JP5733977B2 - RNAinsituハイブリダイゼーション - Google Patents
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Description
病理学的、組織化学的に遺伝子発現を検出する方法が幾つか知られている。なかでも、遺伝子が転写されてできた転写産物であるメッセンジャーRNA(mRNA)を、mRNAが存在しているその場で(in situ)検出する方法として、in situハイブリダイゼーション法がある。この方法は、検出したいmRNAの配列に相補的な核酸配列を持った核酸プローブを溶解させたin situハイブリダイゼーション用のバッファー(特許文献1)を組織試料に添加させることにより核酸プローブをmRNAにハイブリダイズさせる。このとき、核酸プローブには検出用のラベルが付加されており、ラベルを適当な方法で検出し、顕微鏡下で観察する(特許文献2)。多くの場合、ラベルとしてジゴキシゲニン(Dig、digoxigenin)が使われ、抗ジゴキシゲニン抗体にアルカリフォスファターゼをコンジュゲートさせた蛋白質を用いて、抗ジゴキシゲニン抗体部分でDigラベルを検出し、さらにアルカリフォスファターゼ-NBT/BCIPによる発色反応を起こさせ、増感する(特許文献3、4、5、6)。核酸プローブとしては、検出したいmRNAの全長もしくは一部の配列をin vitro転写系で転写させて得られる相補的RNA、もしくは化学合成によるオリゴDNA(特許文献7、8)あるいはオリゴRNAが用いられてきた。
検出したいmRNAに対する核酸プローブとして、in vitro転写系で転写させて得られる相補的RNAを用いる場合、Dig-UTPをin vitro転写系に混入することにより、転写合成される相補的RNAにDig-UTPを取り込ませてDigラベルを付けるが(特許文献3、4、5、6)、個々の相補的RNAプローブ分子に何個のDig-UTPが取り込まれ、またプローブ配列中のどの位置に取り込まれるか、は人為的に制御できない。また、相補的RNAをプローブとして用いる場合、強いシグナルを獲得するために、in vitro転写系でなるべく長い相補的RNAを合成し、加水分解で長さが300塩基から500塩基程度の断片化されたプローブを作成し使用されてきた。この場合、どこで加水分解されるかという場所を人為的に制御できず、いろんな断片の混在したプローブとなる。いろんな断片の混在を避ける為に、標的とするmRNA全長の中から、他の遺伝子として特性の高い長さが300塩基から500塩基程度の領域を計算機で1個選択し、この領域をクローニング後にin vitro転写系で相補的RNAプローブを作成し、プローブ1種類でRNA in situハイブリダイゼーションを行う場合もある。しかし、領域の選択にはクローニングの際、PCRプライマーとしてのこの領域の両端配列の制約やハイブリダイゼーション時の重要なパラメーターであるGC含量の制約などから遺伝子間毎にプローブの長さがまちまちとなる。さらには、in vitro転写系では選択した領域に加えて相補的RNAの3’末端側に使用するベクターなどの余計な配列が付加される欠点がある。このように、in vitro転写系を用いて相補的RNAをプローブとして使用する場合、プローブごとに長さがまちまちであり、付加されるラベルの位置や数も制御できないことから、発現しているmRNAを定量化するための検出に用いるプローブに定量性を持たせることができない、という欠点が存在する。特に複数の遺伝子間での発現量の比較を目的とするのには、使用するプローブ間でのハイブリダイゼーションの条件が異なるため、従来の相補的RNAプローブは向いていない。また、相補的RNAを核酸プローブとして用いるときには、実験的条件設定に困難が伴う。すなわち、ハイブリダイゼーション過程は、一種の平衡反応であるため、検出感度を上げる目的で核酸プローブがなるべく多くのmRNA分子にハイブリダイズするプローブの濃度条件およびハイブリダイズさせるときの温度条件を探索する必要があり、それは用いる相補的RNAプローブの長さやGC含量によって異なる。ハイブリダイズした相補的RNAプローブを検出するプロセスでは、ラベルを検出するための抗体反応も平衡反応であるため、抗体濃度をどれくらいにするか、の条件探索が必要となる。さらに、アルカリフォスファターゼによる発色反応などの増感も反応時間に依存して発色強度が増すため、反応時間の制御が必要となる。以上のように、in vitro転写系で作成された相補的RNAを核酸プローブとして使用する場合は、複雑なプロセスと条件探索が必要で簡便ではない。
(1)組織試料中で発現している標的遺伝子mRNAに対して1または複数種のオリゴ核酸プローブをハイブリダイズさせ、オリゴ核酸プローブの少なくとも1塩基に付加されている低分子化合物ラベルを検出して標的遺伝子mRNAの存在を特定する方法であって、
1種または複数種のダミーオリゴ核酸を組織試料に前処理(プレハイブリダイズ)させた後にオリゴ核酸プローブを組織試料に接触させて標的遺伝子mRNAとハイブリダイズさせるか、または
オリゴ核酸プローブと前記のダミーオリゴ核酸との混合液を試料組織に接触させてオリゴ核酸プローブを標的遺伝子mRNAにハイブリダイズさせ、
前記ダミーオリゴ核酸は:
オリゴ核酸プローブと略同一の長さからなり、
標的遺伝子mRNA上のオリゴ核酸プローブがハイブリダイズする領域とはハイブリダイズせず、そして
オリゴ核酸プローブとはハイブリダイズしない、
