JP5719946B2 - 金属条、コネクタ、および金属条の製造方法 - Google Patents
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(1)母材金属と、前記母材金属上に形成されたNi層と、前記Ni層上にされたCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層と、前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層上に形成されたSn層もしくはSn-Cu合金層と、を有し、ビッカ-ス硬度が100以下であることを特徴とする金属条である。
(2)(1)1記載の金属条であって、前記Sn層もしくはSn-Cu合金層と前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層中のSn+Cuの全合計量に対するCu全合計量の割合が1〜4mass%であることを特徴とする金属条である。
(3)金属条の製造方法であって、母材金属上にNi層、Sn-(1〜4mass%)Cu合金層を順次積層させる工程と、前記積層された母材金属を前記Sn-(1〜4mass%)Cu合金の固相線温度以上の温度で熱処理し、前記Ni層上にCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層、前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層上にSn層もしくはSn-Cu合金層、を形成する工程と、を有することを特徴とする金属条の製造方法である。
(4)(3)記載の金属条の製造方法であって、前記Sn-(1〜4mass%)Cu合金層は無光沢めっきにより積層させることを特徴とする金属条の製造方法である。
図1は、本発明に係る金属条1の層構造の断面を示すものであり、母材金属2上には、Ni層3と、Ni層3上に形成されたCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4と、Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4上に形成され、光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層5とによる積層構造が設けられている。また前記金属条1のビッカース硬度は100以下である。
本構造では、母材金属2と光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層5との間に2重の反応防止バリア層が形成されることが重要となる。すなわち、これによれば、Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4により、Ni層3と光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層5の間の反応を抑止でき、また、Ni層3により、母材金属2とCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4、光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層5との間の反応を抑止できるため、めっき膜内のNi-Sn化合物、Cu-Sn化合物、Cu-Ni-Sn化合物成長を防止でき、金属条表面から発生する内部圧縮応力起因のSnウィスカの抑制を図ることができる。一般には母材金属2としてはリン青銅のようなCu合金が多く使用され、このCu合金からのCu供給による化合物化の促進がウィスカの原因となりうるが、上記の通り、Ni層3によりリン青銅からのCu供給は遮断され、母材金属とCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4との反応は抑止されるため、本発明の層構造を有する金属条によれば、母材金属を特殊な材料にすることなく、通常のリン青銅を用いることができる。
また、形成されるCu-Sn化合物はCu6Sn5が主で、形成されるCu-Ni-Sn化合物は(Cu, Ni)6Sn5が主であるが、他にCu3Snや(Cu, Ni)3Snが一部形成される場合もある。また、Sn-Cu合金層5中のCu割合は通常、Sn-Cu共晶組成である0.7〜0.9mass%となる。
さらに、表面層(Ni層3、Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4、光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層5)の合計厚さは、1〜10μmの範囲とすることが好ましい。1μm未満であると、はんだ濡れ性が低下し、10μmを超えると、金属条の成形加工性が悪くなるからである。
図2は、本発明に係る金属条を製造するために用いる熱処理前の金属条6の第一の積層構造の断面図であり、母材金属2上にNi層3、Ni層3上に無光沢Sn-Cu合金層7を順次めっき等により設けて形成する。ここで、Ni層3上に形成された無光沢Sn-Cu合金層7は、後述の熱処理によりNi層3の直上にCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4を形成するために必要となる。
なお、無光沢Sn-Cu合金層7の厚さは1〜5μmの範囲とすることが好ましい。1μm未満であると、はんだ濡れ性が低下し、5μmを超えると、金属条の成形加工性が悪くなるからである。また、Sn-Cu合金層7は、Zn、Al、Si、Mg、Tiのうちの1種以上の金属を1mass%以下含んでいてもよい。これらの酸化しやすい金属を微量含むことにより、後の熱処理時やリフロ-時に、これらの金属が選択的に酸化されるため、最表面のSn-Cu合金層の酸化を最小限に抑えることが可能となり、最表面の酸化Sn層のフタ効果によるめっき膜内部圧縮応力の発生およびこれに伴うウィスカの発生を抑制することができる。
