JP2015199971A - 高強度非磁性ステンレス鋼、及びステンレス鋼部品 - Google Patents

高強度非磁性ステンレス鋼、及びステンレス鋼部品 Download PDF

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Koichi Ishikawa
浩一 石川
植田 茂紀
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Abstract

【課題】高い強度と高い耐食性とを兼ね備えた高強度非磁性ステンレス鋼、及びこれを用いたステンレス鋼部品を提供すること。
【解決手段】高強度非磁性ステンレス鋼は、0.01≦C≦0.05mass%、0.80≦Si≦2.50mass%、20.5≦Mn≦24.5mass%、P≦0.040mass%、S≦0.010mass%、3.1≦Ni≦5.5mass%、0.30≦Cu≦0.80mass%、20.5≦Cr≦24.5mass%、0.50≦Mo≦1.50mass%、0.0010≦B≦0.0050mass%、O≦0.010mass%、及び、0.70≦N≦0.90mass%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、[X]値(=[Cr]+13[Si]+[Mn]+77[N])、[Y]値(=410[C]+2[Ni]+6[Cr])、及び[Z]値(=20[Si]+4[Cr]+15[Mo]+500[N])が所定の関係を満たす。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度非磁性ステンレス鋼、及びステンレス鋼部品に関し、さらに詳しくは、石油掘削用のドリルカラーとして好適な高強度非磁性ステンレス鋼、及び、これを用いたステンレス鋼部品に関する。
従来、ドリルを用いて石油掘削を行う場合などにおいて、地表から先端のドリルの位置を磁気感知により特定・制御するために、ビット近くのドリルカラーに測定器が入れられる。その際に方位・傾斜を測定するには、地磁気の影響を遮断する必要があり、そのためには、ドリルカラーには非磁性鋼を用いる必要がある。
このような非磁性鋼に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、所定量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、及びNを含む高強度非磁性鋼が開示されている。
同文献には、所定の組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼を所定の条件下で熱間加工すると、溶体化処理を施さなくても優れた機械的性質を示す点が記載されている。
特許文献2には、所定の組成を有し、かつ、平均結晶粒径及び結晶粒のアスペクト比が所定の範囲にある耐熱バネ用ステンレス鋼線が開示されている。
同文献には、この耐熱バネ用ステンレス鋼線は、高温耐へたり性に優れる点が記載されている。
従来、ドリルカラー用の材料として、
(1)13Cr−18Mn−0.5Mo−2Ni−0.3N、
(2)13Cr−21Mn−0.3N、又は、
(3)16.5Cr−16Mn−1Mo−1.3Ni−0.5Cu−0.4N
などの高Mn系非磁性ステンレス鋼が用いられてきた。
しかし、ここ最近は石油需要が非常に旺盛であり、掘削領域も多岐にわたり、その高深度化も進んでいる。このことから、更なる高強度、高耐食な材料が求められている。
特開昭59−205451号公報 特開2000−239804号公報
本発明が解決しようとする課題は、高い強度と高い耐食性とを兼ね備えた高強度非磁性ステンレス鋼を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような高強度非磁性ステンレス鋼を用いたステンレス鋼部品を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、
0.01≦C≦0.05mass%、
0.80≦Si≦2.50mass%、
20.5≦Mn≦24.5mass%、
P≦0.040mass%、
S≦0.010mass%、
3.1≦Ni≦5.5mass%、
0.30≦Cu≦0.80mass%、
20.5≦Cr≦24.5mass%、
0.50≦Mo≦1.50mass%、
0.0010≦B≦0.0050mass%、
O≦0.010mass%、及び、
0.70≦N≦0.90mass%を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる。
(2)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、次の(a)式及び(b)式を満たす。
[X]/4[Y]≧1.00 ・・・(a)
[Z]≧450 ・・・(b)
但し、
[X]=[Cr]+13[Si]+[Mn]+77[N]、
[Y]=410[C]+2[Ni]+6[Cr]、
[Z]=20[Si]+4[Cr]+15[Mo]+500[N]、
[]内は、各成分のmass%を示す。
(3)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、不可避的不純物である非金属介在物の面積率が2%以下である。
