JP4882071B2 - 基板、及び標的物質の定量方法 - Google Patents

基板、及び標的物質の定量方法 Download PDF

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Description

本発明は、基板、及び遺伝子転写産物など標的物質の定量方法に関し、特に、アフィニティー相互作用を利用した標的物質の定量に用いることが可能な基板、及び定量方法に関する。
一般的に、遺伝子発現の従来解析として、ノーザンブロット、スロットおよびドットブロット、RNaseプロテクション定量法、RT−PCRなどを挙げることができる。また、一定のアフィニティー相互作用を利用した同定法として、免疫スクリーニング法なども採用されている。
さらに、組織学的および細胞学的試料についてin situハイブリダイゼーション法(ISHともいう)は、RNA発現の研究や正常および疾病状態における特異的遺伝子の役割を認識するための有益な手段である。
このような例として、細胞内のmRNAを定量するためのin situハイブリダイゼーション法がある(特表2001−509662)。この方法は、A.少なくとも1つの基材上で、2以上の物理的に区別される細胞の試料を培養し、B.該細胞の細胞形態内に核酸を保存し保持する固定液と該細胞とを接触させ、C.それにより、標識化核酸プローブが形態学的に無傷の細胞を透過し、標的核酸配列とハイブリダイズする条件下で、該標識化核酸プローブに固定された細胞を暴露し、ついで、D.該標的核酸配列にハイブリダイズする該プローブの量を検出する、工程を含むことを特徴とする、形態学的に無傷の細胞において、標的核酸配列の量を定量することを特徴とする。
特表2001−509662
しかしながら、上記ノーザンブロット、スロットおよびドットブロット、RNaseプロテクション定量法、RT−PCRなどの技術の各々は、mRNA発現レベルの変化を調べるための扱いにくいプロトコルがあり、定量性の欠如、低感受性および不適切な再現性の欠点を有している。さらに、これらのアプローチの各々には、解析前に標的mRNAプールの単離と操作を必要とする。これらの要因は、試料処理量を厳格に限り、解析時間を増加させ、信頼性を減少させるという問題点を有する。
また、上述のin situハイブリダイゼーション法においては、in−situハイブリダイゼーションプロトコルの最新の利用は、多数の遺伝子の調査において、その有効性が限られるという技術的短所を欠点として有している。
上記PCRは、出発材料がもっとも少量で核酸検出が可能な方法であり、細胞一個一個のレベルでも任意の遺伝子の発現の有無を知る感度を備えている方法であるが、遺伝子産物、転写産物等の量的な比較は通常の方法では難しかった。すなわち、上記特表2001−509662などに記載の方法を含め、遺伝子産物、転写産物の定量化の試みはいくつか報告されているが、いずれも相対的な定量方法であって、転写産物が何コピーあるか、遺伝子産物がいくつ存在するかという絶対的な定量方法には程遠かった。さらに、上述の内容は、核酸の定量に用いられることがほとんどであり、核酸のみならず、タンパク質など総合的な標的物質の定量を、絶対的に行う方法が望まれていた。
そこで、本発明の目的は、細胞レベルで絶対量として標的物質を定量することを可能とする基板、及び当該定量方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
上記目的を達成するために、発明者らは、アフィニティー相互作用について着目し、鋭意研究を重ねた結果、本発明の基板、及び定量方法を見出すに至った。
すなわち、本発明の基板は、プローブと結合性を有し、かつ複数の濃度勾配を有する断片を含む濃度勾配スポット部と、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本を設置するための標本設置部とを有することを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記プローブが、核酸、タンパク質、抗原、抗体、ペプチドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記プローブが、核酸であることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記濃度勾配スポット部が、複数の列で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記複数の列のうち、一方がセンス鎖、他方がアンチセンス鎖で構成されることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、基板が、ガラスであることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記標本が、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、前記標的物質が、タンパク質、抗原、抗体、核酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の基板の好ましい実施態様において、標的物質が、MMP、P53、Ki−67、APC、RB、PTEN、INK4a、p14、カドヘリン、β−カテニン、ras、VEGF、NFκBからなる群から選択される少なくとも1種由来の転写産物であることを特徴とする。
また、本発明の標的物質の定量方法は、プローブと結合性を有し、かつ複数の濃度勾配を有する断片と、当該断片と前記プローブとをアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度の検量線に基づき、前記標識プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本中に存在する前記標的物質を定量することを特徴とする。