ことを特徴とするRNA in situハイブリダイゼーション法。
(2) ダミーオリゴ核酸量が、オリゴ核酸プローブ量の2〜10倍である前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(3) オリゴ核酸プローブとダミーオリゴ核酸の塩基長が20bpから70bpの範囲で略同一である前記(2)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(4) オリゴ核酸プローブが、その5’末端塩基または/および3’末端塩基のそれぞれに低分子化合物ラベルが付加されている前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(5) 前記(4)に記載のオリゴ核酸プローブの2種以上を、互いの5’末端と3’末端とが8塩基以上離れるようにmRNAにハイブリダイズする前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(6) 低分子化合物に対する抗体、この抗体にコンジュゲートされた酵素、この酵素の基質としての発色化合物または蛍光分子化合物を使って検出シグナルを増感し、10倍から40倍の対物レンズを使用してシグナルを検出す前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(7) 組織試料がほ乳動物から単離した組織であり、ダミーオリゴ核酸がレトロトランスポゾンの反復配列の一部に相当するオリゴ核酸である前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(8) 組織試料がほ乳動物から単離した組織であり、ダミーオリゴ核酸が植物ゲノムの一部または微生物ゲノムの一部に相当するオリゴ核酸である前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(9) ダミーオリゴ核酸が、
オリゴ核酸プローブの塩基配列におけるAをTに、TをAに、GをCに、そしてCをGに置換し、
同じ塩基がM個(Mは4)以上で連続する場合は、その連続配列におけるM×0.2カ所(小数点以下切り上げて整数)からM×0.8カ所(小数点以下切り下げて整数)の塩基をその相補的な塩基で置換し、
5’側から読んでも3’側から読んでも同じ配列になるN塩基(Nは5)以上の回文配列がある場合は、少なくともN×0.2カ所(小数点以下切り上げて整数)、Nが偶数の場合多くて(N/2-1)カ所、Nが奇数の場合多くて((N-1)/2-1)カ所の塩基をその相補的な塩基で置換すること、
によって得られるオリゴ核酸である前記(1)のRNA in situハイブリダイゼーション法。
(10) 前記(7)に記載のRNA in situハイブリダイゼーション法に使用するダミーオリゴ核酸であり、レトロトランスポゾンの反復配列の一部配列からなるオリゴ核酸、または当該反復配列のそれぞれ異なる一部配列からなる複数種のオリゴ核酸のセット。
(11) 前記(8)に記載のRNA in situハイブリダイゼーション法に使用するダミーオリゴ核酸であり、植物ゲノムの一部または微生物ゲノムの一部配列からなるオリゴ核酸、もしくは植物ゲノムまたは微生物ゲノムのそれぞれ異なる一部配列からなる複数種のオリゴ核酸のセット。
配列番号1:5’-catccagaacactaaacagaagatggcagtggccagtagc-3’
配列番号2:5’-gaagaagtccactgcattccctgaggtgacattctccaca-3’
配列番号3:5’-tcattgaaggtcttaaacctcttgagggccgggttgggca-3’
配列番号4:5’-cgctgtgcttgaacagggcacttgtgatgtcttggatact-3’
配列番号5:5’-tagtcccagctactcaggaagctgaggtgggaggatggct-3’
配列番号6:5’-gctcccggcgatacgagggtccgatcttagctcgttgaca-3’
配列番号7:5’-cttataagtgggagctgaacaatgagaacacatggacaca-3’
配列番号8:5’-gggaggggaacattgcacaccagggcctgttgtgggggag-3’
配列番号9:5’-agccatcctcccacctcagcttcctgagtagctgggacta-3’
配列番号10:5’-tgtgtccatgtgttctcattgttcagctcccacttataag-3’
配列番号11:5’-ctcccccacaacaggccctggtgtgcaatgttcccctccc-3’
配列番号12:5’-ctggagatactgggaaaaggcaatcaggactaggcctttg-3’
配列番号13:5’-cgcagtgtccgaggaagatagctgttccttaactttggca-3’
配列番号14:5’-caggggttatatccgttttaaccggaagtccagtcttggc-3’
配列番号15:5’-gaacagctatcttcctcggacactgcg-3’
配列番号16:5’-ggtagaggcgaagtccttatcttccac-3’
配列番号17:5’-attgatgccaagactggacttccggtta-3’
配列番号18:5’-tgtccttccaaatgagctggcaagtg-3’
配列番号19:5’-ggagtttcccaaacactcagtgaaacaaag-3’
