JP5734578B2 - ヒアルロン酸増量剤 - Google Patents
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Description
皮膚は、表皮及びその下層の真皮から構成されているが、真皮は、表皮と異なり、細胞が密ではなく、細胞間はマトリックスで埋められている。このマトリックスは、繊維芽細胞により産生されるヒアルロン酸のような酸性ムコ多糖類とコラーゲン、エラスチンのような繊維性蛋白質で構成されている。真皮内における細胞外マトリックスの中でヒアルロン酸量は非常に少ないが、肌の弾力性に最も大きな影響を与える成分の一つであることが知られている。ヒアルロン酸は、その1gに対して5〜6Lも保水することができるため、皮膚における保水性はヒアルロン酸に起因するところが非常に大きい。そして、ヒアルロン酸はその高い保水性から多くの水を取り込んだ結果、水和ゲルとして細胞外マトリックス内で高い膨潤圧力を維持することができる。この真皮内での膨潤圧力が肌の弾力性に繋がる。
また、眼球の硝子体にはヒアルロン酸が多く含まれ、眼球を球状に保つ役割などをしている。
また、ヒアルロン酸は、心臓弁や動脈に多く含まれており、血管の弾性やしなやかさを保つ役割をしている。従って、心臓弁や動脈でのヒアルロン酸不足は、動脈硬化、高血圧、脳卒中などの一つの要因となる。
ここで、特許文献1は、(a)グルコサミン又はその塩、及び(b)ガラクチュロン酸若しくはその塩、グルクロン酸若しくはその塩、及びグルクロノラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む組成物が、ヒアルロン酸生成増強剤として使用できることを開示している。
項1. (a)リン脂質、及び(b)グルコサミン又はその塩を含むヒアルロン酸増量剤。
項2. リン脂質がグリセロリン脂質である項1に記載のヒアルロン酸増量剤。
項3. グリセロリン脂質が、レシチン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、及びホスファチジルエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項2に記載のヒアルロン酸増量剤。
項4. グリセロリン脂質が、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルイノシトールからなる群より選ばれる少なくとも1種である項2に記載のヒアルロン酸増量剤。
項5. グリセロリン脂質がホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールである項2に記載のヒアルロン酸増量剤。
項6. ホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの重量比率が、乾燥重量に換算して、ホスファチジルセリン:ホスファチジルイノシトール=0.5〜20:1である項5に記載のヒアルロン酸増量剤。
項7. (a)リン脂質と(b)グルコサミン又はその塩との重量比率が、乾燥重量に換算して、(a)リン脂質:(b)グルコサミン又はその塩=1:0.01〜50である項1〜6のいずれかに記載のヒアルロン酸増量剤。
従って、本発明のヒアルロン酸増量剤は、例えば、変形性膝関節症、関節リウマチのような関節疾患;ドライアイ、白内障のような角結膜上皮障害;アトピー性皮膚炎、乾皮症のような乾燥症状を呈する皮膚疾患などの予防、治療薬として有用である。また、乾燥肌の保湿用、シワ、タルミの軽減用の化粧品として有用である。さらに、上記関節疾患、角結膜上皮障害、皮膚乾燥症状などの緩和や、シワ、タルミの軽減を目的とした食品組成物として有用である。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤の有効成分であるリン脂質及びグルコサミンは何れも天然物由来の成分であるため、本発明のヒアルロン酸増量剤は、安全であり、また自然に優しい方法で製造することができる。
本発明のヒアルロン酸増量剤は、(a)リン脂質、及び(b)グルコサミン又はその塩を有効成分として含む。
(1)有効成分
リン脂質
リン脂質は、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質の何れであってもよい。
グリセロリン脂質としては、それには限定されないが、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピンのようなホスファチジン酸又はそのエステル;リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロールのようなリゾホスファチジン酸又はそのエステルが挙げられる。また、ホスファチジン酸又はそのエステルの混合物であるレシチンも使用できる。また、スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
