以下、本発明に係る漏洩検知装置の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る漏洩検知装置を含むLPガス供給システムの構成図である。
図1に示すように、LPガス供給システム1は、複数のLPガス容器2,3と、高圧ホース20と、自動切替調整器(圧力調整器)30と、漏洩検知装置40とを備えている。
複数のLPガス容器2,3は、それぞれLPガスが納められた容器であって、LPガスを消費側(例えば、各家庭)に供給するものである。このLPガス容器2,3は開閉弁10を有している。開閉弁10は、LPガス容器2,3の開閉を行うための弁である。高圧ホース20はLPガス容器2〜5からのLPガスを自動切替調整器30まで導くホースであって、高圧に耐え得る構造となっている。
自動切替調整器30は、左右のLPガス容器2,3から伸びる高圧ホース20に接続されると共に、流出ポートを介して各家庭側に接続されている。この自動切替調整器30は、左右のLPガス容器2,3からの高圧ガスの流入を切り替えると共に、圧力調整機能によって家庭に送られるLPガスの圧力を適正に維持する。
漏洩検知装置40は、自動切替調整器30の上流側の漏洩を検出するものである。この漏洩検知装置40は、センサ部41を有し、センサ部41により検出された状態量に基づいて、自動切替調整器30の上流側の漏洩を判断する。特に、本実施形態においてセンサ部41は、LPガス容器2,3(具体的には開閉弁10)と高圧ホース20との接続部近傍に設けられている。ここで、自動切替調整器30の上流において発生する漏洩は、LPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部にて多く生じる傾向にある。このため、これらの接続部の状態量を検出して漏洩判断することにより、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
なお、センサ部41は、高圧ホース20と自動切替調整器30との接続部近傍に設けられてもよい。この箇所においても漏洩の頻度が高いからである。なお、以下の説明ではセンサ部41がLPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部近傍に設けられている例を説明するものとする。
図2は、図1に示した漏洩検知装置40のセンサ部41付近の様子を示す構成図である。図2に示すように、漏洩検出装置40は、マイクロフォン(音波センサ)41aとガスセンサ41bとからなるセンサ部41と、外筒42と、信号線43と、留め具44とを備えている。
マイクロフォン41aは、周囲の音声を入力して電気信号に変換するものである。ガスセンサ41bは、周囲に存在する検知対象となるLPガスの濃度に応じた信号を出力するものであって、ガス導入側表面に不織布が設けられている。外筒42は、LPガス容器2,3(具体的には開閉弁10)と高圧ホース20との接続部の近傍において高圧ホース20と同軸上に取り付けられた筒体である。
図3は、図2に示した外筒42の詳細を示す正面図であって、外筒42を軸上に正面視している。また、図3では、外筒42を一部破断させた一部断面についても示している。図3に示すように、外筒42は、内部筒42aと、外部筒42bと、ブリッジ42cと、ハニカム部42dとからなっている。
内部筒42aは、高圧ホース20の外径と一致する内径を有しており、高圧ホース20に密着状態で取り付けられる円筒部である。外部筒42cは、内部筒42aの外周側において内部筒42aを包囲するように設けられた円筒部である。ブリッジ42cは、内部筒42aと外部筒42bとの間の空間に配置され、両者を接続する部材として機能する。このブリッジ42cは、図2に示すように、LPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部の反対面側のみに形成されている。一方、内部筒42aと外部筒42bとの間の空間のうち接続部側には、ハニカム部42dが形成されている。
再度、図2を参照する。外筒42は、一側にセンサ収容部42eを備えている。このセンサ収容部42eにはガスセンサ41bが収容されている。このため、接続部からガス漏洩が発生すると、漏洩したLPガスは、外筒42のハニカム部42dを通じてセンサ収容部42eに至り、センサ収容部42e内のガスセンサ41bにより濃度が検出されることとなる。
