JP5723845B2 - トラスツズマブによる治療の候補患者を確認するための診断方法 - Google Patents

トラスツズマブによる治療の候補患者を確認するための診断方法 Download PDF

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Description

乳癌は、生涯において女性人口の約10%が罹患すると推定されているように、先進工業国における最も一般的な女性の悪性腫瘍である。早期診断および治療の改善によって、それの死亡率は発生率と並行して上昇しているわけではないが、それでもやはり中年女性における主たる死因の一つである。
乳癌についての一次治療は手術であり、それは単独で行われるか、全身補助療法(ホルモン療法または細胞傷害薬療法)および/または術後放射線治療と組み合わせて行われる。ほとんどの患者がこれらの治療によって治癒するが、局所領域治療後には疾患がないように見えるリンパ節転移陰性疾患女性の約25〜30%およびリンパ節転移陽性女性の少なくとも50〜60%で再発があり、転移疾患に対する治療が必要である。従って、転移乳癌は、腫瘍学における重大かつ増大する問題となっている。
手術可能な乳癌女性の約30〜40%が最終的に遠隔転移を発症する。転移乳癌は一般的に、癌細胞中のトポイソメラーゼII(TOP2A)酵素の阻害を介して作用するドキソルビシンおよびエピルビシンなどのアントラサイクリン類で治療される。TOP2A阻害薬による化学療法に対する好ましい応答は、化学療法後生存率を向上させ、生活の質に対する良好な効果がある。
トポイソメラーゼII阻害薬に対する患者の応答は非常に多様である。さらに、明らかな転移疾患がある乳癌患者のうちで完全な臨床的寛解があるのは5〜10%のみである。そのような症例の30〜50%で、応答は部分的であり、応答期間は代表的には6〜24ヶ月の範囲である。残りの患者では、客観的な応答が全く検出されないか、治療を継続しても疾患が進行する。
米国特許出願公開第2003/0134279号明細書
HER−2受容体タンパク質(ERBB2)の過剰発現が、かなり以前から、より侵襲性の高い乳癌に関連付けられており、主としてERBB2またはより簡単にHER−2とも称される遺伝子HER−2/neuの増幅から生じるものである。より重要な点として、HER−2増幅は、ヒト化抗ERBB2抗体トラスツズマブ(ジェネンテックによってハーセプチン(登録商標)として市販されている)に対する腫瘍応答の確立された予測因子である。しかしながら、HER−2増幅がない乳癌がトラスツズマブに応答することは希であるが、HER−2増幅がある腫瘍の20〜40%が良好に応答する。さらに、トラスツズマブには心臓毒性の副作用があり、高価である。従って、トラスツズマブ治療をより良好に奏功させることができるそれらの腫瘍を識別する方法が必要とされている。そのような方法により、トラスツズマブ療法が有効である可能性が比較的高い患者に、医師がそのような療法をより良好に適合させることができるようになり、それによってトラスツズマブが有効ではないと考えられる患者へのトラスツズマブ療法の処方が回避され、さらには付随する患者の罹病およびそれを行うコストが回避される。
TOP2A阻害薬による効果的な治療の候補者を、HER−2/neuおよびTOP2Aのコピー数を検出することで識別できることが提案されている(イソラ(Isola)らによるUS2003/0134279A1)。HER−2/neuとTOP2Aの両方の増幅を示す患者は、TOP2A阻害薬治療の良好な候補者であると言われる。
本発明は、トラスツズマブおよびトラスツズマブと同様に機能する他の医薬による効果的な治療に感受性である癌患者を識別する方法を提供する。トラスツズマブは部分的に、HER−2受容体タンパク質のシグナル能力を阻害することで機能するものと考えられている。従って本発明は、HER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害する医薬による良好な治療に対する癌患者の感受性を確認する方法を提供する。本発明は、HER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害するか、他の形でトラスツズマブと同様に機能する医薬による治療が奏功する可能性がある癌患者を、ある種の染色体異常を用いて選択的に識別することが可能であるという発見に基づいたものである。本発明は、核酸プローブを細胞試料にハイブリダイズさせ、特定の遺伝領域のコピー数を定量する核酸技術の使用に基づいたものである。好ましくは、イン・サイツハイブリダイゼーション、そしてより好ましくは蛍光標識した核酸プローブを用いる蛍光イン・サイツハイブリダイゼーション(FISH)を用いる。次に、ハイブリダイゼーション結果を用いて、その患者においてHER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害する医薬での治療が奏功する可能性を確認する。好ましくは、前記細胞試料は乳房細胞試料であり、前記医薬はトラスツズマブまたはトラスツズマブと同様に機能する医薬である。
HER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害する医薬による治療の候補患者の識別方法は、a)癌を有することが疑われる患者からの細胞を含む生体試料を得る段階;b)前記試料をハイブリダイゼーション条件下にて一組の染色体プローブと接触させる段階(前記プローブは、その細胞におけるHER−2/neuならびにTOP2Aの近接遺伝子座、第1染色体(1q)の長腕および第10染色体のうちの1以上の付近のまたはそれを含む染色体領域のコピー数を検出することができる);およびc)前記候補者が治療に好適であるものと識別する段階を有し、前記識別がHER−2/neuのコピー数の増幅および1以上の他のマーカーの異常を示す段階を有する。代表的には、1qに対するプローブは、遺伝子座1q25から長腕上の約PTGS2遺伝子(1q31)まで、またはその距離内のいずれかの遺伝子座までほぼ等距離に延びている。PTGS2遺伝子に対してテロメアである一部の遺伝子が有効なマーカーであり、1q座に含まれるものと考えられている。好ましくは、前記プローブは、上記の1q領域内の1q25座、PTGS2遺伝子またはいずれか他の遺伝子座に対するものである。候補患者は、癌細胞を有することが疑われるだけで良い。候補患者は、乳癌、骨肉腫、胃癌、非小細胞肺癌、上皮性卵巣癌および他の癌など(これらに限定されるものではない)の疾患からの癌細胞を有すると診断されたことがあるものでも良い。好ましくは、候補患者は乳癌を有する。特に好ましい実施形態では、候補患者は転移乳癌細胞を有する。
ある種の実施形態において、前記表示は、HER−2/neuおよび1以上の他のマーカーのコピー数を1以上の好適な基準プローブと比較する段階を有する。例えば、第17染色体の動原体周囲プローブによって測定される第17染色体のコピー数を、Her2および/またはTOP2Aに関する基準として用いることができる。別の実施形態では、前記方法は、トラスツズマブで前記候補患者を治療する段階d)を有する。
本発明の方法は、候補患者からの細胞を含む組織試料(例:生検)を得る段階を含むことができる。1実施形態において、前記細胞は乳癌細胞であり、前記方法はさらに、前記乳癌細胞を含む組織試料をHER−2/neuおよびTOP2Aに対して特異的なプローブと接触させる段階を有する。前記プローブは、それらの試料細胞へのハイブリダイゼーションにおいて重ならないような大きさのものである。別の実施形態では、前記細胞をさらに、第1染色体(1q)の長腕中の座に対する、1q25座からほぼPTGS2遺伝子の座までほぼ等距離に延びるプローブまたは第10染色体の計数プローブと接触させる。そのようなプローブには、特定遺伝子座1q25およびPTGS2のプローブならびにおよび第10染色体の動原体周囲プローブなどがある。