本発明に係るステンレス鋼部品は、本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼からなることを要旨とする。
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、耐食性及び強度について、良好な特性が得られる。これは、
(1)Nをより添加できるように、Cr量及びMn量を増加させたため、
(2)オーステナイトを不安定化させるが、固溶強化及び加工硬化に有効であるSiを活用したため、及び、
(3)オーステナイト単相を維持するために、Cr、Si、Niなどの成分バランスを最適化したため、
である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 高強度非磁性ステンレス鋼]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
[1.1. 主構成元素]
(1)0.01≦C≦0.05mass%:
Cは、オーステナイト形成元素として不可欠であり、強度に寄与する。このような効果を得るためには、C量は、0.01mass%以上である必要がある。C量は、さらに好ましくは、0.02mass%以上である。
一方、C量が過剰になると、粗大な炭化物が晶出し、加工性及び耐食性が劣化する。従って、C量は、0.05mass%以下である必要がある。C量は、さらに好ましくは、0.04mass%以下である。
(2)0.80≦Si≦2.50mass%:
Siは、強度に大きく寄与する。このような効果を得るためには、Si量は、0.80mass%以上である必要がある。Si量は、さらに好ましくは、1.00mass%以上である。
一方、Si量が過剰になると、非磁性を維持できなくなる。また、靱性の低下を招き、鋼の熱間加工性が劣化する。従って、Si量は、2.50mass%以下である必要がある。Si量は、さらに好ましくは、2.00mass%以下、さらに好ましくは、1.60mass%以下である。
(3)20.5≦Mn≦24.5mass%:
Mnは、鋼の脱酸剤として作用する。また、Mnは、N固溶量を増加させる効果がある。このような効果を得るためには、Mn量は、20.5mass%以上である必要がある。Mn量は、さらに好ましくは、21.0mass%以上である。
一方、Mn量が過剰になると、耐食性が劣化する。従って、Mn量は、24.5mass%以下である必要がある。Mn量は、さらに好ましくは、23.0mass%以下である。
(4)P≦0.040mass%:
Pは、粒界に偏析し、粒界腐食感受性を高めるほか、靱性を低下させる。そのため、P量は、低いほど良い。一方、Pの必要以上の低減は、コストの上昇を招く。従って、P量は、0.040mass%以下である必要がある。P量は、さらに好ましくは、0.030mass%以下である。
(5)S≦0.010mass%:
Sは、熱間加工性を低下させる。そのため、S量は、低いほど良い。一方、Sの必要以上の低減は、コストの上昇を招く。従って、S量は、0.010mass%以下である必要がある。S量は、さらに好ましくは、0.005mass%以下、さらに好ましくは、0.003mass%以下である。
(6)3.1≦Ni≦5.5mass%:
Niは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効である。また、Niは、固溶化熱処理時にオーステナイト単相組織を得るのに有効である。このような効果を得るためには、Ni量は、3.1mass%以上である必要がある。Ni量は、さらに好ましくは、3.5mass%以上である。
一方、Ni量が過剰になると、コストの上昇を招く。従って、Ni量は、5.5mass%以下である必要がある。Ni量は、さらに好ましくは、5.0mass%以下である。
(7)0.30≦Cu≦0.80mass%:
Cuは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効である。また、Cuは、オーステナイト単相組織を得るのに有効である。このような効果を得るためには、Cu量は、0.30mass%以上である必要がある。
一方、Cu量が過剰になると、熱間加工性が劣化する。従って、Cu量は、0.80mass%以下である必要がある。
(8)20.5≦Cr≦24.5mass%:
Crは、耐食性を確保する上で必須の元素である。また、Crは、N固溶量を増加させる効果がある。このような効果を得るためには、Cr量は、20.5mass%以上である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、21.0mass%以上である。
一方、Cr量が過剰になると、熱間加工性が害されるとともに、靱性の低下を招く。従って、Cr量は、24.5mass%以下である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、23.0mass%以下である。
(9)0.50≦Mo≦1.50mass%:
Moは、耐食性を向上させ、かつ、強度をより向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo量は、0.50mass%以上である必要がある。Mo量は、さらに好ましくは、0.70mass%以上である。