また、マイクロフォン41a及びガスセンサ41bは、検出信号が信号線43を通じて漏洩検知装置40の本体に送信されるようになっている。留め具44は、信号線43を束ねるためのリングであり、本実施形態においてはガスセンサ41bの信号線43が留め具44により高圧ホース20に取り付けられている。これにより、信号線43は高圧ホース20に沿うように配索されることとなり、邪魔となり難くなっている。
なお、本実施形態においてマイクロフォン41aは、接続部の近傍の音波を検出できるように配置されていればよく、設置形態は特に限られるものではない。また、マイクロフォン41aの信号線43は留め具44により高圧ホース20に取り付けられていないが、これに限らず、取り付けられていてもよい。
図4は、図1に示した漏洩検知装置40の詳細を示すブロック図である。図4に示すように、漏洩検知装置40の本体45は、漏洩判断部(漏洩判断手段)45aを有している。
漏洩判断部45aは、センサ部41により検出された状態量に基づいて自動切替調整器30の上流側における漏洩を判断するものである。特に、本実施形態に係る漏洩判断部45aは、まず、マイクロフォン41aから得られる信号に基づいて漏洩の可能性があることを判断する。次いで、漏洩判断部45aは、マイクロフォン41aからの信号により漏洩の可能性があることを判断した場合に、ガスセンサ41bからの信号に基づいてLPガスの漏洩を判断する。
すなわち、本実施形態に係る漏洩検知装置40は、音波と実際のLPガスの濃度とから漏洩を判断する構成となっている。そして、まずマイクロフォン41aからの信号により漏洩の可能性があるかを判断し、可能性がある場合にガスセンサ41bからの信号により漏洩を判断する。よって、通常の生活音や周囲の騒音によりガス漏洩と誤って判断されてしまったとしても、ガスセンサ41bからの信号に基づいてガス漏洩ではないと判断することができ、ガス漏洩をより精度良く検出することができることとなる。
より詳細に漏洩判断部45aは、マイクロフォン41aから得られる信号の値が第1所定値以上となる場合、又は、マイクロフォン41aから得られる信号の波形と予め記憶された漏洩時における波形との類似度が第2所定値以上である場合に、漏洩の可能性があると判断する。
ここで、自動切替調整器30内やその上流においてLPガスは高圧状態にある。そして、高圧状態のLPガスが漏洩すると、自動切替調整器30の下流側のLPガスとは異なり、特徴的な音波レベルや波形が得られる傾向にある。このため、マイクロフォン41aから得られる信号の値が第1所定値以上となる場合、又は、信号波形の類似度が第2所定値以上である場合に、漏洩の可能性があると判断することで、ガス漏洩の検出精度を向上させている。
図5は、第1所定値を示すグラフである。図5に示すグラフにおいて0m秒から2150m秒までの時間帯では漏洩が発生しておらず、2150m秒から10000m秒までは漏洩が発生している。
図5に示すように、マイクロフォン41aから得られる信号の値は、漏洩が発生していない場合において大凡2.45〜2.49vの範囲内に収まる。これに対して、漏洩が発生している場合、マイクロフォン41aから得られる信号の値は、2.41v以下となったり2.52v以上となったりする。このため、第1所定値は、例えば2.49vより高く2.52v未満程度に設定すれば、漏洩判断部45aは漏洩の可能性を判断できることとなる。
図6は、図2に示したマイクロフォン41aから得られる信号波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図6の実線に示すように、漏洩が発生していない場合、周波数400〜500Hzの周波数域においてスペクトル強度は殆ど「1」以上とならならず、周波数452Hz付近においてのみ「1」以上となる。これに対して、漏洩が発生している場合、図6の破線に示すように、周波数417Hz付近、423Hz付近、437Hz付近、448Hz付近、452Hz付近、及び470Hz付近においてスペクトル強度が「1」以上となる。
このため、漏洩判断部45aは、図6の破線に示すようなスペクトルデータを記憶しておき、マイクロフォン41aから得られる信号波形をフーリエ変換し、記憶したスペクトルデータとの類似度を算出して、類似度が第2所定値以上である場合に漏洩の可能性があると判断することができる。
上記説明において漏洩判断部45aは、信号波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出し、その後類似度を算出しているが、これに限らず、漏洩があるときの信号波形を記憶しておき、マイクロフォン41aから得られる信号波形を直接記憶した信号波形と比較して類似度を求めてもよい。さらに、漏洩判断部45aは、フーリエ変換に限らず、信号波形に他の加工を施したうえで類似度算出してもよい。
