JP5724441B2 - 光学特性評価方法及び光学素子の検査方法 - Google Patents
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平板型光学素子の例としては偏光子があるが、かかる偏光子は、例えばプロジェクターでは、偏光ビームスプリッタや検光子としての利用のほか、偏光再利用のための反射型偏光子としても利用される(非特許文献1)。
さらに、平板型の偏光子の一例として、非特許文献2に示すような、平行な導電ワイヤアレイよりなるワイヤグリッド型の偏光子がある。
平行な導電ワイヤアレイによる無線波の偏光形成や、電磁スペクトルの赤外偏光子などは古くから知られてきたが、前述の微細加工技術の進展により、グリッドの間隔を100nm以下にすることも可能となり、実際に金属ナノ構造からなるワイヤグリッド偏光子を用いたプロジェクターなども開発されている(特許文献1、非特許文献3)。
また、図8は、従来用いられるワイヤグリッド偏光子の構成及びその光学特性の評価方法を説明する図である。
図7、図8に示すように、ワイヤグリッド偏光子に、実際にスポット光を当てることで、光の透過率、消光率など光学特性を検出して評価する。
ここでは、透過率の定義としては、[(試料有りでの光強度)−(ダーク光強度)]/[(試料無しでの光強度)−(ダーク光強度)]とする。
また、消光比(コントラスト)の定義としては、(TM波の透過率)/(TE波の透過率)とする。
ワイヤグリッドに入射する電磁波における、偏光面がワイヤー51に対して平行な偏波(TE波:Transverse Electric Wave、光の場合はS偏光)は反射され、ワイヤーに対して偏光面が垂直な偏波(TM波:Transverse Magnetic Wave、光の場合はP偏光)が透過されることで、無偏光光(ランダム偏光光)からTM偏光のみを取り出す偏光フィルター(偏光子)として機能する。
ただし、ワイヤグリッドが偏光フィルタとして機能するためには、金属細線の間隔または周期が、電磁波(光)の波長よりも小さいことが条件となる。
なお、図7に示す式において、Tpは上記TE波の透過率、Tvは上記TM波の透過率であり、各金属細線51(円筒状完全導体、半径a、格子定数d)からの散乱波(波長λ)を加えることで求められた強度透過率である。
図7に示すように、ワイヤグリッド素子における測定スポット光の照射側面(入射面)とは本体側の面(出射面)への透過TM波の透過率が1となる(TM波が全て透過・出射される)ことが理想的であり、逆に、スポット光の照射側で反射するTE波の透過率が0である(TE波が全て反射する、すなわち、TE波が出射されない)ことが理想的である。
特に近年では、図8(a)に示すような一方向のみのラインパターン(縦方向ワイヤグリッド60)だけではなく、図8(b)に示すような、直交する二方向のラインパターン領域(縦方向ワイヤグリッド60及び、横方向ワイヤグリッド61)が同一面内にて混在する偏光フィルタによって、互いに直交する直線偏光に分離して用いる技術が、高画質(高解像度)が必要なカメラやプロジェクターの分野にて求められてきている。
具体的には、図8(a)に示す場合は、パターン領域(縦方向ワイヤグリッド60)は測定スポット62より充分大きく(ワイヤグリッド60>測定スポット62)、透過率などの光学特性の測定が可能であるが、図8(b)の場合では、測定スポット62が通常数mmはあるのに対し、区切られた各パターン領域(縦方向ワイヤグリッド60、横方向ワイヤグリッド61)は幅数μm(集光しても数十μm程度)と、これよりも遙かに小さいため(測定スポット62>ワイヤグリッド60、61)、測定スポット62の出射面側から出射する光には、各偏光成分が混在し、各パターン領域の特性を直接導くことはほぼ不可能である。
ワイヤグリッド領域を広くしたモニタパターンを近傍に設けたとしても、モニタパターンの幅と、領域分割箇所の縦横ラインのパターン幅が異なることが多く、モニタパターンと混在パターン(図8(b))にて特性が一致しないため、やはり正確な特性の評価は出来ず、領域分割パターンを非破壊にて直接評価する必要がある。
