以下、本発明に係るフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置及びフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100の内部構成を表すブロック図である。先ず、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100の各部の構成について説明する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、複数(N個)の送信ブランチ系統(以下「ブランチ」という)である第1ブランチA,第2ブランチB,第3ブランチC、ミキサ(MIX:Mixer)9、LPF(Low Pass Filter)10、ミキサ15、LPF16、スイッチ(SW:Switch)21、ADC(Analog Digital Converter)22、遅延制御部23及びローカル信号生成部LoGenを有する構成である。
以下の各実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置では、パラメータN=3における構成が示されているが、パラメータNは2以上の自然数であれば良く、他の各実施形態においても同様である。
第1ブランチAは、変調部5、遅延部としての遅延器6、DAC(Digital Analog Converter)7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBは、変調部11、遅延部としての遅延器12、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCは、変調部17、遅延部としての遅延器18、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
以下の各実施形態において、各ブランチ(第1ブランチA,第2ブランチB,第3ブランチC)の構成及び動作は同様であるため、第1ブランチAを例示して説明する。
次に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100の各部の動作について説明する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置10は、第1ブランチA及び第2ブランチBから出力される2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を、LPF10の出力信号を基に遅延制御部23において判定する。フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置10は、遅延制御部23により判定された位相誤差を基に、第1ブランチA又は第2ブランチBのベースバンドの送信信号における位相制御として、送信信号の位相を遅延する。これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、第1ブランチA,第2ブランチB間の位相誤差をキャンセルできる。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置10は、第1ブランチA,第2ブランチB間の位相誤差をキャンセルした後、同様に、第2ブランチB及び第3ブランチCから出力される2つの高周波信号RF2,RF3間に生じた位相誤差を、LPF16の出力信号を基に遅延制御部23において判定する。フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、遅延制御部23により判定された位相誤差を基に、第2ブランチB又は第3ブランチCのベースバンド信号における位相制御として、送信信号の位相を遅延する。これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、第2ブランチB,第3ブランチC間の位相誤差をキャンセルできる。
第1ブランチA又は第2ブランチBにおけるベースバンドの送信信号の位相制御としての遅延制御と、第2ブランチB又は第3ブランチCにおけるベースバンドの送信信号の位相制御としての遅延制御とは同様な動作である。以下の各実施形態において、第1ブランチA又は第2ブランチBにおけるベースバンドの送信信号の位相制御としての遅延制御について説明し、第2ブランチB又は第3ブランチCにおけるベースバンドの送信信号の位相制御としての遅延制御の説明を省略する。
変調部5は、位相の遅延制御のためのテスト信号として入力されたベースバンドの送信信号を例えばデジタル変調し、デジタル変調の結果、同相成分の同相信号(I信号)と直交成分の直交信号(Q信号)とを用いて構成されるベースバンドの送信信号を遅延器6に出力する。
遅延部としての遅延器6は、1つ若しくは複数のフリップフロップ、又はFIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いて構成される。遅延器6は、FIRフィルタを用いて構成されている場合には、1つ又は複数のフリップフロップを用いて構成されている場合に比べて高精度に遅延を制御できる。
遅延器6は、変調部5から出力されたベースバンドの送信信号を入力し、更に、後述する遅延制御部23から出力された遅延制御指示を基に、入力された送信信号の位相を所定量ほど遅延する。なお、遅延制御指示には、遅延器6において遅延される位相の遅延量が含まれている。遅延器6は、位相が遅延された送信信号をDAC7に出力する。
DAC7は、遅延器6から出力された送信信号を入力し、デジタルの送信信号からアナログの送信信号に変換する。DAC7は、アナログの送信信号をミキサ8に出力する。
ミキサ部としてのミキサ8は、DAC7から出力されたアナログの送信信号を入力し、ローカル信号生成部LoGenから供給されるローカル信号Loを基に、入力された送信信号をアップコンバートする。ミキサ8は、アップコンバートにより生成された高周波信号RF1(例えばミリ波)をアンテナAnt1及びミキサ9にそれぞれ出力する。ミキサ8から出力された高周波信号RF1は、アンテナAnt1を介して送信される。
周波数変換部としてのミキサ9は、第1ブランチAのミキサ8から出力された高周波信号RF1と、第2ブランチBのミキサ14から同様に出力された高周波信号RF2とを入力する。ミキサ9は、入力された2つの高周波信号RF1,RF2を乗算処理し、乗算処理の出力信号YをLPF10に出力する。
ミキサ9における乗算処理について、数式を用いて説明する。2つの高周波信号RF1,RF2を数式(1)及び数式(2)において表す。なお、各ブランチ(第1ブランチA,第2ブランチB,第3ブランチC)の変調部(変調部5,変調部11,変調部17)から出力されたベースバンドの送信信号は、角速度ωにおいて同位相のCW(Continuous Wave)波である。
