JP5717065B2 - 滑り軸受 - Google Patents

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Description

本発明は滑り軸受に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の定着ローラや加圧ローラなどの加熱されるローラ(ヒートローラ)の支持に用いる滑り軸受に関する。
一般に、画像形成装置は、その定着装置において、光学装置で形成された静電潜像にトナーを付着させ、このトナー像をコピー用紙に転写し、さらに定着させるものである。この定着工程では、ヒータを内蔵した定着ローラと加圧ローラとの間にトナー像を通過させる。これにより、トナー像からなる転写像がコピー用紙上に加熱融着によって定着される。
定着ローラは、線状ないし棒状のヒータを軸心部に内蔵した軟質の金属製であり、両端に小径の軸部が突出した円筒状に形成されている。定着ローラは、アルミニウム、またはアルミニウム合金(A5056、A6063)などの熱伝導性に優れた金属材料からなる。定着ローラの表面は、旋削や研磨などで仕上げられる。また、定着ローラ表面には、フッ素樹脂などの非粘着性の高い樹脂がコーティングまたは被覆してある。定着ローラの表面の温度は、ヒータにより180〜250℃前後に加熱される。
加圧ローラは、シリコンゴムなどで被覆された鉄材または軟質材からなり、コピー用紙を定着ローラに押圧して回転駆動するものである。加圧ローラは、加熱ローラからの伝熱により、約70〜150℃に加熱される。あるいは、定着ローラと同様に内部にヒータが設けられ150〜250℃前後に加熱される。以降、上記した定着ローラ、加圧ローラなどのように、内蔵されたヒータ、または、他部材からの伝熱により加熱されるローラを「ヒートローラ」と記す。
高温に加熱されるヒートローラは、両端の軸部で深溝玉軸受からなるボールベアリングを介してハウジングに回転自在に支持されており、このボールベアリングとヒートローラの軸部との間に、合成樹脂などからなる断熱スリーブが介在させてある。これは、ヒートローラの加熱時に両端部のボールベアリングから熱が逃げてヒートローラの軸方向に沿う温度分布が不均一になるのを防止するのとともに、軸受の高温劣化を防止するためである。
また、ヒートローラの支持軸受としては、樹脂製滑り軸受を用いるものがある。例えば、滑り軸受を、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの合成樹脂から形成しているものがある。具体例としては、耐熱性および機械的強度の優れたPPS樹脂などをリング状の軸受本体として、その摺動面にフッ素樹脂層を接着するか、または、フッ素樹脂を配合したPPS樹脂などで滑り軸受全体を一体成形する技術が知られている(特許文献1参照)。
樹脂製滑り軸受を使用する場合、樹脂製滑り軸受自体が断熱性を有するため、一般的には、該樹脂製滑り軸受とヒートローラの軸部との間に断熱スリーブを介在させない。通常、画像形成装置の定着装置において、中級機から高級機はヒートローラ軸受にボールベアリングが使用され、普及機は樹脂製滑り軸受が使用されている。
特開平5−117678号公報
しかしながら、上記した画像形成装置における定着装置のヒートローラ用の軸受である深溝玉軸受は、構造が複雑で製造コストも高価である。また、温度分布の不均一化、軸受の高温劣化を防止するために、上述の樹脂製断熱スリーブが必要となり、さらに高価になる。また、ヒートローラの支持軸のたわみや取り付け精度などモーメント荷重によっては、軸受が破損するなどのおそれがある。
これに対して、PPS樹脂などの樹脂製滑り軸受は、断熱スリーブを介在させることなく使用でき、構造が簡単で射出成形できることから、低コストで生産できるという利点を有する。しかし、この樹脂製滑り軸受は、深溝玉軸受と比べて、摩擦トルクが約2〜5倍程度高い。特に、摺動相手材となるヒートローラ等の軸受摺動面粗さが粗いと、さらに摩擦トルクが大きくなり、同時に摩耗も大きくなり仕様を満足できなくなるおそれがある。
その他、摩擦トルクを小さくするため、軸受摺動面にグリースを塗布するとしても、荷重を強く受ける部分(負荷部)などではグリース不足となり、仕様を満足できなくなる場合がある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、低コストで、製造が容易な簡易構造でありながら、断熱スリーブなどが不要で摩擦トルクも低く維持できる滑り軸受を提供することを目的とする。
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、上記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、上記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、上記外輪は、上記内輪とは非接触であり、内周側で上記摺動部材を保持する1部材で構成されることを特徴とする。
上記摺動部材が、環状体であることを特徴とする。また、上記摺動部材が、1ヶ所の合い口を有する環状体、あるいは、複数に等分割される環状体であることを特徴とする。
上記内輪が、転がり軸受用の内輪であることを特徴とする。
上記外輪が、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、上記摺動部材は上記開口部から該外輪に組み込まれて上記爪部で固定されることを特徴とする。
上記外輪が、上記摺動部材の周方向の回り止め部をすることを特徴とする。