また、本発明の標的物質の定量方法の好ましい実施態様において、前記標的物質の定量を、レーザー顕微鏡、蛍光顕微鏡、又は蛍光検出器により行うことを特徴とする。
また、本発明の標的物質の定量方法の好ましい実施態様において、標本が、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の標的物質の定量方法の好ましい実施態様において、前記標的物質が、タンパク質、抗原、抗体、ペプチド、核酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また本発明の標的物質の定量方法の別の側面において、上記本発明の基板を用いて、プローブと、前記複数の濃度勾配を有する断片とアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度との検量線を作成し、当該検量線に基づき、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本中に存在する前記標的物質を定量することを特徴とする。
また、本発明の標的物質の定量方法の好ましい実施態様において、前記プローブと、前記複数の濃度勾配を有する断片及び前記標的物質とのアフィニティー相互作用を、一体として行うことを特徴とする。
発明の効果
本発明の定量法によれば、細胞一個一個のレベルで、遺伝子産物の定量化が可能であるという有利な効果を奏する。癌組織では、すべての癌細胞が均一ではなく、形態や転移性などの性質を含めて多様性があるものとされている。その多様性は、すべて、遺伝子発現の多様性により規定されていると考えられるため、細胞一個一個のレベルで転写産物を同定できることは大変意義深い。
また、本発明によれば、標本一枚一枚について絶対的な定量化を行うことから、従来の相対的な定量化では難しかった過去の標本における「数値」との比較も可能となるという有利な効果を奏する。これまでは、実験ごとの条件の差により、同じ標本でも得られた蛍光強度が異なるために、過去のデータとの比較は困難であった。本発明の方法によれば、細胞一個につき何コピーの転写産物が含まれるかが数値として同定できるため、時間軸を超えて過去のデータとの絶対的比較も可能となる。
すなわち、従来型の相対的な定量方法においては、1回1回の実験により、実験条件が微妙に異なるので、複数回の実験結果を比較することができない。是に対して、本発明の標的物質の定量方法においては、一枚一枚の標本について検量線(標準曲線)を作成して、絶対量が定量化することができるので、実験条件のばらつきの問題も克服することができる。
図1は、ラット精巣におけるantisenseプローブ(a)、senseプローブ(b)を用いたISHでの28S rRNAの検出(写真)を示す。barは(1a)で1.0mm、(1b)で0.2mm。
図2は、ラット精細管におけるantisenseプローブを用いたISHでの28S rRNAの検出(a,c)。それぞれを5段階に分けて表示した画像(b,d)(写真)を示す。barは0.1mm。
図3は、シグナルの定量化を示す。図3aは、rRNAのISHの結果を示す。TSA−fluoresceinで蛍光発色した。赤線で囲った細胞一個について蛍光強度を測定した。図3bは赤線で囲った細胞を抜き出して強拡大にしたものであり、細胞内の蛍光強度は不均一であることが判る。図3cのヒストグラムは、横軸にintensity(0〜255)を縦軸にabsolute frequencyを取って表した。図3cの下の表で表すように、各intensityについてfrequecnyを求め赤線で囲んだ範囲すべてを加算した。intensity123は、25pixelのfrequencyがあることが判る。測定条件は以下のようである。アルゴンレーザー;波長488nmフィルター;BP505−5500ptical Slice;1.8μmPixel depth;8bit(0−255)。
図4は、ラット精巣でのtyramide signal amplification systemを用いたISHでの28S rRNAの検出(写真)を示す。antisenseプローブ(a)、senseプローブ(b)。
図5は、ラットの精子形成細胞で検出された28S rRNAの定量解析を示す。縦軸は相対的な蛍光強度として発現されたrRNAの量、すなわちピクセル強度を示している。細胞の発生過程は左から右へ横軸に示している。P−Iはstagelでパキテン期の精母細胞を示している。アラビア数字は精子細胞の分化の段階を示している。
図6は、本発明の基板の1実施態様を示す。
図7は、オリゴヌクレオチドにfluoresceinを直接ラベルし、種々の濃度(1pmol/μl、5pmol/μl、10pmol/μl、50pmol/μl、100pmol/μl)でスライドガラス上にスポットし、マイクロアレイスキャナーで、蛍光強度を計測し、棒グラフにした。スライドガラス上で、スポットの蛍光強度の差が数値として検出できることを示す。さらに、オリゴヌクレオチドの濃度が高くなればなるほど、蛍光強度が大きくなることを示す。
図8は、複数の濃度勾配を有するオリゴヌクレオチド断片と、標識プローブとのアフィニティー相互作用によって得られた標識強度と濃度との相関関係を示す。Absolute Frequencyとは、各スポットの測定範囲の測定画素数(pixel)を示す。4つのスポットは、すべて同じ面積である2209pixelの正円形の範囲で蛍光強度が測定された。各pixelにおける蛍光強度(0〜255)を測定し、2209pixelについてすべて加算した値が、Intensity x Absolute Frequencyの値となる。1.0μMのスポットの蛍光強度は、1.0μMの蛍光強度から0μMの蛍光強度を引いた値82042−34459=47583とした(表の右端のカラム)。2.0μM、5.0μMのスポットについても同様に計算し、棒グラフとした。1.0μMスポットについて計算を進める。1.0μMスポットの2209pixelの蛍光強度の平均値は、1pxelあたり47583/2209=21.5405となる、1.0μMのオリゴヌクレオチドが、2209pixelの範囲にスポットされているので、1.0μM/2209=0.0004526μM=0.4526nM=453pM/pixelとなる。従って、21.5405/pixelの蛍光強度は、453pM/pixelの濃度の標的オリゴヌクレオチドの蛍光強度であると類推できる。
