JP5737801B2 - フェライト系快削ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

フェライト系快削ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、切削性に優れたフェライト系ステンレス鋼に係わり、Pb、Se、Te等の毒性の高い希少金属を添加することなく、快削性を付与した環境に優しいフェライト系ステンレス鋼に関する。
OA機器,電子機器部品等の切削部品には、切削時の切屑処理性に加え、切削加工後に精度の高い表面性状が求められる。こられの要求に対し、従来はSを0.15%以上添加したSUS430Fや切削性を更に向上させるためPb、Se、Teを単独もしくは複合添加したフェライト系快削ステンレス鋼が使用されてきた(特許文献1)。
一方、毒性の強いPb、Se、Te抑制の市場要求に対して、Bi、Sn添加やCuを主体とする第2相を分散させたフェライト系快削ステンレス鋼が提案されている(特許文献2、3、4、5)。しかしながら、熱間加工性などの製造面や切削後の表面性状など満足なものが得られていない。とりわけ、切削後の表面性状は、切削速度≧20m/min、切込み≧0.05mm、送り≧0.005mm/rev、の工業的な切削条件において、表面粗さRa≦0.5μmの精度、優れた耐工具摩耗性の被削性が要求される。
特開昭63−86848号公報 特開2001−355048号公報 特開2003−13188号公報 特開2004−99973号公報 特開2007−186764号公報
本発明の目的は、熱間加工性が良好で製造性に優れ、精密部品の切削加工条件下において表面粗さ(Ra):0.5μm以下の優れた表面精度及び優れた耐工具磨耗を得ることが可能で、製造面においても良好であり、Pb等の毒性の高い重金属を含まないフェライト系快削ステンレス鋼を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、Pb等の毒性の高い重金属を含まないS含有フェライト系ステンレス快削鋼において、優れた被削性を確保するため、Sn、Ag、Znの内1種以上が一定の濃度を有するCuを主体とする第二相を、一定の大きさ、マトリックス中の面積率以上分散させると、硫化物との複合効果により、飛躍的に表面精度及び耐工具磨耗を向上できることを見出した。これらの効果により、環境に悪影響を与えるPb等の毒性の高い重金属を添加させることなく、優れた表面精度及び耐工具磨耗を確保できることがわかった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.030%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、P:0.02〜0.10%,S:0.15〜0.50%,Cr:15.0〜20.0%,N:0.030%以下,Cu:1.0%以上〜2.5%以下を含有し、さらにSn:0.03〜0.50%,Ag:0.02〜0.20%,Zn:0.02〜0.50%の内少なくとも1種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系快削ステンレス鋼において、Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上を2質量%以上含むCuを主体とする第二相であって、鋼材の断面組織において粒径0.01μm以上のものが面積率で0.2%以上の割合でマトリックス中に分散しており、ビッカース硬さが160Hv以上であることを特徴とするフェライト系快削ステンレス鋼。
(2)Mn/S≦2.0を満たすことを特徴とする前記(1)に記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(3)更に質量%で、B:0.0001〜0.02%含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(4)更に質量%でAl:0.01%以下、O:0.003〜0.015%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(5)更に質量%でNi:3.0%以下,Mo:3.0%以下,Co:0.05〜1.0%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(6)更に質量%で、Nb:1.0%以下、Zr:0.020%以下、V:1.0%以下、Ta:1.0%以下、W:1.0%以下の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(7)更に質量%で、Ca:0.020%以下、Ti:1.0%以下、REM:0.0005〜0.2%、Mg:0.005〜0.05%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼である。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の成分を含有するフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延し、熱間圧延後に500℃以上、950℃未満の温度で、10分〜72時間の熱処理を施すことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼の製造方法である。
