JP5740163B2 - フィラー分散用樹脂組成物、フィラーを含む熱可塑性樹脂複合体組成物およびその製造方法 - Google Patents
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一般に使用されるフィラーとしては、球状の炭酸カルシウム、板状のタルク、マイカ、針状のウィスカー、繊維状のガラス繊維、炭素繊維などあるが、近年では、更に高性能、高機能材料が求められており、少量で大きな効果が得られると期待されているナノメートルサイズのフィラー(以下、ナノフィラーとも記載する。)を用いた複合化が注目されている。この様なナノフィラーを複合化させる際には、ナノフィラーの効果を最大限に得るために、樹脂中へ如何に均一に分散させるかが課題となっており、特に、相溶性が悪いポリオレフィン系樹脂を代表とする非極性の熱可塑性樹脂での改善が求められている。
しかしながら、これらの方法でも、ナノフィラーでは凝集塊ができてしまい、分散性が不十分となり、剛性の向上が低いのと、衝撃に関してはむしろ悪くなる傾向があった。
上記の他にも、カーボンナノチューブなどのナノフィラー存在下で樹脂の重合を行う方法(例えば、特許文献4参照。)などが検討されているが、分散方法が特殊であり、より簡易的な手法が求められている。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)は、GPC法により測定された重量平均分子量が5,000〜200,000であることを特徴とするフィラー分散用樹脂組成物(D)が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、導電性フィラー(E−1)は、最大部分の長さが1mm未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂複合体組成物(F)が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第5〜7のいずれかの発明において、ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン系樹脂であり、変性ポリオレフィン樹脂(C)が酸変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂複合体組成物(F)が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、フィラー分散用樹脂組成物(D)を得るに際し、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)、ポリオレフィン樹脂(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂複合体組成物(F)の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第9〜11のいずれかの発明において、フィラー分散用樹脂組成物(D)に更にフィラー(E)を混合するに際し、溶融混練を行うことを特徴とする熱可塑性樹脂複合体組成物(F)の製造方法が提供される。
(1)第1の発明において、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)は、2−ビニル−2−オキサゾリンなどのアルケニルオキサゾリン(またはオキサゾリン基を含有するビニル系単量体)の単独重合体であることを特徴とするフィラー分散用樹脂組成物(D)。
(2)第1の発明において、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)は、2−ビニル−2−オキサゾリンなどのアルケニルオキサゾリン(またはオキサゾリン基を含有するビニル系単量体)10〜100mol%と他の共重合可能なビニル系単量体0〜90mol%との共重合体であることを特徴とするフィラー分散用樹脂組成物(D)。
以下、本発明の組成物を構成する成分などについて、説明する。
本発明で用いられるオキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)は、変性熱可塑性樹脂(C)およびフィラー(E)と、また、変性熱可塑性樹脂(C)は、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)および熱可塑性樹脂(B)との両者と、化学反応や相互作用を起こすことによって、界面接着性が良好となるため、熱可塑性樹脂複合体組成物(F)中において、フィラー(E)の分散性が優れた成形品を得ることができる。
フィラー(E)を、予めオキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)で修飾し、次いで熱可塑性樹脂(B)と変性熱可塑性樹脂(C)中に分散させる方法もあるが、この方法では、フィラー(E)の分散が不十分な結果しか得られない。これは、この方法ではフィラー(E)の表面を修飾したオキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)同士が強く相互作用するために、後から熱可塑性樹脂(B)と変性熱可塑性樹脂(C)とを添加しても、フィラー(E)を分散させることが困難に成るためである、と考えられる。
本発明のフィラー分散用樹脂組成物(D)は、フィラー(E)と相互作用するオキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)が予めその組成中に分散されているので、フィラー(E)同士の集合体が少ない熱可塑性樹脂複合体組成物(F)を得ることができ、フィラー(E)を分散させるのに適した樹脂組成物であるといえる。
オキサゾリン基を含有するビニル系単量体としては、前記の2−ビニル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(B)は、特に限定されず、具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の塩ビ系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリサルホン樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂、等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中では、無極性であるため、フィラーの分散性が悪いポリプロピレン系樹脂(B−1)が、本発明の効果を発揮または確認する上で、好ましい。