配列番号20:5’-acttcaacaagaacagtatccaagacatcac-3’
配列番号21:5’-gggtgcatcgctggtaacatcc-3’
配列番号22:5’-ctcaagatcgcattcatgcgtcttcac-3’
配列番号23:5’-aaatcccttcacactctttttggagata-3’
配列番号24:5’-aagcacatggcaccaatgacgttagccaccgattccacca-3’
配列番号25:5’-gtcttggtagtgctcctggacagttttctgcagaaacagc-3’
配列番号26:5’-atgttgacaatcttctcctcggggatgagaccgccattgt-3’
配列番号27:5’-ctcatggatcttcctctgcacgttaggccatgtcacaagt-3’
配列番号28:5’-cggcaacacacgtctttgcaaagtctgttacttcctgcac-3’
配列番号29:5’-ctttaatgtcacgcacgatttccctctcagctgtggtggt-3’
配列番号30:5’-atttctcgtggttcacacccatcacaaacatgggggcatc-3’
配列番号31:5’-gtggtgcaggatgcattgctgacaatcttgagggagttgt-3’
配列番号32:5’-tggtggtgcaggatgcattgctgacaatcttgagggagtt-3’
配列番号33:5’-agttggtggtgcaggatgcattgctgacaatcttgaggga-3’
配列番号34:5’-agcagttggtggtgcaggatgcattgctgacaatcttgag-3’
配列番号35:5’-aattgaatgtagtttcatggatgccacaggattccatacc-3’
配列番号36:5’-ggatgcggcagtggccatctcttgctcgaagtctagggca-3’
配列番号37:5’-ctgtcaggtcccggccagccaggtccagacgcaggatggc-3’
配列番号38:5’-cagaaccatcacgaggacctgtcataagacgtctttgtcg-3’
配列番号1〜4は、それぞれマウスCyp1a2遺伝子mRNAにハイブリダイズするオリゴ核酸の塩基配列である。
ダミーオリゴDNAのプローブ濃度に対する最適添加比率を求めた。対象組織はマウス肝臓を使用し、検出対象の遺伝子をCyp1a2とした。8週齢オスマウスの肝臓を通常のホルマリン固定・パラフィン包埋によりパラフィンブロックを作成し、厚さ5ミクロンの連続切片を作成し、脱パラフィン処理しプロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理後、RNA in situハイブリダイゼーションを実施した。遺伝子Cyp1a2のmRNAを検出するプローブとして両端をFITCラベルされた4種類の一本鎖オリゴDNAプローブ(配列番号1〜4)を用いた。Cyp1a2遺伝子のmRNA上で配列番号1〜4は、番号順に5’末端から3’末端の方向に並んでおり、隣のオリゴDNAプローブまでの距離は、配列番号1と2は594塩基、配列番号2と3は16塩基、配列番号3と4は61塩基である。また、配列番号5に示されるダミーオリゴDNA(一本鎖)を用いた。FITCラベルの検出には、Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用い、tyramide-FLU(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)によるTSA増感を実施した。図1は、4種のプローブのそれぞれの濃度が1nM(ナノモル)、2nM、3nM、4nM、5nM、すなわちそれぞれ合計4nM、8nM、12nM、16nM、20nMに対し、ダミーオリゴDNAの濃度が1倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍の濃度で添加されたハイブリダイゼーション溶液を用いて定量性RNA in situハイブリダイゼーションを行った結果を示す。なお、対照実験としての0nMのとき、ダミーオリゴDNAは200nMを添加した。画像は対物レンズ10倍で、連続切片の同じ領域を、Zeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使って撮影した。これらの画像データをImage Jソフトウエア(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて計算機処理し各画像のシグナル強度からプローブ濃度が0nMのときのシグナル強度を差し引いた値を各画像のシグナル強度として求めた。図2はその結果を、ダミーオリゴDNAの添加比率とCyp1a2遺伝子mRNAを検出して得られるシグナル強度との関係として、横軸にダミーオリゴDNAの添加比率、縦軸にシグナル強度(IntDen)をとり図示したものである。図2から分るように、ダミーオリゴDNAの添加比率が8倍のとき、オリゴDNAプローブの濃度とシグナル強度との順序関係が維持されており、シグナル強度のレンジも同じく順序関係が維持されている1倍と比較して広いことが分る。また、図2から一般にプローブ濃度が高くなるにしたがいシグナル強度も強くなっていることが分る。