そこで、本発明は、図7中に示した通常の一方光パターンのワイヤグリッド素子等の偏光子の透過率を算出する数式を、二方向パターンにも適用することで、微小領域ごとに偏光特性が異なるパターンに対しても、各々の領域における偏光特性を分離して評価し、従来技術では取得できなかった光学特性を把握し、評価することが可能な光学特性の評価方法を提供することを目的とする。すなわち、測定対象のTE透過率やTM透過率、縦方向と横方向の光学特性の違いを判断できるようにすることを目的としている。
また、ワイヤグリッド偏光子自体の構成は、従来と同様であるので、図8(b)も本願適用可能な偏光子として参照するものとする。
上記に説明したように、本来、ワイヤーの方向(透過軸の方向)が同一面内に混在している場合には測定不能であるワイヤグリッド偏光子の光学特性であるが、ワイヤーの方向がランダムではなく、直交する2方向である場合には、測定方法を工夫することにより光学特性を測定することが出来る。
本発明では、直交するxy2方向のワイヤグリッドをもつ素子(x方向(横方向)ワイヤグリッド61領域とy方向(縦方向)ワイヤグリッド60領域)の光学特性を、以下に説明する2つの方法により透過率を把握することにより評価する。
なお、以下に説明するワイヤグリッド偏光子の光学特性の測定は、下記図1、図2に示す、スポット光を出射する光源1、光源1からから出射された無偏光光を直線偏光に変換する偏光子(1/2位相差板)20、試料としてのワイヤグリッド素子10を設置する不図示の試料ステージ、直交するワイヤグリッド領域で透過されて偏光子10から出射された光の特定成分を透過させる他の偏光子である検光子30、検光子30からの出射光の強度を検出する検出器(ディテクター)2、出射光の電場ベクトルから透過率等の光学特性を計算する信号処理部3を備えたシステムを用いる。
まず、第1の方法について説明する。
方法(1):検光子30をx軸(縦方向ワイヤグリッド60の方向)で固定(x成分:x軸から透過するTM波を透過)し、偏光子20を光源からの出射光の光軸1aを中心に回転させる(φdeg)。
方法(1)の場合、2次元パターン(縦方向ワイヤグリッド60、横方向ワイヤグリッド61)の片側成分のTE波の透過率とTM波の透過率の平均透過率を取得可能である。これは、ワイヤグリッド偏光子30から出射される透過TM波には、ワイヤグリッド60及びワイヤグリッド61で透過した、互いに偏波面が直交するTM波が混在しているが、検光子30をx軸で固定している(実際は、光学軸がx軸に対する角度が45°)ので、縦方向ワイヤグリッド60から透過したTM波のみが通過するからである。
なお、強度は、透過TM波>>透過TE波のため、おおよそのTM成分がわかる。
なお、透過率の算出は、検出器2に接続されたPC(Personal Computer)などの信号処理装置(信号処理手段)で行うものとする。
ここで、x方向ワイヤグリッド領域61と、y方向ワイヤグリッド領域60の透過係数は均一と仮定した。
検光子30を透過して検出器2に入光した光の電場ベクトルは次式(1)で与えられる。
…式(1)
したがって、検光子30を透過した光の電場ベクトルは次式(2)で与えられる。ただし、x方向ワイヤグリッド領域と、y方向ワイヤグリッド領域を透過した光の干渉項は無視した。
…式(2)
上式より、t2 TM+t2 TE〜t2 TM(tTM>>tTE)とすれば、cos成分の振幅の大きさ(もしくは振動中心)がワイヤグリッド偏光子20の透過側成分の透過率(t2 TM)に一致する。
方法(2):検光子30をx軸y軸に対して45°で固定(45°成分透過(実際は、光学軸のx軸に対する角度が90°となる))し、偏光子20を、光軸1aを中心に回転させる(φdeg)
方法(2)の場合、直流成分と振動成分が得られ、それぞれの大きさからTE波とTM波の透過率、すなわち透過率と消光比が算出可能である。
検光子30を透過した光の電場ベクトルは次式(3)で与えられる。
…式(3)
検光子30を透過した光の電場ベクトルは次式(4)で与えられる。ただし、x方向ワイヤグリッド領域61と、y方向ワイヤグリッド領域62を透過した光の干渉項は無視した。
…式(4)
上式(3)、(4)より、偏光子角度に対する振動成分と直流成分を抽出すれば、tTM、tTEの連立方程式から各成分が算出できる。連立方程式の解を用いて透過率および消光比を導出すると、以下のように求められる。
さらに、検光子30の角度を90°(実際は、光学軸のx軸に対する角度が135°)に固定して、同様に偏光子20を回転させて透過率を測定する。