本発明はさらに、癌の診断および治療で使用されるプローブのキットおよびセットを提供し、そし好ましくはHER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害する医薬による良好な治療に対する癌が疑われる患者の感受性を確認する方法を提供する。好ましくは、蛍光標識プローブは、本発明のプローブセットおよびキットで用いられ、それに含まれる。本発明のキットおよびプローブセットは、HER−2/neuならびに第1染色体(1q)および第10染色体の長腕の両方についてコピー数を検出することができるプローブを含む。1qのプローブは、1q25座からほぼPTGS2遺伝子の座までほぼ等距離で延びることができる。前記キットおよびプローブセットはさらに、1q25座およびPTGS2遺伝子を含む1q領域中の特定遺伝子座のプローブを含むことができる。前記キットおよびプローブセットは、TOP2Aのプローブを含むこともできる。前記キットおよびプローブセットは、第17染色体を数えることができるプローブなどの1以上好適な基準プローブを含むこともできる。本発明のキットは、本発明の方法を実施するための別の試薬を含むこともできる。
本発明は、Her2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害すると考えられている医薬による治療の候補患者を識別する方法、前記候補患者を識別するためのプローブセットおよびキット、ならびにそのような患者の治療を含むものである。好ましくは、前記患者は乳癌患者であり、前記医薬はトラスツズマブである。
染色体プローブ
本発明で使用されるイン・サイツハイブリダイゼーション方法に好適なプローブは、染色体計数プローブ、すなわち染色体領域、通常は反復配列領域にハイブリダイズし、染色体全体の有無を示すプローブ;および座特異的プローブ、すなわちある染色体上の特定遺伝子座にハイブリダイズし、特定遺伝子座の有無を検出するプローブという2つの広いグループに分けられる。染色体腕プローブ、すなわちある染色体領域にハイブリダイズして、特異的染色体の腕の有無を示すプローブも有用である可能性がある。本発明の方法で使用される場合、染色体プローブおよびそれらの組み合わせは、療法に対する応答に関して患者を分類する能力に関して選択する。療法に対する応答は一般に、進行性疾患(PD)、安定疾患(SD)、部分応答(PR)および完全応答(CR)に分類される。良好な応答は代表的には、PR+CR(本明細書においては、総称して客観的応答と称する)を含むものと考えられるが、特に疾患が重度のものである場合、SDを含むように拡大することもできる(本明細書においては、臨床的利益と称する)。プローブセットは、あらゆる数のプローブ、例えば2、3、4またはそれ以上のプローブを含むことができる。本発明で有用なプローブ数は、個別にそのプローブを検出する使用者の能力によってのみ限定される。
当業界で公知のように、染色体計数プローブは、動原体に近いかそれから離れて位置する反復配列にハイブリダイズすることができるか、あるいは染色体上のいずれかの位置にある固有配列にハイブリダイズすることができる。例えば、染色体計数プローブは、ある染色体の動原体に関連する反復DNAとハイブリダイズすることができる。霊長類染色体の動原体は、α−付随DNAと称される約171塩基対のモノマー反復長さからなるDNAの長い縦列反復の複合体ファミリーを含む。特異的染色体計数プローブの例には、実施例に記載の第3、第10および第17染色体の動原体周囲プローブがあるが、それらに限定されるものではない。
座特異的プローブは、染色体上の特異的な非反復にハイブリダイズする。座特異的プローブの例としては、実施例に記載の遺伝子座Her2、1q25およびTOP2Aに対するプローブなどがあるが、これらに限定されるものではない。一部の座は、遺伝子、例えば一部の形態の乳癌で変化する腫瘍遺伝子および腫瘍抑制遺伝子を含む。従って、遺伝子のエキソン、イントロンもしくは調節染色体配列などのこれら遺伝子を標的とするプローブを、本明細書に記載の識別方法で用いることができる。標的遺伝子の例としては、HER−2/neu、TOP2A、PTGS2およびAKT3などがあるが、これらに限定されるものではない。
動原体DNAおよび特異的染色体座とハイブリダイズするプローブは、アボット・モレキュラー社(Abbott Molecular Inc., Des Plaines, 111)およびモレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Inc., Eugene, Oreg.)から市販されている。あるいは、プローブは、公知の技術を用いて非市販的に作ることができる。DNAプローブの構築に用いられるDNAの入手源には、ゲノムDNA、細菌人工染色体(BAC)のようなクローニングDNA配列、宿主の正常染色体組とともにヒト染色体の一つもしくは一部を含む体細胞バイブリッド、ならびにフロー・サイトメトリーもしくは顕微解剖によって精製された染色体などがある。対象領域は、クローニングによって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介した部位特異的増幅によって単離することができる。例えば、ナスらの報告(Nath, et al., Biotechnic Histochem, 1998, 73 (1): 6-22);ホイーレスらの報告(Wheeless, et al., Cytometry, 1994, 17: 319-327);および米国特許第5491224号を参照する。合成オリゴマーDNAまたはPNAプローブも用いることができる。
本発明で用いられるプローブによって検出される染色体領域の大きさは、例えば上記のα−付随171塩基対プローブ配列から900000塩基の大きいセグメントまでで変動し得るものである。直接標識される座特異的プローブの場合、少なくとも100000塩基のプローブを用い、米国特許第5756696号(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示の未標識遮断核酸を用いて、プローブの非特異的結合を回避することが好ましい。未標識の合成オリゴマー核酸またはタンパク質核酸を遮断核酸として用いることも可能である。特定遺伝子座を標的とする場合、プローブが遺伝子の座をコードするほぼ全ゲノムを網羅することが好ましい。
染色体プローブは、染色体にハイブリダイズされた時にプローブの検出を容易にする検出部分を含むことができる。有効な検出部分には、下記のような直接および間接標識の両方がある。