リン脂質は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
中でも、グリセロリン脂質が好ましく、ホスファチジン酸又はそのエステルがより好ましい。特に、レシチン、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、若しくはホスファチジルエタノールアミン(PE)、又はこれらの混合物が好ましく、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、又はその混合物がより好ましい。
リン脂質がPS、PI、又はこれらの混合物である場合について、以下詳述する。
グリセロリン脂質がPSとPIとの混合物である場合の、PSとPIとの重量比率については、乾燥重量に換算して、それには限定されないが、PS:PIが約0.5〜20:1であることが好ましく、約1〜10:1であることがより好ましく、約1〜4:1であることがさらにより好ましい。
PSは、SIGMA社、BIOMOL社、日油株式会社などから市販されている。PIは、BIOMOL社などから市販されている。PSとPIとの混合物は、これら市販品を混合することにより調製できる。
また、PIは、大豆、菜種、ひまわり、パームなどの植物由来のレシチンから単離することができる。また、SLP-WHITE(ホスファチジルコリン(以下、「PC」と略称することもある。)25.6%、ホスファチジルエタノールアミン(以下、「PE」と略称することもある。)24.1%、ホスファチジン酸(以下、「PA」と略称することもある。)8%、PI12%、その他約30%)、SLP-PIパウダー(PC18%、PE22%、PA8%、PI17%、その他約35%)(いずれも辻製油製)などの市販レシチンから単離することもできる。PIの単離は、各種のクロマトグラフィーで行うことができる。
また、上記植物由来レシチン及び上記市販レシチンはPI、PC、及びPEを含むため、これらのレシチンにセリン及びPLDを作用させ塩基交換をさせることにより、PS及びPIを含むグリセロリン脂質混合物を得ることができる。必要に応じて、この混合物からPSとPIとの混合物を単離すればよい。PIとPSとの混合物は、その他のグリセロリン脂質などの夾雑物質が含まれた状態であってもよい。
即ち、塩基交換反応を行う前に、レシチンを有機溶媒相と水相からなる二相系中で攪拌すればよい。有機溶媒は特に限定されないが、脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類等の公知のものを使用すればよい。水相としては緩衝液が好ましい。緩衝液の酸、塩基及び塩の合計濃度は約0.1〜2Mが好ましい。上記二相系において、水は有機溶媒に対して20重量%以下であることが好ましい。二相系中での攪拌は約10〜40℃の温度で、約30分〜2時間行えばよい。これにより、通常、グリセロリン脂質と有機溶媒と水とのエマルジョンが形成される。
次いで、この混合物にセリン及びPLDを添加するが、塩基交換反応系中のグリセロリン脂質の濃度は約5〜40重量%であることが好ましい。また、本反応系中のセリンの濃度は約20〜40重量%が好ましい。
塩基交換反応は、約3.5〜10のpH条件で、約10〜40℃の温度で、約1〜72時間行えばよい。
また、実施例の「(1)PI・PS含有リン脂質混合物の製造例」の項目に示すように、レシチンを含む有機溶媒相に、セリン及びPLDを含有する緩衝液を加えて攪拌することによって塩基交換反応させることもできる。
塩基交換反応は、PLDを加熱失活させることにより、終了させればよい。さらに、遠心分離法等により有機溶媒相を得た後、有機溶媒を減圧除去することによって反応混合物を濃縮すればよい。次いで、アセトン又はエタノールで晶析を行い、固液分離によって固形物を得、乾燥することにより、PS及びPIを含むグリセロリン脂質混合物を単離することができる。
本発明では、遊離のグルコサミン又はその塩の何れも使用できるが、保存安定性が良い点で、グルコサミン塩が好ましい。グルコサミン塩としては薬理学的に許容されるものであれば特に制限はなく、無機酸塩、有機酸塩のいずれも使用できる。無機塩としては、硫酸塩、塩酸塩などが挙げられ、有機塩としては、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などが挙げられる。中でも、塩酸塩、クエン酸塩が好ましく、入手し易い点で塩酸塩がより好ましい。
(a)リン脂質と(b)グルコサミン又はその塩との比率は、乾燥重量に換算して、(a)リン脂質:(b)グルコサミン又はその塩が、それには限定されないが、1:約0.01〜50であることが好ましく、1:約0.05〜20であることがより好ましく、1:約0.1〜15であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、高いヒアルロン酸増量効果が得られる。