さらに、オリゴDNAプローブの濃度とシグナル強度との順序関係が維持されている添加比率が8倍のとき、および1倍のときの各画像について、オリゴDNAプローブの濃度が0nMの時の画像の蛍光強度に対し、何倍蛍光強度が強くなっているか、を示す比率を算出した(図3)。プローブ濃度が低い場合、例えば1nMのときのように、RNA in situハイブリダイゼーションのシグナルが弱いときには、この比率はバックグランドノイズの上昇を示す。すなわち、ダミーオリゴDNAの添加比率が1倍のとき、添加比率が8倍のときよりこの比率が大きく、バックグランドノイズが高い事が図3から分る。一方、オリゴDNAプローブの濃度が高い場合は、この比率はRNA in situハイブリダイゼーションによるシグナル強度の増加を示す。添加比率が8倍のとき、添加比率が1倍のときと比べて、バックグランドノイズが少ない分、画像全体のシグナル強度は低くなる。しかし、オリゴDNAプローブの濃度が高くなるにつれ、この比率の上昇度は添加比率が8倍のとき、添加比率が1倍のときと比べて大きく、これは添加比率が8倍のときダイナミックレンジが広いことを示す。図3から、添加比率が8倍のとき添加比率が1倍のときと比べてダイナミックレンジは1.375倍広くなっていることが分る。
ダミーオリゴDNAとサケ精子DNA、および添加しない場合の定量性RNA in situハイブリダイゼーションのRNA検出における効果の比較を行った。実験には、実施例1と同じくホルマリン固定・パラフィン包埋のマウス肝臓組織試料を用い、連続切片を作成し、実験に使用した。検出遺伝子は実施例1と同様、Cyp1a2であり両端をFITCラベルした配列番号1〜4で示した4種の一本鎖オリゴDNAプローブを使用し、4種のプローブのそれぞれの濃度が0nM(ナノモル)、1nM、2nM、3nM、4nM、5nMとなる種々のプローブ濃度に対し、添加比率8倍の濃度で配列番号5(L1C1と記す)および配列番号6(arbpと記す)に示される2種類のダミーオリゴDNA(一本鎖)を用いた。また、同様のオリゴDNAプローブ濃度に対し、Invitrogen社(カタログ番号15632-011、Salmon Sperm DNA solution)のサケ精子DNAを用い、終濃度が100ug/ml(マイクログラム/ミリリットル)(80nM相当)を添加した。また、対照として、ダミーオリゴDNAあるいはサケ精子DNAを添加しない(無添加と記す)実験を行った。FITCラベルの検出には、Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用い、tyramide-FLU(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)によるTSA増感を実施した。図4に、連続切片で同じ領域に対し得られたin situハイブリダイゼーション画像を示す。上段から順に無添加の画像、サケ精子DNAを添加した場合の画像、ダミーオリゴDNAのL1C1を添加した場合の画像、ダミーオリゴDNAのarbpを添加した場合の画像を示す。また左から順に4種のオリゴDNAプローブのそれぞれの濃度が0nM(ナノモル)、1nM、2nM、3nM、4nM、5nMである。画像は対物レンズ10倍で、連続切片の同じ領域を、Zeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使って撮影した。これらの画像をImage Jソフトウエア(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて計算機処理し、各濃度におけるシグナル強度を求めた。オリゴDNAプローブの濃度が0nMのとき、画像のシグナル強度はバックグランドの蛍光強度(IntDen)であり、これを無添加、サケ精子DNAを添加した場合、ダミーオリゴDNAのL1C1およびarbpを添加した場合について図5に示した。サケ精子DNAを添加した場合にバックグランドの蛍光強度が他と比べて強い。次に、各濃度におけるシグナル強度からこのバックグランドの蛍光強度を差し引くことにより各濃度における真のシグナル強度として求めた。これを図6に示した。オリゴDNAプローブ濃度が1nMでダミーオリゴDNAのarbpを添加した場合、真のシグナル強度が他と比べて小さいが、コントラスト良くシグナルは見えており、オリゴDNAプローブの添加に伴うバックグランドノイズの上昇が小さいことを示している。図6から、真のシグナルはダミーオリゴDNAのL1C1あるいはarbpを添加した場合、サケ精子DNAを添加した場合あるいは無添加の場合と比較して1.4倍から2.5倍ほど強いシグナルが得られる(特にプローブ濃度が2nM以上のとき)ことが分る。さらに、ダミーオリゴDNAのL1C1を添加したとき、およびarbpを添加したときプローブ濃度とシグナル強度との間の線形性が非常に良い事が分る。