染色体プローブは、検出可能な標識で直接標識することができる。検出可能な標識の例には、フルオロフォア(すなわち、光を吸収した後に蛍光を発生する有機分子)、放射性同位元素(例:32PおよびH)および発色団(例:肉眼で検出可能なマーカーを産生する酵素マーカー)などがある。フルオロフォアが好ましく、ニックトランスレーション、ランダムプライミングおよびPCR標識などの標準的な技術で標識ヌクレオチドをプローブに組み込むことによるヌクレオチドへの共有結合結合後に直接標識することができる。あるいは、プローブ内のデオキシシチジンヌクレオチドをリンカーでアミノ基転移することができる。次に、フルオロフォアを、アミノ基転移デオキシシチジンヌクレオチドに共有結合的に結合させることができる(例えば、ビットナー(Bittner)らに対する米国特許第5491224号(参照によって本明細書に組み込まれる)参照)。有用なプローブ標識技術が、文献に記載されている(Molecular Cytogenetics: Protocols and Applications, Y.-S. Fan, Ed., Chap. 2, ″Labeling Fluorescence In Situ Hybridization Probes for Genomic Targets″, L. Morrison et. al., p. 21-40, Humana Press,(著作権)2002(以下、「モリソン2002」と引用する;参照によって本明細書に組み込まれる)。
本明細書に記載の方法で用いることができるフルオロフォアの例としては、7−アミノ−4−ジメチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、テキサスレッド(商標名)(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR);5−(および−6)−カルボキシ−X−ローダミン、リサミンローダミンB、5−(および−6)−カルボキシフルオレセイン;フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC);7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、テトラジメチルローダミン−5−(および−6)−イソチオシアネート;5−(および−6)−カルボキシテトラジメチルローダミン;7−ヒドロキシクマリン−S−カルボン酸;6−[フルオレセイン5−(および−6)−カルボキサミド]ヘキサン酸;N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4aジアザ−3−インダセンプロピオン酸;エオシン−5−イソチオシアネート;エリトロシン−5−イソチオシアネート;5−(および−6)−カルボキシローダミン6G;およびカスケード(商標名)ブルーアセチルアジド(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)がある。
複数のプローブを用いる場合、異なる色のフルオロフォアを選択して、その組み合わせにおける各染色体プローブが区別して目視できるようにすることができる。好ましくは、本発明のプローブパネルは、2個以上の別個のプローブを含み、それぞれが別個のフルオロフォアで標識されている。臨床的感度(プローブを増やすにつれて感度が上昇し得る)と画像化/検出の複雑さ(プローブを増やすにつれて複雑さが増すことになり得る)との間のバランスが最も良くなることから、4個のプローブを用いることが好ましいと考えられる。同一試料について複数のパネルを順次用いることも、本発明の範囲に含まれる。この実施形態では、第1のパネルをハイブリダイズした後、結果を画像化し、試料を脱染し、次に第2のパネルでハイブリダイズする。複数のパネルを、同一検体の異なる部分にそれぞれ、例えば固定もしくは包埋検体のパラフィンブロックからの連続切片にそれぞれハイブリダイズすることもできる。
プローブは、各フルオロフォアについて蛍光顕微鏡および適切なフィルターで、または複数のフルオロフォアを観察するための二重もしくは三重帯域通過フィルターを用いることで見ることができる(例えば、ビットナー(Bittner)らに対する米国特許第5776688号(参照によって本明細書に組み込まれる)を参照する)。メタシステムズ(MetaSystems)またはアプライド・イメージング(Applied Imaging)から入手可能なものなどの自動デジタル画像化システムのように、いずれか好適な顕微鏡画像化法を用いて、ハイブリダイズされたプローブを肉眼で見えるようにすることができる。あるいは、フローサイトメトリーなどの技術を用いて、染色体プローブのハイブリダイゼーションパターンを調べることができる。
プローブは、当業界で公知の手段により、例えばビオチンまたはジゴキシゲニンで間接的に標識することもできる。しかしながら、標識プローブを肉眼で見えるようにするには、二次検出分子またはさらなるプロセシングが必要になる。例えば、ビオチンで標識したプローブは、検出可能なマーカー、例えばフルオロフォアに接合したアビジンによって検出することができる。さらに、アルカリホスファターゼまたは西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素マーカーにアビジンを接合させることができる。そのような酵素マーカーは、その酵素用の基質を用いる標準的な比色反応で検出することができる。アルカリホスファターゼ用の基質には、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートおよびニトロブルーテトラゾリウムなどがある。ジアミノベンゾエートを、西洋わさびペルオキシダーゼ用の基質として用いることができる。
本発明の方法で有用なプローブおよびプローブセットを他の試薬とパッケージにして、本発明の方法を行う上で用いられるキットとすることができる。有用なプローブセットおよびキットは、HER−2/neuに対するプローブおよび遺伝子座1q1q25および遺伝子PTGS2(1q31)のうちの1以上に対するプローブ、ならびに第10染色体を計数するためのプローブを含むことができる。さらに、プローブセットおよびキットは、TOP2Aのプローブおよび/または第17染色体を計数するためのプローブなどの1以上の基準プローブを含むことができる。
細胞の事前選択
各種の方法により、そして各種基準を用いて、細胞試料を事前に評価することができる。本明細書に記載のプローブおよび方法は、定のスクリーニング方法を用いる用途に限定されるものではない。一つの例は、例えばDAPIフィルターで見るように細胞学的異常に関して数百ないし数千の細胞を走査する「走査方法」である。評価する細胞の数は、検体の細胞性によって決まり、それは患者ごとに異なる。一般的であっても常時とは限らないが形成異常細胞および新生物細胞に関連する細胞学的異常には、核肥大、核異常性および異常DAPI染色(非常に多くの場合、色むらがあり、色がより明るい)などがある。走査段階では、観察者は好ましくは、染色体異常(FISHによって示されるもの)についての細胞の評価を、やはり細胞学的異常を示す細胞に集中させる。さらに、染色体異常は細胞学的異常がない場合でも起こることから、明らかな細胞学的異常を持たない細胞の割合を評価することができる。この走査方法については、ハイリング(Hailing)らに対する米国特許第6174681号(参照によって本明細書に組み込まれる)にさらに詳細に記載されている。乳癌細胞は、アボット・モレキュラー社が市販しているパスビジョン(PathVysion(登録商標))FISHパネルに記載の方法を用いる評価用に選択することができる。パスビジョンFISHパネルの製品添付文書は、参照によって本明細書に組み込まれる。この手順は、FISH用のスライドと同じ腫瘍ブロックからのH&E染色スライドを用いるものである。対象領域は、好ましくは病理担当者がH&E染色スライドを見ることで選択し、相当する領域をFISHスライド上でマークする。悪性腫瘍と一致する形態(すなわち、相対的に大きい核)を有する細胞を、マークを施した対象領域内で計数する。
試料の準備