図9は、スポットの蛍光像(写真)を示す。
図10Aは、スポットの各蛍光像(写真)について、蛍光強度を計算によって求めるため、定量化範囲を選択した(赤色の線で囲んだ範囲)。図10Aは、ブランクである0μMのオリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲を示す。
図10Bは、1μM、のオリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲(写真)を示す。
図10Cは、2μM、オリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲(写真)を示す。
図10Dは、5μMのオリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲(写真)を示す。
各スポットの左隣には、陰性対照であるアンチセンス鎖のオリゴヌクレオチドが同じ濃度でスポットされている。これらはブランクではなく、実験が正しく行われていれば、antisenseの標識プローブに対して、あらゆる濃度のantisenseのスポットはアフィニティー相互作用を示さない。図6の基板の実施形態により濃度勾配スライドを作成した。
本発明の基板は、プローブと結合性を有し、かつ複数の濃度勾配を有する断片を含む濃度勾配スポット部と、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本を設置するための標本設置部とを有する。複数の濃度勾配を有する断片を含む濃度勾配スポット部は、主として、標本中の標的物質を定量するために機能する。すなわち、この濃度勾配スポット部を利用して、蛍光標識などを使用した標識プローブと種々の濃度勾配を有する断片とをアフィニティー相互作用(プローブが核酸であれば、ハイブリダイゼーション)させることにより、濃度と標識による強度との相関関係を得ることができるので、当該相関関係から、以下に述べるように極めて厳密に標的物質の絶対的定量が可能となる。
濃度勾配は、使用目的、及び用途に応じて、適宜試験者が設定することができる。本基板を標的物質の定量に用いる場合には、標的物質の濃度範囲を包括して含まれるように濃度勾配を設定することが必要である。標的物質の濃度が未知である場合、十分広範な範囲の濃度勾配スポットを準備する必要がある。
ここで「プローブ」(探索子)とは、広義の意味で使用する。通常、核酸から成るものを意味するが、例えば、免疫スクリーニング法などにおいて、使用される抗体、抗原などもプローブに含めて広義に解釈する。つまり、プローブとは、断片又は標的物質と、一定の条件下で可逆的にアフィニティー相互作用するものであれば、特に限定されない。例えば、このような組み合わせ、すなわち、プローブ−断片又は標的物質とアフィニティー相互作用する物質(結合性を有する物質)を例示すれば、酵素−基質、助酵素(補酵素)−酵素、抗原−抗体、リガンド−レセプター、DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNA、PNA−DNA、PNA−RNAなど多数挙げることができる。本発明において、これらを使用目的、用途に応じて適宜選択することができる。
また、プローブとして核酸を用いた場合に、具体的に説明すると以下のようである。
例えば、濃度勾配スポット部の核酸は合成オリゴヌクレオチド、天然由来のオリゴヌクレオチドなど種々のものを用いることができる。化学合成したRNA鎖を使うことも可能である。通常、DNAの場合、合成できるのは、120base程度まで、RNAの場合もっと短くなるので、この範囲のプローブを用いることが可能である。もし、それより長いものをスポットするには、自前のtemplateから、RNAを酵素反応によって、in vitro transcriptionするか、DNAの場合は、プラスミドの形で増やして、制限酵素で断片を直線化することにより、行うことができる。
化学合成するのも、また酵素で切り出したり、in vitro transcriptionする際に使う、templateも、プローブをDIGラベリングする際につかうtemplateそのものを使用する場合が多いので、スポット部に使用する核酸などの断片と標識プローブとは、同一であることが原則である。この範囲のプローブを用いることが可能である。ただし、同一といっても、RNAの場合、合成オリゴヌクレオチドの場合は、sense、antisenseの違いがあるので、同一とは、厳密には「相補的」を意味する。また、2本鎖DNAの場合は、denaturationして、1本鎖にする必要がある。
敢えて、異なった配列を合成し、スポットすると言うケースが想定されるのは、例えば、プローブにしている分子Aと、homologyのある分子を探す目的で、stringencyを下げて、ハイブリダイズするケースであるが、in situハイブリダイゼーションでは、そのようなケースは稀である。
したがって、本発明においては、スポットに使用する断片と(標識)プローブとは、原則的に同一、または相補的な配列をもったもの、または、一部配列が異なっているものでも適応することができる。