ダミーオリゴDNAとサケ精子DNAの定量性RNA in situハイブリダイゼーションのRNA検出における効果の比較を行った。実験には、実施例1と同じくホルマリン固定・パラフィン包埋のマウス肝臓組織試料を用い、連続切片を作成し、実験に使用した。検出遺伝子は実施例1と同様、Cyp1a2であり両端をFITCラベルした配列番号1〜4で示した4種の一本鎖オリゴDNAプローブを使用し、4種のプローブのそれぞれの濃度が0nM(ナノモル)、1nM、2nM、3nM、4nM、5nMとなる種々のオリゴDNAプローブ濃度に対し、添加比率8倍の濃度で配列番号5に示されるダミーオリゴDNA(一本鎖)を用いた。また、同様のプローブ濃度に対し、Invitrogen社(カタログ番号15632-011、Salmon Sperm DNA solution)のサケ精子DNAを用い、終濃度が100ug/ml(マイクログラム/ミリリットル)(80nM相当)を添加した。FITCラベルの検出には、Daco社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用い、tyramide-FLU(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)による増感を実施した。図7に、連続切片で同じ領域に対し得られたin situハイブリダイゼーション画像を示す。上段がダミーオリゴDNA添加の画像、下段がサケ精子DNA添加の画像を示す。また左から順に4種のプローブのそれぞれの濃度が1nM(ナノモル)、2nM、3nM、4nM、5nMである。画像は対物レンズ10倍で、連続切片の同じ領域を、Zeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使って撮影した。これらの画像において図7のようにシグナルが存在しているシグナル領域Sとシグナルが存在していないノイズ領域Nを設定し、Image Jソフトウエア(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いてそれぞれの領域におけるシグナル強度を求め、領域S、Nにおけるシグナル強度の比率をSN比(signal-to-noise ratio)として求めた。図8は、得られたSN比を縦軸に、プローブ濃度を横軸にとり、ダミーオリゴDNAを添加した場合のSN比とサケ精子DNAを添加した場合のSN比の比較を示す。図8に示すように、オリゴDNAプローブ濃度とSN比の関係は釣り鐘状となるが、オリゴDNAプローブ濃度が2nM以上のときダミーオリゴDNAの方がサケ精子DNAに比較してSN比が良い事が示されている。
使用するダミーオリゴDNA配列の種類および数をテストした実施例である。実験には、実施例1と同じくホルマリン固定・パラフィン包埋のマウス肝臓組織試料を用い、連続切片を作成し、脱パラフィン処理しプロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理後、RNA in situハイブリダイゼーション実験を実施した。検出遺伝子は実施例1と同様、Cyp1a2であり両端をFITCラベルした配列番号1〜4の一本鎖オリゴDNAプローブを使用し、実施例2の結果にしたがい4種のプローブのそれぞれの濃度が2nM(ナノモル)の条件で行った。実験に使用したダミーオリゴDNA(一本鎖)は、配列L1W1、L1W2、L1W3(配列番号5、7、8)および配列L1W1、L1W2、L1W3(配列番号9〜11)を1種類(L1C1、L1C2、L1C3のそれぞれ1種類、グループID=1)、1種類(L1W1、L1W2、L1W3のそれぞれ1種類、グループID=2)、2種類混合(L1C1とL1W1の混合、L1C2とL1W2の混合、L1C3とL1W3の混合、グループID=5)、3種類混合(L1C1、L1C2およびL1C3の混合、グループID=3)、3種類混合(L1W1、L1W2、L1W3の混合、グループID=4)、および6種類混合(グループID=6)で行った。なお、L1W1、L1W2、L1W3の配列は、それぞれL1W1、L1W2、L1W3と相補的な配列となっている。ダミーオリゴDNAの濃度は、それぞれ合計で64nM(それぞれのオリゴDNAプローブの濃度2nMの合計8nMの8倍)で実施した。FITCラベルの検出には、Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用い、tyramide-FLU(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)による増感を実施した。画像は対物レンズ10倍で、連続切片(各画像の右上の数字は連続切片の順を示す)の同じ領域を、Zeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使って撮影した。図9にそのRNA in situハイブリダイゼーションの結果を示す。図9に示すように、上記ダミーオリゴDNA6種類を混合した場合コントラストが他と比較して悪くなっているが、どのダミーオリゴDNA組合せにおいても良好な画像が得られる。次にImage Jソフトウエア(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて各画像のシグナル強度を求め、図10および表1に示した。図10に示すように、使用するダミーオリゴDNAの種類および組によってシグナル強度に大きな差はなく、良好な結果が得られる。
検出に使用するプローブの種類数と検出されるシグナル強度の関係を示す実施例である。理論的には、ハイブリダイゼーション溶液中においてハイブリダイズさせる各オリゴ核酸プローブの濃度が均一であってGC含量が50%で均一であるとき、ハイブリダイゼーション過程での平衡定数Kは各オリゴ核酸プローブ間で同一であり、オリゴ核酸プローブiに対して
K = [Hi]/[fR]・[fPi] (式1)
が成り立ち、フリーのオリゴ核酸プローブ濃度 [fPi]は各オリゴ核酸プローブに対して同一である。さらに、オリゴ核酸プローブiがハイブリダイズした量(濃度)Hiは
[Hi] = K・[fR]・[fPi] (式2)
で表現され、
