JP5726618B2 - 錫含有銅の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、錫含有銅の処理方法に関する。
特許文献1では、「廃棄物の処理によって得られた銅を主体とする溶融体から不純物金属を分離除去して高純度の銅メタルを回収する方法であって、
(イ)上記溶融体に「鉄源」とカルシウム源を添加して溶融体中の酸素濃度を0.6から1.0mass%にした酸化熔錬を行うことによって、亜酸化銅−酸化鉄を主体とする酸化カルシウム含有スラグ(亜酸化銅−酸化鉄系スラグと云う)を形成して上記溶融体に含まれる不純物金属をスラグ化し、当該スラグを分離する第一工程と、
(ロ)第一工程でスラグ化した不純物金属を除去した溶融体にカルシウム源を添加して溶融体中の酸素濃度を0.8mass%から1.1mass%にした酸化熔錬を行うことによって、亜酸化銅−酸化カルシウムを主体とするスラグ(亜酸化銅−酸化カルシウム系スラグと云う)を形成して上記溶融体に残留する不純物金属をスラグ化し、該スラグを分離する第二工程とを有することを特徴とする高純度銅の回収方法である。」旨の記載がある。
特開2003−193147号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、錫含有銅から錫を効率よく除去することができない。
本発明は上記の課題に鑑み、錫含有銅から錫を効率よく除去することができる錫含有銅の処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る錫含有銅の処理方法は、錫を含有する銅メタルを炭酸ソーダおよび溶剤と共に、酸化炉に投入し、酸素含有ガスを投入しつつ、溶解し、錫を選択的にスラグとして、浮上させ、該スラグを除去し、96mass%以上の高純度な銅を得る錫含有銅の処理方法である。本発明に係る錫含有銅の処理方法によれば、錫含有銅から錫を効率よく除去することができる。
前記鋳造工程前の錫含有銅は、錫を2mass%〜4mass%含んでいてもよい。溶剤は、珪砂および石灰石としてもよい。溶湯温度は、1200℃〜1270℃としてもよい。溶湯に冷材を投入することによって前記溶湯温度を調整してもよい。前記冷材は、錫含有銅としてもよい。
本発明によれば、錫含有銅から錫を効率よく除去することができる錫含有銅の処理方法を提供することができる。
実施形態に係る錫含有銅の処理方法を示すフロー図である。 脱鉄工程における経過時間と各成分の濃度変化を表す図である。 脱鉄工程における経過時間と各成分の濃度変化を表す図である。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
(実施形態)
以下に、実施形態に係る錫含有銅の処理方法の内容を説明する。本処理方法は、錫含有銅から錫を効率よく除去することを目的としている。本実施形態において対象とする錫含有銅は、一例として、鉄を5mass%から25mass%、錫を1mass%から8mass%、銅を50mass%から80mass%含有する。図1に示す処理フローに沿って、本実施形態に係る錫含有銅の処理方法について説明する。
(脱鉄工程(鉄酸化工程))
まず、第一工程として、鉄を酸化除去する脱鉄工程を実施する。脱鉄工程では、上記の錫含有銅を炉内に投入し、溶剤を投入する。溶剤として、例えば、珪砂(SiO)および石灰石(CaCO)を投入する。例えば、25トンから30トンの錫含有銅に対して、硅砂を2.5トンから3トン、石灰石を3.5トンから4.5トン投入する。
錫含有銅が投入される炉は、特に限定されるものではない。一例として、転炉、上吹き炉などを用いることができる。錫含有銅および溶剤を投入した後、プロパンガス、重油等の燃焼熱を用いて炉を加熱することによって、錫含有銅を溶融させ、溶融メタルとする。プロパンガスは硫黄分が低いので、排気ガスの処理軽減の観点からは、プロパンガスを用いることが好ましい。炉内の溶湯の温度は、1300℃〜1400℃に維持することが好ましい。銅の酸化を抑制しつつ効率よく鉄を酸化除去することができるからである。銅の酸化をより抑制するためには、炉内の溶湯の温度は、1300℃〜1350℃に維持することが好ましい。