本発明によるフェライト系快削ステンレス鋼は、環境に悪影響を与えるPb等の毒性の高い重金属を添加させることなく、切削加工後の表面粗さ(Ra):0.5μm以下の優れた表面精度を付与でき、表面精度の高い精密切削部品を提供する効果を発揮する。
以下に、先ず、本発明の限定理由について説明する。なお、%の表記は、特に断りのない場合は質量%を意味する。
本発明のフェライト系快削ステンレス鋼は、Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上を2質量%以上含むCuを主体とする第二相が、鋼材の断面組織において粒径0.01μm以上のものが面積率で0.2%以上の割合でマトリックス中に分散しているので、被削性を向上することができる。第二相が分散していることで、切削の起点となる。また、CuにSn、Ag、Znの内少なくとも1種以上を2質量%以上含むことによって第二相の融点が低くなり、切削時の熱によって容易に溶融し、潤滑剤としての機能も果たすことができる。その結果として被削性や切削後の表面粗度がより一層向上することとなる。ここにおいて「Cuを主体とする」とは、第二相においてCu含有量が50質量%以上であることを意味する。好ましくはCu含有量が80質量%以上である。また、第二相の粒径とは、観察する断面における個々の第二相の最大径を意味する。
Cuを主体とする第二相中のSn、Ag、Znの濃度は被削性向上に重要であり、2%未満になると、Cuを主体とした第二相の融点が高く、被削性改善効果が少ない。したがって、被削性を向上させるため、Cuを主体とする第二相中のSn、Ag、Znの内少なくとも1種以上の濃度の下限を2%とした。また、40%以上になるとその効果は飽和することから、好ましくは上限を40%とする。
Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上の濃度が2%以上のCuを主体とする第二相の粒径と面積率は被削性向上に重要である。鋼試料の測定視野において、Cuを主体とする第二相のうち、Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上の濃度が2%以上であって、粒径(最大径)が0.01μm以上のものをピックアップする。そしてピックアップした第二相の合計面積率を鋼材の断面組織における面積率とする。鋼材の断面組織における面積率が0.2%未満になると、被削性改善効果が少ない。また、粒径が5μm以上かつ、面積率が5%以上になるとその効果は飽和する。したがって、被削性を向上させるため、Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上の濃度が2%以上であってCuを主体とする第二相の粒径が好ましくは0.01μm以上5μm以下、その面積率が0.2%以上5.0%以下とした。より好ましくは粒径が0.2μm以上の第二相の面積率が0.3%以上である。
Cuは、被削性改善効果のあるCuを主体とする第二相の析出に必要な合金成分であり、粒径0.01μm以上のものを面積率で0.2%以上の割合で、マトリックス中に析出させ、析出強化により、160Hv以上の硬さを得るには、1.0%以上の添加が必要である。しかし、2.5%超の添加は鋳片割れが発生するなど製造性が劣化する。そのため、上限を2.5%する。
本発明は、Cuを主体とする第二相中にSn、Ag、Znの内少なくとも1種以上を2質量%以上含有させるため、以下に示すように鋼中にSn:0.03〜0.50%,Ag:0.02〜0.20%,Zn:0.02〜0.50%の内少なくとも1種以上を含有する。
Snは、Cuを主体とする第二相の低融点化に有効な合金成分であり、Cu主体とする第二相に2%以上の濃度でSnを濃化させるためには、鋼中に0.03%以上を含有することが必要である。しかし、0.50%を超えて含有すると熱間加工性が劣化し、製造性を劣化する。そのため、上限を0.50%とした。好ましくは0.05〜0.40%である。
Agは、Cuを主体とする第二相の低融点化に有効な合金成分であり、Cu主体とする第二相に2%以上の濃度で濃化させるためには、鋼中に0.02%以上を含有することが必要である。しかし、0.20%を超えて含有すると熱間加工性が劣化し、製造性が低下することから、上限を0.20%とした。
Znは、Cuを主体とする第二相の低融点化に有効な合金成分であり、Cu主体とする第二相に2%以上の濃度で濃化させるためには、鋼中に0.02%以上を含有することが必要である。しかし、0.50%を超えて含有すると熱間加工性が劣化し、製造性が低下することから、上限を0.50%とした。