[H1] = [H2] = … = [HN] (式3)
である。したがって、観察されるシグナル強度Iは
I = S([H1])+….+S([HN]) (式4)
と加算的であり、ハイブリダイゼーション溶液中のオリゴ核酸プローブの種類数Nに依存して増加関数的に(理論的には比例して)増加する。
検出に使用するオリゴDNAプローブの濃度が上がるに従ってシグナル強度が、どのように変化するか、を示す。
K = [H]/[fR]・[fP]
なる平衡定数とハイズリダイズした産物の濃度[H]、フリーのmRNA濃度[fR]およびフリーのオリゴDNAプローブの濃度[fP]との間の関係式が成り立つ。
ハイブリダイズさせるオリゴDNAプローブの濃度P0 = [H]+[fP]
組織サンプル中に存在するmRNA濃度R0 = [H]+[fR] (組織試料中で一定)
の2式が成り立つので、ハイブリダイズさせるオリゴDNAプローブの濃度が高いほど、ハイズリダイズした産物は増える。本実施例では、オリゴDNAプローブの濃度が高くなるにしたがい、シグナル強度も線形的に強くなることを示す。
検出に使用するプローブの濃度が上がるに従ってシグナル強度が、どのように変化するか、を示す。実験には、実施例1と同じくホルマリン固定・パラフィン包埋のマウス肝臓組織試料を用い、連続切片を作成し、脱パラフィン処理しプロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理後、RNA in situハイブリダイゼーション実験を実施した。検出遺伝子は実施例1、2と同様、Cyp1a2であり両端をFITCラベルした配列番号1〜4の一本鎖オリゴDNAプローブを使用し、4種のオリゴDNAプローブのそれぞれの濃度が0nM(ナノモル)、1nM、2nM、3nM、4nM、5nMとなる種々のオリゴDNAプローブの濃度に対し、添加比率8倍の濃度で配列番号5に示されるダミーオリゴDNA(一本鎖)を用いた。オリゴDNAプローブが入っていないハイブリダイゼーション溶液には、64nMのダミーオリゴDNAを使用した。FITCラベルの検出には、Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用い、tyramide-FLU(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)による増感を実施した。画像は対物レンズ10倍で、連続切片の同じ領域3カ所を、Zeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使って撮影した。図15に画像を示す。また、Image Jソフトウエア(NIH、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を使用して、各濃度における各領域の画像のシグナル強度を計算機で求め、プローブ濃度が0nMの画像におけるシグナル強度を引いた値を真のシグナル強度として計算し、3カ所の平均値を求めた。その結果を図16に、縦軸にシグナル強度、横軸にプローブ濃度をプロットして示した。図に示されているように、ダミーオリゴDNA添加のもとでプローブ濃度が上がるにしたがい直線的にシグナル強度も強くなることが示されている。
発現量とシグナル強度の関係が線形になることにより、本発明によるRNA in situハイブリダイゼーションにより標的遺伝子mRNAを定量的に検出できることを示した実施例である。本実施例における検出遺伝子は概日周期に従い発現量が変動するArntlで、8週齢のオスマウスを使用し、午前9時から深夜1時(25時)までの4時間毎の5ポイントにおいて、2個体ずつ対象組織の肝臓(外側左葉)を採取し、半分に切断後、切断面からそれぞれ両側2mmの範囲を、ホルマリン固定・パラフィン包埋用組織試料および定量PCRに供するためのRNA抽出用組織試料とした。
組織試料として実施例8で使用した午後1時における8週齢のオスマウス1個体の肝臓を使用し、標的遺伝子Cyp1a2に対して両端をDigでラベルのオリゴDNAプローブを使用し、標的遺伝子Albに対し両端をFITCでラベルしたオリゴDNAプローブを用いて多段階にTSA増感を実施し、2つの標的遺伝子を2色の蛍光色素で定量的に検出し、これらの遺伝子の定量PCRによるCt値と比較した実施例である。
マウス肝臓において、アルブミン(Alb)遺伝子に対するオリゴDNAプローブ(配列番号12、両端FITCラベル、濃度1nM)を使って、tyramide sensitivity amplificationにおけるtyramid-FLU (Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)の濃度の影響をみた。実験では、マウス肝臓を通常のホルマリン固定・パラフィン包埋後、連続切片を作成し、プロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理し、上記オリゴDNAプローブおよび配列番号29のラベルの付加されていないラットActb遺伝子のオリゴDNAをダミーオリゴDNAとして濃度8nMで使用し、RNA in situハイブリダイゼーションを行った。FITCラベルの検出には、Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を用いた。その結果を図22に示す。図中の希釈倍率1は、メーカー推奨プロトコルのtryamide-FLUの濃度で、2倍希釈、5倍希釈、10倍希釈で実験を行った。図22に示すように、tryamide-FLUの濃度が減少するにしたがい、シグナル強度も減少する。なお、顕微鏡撮影には10倍の対物レンズでZeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使用し、得られた各画像をImage Jを用いて処理し、シグナル強度を求めた。