そして、プローブと結合性を有する断片又は標的物質とは、上述の組み合わせに記載したように、プローブが酵素であれば、断片又は標的物質は基質、プローブが抗体であれば、断片又は標的物質は抗原タンパク質又は抗原ペプチド、プローブが、RNAであれば、断片又は標的物質は、RNA、DNA(一本鎖に解いたもの)などを挙げることができる。好適には、前記プローブが、核酸、タンパク質、抗原、抗体、リガンド、レセプター、酵素、基質、補酵素からなる群から選択される少なくとも1種である。プローブが、核酸であれば、標本からの組織切片などに含まれる転写産物の定量が可能となる。すなわち、もしプローブとして、RNAを用いれば、その標的転写産物の定量が可能となる。例えば、標的転写産物としては、MMP、P53抑制癌遺伝子、Ki−67、APC、RB、PTEN、INK4a、p14、カドヘリン、β−カテニン、ras、VEGF、NFκBからなる群から選択される少なくとも1種由来の転写産物などを挙げることができる。
また、転写産物とは、mRNAはもちろんのこと、rRNA、tRNA、hnRNA、snRNAもすべて含むという意味である。さらに言えば、matured RNAが形成される前の、いわゆるイントロンの部分も付いたプロセッシングされるまえのものをも包含する。特に、rRNAを陽性のプローブとして使用すれば、poly Aなどと同様に、ほぼすべての細胞種で大量に検出できるという観点から、好適である。
以上、核酸を主として説明したが、スポットに用いる断片は、核酸ではなく、合成タンパク質、合成ペプチドを使ってもよい。この場合、in situハイブリダイゼーションを、免疫組織化学染色にすれば、組織中で検出できる蛋白質抗原の定量化も可能である。
また、標的物質としては、MMP、P53抑制癌遺伝子、Ki−67、APC、RB、PTEN、INK4a、p14、カドヘリン、β−カテニン、ras、VEGF、NFκBからなる群から選択される少なくとも1種の分子(上記転写産物のほか、当該分子由来のタンパク質等を含め)を挙げることができる。
ここで、標本とは、特に限定されるものではなく、例えば、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群などの切片はもちろん、動物、植物個体そのものでもよい。例えば、細菌、カビなど比較的小さいものから、マウス一匹のほか、植物をも含まれる。植物としては、例えば果物や、稲、麦などの農業生産物などを挙げることができる。標本設置部は、上記標本をある程度固定化させるためのものである。本発明の基板においては、このように、濃度勾配スポット部と、標本設置部とを有しているが、当該基板を定量方法に用いた場合に、これ濃度勾配スポット部及び標本設置部とが同一面(平面である必要はない)上にあれば、後述するように、断片及び標的物質の、(標識)プローブとの反応を、ほぼ同一の反応条件下で行うことができ、より精密な絶対的定量を確実にすることができる。
また、本発明の基板の実施態様において、前記濃度勾配スポット部が、複数の列で構成されている。複数列で構成されていると、より精密な定量を可能とする。このような列として、実験系が正常に動作していることをより正確に確認するという観点から、例えば、前記複数の列のうち、一方がセンス鎖、他方がアンチセンス鎖で構成されることが、好ましい。この場合、アンチセンス鎖のプローブについては、アンチセンス鎖のスポットでは、濃度が高いところでも蛍光強度は限りなくゼロに近くなる。
基板自体についても特に限定されず、例えば、チタン製などの金属製、ガラス製、プラスチック製のもの、シラン処理されたものなど、細胞接着作用を有するものを挙げることができる。例えば、アミノシランは、ガラス表面のOH基と共有結合によりコート膜が形成され、ガラス表面に化学的に安定なアミノ基による正電荷が付与される。その正電荷により組織切片や細胞を強力に接着させることができる。シラン処理のほか、MASコート、ポリーL−リジン・コートなどを使用することができる。細胞標本の微細形態を蛍光顕微鏡で観察する場合に、なるべく蛍光が散乱しない基板を用いるという観点から、基板としては、ガラスを挙げることができる。
次に、本発明の標的物質の定量方法について説明する。
すなわち、本発明の標的物質の定量方法は、複数の濃度勾配を有する断片と、当該断片と標識プローブとをアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度の検量線に基づき、前記標識プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本中に存在する前記標的物質を定量する。
ここで、「複数の濃度勾配を有する断片」、「標的物質」、「標本」など定量方法で用いられる用語の定義、説明については、上記の本発明の基板において説明したものをそのまま本定量方法において用いることができる。
プローブと、複数の濃度勾配を有する断片とは、両者がアフィニティ相互作用することが前提となる。(標識)プローブと複数の濃度勾配を有する断片との例については、上述したとおり、すなわち、例えば、酵素−基質、助酵素−酵素、抗原−抗体、リガンド−レセプター、DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNA、PNA−DNA、PNA−RNAなど多数挙げることができる。
標識プローブとは、プローブを標識化したものであり適当な標識物質などを用いて、標識化することができ、特に限定されることはない。標識物質としては、フルオレセイン、ジゴキシゲニン(DIG)、アイソトープ、Cy3、Cy5などの蛍光物質を挙げることができる。その後の最終的な蛍光発色として、ローダミン、フルオレセイン、Cy3、Cy5、Alexa488、Alexa546等を用いることができる。
また、本発明の標的物質の定量方法において、好適には、前記標的物質の定量を、レーザー顕微鏡、蛍光顕微鏡、又は蛍光検出器により行う。このような定量をレーザー顕微鏡、蛍光顕微鏡、又は蛍光検出器により行うことで、必ずしもアイソトープを使用する必要がなく、低コスト化を達成し、例えば、病院などにおいても利用することが可能である。また、これらを最終的に用いることにより、定量化される細胞が、組織上のどの位置に存在する細胞であるかといった2次元位置情報を含めたデータを得ることができる点、有利である。これは、病理標本の診断においても使用することができる。