数式(1)において、パラメータXは、−180°[度]〜+180°[度]の変数であって、第1ブランチAの遅延器6における位相遅延量である。本実施形態においては、遅延制御部23は、第1ブランチAの遅延器6及び第2ブランチBの遅延器12のうち、遅延器6においてベースバンドの送信信号の位相を遅延させる。但し、遅延制御部23は、遅延器12においてベースバンドの送信信号の位相を遅延させても良い。
数式(2)において、パラメータφは、隣接する各々のブランチ(第1ブランチA,第2ブランチB)のミキサ8,14のアップコンバートに起因して2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を表す。
ミキサ9は、2つの高周波信号RF1,RF2を乗算処理し、乗算処理結果YをLPF10に出力する(数式(3)参照)。数式(3)において、パラメータYは、2つの高周波信号RF1,RF2の乗算処理結果を表す。数式(3)において、ミキサ9の乗算処理結果Yは、角速度ωの2倍の高周波成分と、角速度ωに依存しないDC成分との和成分の信号を含む。
LPF10は、所定のカットオフ周波数を超える高周波成分の信号を取り除く。LPF10は、ミキサ9の乗算処理結果Y(数式(3)参照)のうち、高周波成分に相当する数式(3)の第1項成分を取り除き、角速度ωに依存しないDC成分の信号Zをスイッチ21に出力する(数式(4)参照)。即ち、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100において、LPF10の出力信号Zは、高周波成分(例えば、ミリ波)が取り除かれた低周波の固定のDC成分となる。
ローカル信号生成部LoGenは、各ブランチ(第1ブランチA,第2ブランチB,第3ブランチC)のミキサ(ミキサ8,ミキサ14,ミキサ20)におけるアップコンバートのためのローカル信号Loを生成する。ローカル信号生成部LoGenは、生成されたローカル信号Loを、各ブランチ(第1ブランチA,第2ブランチB,第3ブランチC)のミキサ8,ミキサ14,ミキサ20にそれぞれ供給する。
スイッチ21は、不図示のスイッチ制御部から出力された切替制御信号に応じて、LPF10とADC22との間、又はLPF16とADC22との間の接続を切り替える。スイッチ21は、第1ブランチA又は第2ブランチBのベースバンドの送信信号における位相を遅延させる間においては、LPF10とADC22との間を接続する。これにより、LPF10の出力信号ZがADC22に入力される。
また、スイッチ21は、第2ブランチB又は第3ブランチCのベースバンドの送信信号における位相を遅延させる間においては、LPF16とADC22との間を接続する。これにより、LPF16の出力信号がADC22に入力される。
ADC22は、LPF10の出力信号Zを、スイッチ21を介して入力する。ADC22は、入力されたLPF10からのアナログの出力信号Zをデジタルの出力信号に変換する。ADC22は、デジタルの出力信号を遅延制御部23に出力する。
遅延制御部23は、ADC22により変換されたLPF10の出力信号Z(DC成分)を基に、第1ブランチAの遅延器6又は第2ブランチBの遅延部12におけるベースバンドの送信信号の位相遅延量を判定する。本実施形態においては、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、第1ブランチAの遅延器6においてベースバンドの送信信号の位相を遅延する。従って、遅延制御部23は、ADC22により変換されたLPF10の出力信号Zを基に、第1ブランチAの遅延器6におけるベースバンドの送信信号の位相遅延量を判定する。
遅延制御部23は、隣接する第1ブランチA及び第2ブランチBのうち、いずれかの遅延器6又は遅延部12に、判定された位相遅延量を含む遅延制御指示を出力する。即ち、遅延制御部23は、隣接する第1ブランチA及び第2ブランチBのうち、いずれかの遅延器6又は遅延部12に、いずれかのブランチにおいて変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
本実施形態においては、遅延制御部23は、隣接する第1ブランチA及び第2ブランチBのうち第1ブランチAの遅延器6に、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
遅延制御部23における位相遅延量の判定について、図2を参照して説明する。図2は、第1ブランチAの遅延器6における位相遅延量とLPF10の出力信号Zとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図2において、横軸はパラメータX[度](数式(1)参照)を表し、縦軸はLPF10の出力信号Z(DC成分)を表す。図2は、第1ブランチAからの高周波信号RF1と、第2ブランチBからの高周波信号RF2との間に位相誤差φが5°[度]である場合のシミュレーション結果である。図2において、LPF10の出力信号Zは、パラメータXを変化させ、数式(4)の位相成分がゼロとなる場合、即ち、X(=φ)=5°[度]において最大値となる。
遅延制御部23は、図2において、LPF10の出力信号Zが最大値となる場合のパラメータX(図2においては5°[度])を、遅延器6におけるベースバンドの送信信号の位相遅延量として判定する。遅延制御部23は、隣接する第1ブランチA及び第2ブランチBのうち第1ブランチAの遅延器6に、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量(5°[度])ほど遅延させる。遅延制御部23は、第2ブランチBの遅延器12に、変調部11において変調されたベースバンドの送信信号の位相を遅延させない。