ここで、製造された金属条1のSn層もしくはSn-Cu合金層5とCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層4の元となる無光沢Sn-Cu合金層7には光沢剤が含まれていないため、金属条1を得るための熱処理を行った後も、金属条1のビッカ-ス硬度は100以下と低いため、FPCやFCC等とのかん合の際に発生する外部圧縮応力起因のウィスカを抑制することができる。
なお、表面層は通常、最も安定した状態であるSn-Cu合金層(Sn-Cu共晶組成)となるが、表面層が極めて薄くなる場合、例えば2μm以下程度となる場合には、表面層はSnとなる場合もある。これは層厚が2μm以下の場合には、Sn-Cu共晶組成の層として存在するよりも、すべてのCu成分が表面層の下層にあるCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物側に用いられ、表面層がSn層となったほうが安定状態となるためである。
この場合、層形成処理後、金属条をSnの融点以上、少なくともSn-Cu合金の固相線以上350℃以下の温度で熱処理し、Cu層8とSn層9とを完全に反応させることで、Ni層3の直上にCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層が形成され、表面層にSn層もしくはSn-Cu合金層が形成され、ビッカース硬度が100以下となるので、同様の効果を有する金属条1を製造することができる。
金属条サンプル表面のビッカ-ス硬度の測定は、マイクロビッカ-ス硬度計を用いて、クリ-プ速度5gf/2s、クリ-プ時間5sで測定した。
実施例1〜9では、ビッカ-ス硬度は100以下と比較的軟らかく、内部応力起因のウィスカ発生は見られず、外部応力起因のウィスカも最大長さ20μm以下であった。
はんだ濡れ性の評価はメニスコグラフを用いてゼロクロス時間と最大濡れ力を測定することにより行った。試験サンプルは15mm×3mm×厚さ0.25mmの金属条を用いた。浴はんだにはSn-3Ag-0.5Cuを用い、浴温は240℃とした。下降速度は2.0mm/s、浸漬深さは2.0mm、保持時間は20sとした。試料ははんだ浴に浸漬する前に、25mass% WW Rosin/IPAフラックスに先端を約3mm、5秒間浸漬して、フラックスを塗布した。
従来の金属条サンプルを用いた比較例1〜4では、ウィスカ発生(内部応力起因、外部応力起因)、はんだ濡れ性の何れかに問題が見られた。
実施例、比較例のうち、Sn-Cu合金層の液相線温度以上の温度で熱処理したサンプルのNi層直上にはCu-Ni-Sn化合物層が、液相線温度より低い温度で熱処理したサンプルのNi層直上にはCu-Sn化合物層が形成された。また、Sn-Cuめっき厚さが1.5μmと薄い実施例9のサンプルでは、熱処理後、最表面層がSn-0.75Cu層にはならず、Sn層となった。
2 母材金属
3 Ni層
4 Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層
5 光沢剤を含まないSn層もしくはSn-Cu合金層
6 熱処理前の金属条
7 無光沢Sn-Cu合金層
8 Cu層
9 Sn層
Claims (6)
- 母材金属と、
前記母材金属上に形成されたNi層と、
前記Ni層上に形成されたCu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層と、前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層上に形成されたSn層もしくはSn-Cu共晶組成合金層と、を有し、ビッカース硬度が100以下であり、
前記Sn層もしくは前記Sn-Cu共晶組成合金層および前記Cu-Sn化合物層もしくは前記Cu-Ni-Sn化合物層は、前記Ni層上に積層された光沢剤を含まないSn-Cu合金めっき層を、前記Sn-Cu合金めっき層の固相線以上の温度であって、350℃未満で熱処理することにより形成されたものであって、
前記Sn層もしくはSn-Cu共晶組成合金層と前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層中のSn+Cuの全合計量に対するCu全合計量の割合が1〜4mass%であり、
前記Sn層もしくは前記Sn-Cu共晶組成合金層は表面層であって、光沢剤を含まないこと
を特徴とする金属条。 - 請求項1記載の金属条であって、
前記Ni層と前記Sn層もしくは前記Sn-Cu共晶組成合金層とは、これらの間に形成された前記Cu-Sn化合物層もしくはCu-Ni-Sn化合物層により互いに接していないこと
を特徴とする金属条。 - 請求項2記載の金属条であって、
前記Cu-Sn化合物層もしくは前記Cu-Ni-Sn化合物層は、前記Ni層に接して形成されており、前記Sn層もしくは前記Sn-Cu共晶組成合金層は、前記Ni層には接することはなく、前記Cu-Sn化合物層もしくは前記Cu-Ni-Sn化合物層に接して形成されていること
を特徴とする金属条。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の金属条であって、
前記母材金属は、Cu合金であること
を特徴とする金属条。 - 請求項4記載の金属条であって、
前記母材金属は、リン青銅であること
を特徴とする金属条。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の金属条を加工して形成したこと
を特徴とするコネクタ。
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