MFRが上記範囲を逸脱した場合、本発明の熱可塑性樹脂複合体組成物の成形時の流動性や衝撃性、引張伸度などが劣ったりするため、好ましくない。また、アイソタクチック分率が0.98未満の場合、成形体の剛性や耐熱性が劣るため好ましくない。また、ポリプロピレン系樹脂(B−1)のMFRは、ポリプロピレン系樹脂(B−1)の重合時に水素濃度を制御したり、重合パウダーを押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練する際に、有機化酸化物等を用いて分子鎖切断したりすることにより、調整することができる。アイソタクチックペンタッド分率は、重合触媒の電子供与体(外部及び又は内部ドナー)の添加量を制御し、更にこれらの重合過程での欠落を防止することにより側鎖の立体配置を制御することにより、調整することができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して、試験温度230℃、試験荷重21.18Nで測定されたものである。また、アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973年)記載の方法、すなわち13C−NMRを使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975年)に記載の方法に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピーク強度分率として、アイソタクチックペンタッド単位を測定したものである。
電子強制化合物(c成分)としては、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン等の有機珪素アルコキシ化合物、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエーテル等の1,3−ジエーテル類、フタル酸ブチル、フタル酸オクチル、1,2−ジイソプロピルコハク酸ジブチル等の多価カルボン酸エステル、あるいはこれらを複数種併用する場合が挙げられる。
メタロセン系触媒におけるメタロセン化合物(a’成分)としては,炭素架橋、あるいは珪素、ゲルマン架橋基を有し、かつ置換あるいは非置換のシクロペンタジエン、インデン、フルオレン、アズレンを配位子とする4族の遷移金属化合物が挙げられる。
メタロセン系触媒に用いる助触媒(b’成分)としては、メチルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物、トリフェニルボラン等のルイス酸、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のイオン性化合物、あるいはモンモリロナイト等の粘土鉱物が使用可能である。
本発明で用いられる変性熱可塑性樹脂(C)は、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基またはエポキシ基より選ばれる、1種又は2種以上の官能基を有する変性熱可塑性樹脂であって、変性率が主鎖を構成するモノマー分子に対して、0.1〜5.0重量%である。
変性率が0.1重量%未満の場合、フィラー(E)との反応性が乏しく、一方、5重量%を超えると、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(B)との相溶性が低下するため、夫々好ましくない。
この様な変性熱可塑性樹脂(C)の具体例としては、水酸基変性熱可塑性樹脂、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂(三菱化学社製モディックなど)、グリシジルメタクリレート−ポリエチレン共重合体(住友化学社製ボンドファーストなど)などを挙げることができる。
これらの変性熱可塑性樹脂は、従来公知の押出機や反応釜を用いて、無水マレイン酸などのグラフトモノマーと有機過酸化物などのグラフト触媒を熱可塑性樹脂と反応させることにより、製造することができるが、その変性率は、本発明で規定している範囲内であることが必要である。
本発明において、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)や変性熱可塑性樹脂(C)との混練時の劣化防止や成形性を改良する目的で、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている公知のフェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸、脂肪酸アマイド誘導体等の滑剤、等の成形助剤や用途に応じて公知の難燃剤や可塑剤等を用いることができる。
本発明のフィラー分散用樹脂組成物(D)は、その構成成分の組成割合として、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)0.2〜2重量部と、熱可塑性樹脂(B)88〜99.7重量部と、変性熱可塑性樹脂(C)0.1〜10重量部とを、含有することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂複合体組成物(F)は、上記のフィラー分散用樹脂組成物(D)70〜99.9重量%と、フィラー(E)0.1〜30重量%とを、複合体組成物全量に対して、含有するものである。
本発明の効果を発揮または確認するには、分散性の悪い最大部分の長さが1mm未満で、最小部分が1μm未満のナノフィラーが好ましく、特に導電性ナノフィラーであるカーボンナノチューブなどは、熱可塑性樹脂中へのナノフィラーの分散性を、導電率で確認できるため、好ましい。カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のどちらを用いてもよい。