また、遅延制御部23は、隣接する第1ブランチA及び第2ブランチBのうち第2ブランチBの遅延器12に、変調部11において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量の逆位相分に相当する位相遅延量(−5°[度])ほど遅延させても良い。遅延制御部23は、第1ブランチAの遅延器6に、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を遅延させない。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、隣接する第1ブランチA,第2ブランチBから出力された2つの高周波信号RF1,RF2におけるLPF10の出力信号を基に、遅延器6又は遅延器12における位相遅延量を判定する。更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、遅延器6又は遅延部12に、遅延器6又は遅延器12に対応する各ブランチにおいて変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100によれば、フェイズドアレーアンテナを構成する各アンテナに対応して設けられた各ブランチにおける高周波信号間の位相誤差を高精度に補正できる。また、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、図11に示した従来の構成に比べ、FFT処理部36の構成を不要とし、更にミキサの数を低減できる。これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100は、回路規模を増大することなく、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100の回路全体における消費電力を効果的に低減できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、高分解なADCを用いずに、位相差の検出を高精度にするための方法について説明する。
第1の実施形態の構成では、隣接するブランチからそれぞれ出力された2つの高周波信号間の位相が一致せず、例えばパラメータX=0°[度],パラメータφ=1°[度]では、位相誤差=1°[度]が生じている。図2において、LPF10の出力信号Zの値は、パラメータX=0°[度],パラメータX=1°[度]に対応する各LPF10の出力信号Zの値は約0.015%程度の値の差である。
遅延制御部23の判定において、LPF10の出力信号Zの最大値の判定に誤りが生じる可能性がある。従って、第1の実施形態の構成のADC22では、LPF10の出力信号Zの最大値の検出精度を高くするために、LPF10の出力信号Zを高精度にAD(Analog Digital)変換する必要がある。
一方、例えばパラメータX=90°[度],パラメータφ=91[度]である場合に同じ位相誤差=1°[度]が生じているとする。図2において、LPF10の出力信号Z(DC成分)の値は、パラメータX=90°[度],パラメータX=91°[度]に対応する各LPF10の出力信号Zの値は約1.745%の値の差がある。
従って、同じビット(例えば7ビット)の分解能を有するADC22の検出精度は、パラメータX=0°[度]近傍よりもパラメータX=90°[度]近傍の方が約100倍高いことになる。即ち、遅延制御部23においては、LPF10の出力信号Zの最大値を判定するより、2つの高周波信号間に予め90°[度]近傍の位相誤差φが付与された出力信号Zのゼロ値を判定する方が、簡易且つ高精度に位相誤差を判定可能である。なお、90°[度]近傍の位相誤差とは、例えば90°[度]±5°[度]の範囲である。
第2の実施形態においては、2つの高周波信号間の位相誤差が0°[度]近傍(例えば0°[度]〜10°[度])では、隣接する各ブランチのいずれかのブランチの変調部において変調されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号とを入れ替える。I信号とQ信号との入れ替えにより、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間の位相誤差は、(90°[度]+φ)となる。これにより、ADC22は、検出精度がより高くなるパラメータφ=90°[度]近傍において、LPF10の出力信号Zを高精度に判定できる。
図3は、第2の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aの内部構成を表すブロック図である。第1の実施形態と同様に動作する構成要素については同様の符号を用いるため説明を省略し、異なる内容について説明する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、複数(N個)のブランチである第1ブランチAa,第2ブランチBa,第3ブランチCa、ミキサ9a、LPF10a、ミキサ15a、LPF16a、スイッチ21、ADC22、遅延制御部23a及びローカル信号生成部LoGenaを有する構成である。
第1ブランチAaは、変調部5、入替部24、遅延部としての遅延器6a、DAC7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBaは、変調部11、入替部25、遅延部としての遅延器12a、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCaは、変調部17、入替部26、遅延部としての遅延器18a、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
入替部24又は入替部25は、変調部5又は変調部11から出力されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。本実施形態においては、第1ブランチAa,第2ブランチBa間の位相誤差をキャンセルする間、入替部24は、変調部5から出力されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。更に、入替部25は、変調部11から出力されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替えない。
但し、入替部25が変調部11から出力されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える場合、入替部24は変調部5から出力されたベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替えない。
入替部24は、変調部5から出力されたベースバンドの送信信号を入力し、更に、入力された送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。入替部24は、I信号とQ信号との各成分が入れ替えられたベースバンドの送信信号を遅延器6aに出力する。
なお、入替部25は、変調部11から出力されたベースバンドの送信信号を入力し、更に、入力された送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。入替部25は、I信号とQ信号との各成分が入れ替えられたベースバンドの送信信号を遅延器12aに出力する。