Sは、硫化物を形成して切削加工時の応力集中や潤滑効果により切削抵抗を低減させ、切削表面精度を劣化させることなく、切削性(切屑処理性,工具寿命)を向上させるのに有効であるため、0.15%以上添加する。しかしながら、0.50%を超えて添加すると製造性が著しく劣化するばかりか、粗大硫化物に起因して切削加工後の表面精度が著しく劣化する。そのため、上限を0.50%とする。好ましくは、0.2〜0.40%である。
Mnは、Sと硫化物をつくり被削性を向上させる元素である。しかし、2.0%超添加するとその効果は飽和し、被削性を劣化させることから、上限を2.0%とした。0.1%未満にすると、製造コストがUPするため、好ましくは下限を0.1%以上とする。また、Mnは硫化物を形成し、耐食性を劣化させる元素であるため、それらを良好にするためには、好ましくは1.0%以下である。さらに好ましくは0.5%以下である。
Crはマトリックスに固溶し、耐食性を向上させる元素である。しかし、多量に添加すると、熱間でスケール生成を抑制し、熱間圧延疵の原因となることから、20.0%以下とした。しかし、Cr量が15.0%未満になると耐食性が劣化するため、下限を15.0%とする。好ましいCr量の範囲は、16.0〜18.0%である。
Siは、脱酸のために添加するが、1.0%超添加すると棒線熱間圧延時のスケール生成を抑制し、熱間圧延疵を助長する。そのため、上限を1.0%とする。好ましくは、0.3%〜1.0%である。
C,Nは、炭窒化物を生成し、耐食性を劣化させるばかりか、切削加工時に構成刃先の生成を促進して表面精度を劣化させるため、それぞれ0.030%以下とする。好ましくは0.020%以下である。さらに好ましくは、C+N:0.030%以下である。
Pは、粒界偏析して切削加工時の材料延性を低下させる効果があるため、表面精度が向上する。そのため、0.02%以上添加する。しかしながら、0.10%超添加するとその効果は飽和するばかりか、製造性が著しく劣化する。そのため、上限を0.10%とする。好ましくは、0.025〜0.05%である。
ビッカース硬さは切削加工界面の温度に影響を及ぼして構成刃先の生成に寄与する。ビッカース硬さで160Hv以上の場合、切削界面の温度が上昇し、Cuを主体とした第二相による表面性状向上効果を一層顕著にし、Raで0.5μm以下の良好な表面性状を安定的に得ることができる。そのためビッカース硬さを160Hv以上とする。好ましくは180Hv以上である。
なお、ビッカース硬さを高める手段として、例えば、後述するように熱間圧延後に950℃未満で10分から72時間で熱処理を行うことにより、Cuを主体とする第二相による析出強化や、Niなどを添加することが適用できる。
S含有のフェライト系快削ステンレス鋼は、MnS系硫化物を形成するために耐食性が悪くなる。そのため本発明において好ましくは、Mn/S比を2.0以下にして硫化物中のMn濃度を低減することで、耐食性劣化を著しく抑制できることを見出した。そのため、Mn/S比を2.0以下に限定すると良い。好ましくは、1.5以下である。
さらに本発明は、以下に記載する選択元素を含有することができる。
Bは熱間加工性や軟質化を改善するために添加される元素であり、0.0001%以上の添加により安定した効果が得られる。しかし過剰に添加するとBの化合物が析出し、熱間加工性を劣化させるので、その上限を0.02%とした。好ましくは0.002〜0.015%である。
Alは脱酸元素として重要な元素である。しかし、0.01%を超えて添加すると硬質なAl系の酸化物が形成し、被削性を劣化させる。そのため、上限を0.01%とした。好ましくは、0.001〜0.008%である。
Oは凝固時の脱酸生成物を粗大化させることで被削性を向上させる。そのためには、0.003%以上必要である。しかし、0.015%を超えて添加すると硬質な介在物が増加し、被削性を劣化させる。そのため上限を0.015%とした。好ましくは、0.005〜0.015%である。
Niは、固溶強化により材料の硬さを高めて構成刃先の生成を防止し、切削加工時の表面精度向上を向上させる。しかしながら、3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するし、逆に過度に硬質化して工具寿命劣化を引き起こす。そのため、上限を3.0%とする。好ましくは、0.15〜1.5%である。
Moは、耐食性を向上させる元素である。しかし、多量に添加すると、靭性を低下させるため、その上限を3.0%とした。好ましくは0.1〜2.0%である。
Coはマトリックスの靭性を高めるため、それぞれ0.05%以上添加するが、過剰に添加するとマルテンサイト組織が析出し、被削性を劣化させるため、上限を1.0%とする。好ましくは0.05〜0.6%である。
Nb,V,Ta,Wは炭窒化物を形成し、耐食性を改善する効果がある。しかし、多量の添加は、被削性が劣化することから各々の上限を1.0%とした。好ましくは、それぞれ、0.05〜0.5%である。