上記摺動部材を形成する樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、およびポリイミド(PI)樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする。
上記摺動部材を形成する樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含み、上記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであり、上記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
上記外輪が、樹脂組成物の成形体であることを特徴とする。上記外輪を形成する樹脂組成物のベース樹脂が、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする。また、上記外輪を形成する樹脂組成物が、繊維状補強材を含み、該繊維状補強材が、炭素繊維、ガラス繊維、およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
上記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、上記摺動部材の曲面が凸曲面であることを特徴とする。また、上記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されていることを特徴とする。また、上記摺動部材が、上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする。
上記内輪および上記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されることを特徴とする。また、上記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。また、上記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする。
上記外輪が、外周にフランジを有することを特徴とする。また、上記内輪が、金属の鍛造品または切削加工品であることを特徴とする。
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、上記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、上記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、上記外輪は、上記内輪とは非接触であり、内周側で上記摺動部材を保持する1部材で構成されるので、ボールベアリング(転がり玉軸受)と比較して部品点数が少なく構造が簡単である。そのため、製造が容易で、製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。さらに、非接触の内外輪間に介在する上記摺動部材が樹脂組成物の成形体であるので、ボールベアリングにはない自己断熱性効果を有し、別途、断熱スリーブなどが不要となる。
また、内輪の外周曲面と、環状体等からなる摺動部材の曲面とが対向接触して摺動する態様であるため、相手材である支持軸と摺動する樹脂製滑り軸受と異なり、摩擦トルクが支持軸の表面粗さや材質等に依存せず、また、内外輪も非接触であるので、このような態様の従来の樹脂製滑り軸受よりも摩擦トルクを低くできる。これらより、本発明の滑り軸受は、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有する。
上記摺動部材を1ヶ所の合い口を有する環状体とする、あるいは、複数に等分割される環状体とすることで、該摺動部材の内輪への組付けが容易となる。また、摺動部材の熱膨張による応力集中破壊が防止できる。
上記内輪として転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を利用することで、摺動部材との摺動面となる外周曲面が、該内輪の転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。
上記外輪が、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、上記摺動部材は上記開口部から該外輪に組み込まれて上記爪部で固定される構造とすることで、摺動部材を外輪にスナップフィットで容易に組み込んで製造できる。該構造により、摺動部材が外輪の内部に保持され、一体化される。このようなスナップフィット可能な構造とすることで、より製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。
上記外輪が、上記摺動部材の周方向の回り止め部をすることで、摺動部材が外輪の内周側に、該外輪に対して回転不能に保持される。これにより、外輪と摺動部材との滑りは考慮する必要がなく、回転性能の安定化に繋がる。
上記摺動部材または上記外輪を形成する樹脂組成物のベース樹脂を、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂とすることで、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になる。このため、ヒートローラの支持軸受として好適に利用できる。