なお、入替部26は、変調部17から出力されたベースバンドの送信信号を入力し、更に、入力された送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。入替部26は、I信号とQ信号との各成分が入れ替えられたベースバンドの送信信号を遅延器18aに出力する。
ミキサ9aにおける乗算処理について、数式を用いて説明する。2つの高周波信号RF1,RF2を数式(5)及び数式(6)において表す。なお、第1ブランチAの入替部24のベースバンドの送信信号のI成分とQ成分との入れ替えにより、2つの高周波信号RF1,RF2間の位相誤差はパラメータX=0では(90°[度]+φ)となる。
数式(5)において、パラメータXは、−180°[度]〜+180°[度]の変数であって、第1ブランチAaの遅延器6aにおける位相遅延量である。遅延制御部23aは、第1ブランチAaの遅延器6a及び第2ブランチBaの遅延器12aのうち、遅延器6においてベースバンドの送信信号の位相を遅延させる。但し、遅延制御部23aは、遅延器12aにおいてベースバンドの送信信号の位相を遅延させても良い。
数式(6)において、パラメータφは、隣接する各々のブランチ(第1ブランチAa,第2ブランチBa)のミキサ8,14のアップコンバートに起因して2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を表す。パラメータφは、0°[度]近傍(例えば0°[度]〜10°[度])であって、例えば5°[度]である。
ミキサ9aは、2つの高周波信号RF1,RF2を乗算処理し、乗算処理結果YをLPF10aに出力する(数式(7)参照)。数式(7)において、パラメータYは、2つの高周波信号RF1,RF2の乗算処理結果を表す。数式(7)において、ミキサ9aの乗算処理結果Yは、角速度ωの2倍の高周波成分と、角速度ωに依存しないDC成分との和成分の信号を含む。
LPF10aは、所定のカットオフ周波数を超える高周波成分の信号を取り除く。LPF10aは、ミキサ9aの乗算処理結果Y(数式(7)参照)のうち、高周波成分に相当する数式(7)の第1項成分を取り除き、角速度ωに依存しないDC成分の信号Zをスイッチ21に出力する(数式(8)参照)。即ち、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aにおいて、LPF10aの出力信号Zは、高周波成分(例えば、ミリ波)が取り除かれた低周波の固定のDC成分となる。
遅延制御部23aは、ADC22により変換されたLPF10aの出力信号Zを基に、第1ブランチAaの遅延器6a又は第2ブランチBaの遅延部12aにおけるベースバンドの送信信号の位相遅延量を判定する。フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、第1ブランチAaの遅延器6aにおいてベースバンドの送信信号の位相を遅延する。従って、遅延制御部23aは、ADC22により変換されたLPF10aの出力信号Zを基に、第1ブランチAaの遅延器6aにおけるベースバンドの送信信号の位相遅延量を判定する。
遅延制御部23aは、隣接する第1ブランチAa及び第2ブランチBaのうち、いずれかの遅延器6a又は遅延部12aに、判定された位相遅延量を含む遅延制御指示を出力する。即ち、遅延制御部23aは、隣接する第1ブランチAa及び第2ブランチBaのうち、いずれかの遅延器6a又は遅延部12aに、いずれかのブランチにおいて変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
本実施形態においては、遅延制御部23aは、隣接する第1ブランチAa及び第2ブランチBaのうち第1ブランチAaの遅延器6aに、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
遅延制御部23aにおける位相遅延量の判定について、図4を参照して説明する。図4は、第1ブランチAaの遅延器6aにおける位相遅延量とLPF10aの出力信号Zとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4において、横軸は、第1ブランチAaの入替部24においてI信号とQ信号との入替によってベースバンドの位相が90°[度]ずれるため、パラメータ(X+90°[度])と表される。同図において、縦軸は、LPF10aの出力信号Zを表す。
図4においては、第1ブランチAaからの高周波信号RF1と、第2ブランチBaからの高周波信号RF2との間に位相誤差φが5°[度]生じている(φ=5)。図4において、LPF10aの出力信号Zは、パラメータXを変化させ、数式(8)の位相成分が90°[度]となる場合、即ち、X(=φ)=5°[度]においてゼロ値となる。
遅延制御部23aは、図4において、LPF10の出力信号Zがゼロ値がとなる場合のパラメータX(図4においては5°[度])を、第1ブランチAaの遅延器6aにおけるベースバンドの送信信号の位相遅延量として判定する。遅延制御部23aは、隣接する第1ブランチAa及び第2ブランチBaのうち第1ブランチAaの遅延器6aに、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量(5°[度])ほど遅延させる。遅延制御部23aは、第2ブランチBaの遅延器12aに、変調部11において変調されたベースバンドの送信信号の位相を遅延させない。
また、遅延制御部23aは、隣接する第1ブランチAa及び第2ブランチBaのうち第2ブランチBaの遅延器12aに、変調部11において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量の逆位相分に相当する位相遅延量(−5°[度])ほど遅延させても良い。遅延制御部23aは、第1ブランチAaの遅延器6aに、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を遅延させない。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、隣接する第1ブランチAa,第2ブランチBaから出力された2つの高周波信号RF1,RF2間の位相誤差φが0°[度]近傍である場合に、いずれかのブランチにおいてベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。各成分の入れ替えによって2つの高周波信号RF1,RF2間の位相誤差は(90°[度]+φ)となる。