一方、Mo量が過剰になると、熱間加工性が害されるほか、コストの上昇を招く。従って、Mo量は、1.50mass%以下である必要がある。Mo量は、さらに好ましくは、1.00mass%以下である。
(10)0.0010≦B≦0.0050mass%:
Bは、鋼の熱間加工性を向上させるのに有効である。このような効果を得るためには、B量は、0.0010mass%以上である必要がある。
一方、B量が過剰になると、BNなどの窒化物を形成し、加工性が低下する。従って、B量は、0.0050mass%以下である必要がある。B量は、さらに好ましくは、0.0030mass%以下である。
(11)O≦0.010mass%:
Oは、冷間加工性や疲労特性などに有害な酸化物を形成する。そのため、O量は、少ないほど良い。一方、必要以上のOの低減は、製造コストの上昇を招く。従って、O量は、0.010mass%以下である必要がある。O量は、さらに好ましくは、0.007mass%以下、さらに好ましくは、0.005mass%以下である。
(12)0.70≦N≦0.90mass%:
Nは、非磁性、高強度、及び良好な耐食性を得るために必要な元素である。このような効果を得るためには、N量は、0.70mass%以上である必要がある。
一方、N量が過剰になると、Nブローが起こる。従って、N量は、0.90mass%以下である必要がある。N量は、さらに好ましくは、0.80mass%以下である。
[1.2. 副構成元素]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、上述した主構成元素に加えて、以下の1又は2以上の副構成元素をさらに含んでいても良い。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(13)0.10≦Nb+V+W+Ta+Hf≦2.0mass%:
「Nb+V+W+Ta+Hf」は、Nb、V、W、Ta、及びHf(以下、「Nb等」ともいう)の総量を表す。また、総量が上記範囲内である限りにおいて、これらのいずれか1種の元素のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良いことを表す。
Nb等は、炭化物又は炭窒化物を形成して鋼の結晶粒を微細化させ、靱性を高める効果がある。このような効果を得るためには、Nb等の総量は、0.10mass%以上が好ましい。
一方、総量が過剰になると、コストの上昇を招く。従って、総量は、2.0mass%以下が好ましい。総量は、さらに好ましくは、1.0mass%以下である。
(14)0.0001≦Ca+Mg+REM≦0.0100mass%:
「Ca+Mg+REM」は、Ca、Mg、及びREM(以下、「Ca等」ともいう)の総量を表す。また、総量が上記範囲内である限りにおいて、これらのいずれか1種の元素のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良いことを表す。さらに、「REM」とは、Ce、La等の希土類元素、又はこれらの合金をいう。
Ca等は、鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、Ca等の総量は、0.0001mass%以上が好ましい。
一方、総量が過剰になると、効果が飽和し、逆に熱間加工性を低下させる。従って、総量は、0.0100mass%以下が好ましい。総量は、さらに好ましくは、0.0050mass%以下である。
(15)0.001≦Al≦0.10mass%:
Alは、強力な脱酸元素であり、Oを極力低減するために必要に応じて添加する。このような効果を得るためには、Al量は、0.001mass%以上が好ましい。
一方、Al量が過剰になると、熱間加工性が劣化する。従って、Al量は、0.10mass%以下が好ましい。Al量は、さらに好ましくは、0.050mass%以下、さらに好ましくは、0.010mass%以下である。
(16)0.10≦Co≦2.0mass%:
Coは、オーステナイト単相組織を得るのに有効である。また、Coは、固溶強化による高強度化が図れ、弾性率及び剛性率を上昇させる効果がある。このような効果を得るためには、Co量は、0.10mass%以上が好ましい。
一方、Co量が過剰になると、コストの大幅な上昇を招く。従って、Co量は、2.0mass%以下が好ましい。Co量は、さらに好ましくは、0.5mass%以下である。
[1.3. 成分バランス]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、上述した成分を含むことに加えて、次の(a)式及び(b)式を満たしている必要がある。
[X]/4[Y]≧1.00 ・・・(a)
[Z]≧450 ・・・(b)
但し、
[X]=[Cr]+13[Si]+[Mn]+77[N]、
[Y]=410[C]+2[Ni]+6[Cr]、
[Z]=20[Si]+4[Cr]+15[Mo]+500[N]、
[]内は、各成分のmass%を示す。
[1.3.1. (a)式]
(a)式は、温間加工又は冷間加工時における加工硬化による強度上昇と関係がある。加工硬化による強度上昇を十分に確保するためには、[X]/4[Y]は、1.00以上である必要がある。[X]/4[Y]は、さらに好ましくは、1.10以上、さらに好ましくは、1.20以上である。