本発明に係るフィラー分散用樹脂組成物(D)の製造方法としては、公知の方法で製造することができ、例えば、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)と変性熱可塑性樹脂(C)、および必要に応じて用いる他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合することにより得ることができる。混合した後、さらに、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で160〜280℃、好ましくは180〜250℃、より好ましくは180〜220℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができるが、例えば、工業的規模で効率的に行う場合は、上述した各配合成分の分散性などを考慮すると、特に投入される各配合成分が多量の場合には、二軸押機を180〜220℃の温度範囲で使用するのが好ましく、また、投入される各配合成分が少量の場合は、ブラベンダーを180〜220℃の温度範囲で、1〜10分間の混練条件で使用するのが好ましい。また、樹脂組成物の製造方法として、各成分を混合することなく、直接、溶融混練することもできる。
順に添加する場合、一台の混練機を使用し、途中に(サイドから)添加するラインを設けて各成分を添加することや、複数台の混練機を直列に使用して、各混練機のフィードに必要とする各成分を添加することもできる。好ましくは、混練時に使用する混練機として、二軸の混練機を使用するのが望ましい。
本実施例で用いた各評価法を、以下に説明する。
三菱化学株式会社製ハイレスタ(MCP−HT450)を用いてリングプローブ法により、印加電圧100Vで体積抵抗値を測定した(JIS K6911−1995準拠)。
280℃のホットステージに、2枚のカバーグラスで挟んだ複合体の粒状物(量はどれだけ多くても、どれだけ少なくてもOK)を乗せ、プレス(試料を金属により押しつぶしてフィルム化)によりフィルムを作製し、光学顕微鏡により観察した。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)0.1gに対し、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液50mlを混合して室温で4h攪拌し、そのろ過液25mlと塩酸25mlの混合液を20min煮沸することで測定液を得て、指示薬としてフェノールフタレインを使用し、0.005M水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は、3回の平均値を算出し、平均値をもとに酸性基量を算出した。また、0.1Mの炭酸水素ナトリウムに変えることでカルボキシル基のみの定量も行った。
フーリエ変換赤外分光計(HORIBA(株)、FT−170、固体、KBr法)で、1710cm−1にカルボン酸のC=O伸縮振動に起因するピークが出現し、酸化処理によるカルボキシル基の導入が認められた。
1.オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)
オキサゾリン含有モノマーとして、2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)を使用して、以下の方法にて、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)を得た。
2−ビニル−2−オキサゾリン(VOZO)29.97g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.296g、トルエン44.96gを丸型フラスコ内に混合し、窒素雰囲気下、80℃(オイルバス設定温度)、5h、120rpmの条件で保持した後、クールニクスにより、−5℃に調整されたヘキサンにより再沈殿を行い[再沈殿:ヘキサン300mlを、クールニクス(EYELA社 LOW TEMP PAIRSTIRRER PSL−1400)を用いて、−5℃で攪拌しながら再沈殿する。できたものを、吸引ろ過により回収する(ろ紙孔径1μm)。]、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)を得た。
再沈殿・濾過操作後、55℃で1h真空乾燥し、その後80℃で24h真空乾燥した。また、得られた(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の分子量測定結果を、下記表1に示す。
分子量測定条件:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、溶媒:DMF、東ソー株式会社製、TSK−GEL(装置名)、40℃、2g/L、100ml、PS換算(予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。)
(1)フーリエ変換赤外分光法
フーリエ変換赤外分光計(HORIBA(株)、FT−170、固体、KBr法)を用い、1600cm−1においてC=Cのピーク消失、1680cm−1のイミン(C=N)のピーク出現、1700cm−1においてアミド(O=C−NH)のピーク出現を確認できたことから、Polyvozoの生成を確認した。
熱重量分析は、TA Instruments社製 TGA Q−50を用いて、2−ビニル−2−オキサゾリン及びPolyvozo(a)のそれぞれ10mgを白金パンに計り取り、窒素気流下(1.4〜1.7MPa)、室温から500℃まで20℃/minの昇温速度で測定し、それぞれの分解温度を測定することにより、(A)の生成を確認した(2−ビニル−2−オキサゾリンの分解に基づく31.11℃のピーク、及び(A)の分解に基づく409.06℃のピークを確認、JIS K7120に準拠)。
熱可塑性樹脂(B)として、ポリプロピレン系樹脂を用いた。具体的には、日本ポリプロ株式会社製 MA3(MFR10g/10min)を使用した。
変性熱可塑性樹脂(C)として、酸変性ポリプロピレン樹脂を用いた。具体的には、三菱化学株式会社製、モディック P908(無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)を使用した。