HER−2受容体タンパク質のシグナル伝達能力を阻害するか、他の形態でトラスツズマブに匹敵すると考えられている医薬での治療の候補患者(例:乳癌患者)の識別は、その患者から得た適切な生体試料における染色体異常を識別することで確認することができる。これは、イン・サイツハイブリダイゼーションによって行うことができる。概して、イン・サイツハイブリダイゼーションには、生体試料を固定する段階、固定試料内に含まれる標的DNAに染色体プローブをハイブリダイズする段階、洗浄を行って非特異的に結合したプローブを除去する段階、ならびにハイブリダイズしたプローブを検出する段階などがある。そのイン・サイツハイブリダイゼーションは、検体細胞を懸濁させ、次にフローサイトメトリーによって検出することでも行うことができる。あるいは、遺伝子コピー数および増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの他の方法によって評価することができる。PCRによるHER2遺伝子の測定についての記述が論文にある(例として、Willmore, et al., (2005) Applied Immunohistochemistry and Molecular Morphology 13(4):333-341;Lyon et al. (2001) Clinical Chemistry 47(5): 844-851;Li et al. (1994) 73(ll):2771-2778およびO′Malley et al. (2001) American Journal of Clinical Pathology 115(4):504-511)。
異常細胞は、細胞内の異常な染色体数および/または細胞の染色体内の構造的変化を特徴とする。構造的変化には、実施例で示したような座または動原体領域などの特異的染色体領域の増加または消失(例:半接合性または同型接合性の消失)などがあり得る。陽性試験指示体を、それに応じて作ることができる。例えば、1以上の染色体増加、すなわち所定の標的座の3個異常のコピーを有する細胞を、本明細書に記載の方法では試験陽性と見なすことができる。一染色体性または零染色体性を示す細胞も、ある一定の環境下では試験陽性と見なすことができる。
生体試料は、細胞または細胞材料、例えば乳房由来の細胞または材料を含む試料である。乳房検体の例には、乳房生検組織などがある。代表的には細胞は、生体試料から採取され、当業界で公知の技術を用いて準備される。評価用に細胞を採取する上で、多くの方法が利用可能である。例えば、乳房からの細胞を、微細針吸引(FNA)などの公知の技術を用いて採取する。従来の細胞学的塗抹標本は、スライドガラス上に細胞を均等かつ薄く広げることで得られる。そのスライドガラスを、95%エタノールに浸漬するか、製造者の説明に従って市販の固定剤を噴霧することで急速に固定する。乳房細胞は、コア生検または外科生検によって組織検査用にも採取され、代表的にはホルマリン溶液で固定され、パラフィンに包埋される。
染色体異常の検出
細胞中の染色体プローブまたは染色体プローブセットのハイブリダイゼーションパターン(例えば、各プローブについてのシグナル数)を調べ、シグナル数を記録することで、細胞内での染色体または染色体領域の増加または消失を評価する。試験試料は、臨床診断を行う上で十分な数の細胞を含むことができ、代表的には少なくとも約100個の細胞を含む。代表的なアッセイでは、ハイブリダイゼーションパターンを約20〜200個の細胞で評価する。試験試料は代表的には、異常(例:座の増加または消失)を含む細胞を複数含むことが認められた場合、特定の遺伝子座の異常について「試験陽性」と見なされる。「試験陽性」の基準には、異常座と療法に対する患者応答の間の臨床的相関に応じて、1、2、3、4個またはそれ以上のプローブでの試験陽性を含むことができる。さらに、複数のプローブを用いる場合、試験陽性には、小セットのプローブを用いた異常ハイブリダイゼーションパターンの検出が含まれ得る。例えば、小セットのプローブ、例えば全体が4個のプローブセットのうちの2個もしくは3個のプローブの増加または消失の組み合わせで、陽性試験結果となり得る。ハイブリダイゼーションパターンは、小セットのプローブについての配列で評価することもできる。例えば、初回小セットのプローブ(例:HER−2およびTOP2A座に対するプローブ)のパターンを評価することができ、その小セットのプローブから陽性結果が示された場合は、その試験は全体的に陽性と見なし得る。しかしながら、その最初の結果が陽性でない場合、追加小セットのプローブ(例:1q25座に対するプローブ)についてのパターンを評価して、試験を完了することができる。全てのプローブについて合わせた結果が陽性の試験結果を示した場合、その試験は全体で陽性と見なすことができる。
染色体異常で識別され、特定の試料を陽性と分類するのに使用される細胞の数は、試料中の細胞数とともに変動し得る。染色体異常で検出される細胞の絶対数または異常を含む調査細胞の総数のパーセントを用いて、カットオフ値との比較によって試料が陽性であるか否かを確認することができる。例えば、異常を有する細胞の数またはパーセントがカットオフ値以下である場合、その検体は異常に関して陰性と分類することができる。異常を有する細胞の数またはパーセントがカットオフ値より大きい場合、その検体は陽性と分類することができる。一つまたは特性の組み合わせの染色体異常について陽性の検体は、医薬に対して患者が応答する可能性があると分類することができる。あるいは、染色体異常に関する検体陽性は、検体中の細胞当たりの座の平均コピー数またはその検体における一つの座のコピー数/第2の座のコピー数の比率の平均から確認することができる。座の異常増加について確立されているカットオフ値より高い、または座の異常消失について確立されたカットオフ値以下である細胞当たりの特定の座の平均コピー数を有する検体は、その具体的な異常について陽性と見なされる。同様に、2つの異なる座間での相対的な増加または消失についてカットオフを確立することができ、それを測定された座比に当てはめて、ある試料がその異常について陽性であるか陰性であるかを確認することができる。
以下、実施例で本発明の詳細について説明するが、それら実施例は特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本明細書を検討することで、本発明の変形形態および修正が明らかになることが理解できよう。従って、本発明の範囲または精神を逸脱しない限りにおいて、本明細書に記載の実施形態のそのような変形および修正を提供することが一つの目的である。
(実施例)
ハイブリダイゼーションプローブ
291U(ロズウェルパーク癌研究所(Rosewell Park Cancer Institute:RPCI)のBACまたはPACライブラリから。名称:RPCI−11−283123)、291P(RPCI−5−1152A16)、291F(カリフォルニア技術研究所(California Institute of Technology)(CIT)のBACライブラリから。名称:CITC−428H21)、LSI(R)TOP2A(291Z.2;アボット・モレキュラー社)、291Z.7(RPCI−11−89A22)および291Z.8(RPC−I1−1028K7)というクローンをFISHマッピングプローブとして用いた。それらのマッピングクローンは、ビシス(Vysis)LSI HER−2プローブの約114kbテロメアから始まって、17qテロメアの方に約650kb延長する連続した領域内にある。マッピングプローブによる各イン・サイツハイブリダイゼーションには、異なるフルオロフォアで直接標識された3種類のFISHプローブ、すなわち、第17染色体についての動原体周囲プローブ(スペクトラム・アクア(SpectrumAqua;商標名)CEP(登録商標)17;アボット・モレキュラー社)、スペクトラム・グリーン(Spectrum Green;商標名)LSI HER−2(アボット・モレキュラー社)およびスペクトラム・オレンジ(Spectrum Orange;商標名)で標識された6個のマッピングプローブのうちの一つが含まれていた。