本発明のヒアルロン酸増量剤には、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品組成物などが含まれる。
皮膚外用剤
本発明のヒアルロン酸増量剤は各種の皮膚外用剤とすることができる。皮膚外用剤の形態は、特に限定されず、化粧品であれば、例えば、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、洗顔剤、ボディソープ、ハンドクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等のスキンケア用品又はメイクアップ用品の形態が挙げられる。中でも、広範囲の部位に適用できる点で、化粧水、化粧用ゲル、化粧用乳液、化粧用クリーム、美容液が好ましく、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリームがより好ましい。
医薬又は医薬部外品としての皮膚外用剤であれば、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、乳剤、粉剤、懸濁剤、エアゾール剤、液剤などや、基剤を支持体上に支持させた硬膏剤、パップ剤、テープ剤、プラスター剤などの剤型が挙げられる。中でも、ベトツキ感なく均一に塗布することができる点で、ゲル剤、ローション剤、乳剤が好ましく、ゲル剤がより好ましい。
(a)リン脂質の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.001〜10重量%であることが好ましく、約0.01〜5重量%であることがより好ましく、約0.1〜2重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
(b)グルコサミン又はその塩の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.05〜50重量%であることが好ましく、約0.1〜30重量%であることがより好ましく、約1〜20重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤は、各種の経口投与製剤とすることができる。固形製剤としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、丸剤、カプセル剤、チュアブル剤などが挙げられ、液体製剤としては、乳剤、液剤、シロップ剤などが挙げられる。中でも、服用し易く味がよい点で、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、カプセル剤が好ましく、顆粒剤がより好ましい。
固形製剤は、有効成分に薬学的に許容される担体や添加剤を配合して調製される。例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、でんぷん、マンニットのような賦形剤;アラビアゴム、ゼラチン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースのような結合剤;カルメロース、デンプンのような崩壊剤;無水クエン酸、ラウリン酸ナトリウム、グリセロールのような安定剤などが配合される。さらに、ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなどでコーティングしたり、カプセル化したりしてもよい。また、液体製剤は、例えば、上記の有効成分を、水、エタノール、グリセリン、単シロップ、又はこれらの混液などに、溶解又は分散させることにより調製される。これらの製剤には、甘味料、防腐剤、粘滑剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤のような添加剤が添加されていてもよい。
(a)リン脂質の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.01〜50重量%であることが好ましく、約0.05〜30重量%であることがより好ましく、約0.1〜25重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
(b)グルコサミン又はその塩の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.01〜80重量%であることが好ましく、約0.05〜50重量%であることがより好ましく、約0.1〜30重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤が医薬品である場合、注射剤や座剤などの剤型にすることもできる。
注射剤は、有効成分を、注射用蒸留水または生理用食塩水などに溶解又は分散させることにより得ることができる。注射剤には、pH調整剤等として水溶性無機酸又はその塩、水溶性有機酸又はその塩、中性アミノ酸、酸性アミノ酸又はその塩、塩基性アミノ酸の塩などが含まれていてもよい。また、緩衝剤、安定化剤、無痛化剤、防腐剤などが含まれていてもよい。