[1.3.2. (b)式]
(b)式は、固溶強化による強度上昇と関係がある。固溶強化による強度上昇を十分に確保するためには、[Z]は、450以上である必要がある。[Z]は、さらに好ましくは、470以上、さらに好ましくは、490以上である。
[1.4. 不純物の面積率]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼において、高強度を得るためには、非金属介在物の量は、少ないほど良い。
「非金属介在物」とは、鋼中に存在する非金属化合物であって、硫化物、酸化物などをいう。
「非金属介在物の面積率」とは、顕微鏡観察時における観察視野の総面積に対する非金属介在物の面積の割合をいう。
高強度を得るためには、不可避的不純物である非金属介在物の面積率は、2%以下である必要がある。
このような非金属介在物の少ない材料は、例えば、十分な脱酸、脱硫処理をすることにより製造することができる。
[2. ステンレス鋼部品]
[2.1. ステンレス鋼部品の具体例]
本発明に係るステンレス鋼部品は、本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼からなる。ステンレス鋼部品としては、例えば、石油掘削用のドリルカラー、ばね、シャフト、ボルト、ネジなどがある。本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、特に、石油掘削用のドリルカラーの材料として好適である。
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼を石油掘削用のドリルカラーとして用いる場合、外径は104mm以上254mm以下、内径は50mm以上80mm以下、長さは10m未満とするのが好ましい。これは、掘削深度により使い分けできるためである。
[2.2. ステンレス鋼部品の高強度化]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼であるため、高強度を得るためには、成分を最適化することに加えて、
(a)適切な条件下で温間加工又は熱間加工を行い、加工硬化させること、及び/又は、
(b)適切な条件下で冷間加工を行い、加工硬化させること
が好ましい。
[2.2.1. 温間加工又は熱間加工]
温間加工又は熱間加工を行う場合、表面温度が300℃以上900℃以下、かつ減面率が10%以上60%以下の条件下で仕上げ加工を施すのが好ましい。
仕上げ加工時の表面温度が低すぎると、変形抵抗が大きく、加工が困難になる。従って、表面温度は、300℃以上が好ましい。
一方、表面温度が高くなりすぎると、十分に加工歪が導入できない。従って、表面温度は、900℃以下が好ましい。
「減面率」とは、次式で表される値をいう。
減面率=(S0−S)×100/S0
但し、S0は加工前の素材の断面積、Sは加工後の素材の断面積。
仕上げ加工時の減面率が低すぎると、加工硬化が不十分となる。従って、減面率は、10%以上が好ましい。
一方、減面率が高すぎると、変形抵抗が大きく、加工が困難になる。従って、減面率は、60%以下が好ましい。
[2.2.2. 冷間加工]
冷間加工を行う場合、ステンレス鋼部品を構成する材料には、減面率が10%以上70%以下の冷間加工を施しても、非磁性を有するものを用いることが好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工時に加工誘起相変態が生じ、非磁性を維持できない場合がある。そのため、冷間加工後も非磁性が維持されるように、組成を最適化するのが好ましい。
冷間加工後も非磁性を維持するためには、材料は、Mn、N、Ni、Cuなどのオーステナイト生成元素を十分に含有しているものが好ましい。
[3. 作用]
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、耐食性及び強度について、良好な特性が得られる。これは、
(1)Nをより添加できるように、Cr量及びMn量を増加させたため、
(2)オーステナイトを不安定化させるが、固溶強化及び加工硬化に有効であるSiを活用したため、及び、
(3)オーステナイト単相を維持するために、Cr、Si、Niなどの成分バランスを最適化したため、
である。
さらにこのような高強度非磁性ステンレス鋼に対して、適切な温熱間加工、及び/又は、冷間加工を施すと、非磁性を維持したまま、さらに強度を向上させることができる。
(実施例1〜25、比較例1〜11)
[1. 試料の作製]
表1及び表2に示す化学成分を有する50kg鋼塊を高周波誘導炉にて溶製した。鋼塊から熱間鍛造加工にて直径20mmの棒材を作製し、1050〜1150℃での溶体化を行った。その後、500℃において30%の減面率の温間押出し加工を実施した。その加工材を各種試験片に加工した。
なお、表1及び表2中、「PRE」は、耐孔食性指数を表す。本発明において、
PRE=Cr+3.3Mo+16Nと定義した。
Figure 2015199971
Figure 2015199971
[2. 試験方法]
[2.1. 機械的特性]
加工材からJIS4号試験片を作製した。JIS−Z2241に準拠して、引張強さ、0.2%耐力及び弾性率を測定した。
[2.2. 衝撃試験]