LSI PTEN(アボット・モレキュラー社)、LSI 1q25(アボット・モレキュラー社)、PTGS2(RPCI−11−70N10、RPCI−11−809F11、RPCI−11−104B23、RPCI−11−457L10、RPCI−11−33912)、PIK3CA(RPCI−11−355N16、CITD−2354L18、CITD−3030M16、RPCI−11−360P21、CITD−2109M3、CITD−2537A7)およびAKT3(CITD−2011E13、RPCI−11−35IN5、RFCI−11−119H6)というクローンを、シグナル伝達プローブとして用いた。シグナル伝達プローブを、各プローブがスペクトル的に区別されるフルオロフォアで直接標識された3色および4色プローブパネルにハイブリダイズした。パネル1には、スペクトラム・グリーンLSI 1q25、スペクトラム・ゴールド(Spectrum Gold;商標名)PTGS2、スペクトラム・レッド(Spectrum Red;商標名)AKT3が含まれていた。パネル2には、第3染色体用の動原体周囲プローブ(スペクトラム・グリーンCEP3;アボット・モレキュラー社)、スペクトラム・ゴールドPik3CA、スペクトラム・レッドPTENおよび第10染色体用の動原体周囲プローブ(スペクトラム・アクアCEP10;アボット・モレキュラー社)が含まれていた。市販されていないプローブは、米国特許第5491224号および第5506350号(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示の方法に従って標識した。プローブを、ビシスLSIハイブリダイゼーション緩衝液7部および水3部からなるハイブリダイゼーション溶液に溶かした。LSI、CEPまたはビシスの名称を有するプローブおよび試薬は、アボット・モレキュラー社(Des Plaines, IL)から得られる市販製品である。
検体
ラッシュ・プレスビテリアン聖ルカ医療センター(Rush Presbyterian St. Luke′s Medical Center, Chicago, IL)で1997〜2004年の間にトラスツズマブ治療を受けたことがある転移乳癌患者70名について試験を行うことを考えた。これは、治療前腫瘍組織記録が病理記録保管所で入手可能な全てのトラスツズマブ治療転移乳癌患者を含むものであった。この試験は、ラッシュ治験審査委員会による承認を受けた。患者は、トラスツズマブ単独または従来の化学療法(ほとんど全ての場合でタキサン)との併用のいずれかによる治療を受けたことがあった。実質的に全ての患者が、過去において、各種の化学療法による治療をかなりの程度で行ったことがあった。これらの患者について入念なカルテ検討を行った後、これら患者のうちの35名が、RECIST基準に従って、トラスツズマブ(PD)治療中に進行があったか、少なくとも6ヶ月間安定疾患(SD)であったか、部分応答(PR)であったか、または完全応答(CR)であったことが確認された。これら35名の患者は、本試験に選択するのに好適であると思われた。他の患者の場合、入手可能な医療記録が、トラスツズマブに応答したか否かを明瞭に示していなかったか、参考となる医療記録が入手できなかった。
記録資料での乳癌の診断を、組織評価によって確認してから、さらなる分析に供した。選択された患者全員について、本試験によって診断用腫瘍組織が使い切られないようにする上で十分な記録資料があった。
組織生検検体を含むパラフィンブロックを厚さ5μmに切り、スーパー・フロスト・プラス(Super Frost Plus;登録商標)正帯電スライドガラス(Thermo Shandon, Pittsburgh, PA)上に乗せた。全てのスライドガラスを56℃で終夜ベークして、組織をスライドガラス上に固定し、室温で保存した。
イン・サイツハイブリダイゼーション
イン・サイツハイブリダイゼーションのための準備で、検体スライドを、Hemo−De(商標名)溶媒および清浄剤(Clearing Agent)(Scientific Safety Solvents, Keller, TX)を各5分間3回交換で浸漬し、次に純粋エタノールで1分間洗うことでパラフィン除去した。乾燥後、スライドガラスを80℃のビシス前処理溶液(チオシアン酸ナトリウム系カオトロピック剤溶液)に10分間浸漬し、水で5分間洗うことで、イン・サイツハイブリダイゼーション用に検体をさらに準備した。次に、スライドガラスを、37℃のペプシン4mg(2500〜3000U/mg)/mL0.2N HCl溶液に15分間浸漬し、水で3分間洗い、70%、85%および100%エタノールでそれぞれ1分間脱水し、乾燥させた。前処理溶液、0.2N HClおよびペプシンは、キット形態(パラフィン・プレトリートメント(Paraffin Pretreatment)2、カタログ番号32−191095、アボット・モレキュラー社)で市販されている。
準備した検体スライドガラスを、HYブライト(HYBrite;商標名)自動共変性オーブン(アボット・モレキュラー社)中、FISHプローブ溶液でハイブリダイズした。スライドガラスをオーブン表面に乗せ、プローブ溶液を組織切片上に乗せ(代表的には10μL)、カバーガラスをプローブ溶液の上に乗せて、カバーガラスの縁をゴムセメントでスライドガラスまで封止した。オーブンによる共変性/ハイブリダイゼーションサイクルを、73℃で5分間の変性および37℃で16〜18時間のハイブリダイゼーションに設定した。ハイブリダイゼーション後、スライドガラスをHYブライトから取り出し、ゴムセメントを除去した。スライドガラスを、室温の2倍SSC(SSC=0.3M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム)/0.3%ノニデット(Nonidet)P40(NP40;アボット・モレキュラー社)に2〜10分間入れて、カバースリップを除去した。次に、スライドガラスを、73℃の2倍SSC/0.3%NP40に2分間浸漬して、非特異的結合プローブを除去し、暗所で乾燥させた。DAPII退色防止剤溶液(1000ng/mLのDAPIの退色防止剤含有溶液;アボット・モレキュラー社)を検体に塗布して、核を肉眼観察できるようにした。
検体の中には、至適なFISH結果を得るのにさらに処理する必要があるものがあった。過剰消化検体は、新たな検体スライドガラスから始めて再処理した。これらのスライドガラスは、比較的温和な条件下で処理した(既報の(Jacobson et al., 2000)ビシス・パラフィン前処理Iプロトコールおよび試薬)。消化不十分のスライドについては、下記のように追加処理を行った。最初に、室温で2倍SSC/0.3%NP40にスライドガラスを浸漬することでカバースリップを除去した。次に、スライドガラスを精製水で洗い、37℃の4mgペプシン/0.2N塩酸中で5〜10分間インキュベートした。スライドガラスを精製水で再度洗い、一連のエタノール脱水を行った。乾燥後、スライドガラスを、最初のハイブリダイゼーションに用いたものと同じ条件下で再度ハイブリダイズした。
FISHシグナルの計数
