JP2014189833A - 高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度で、且つ、切削性に優れた高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼棒線を安価に提供することにある。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.8%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下,S:0.10〜0.35%,Cr:14.0〜18.0%,Ni:2.0〜7.5%,N:0.01〜0.10%,Cu:1.0%以下,Mo:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から構成され、M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo:35.0〜90.0で且つ、F=(Cr+Si+Mo)―(Ni+Mn+Cu+17.5C+10N):4.10以上であり、横断面の硬さ(Hv)が350以上、硬さバラツキが50以下であることを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度と切削性を必要とする用途に利用されるオーステナイト系ステンレス鋼線材、鋼線に関するもので、電子機器用シャフト材、精密機器部品などに利用される。
電子機器部品等の精密切削部品には、優れた快削性と耐食性が求められる。これらの要求に対し、耐食性を劣化させるSを添加せず、低融点金属のPb、Te、Seなどを添加した高強度快削ステンレス鋼が提案されている(特許文献1)。
また、近年の電子機器の更なる小型化や高速回転部の高速回転化により、電子機器に用いる材料において高強度が要求される場合が増加している。そこで、マルテンサイト系快削ステンレス鋼の適用が検討されるも、熱処理付与によるコストアップや耐食性が十分でないという問題がある。
そこで、冷間加工による加工誘起マルテンサイトによる高強度化が検討されている(特許文献2)。
しかし、該成分系ではオーステナイト相が安定的であるため、生成する加工誘起マルテンサイト量が少なく、その生成箇所も不均一のため、横断面内でのばらつきが大きくなるという問題がある。
以上のことから、電子機器部品等に求められる安定的な硬さを満足し、且つ、鋼線横断面内で硬さのばらつきが小さいが得られる鋼が求められていた。
特開2001−234295号公報 特開2001−200344号公報
本発明の目的は、350以上のビッカース硬さ(Hv)を有するとともに、横断面内の硬さバラツキが小さい高強度のオーステナイト系快削ステンレス鋼線と、それを得るために必要なステンレス鋼線材と製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、ビッカース硬さ(Hv)350以上を確保するために、オーステナイト相の安定度を示すM値と、フェライト相の形成度を示すF値をコントロールし、伸線方法を制御することで横断面内の硬さバラツキが小さく、安定的に高強度を確保できることがわかった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.8%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下,S:0.10〜0.35%,Cr:14.0〜18.0%,Ni:2.0〜7.5%,N:0.01〜0.10%,Cu:1.0%以下,Mo:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から構成され、下記式(1)で計算されるM値が35.0〜90.0、下記式(2)で計算されるF値が4.10以上であり、更に横断面の鋼線外周表面から1mm部におけるビッカース硬さ(Hv)が350以上であり、且つ、横断面内のビッカース硬さのバラツキが50以下であることを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(1)
F=(Cr+Si+Mo)―(Ni+Mn+Cu+17.5C+10N)・・・(2)
但し、式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
(2)更に質量%でB:0.001〜0.010%を含有することを特徴とする前記(1)に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
(3)更に質量%で、Zr:0.020%以下,Ca:0.020%以下,Al:0.010%以下,Mg:0.005〜0.050%,REM:0.0005〜0.200%,O:0.003〜0.015%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