更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、ADC22により変換されたLPF10aの出力信号を基に、遅延器6a又は遅延器12aにおける位相遅延量を判定する。更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、遅延器6a又は遅延部12aに、遅延器6a又は遅延器12aに対応する各ブランチにおいて変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aによれば、第1の実施形態の効果に加え、いずれかのブランチにおけるI信号とQ信号との入れ替えにより、高周波信号RF1,RF2間の位相誤差を、ADC22の検出精度の高い90°[度]近傍において高精度に判定できる。フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、第1の実施形態において例えば14ビット相当の分解能のADC22が必要であったのに対し、例えば7ビット相当の分解能のADC22aを用いることができる。
従って、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100aは、ADC22aにより変換されたLPF10aの出力信号のゼロ値を基に、遅延器6a又は遅延器12aにおける位相遅延量を簡易に判定できる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に生じた位相誤差が無く、2つの高周波信号の各位相が一致している場合に、位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。
例えば、第1ブランチAb,第2ブランチBbからそれぞれ出力された2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差が無く、各高周波信号RF1,RF2の位相が一致している場合、ミキサ8,14に供給する各ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成する場合を説明する。
図5は、第3の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bの内部構成を表すブロック図である。第1の実施形態と同様に動作する構成要素については同様の符号を用い、説明も省略し、異なる内容について説明する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、複数(N個)のブランチである第1ブランチAb,第2ブランチBb,第3ブランチCb、ミキサ9b、LPF10b、ミキサ15b、LPF16b、スイッチ21、ADC22、遅延制御部23b、メモリ部としてのメモリM及びローカル信号生成部LoGenbを有する構成である。
第1ブランチAbは、変調部5、DAC7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBbは、変調部11、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCbは、変調部17、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
メモリMは、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bに内蔵されるフラッシュメモリ又はハードディスクを用いて構成され、位相調整テーブルPTBを記憶している。位相調整テーブルPTBについて、図6を参照して説明する。図6は、位相調整テーブルPTBの一例を表す説明図である。
位相調整テーブルPTBは、各ブランチに供給される各ローカル信号(例えばLo1,Lo2)間に形成される位相差と、ADC22の出力値の最大値に対する比率とを関連付ける。各ローカル信号間に形成される位相差が10°[度]では、ADC22の出力値の最大値に対する比率は0.9848である。同様に、各ローカル信号間に形成される位相差が20°[度]では、ADC22の出力値の最大値に対する比率は0.9396である。同様に、各ローカル信号間に形成される位相差が30°[度]では、ADC22の出力値の最大値に対する比率は0.8660である。
遅延制御部23bは、ADC22により変換されたLPF10bの出力信号Z及び位相調整テーブルPTBを基に、ローカル信号生成部LoGenbに、各ローカル信号Lo1,Lo2間の位相差(例えば10°[度])を形成させる。即ち、遅延制御部23bは、ADC22により変換されたLPF10bの出力信号Zが、各ローカル信号Lo1,Lo2間の位相差(10°[度])に応じた値(0.9848)になる様に、ローカル信号生成部LoGenbの位相を調整し、各ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成させる。
ローカル信号生成部LoGenbは、遅延制御部23bからの指示に応じて、ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成した各ローカル信号Lo1,Lo2をそれぞれ生成する。ローカル信号生成部LoGenbは、生成された各ローカル信号Lo1,Lo2を、第1ブランチAbのミキサ8,第2ブランチBbのミキサ14にそれぞれ供給する。これにより、第1ブランチAb,第2ブランチBbからの2つの高周波信号間の位相差10°[度]が形成される。
なお、ローカル信号生成部LoGenbは、発信器と移相器とを含む構成であり、位相差を形成するためには、たとえば、移相器の移相遅延量を制御する。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号の各位相が一致している場合に、位相調整テーブルPTBを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。遅延制御部23bは、ADC22により変換されたLPF10bの出力信号Zが各ローカル信号Lo1,Lo2間の位相差(例えば10°[度])に応じた値(0.9848)になる様にローカル信号生成部LoGenbの移相器の位相遅延量を調整し、ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成させる。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bによれば、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号の各位相が一致している場合に、ローカル信号間の位相差を調整することにより、隣接する各ブランチ間に所望の位相差を形成できる。従って、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bによれば、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に所望の位相差を個別に形成でき、フェイズドアレー技術を簡易に実現できる。例えば、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、第1ブランチAbと第2ブランチBbとの間に10°[度]の位相差を形成でき、第2ブランチBbと第3ブランチCbとの間には−10°[度]の位相差を形成できる。