フィラー(E)として、以下の(E−1)〜(E−4)を使用した。
(1)E−1:未処理品
韓国CNT株式会社製、多層カーボンナノチューブ[商品名:C−TUBE、平均長さ1〜25μm、平均直径10〜50nm(いずれもカタログ値)]を未処理のままで使用した。
(2)E−2:酸化処理品
濃硝酸に(E−1)を混合して室温で24h撹拌した後、2.5Mの硝酸に混合し、130℃(オイルバスの設定温度)で還流しながら48h撹拌した。その後、ろ過と遠心分離、ソックスレー抽出(溶媒:THF、24hソックスレー抽出器を用いて連続的に洗浄)を経て、(E−2)を得た。その分析値を表2に示す。
酸性基量とは、カルボキシル基量及び水酸基量の総和を示す。水酸基量は、総和とカルボキシル基量の差から算出した。中和滴定から、酸化処理により酸性基量の増加が認められた。
上記で得られた(E−2)0.1gと(A)0.1gとを、100mlのイオン交換水中で混合し、窒素雰囲気下、80℃、1h攪拌し、クロロホルムにより精製する(吸引ろ過後、ソックスレー抽出器を用いて24h連続的に洗浄する)ことにより、(E−3)を得た。
上記で得られた(E−1)0.1gと(A)0.1gとを、100mlのイオン交換水中で混合し、窒素雰囲気下、80℃、1h攪拌し、クロロホルムにより精製する(吸引ろ過後、ソックスレー抽出器を用いて24h連続的に洗浄する)ことで(E−4)を得た。
以下の実施例1〜2、比較例1〜8は、プレス成形材の実施例および比較例である。
[実施例1]
工程I:フィラー分散用樹脂組成物の調製
バッチ式混練機(東洋精機、KF−6cc)を用いて、(A)1重量部、(B)93重量部、(C)5重量部を180℃、10分間混練することにより、得られるフィラー分散用樹脂組成物(D)99重量部に、(E−1)を1重量部加え、さらに180℃、10分間混練することで、熱可塑性樹脂複合体組成物(F)として、100重量部の熱可塑性樹脂複合材(F−1)を得た。
工程Iで得られた粒状の熱可塑性樹脂複合材(F−1)を、180℃、10MPa(ゲージ圧力)、5分間の条件で熱プレス成形機(東洋精機、MINI TEST PRESS・10)により成形して、24mm×1mmのディスク状の成形体を得た。体積抵抗値の評価結果を表3に示す。
実施例1において、(A)0.5重量部、(B)93.5重量部、(C)5重量部、(E−1)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−2)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
実施例1において、(A)及び(C)を使用せず、(B)99重量部、(E−1)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−3)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
実施例1において、(A)を使用せず、(B)94重量部、(C)5重量部、(E−1)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−4)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
実施例1において、(A)を使用せず、(B)94重量部、(C)5重量部、(E−2)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−5)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
実施例1において、(A)0.1重量部、(B)93.9重量部、(C)5重量部、(E−1)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−6)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
以下の工程により、成形体を得た。
工程III:混練工程
(A)を使用せず、(B)94重量部、(C)5重量部、(E−3)1重量部を混合し、180℃、10分間混練することにより、熱可塑性樹脂複合体組成物(F)として、100重量部の熱可塑性樹脂複合材(F−7)を得た。
工程IV:プレス成形体の作製
工程IIIで得られた熱可塑性樹脂複合材(F−7)を、実施例1の工程IIに従って成形体を得た。体積抵抗値の評価結果を表3に示す。
比較例5において、(C)を使用せず、(B)99重量部、(E−3)1重量部を使用した以外は、比較例5と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−8)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
比較例5において、(B)94重量部、(C)5重量部、(E−4)1重量部を使用した以外は、比較例5と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−9)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
比較例5において、(C)を使用せず、(B)99重量部、(E−4)1重量部を使用した以外は、比較例5と同様に、熱可塑性樹脂複合材(F−10)を得て、更に成形体を得た。評価の結果を表3に示す。
実施例1と比較例1との比較から、実施例1は、図1に示すように、カーボンナノチューブ(E−1)の分散が良好であるため、導電性を示すのに対し、一方、(A)及び(C)を用いていない比較例1では、図2に示すように(E−1)の凝集が解けず、分散しないために、導電性が発現しないことが理解される。
また、実施例1と比較例2との比較から、(A)を用いた実施例1は、図1に示すようにカーボンナノチューブ(E−1)の分散が良好であるため、導電性を示すのに対し、一方、(A)を用いていない比較例2では、図3に示すように、(C)を添加しても、分散改善効果は小さく、凝集が解けないために、導電性が発現しないことが理解される。