加えて、図6の破線に示すように、漏洩が発生している場合、448Hz付近においてスペクトル強度が「2」以上となっている。すなわち、漏洩が発生している場合、漏洩が発生していない場合と比較して、或る周波数においてスペクトル強度が明らかに高くなる。このため、漏洩判断部45aは、信号波形の類似度が第2所定値以上、且つ、スペクトル強度の値が特定値以上となる場合に、漏洩の可能性があると判断してもよい。なお、スペクトル強度が高くなる周波数は、漏洩の箇所や流量によって、必ずしも448Hz付近ではなく、他の周波数となることもある。
さらに漏洩判断部45aは、上記にて説明した処理を経て漏洩の可能性があると判断した場合、ガスセンサ41bからの信号の微分値が閾値以上となるときに、LPガスが漏洩していると判断する。ここで、LPガスが漏洩した場合、ガスセンサ41bがLPガスに感じ始めたときの立ち上り波形が得られることとなる。このため、微分値が閾値以上となる場合に、LPガスが漏洩していると判断することとしている。
加えて漏洩判断部45aは、上記にて説明した処理を経て漏洩の可能性があると判断した場合、ガスセンサ41bからの信号の値が規定値以上となるときには、高濃度のLPガスが漏洩していると判断する。ここで、LPガスが漏洩して或る程度の時間が経過した場合、ガスセンサ41bの周辺には高濃度のLPガスが滞留することとなり、信号の値が規定値以上となる。このため、信号の値が規定値以上となる場合に、高濃度のLPガスが漏洩していると判断することとしている。
次に、本実施形態に係る漏洩検知方法の概略を説明する。図7は、本実施形態に係る漏洩検知方法の概略を説明するためのタイミングチャートであって、ガスセンサ41bの出力を示している。まず、時刻t1においてLPガスの漏洩があったとすると、ガスセンサ41bの出力は上昇し始める。また、ガスセンサ41bの出力の微分値についても上昇し、時刻t2において閾値以上となる。すなわち、時刻t2においてガス濃度の変化率が閾値以上となる。ガスセンサ41bの出力の微分値が閾値以上となった場合、漏洩判断部45aは、その事実を記録しておく。
一方、マイクロフォン41aは、周囲の音声を検出して電気信号に変換し、電気信号を漏洩判断部45aに出力する。次いで、漏洩判断部45aは、マイクロフォン41aから得られる信号の値が第1所定値以上となるか、又は、マイクロフォン41aから得られる信号の波形と予め記憶された漏洩時における波形との類似度が第2所定値以上であるかを判断する。
そして、漏洩判断部45aは、信号値が第1所定値以上である場合、又は、信号波形と予め記憶された漏洩時における波形との類似度が第2所定値以上である場合、漏洩の可能性があると判断する。なお、この時点において漏洩の可能性があると判断され、且つ、ガスセンサ41bの出力の微分値が閾値以上となった事実が記録されている。従って、漏洩判断部45aは、漏洩が発生していると判断することとなる。
その後、ガス漏洩が継続しているとする。この場合、LPガス濃度が次第に高まることとなり、時刻t3においてガスセンサ41bからの信号の値は規定値(例えばガス濃度4500ppm)以上となる。これにより、漏洩判断部45aは、高濃度のLPガスが漏洩していると判断する。
次に、本実施形態に係る漏洩検知方法についてフローチャートを参照して説明する。図8は、本実施形態に係る漏洩検知方法の一例を示すフローチャートである。なお、上記フローチャートは一例であって、種々の変更が可能である。
まず、漏洩判断部45aは、漏洩フラグを「0」にセットする(S1)。次いで、漏洩判断部45aは、マイクロフォン41aからの信号値が第1所定値以上であるか否かを判断する(S2)。マイクロフォン41aからの信号値が第1所定値以上であると判断した場合(S2:YES)、処理はステップS4に移行する。一方、マイクロフォン41aからの信号値が第1所定値以上でないと判断した場合(S2:NO)、漏洩判断部45aは、マイクロフォン41aの信号波形と予め記憶される漏洩時の信号波形との類似度が第2所定値以上であるか否かを判断する(S3)。類似度が第2所定値以上でないと判断した場合(S3:NO)、図7に示す処理は終了する。類似度が第2所定値以上であると判断した場合(S3:YES)、処理はステップS4に移行する。