次に、溶融メタル中に酸素含有ガス(例えば空気)を吹き込む。一例として、羽口から空気を300Nm/h〜400Nm/hの流量で4時間〜5時間程度吹き込む。羽口は、例えば、炉の側壁に、2箇所〜6箇所程度設けられていることが好ましい。空気の吹き込み量は、例えば、5000Nm/バッチ〜7000Nm/バッチとする。酸素含有ガスの吹き込みによって溶融メタル中の鉄が酸化し、スラグに移動する。それにより、溶融メタルから鉄が除去される。
なお、鉄の酸化の際に酸化熱が発生する。そこで、溶湯の温度が過度に上昇することを抑制する目的で、溶湯に冷材を投入する。ただし、冷材を投入した際に、溶融メタル中の酸素濃度が2mass%以下となるように調整することが好ましい。銅ロスを抑制するためである。より銅ロスを抑制するためには、溶融メタル中の酸素濃度が1mass%以下となるように調整することが好ましい。
冷材は、特に限定されるものではない。一例として、故銅を冷材として用いることが好ましい。故銅中の不純物も除去可能となるからである。例えば、鉄および錫の少なくともいずれか一方を含む故銅を冷材として用いることが好ましい。または、故銅として、めっき屑などの低品位のリサイクル品を用いてもよい。高品位の故銅を用いてもよいが、低品位の故銅を用いた方が経済的である。
冷材として故銅を用いる場合、出発原料の錫含有銅に対して冷材の投入量は、やや少ない量であることが好ましい。例えば、錫含有銅25トンから30トンに対して冷材の投入量を20トン〜30トンとすることが好ましい。一例として、故銅として、鉄を5mass%から10mass%、錫を1mass%から10mass%、銅を70mass%から90mass%含むものを用いる。
表1、表2、図2および図3は、脱鉄工程における経過時間と各成分の濃度変化を表す図である。図2および図3において、横軸は経過時間を表す。図2の縦軸は、脱鉄工程におけるメタル中の鉄濃度、スラグ中の錫濃度、およびスラグ中の銅濃度を示す。図3の縦軸は、メタル中の錫濃度、メタル中の酸素濃度、およびメタル中の鉄濃度を示す。
Figure 0005726618
Figure 0005726618
表1、表2、図2および図3に示すように、時間の経過とともに、錫含有銅中の鉄濃度が低下する。したがって、酸素含有ガスの吹き込みによって鉄が酸化除去されていることがわかる。鉄の酸化除去がある程度進行した後、錫が酸化除去される。しかしながら、この場合、錫の酸化とともに銅も酸化するため、銅ロスが大きくなってしまう。したがって、脱鉄工程において、銅のロスを抑制することが好ましい。
例えば、銅ロスが10mass%以下に保たれるように、脱鉄工程を実施することが好ましい。なお、この場合の銅ロスとは、スラグ中の銅品位(mass%)である。
(スラグ排出・鋳造工程)
脱鉄工程後、炉からスラグを排出する。また、溶融メタルを鋳型に流し込んで冷却することによって鋳造する。この場合、鉄除去用スラグが除去された後に後述の錫除去用スラグが生成されることから、鉄除去用スラグと錫除去用スラグとが混合することが抑制される。それにより、後述の脱錫工程における錫除去効率低下を抑制することができる。
脱鉄工程後に排出されるスラグ成分は、例えば、鉄が25mass%から45mass%、錫が0.5mass%から2mass%、銅が5mass%以下(例えば、1mass%から5mass%)である。また、鋳造によって得られる銅メタル(銅地金)は、例えば、鉄が0.2mass%から2mass%、錫が2mass%から4mass%、銅が90mass%から95mass%である。このように、脱鉄工程を経ることによって、錫含有銅中の鉄濃度を大幅に低下させることができる。また、スラグ排出工程および鋳造工程を経ることによって、高濃度の鉄を含むスラグを排出することができる。
(脱錫工程(錫酸化工程))