(4)前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の成分組成を有し、下記式(1)で計算されるM値が35.0〜90.0、下記式(2)で計算されるF値が4.10以上であることを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線材。
M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(1)
F=(Cr+Si+Mo)―(Ni+Mn+Cu+17.5C+10N)・・・(2)
但し、式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
(5)ステンレス鋼線材に伸線加工を施してステンレス鋼線を製造する方法であって、
該ステンレス鋼線材として前記(4)に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線材を用い、該伸線加工を、伸線前の線材温度10〜50℃、伸線ダイスの角度12〜16°として行うことを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線の製造方法。
本発明による高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線は、高強度と優れた快削性を併せ持つため、強度を求められる精密機器部品を安価に提供する効果を発揮する。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。
Cは強度向上に効果的な元素であり、目標の硬さを得るために0.05%以上添加し、好ましくは0.07%以上含有する。しかし、0.15%を超えて添加すると、耐食性が劣化する。そのため、C含有量の上限を0.15%とし、好ましくは0.13%とする。
Siは脱酸のため添加する。Siを含有することによる効果を十分に得るためにSi含有量の下限は0.1%であることが好ましく、0.2%であることがより好ましい。しかしながら、0.8%を超えて添加すると耐食性が劣化する。そのため、Si含有量の上限を0.8%とし、好ましくは0.7%とする。
Mnは脱酸のため添加する。Mnを含有することによる効果を十分に得るためにMn含有量の下限は0.1%であることが好ましく、1.5%であることがより好ましい。しかし、5.0%を超えて添加すると切削性が劣化する。そのため、Mn含有量の上限を5.0%とし、好ましくは4.5%とする。
P含有量は伸線加工性を確保するため0.05%以下にし、0.04%以下とすることが好ましい。しかしながら、工業的にゼロにすることは困難なことから、P含有量は0.01%以上であることが好ましい。
Sは被削性を向上させる元素のため、0.10%以上添加し、0.12%以上含有することが好ましい。しかし、0.35%を超えて添加しても、被削性への効果は飽和し、却って耐食性や伸線加工性を劣化させる。そのため、S含有量の上限を0.35%とし、好ましくは0.33%とする。
Crは耐食性の向上のため、14.0%以上添加し、15.0%以上含有することが好ましい。しかし、18.0%を超えて添加するとδ-フェライト相が形成し、熱間加工性を劣化させ、表面疵起因で伸線加工性が劣化する。そのため、Cr含有量の上限を18.0%とし、好ましくは17.0%とする。
Niはオーステナイト生成元素であるため、Ni含有量が2.0%未満であるとフェライト相の増大により、熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性が劣化する。このため、Ni含有量は2.0%以上とし、好ましくは3.5%以上とする。しかし、7.5%を超えるとコストアップに加え、オーステナイト相が安定するため、伸線加工を実施しても目標の硬さを得られなくなる。そのため、Ni含有量の上限を7.5%とし、好ましくは6.0%とする。
Nは高強度化のため、0.01%以上添加し、好ましくは0.02%以上含有する。しかし、0.10%を超えて添加すると熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性が劣化する。そのため、N含有量の上限を0.10%とし、好ましくは0.08%とする。
Cuは伸線加工性を向上させるために、0.1%以上含有させることが好ましく、0.2%以上含有させることがより好ましい。しかし、1.0%を超えてCuを添加すると、オーステナイト相が安定し、伸線加工を行っても目標の硬さを得られなくなる。そのため、Cu含有量の上限を1.0%とし、好ましくは0.7%とする。
Moは耐食性向上のために0.1%以上含有させることが好ましく、0.2%以上含有させることがより好ましい。しかし、1.0%を超えてMoを添加するとδフェライト相が形成され、熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性が劣化する。そのため、Mo含有量の上限を1.0%とし、好ましくは0.7%とする。