また、本発明の標的物質の定量方法の好ましい実施態様において、標本が、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群からなる群から選択される少なくとも1種を挙げる。これらの標本に関する説明等についても、上記本発明の基板における説明を参照することができる。また、好ましい実施態様において、前記標的物質が、タンパク質、抗原、抗体、ペプチド、核酸、標的転写産物からなる群から選択される少なくとも1種である。標的物質についても、上述の本発明の基板において説明したものをそのまま適用することができる。
本発明の標的物質の定量方法の別の側面において、上記本発明の基板を用いて、標識プローブを、前記複数の濃度勾配を有するプローブとアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度との検量線を作成し、当該検量線に基づき、前記標識プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本中に存在する前記標的物質を定量することができる。「本発明の基板」については、上記説明を参照されたい。本発明の基板を使用すること以外は、上記本発明の標的物質の定量方法における説明をそのまま適用することができる。
好ましい実施態様において、前記標識プローブと、前記複数の濃度勾配を有する断片、及び前記標的物質とのアフィニティ相互作用(核酸の場合には、ハイブリダイゼーション)を、一体として行うことができる。このように一体として行うことにより、ほぼ同一の条件下で、検量線用のアフィニティー相互作用と、標的物質と標識プローブとのアフィニティー相互作用とを行うことができ、これによって、より精密な定量を実現する。
また、上述のように本発明の基板を標的物質の定量方法に用いた場合には、例えば、核酸をプローブとして用いた場合、ハイブリダイズの条件を揃えることが大変難しいので、スポット部と組織を同じ条件で、ハイブリダイズし、同じ条件で、共焦点レーザー顕微鏡でみることが、より正確な定量を行う観点から望ましい。というのは、顕微鏡の方の調節も揃えるのは簡単ではないことに加え、レーザーは、日に日に、その明るさを減じていくので、厳密には、同日同時刻に観察することが条件を一定にするという観点から望ましいからである。
以上、プローブとして核酸を用いた場合の例を挙げて、本発明の標的物質の定量方法の一実施態様を説明すると以下のようである。
(1)まず、予め調査したい遺伝子(ここでは遺伝子Aとする)の遺伝子配列(cDNA配列)のうち、一部分、概ね20〜50baseの長さのもの(他の遺伝子と相同性のない、特異性の高い部分)を化学合成し、種々濃度で、スライドガラスにスポットする。これを濃度勾配スポット部と呼ぶことができる。
(2)濃度勾配スポットの近傍に、組織標本を貼り付ける。その組織標本と、スポットを一体として、in situハイブリダイゼーションする。通常のin situハイブリダイゼーションは、組織標本に対して行う。通常のin situハイブリダイゼーションでは、細胞一個一個についで、遺伝子Aを検出ためのプローブにハイブリする標的遺伝子(ここでは通常、遺伝子Aのみ)の発現の有無、つまり、DNAから転写されたmRNAの有無を検出し、mRNA(転写産物)が多い場合は濃く染まり、少ない場合は薄く染まるようになっている。
(3)in situハイブリダイゼーションの遺伝子発現の有無を検出する最後の発色を、蛍光発色に変更し、たとえば、共焦点レーザー顕微鏡で、その蛍光強度を測定することで、一つ一つの細胞ごと、あるいはデジタル情報測定の最小単位(いわゆるドット)ごとの、強度を数値として得ることが出来る。
(4)同じ操作をスポットについて行えば、各スポットごとの強度も得ることが出来、そのスポットは予め濃度(つまり、何本の合成した遺伝子が、そのスポットに存在するか)が判るので、細胞一個一個あたり、あるいは、その細胞の中のドットあたりの、存在する標的遺伝子の数(絶対量)が判明する。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
実施例1
以前の基礎研究から、ブアン固定液で固定し、DIG標識プローブでハイブリさせた標本(図1−1a)の取得画像を“posterization”することにより、簡単にISHシグナル強度の定量化の解析を行うことができた(図2)。
プローブとハイブリしたrRNAの量は初期の第1次精母細胞で最も多く、以後パキテン期の第1次精母細胞、そしてディプロテン期の精母細胞、終期の第2次精母細胞、精子細胞と続く。減数分裂の中期、後期、終期、そして初期のstep1精子細胞で最低レベルに達し、そして精子形成の間でわずかに増加した。ISHでrRNAを染色することは、組織切片におけるmRNAの定量的解析やハイブリできるRNA量を評価するのに有効なパラメーターであった。
そこで、本実験において、まず、ISHシグナルの定量的解析にはtyramide signal amplification system(PerkinElmer Japan)を用いて蛍光顕微鏡によるシグナル検出を行った。
今回のモデル実験では、パラフィン切片上でハイブリダイズする標的RNAとしてrRNA(ribosomal RNA)を選んだ。
《Materials and Methods》
組織標本の作製
Adultの雄性Wistarラット(CLEA Japan:Osaka,Japan)に130IU/kgのヘパリンを腹腔内に投与し、その後ペントバルビタール(50mg/kg)で麻酔した。15分後、ブアン固定液(375ml飽和ピクリン酸、125ml 37%w/wホルムアルデヒド、25ml氷酢酸)で左心室から灌流固定した。精巣を注意深くはずし、同じ固定液(ブアン固定液)で6時間以上浸漬固定した。標本はエタノールで脱水し、ベンゼンで置換し、パラフィンで包埋した。パラフィン切片(5μm厚)はシランコートのスライドガラス上に貼布・伸展させた。