なお、上述した第3の実施形態においては、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に生じた位相誤差が無く、2つの高周波信号の各位相が一致していない場合においても、同様に、隣接する各ブランチ間に所望の位相差を形成できる。例えば、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、ADC22により変換されたLPF10bの出力信号Zを位相調整テーブルPTBの所望の位相差に応じた値に調整することにより、同様に所望の位相差を形成できる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態においては、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に位相誤差が生じている場合に、第1の実施形態において説明した様に、位相誤差をキャンセルした後に、隣接する各ブランチ間において所望の位相差を形成する。
例えば、第1ブランチAc,第2ブランチBcから出力された2つの高周波信号RF1,RF2間に位相誤差が生じている場合に、第1ブランチAcの遅延器6においてベースバンドの送信信号の位相を遅延させて位相誤差をキャンセルする。更に、位相誤差のキャンセルの後、第1ブランチAc,第2ブランチBc間の所望の位相差(10°[度])を形成する場合を説明する。
図7は、第4の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cの内部構成を表すブロック図である。第3の実施形態と同様に動作する構成要素については同様の符号を用い、説明も省略し、異なる内容について説明する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cは、複数(N個)のブランチである第1ブランチAc,第2ブランチBc,第3ブランチCc、ミキサ9c、LPF10c、ミキサ15c、LPF16c、スイッチ21、ADC22、遅延制御部23c、メモリ部としてのメモリM及びローカル信号生成部LoGencを有する構成である。
第1ブランチAcは、変調部5、遅延部としての遅延器6c、DAC7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBcは、変調部11、遅延部としての遅延器12c、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCcは、変調部17、遅延部としての遅延器18c、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
遅延制御部23cは、ADC22により変換されたLPF10cの出力信号Zを基に、第1ブランチAcの遅延器6cにおけるベースバンドの送信信号の位相遅延量を判定する。遅延制御部23cは、第1ブランチAcの遅延器6cに、判定された位相遅延量を含む遅延制御指示を出力する。即ち、遅延制御部23cは、第1ブランチAcの遅延器6cに、変調部5において変調されたベースバンドの送信信号の位相を、判定された位相遅延量ほど遅延させる。これにより、第1の実施形態において説明した様に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cは、第1ブランチAc,第2ブランチBcからの2つの高周波信号間の位相誤差をキャンセルできる。
更に、遅延制御部23cは、位相誤差のキャンセルの後、第1ブランチAc,第2ブランチBc間に所望の位相差(10°[度])を形成させる。具体的には、遅延制御部23cは、ADC22により変換されたLPF10cの出力信号Z及び位相調整テーブルPTBを基に、ローカル信号生成部LoGencに、各ローカル信号Lo1,Lo2間に位相差(例えば10°[度])を形成させる。
即ち、遅延制御部23cは、ADC22により変換されたLPF10cの出力信号Zが各ローカル信号Lo1,Lo2間の位相差(10°[度])に応じた値(0.9848)になる様にローカル信号生成部LoGencの移相器の位相遅延量を調整し、ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成させる。
ローカル信号生成部LoGencは、遅延制御部23cからの指示に応じて、ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成した各ローカル信号Lo1,Lo2をそれぞれ生成する。ローカル信号生成部LoGencは、生成された各ローカル信号Lo1,Lo2を、第1ブランチAcのミキサ8,第2ブランチBcのミキサ14にそれぞれ供給する。これにより、第1ブランチAc,第2ブランチBcからの2つの高周波信号間の位相差10°[度]が形成される。
なお、ローカル信号生成部LoGencは、発信器と移相器とを含む構成であり、位相差を形成するためには、たとえば、移相器の位相遅延量を制御する。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cは、第1の実施形態において説明した様に、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に生じている位相誤差をキャンセルした後に、位相調整テーブルPTBを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。遅延制御部23cは、ADC22により変換されたLPF10cの出力信号Zが各ローカル信号Lo1,Lo2間の位相差(例えば10°[度])に応じた値(0.9848)になる様にローカル信号生成部LoGenbの位相を調整し、ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成させる。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cによれば、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に生じている位相誤差をキャンセルし、ローカル信号間の位相差を調整することにより、隣接する各ブランチ間に所望の位相差を形成できる。