上記式(1)はMd30式で一般的に知られている式であり、本式で計算されるM値はオーステナイト相の安定度に関する指標である。式(1)で計算されるM値が35.0未満であると、伸線加工を行っても、加工誘起マルテンサイトの生成量が少ないため高い強度が得られない。また、90.0を超えると、オーステナイト相が不安定となり、製造時に加工誘起マルテンサイト相が生成するため、伸線加工時に割れが発生し易くなる。このため、M値の下限は35.0とし、好ましくは50.0とする。また、M値の上限は90.0とし、好ましくは85.0とする。
上記式(2)で計算されるF値はフェライト相の形成度に関する指標である。本式の基礎となる式はフェライト形成元素とオーステナイト形成元素との関係からフェライト相の形成され易さをおおよそ予測するための式であり、公知文献に多くの記載がある。F値の式はそれらの式を本発明の成分系による実験値により補正することで係数を修正したものである。上記式(2)で計算されるF値が4.10未満であると、フェライト相が偏在化するため、伸線加工後の横断面内の硬さバラツキが大きくなり、安定的に高強度を確保することが出来ない。このため、F値の下限は4.10とし、好ましくは5.00とする。また、F値が30を超えるとオーステナイト系ステンレス鋼の範囲を逸脱し、目標とする硬度が得られにくくなるため、F値の上限は30とすることが好ましく、より好ましくは20とする。
電子機器などの精密部品のシャフト材等に使用されるステンレス鋼線は、高硬度化が望まれている。本発明のステンレス鋼線は、横断面の鋼線外周表面から1mm部におけるビッカース硬さHvが350以上のものであり、シャフト材等の材料として使用する場合に必要なビッカース硬さ(Hv)を有している。上記ビッカース硬さHvは370以上であることが好ましい。また、上記ビッカース硬さHvは硬すぎると伸線加工後に割れが発生しやすくなるため、510以下であることが好ましい。
また、本発明のステンレス鋼線は、横断面内のビッカース硬さHvのバラツキが50以下のものであり、45以下のものであることが好ましい。横断面内のビッカース硬さHvのバラツキが50以下である場合、硬さのバラツキが十分に小さいため寿命の長いものとなる。ビッカース硬さHvのバラツキが50を超えると、シャフト等の部品として使用時に破壊の起点になり易く、使用寿命の低下につながる。
本発明の請求項2記載の限定理由について述べる。
Bは熱間加工性を改善するために必要に応じて添加される元素であり、0.001%以上の添加により安定した効果が得られる。しかし過剰に添加するとBの化合物が析出し、熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性が劣化させるので、その上限を0.010%とした。B含有量の下限は0.002%であることが好ましく、上限は0.008%であることが好ましい。
本発明の請求項3記載の限定理由について述べる。
請求項3では更に特性を向上させるために任意で添加出来る元素を規定しており、下記に記載する元素群より1種以上を添加することが出来る。
Zrは強度を向上させる効果があるため、0.001%以上含有させることが好ましく、0.002%以上含有させることがより好ましい。しかし上限を超えると熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性を劣化させることから、Zr含有量の上限を0.020%とし、好ましくは0.015%とする。
Caは被削性を改善する効果があるため、0.001%以上含有させることが好ましく、0.002%以上含有させることがより好ましい。しかし上限を超えると効果が飽和したり熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性を劣化させたりすることから、Ca含有量の上限を0.020%とし、好ましくは0.015%とする。
Alは脱酸元素として重要な元素であるため、0.001%以上含有させることが好ましく、0.002%以上含有させることがより好ましい。しかし、0.010%を超えて添加すると硬質なAl系の酸化物が形成し、被削性を劣化させる。そのため、Al含有量の上限を0.010%とした。好ましくは、0.005%以下である。
Mgは熱間加工性を向上させるために0.005%以上含有する必要があり、0.006%以上含有させることが好ましい。しかし、0.050%を超えた添加はかえって熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性を劣化させることから、その上限を0.050%とした。Mg含有量の上限は0.040%であることが好ましい。