FISHスライドガラスを、ツァイス・アキシオスコープ(Zeiss Axioscope)エピ蛍光顕微鏡(Carl Zeiss, Thornwood, NY)下に評価した。シグナルを肉眼観察できるようにし、核を視覚化するためのDAPI単帯域通過フィルターセット(スペクトラム・オレンジ(SpectrumOrange)標識プローブを視覚化するための橙赤色単帯域通過フィルターセット、スペクトラム・グリーンプローブを視覚化するための緑色単帯域通過フィルターセット、スペクトラム・アクアプローブを視覚化するための水色単帯域通過フィルターセット、スペクトラム・レッドプローブを視覚化するための赤色単帯域通過フィルターセット、スペクトラム・ゴールドプローブを視覚化するための金色単帯域通過フィルターセット(いずれもアボット・モレキュラー社からのフィルターセット))を用いてカウンティングを行った。悪性形態を有する最低30個の核をカウントした。各プローブおよび各検体について、計数した全細胞にわたって相当するプローブシグナル数を合計し、計数細胞の総数で割ることで、細胞当たりの平均シグナル数を計算した。細胞当たりの平均HER−2およびマッピングプローブシグナルを、細胞当たりの平均CEP17シグナルによって割ることで、第17染色体当たりの各標的の平均数を得た。同様にして、一つの座についての細胞当たり平均シグナルを他方の座の細胞当たりの平均シグナルで割ることで他の座間の比率を計算した。スライドガラスを複数回カウントした場合は、各評価からの細胞当たりの平均プローブシグナルの平均を求め、それを比率の再計算に用いた。
HER−2の場合、HER−2増幅およびそれの発現および患者結果との関係を調べた多くの発表された試験で用いられている値であることから、HER−2/CEP17の比率2.0以上を増幅と見なした(Pauletti et al., 1996, 2000;Pauletti and Slamon, 1999;Persons et al., 2000)。TOP2Aおよび他のマッピングプローブの標的が、増幅された場合にHER−2単位複製配列と関連していることから、2.0という同じカットオフを用いて、初回評価で増幅検体を非増幅検体から区別した。削除に用いたカットオフは、0.75であった(Jacobson et al., 2004)。他の各座は、細胞当たりのシグナルならびに利用可能な場合には比率を用いて評価した。複数のカットオフ値集合を選択して、各標的座を分類した。最終カットオフ値は、療法に対する良好な患者応答と不十分な患者応答の間を区別する能力に基づいて選択した。CRまたはPRは他覚的応答として分類し、PDまたはSDは低応答または応答なしと分類した。臨床的効果は、CR、PRまたはSDと定義した。
トラスツズマブ投与患者からの貴重な検体を保存するため、必要なハイブリダイゼーション回数を減らすマッピングプローブのハイブリダイズ戦略を開発した。公開されているマッピング試験(Jacobson et al., 2004)では、Her−2がある17qマッピング領域内の主として連続した増幅パターンが示されている。すなわち、HER−2に対してテロメアであるマッピングプローブのうちの一つが増幅されると、そのプローブとHER−2の間にある全てのプローブも増幅を示した。これは、評価した75例の腫瘍中67例に当てはまった(89%)。従って、使用される検体切片数を減らすため、LSI(登録商標)TOP2Aプローブから始めてマッピングプローブをハイブリダイズした。検体の状況がTOP2Aについて増幅されていることが認められた場合(カットオフ値2.0)、全てのTOP2Aに対して動原体性のマッピングクローンの試験を行わずに、増幅されたものと仮定した。次に、プローブ291Z.7の試験を行い、増幅された場合は、291Z.7、291Z.8に対して動原体性の連続したクローンの試験は行わず、増幅されたと仮定した。291Z.7が増幅されなかった場合、291Z.8の試験は行った。しかしながら、検体がLSI(登録商標)TOP2Aについて増幅されなかった場合、291Pの試験は行った。291Pが増幅された場合、291Fの試験を行い、291Pが増幅されなかった場合は、291Uの試験を行って、テロメア性の最増幅標的を示し、HER−2単位複製配列のテロメア限界を確定した。
細胞当たりの平均プローブシグナルまたは基準染色体当たりのプローブシグナルの比を用いてシグナル伝達プローブを解析して、検体を特定の座に関して正常、増加、欠失または増幅に分類した。応答に関係する患者の効果的な分類を、1q25座の増加および消失についてはそれぞれ3.0および1.5シグナル/細胞のカットオフ、PTGS2座の増加および消失についてはそれぞれ2.75および1.6シグナル/細胞のカットオフ、そして第10染色体(CEP10)の増加および消失についてはそれぞれ2.75および1.7シグナル/細胞のカットオフを用いて行った。AKT3座の増加および消失についてのそれぞれ3.0および1.6シグナル/細胞のカットオフによって、至適な分類ができたが、統計的有意差はなかった。
第17染色体に対するHER−2またはマッピングプローブの比率(CEP17シグナルによって表される)の場合、2.0以上の比率を増幅と分類し、0.75〜2.0の比率を正常と分類し、0.75以下の比率を欠失と分類した(Jacobson et al., 2004)。シグナル伝達プローブについては、カットオフを経験的に決めて、患者応答と座の遺伝子状態との間の相関を最大とした。2シグナル/細胞未満のカットオフ値を調べることで正常コピー数からの座の欠失を表し、2を超えるカットオフ値を調べることで正常コピー数からの座の増加を表した。偶然性解析を用いて遺伝子状態に関する患者応答を分類し、フィッシャーの直接確率検定を用いてp値を計算した(両側;<0.05を有意と見なした)。
結果
計数結果
試験で検討された70名の患者のうち、35名が療法に対する説明可能な応答とマッピングプローブについて計数可能なFISHシグナルを生じる検体の両方を有していた。34個の検体で、シグナル伝達経路プローブについての計数可能なFISHシグナルが生じた。35名の患者のうちの一つの検体が、2つの特有の腫瘍クローンを含んでいた。そのクローンのより異常なものを選択して解析した。35の腫瘍全てが、マッピングおよびシグナル伝達プローブセットの試験を完了できるだけの材料を含んでいた。
療法に対する全体的な応答
療法に対する応答は、他覚的応答(CR+PR)および臨床的効果(SD+CR+PR)の両方と見なした。他覚的応答は35名の患者中14名(40%)で認められたのに対して、臨床的効果を示したのは35名の患者中20名(57%)であった(表1)。
Figure 0005723845
HER−2/TOP2Aマッピング
HER−2プローブ領域を超えて延長していない単位複製配列を有する患者の場合、57%が他覚的応答を有していた。HER−2からテロメアの6個のマッピングプローブのそれぞれまで延長している単位複製配列の場合、他覚的応答が、それぞれ50%、100%、67%、0%、0%および12.5%で認められた(表2)。HER−2を超えて延長していない単位複製配列を有する患者の57%が、臨床的効果を示した。HER−2からテロメアの6個のマッピングプローブのそれぞれまで延長している単位複製配列の場合、臨床効果はそれぞれ67%、100%、100%、25%、50%および50%で認められた。これらのデータは、単位複製配列がTOP2A座を含まない場合に応答が最も良好であることを示している。単位複製配列がTOP2A座まで延長していない患者および単位複製配列がTOP2A座を含む患者に患者を群分けすると、他覚的応答は前者の群で62%(13/21)に、後者の群で7.1%(1/14)に認められた(p=0.0015)。臨床的効果は、前者の群で67%(14/21)に、後者の群で43%(6/14)に認められた(p=0.19)。これらのデータは、TOP2Aの遺伝子状態が他覚的応答の強力な予測因子であり、全体の(未選択)応答率より1.5倍良好に応答する患者(HER−2増幅および非増幅TOP2A)の群を識別し、トラスツズマブ療法の効果がほとんどない第2の群(HER−2およびTOP2A増幅)を識別するものであることを示している。臨床的効果に関しては、TOP2A状態によって提供される患者分類における改善がごく小さい。一般的に言えば、SDが治療の結果であるか否かを知るのが困難な可能性があることから、他覚的応答の方が臨床的効果より情報として有用であると考えられる。