つまり、直交する二方向のワイヤグリッドであっても、検光子30の角度を特定の角度(0°、45°、90°)とし、偏光子20を回転させて透過率を測定することにより、TM透過率、TE透過率、おおよその消光比などの値を得られる。
なお、以下の説明では、上記のxy座標軸において、縦方向(y軸)を0°とした場合について説明する。
図3は、検光子30の角度を0°(縦方向)とし、偏光子20の角度を変化させた場合の透過率の変化を示すグラフ図である。
図3は、検光子30の角度が0°(縦方向ワイヤグリッド60から透過した偏光のみ透過)であるため、偏光子20の角度も0°の場合には、縦方向の偏光は透過する。
したがって、検光子30、偏光子20の角度がともに0°の場合の透過率は、測定試料10の中で縦方向のワイヤグリッド領域60の透過機能(特性)を示していると言える。
図4は、検光子30の角度が90°(横方向ワイヤグリッド61から透過した偏光のみ透過)であるため、偏光子20の角度も90°の場合には、横方向の偏光は透過する。したがって、検光子30、偏光子20がともに90°の場合の透過率は、測定試料10の中で横方向のワイヤグリッドの透過機能(特性)を示していると言える。
図5は、検光子30の角度が45°の場合の、透過率の偏光子角度依存性であるため、図2について先に示した計算により、試料としてのワイヤグリッド素子10全体のTM透過率、TE透過率を計算することができる。
このように、検光子45°の測定値のみからでもワイヤグリッド素子10全体のTM透過率、TE透過率を算出することが可能である。
測定結果に近似式をもとめ、その値から換算すると、TM透過率は83%、TE透過率は2.5%と求まった。
この値は、試料全体にて縦方向と横方向の透過率が一致するという仮定により求められているが、さらに厳密な計算により、縦方向のみ、横方向のみのTM透過率、TE透過率を求めることも可能である。
したがって、測定手順としては、まず、検光子角度を0°として、偏光子を回転させて透過率を測定し、その後、45°、90°にて同じ測定を行う。
透過率測定装置に、透過率の値を計算処理する機構を組み合わせることで、即座に試料の光学特性を把握できる。
ここで、検光子30の角度を0°、45°、90°として透過率を取得する手順はどの角度からでも良い。
また、実施例では波長550nmの値を取り出したが、ハロゲン光源を用いた場合には、これらの特性の波長依存性を求めることができる。
また、直交する二方向(縦方向と横方向)の光学特性の違いを判断でき、最終的に作製される素子の検査を行うことができ、光学素子としての性能を判別できるという効果を奏する。
測定の注意事項としては、図8(b)のように光源からのレーザ光がワイヤグリッドの2方向の領域(x方向ワイヤグリッド領域と、y方向ワイヤグリッド領域)をほぼ同面積(同割合)で照射している必要がある。したがって、測定スポットの中に、2方向の領域が同割合で存在している必要がある。
レーザ光を用いた場合には、ホモナイザーなどを用いて、ビームを均質強度となるように広げる必要がある。
図6(a)では、縦横方向のワイヤグリッド11、12が、同面積にて交互に存在している。
また、図6(b)は二方向(縦横方向)ワイヤグリッド11、12が同面積にて、平行四辺形にて交互に連続する場合である。
いずれも、パターン領域の一辺に対して測定スポット13の径が十分大きい場合には、スポット径内に縦と横のワイヤグリッド素子が同じ領域で入る。
レーザなど指向性の強い光を集光して、測定するという方法についても補足しておく。
各領域(x方向(横方向)ワイヤグリッド領域11、y方向(縦方向)ワイヤグリッド領域12)の幅が数マイクロメーターのような場合には、レーザ光では測定できない。
逆に10μm以上の大きさを持つ場合には、レーザ光を対物レンズなどで集光することにより各領域ごとの透過率を求めることも可能となり、本内容のような測定手法は必要とならない。
したがって、レーザを集光しても測定が困難な領域のサイズをもつもの、具体的には数μm以下の領域が交互に存在するような測定試料に対して本手法が効果をなす。
実施例1と同様のワイヤグリッド素子に対し、検光子30を45°とした場合の透過率に加え、0°、90°とした場合の透過率を測定し、その値から、TM透過率、TE透過率を算出した。
