP5741830B2 - 赤外線センサ装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、保持体に設置した樹脂フィルムと、該樹脂フィルムに設けられ保持体の導光部を介して赤外線を検出する赤外線検出用感熱素子と、樹脂フィルムに遮光状態に設けられ保持体の温度を検出する温度補償用感熱素子とを備えた赤外線温度センサが提案されている。この赤外線温度センサでは、導光部の内側面に赤外線吸収膜を形成すると共に、樹脂フィルムにカーボンブラック等の赤外線吸収材料を含有させて赤外線の吸収を高めている。
これら特許文献1及び2の赤外線センサでは、樹脂フィルムにカーボンブラック等の赤外線吸収材料を含有させると共に一方の感熱素子側を温度補償用に遮光する構造が採用されているが、赤外線吸収材料を含有した樹脂フィルムの熱伝導が高く、赤外線検出用と温度補償用との感熱素子間で温度差分が生じ難いという不都合があった。また、これら感熱素子間で温度差分を大きくするためには、感熱素子間の距離を大きくする必要があり、全体形状が大きくなってしまい、小型化が困難になる問題がある。さらに、温度補償用の感熱素子を遮光する構造をケース自体に設ける必要があるため、高価になってしまう。
また、特許文献2では、熱伝導の良い枠体を採用しているため、赤外線吸収膜からの熱も放熱されてしまい感度が劣化する不都合がある。また、リード線が接続された松葉型のため、サーミスタとリード線との間で熱の空間伝導が生じてしまう。
さらに、一方の感熱素子について赤外線を筐体で遮光する構造を採用しているが、赤外線を遮っているだけで遮蔽部分が赤外線を吸収してしまい、遮蔽部分の温度が変化してしまうことからリファレンスとして不完全となってしまう不都合があった。
従来の赤外線センサは、輻射熱を検出して測定対象物の温度を推定するが、測定対象物からの輻射熱(赤外線)を受ける部分と受けない部分との温度差(輻射熱の差分)を検出して測定対象物からの輻射熱量を推定している。この輻射熱を受ける部分と受けない部分とに生じる温度差は、測定対象物の温度と赤外線センサ自体の温度との4乗の温度差に比例する。例えば、測定対象物の温度をTTとし、赤外線センサの温度をTSとし、輻射熱を受ける部分の温度をTAとし、輻射熱を受けない部分の温度をTRとした場合、以下の式で示す関係となる。
したがって、同じ状態であれば、赤外線センサと測定対象物との温度差が小さいと赤外線センサ表面に生じる温度差(輻射熱を受ける部分と受けない部分との温度差)が小さくなり、検出精度が低下してしまう不都合がある。すなわち、測定対象物と赤外線センサとの温度差に対して赤外線センサの輻射熱を受ける部分と受けない部分との温度差は、図8に示すように、指数関数的に増加するが、温度差が小さいと測定対象物の温度を検出し難くなることがわかる。
一方、測定対象物の温度を測定するためには、上記のように赤外線センサの輻射熱を受ける部分と受けない部分との2つの部分で検出した温度により算出する必要があり、演算処理が必要になることから、温度検出回路が複雑になる不都合もあった。
すなわち、この赤外線センサ装置では、センサ温度制御部が、測定対象物の温度が赤外線センサ本体の温度以上の場合に、赤外線センサ本体を冷却して温度を低くし、測定対象物の温度が赤外線センサ本体の温度未満の場合に、赤外線センサ本体を加熱して温度を高くするので、測定対象物の温度と赤外線センサ本体の温度との温度差が大きくなり、高精度に測定対象物の温度を検出することができる。
すなわち、この赤外線センサ装置では、センサ温度制御部が、第1の感熱素子と第2の感熱素子との互いの電気信号の出力値が同一になった状態で第1の感熱素子または第2の感熱素子からの電気信号に基づいて測定対象物の温度を求めるので、測定対象物と赤外線センサ本体とが同一温度となり、第1の感熱素子の電気信号と第2の感熱素子の電気信号との差分を求める演算処理が不要になり、第1の感熱素子または第2の感熱素子3Bの電気信号のみから測定対象物の温度を高精度に得ることができる。