TOP2A座の両方の側にある2つのマッピング座291Fおよび291Z.8も、HER−2増幅単独の場合に勝る改善であるトラスツズマブに対する他覚的応答に関する患者の分離を提供した。291F座の場合、HER−2増幅および291F非増幅群の60%(9/15)および291Fが増幅された場合は25%(5/20)で他覚的応答が認められた(p=0.080、わずかな統計的有意差)。291Z.8座の場合、他覚的応答は、HER−2増幅および291F非増幅群の52%(13/25)および291Fが増幅された場合は10%(1/10)で認められた(p=0.028)。
Figure 0005723845
増殖因子シグナル伝達経路
ERBB増殖因子シグナル伝達経路の成分に関する特異的座を、乳癌患者でのトラスツズマブに対する応答との相関に関するFISHによって評価した。データは、比率ならびに細胞当たりのシグナルとして解析し、カットオフ値は療法に対する応答に基づいて求めた。本明細書で示したデータは、細胞当たりのシグナルに基づいたものである。
対象とする3つの領域を、1q25、PTGS2座(1q31)およびAKT3座(1q43)を含む第1染色体に関して調べた。試験を行った34個のサンプルのうち、検体の59〜74%が異常であった(増加座または欠失座)。1q25およびPTGS2の増加および欠失は、療法に対する良好な応答に関連していた(表3)。1q25の場合、異常検体の75%(15/20)が、療法からの臨床的効果を示したが、それに対して正常検体では29%(4/14)のみであった(p=0.0135)。PTGS2では、臨床的効果に関連していたのは異常検体の64%(16/25)および正常検体の33%(3/9)であり(p=0.139)、AKT3では、臨床的効果に関連していたのは異常検体の62%(13/21)であり、正常検体の46%(6/13)であった(p=0.484)。PTGS2およびAKT3についての臨床的効果との関連性に、統計的有意差はなかった。他覚的応答を考慮すると、1q25は異常患者で60%(12/20)が応答および正常患者で14%(2/14)が応答を示した(p=0.0128)。PTGS2は、異常患者で52%(13/25)が他覚的応答および正常患者で11%(1/9)が応答を示した(p=0.051)。これらの値は、1q25においては有意であり、PTGS2においては境界の統計的有意差であった。AKT3増加および消失は、療法に対する応答に相関していなかったが、1q25およびPTGS2で認められるものと同様の傾向が、療法に対して応答するのは正常検体と比較して異常検体の方が多いという点で認められる(表3)。
シグナル伝達経路遺伝子PIK3CAおよびPTENについてのプローブおよび第3および第10染色体についての個々の動原体プローブについて、乳癌患者でのトラスツズマブに対する応答との相関を解析した。第3染色体、PIK3CAおよびPTENには、他覚的応答および臨床的効果のいずれにおいても、療法に対する応答との有意な相関はなかった。しかしながら、第10染色体の増加および消失は、トラスツズマブに対する良好な応答と相関していた(表4)。他覚的応答は、異常第10染色体を有する患者の75%(9/12)および正常第10染色体を有する患者の23%(5/22)で認められた(p=0.0048)。臨床的効果は、異常第10染色体を有する患者の83%(10/12)および正常第10染色体を有する患者の41%(9/22)で認められた(p=0.030)。
偶然性解析も用いて、2つの座の合わせたゲノム状態に対する応答をカテゴリー分けした。TOP2A増幅、1q25、PTGS2または第10染色体異常をペアで組み合わせた場合、単一座の使用の場合よりサンプルのターゲティングを改善することができた。第10染色体を偶然性解析によって1q25、PTPGS2またはTOP2Aと組み合わせた場合、応答者および非応答者の検出感度が高くなった。第10染色体および1q25座からのデータを組み合わせた偶然性解析で、療法に対する応答者の純粋な群を確認した。第10染色体および1q25の両方について異常であった患者は、100%(8/8)が療法からの臨床的効果を示したが、他の患者では効果を示したのは42%(11/26)であった(p=0.0045)。他覚的応答は、異常第10染色体および1q25の両方を有する患者の88%(7/8)で認められたが、他の患者で応答を示したのは27%(7/26)であった(p=0.0039)。
異常1q25と合わせて非増幅TOP2Aを有する患者は、患者の86%(12/14)で臨床的効果を示したが、それに対して他の患者で効果を示したのは35%(7/20)であった(p=0.0051)。異常1q25と合わせて非増幅TOP2Aを有する患者は、患者の79%(11/14)で他覚的応答を示したが、それに対して他の患者で効果を示したのは15%(3/20)であった(p=0.0003)。
第10染色体およびPTGS2座の解析によって、療法に対する非応答者の純粋な群が確認された。両方の座について正常な患者は、0%(0/8)で他覚的応答があったが、
他の患者では64%(14/26)に応答があった(p=0.0109)。臨床的効果に基づいた比較では、有意な相関は得られなかった。
異常PTGS2と合わせて非増幅TOP2Aを有する患者は、患者の76%(13/17)で臨床的効果を示したのに対して、他の患者で効果を示したのは35%(6/17)であった(p=0.037)。異常PTGS2と合わせて非増幅TOP2Aを有する患者は、患者の71%(12/17)で他覚的応答を示したのに対して、他の患者で効果を示したのは15%(3/20)であった(p=0.0013)。
Figure 0005723845
Figure 0005723845
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))による治療についての乳癌患者の識別
LSI TOP2A/HER−2/CEP17
ビシス社(Vysis,Inc.)から市販されている3色カラープローブセットLSI TOP2A/HER−2/CEP17多色プローブを用いて、トラスツズマブ治療について乳癌患者を階層化することができる。乳房生検試料をFISHハイブリダイゼーション用に準備し、上記のようにプローブセットでハイブリダイゼーションすることができる。各サンプルからの細胞を、上記の方法に従って、20〜200個の順次細胞を計数することで評価することができる。HER−2について増幅され、TOP2A/動原体17座のシグナル比が2.0のカットオフより小さい試料は、トラスツズマブ治療について陽性と見なすことができるが、他の患者はトラスツズマブ治療には好適性の低い候補者と見なすことができる。2名の患者(患者1および2)についての例は下記の通りである。
患者1および2