注射剤中の有効成分の含有量は、以下の通りである。
(a)リン脂質の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.001〜5重量%であることが好ましく、約0.01〜1重量%であることがより好ましく、約0.05〜0.5重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
(b)グルコサミン又はその塩の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.001〜20重量%であることが好ましく、約0.01〜15重量%であることがより好ましく、約0.05〜7.5重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
座剤中の有効成分の含有量は、以下の通りである。
(a)リン脂質の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.02〜5重量%であることが好ましく、約0.05〜3重量%であることがより好ましく、約0.1〜2重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
(b)グルコサミン又はその塩の含有量は、乾燥重量に換算して、製剤全体に対して、それには限定されないが、約0.05〜50重量%であることが好ましく、約0.1〜30重量%であることがより好ましく、約1〜20重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、適量の使用によって十分なヒアルロン酸増量作用が得られる。
本発明のヒアルロン酸増量剤が食品組成物である場合の有効成分の含有量は、以下の通りである。
(a)リン脂質の含有量は、乾燥重量に換算して、組成物全体に対して、それには限定されないが、約0.01〜50重量%であることが好ましく、約0.05〜30重量%であることがより好ましく、約0.1〜25重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、無理なく摂取できる量の食品中に、十分なヒアルロン酸増量作用が得られるだけの有効成分が含まれることになる。
(b)グルコサミン又はその塩の含有量は、乾燥重量に換算して、組成物全体に対して、それには限定されないが、約0.01〜80重量%であることが好ましく、約0.05〜50重量%であることがより好ましく、約0.1〜30重量%であることがさらにより好ましい。上記範囲であれば、無理なく摂取できる量の食品中に、十分なヒアルロン酸増量作用が得られるだけの有効成分が含まれることになる。
この食品組成物は、食品に通常用いられる賦形剤または添加剤を配合して、錠剤、タブレット剤、丸剤、顆粒剤、散剤、粉剤、カプセル剤、水和剤、乳剤、液剤、エキス剤、またはエリキシル剤等の剤型に調製することができる。中でも、服用しやすく味が良い点で、錠剤、タブレット剤、顆粒剤が好ましく、顆粒剤がより好ましい。
食品に通常用いられる賦形剤としては、シロップ、アラビアゴム、ショ糖、乳糖、粉末還元麦芽糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドンのような結合剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ポリエチレングリコールのような潤沢剤;ジャガイモ澱粉のような崩壊剤;ラウリル硫酸ナトリウムのような湿潤剤等が挙げられる。添加剤としては、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
投与量
本発明のヒアルロン酸増量剤の使用量は、医薬品である場合、対象の年齢、症状、体重などにより異なるが、概ね以下の通りである。
即ち、経口投与剤である場合は、有効成分の投与量が、乾燥重量に換算して、1日当たり、それには限定されないが、約0.1〜10gであることが好ましく、約0.5〜5gであることがより好ましい。
また、注射剤である場合は、有効成分の投与量が、乾燥重量に換算して、1日当たり、それには限定されないが、約0.005〜100mgであることが好ましい。
皮膚外用剤である場合は、製剤の使用量が、1日あたり、それには限定されないが、通常使用量である約0.1〜1mLであればよい。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤が食品組成物である場合、この食品組成物の摂取量は、摂取者の年齢、症状、体重などによって異なるが、有効成分の摂取量が、乾燥重量に換算して、1日当たり、それには限定されないが、約0.1〜10gであることが好ましく、約0.5〜5gであることがより好ましい。
使用対象は特に限定されないが、加齢や疾患によりヒアルロン酸量が少なくなった人が好適な対象となる。また、HAS1 、HAS2、HAS3のようなヒアルロン酸生産酵素が欠損していたり、発現量が低下する疾患の患者も好適な対象となる。