Zrは強度を向上させる効果がある。しかし上限を超えると靭性が低下することから、上限を0.020%とした。好ましくは0.001〜0.005%である。
Caは被削性を改善する効果がある。しかし上限を超えると効果が飽和し、熱間加工性が低下することから、上限を0.020%とした。好ましくは0.001〜0.010%である。
Tiは炭窒化物を形成し、耐食性を改善する効果がある。しかし、多量の添加は、被削性が劣化することから上限を1.0%とした。好ましくは0.05〜0.5%である。
La,Ce,Y等のREMは熱間加工性の劣化を防止するのに有効な元素である。その効果を得るには0.0005%以上必要であるが、多量に添加すると熱間加工性を低下させるため、上限を0.2%とした。
Mgは熱間加工性を向上させるために0.005%以上必要である。しかし、0.05%を超える添加はかえって熱間加工性を低下させ、製造面が劣化することから、その上限を0.05%とした。
本発明のフェライト系快削ステンレス鋼の製造方法について述べる。
目標の組成、粒径、面積率のCuが主体の第二相を分散させ、析出強化により160Hv以上の硬さで優れた被削性を得るためには、上記本発明で規定する成分を含有するフェライト系ステンレス鋼について、熱間圧延後に500℃以上950℃未満の熱処理を行うことが有効である。500℃未満では、拡散速度が遅くなるためCuを主体とした第二相の析出が不十分であり、下限の温度を500℃に限定する。また、950℃以上では、160Hv以上の硬さを得ることができない。好ましくは500℃以上850℃未満である。また、熱処理時間が10分未満では、Cuを主体とする第二相の析出が不十分であり、72時間を超えると、160Hv以上が得られなくなる。好ましくは5時間超である。すなわち、500℃以上850℃未満で5時間超の熱処理を施すことにより、好適な第二相の粒径、面積率で析出し、被削性が更に向上する。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1、2に実施例の鋼の化学組成を示す。
Figure 0005737801
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これらの化学組成の鋼は、150kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、棒鋼圧延、熱処理、引抜き加工を施しφ10mmの棒鋼に仕上げ、評価用素材とした。目標のCuを主体とする第二相及びビッカース硬さを得るために、800℃で6時間の熱処理を行った。その後各評価試験を実施した。
評価は、第二相の組成、粒径、面積率、ビッカース硬さ測定、外周切削後の表面粗度及び工具寿命、耐食性について評価を実施した。その評価結果を表3,4に示す。表3は本発明鋼の評価結果、表4は比較鋼の評価結果である。
Figure 0005737801
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第二相の組成は所定の熱処理を施した素材の横断面について埋め込み・鏡面研磨を行ったものについて、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属のEDS分析により、Cu主体の第二相のSn、Ag、Zn濃度を測定した。第二相のうち、Cu含有量が50質量%以上のものをCu主体の第二相とした。本発明鋼についてはSn、Ag、Zn濃度のいずれかが2%以上のCuを主体とする第二相を示した。
第二相の粒径、面積率は所定の熱処理を施した素材の横断面について埋め込み・鏡面研磨を行ったものについて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Cu主体の第二相のうち、Sn、Ag、Zn濃度のいずれかが2%以上でかつ最大径が0.01μm以上のものをピックアップし、ピックアップしたものの合計面積率を測定した。
ビッカース硬さは素材の横断面について鏡面研磨を行ったものについて、表層1mm部をマイクロビッカース(荷重1kgf)により測定した。本発明鋼の硬さは160Hv以上であった。
表面性状は、外周切削で周方向に一定の条件で旋削を行い、加工後の表面について、接触式の粗さ測定機により中心線平均粗さ(Ra)を測定した。測定は基準長さ2.5mmで各5点ずつ測定しその平均値を値とした。使用工具:超硬P種、刃先R:0.4mm,切削速度:50m/min,送り量:0.02mm/rev,切込み:0.1mm,切削油(鉱物油):有り、で行った。本発明の中心平均粗さ(Ra)は0.5μm以下と良好であった。
工具寿命は、外周切削で周方向に一定の条件で旋削を行い、30min後のフランク摩耗量が50μm以下であれば、工具寿命は○、50μm超の場合は×と評価した。使用工具:超硬P種、刃先R:0.4mm,切削速度:200m/min,送り量:0.15mm/rev,切込み:1mm,切削油(鉱物油):有り、で行った。本発明の工具寿命は50μm以下と良好であった。