患者1および2からのホルマリン固定パラフィン包埋乳房腫瘍組織を、FISH用に処理し、ビシスLSI TOP2Aスペクトラム・オレンジ/LSI HER2スペクトラム・グリーン/CEP17スペクトラム・アクア多色プローブセット(アボット・モレキュラー社)を用いて、上記の方法に従ってFISHを行った。スライドガラスを上記の方法に従って蛍光顕微鏡で評価し、TOP2A、HER2およびCEP17プローブに相当するシグナルの数を、30個の細胞について求めた。結果を表5Aおよび5Bにまとめてある。
Figure 0005723845
患者1の結果
これらのシグナルカウントから、平均TOP2A/細胞、HER2/細胞およびCEP17/細胞はそれぞれ1.07、11.1および1.17と計算され、この検体についてTOP2A/CEP17値0.91およびHER2/CEP17値9.5が得られた。HER2は増幅され(HER2/CEP17>2.0)、TOP2Aは増幅されない(TOP2A/CEP17<2.0)ことから、患者は、トラスツズマブ療法に対して良好な非常に良好な候補者と見なされる。患者1をトラスツズマブで治療したところ、RECIST基準によりその薬剤に対して完全応答を示した。
患者2の結果
これらのシグナルカウントから、平均TOP2A/細胞、HER2/細胞およびCEP17/細胞はそれぞれ6.20、8.73および1.67と計算され、この検体についてTOP2A/CEP17値3.7およびHER2/CEP17値5.2が得られた。HER2が増幅されることから(HER2/CEP17>2.0)、患者はトラスツズマブ療法の候補者の可能性があるが、TOP2Aも増幅されることから(TOP2A/CEP17>2.0)、この患者は、TOP2Aが増幅されない患者より治療に対して応答する可能性が低く、別の治療を考慮すべきである。患者2をトラスツズマブで治療したところ、RECIST基準によって進行性疾患が示された。
LSI Her−2、LSI TOP2A、CEP17およびLSI 1q25
4つのプローブLSI Her−2、LSI TOP2A、CEP17およびLSI 1q25を用いて、トラスツズマブ治療について乳癌患者を階層化することができる。ビシス・スペクトラム・オレンジLSI TOP2A/スペクトラム・グリーンLSI HER2/スペクトラム・アクアCEP17多色プローブセットを、これらプローブ源として用いることができる。上記のスペクトラム・グリーンLSI 1q25プローブを第2のハイブリダイゼーションでハイブリダイズすることができるか、標識を変えて4種類全てのプローブのハイブリダイゼーションおよび解析を同時にできるようにすることが可能である(例えば、スペクトラム・アクア、スペクトラム・グリーン、スペクトラム・ゴールドおよびスペクトラム・レッド標識を使用)。FISHハイブリダイゼーション用に乳房生検試料を準備し、上記の方法に従ってハイブリダイゼーションを行った。上記の方法に従って20〜200個の順次細胞を計数することで、各試料からの細胞を評価した。HER−2について増幅され、カットオフが2.0未満であるTOP2A/動原体17座のシグナル比を示し、カットオフが3.0より大きいか、カットオフが1.5未満である細胞当たりの1q25シグナルを示す試料はトラスツズマブ治療に関して陽性と見なされるが、他の患者はトラスツズマブ治療の候補者としては好適性が低いと見なされる。2名の患者(患者3および4)についての例は下記の通りである。
患者3および4
患者3および4からのホルマリン固定パラフィン包埋乳房腫瘍組織を、FISH用に処理し、1組のスライドガラス上でビシスLSI TOP2Aスペクトラム・オレンジ/LSI HER2スペクトラム・グリーン/CEP17スペクトラム・アクア多色プローブセット(アボット・モレキュラー社)を用い、ビシス・スペクトラム・グリーンLSI 1q25/スペクトラム・ゴールドPTGS2/スペクトラム・レッドAKT3プローブセットを別の1組のスライドガラス上での1q25プローブ源として用いて、上記の方法に従ってFISHを行った。スライドガラスを上記の方法に従って蛍光顕微鏡で評価し、TOP2A、HER2、CEP17および1q25プローブに相当するシグナルの数を、30個の細胞について求めた。結果を表6および7にまとめてある。
Figure 0005723845
患者3の結果
これらのシグナルカウントから、平均TOP2A/細胞、HER2/細胞、CEP17/細胞および1q25/細胞はそれぞれ3.2、16.2、3.9および4.1と計算され、この検体についてTOP2A/CEP17値0.82およびHER2/CEP17値4.1が得られた。HER2は増幅され(HER2/CEP17>2.0)、TOP2Aは増幅されず(TOP2A/CEP17<2.0)、1q25は異常である(1q25/細胞>3.0または<1.5)ことから、患者は、トラスツズマブ療法に対して良好な非常に良好な候補者と見なされる。患者3をトラスツズマブで治療したところ、RECIST基準によりその薬剤に対して完全応答を示した。
Figure 0005723845
患者4の結果
これらのシグナルカウントから、平均TOP2A/細胞、HER2/細胞、CEP17/細胞および1q25/細胞はそれぞれ11.8、13.8、1.9および2.6と計算され、この検体についてTOP2A/CEP17値6.3およびHER2/CEP17値7.4が得られた。HER2が増幅されることから(HER2/CEP17>2.0)、患者はトラスツズマブ療法の候補者の可能性があるが、TOP2Aも増幅され(TOP2A/CEP17>2.0)、1q25が正常である(1q25/細胞<3.0および>1.5)ことから、この患者は、TOP2Aが増幅されず、1q25が異常である患者より治療に対して応答する可能性が低く、別の治療を考慮すべきである。患者4をトラスツズマブで治療したところ、RECIST基準によって進行性疾患が示された。
理解すべき点として、上記において、本発明の詳細な説明と組み合わせて本発明について説明したが、上記の説明は、例示を目的としたものであって、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の他の態様、利点および変更は、添付の特許請求の範囲に包含される。

Claims (6)

  1. HER−2/neuおよびTOP2Aに対するコピー数と、1q25、PTGS2およびCEP10の1以上に対するコピー数を検出可能なプローブならびに1以上の相当する基準プローブからなる染色体プローブセット。
  2. 前記プローブセットが、HER−2/neu、TOP2A、1q25に対するコピー数を検出可能なプローブと1以上の相当する基準プローブからなる請求項1に記載の染色体プローブセット。
  3. 前記プローブセットが、HER−2/neuおよびTOP2Aのコピー数と、1q25、PTGS2およびCEP10の1以上のコピー数を検出することができるプローブならびに第17染色体のコピー数を検出することができる基準プローブからなる請求項1に記載の染色体プローブセット。
  4. 前記プローブセットが、HER−2/neu、TOP2Aおよび1q25のコピー数を検出することができるプローブならびに第17染色体のコピー数を検出することができる基準プローブからなる請求項に記載の染色体プローブセット。
  5. HER−2/neuおよびTOP2Aのコピー数と、1q25、PTGS2およびCEP10の1以上のコピー数を検出することができる染色体プローブおよび1以上の相当する基準プローブからなるキット。
  6. 前記染色体プローブが、HER−2/neuおよびTOP2Aと、1q25、PTGS2およびCEP10の1以上を検出することができるプローブならびに第17染色体のコピー数を検出することができる基準プローブからなる請求項5に記載のキット。
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