次いで、漏洩判断部45aは、ガスセンサ41bからの微分値が閾値以上であるか否かを判断する(S4)。ガスセンサ41bからの微分値が閾値以上でないと判断した場合(S4:NO)、処理はステップS6に移行する。一方、ガスセンサ41bからの微分値が閾値以上であると判断した場合(S4:YES)、漏洩判断部45aは、漏洩フラグに「1」を代入する(S5)。そして、処理はステップS6に移行する。
ステップS6において漏洩判断部45aは、ガスセンサ41bの信号値が規定値以上であるか否かを判断する(S6)。ガスセンサ41bの信号値が規定値以上でないと判断した場合(S6:NO)、処理はステップS8に移行する。一方、ガスセンサ41bの信号値が規定値以上であると判断した場合(S6:YES)、漏洩判断部45aは、漏洩フラグに「2」を代入する(S7)。そして、処理はステップS8に移行する。
ステップS8において漏洩判断部45aは、漏洩フラグが「1」であるか否かを判断する(S8)。漏洩フラグが「1」であると判断した場合(S8:YES)、漏洩判断部45aは、自動切替調整器30の上流(特に上記した接続部)において漏洩が発生していると判断する(S10)。その後、図8に示す処理は終了する。
漏洩フラグが「1」でないと判断した場合(S8:NO)、漏洩判断部45aは、漏洩フラグが「2」であるか否かを判断する(S9)。漏洩フラグが「2」でないと判断した場合(S9:NO)、図7に示す処理は終了する。漏洩フラグが「2」であると判断した場合(S9:YES)、漏洩判断部45aは、自動切替調整器30の上流(特に上記した接続部)において高濃度のガス漏洩が発生していると判断する(S11)。その後、図8に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係る漏洩検知装置40によれば、LPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部、又は、高圧ホース20と自動切替調整器30との接続部における状態量を検出し、検出された状態量に基づいて、自動切替調整器30の上流の漏洩を判断する。ここで、自動切替調整器30の上流において発生する漏洩は、LPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部、又は、高圧ホース20と自動切替調整器30との接続部にて多く生じる傾向にある。このため、これらの接続部の状態量を検出して漏洩判断することにより、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
また、接続部を覆う外筒42をさらに備え、センサ部41は、外筒内においてガス濃度を検出するガスセンサ41bを有する。このため、接続部にて漏洩が発生した場合、ガスは外筒42内に一部収集されることとなり、ガスセンサ41bにより漏洩を判断し易くすることができる。
また、マイクロフォン41aから得られる信号に基づいて漏洩の可能性があることを判断し、漏洩の可能性があることを判断した場合にガスセンサ41bからの信号に基づいてLPガスの漏洩を判断する。このため、音波と実際のLPガスの濃度とから漏洩を判断することとなる。これにより、通常の生活音や周囲の騒音により自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩と判断されてしまった場合には、ガスセンサ41bからの信号に基づいてガス漏洩ではないと判断することができる。また、自動切替調整器30には、減圧機能以外にガス未使用時等に低圧側内部圧力が所定圧力以上の異常圧力となった場合、内蔵の安全装置が働き、低圧のガスを一時的に外気に放出することで、所定圧力に回復する機能を保有している。この場合、製品機能としては正常な動作を行っており、外気に放出したガスは、漏洩とは区別する必要があり、ガスセンサ41bでは判別することは困難であるが、マイクロフォン41aでは、漏洩の可能性ありの信号が出ない。すなわち、外気に放出した低圧ガスは、大気との圧力差が小さく、流速も低いため、マイクロフォン41aから得られる信号に基づいて漏洩の可能性があるとの判断をしない。従って、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
また、センサ部41からの検出信号を漏洩判断部45aまで導く信号線43をさらに備え、信号線43は、留め具44により高圧ホース30に取り付けられている。このため、信号線43を高圧ホース20に沿うように配索することとなり、信号線43が邪魔になり難く、信号線43が検査員等に引っ掛かって切断されてしまう等の事態を防止することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る漏洩検知装置40は第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