例えば、ある試料を取り上げた場合には、縦方向のワイヤグリッドラインに対して、TM透過率85.0%、TE透過率0.4%であり、横方向のワイヤグリッドラインに対して、TM透過率86.5%、TE透過率が0.5%であった。
検光子が0°、90°の場合の測定値も測定済みの場合には、より多くの計算値を用いることになるため、TM透過率、TE透過率の算出の精度を向上させることができる。
本実施例では、ウェハ面内光学測定を行った。実施例1と同様の素子が4インチウェハ内に8×8個、一定間隔に配置されたウェハを用意した。
試料ステージに、ウェハを自動で送れる機構を付加し、ウェハを光学特性測定位置に搬送した。
偏光子の方向をカメラ画像で把握し、方向をアライメントした。その後、各素子に対して、TM透過率、TE透過率を測定した。測定結果に対し、仕様として設定した値(例えば、縦横各方向に対して、TM透過率85.0%以上、TE透過率0.8%以下)を良・不良の境界とすることにより、良品と不良品の区別が可能であることを確かめた。各素子のデータをコンピュータで処理し、その結果、8×8個の素子をもつウェハ面が、どのような光学特性分布をしているかを確認できた。
ウェハ内での測定位置の自動移動機構と、測定値の判別機構を設けることにより、検査装置としての利用も可能であることを確かめた。
2次元パターンをもつ偏光子が多数配列したウェハにおいてもその偏光透過率をはじめとする光学特性を取得し、光学特性が所定の値かどうかの検査工程として利用できる。
Claims (3)
- 第1の透過軸を所定方向に配置した第1のパターン領域及び前記第1の透過軸と直交する方向に第2の透過軸を配置した第2のパターン領域を有するワイヤーグリッド型の偏光素子における光の透過率を測定する光学特性評価方法であって、
前記偏光素子は、前記第1のパターン領域及び前記第2のパターン領域が光源から出射される光のスポットよりも小さいことにより前記スポット内に分布する前記各透過軸と直交する偏光成分又は平行な偏光成分を透過させ、
無偏光光を直線偏光に変換する偏光子と、前記偏光素子と、前記偏光素子から出射される光の特定成分を透過させる検光子と、該検光子から出射された光の強度を検出する検出器と、を光路上に配置し、
前記検光子の角度を前記各透過軸に対して45°に固定して、前記偏光子を回転させつつ前記光源から光を出射して前記検出器により前記検光子から出射される光の強度を検出し、
前記検出器に接続された信号処理手段により、前記検光子から出射される光の強度に基づいて前記偏光素子における光の透過率を算出することを特徴とする光学特性評価方法。 - 第1の透過軸を所定方向に配置した第1のパターン領域及び前記第1の透過軸と直交する方向に第2の透過軸を配置した第2のパターン領域を有するワイヤーグリッド型の偏光素子における光の透過率を測定する光学特性評価方法であって、
前記偏光素子は、前記第1のパターン領域及び前記第2のパターン領域が光源から出射される光のスポットよりも小さいことにより前記スポット内に分布する前記各透過軸と直交する偏光成分又は平行な偏光成分を透過させ、
無偏光光を直線偏光に変換する偏光子と、前記偏光素子と、前記偏光素子から出射される光の特定成分を透過させる検光子と、該検光子から出射された光の強度を検出する検出器と、を光路上に配置し、
前記検光子の角度を前記第1の透過軸の方向と同一に固定して、前記偏光子を回転させつつ前記光源から光を出射して前記検出器により前記検光子から出射される、前記第1の透過軸から透過した光の強度を検出し、
信号処理手段により、当該強度に基づいて前記第1の透過軸における光の透過率を算出し、
前記検光子の角度を前記第2の透過軸の方向と同一に固定して、前記偏光子を回転させつつ前記光源から光を出射して前記検出器により前記検光子から出射される、前記第2の透過軸から透過した光の強度を検出し、
信号処理手段により、当該強度に基づいて第2の透過軸における光の透過率を算出することを特徴とする光学特性評価方法。 - 請求項1又は2に記載の光学特性評価方法により求められた光学特性から、前記偏光素子の面内における光学特性のばらつきを検出する光学素子の検査方法。
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