プローブの作製
ラットの28S rRNAのDNA配列中、完全に保存された部分(accession番号#V01270;ヌクレオチド番号6035−6068,5’−gccgccgcaggtgcagatcttggtggtagtagca−3’,全34mer)を、Yoshii et al,(1995)(Yoshii A,Koji T,Ohsawa N,Nakane PK(1995).In situ localization of ribosomal RNAs is reliable reference for hybridizable RNA in tissue sections.Journal of Histochemistry and Cytochemistry 43:321−327.)によって以前報告されたrRNAの検出に用いた。上記の28S rRNAに対応する相補的なoligonucleotideは、5’末端をdigoxygeninで標識しoligonucleotide probe(34−mer)とした。本品はTakara Bio Inc.,Japanに合成を依頼して得た。ここではこれをDIG probeと呼ぶことにする。
対照実験として、34merでランダムな配列の標識していないprobeやDIG標識したoligonucleotideを用いた。
もうひとつ別のDIG標識probeは、以前我々が報告したmultilabeling法(Sasaki et al.1998;Mori et al.2001)を用いて次のとおりに準備した。EcoR1もしくはHindIIIの制限酵素認識部位を突出した終末(全40−mer)につけたsense(5’p−aattcgccgccgcaggtgcagatcttggtggtagtagca−a−3’)およびantisense(5’p−agctt−tgctactaccaccaagatctgcacctgcggcggc−g−3’)の配列をもつoligonucleotideで5’末端をリン酸化し、さらにアニールした2本鎖oligonucleotideを作成した。これは凍結乾燥製品として業者に合成を依頼して得た。これらをプラスミドpBluescriptIKS(−)に結合させpBluescriptIKS(−)にライゲーションし、大腸菌DH5α株を形質転換後、目的とするプラスミドをもつ大腸菌株をサブクローニングし、プラスミドを単離精製した。]サブクローニングした。この操作で得たplasmid DNAは、制限酵素EcoRIもしくはHindIIIで線状にでき、これをラベルするsenseおよびantisense riboprobeの合成のためのtemplate[鋳型]として使った。Roche社製のRNA標識キット(Roche Diagnostics;Mannheim Germany)のDIG−UTP存在下でRNA合成酵素T3/T7 RNA polymeraseを用い、DIG標識riboprobeをin vitroで転写することにより合成した。DNase処理後、生成物をethanol沈殿させ、沈殿物であるDIGラベル・プローブをHybridization混合液の中で再懸濁した。DNase処理後の加水分解は、probeが100−merよりも短いので省略した。これらのprobeをここではML probeと呼ぶ。
rRNAの検出に用いたラットの28S rRNAの生物種間でよく保存された部分(accession number #V01270;6035−6068,5’−gccgccgcagg−tgcagatcttggtggtagtagca−3’,total 34−mer)は、以前Yoshii et al(Yoshii A,Koji T,Ohsawa N,Nakane PK(1995).In situ localization of ribosomal RNAs is reliable reference for hybridizable RNA in tissue sections.Journal of Histochemistry and Cytochemistry 43:321−327.)に報告されている。DIG標識したリボプローブは、使用したRNA Labeling Kit(Roche Diagnostics;Mannheim,Germany)の製品に同封されている使用説明書に従って、DIG−UTPの存在下でT3,T7 RNA polymeraseを用いてin vitro transcriptionにより合成した。DNase処理後、生成物をエタノール沈殿し、ペレットをhybridization mixtureに再溶解した。
ハイブリダイゼーション
切片をtolueneおよびethanolで脱パラフィンし、続けて0.2N HCl処理、20mM CaClを加えたTris−HCl buffer(pH7.5)中で1μg/ml proteinase Kを添加したものによるタンパク分解処理、続いてDulbecco PBSに2mg/ml glycineを添加したもので処理をし、probeの非特異的結合を防ぐため0.1M triethanolamine(pH8.0)に0.25% acetic anhydrideを添加したものでアセチル化した。スライドを2×SSC(1×SSC=0.15M NaCl,0.015M sodium citrate)で洗浄し、50%formamideおよび2×SSC含有液中で45℃、1時間以上あらかじめHybridizationを行った。Hybridizationは50%formamide、2×SSC、1mg/ml tRNA、0.5mg/ml超音波処理したsalmon sperm DNA、2mg/ml bovine serum albumin、10% dextran sulfate、riboprobe(〜2μg/ml)を含むHybridization混合液20μLをスライドに載せ、湿箱内で45℃、16時間行った。次に、2×SSCおよび50% formamideで45℃、20分間3回それぞれ洗浄した。さらに1×SSCでスライドを洗浄した後、alkaline phosphatase結合anti−DIG(1:2500)を切片に載せ、室温で2時間おいた。スライドをさらに洗浄してから、キットの説明書通りに5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphateおよびnitroblue tetrazolium saltで酵素触媒色調変化を一晩行った。切片をmethyl greenで対比染色し、光学顕微鏡で観察した。