さらに、比較例3から、図4に示すように、カーボンナノチューブ(E−1)の表面を酸化処理した(E−2)を使用することによって、(A)との界面結合性は強まるものの、それ以上に酸化処理の過程において(E−2)同士の凝集力が強まるため、非常に大きな凝集が形成するものと、推定される。
また、実施例1と比較例4の比較から、比較例4では(A)が0.1重量%と極めて少ないので、図5に示すように、分散を改善するという効果が発現せず、実施例1(図1)に示すような良好な分散状態を形成できないため、導電性も発現しないと理解される。
また、比較例5〜8から、図6〜9に示すようにカーボンナノチューブ(E−1)及び(E−2)の表面を、予め(A)で処理した後、樹脂と混ぜた場合は、予め表面処理を行う過程にてカーボンナノチューブ同士が凝集してしまい、混練過程においても、その凝集が解けることが無く、導電性を発現しないと、理解される。
つまり、予め表面処理したカーボンナノチューブを、樹脂と混ぜるのではなく、樹脂同士を十分に混ぜた後、表面処理を行っていないカーボンナノチューブを加えることによって、良好な分散が起こり、その結果、カーボンナノチューブが良好に分散するため、期待する導電性も得られる。また、カーボンナノチューブを予め表面処理する必要が無いために、製造法も、非常に簡便である。
Claims (12)
- オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)0.2〜2重量部と、ポリオレフィン樹脂(B)(但し、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を除く。)88〜99.7重量部と、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基およびエポキシ基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂であって、該変性ポリオレフィン樹脂の変性率が0.1〜5.0重量%である変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1〜10重量部とを、含有することを特徴とするフィラー分散用樹脂組成物。
- ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のフィラー分散用樹脂組成物。
- オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)は、GPC法により測定された重量平均分子量が5,000〜200,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラー分散用樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィラー分散用樹脂組成物(D)70〜99.9重量%と、フィラー(E)0.1〜30重量%とを、組成物全量に対して、含有することを特徴とする熱可塑性樹脂複合体組成物。
- オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)0.2〜2重量%、ポリオレフィン樹脂(B)86〜99.6重量%、変性ポリオレフィン樹脂(C)0.1〜10重量%及び導電性フィラー(E−1)0.1〜2重量%を、組成物全量に対して、含有し、かつ体積固有抵抗値が10Ω・cm〜107Ω・cmであることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物。
- 導電性フィラー(E−1)は、最大部分の長さが1mm未満であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物。
- 導電性フィラー(E−1)がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物。
- ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン系樹脂であり、変性ポリオレフィン樹脂(C)が酸変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物。
- オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)、ポリオレフィン樹脂(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有するフィラー分散用樹脂組成物(D)を得た後、更にフィラー(E)を混合することを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物の製造方法。
- フィラー分散用樹脂組成物(D)を得るに際し、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)、ポリオレフィン樹脂(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融混練することを特徴とする請求項9に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物の製造方法。
- オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)、ポリオレフィン樹脂(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融混練するに際し、ポリオレフィン樹脂(B)及び変性ポリオレフィン樹脂(C)を溶融混練した後に、更に、オキサゾリン基を側鎖に有する重合体(A)を加えて、溶融混練することを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物の製造方法。
- フィラー分散用樹脂組成物(D)に更にフィラー(E)を混合するに際し、溶融混練を行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂複合体組成物の製造方法。
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