上記樹脂組成物に固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。また、上記樹脂組成物に繊維状補強材を配合することで、摺動部材等を補強するとともに耐摩耗性が高くなり、さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
また、上記固体潤滑剤を、PTFE樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデン等から選ばれる少なくとも1つとすることで、潤滑特性に優れ、摩擦トルクがより安定する。また、上記繊維状補強材を、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つとすることで、摺動相手材となる内輪の摩耗が抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
上記内輪の外周の曲面を凹曲面とし、上記摺動部材の曲面を該凹曲面と対向接触して摺動する凸曲面とすることで、内輪と外輪の軸方向の位置ずれなどを防止できる。また、上記摺動部材の凸曲面において、軸方向中央部の全周に非曲面部を形成することで、この部分に潤滑剤を保持できる。さらに、上記摺動部材が上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されることで、摺動部材の射出成形が容易であり、パーティングラインの突状が内輪の摺接面と干渉しない。
上記内輪および摺動部材の摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減され、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くできる。特に、上記潤滑剤をフッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つとすることで、高温下においても安定した潤滑性能を有し、低摩擦トルクとなる。
上記摺動部材の摺動面に潤滑剤保持ポケットを形成することで、潤滑剤を摺動面に安定的に供給できる。
上記外輪が、外周にフランジを有するので、これを位置決め部材とすることができる。また、摺動部材の組み付け時の作業性にも優れる。
上記内輪を金属の鍛造品とすることで、安価で大量生産ができる。また、上記内輪を金属の切削加工品とすることで、形状にとらわれることなく多品種の滑り軸受とできる。
本発明の滑り軸受の一例を示す斜視図である。 図1の滑り軸受の軸方向断面図である。 本発明の滑り軸受の組み立て工程を示す図である。 図1の滑り軸受の摺動部材のみの正面図および軸方向断面図である。 図1の滑り軸受の外輪のみの正面図および軸方向断面図である。 図1の滑り軸受の内輪のみの正面図および軸方向断面図である。 他の態様の溝状の潤滑剤保持ポケットが形成された摺動部材の内周面の一部拡大図である。 軸加熱式高温ラジアル試験機の概略図である。 回転トルク比較試験結果を示す棒グラフである。 他の態様の外輪の正面図および軸方向断面図である。
本発明の滑り軸受の一実施例を図1および図2により説明する。図1は本発明の滑り軸受の斜視図であり、図2は該滑り軸受の軸方向の断面図および一部拡大断面図である。図1および図2に示すように、滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する摺動部材4とを備えてなる。この滑り軸受1は、ラジアル軸受である。図2に示すように、内輪2は、外周に曲面2aを、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有している。摺動部材4は、内輪2の外周の曲面2aに対向接触して摺動する曲面4aを有する。外輪3は1部材からなり、内周側で摺動部材4を覆うように保持している。内輪2と外輪3との間には隙間3fがあり、両部材は非接触とされている。摺動部材4は、外輪3の一端面に設けられた開口部3dの縁に形成された複数の爪部3aと、外輪3の内周面3cと、外輪3の端面側内面3bとの間で保持されている。より詳細には、摺動部材4は、その一端面4bで外輪3の端面側内面3bと接触し、その外周面4dで外輪3の内周面3cと接触し、その他端面4cが外輪3の爪部3aに引っ掛けられて固定されることで外輪3に保持されている。
滑り軸受1の組み立て工程を図3に示す。滑り軸受1の組み立て順は、まず、内輪2の外周の曲面2aと摺動部材4の曲面4aとが対向接触するように、内輪2に摺動部材4を弾性変形により嵌め込む。次いで、この内輪2と摺動部材4との一体部材を、外輪3に、開口部3dから組み込む。該部材は、外輪3の開口部3dの縁に形成された複数の爪部3aを弾性変形させて広げつつ、摺動部材4の一端面4bが外輪3の端面側内面3bと接触する位置まで押し込まれる。該部材は、この位置まで押し込まれると、複数の爪部3aにより、摺動部材4の他端面4cが引っ掛けられて保持される。以上により、内輪2と外輪3と摺動部材4とが一体化された滑り軸受1が得られる。この一連の組み立ては、スナップフィットで可能である。なお、摺動面にグリース等の潤滑剤を塗布する場合は、摺動部材4を内輪2に組み込む前に、予め塗布しておくことが好ましい。
摺動部材4のみの正面図および軸方向断面図(図中矢印方向)を図4に示す。図2および図4に示すように、摺動部材4は、内周に、内輪2の外周の曲面2aに対向接触する曲面4aを有する環状体である。摺動部材4の外周面4dは、外輪3の内周側に周方向の位置ずれなく保持できるよう、該外輪3の内周面3cと接触する円周面(軸方向断面では直線)としている。また、摺動部材4の一端面4bは、外輪3の内部に軸方向の位置ずれなく保持できるよう、外輪3の端面側内面3bに接触する平面としている。摺動部材4の他端面4cは、一端面4bと平行な平面である。