症状別に見ると、本発明のヒアルロン酸増量剤が医薬品である場合、変形性膝関節症、関節リウマチのような関節疾患;ドライアイ、白内障のような角結膜上皮障害;アトピー性皮膚炎、乾皮症のような乾燥症状を呈する皮膚疾患などの患者が好適な対象として挙げられる。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤が化粧品である場合、皮膚が乾燥したヒト、皮膚のシワやタルミが生じた中高年齢層などが好適な対象として挙げられる。
また、本発明のヒアルロン酸増量剤が食品組成物である場合、上記関節疾患、上記角結膜上皮障害、上記の乾燥皮膚疾患などの患者、乾燥肌のヒト、皮膚のシワやタルミが生じた中高年齢層などが好適な対象として挙げられる。また、予防的にヒアルロン酸生産量を増大させようとする健常人も対象となる。
(4)その他
本発明は、(a)リン脂質、及び(b)グルコサミン又はその塩の有効量を哺乳動物、特に人に投与する、生体内のヒアルロン酸増量方法、又はヒアルロン酸産生促進方法も包含する。
(1)PI・PS含有リン脂質混合物の製造例
大豆レシチン(UltralecP(ADM社);PC=24重量%, PE=17重量%, PI=14重量%含有)7gをヘプタン・アセトン混合液(ヘプタン:アセトン=4:1)70mLと混合し、溶解させ、レシチン溶液を得た。これとは別に、セリン20g及びPLD(ナガセケムテックス社製)500Uを1M酢酸緩衝液(pH4.5)67mL中に含む酵素含有セリン溶液を調製した。
上記レシチン溶液に酵素含有セリン溶液を加え、30℃にて5時間攪拌した。次いで、この混合液に、上記ヘプタン・アセトン混合液75mL及び塩化ナトリウム20gを加え、1時間攪拌し、これを静置して、水相と有機溶媒相とを分離した後、有機相を回収し、PI及びPS含有有機溶媒溶液を得た。この有機溶媒溶液は固形分7gを含有していた。その固形分の組成を下記条件のHPLCで調べたところ、次の通りであった。PS 32重量%、PI 21重量%、PC 2重量%、PE 9重量%、PA 13重量%。
<HPLC条件>
使用カラム:ジーエルサイエンス社製 Unisil Q NH2(4.6mm I.D.×250mm)
移動相:アセトニトリル/メタノール/10mMリン酸二水素アンモニウム
=1856/874/270
流速:1.3mL/分
検出:UV 205nm
<方法>
ヒト滑膜細胞株MH7A(RCB1512;RIKEN CELL BANK、JAPAN)は関節リウマチ患者由来の滑膜細胞にSV40 T抗原遺伝子を導入して株化した細胞である。このヒト滑膜細胞株MH7Aを、10%牛胎児血清を含むRPM1640培地を用いて培養し、維持した。
ディッシュ内で7日間の前培養を行ったMH7A細胞を、トリプシンEDTAを用いてディッシュから剥離し、培地を用いて細胞密度1.0×105個/mlの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を24孔プレートに、1ウェル当たり500μlづつ入れることにより、1ウェル当たり5×104個のMH7A細胞を播種した。37℃で24時間前培養した後、培地を吸引除去した。
各ウェルに、新しい培地を490μlづつ入れ、さらに、PIPSナガセ(PI・PS含有リン脂質混合物;ナガセケムテックス社製;PIを21重量%、PSを32重量%含む)、コーヨーグルコサミン(グルコサミン塩酸塩;甲陽ケミカル社製;グルコサミン塩酸塩を99.8重量%含む)、又はこれら両者を加えた。37℃で24時間培養した後、培養上清0.5mlを回収し、上清中のヒアルロン酸濃度をヒアルロン酸測定キット(生化学社)を用いて定量した。
本実施例では、ナガセケムテックス社から市販されているPIPSを使用したが、このPIPSは、上記の「(1)PI・PS含有リン脂質混合物の製造例」の項目に記載した方法で製造されたものである。
ヒト滑膜細胞によるヒアルロン酸生産に及ぼす、PIPSナガセとグルコサミンとの併用効果を図1に示す。図1には、培養上清中のヒアルロン酸濃度の増加量(PIPSナガセ、又はコーヨーグルコサミンを添加しない場合の培養上清中のヒアルロン酸濃度との差)を示した。
図1から明らかなように、PIPS単独の場合、及びグルコサミン単独の場合に比べて、各成分を併用した場合の方が、ヒアルロン酸増加量が格段に高かった。また、図1(A)から、グルコサミン塩酸塩濃度を1/2にしてもPIPSと併用することにより、ヒアルロン酸増加量が格段に高くなったことが分かり、図1(B)から、PIPS濃度を1/2にしてもグルコサミン塩酸塩と併用することにより、ヒアルロン酸増加量が格段に高くなったことが分かる。
このように、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールを主成分とするリン脂質混合物とグルコサミン塩酸塩とを併用することにより、ヒト滑膜細胞によるヒアルロン酸産生促進作用に対する相乗効果があることが認められた。