従って、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100cによれば、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に所望の位相差を個別に形成でき、フェイズドアレー技術を簡易に実現できる。例えば、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100bは、第1ブランチAbと第2ブランチBbとの間に10°[度]の位相差を形成でき、第2ブランチBbと第3ブランチCbとの間には−10°[度]の位相差を形成できる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態においては、第2の実施形態の入替部を設け、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に生じた位相誤差を無くして、2つの高周波信号の各位相が一致している場合に、位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。
例えば、第1ブランチAd,第2ブランチBdから出力された2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差が無く各高周波信号RF1,RF2の位相が一致している場合、ミキサ8,14に供給する各ローカル信号Lo1,Lo2間に10°[度]の位相差を形成する場合を説明する。
図8は、第5の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dの内部構成を表すブロック図である。第2の実施形態及び第3の実施形態と同様に動作する構成要素については、同様の符号を用い、説明も省略する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dは、複数(N個)のブランチである第1ブランチAd,第2ブランチBd,第3ブランチCd、ミキサ9d、LPF10d、ミキサ15d、LPF16d、スイッチ21、ADC22、遅延制御部23d、メモリ部としてのメモリM及びローカル信号生成部LoGendを有する構成である。
第1ブランチAdは、変調部5、入替部24d、DAC7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBdは、変調部11、入替部25d、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCdは、変調部17、入替部26d、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
第5の実施形態において、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に生じた位相誤差をキャンセルする内容は第2の実施形態と同様である。更に、本実施形態において、位相誤差をキャンセルした後に位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する内容は第3の実施形態と同様である。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dは、入替部24dにおいて第1ブランチAdのベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dは、隣接する第1ブランチAd,第2ブランチBdからの2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を90°[度]以上として2つの高周波信号の各位相の遅延量を簡易に判定する。
更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dは、隣接する第1ブランチAd,第2ブランチBdからの2つの高周波信号間の位相が一致している場合に、位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dによれば、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号の各位相誤差を簡易に判定して各位相誤差を高精度にキャンセルできる。更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dによれば、ローカル信号間の位相差を調整することにより、隣接する各ブランチ間に所望の位相差を形成できる。
従って、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dによれば、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に所望の位相差を個別に形成できるため、フェイズドアレー技術を簡易に実現できる。例えば、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dは、第1ブランチAbと第2ブランチBbとの間に10°[度]の位相差を形成でき、第2ブランチBbと第3ブランチCbとの間には−10°[度]の位相差を形成できる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態においては、隣接する各ブランチから出力された2つの高周波信号間に位相誤差が生じている場合に、第2の実施形態の入替部によって2つの高周波信号間の位相誤差を90°[度]としてから遅延器において遅延させて位相誤差をキャンセルする。更に、本実施形態においては、隣接する各ブランチ間において所望の位相差を形成する。
例えば、第1ブランチAe,第2ブランチBeから出力された2つの高周波信号RF1,RF2間に位相誤差が生じている場合に、入替部24eによって2つの高周波信号RF1,RF2間の位相誤差を90°[度]としてから第1ブランチAcの遅延器6においてベースバンドの送信信号の位相を遅延させて位相誤差をキャンセルする。更に、位相誤差のキャンセルの後、第1ブランチAc,第2ブランチBc間の所望の位相差(10°[度])を形成する場合を説明する。
図9は、第6の実施形態のフェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eの内部構成を表すブロック図である。第2の実施形態及び第4の実施形態と同様に動作する構成要素については、同様の符号を用い、説明も省略する。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、複数(N個)のブランチである第1ブランチAe,第2ブランチBe,第3ブランチCe、ミキサ9e、LPF10e、ミキサ15e、LPF16e、スイッチ21、ADC22、遅延制御部23e、メモリ部としてのメモリM及びローカル信号生成部LoGeneを有する構成である。