La,Ce,Y等のREMは熱間加工性の劣化を防止するのに有効な元素である。その効果を得るには0.0005%以上必要であり、0.0008%以上含有させることが好ましい。しかし、REMは多量に添加すると熱間加工性を劣化させ表面疵起因で伸線加工性を劣化させるため、上限を0.200%とし、好ましくは0.150%とする。
Oは凝固時の脱酸生成物を粗大化させることで被削性を向上させる。そのため、0.003%以上必要であり、0.004%以上含有させることが好ましい。しかし、0.015%を超えてOを添加すると硬質な介在物が増加し、被削性を劣化させる。そのためO含有量の上限を0.015%とし、好ましくは0.014%とする。
本発明の請求項4記載の限定理由について述べる。
請求項4では、上述した本発明のステンレス鋼線を得るために必要なステンレス鋼線材について規定している。本発明のステンレス鋼線は、請求項1〜3の何れか1項に記載の成分組成を有し、上記式(1)で計算されるM値および上記式(2)で計算されるF値が上記範囲であるステンレス鋼線材に後述する伸線加工を施すことで製造出来る。したがって、本発明のステンレス鋼線材は、機械的性質以外(鋼の成分組成、並びにM値とF値)を、ステンレス鋼線と同じ範囲で有するものである。
本発明の請求項5記載の限定理由について述べる。
本発明者が、良好な伸線加工性と目標硬さの達成及び硬さバラツキの低減のため、種々の検討を行ったところ、伸線加工に用いる伸線ダイスの角度が伸線加工時の鋼材横断面への歪分布に影響を与えており、伸線ダイスの角度を一定範囲にすると、硬さのバラツキ低減に効果があることを知見した。この知見を基に、更に検討を重ねた結果、伸線ダイスの角度に加え、更に伸線前の鋼線材の温度を一定範囲に制御することにより、いずれの課題も達成できることを見出した。
本発明のステンレス鋼線の製造方法は、請求項4に記載のステンレス鋼線材を用い、伸線前の線材温度を10〜50℃とし、伸線ダイスの角度を12〜16°として伸線加工を行う方法である。
伸線前の線材温度が10℃未満であると伸線加工時に割れが発生し易くなる。また、50℃を超えて実施すると加工誘起マルテンサイトの生成が抑制されて目標の硬さを得られない。伸線前の線材温度の下限は、10℃であり、15℃であることが好ましい。伸線前の線材温度の上限は、50℃であり、45℃であることが好ましい。
伸線ダイスの角度が12°未満であると、加工が表層部に集中するため、中心部まで加工されにくく、硬さバラツキが大きくなる。また、16°を超えた伸線ダイスで行うと、中心まで加工され硬さバラツキは小さくなるものの、表層部の加工が大きくなり伸線加工時に割れが生じやすくなる。したがって、伸線ダイスの角度の下限を12°とし、好ましくは13°以上とする。また、伸線ダイスの角度の上限を16°とし、好ましくは15°以下とする。伸線ダイスの最適角度は14°である。
なお、伸線加工の減面率は特に限定されるものではなく、例えば、10〜50%を選択することが出来る。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1、2に実施例の鋼の化学組成を示す。
Figure 2014189833
Figure 2014189833
これらの化学組成の鋼は、150kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、熱間圧延、熱処理を実施し、φ11mmの線材に仕上げた。その後、17.3%の減面率で、伸線ダイスの角度14°、伸線前の線材温度40℃の条件伸線加工を行い、φ10mm(直径10mm)のステンレス鋼棒線に仕上げた(No.1〜56)。
また、一部材料(鋼2の線材)については、減面率を10〜50%としたこと以外は、上記と同じ条件で伸線加工を実施し、ステンレス鋼棒線(No.57〜61)とした後、下記の各評価試験を行った。
また、伸線加工条件の影響を評価するため、鋼2の線材を用い、伸線前の線材温度を40℃、減面率を17%に固定し、伸線ダイスの角度を10〜18°まで変化させたこと以外は、上記と同じ条件で伸線加工を実施し、ステンレス鋼棒線(No.62〜68)とした。
また、鋼2の線材を用い、伸線ダイスを14°、減面率を17%に固定し、伸線前の線材温度を0〜60℃まで変化させたこと以外は、上記と同じ条件で伸線加工を実施し、ステンレス鋼棒線(No.69〜75)とした。
そして、No.62〜75のステンレス鋼棒線について、横断面の硬さ(Hv)と硬さバラツキの評価を行った。
評価は、伸線加工性(伸線加工後の表面観察による割れの有無)、Hv硬さと硬さばらつき(ビッカース硬さ),被削性(外周切削による切削抵抗測定),耐食性(高温多湿環境下での耐食性評価)を実施した。その評価結果を表3〜5に示す。
伸線加工性については、伸線加工後の鋼線表面について実体顕微鏡を用いて観察し、割れが無かった場合を○、割れがあった場合を×として評価した。
その結果、本発明例の鋼線では、伸線加工による割れは観察されなかった。
Hv硬さ(ビッカース硬さ)は横断面について表層1mm部分(外周表面から1mm部)をマイクロビッカース(荷重1kg)により測定した。本発明例の鋼線のHv硬さは350以上であった。