耐食性は、高温・多湿環境下での発銹試験にて評価した。素材を長さ20mmに切断したものについて、表面を#500で研磨・洗浄後に実施した。各鋼5個ずつ、温度:70℃、湿度:85%の環境下に120時間放置し、取り出し後発銹の有無について観察を行った。無発銹のものはAランク、発銹起点の総数が1〜5個のものをBランク、6〜10個のものをCランク、10個以上のものをDランクとして評価した。
表4に示す比較例において、規定する成分が外れた鋼はビッカース硬さ、表面性状、工具寿命の劣化、耐食性劣化、製造性劣化、コストUPのいずれかの項目で目標の特性を満たしていなかった。即ち比較例では、製造性,工具寿命の劣化無しに、表面性状および耐食性の両特性を満足できておらず、本発明鋼の優位性が明らかである。
一部の鋼については、熱処理条件の影響を調査するために、450℃〜1000℃で、5分から74時間の範囲で熱処理を施した。結果を表5に示す。Cu主体の第二相の全体について、第二相の平均Sn濃度を求めて「Sn濃度」と表記し、個々の第二相の最大径の平均値を求めて「粒径」と表記した。「面積率」は、Cu主体の第二相のうち、Sn濃度が2%以上でかつ最大径が0.01μm以上のものをピックアップし、ピックアップしたものの合計面積率を意味する。
Figure 0005737801
熱処理条件が、950℃以上,又は72時間以上になると160Hv未満となり、求められる表面粗度、工具寿命が得られなかった。一方、熱処理条件が500℃未満、10分未満の場合については、Cu主体で粒径0.01μm以上の第二相の面積率が0.2%未満となり、求められる表面粗度、工具寿命が得られなかった。鋼中のCu含有量とSn含有量のいずれかが本発明範囲下限以下の比較例については、Cu主体でSn:2%以上かつ粒径0.01μm以上の第二相の面積率が0.2%未満となり、求められる表面粗度、工具寿命が得られなかった。
以上の各実施例から明らかなように、本発明により、切削加工後の表面精度、工具寿命に優れた安価なフェライト系快削ステンレス鋼棒線を製造でき、切削加工後の表面粗さ(Ra):0.5μm以下と安定した表面高精度と耐工具磨耗性を付与でき、Pb等の毒性の高い重金属を添加させることなく高い被削性を有する鋼を安価に提供することができ、産業上極めて有用である。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.030%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、P:0.02〜0.10%,S:0.15〜0.50%,Cr:15.0〜20.0%,N:0.030%以下,Cu:1.0%以上2.5%以下を含有し,
    さらにSn:0.03〜0.50%,Ag:0.02〜0.20%,Zn:0.02〜0.50%の内少なくとも1種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系快削ステンレス鋼において、
    Sn、Ag、Znの内少なくとも1種以上を2質量%以上含むCuを主体とする第二相であって、鋼材の断面組織において粒径0.01μm以上のものが面積率で0.2%以上の割合でマトリックス中に分散しており、ビッカース硬さが160Hv以上であることを特徴とするフェライト系快削ステンレス鋼。
  2. Mn/S≦2.0を満たすことを特徴とする請求項1に記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  3. 更に質量%でB:0.0001〜0.02%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  4. 更に質量%でAl:0.01%以下、O:0.003〜0.015%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  5. 更に質量%でNi:3.0%以下,Mo:3.0%以下,Co:0.05〜1.0%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  6. 更に質量%で、Nb:1.0%以下,Zr:0.020%以下,V:1.0%以下、Ta:1.0%以下、W:1.0%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  7. 更に質量%で、Ca:0.020%以下,Ti:1.0%以下,REM:0.0005〜0.2%,Mg:0.005〜0.05%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の成分を含有するフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延し、熱間圧延後に500℃以上、950℃未満の温度で10分〜72時間の熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼の製造方法。
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