第1ブランチAeは、変調部5、入替部24e、遅延部としての遅延器6e、DAC7、ミキサ部としてのミキサ8及びアンテナAnt1を含む構成である。同様に、第2ブランチBeは、変調部11、入替部25e、遅延部としての遅延器12e、DAC13、ミキサ部としてのミキサ14及びアンテナAnt2を含む構成である。更に、第3ブランチCeは、変調部17、入替部26e、遅延部としての遅延器18e、DAC19、ミキサ部としてのミキサ20及びアンテナAnt3を含む構成である。
第6の実施形態において、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に生じた位相誤差をキャンセルする内容は第2の実施形態と同様である。更に、本実施形態において、位相誤差をキャンセルした後に位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する内容は第4の実施形態と同様である。
以上により、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差が0°[度]近傍である場合には、入替部24eにおいて第1ブランチAeのベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替える。また、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差が90°[度]近傍である場合には、入替部24eにおいて第1ブランチAeのベースバンドの送信信号のI信号とQ信号との各成分を入れ替えない。隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差に関する情報は、各ブランチの変調部に入力されることが好ましい。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差が0°[度]近傍である場合には、隣接する第1ブランチAe,第2ブランチBeからの2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を90°[度]以上として2つの高周波信号の各位相の遅延量を簡易に判定する(図4参照)。
フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差が90°[度]近傍である場合には、隣接する第1ブランチAe,第2ブランチBeからの2つの高周波信号RF1,RF2間に生じた位相誤差を高精度に判定する(図2参照)。
更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、隣接する第1ブランチAe,第2ブランチBeからの2つの高周波信号間の位相が一致している場合に、位相調整テーブルを基に、各ブランチに供給される各ローカル信号間に所定の位相差を形成する。
これにより、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eによれば、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号の各位相誤差を簡易に判定して各位相誤差を高精度にキャンセルできる。更に、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eによれば、ローカル信号間の位相差を調整することにより、隣接する各ブランチ間に所望の位相差を形成できる。
従って、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100dによれば、隣接する各ブランチに供給される各ローカル信号間に形成される位相差に応じて、隣接する各ブランチからの2つの高周波信号間に所望の位相差を個別に形成でき、フェイズドアレー技術を簡易に実現できる。例えば、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100eは、第1ブランチAeと第2ブランチBeとの間に10°[度]の位相差を形成でき、第2ブランチBeと第3ブランチCeとの間には−10°[度]の位相差を形成できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した各実施形態においては、周波数変換部としてミキサ9〜9e、15〜15eを用いて構成した例を説明したが、図10に示す様に、周波数変換部として非線形素子40(例えばダイオード)を用いて構成しても良い。図10は、第1ブランチAからの高周波信号RF1及び第2ブランチBからの高周波信号RF2をそれぞれ入力する回路素子を、ミキサ9の代わりに非線形素子40を用いた構成例を示すブロック図である。
図10において、第1ブランチAの高周波信号RF1及び第2ブランチBの高周波信号RF2は、端子T1において結合(加算)されて非線形素子40に入力される。端子T1は、第1ブランチAからの高周波信号RF1の信号線と第2ブランチBからの高周波信号RF2の信号線とが短絡した結合点である。また、図10において、第1ブランチAの高周波信号RF1及び第2ブランチBの高周波信号RF2は、信号線の短絡によって端子T1において結合されて非線形素子40に入力されるのではなく、方向性結合器を介して非線形素子40に入力されても良い。
非線形素子40は、数式(9)により示される入出力特性を有し、2つの高周波信号RF1,RF2の和信号のうち例えば2乗成分(2次項成分)をLPF10に出力する。
数式(9)において、パラメータVは入力信号を表し、パラメータWは出力信号を表す。更に、係数An,…,A3,A2,A1,A0は数式(10)の関係が成立し、高次の係数ほどゼロに近づく。
非線形素子40に数式(1)及び数式(2)により表される2つの高周波信号RF1,RF2がそれぞれ入力されたとする。非線形素子40は、2つの高周波信号RF1,RF2の2次項成分W(V)をLPF10に出力する(数式(11)参照)。なお、数式(11)において、数式(9)の2次項成分の係数A2は考えないとする。
LPF10は、所定のカットオフ周波数を超える高周波成分の信号を取り除く。LPF10は、非線形素子40からの出力結果W(数式(11)参照)のうち、高周波成分に相当する数式(11)の第1項成分を取り除き、角速度ωに依存しないDC成分の信号Zをスイッチ21に出力する(数式(12)参照)。即ち、フェイズドアレーアンテナのブランチ間補正装置100において、LPF10の出力信号Zは、高周波成分(例えば、ミリ波)が取り除かれた低周波の固定のDC成分となる。LPF10以降の動作は、上述した各実施形態と同様であるため、説明を省略する。