図9は、第2実施形態に係る漏洩検知装置40のセンサ部41付近の様子を示す構成図である。図9に示す漏洩検知装置40は、センサ部41として温度センサを備えている。具体的に温度センサは焦電センサであって、温度変化による誘電体の表面電荷が変化することを利用して、接続部における温度を検出するものである。また、焦電センサのうちガス導入側には不繊布41aが設けられている。さらに、温度センサは、留め具46により高圧ホース20に取り付けられている。
このようなセンサ部41は、ガス漏洩による拡散冷却現象を検出する。具体的には拡散冷却現象による温度変化によって焦電センサの焦電体の表面電化が変化し、この変化分が電圧として出力されることとなる。
なお、図9に示す例においてセンサ部41は、LPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部近傍に設けられているが、これに限らず、高圧ホース20と自動切替調整器30との接続部近傍に設けられていてもよい。
図10は、第2実施形態に係る漏洩検知装置40の詳細を示すブロック図である。図10に示すように、漏洩検知装置40の本体45は、温度低下算出部(温度低下算出手段)45bをさらに備えている。
温度低下算出部45bは、センサ部41からの信号に基づいて、LPガス容器2,3と高圧ホース20との温度低下を算出するものである。この温度低下算出部45bは、温度の低下し始めの時刻及び温度を記憶し、その後どれだけの時間でどれだけの温度が低下したかを算出する。また、温度低下算出部45bは、一定時間温度の低下が検出できない場合、上記記憶した時刻や温度の情報を消去する。
さらに、第2実施形態において漏洩判断部45aは、温度低下算出部45bによる算出結果に基づいて、温度検知箇所(具体的にはLPガス容器2,3と高圧ホース20との接続部)における漏洩を判断するものである。この漏洩判断部45aは、所定分数以内に所定温度以上低下した場合に温度検知箇所に漏洩が発生したと判断する。
図11は、図10に示した漏洩判断部45aによる漏洩判断方法を示すグラフである。温度が低下する要因としては、例えば太陽が雲に隠れた場合などがある。図11に示すように、例えば晴天時の昼間に太陽が雲に隠れた場合、LPガス供給システム1(特に高圧ホース20の表面)は、凡そ60分で5℃程度低下する傾向にある。また、例えば晴天時の夕方に太陽が雲に隠れた場合、LPガス供給システム1(特に高圧ホース20の表面)は、凡そ20分で10℃程度低下する傾向にある。
これに対して、高圧ガスが漏洩した場合、外気温度の高さに影響されることなくLPガス供給システム1(特に高圧ホース20の表面)は、凡そ5分で10℃程度低下する傾向にある。すなわち、高圧ガスが漏洩した場合、温度の低下率が高く、図11に示すように漏洩判定閾値を適切に設定すれば温度の低下に基づいて、自動切替調整器30の上流側(特に接続部)におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
次に、本実施形態に係る漏洩検知装置40の漏洩検知方法について説明する。図12は、本実施形態に係る漏洩検知装置40の漏洩検知方法を示すフローチャートである。
図12に示すように、まず、温度低下算出部45bはセンサ部41からの信号に基づいて温度低下を検出したか否かを判断する(S11)。温度低下を検出していないと判断した場合(S11:NO)、検出したと判断するまで、この処理が繰り返される。
一方、温度低下を検出したと判断した場合(S11:YES)、温度低下算出部45bは不図示の記憶部等にそのときの温度及び温度の低下開始時刻を記憶させる(S12)。次に、温度低下算出部45bは、センサ部41からの信号に基づいて温度上昇を検出したか否かを判断する(S13)。
温度上昇を検出したと判断した場合(S13:YES)、温度低下算出部45bはステップS2において記憶させた記憶内容を消去させる(S14)。そして、処理はステップS1に移行する。
一方、温度上昇を検出していないと判断した場合(S13:NO)、漏洩判断部45aは、センサ部41からの信号を読み込み、現時点における温度とステップS2において記憶した温度及び時刻とから、漏洩判定閾値以上温度が低下したか否かを判断する(S15)。すなわち、漏洩判断部45aは、所定分数以内に所定温度以上低下したか否か(例えば5分で7.5℃以上又は10分で15℃以上低下したか否か)を判断する。