また、硬さのバラツキは、表層1mm部、D(鋼線外径)/4、中心部の3部位について、それぞれ任意の箇所を4点ずつマイクロビッカース(荷重1kg)により測定し、それらの平均値を各部位の硬さとした。その平均値の最大値と最小値の差をもって評価を行った。本発明例の鋼線の硬さのバラツキは50Hv以下であった。
被削性は、外周切削を周方向に一定の条件で旋削を行った時の切削抵抗により評価した。外周切削は、使用工具:超硬P種、刃先R0.4mm,切削速度:50m/min,送り量:0.02mm/rev,切込み:0.1mm,切削油(鉱物油):有り、の条件で行い、各2回ずつ測定してその平均値を値とした。切削抵抗は従来使用されていたマルテンサイト系快削ステンレス鋼の切削抵抗値を基準として100N以下を良好と判断した。その結果、本発明例の鋼線の切削抵抗は100N以下と良好であった。
高温多湿環境下での耐食性評価は、長さ20mmに切断した鋼線からなる試験片について、表面を#500の研磨材を用いて研磨し、洗浄した後実施した。また、各鋼種5点ずつ試験を行った。それぞれの試験片について、80℃、90%の環境下に120時間放置し、取り出し後発銹の有無について観察を行った。無発銹のものはA、発銹の総数が1〜5個のものをB、6〜10個のものをC、10個以上のものをDとした。本発明例の鋼線の耐食性は、A及びBランクと良好であった。
Figure 2014189833
Figure 2014189833
Figure 2014189833
以上の各実施例から明らかなように、本発明により、高強度および快削性に優れた安価な高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼棒線を製造でき、電子機器用シャフト材、精密機器部品などの高強度・高快削性が求められる部品を安価に提供することができ、産業上極めて有効である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.8%以下、Mn:5.0%以下、P:0.05%以下,S:0.10〜0.35%,Cr:14.0〜18.0%,Ni:2.0〜7.5%,N:0.01〜0.10%,Cu:1.0%以下,Mo:1.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から構成され、下記式(1)で計算されるM値が35.0〜90.0、下記式(2)で計算されるF値が4.10以上であり、更に横断面の鋼線外周表面から1mm部におけるビッカース硬さ(Hv)が350以上であり、且つ、横断面内のビッカース硬さのバラツキが50以下であることを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
    M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(1)
    F=(Cr+Si+Mo)―(Ni+Mn+Cu+17.5C+10N)・・・(2)
    但し、式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
  2. 更に質量%でB:0.001〜0.010%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
  3. 更に質量%で、Zr:0.020%以下,Ca:0.020%以下,Al:0.010%以下,Mg:0.005〜0.050%,REM:0.0005〜0.200%,O:0.003〜0.015%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の成分組成を有し、
    下記式(1)で計算されるM値が35.0〜90.0、下記式(2)で計算されるF値が4.10以上であることを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線材。
    M=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo ・・・(1)
    F=(Cr+Si+Mo)―(Ni+Mn+Cu+17.5C+10N)・・・(2)
    但し、式中の元素記号は、当該元素の鋼中における含有質量%を意味する。
  5. ステンレス鋼線材に伸線加工を施してステンレス鋼線を製造する方法であって、
    該ステンレス鋼線材として請求項4に記載の高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線材を用い、該伸線加工を、伸線前の線材温度10〜50℃、伸線ダイスの角度12〜16°として行うことを特徴とする高強度オーステナイト系快削ステンレス鋼線の製造方法。
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