従来の特許文献1に記載の赤外線センサでは、上述したように輻射熱を受ける部分と受けない部分とで構造が大きく異なるため、両者で温度分布が生じ易い。また、センサとしてサーモパイルを採用した場合、検出素子が熱電対(輻射熱を受ける部分)であると共に温度補償素子がダイオード(輻射熱を受けない部分)であるため、輻射熱を受ける部分と受けない部分とで素子が異なり、やはり検出素子と補償素子との温度追従が異なり、制御による誤差が生じてしまう問題がある。
これらに対して本発明の赤外線センサ装置では、赤外線センサ本体が、絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、第2の感熱素子に対向して絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備えているので、互いに絶縁性フィルム上に並んだ検出用の第1の感熱素子と補償用の第2の感熱素子とに生じる温度分布が小さくなり、センサ温度制御部による赤外線センサ本体の温度制御時に検出素子(第1の感熱素子)と補償素子(第2の感熱素子)との温度追従が大幅に向上する。
すなわち、この赤外線センサ装置では、第1の配線膜が、第1の感熱素子の周囲にまで配されて第2の配線膜よりも大きな面積で形成されているので、大きな面積の第1の配線膜が、絶縁性フィルムを透過して筐体に照射される赤外線を遮断すると共に筐体から放射される輻射熱を遮断して絶縁性フィルムへの熱影響を抑制することができる。さらに、絶縁性フィルムの赤外線を吸収した部分からの熱収集を改善すると共に、絶縁性フィルムの赤外線反射膜が形成された部分と熱容量が近づくので、変動誤差を小さくすることができる。したがって、周囲の温度変動に敏感に反応することから、センサ温度制御部の制御による温度変化に対しても輻射熱を受ける部分と受けない部分との追従性が良く、検出精度がさらに改善される。なお、第1の配線膜の面積及び形状は、絶縁性フィルムの赤外線反射膜が形成された部分と熱容量がほぼ等しくなるように設定することが好ましい。
すなわち、この赤外線センサ装置では、センサ温度制御部が、赤外線センサ本体に取り付けられたペルチェ素子と、該ペルチェ素子および赤外線センサ本体に電気的に接続されてペルチェ素子を制御する制御回路部とを備えているので、制御回路部でペルチェ素子を制御することで赤外線センサ本体を直接加熱または冷却することができる。
すなわち、本発明に係る赤外線センサ装置によれば、センサ温度制御部が、少なくとも第1の感熱素子からの電気信号に基づいて測定対象物の温度を求めると共に、第2の感熱素子からの電気信号に基づいて赤外線センサ本体の温度を制御するので、センサ温度制御部が赤外線センサ本体と測定対象物との温度差を制御して高精度な温度測定が可能になる。
また、一対の第2の配線膜4Bは、線状に形成されており、その一端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第2の接着電極5Bが接続されていると共に、他端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第2の端子電極8Bが接続されている。
なお、上記第1の接着電極5A及び第2の接着電極5Bには、それぞれ第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bの端子電極3aが半田等の導電性接着剤で接着される。
この赤外線反射膜6は、絶縁性フィルム2よりも高い赤外線放射率を有する材料で形成され、上述したように、銅箔上に金メッキ膜が施されて形成されている。なお、金メッキ膜の他に、例えば鏡面のアルミニウム蒸着膜やアルミニウム箔等で形成しても構わない。この赤外線反射膜6は、第2の感熱素子3Bよりも大きなサイズでこれを覆うように形成されている。
この筐体7内の絶縁性フィルム2に対向する底面には、赤外線を反射する底面反射膜9が形成されている。この底面反射膜9は、上記赤外線反射膜6と同様の膜が採用可能である。