ラットGAPDH遺伝子のmRNA配列の5’末端から、オリゴ核酸プローブとして用いたい長さのウインドウ(この例では40塩基)を1塩基づつずらしながら、各オリゴ核酸のGC含量(%)を計算した例を図23示す。
オリゴ核酸プローブの場合、プローブにラベルを付加するが、ラベルを付加する位置およびラベルの数によってハイブリダイゼーションにどのように影響を与えるか、ラット肺におけるラットアクチンベータ遺伝子Actbに対するin situハイブリダイゼーションのシグナル強度で確認した(図24)。すなわち、ラット肺を通常のホルマリン固定・パラフィン包埋後、連続切片を作成し、脱パラフィン処理およびプロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理後、FITCラベルが5’末端に付加されたオリゴDNAプローブ(プローブ1)、3’末端に付加されたオリゴDNAプローブ(プローブ2)、5’末端および3’末端の両端にFITCラベルの付加されたオリゴDNAプローブ(プローブ3)を使用してRNA in situハイブリダイゼーションを実施し、得られる蛍光強度を比較した。なお、この実施例では、ダミーオリゴDNAではなくサケ精子DNAを用いた。ここで使用したFITCラベルの付加された3種のオリゴDNAプローブの配列は同じで長さ40塩基であり、配列番号29で示されている。実験には、FITCラベルを検出するための抗FITC抗体にPODがつなげられた蛋白質(Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100)を用いてFITCを検出し、さらにtyramide-FLUを添加させ、TSA増感を実施した。TSA増感にはPerkin-Elmer社のキット(TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)を使い、TSA増感のプロトコルはこのキットの添付文章にしたがった。ハイブリダイズさせるプローブの濃度は、いずれも5nMとした。撮影には10倍の対物レンズでZeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使用した。図24a、b、cは、それぞれプローブ1、プローブ2、プローブ3でラット肺のActb遺伝子のmRNAを検出した結果である。5’末端のみにラベルのついたプローブ1で検出されたActb遺伝子のmRNAのシグナル強度および、3’末端のみにラベルの付加されたプローブ2で検出されたActb遺伝子のmRNAのシグナル強度はほぼ同等であった。また、両端にラベルの付加されたプローブ3で検出されたActb遺伝子のmRNAのシグナル強度は、これらの倍程度であった。すなわち、シグナル強度はラベルの数に依存し、両端にラベルの付加されたプローブを使用することにより、検出感度を上げることが可能である。なお、図24dで示したActbのセンスプローブの配列は配列番号29の相補鎖である。
一つの遺伝子のmRNA上で、複数のラベルを用いてハイブリダイズした産物を検出しようとするとき、mRNAの核酸配列上で、2個のラベルはいったいどれくらい離れている必要があるか、確認した。これは、ラベルの増感方法や用いる顕微鏡、CCDカメラの光学系の解像度にも依存する。本実施例では、遺伝子GAPDHのmRNAの核酸配列に対し、2つのオリゴ核酸プローブA1およびA2を用意し、A1の5’末端およびA2の3’末端をFITCでラベルした(図25)。ラベルの付加されたA1およびA2の長さは40塩基であり、A2の3’末端は、配列番号30で示されるA1の5’末端から3塩基、5塩基、8塩基、11塩基の距離になるよう4種類のプローブA21、A22、A23、A24を用いた(それぞれ配列番号31、32、33、34)。なお、使用した試料組織はラット肺で、通常のホルマリン固定・パラフィン包埋後、連続切片を作成し、プロテアーゼK(Invitrogen社、Proteinase K SOL. RNA、25530049)で処理後、上記プローブの組(A1とA21、A1とA22、A1とA23、A1とA24)、およびサケ精子DNAを用いてRNA in situハイブリダイゼーションを実施した。FITCの検出にはDako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100を使用し、増感のためにPerkin-Elmer社のキット(TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)を用いてTSA増感を行った。顕微鏡撮影には10倍の対物レンズでZeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使用した。図26に示すように、A1の3’末端およびA2の5’末端の距離が8塩基以上離れている場合に、シグナルの加算的増強が観察される。すなわち、ラベル間の距離は8塩基離れていることが条件となる。