ラット精巣における精子形成過程の細胞の分化の分類のため、連続切片をPeriodoc Acid−Schiff(PAS)−hematoxylin染色した。
ハイブリ後、スライドガラスをRNase溶液、TNB blocking bufferで処理した。その後Anti−DIG−POD conjugate(1:1500)を切片上にかけて4℃でovernight反応させた。TNT washing bufferで十分スライドを洗った後、Fluorophare−tyramide(TSA)を室温で15分反応させ、洗浄した後、anti−fadeで封入した。ラット精巣の精子形成過程の分類のために連続切片をPAS−ヘマトキシリンで染色した。
シグナルの定量
染色した切片はPlan−Neofluor 40×/0.75レンズを用いたZeiss Confocal Laser Scanning顕微鏡(LSM510)で観察した。それぞれの精子形成細胞(第1次、第2次精母細胞と精子細胞)の細胞質のシグナル強度はLSM510用のソフトウェアで測定した。シグナル強度のヒストグラムは着目した精子形成細胞の細胞質の領域から得た。領域を囲んで範囲を限定し(図3a)、抽出し(図3b)、そして表に換算し(図3c)、それからExcelのspread sheetに移しかえた。シグナル強度を計算し、ピクセル強度の平均として算出された(0−255)。detector gainは最大の強度を示すピクセルがないように充分に低下させた。
《Result and Discussion》
図4aはrRNAのantisenseプローブでハイブリさせたラット精巣を示している。図4bはrRNAのsenseプローブでハイブリさせたラット精巣を示していて、特異的なシグナルは観察されなかった。
RNAシグナルを定量することは精細管の中でシグナルにムラのないことが最も重要である。隣接した同じ発生段階の精子形成細胞が、同じrRNA量を発現することが要求される。我々は今までの研究において同じ前処理のいくつかの切片で再現性のある結果を得ている。精祖細胞や第1次精母細胞でのrRNAの総量の解析は、細胞数も少なく細胞のサイズが小さすぎるため行わなかった。それぞれの細胞質におけるピクセルあたりの強度の平均値を得ることができ、その結果については図5に示している。それぞれの精子形成細胞の細胞質でのシグナル強度は、ピクセルあたりの強度の平均値を表している。第1次精母細胞で147−166、ディプロテン期の精母細胞で125、第2次精母細胞で108、精子細胞で53−135であった。減数分裂の中期、後期、終期、そして初期のstep1精子細胞では68−70であった。これらの精子形成細胞でのrRNA量は今回の研究で、以前のデータと一致した。組織切片でのmRNAの定量化には種々の克服しなければならない問題があった。第1の問題としてはプローブ濃度とISHのシグナル強度に連続的な関連性(比例関係)があるかどうかである。次の問題としては単位面積あたり、または細胞あたりのプローブの分子数が正確に細胞質のmRNA量を反映しているかどうかである。そしてその他にも細胞の体積や組織の体積、そしてラベルされた細胞数の変化の正確な測定が、与えられた組織の遺伝子発現の変化をも正確に評価しているかどうかと言う点を吟味することが必要不可欠であった。蛍光検出システムを用いた今回のモデル実験は、これらの組織切片でのシグナル定量化のためのさまざまな根本的問題を解決するための新しい見解をもたらすかもしれない。
実施例2
上記実施例1の結果から、プローブ濃度とシグナル強度との間に何らかの相関関係があることが示唆されたので、このような観点から、再度検討を加えた。
まず、本発明の基板を作成した。基板としてスライドガラスを用いた。
既存のマイクロアレイ・スライド作成の要領で、調査したい遺伝子について、濃度条件を振った希釈系列のDNA、RNA,オリゴヌクレオチドを、スポッターにより、スライドガラス上にスポットする。同じ大きさ(直径220μm)の円形状に1nL狂いなくスポットできるので、スポット上に、核酸分子が何コピー含まれるかを計算することができる。
次に、希釈系列スポットを作成した同じスライドガラスの半面を、定法によりシランコートし、調査したい臓器、組織、器官のパラフィン切片、又は凍結切片を貼り付ける。濃度勾配スポット部には、センス鎖及びアンチセンス鎖の複数列を採用した。結果を図6に示す。図6は、本発明の基板の1実施態様を示す。
希釈系列スポットと、切片を一体として、in situハイブリダイゼーションを行う。調査したい遺伝子について、DigoxigeninラベルのcRNAプローブを作成し、anti−digoxigenin,antibody−peroxidase conjugatedと、TSA−fluorescein、TSA−Alexa等の蛍光発色を行う。
切片、及び希釈系列スポットの蛍光強度は、共焦点レーザー顕微鏡(Carl Zeiss,LSM510等)で行う。希釈系列スポットの蛍光強度と比較することにより、組織切片上の知りたい細胞の蛍光強度を比較し、それぞれの細胞が、何コピーの転写産物を有しているか同定する。図7は、複数の濃度勾配を有する断片であって、標識化した断片の標識強度と濃度との間の相関関係を示す。このような検量線を用いて上記切片上の1の細胞の蛍光強度を比較検討することができる。
実施例3
次に、実際に複数の濃度勾配を有する断片と、標識プローブとのアフィニティー相互作用により検量線を得て、これによって、標的物質の定量を行った。