このセンサ温度制御部11は、少なくとも第1の感熱素子3Aからの電気信号に基づいて測定対象物Sの温度を求めると共に、第2の感熱素子3Bからの電気信号に基づいて赤外線センサ本体10の温度を制御する機能を有している。この温度制御としては、以下の2つの制御方法が設定される。
この第1の制御では、制御回路部Cが、第1の感熱素子3Aと第2の感熱素子3Bとで検出された赤外線の差分(出力の差分)を演算処理し、第2の感熱素子3Bをリファレンスとして第1の感熱素子3Aで検出された温度を算出する機能を有している。
すなわち、センサ温度制御部11は、測定対象物Sの温度と赤外線センサ本体10の温度とが異なる場合に、第1の感熱素子3Aおよび第2の感熱素子3Bからの両電気信号の出力値を同一になるように赤外線センサ本体10を加熱または冷却し、赤外線センサ本体10の温度を測定対象物Sと同一温度にするように設定されている。
なお、センサ温度制御部11は、上記2つの制御のいずれか一方のみが設定されているが、いずれかの制御を選択可能としても構わない。
さらに、筐体7内の絶縁性フィルム2に対向する底面に、赤外線を反射する底面反射膜9が形成されているので、筐体7内の底面から放射される輻射熱を底面反射膜9で直接反射させて遮断することで対向する絶縁性フィルム2や感熱素子3A,3Bへの影響をさらに抑制することができる。
なお、この赤外線吸収膜は、第1の感熱素子よりも大きなサイズでこれを覆うように形成することが好ましい。また、赤外線吸収膜を設ける場合は、赤外線反射膜側の熱容量と略等しくなるように各配線膜を含めて面積や形状を設定する必要がある。
なお、感熱素子としては、上述したように薄膜サーミスタやチップサーミスタが用いられるが、サーミスタ以外に焦電素子等も採用可能である。
Claims (4)
- 測定対象物から放射された赤外線を検出する第1の感熱素子と前記測定対象物から放射された赤外線が遮光されてこの赤外線を検出しない第2の感熱素子とを有する赤外線センサ本体と、
前記第1の感熱素子および前記第2の感熱素子からの電気信号を入力可能であると共に前記赤外線センサ本体の温度を制御可能なセンサ温度制御部とを備え、
前記センサ温度制御部が、少なくとも前記第1の感熱素子からの電気信号に基づいて前記測定対象物の温度を求めると共に、前記第2の感熱素子からの電気信号に基づいて前記赤外線センサ本体の温度を制御し、
前記センサ温度制御部が、前記第1の感熱素子および前記第2の感熱素子からの電気信号に基づいて求めた前記測定対象物の温度が前記第2の感熱素子からの電気信号に基づいて求めた前記赤外線センサ本体の温度以上の場合に、前記赤外線センサ本体を冷却して温度を低くし、前記測定対象物の温度が前記赤外線センサ本体の温度未満の場合に、前記赤外線センサ本体を加熱して温度を高くすることを特徴とする赤外線センサ装置。 - 請求項1に記載の赤外線センサ装置において、
前記赤外線センサ本体が、絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、
前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備えていることを特徴とする赤外線センサ装置。 - 請求項2のいずれか一項に記載の赤外線センサ装置において、
前記第1の配線膜が、前記第1の感熱素子の周囲にまで配されて前記第2の配線膜より大きな面積で形成されていることを特徴とする赤外線センサ装置。 - 請求項1又は2に記載の赤外線センサ装置において、
前記センサ温度制御部が、前記赤外線センサ本体に取り付けられたペルチェ素子と、
該ペルチェ素子および前記赤外線センサ本体に電気的に接続されて前記ペルチェ素子を制御する制御回路部とを備えていることを特徴とする赤外線センサ装置。
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