所定分数以内に所定温度以上低下していないと判断した場合(S15:NO)、処理はステップS3に移行する。所定分数以内に所定温度以上低下したと判断した場合(S15:YES)、漏洩判断部45aは、高圧ガスの漏洩が発生したと判断する(S16)。その後、自動通報や警報等の適切な処理が実行され、図12に示す処理は終了する。
このようにして、第2実施形態に係る漏洩検知装置40によれば、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができ、信号線43が検査員等に引っ掛かって切断されてしまう等の事態を防止することができる。
また、センサ部41は、接続部における温度を検出する温度センサであって、温度センサは、留め具46により高圧ホース20に取り付けられている。このため、温度センサを高圧ホース20に近接配置でき、ガス漏洩により生じる温度変化を捉え易くすることができる。
また、温度検知箇所の温度低下を算出し、算出した温度低下の結果に基づいて温度検知箇所における漏洩を判断する。ここで、自動切替調整器30の上流の高圧ガスは漏洩すると拡散冷却現象により急激な温度低下を生じる傾向にある。特に、この温度低下は太陽の雲隠れ等と比較すると急激なものであり、これらと誤認する可能性も低い。従って、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る漏洩検知装置40は第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
図13は、第3実施形態に係る漏洩検知装置40の様子を示す構成図である。図13に示すように、第3実施形態に係る漏洩検知装置40は、ガス捕集部47を備えている。ガス捕集部47は、接続部(例えば高圧ホース20と自動切替調整器30との接続部)を覆う箱上の部材である。このガス捕集部47を備えることにより、接続部からガス漏洩が発生した場合、漏洩したガスはガス捕集部47に捕集されることとなる。
また、ガス捕集部47は、隔離壁48を有し、この隔離壁48により内部を第1空間SP1と第2空間SP2とに隔てている。このうち第1空間SP1には接続部が位置しており、第2空間SP2には基板B上に搭載されたガスセンサ41bが設けられている。
さらに、隔離壁48には貫通孔48aが形成されている。このため、接続部からガス漏洩が発生した場合、漏洩したガスはガス捕集部47の第1空間SP1にて捕集され、貫通孔48aを通じてガスセンサ41bまで至ることとなる。特に、第3実施形態に係る漏洩検知装置40は貫通孔48aを有した隔離壁48を備えているため、高圧ガスが漏洩した場合、ガス捕集部47内の圧力が高まった影響を直接ガスセンサ41bにより受けることなく、ガスセンサ41bの保護を図っている。
さらに、ガス捕集部47は、鉛直下側に外部と連通する連通部49を有している。このため、高圧ガスが漏洩した場合、高まったガス捕集部47内の圧力を外部に逃がすことができ、圧力が高まったままの状態で維持されることを防止することができる。
図14は、第3実施形態に係る漏洩検知装置40の詳細を示すブロック図である。第3実施形態において漏洩検知装置40の本体50の機能は、図13に示した基板B上に搭載されている。まず、第3実施形態において漏洩判断部45aは、ガスセンサ41bのみからの信号に基づいて、自動切替調整器30(特に接続部)の漏洩を判断することができる。
より詳細に漏洩判断部45aは、ガスセンサ41bからの検出信号に基づいてガス捕集部47内のガス濃度が所定濃度以上となったか否かにより、漏洩を判断する。第3実施形態ではガス捕集部47を備えており、高圧ガスが漏洩した場合、ガスはガス捕集部47にて捕集されることとから、ガスセンサ41bの検出結果のみからであっても精度良く高圧ガスの漏洩を検出することができる。よって、第3実施形態では音波センサ41aを備えなくとも、漏洩を判断することができる。
なお、第3実施形態では音波センサ41aを備えていないが、補助的に音波センサ41aを備え、第1実施形態と同様の処理を実行して漏洩を判断するようになっていてもよい。
さらに、第3実施形態に係る漏洩検知装置40は停止部(停止手段)45cを備えている。停止部45cは、ガスセンサ41bへの電源供給を停止させる機能を有している。