加工材からJIS4号2mmVノッチ試験片を作製した。JIS−Z2242に準拠して、衝撃値を測定した。
[2.3. 透磁率]
外部磁界を200[Oe]とし、VSM法に従って透磁率を測定した。
[2.4. 耐食性]
加工材から20mm×70mm×5mmtの板状の試験片を作製した。JIS−G0575(硫酸−硫酸銅腐食曲げ試験)に準拠し、硫酸−硫酸銅腐食液中に試験片を浸漬し、曲げ試験を行った。曲げ角度は、150度とした。割れのないものを「○」、割れが発生したものは「×」とした。
[2.5. CPT(臨界孔食温度)測定]
ASTM G150に準拠し、CPT測定を行った。
[2.6. 窒素ブロー]
鋼塊を目視で調査し、ブローがないものを「○」と判定した。
[3. 結果]
表3に、結果を示す。表3より、以下のことが分かる。
(1)比較例1は、[Z]値が低いため、引張強度及び0.2%耐力が低い。
(2)比較例2は、N量が過剰であるため、窒素ブローが発生した。
(3)比較例3は、窒素ブローは発生しなかった。しかし、N量が過剰であるため、衝撃値が低い。
(4)比較例4は、Cr量が過剰であるため、透磁率が高い。
(5)比較例5は、Cr量が少ないため、耐食性が低い。
(6)比較例6(SUS304相当)、及び比較例7(SUS316相当)は、いずれも強度及び0.2%耐力が低い。
(7)比較例7〜11は、いずれもC量が多いため、強度、0.2%耐力、及び衝撃値が低い。
(8)実施例1〜25は、成分が最適化されているため、機械的特性、透磁率、及び、耐食性のいずれも比較例より良好な値を示した。
Figure 2015199971
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る高強度非磁性ステンレス鋼は、ドリルカラー、ばね、モータシャフト、ボルト、ネジ、VTRガイドピンなどに用いることができる。

Claims (10)

  1. 以下の構成を備えた高強度非磁性ステンレス鋼。
    (1)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、
    0.01≦C≦0.05mass%、
    0.80≦Si≦2.50mass%、
    20.5≦Mn≦24.5mass%、
    P≦0.040mass%、
    S≦0.010mass%、
    3.1≦Ni≦5.5mass%、
    0.30≦Cu≦0.80mass%、
    20.5≦Cr≦24.5mass%、
    0.50≦Mo≦1.50mass%、
    0.0010≦B≦0.0050mass%、
    O≦0.010mass%、及び、
    0.70≦N≦0.90mass%を含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる。
    (2)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、次の(a)式及び(b)式を満たす。
    [X]/4[Y]≧1.00 ・・・(a)
    [Z]≧450 ・・・(b)
    但し、
    [X]=[Cr]+13[Si]+[Mn]+77[N]、
    [Y]=410[C]+2[Ni]+6[Cr]、
    [Z]=20[Si]+4[Cr]+15[Mo]+500[N]、
    []内は、各成分のmass%を示す。
    (3)前記高強度非磁性ステンレス鋼は、不可避的不純物である非金属介在物の面積率が2%以下である。
  2. 0.10≦Nb+V+W+Ta+Hf≦2.0mass%
    をさらに含む請求項1に記載の高強度非磁性ステンレス鋼。
  3. 0.0001≦Ca+Mg+REM≦0.0100mass%
    をさらに含む請求項1又は2に記載の高強度非磁性ステンレス鋼。
  4. 0.001≦Al≦0.10mass%
    をさらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の高強度非磁性ステンレス鋼。
  5. 0.10≦Co≦2.0mass%
    をさらに含む請求項1から4までのいずれか1項に記載の高強度非磁性ステンレス鋼。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の高強度非磁性ステンレス鋼からなるステンレス鋼部品。
  7. 前記高強度非磁性ステンレス鋼に対し、表面温度が300℃以上900℃以下、かつ減面率が10%以上60%以下の条件下で仕上げ加工を施すことにより得られる請求項6に記載のステンレス鋼部品。
  8. 前記高強度非磁性ステンレス鋼は、減面率が10%以上70%以下の冷間加工を施しても、非磁性を有するものからなる請求項6又は7に記載のステンレス鋼部品。
  9. 前記ステンレス鋼部品は、石油掘削用のドリルカラーであり、
    外径が104mm以上254mm以下、内径が50mm以上80mm以下、長さが10m未満である請求項6から8までのいずれか1項に記載のステンレス鋼部品。
  10. 前記ステンレス鋼部品は、ばね、シャフト、ボルト、又はネジである請求項6から8までのいずれか1項に記載のステンレス鋼部品。
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