<方法>
500mlの培地(クラボウ社;S-106-500S)に増殖添加剤(クラボウ社;S-003-10)を添加して増殖添加剤含有106S培地を調製し、この培地でヒト皮膚正常繊維芽細胞NHDF(クラボウ社)を培養し、維持した。
ディッシュ内で7日間の前培養を行ったNHDF細胞を、トリプシンEDTAを用いてディッシュから剥離し、培地を用いて細胞密度1.0×105個/mlの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を24孔プレートに加えることにより、1ウェル当たり1×105個となるように細胞を播種した。37℃で24時間前培養した後、培地を吸引除去した。
各ウェルに、上記の増殖添加剤含有106S培地(クラボウ社)を加え、さらに、各種リン脂質、コーヨーグルコサミン(グルコサミン塩酸塩;甲陽ケミカル社製;グルコサミン塩酸塩を99.8重量%含む)、又はこれら両者を加えた。37℃で72時間培養した後、培養上清1mlを回収し、上清中のヒアルロン酸濃度をヒアルロン酸測定キット(生化学工業社)を用いて定量した。また、コントロールとして、上記の増殖添加剤含有106S培地(クラボウ社)を加えただけのものも、同様にして、培養し、ヒアルロン酸濃度を測定した。
本実施例では、リン脂質として、PIPSナガセ(PI・PS含有リン脂質混合物;ナガセケムテックス社製;PIを21重量%、PSを32重量%含む)、大豆レシチン(UltralecP ;ADM社、リン脂質組成はホスファチジルコリン=25%、ホスファチジルエタノールアミン=20%、ホスファチジルイノシトール=14%、ホスファチジン酸=6%)、大豆ホスファチジルコリン(PC;SIGMA;P7443)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(PE;SIGMA;P8193)、及び大豆ホスファチジルイノシトール(PI;SIGMA;P0639)、大豆ホスファチジルセリン(PS;SIGMA;P0474)を用いた。ここで使用したPIPSナガセは、ナガセケムテックス社から市販されているものであるが、このPIPSは、上記の「(1)PI・PS含有リン脂質混合物の製造例」の項目に記載した方法で製造されたものである。
ヒト繊維芽細胞によるヒアルロン酸生産に及ぼす、PIPSナガセとグルコサミンとの併用効果を図2に示す。図2には、培養上清中のヒアルロン酸濃度の増加量(PIPSナガセ、又はコーヨーグルコサミンを添加しない場合の培養上清中のヒアルロン酸濃度との差)を示した。
図2から明らかなように、PIPS単独の場合、及びグルコサミン単独の場合に比べて、各成分を併用した場合の方が、ヒアルロン酸増加量が格段に高かった。このように、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールを主成分とするリン脂質混合物とグルコサミン塩酸塩とを併用することにより、ヒト皮膚正常繊維芽細胞によるヒアルロン酸産生促進作用に対する相乗効果があることが認められた。
下記の各処方例で使用しているPI・PS含有リン脂質混合物は、上記の「(1)PI・PS含有リン脂質混合物の製造例」の項目に記載した方法で製造されたものである。
Claims (4)
- (a)大豆レシチンにセリン及びホスフォリパーゼDを作用させ塩基交換させることにより得られるグリセロリン脂質混合物であって、ホスファチジルセリン(PS)とホスファチジルイノシトール(PI)との重量比率が、乾燥重量に換算して、PS:PI=0.5〜20:1であるグリセロリン脂質混合物、及び(b)グルコサミン又はその塩を含むヒアルロン酸増量剤。
- (a)グリセロリン脂質混合物と(b)グルコサミン又はその塩との重量比率が、乾燥重量に換算して、(a)グリセロリン脂質混合物:(b)グルコサミン又はその塩=1:0.01〜50である請求項1に記載のヒアルロン酸増量剤。
- (a)ホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの重量比率が、乾燥重量に換算して、ホスファチジルセリン:ホスファチジルイノシトール=1〜4:1であるホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの混合物、及び(b)グルコサミン又はその塩を含むヒアルロン酸増量剤。
- (a)ホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの混合物と(b)グルコサミン又はその塩との重量比率が、乾燥重量に換算して、(a)ホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの混合物:(b)グルコサミン又はその塩=1:0.01〜50である請求項3に記載のヒアルロン酸増量剤。
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