次に、脱錫工程を実施する。まず、上記銅メタルおよび溶剤を再び炉に投入する。脱錫工程における溶剤として、例えば、珪砂および石灰石を投入する。例えば、錫含有銅25トンから27トンに対して、硅砂を0.8トンから1.5トン、石灰石を1トンから2トン投入する。さらに、錫を効率よく除去するための脱錫剤を投入する。脱錫剤として、例えば、炭酸ソーダ(NaCO)を用いることができる。例えば、錫含有銅25トンから27トンに対して、炭酸ソーダを2トンから3トン投入する。
錫含有銅が投入される炉は、特に限定されるものではない。一例として、転炉、上吹き炉などを用いることができる。銅地金、溶剤、および脱錫剤を投入した後、重油、プロパンガス等の燃焼熱を用いて炉を加熱することによって、銅メタルを溶融させ、溶融メタルとする。炉内の溶湯の温度は、1200℃〜1270℃に維持することが好ましい。銅の酸化を抑制しつつ効率よく錫を酸化除去することができるからである。
次に、溶融メタル中に酸素含有ガス(例えば空気)を吹き込む。一例として、羽口から空気を300Nm/h〜400Nm/hの流量で1.5時間〜2.5時間程度吹き込む。羽口は、例えば、炉の側壁に、2箇所〜6箇所程度設けられていることが好ましい。銅の酸化を抑制するために、脱鉄工程の際に用いた羽口数よりも脱錫工程の際に用いる羽口数を減らしてもよい。空気の吹き込み量は、例えば、5000Nm/バッチ〜7000Nm/バッチとする。酸素含有ガスおよび脱錫剤によって溶湯中の錫が酸化し、スラグに移動する。それにより、錫が除去される。
なお、脱錫工程においても溶湯温度調整のために冷材を炉内に投入することが好ましい。例えば、鋳造工程で得られた銅メタルと鉄・錫が同程度の品位の故銅を冷材として用いてもよい。また、銅地金よりも高品位の故銅(鉄が0.2mass%から2mass%、錫が0mass%から4mass%、銅が90mass%から98mass%)を冷材として用いてもよい。高品位の故銅として、アノードの未電解部分(鋳返しアノード)等を用いてもよい。高品位の故銅を投入することによって、溶融メタルの汚染を抑制することができるからである。また、同時に鋳返しアノードの溶解に使用できることになるからである。
脱錫工程を経て得られた精製銅の各成分は、例えば、鉄が0.05mass%から0.25mass%、錫が0.2mass%から1.0mass%、銅が96mass%から99mass%である。また、脱錫工程で得られたスラグの各成分は、例えば、鉄が10mass%から25mass%、錫が3mass%から15mass%、銅が8mass%から15mass%である。このように、脱鉄工程、スラグ排出工程、鋳造工程、および脱錫工程を実施することによって、効率よく鉄および錫を除去することができる。
なお、上記実施形態では脱鉄工程を経ているが、それに限られない。何らかの工程を経て錫を含有する溶融銅とスラグとが得られた後にスラグを分離し、鋳造工程および脱錫工程を実施することによって、効率よく錫を除去することができる。例えば、鉄以外の不純物の酸化除去工程を経た後に鋳造工程および脱錫工程を実施してもよい。または、鋳造工程を経なくてもよい。例えば、錫を含有する銅メタルを錫除去剤および溶剤と共に酸化炉に投入し、酸素含有ガスを投入しつつ溶解し、錫を選択的にスラグとして浮上させ、該スラグを除去することによって、96mass%以上の高純度な精製銅を得てもよい。
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例は例示目的であって発明が限定されることを意図しない。
出発原料として、鉄15mass%、錫5mass%、銅75mass%の錫含有銅を用いた。このような錫含有銅は、ブラック銅と称されることもある。図1に示す処理フローに沿って、各工程を実施した。
(脱鉄工程)
まず、第一工程として、鉄を除去する処理を行った。脱鉄工程では、上記錫含有銅を転炉に投入し、溶剤である硅砂および石灰石を投入した。錫含有銅27トンに対して、硅砂を2.7トン、石灰石を4.0トン投入した。錫含有銅の投入後、重油の燃焼熱により炉内の温度を上昇させ、空気を吹き込んだ。不純物である鉄の酸化熱により、炉内の温度がさらに上昇した。