図8が、複数の濃度勾配を有する断片と、標識プローブとのアフィニティー相互作用により得られた検量線を示す。
図10は、スポットの各蛍光像について、蛍光強度を計算によって求めるため、定量化範囲を選択した(赤色の線で囲んだ範囲)。図10(1)は、ブランクである0μMのオリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲を示す。図10(2)は、1μM、図10(3)は、2μM、図10(4)は、5μMのオリゴヌクレオチド・スポットの解析範囲を示す。各スポットの左隣には、陰性対照であるアンチセンス鎖のオリゴヌクレオチドが同じ濃度でスポットされている。これらはブランクではなく、実験が正しく行われていれば、antisenseの標識プローブに対して、あらゆる濃度のantisenseのスポットはアフィニティー相互作用を示さない。図6の基板の実施形態により濃度勾配スライドを作成した。これらの結果、次のようなことが可能となった。
すなわち、癌細胞などの標本の一個一個の転写産物の定量については、手術や生検によって得られた癌組織の切片を作成し、癌の悪性度を示すと考えられる、MMPやカドヘリン、P53抑制癌遺伝子の発現量を細胞レベルで絶対量として定量化し、予後を推測したり、テーラーメイド医療の一環としての治療法の決定にも用いることができる。
特に、この定量化が組織切片上でできるということは、従来の病理組織的診断に加えて、任意の遺伝子の転写産物を定量化できる利点があり、病理組織学的悪性度と、遺伝子産物のコピー数を対応させることが出来る。
つまり、病理専門医の手にゆだねられてきた癌の悪性度の診断が、遺伝子産物の定量化という数値で表すことができる。つまり、病理診断医のトレーニングなしに悪性度を判定することができる。
病理学的検査は、癌の検査に留まらず、自己免疫疾患等、現在でも多くの難病の診断に欠かせない技術である。しかしながら、病理医の数は少なく、病理診断に多くの時間と労力を要している。本発明の方法の普及により、病理医の組織診断に加えて、「数値」として、病態に関わる遺伝子の発現状況が細胞レベルで表せれば、社会的にも大変意義深いと考えられる。
また、農林水産物の品質検定において、養殖魚、家畜は、同じ種であっても、月週齢の差や、与えられた餌の違いにより、個体や臓器の大きさが異なるために、従来の方法で遺伝子産物の定量化により品質検定を行うことが難しかった。しかし、本発明においては、個体や組織の大きさが異なっても、同じ種であれば、細胞一個一個の大きさは同じであるので、組織切片を作成し、細胞一個一個のレベルで任意の遺伝子産物の絶対量の差を定量化できるので、極めて有利である。

Claims (15)

  1. プローブと結合性を有し、かつ複数の濃度勾配を有する断片を含む濃度勾配スポット部と、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本を設置するための標本設置部とを有する基板。
  2. 前記プローブが、核酸、タンパク質、抗原、抗体、ペプチドからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の基板。
  3. 前記プローブが、核酸である請求項1又は2記載の基板。
  4. 前記濃度勾配スポット部が、複数の列で構成されている請求項1記載の基板。
  5. 前記複数の列のうち、一方がセンス鎖、他方がアンチセンス鎖で構成される請求項4記載の基板。
  6. 基板が、ガラスである請求項1〜5項のいずれか1項記載の基板。
  7. 前記標本が、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6項のいずれか1項記載の基板。
  8. 前記標的物質が、タンパク質、抗原、抗体、核酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7項のいずれか1項記載の基板。
  9. 前記標的物質が、MMP、P53、カドヘリン、β−カテニン、ras、VEGF、NFκBからなる群から選択される少なくとも1種由来の分子である請求項8記載の基板。
  10. プローブと結合性を有し、かつ複数の濃度勾配を有する断片を含む濃度勾配スポット部と、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本とを設置した基板を用い、前記断片とプローブとをアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度の検量線に基づき、前記標本中に存在する前記標的物質を定量することを特徴とする標的物質の定量方法。
  11. 前記標的物質の定量を、レーザー顕微鏡、蛍光顕微鏡、又は蛍光検出器により行う請求項10記載の方法。
  12. 標本が、調査したい臓器、組織、器官、細胞、器官系、細胞群からなる群から選択される少なくとも1種である請求項10又は11記載の方法。
  13. 前記標的物質が、タンパク質、抗原、抗体、核酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7項のいずれか1項に記載の基板を用いる請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
  14. 請求項1〜9項のいずれか1項に記載の基板を用いて、プローブを、前記複数の濃度勾配を有する断片とアフィニティー相互作用させることにより得られた濃度と強度との検量線を作成し、当該検量線に基づき、前記プローブと結合性を有する標的物質を含有する標本中に存在する前記標的物質を定量することを特徴とする標的物質の定量方法。
  15. 前記プローブと、前記複数の濃度勾配を有する断片及び前記標的物質と、のアフィニティー相互作用を、一体として行う請求項14記載の方法。
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