図15は、第3実施形態に係る漏洩判断部45aによる漏洩判断方法を示すグラフである。上記したように漏洩判断部45aは、ガス捕集部47内のガス濃度が所定濃度以上となったか否かにより、漏洩を判断する。ここで、所定濃度は、爆発下限界の1/4〜1/2の値であって、例えば6000ppmに設定される。
そして、漏洩判断部45aは、所定濃度以上のガス濃度を検出した場合に接続部にてガス漏洩が発生していると判断する。より詳細に漏洩判断部45aは、所定濃度以上のガス濃度が検出されると、1秒以内にその旨の出力を発する。そして、停止部45cは、その旨の出力が発せられると、その後の1秒以内にガスセンサ41bへの電源供給を停止させる。これにより、ガスセンサ41bの保護を図っている。
このようにして、第3実施形態に係る漏洩検知装置40によれば、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
また、接続部を覆うガス捕集部47をさらに備え、センサ部41は、ガス捕集部47内においてガス濃度を検出するガスセンサ41bを有する。このため、接続部にて漏洩が発生した場合、ガスはガス捕集部47内に一時滞留することとなり、ガスセンサ41bにより漏洩を判断し易くすることができる。
また、ガス捕集部47は、内部を接続部側の第1空間SP1と、それ以外の第2空間SP2とに隔てる隔離壁48を有し、隔離壁48には貫通孔48aが設けられ、ガスセンサ41bは、第2空間SP2内に配置されている。このため、高圧ガスが漏れたことによりガス捕集部47内の圧力が高まった影響を直接ガスセンサ41bにより受けることなく、ガスセンサ41bの保護を図ることができる。
また、ガス捕集部47は鉛直下側に外部と連通する連通部49を有するため、高圧ガスが漏れたことにより高まったガス捕集部47内の圧力を外部に逃がすことができる。特に、自動切替調整器30には、減圧機能以外にガス未使用時等に低圧側内部圧力が所定圧力以上の異常圧力となった場合、内蔵の安全装置が働き、低圧のガスを一時的に外気に放出することで、所定圧力に回復する機能を保有している。このように放出されたガスが蓄積され続けることもなく、より正確に漏洩を検出することができる。
また、ガスセンサ41bからの検出信号に基づいてガス捕集部47内のガス濃度が所定濃度以上となったか否かにより漏洩を判断する。ここで、ガス漏洩が発生した場合、高圧ガスがガス捕集部47内に溜まるが、一部は連通部49により外部に排出される。このため、高圧ガスの漏洩という状況でなければガス濃度は高まっていき難く、所定濃度以上になった場合とは高圧ガスの漏洩と判断できる。従って、自動切替調整器30の上流側におけるガス漏洩をより精度良く検出することができる。
また、ガス捕集部47内のガス濃度について所定濃度以上の状態が所定時間以上継続した場合、ガスセンサ41bへの電源供給を停止するため、ガスセンサ41bの保護を図ることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態を組み合わせてもよい。
例えば、本実施形態においてLPガス供給システム1は、2つのLPガス容器2,3を備えているが、これに限らず、LPガス容器2,3は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
また、本実施形態において漏洩検知装置40は自動切替調整器30と別体にて構成されているが、漏洩検知装置40は自動切替調整器30に内蔵されていてもよい。また、ガスメータに内蔵されていてもよい。
さらに、LPガス供給システム1は、逆支弁や集合管を備えるものであってもよい。図16は、本実施形態に係る漏洩検知装置40を含むLPガス供給システムの他の一例を示す構成図である。図16に示すLPガス供給システム1’は、図1に示す例に加えて、LPガス容器4,5と、逆止弁50と、集合管60とを備えている。
逆止弁50は、高圧ガスが逆方向に流れてしまうことを防止する弁であって、高圧ホース20と集合管60との間に設けられている。集合管60は、LPガス容器2〜5からの高圧ガスが集合する配管である。この集合管60は、自動切替調整器30の左右に伸びており、LPガス容器2〜5からの高圧ガスを左右から自動切替調整器30に供給するものである。
このような構成であるため、自動切替調整器30は左右の集合管40(LPガス容器2,3とLPガス容器4,5)の切替を行うこととなる。また、この構成において、センサ部41は、高圧ホース20と逆止弁50との接続部に設けられていてもよいし、集合管60と自動切替調整器30との接続部などに設けられていてもよい。