空気は、350Nm/hの流量で4時間、羽口から供給した。羽口は、炉の側壁に、4箇所配置した。空気は、6000Nm/バッチ吹き込んだ。空気を吹き込み続けると溶湯温度が1350℃以上となるため、冷材として故銅を投入した。なお、溶融メタル中の酸素濃度が、1mass%以下となるようにした。
25トンの故銅を、昇温状況を把握しながら断続的に投入した。故銅として、鉄を5mass%から10mass%、錫を2mass%から4mass%、銅を70mass%から90mass%含むものを用いた。脱鉄工程を経て得られた脱鉄銅の各成分は、鉄が0.2mass%から2mass%、錫が2mass%から4mass%、銅が90mass%から95mass%であった。
(スラグ排出・鋳造工程)
次に、炉内のスラグを排出し、溶融メタルを鋳型で鋳造した。排出したスラグの各成分は、鉄が25mass%から45mass%、錫が0.2mass%から2mass%、銅が1amss%から5mass%であった。また、鋳造で得られた銅地金の各成分は、鉄が0.2mass%から2mass%、錫が2mass%から4mass%、銅が90mass%から95mass%であった。
(脱錫工程)
次に、鋳造で得られた銅地金を炉に再び投入し、溶剤である硅砂および石灰石を投入し、脱錫剤である炭酸ソーダを投入した。この際、銅地金26トンに対して、硅砂を1.2トン、石灰石を1.5トン、炭酸ソーダを2.5トン投入した。銅地金、溶剤および脱錫剤の投入後、重油の燃焼熱により炉内の温度を上昇させ、空気を吹き込んだ。
空気は、350Nm/hの流量で2時間、羽口から供給した。羽口は、炉の側壁に、2箇所配置した。空気は、6000Nm/バッチ吹き込んだ。空気を吹き込み続けると溶湯温度が1350℃以上となるため、冷材として故銅を投入した。故銅として、鉄を0.2mass%から2mass%、錫を0mass%から4mass%、銅を90mass%から98mass%含むものを用いた。
脱錫工程後に得られた精製銅の各成分は、鉄が0.05mass%から0.25mass%、錫が0.2mass%から1.0mass%、銅が96mass%から99mass%であった。脱錫工程で得られたスラグの各成分は、鉄が10mass%から25mass%、錫が3mass%から15mass%、銅が8mass%から15mass%であった。
実施例の結果によれば、脱鉄工程、スラグ排出工程、鋳造工程、および脱錫工程を実施することによって、錫含有銅中の鉄および錫を効率よく除去することができた。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。

Claims (7)

  1. 錫を含有する銅メタルを炭酸ソーダおよび溶剤と共に酸化炉に投入し、酸素含有ガスを投入しつつ溶解し、錫を選択的にスラグとして浮上させ、該スラグを除去し、96mass%以上の高純度な銅を得ることを特徴とする錫含有銅の処理方法。
  2. 前記銅メタルは、錫を2mass%〜4mass%含むことを特徴とする請求項1記載の錫含有銅の処理方法。
  3. 前記銅メタルは、錫を含有する溶融銅をスラグから分離して鋳造することによって得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の錫含有銅の処理方法。
  4. 前記溶剤は、珪砂および石灰石であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の錫含有銅の処理方法。
  5. 溶湯温度は、1200℃〜1270℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の錫含有銅の処理方法。
  6. 溶湯に冷材を投入することによって前記溶湯温度を調整することを特徴とする請求項5記載の錫含有銅の処理方法。
  7. 前記冷材は、錫含有銅であることを特徴とする請求項6記載の錫含有銅の処理方法。
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