ラットACTB遺伝子のmRNAに対して、両端をFITCでラベルされた長さ40塩基のオリゴ核酸プローブにおいて、GC含量が40%(配列番号35)、50%(配列番号29)、60%(配列番号36)、70%(配列番号37)の4種類を用いて、それぞれ単独にプローブとして使用し、ラット肺でRNA in situハイブリダイゼーションを行い、さらに、抗FITC抗体(Dako社、抗FITCウサギポリクローナル抗体、P5100)を使用しTSA増感(Perkin-Elmer社、TSAプラスフルオレセインシステム、NEL741B001KT)を行った。顕微鏡撮影には10倍の対物レンズでZeiss蛍光顕微鏡Axioplan2およびCCDカメラAxioCamを使用した(図27)。プローブのGC含量が増えるに従って、シグナルが強くなり、検出感度が上がることが分かる。言い換えれば、ハイブリダイゼーションの平衡定数Kおよび融解温度TmはGC含量の増加関数であるため、融解温度Tmが大きくなるにしたがって、シグナル強度は上がり、検出感度があがる。なお、図27のActbセンスプローブの配列は配列番号29の相補鎖である。
実施例1から実施例10で用いたダミーオリゴDNAは、配列番号5〜11、配列番号29である。配列番号5および配列番号7〜11はヒトゲノム上のトランポゾン由来の反復配列から選択した。配列番号6は植物シロイヌナズナのperoxidase遺伝子の配列から選択した。また、配列番号29はラットActb遺伝子から選択されており、実施例10における標的遺伝子AlbのmRNAにはハイブリダイズしない。また配列番号27のオリゴDNAプローブ:
5’-gtcttggtagtgctcctggacagttttctgcagaaacagc-3’
に対し、5’側から順次に、AをTに、TをAに、GをCに、そしてCをGに置換し、TTTTの連続配列をATAAと置換して合成したオリゴDNA:
5’-cagaaccatcacgaggacctgtcataagacgtctttgtcg-3’(配列番号38)
もダミーオリゴDNAとして使用できる。この配列番号38のダミーオリゴ核酸の例では、長さおよびGC含量がオリゴDNAプローブ(配列番号27)と同一になっている。
Claims (7)
- 組織試料中で発現している標的遺伝子mRNAに対して1または複数種のオリゴ核酸プローブをハイブリダイズさせ、オリゴ核酸プローブの少なくとも1塩基に付加されている低分子化合物ラベルを検出して標的遺伝子mRNAの存在を特定する方法であって、
オリゴ核酸プローブと1種または複数種のダミーオリゴ核酸との混合液を試料組織に接触させてオリゴ核酸プローブを標的遺伝子mRNAにハイブリダイズさせ、
ダミーオリゴ核酸量がオリゴ核酸プローブ量の2〜10倍であり、オリゴ核酸プローブの塩基長は20bpから70bpであり、ダミーオリゴ核酸とオリゴ核酸プローブの塩基長の違いは±10%以下であり、
ダミーオリゴ核酸は標的遺伝子mRNA上のオリゴ核酸プローブがハイブリダイズする領域とはハイブリダイズせず、そしてオリゴ核酸プローブとはハイブリダイズしないが、オリゴ核酸プローブが非特異的に吸着する組織試料の部位に吸着してオリゴ核酸プローブの非特異的吸着によるバックグランドノイズを下げる、
ことを特徴とするRNA in situハイブリダイゼーション法。 - オリゴ核酸プローブが、その5’末端塩基または/および3’末端塩基のそれぞれに低分子化合物ラベルが付加されている請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
- 請求項2に記載のオリゴ核酸プローブの2種以上を、互いの5’末端と3’末端とが8塩基以上離れるようにmRNAにハイブリダイズする請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
- 低分子化合物に対する抗体、この抗体にコンジュゲートされた酵素、この酵素の基質としての発色化合物または蛍光分子化合物を使って検出シグナルを増感し、10倍から40倍の対物レンズを使用してシグナルを検出する請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
- 組織試料がほ乳動物から単離した組織であり、ダミーオリゴ核酸がレトロトランスポゾンの反復配列の一部配列からなるオリゴ核酸である請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
- 組織試料がほ乳動物から単離した組織であり、ダミーオリゴ核酸が植物ゲノムの一部または微生物ゲノムの一部配列からなるオリゴ核酸である請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
- ダミーオリゴ核酸が、
オリゴ核酸プローブの塩基配列におけるAをTに、TをAに、GをCに、そしてCをGに置換し、
同じ塩基がM個(Mは4)以上で連続する場合は、その連続配列におけるM×0.2カ所(小数点以下切り上げて整数)からM×0.8カ所(小数点以下切り下げて整数)の塩基をその相補的な塩基で置換し、
5’側から読んでも3’側から読んでも同じ配列になるN塩基(Nは5)以上の回文配列がある場合は、少なくともN×0.2カ所(小数点以下切り上げて整数)、Nが偶数の場合多くて(N/2-1)カ所、Nが奇数の場合多くて((N-1)/2-1)カ所の塩基をその相補的な塩基で置換すること、
によって得られるオリゴ核酸である請求項1のRNA in situハイブリダイゼーション法。
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