図4に示すように、摺動部材4は、1ヶ所の合い口4fを有する環状体とすることが好ましい。摺動部材4は樹脂製であるので、内輪2や外輪3を金属製とした場合、これらの部材とは線膨張係数が異なる。この場合であっても、合い口4fを設けることで、高温時の熱膨張を該合い口部分に逃すことができ、応力集中による摺動部材の破損を防止できる。また、摺動部材4を内輪2に弾性変形により組み込む際に、合い口4fの部分が広がるため、組み込み性に優れる。摺動部材4のその他の態様として、同様の合い口(非連結部)を複数設け、複数に等分割される環状体とすることもできる。この場合も同様の効果が得られる。
摺動部材4は、樹脂組成物の成形体である。該樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂の種類は特に限定されないが、少なくとも該滑り軸受の使用条件(耐熱性、機械的強度など)に見合う特性を有する合成樹脂である必要がある。また、射出成形可能な合成樹脂であれば、製造が容易であり、寸法精度も均一にできるので好ましい。
摺動部材4を形成する樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド6−6(PA66)樹脂、ポリアミド6−10(PA610)樹脂、ポリアミド6−12(PA612)樹脂、ポリアミド4−6(PA46)樹脂、ポリアミド9−T(PA9T)樹脂、ポリアミド6−T(PA6T)樹脂、ポリメタキシレンアジパミド(ポリアミドMXD−6)樹脂などのポリアミド(PA)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂などの射出成形可能なフッ素樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、射出成形可能なPI樹脂などが挙げられる。なお、各ポリアミド樹脂において、数字はアミド結合間の炭素数を表し、Tはテレフタル酸残基を表す。これらの各合成樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
これらの合成樹脂の中で、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になることから、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂で摺動部材を成形することで、画像形成装置の高温下で使用する定着ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受にも好適に使用できる。
摺動部材4を形成する樹脂組成物において、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。これらの繊維状補強材は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。樹脂組成物に、これらの繊維状補強材を含むことで、摺動部材が補強されるとともに耐摩耗性が高くなる。さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
上記繊維状補強材の中でも、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材における上記補強効果を維持しながら、摺動相手材となる内輪の摩耗を抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
摺動部材4を形成する樹脂組成物において、PTFE樹脂粉末、黒鉛、二硫化モリブデン、ポリイミド樹脂やフェノール樹脂や全芳香族ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂粉末などの固体潤滑剤を配合することができる。これらの固体潤滑剤は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。
上記固体潤滑剤の中でも、PTFE樹脂粉末、黒鉛、および二硫化モリブデン等から選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材の潤滑特性が優れ、摩擦トルクがより安定する。その他、摺動部材4を形成する樹脂組成物において、必要に応じて、上記繊維状補強材、固体潤滑剤以外の他の添加剤を配合してもよい。
外輪3のみの正面図および軸方向断面図を図5に示す。図2および図5に示すように、外輪3は、1部材からなり、内周側で摺動部材4を覆うように保持するものである。外輪3は、外周にフランジ3eを有し、このフランジ3eを定着装置等の装置内での位置決め部材とすることができる。また、フランジ3eを軸方向中央より開口部3d側に設けることで、開口部側となる軸方向端部の機械的強度を高めることができる。さらに、フランジ3eを有することで、摺動部材4の組み付け時の作業性にも優れる。
外輪3の開口部3dの縁に形成された爪部3aの形状は、軸受使用時において、摺動部材4が外れないように固定して保持できる形状であれば任意の形状とできる。図2、図5等に示すように、爪部3aの形状は、摺動部材4の他端面4cと面接触する平面部を有する形状のほか、摺動部材4の該端面に凹部等を設けて、それに嵌合できる形状とする等、摺動部材4との関係で相補的な嵌合構造を構成する形状とすることができる。また、爪部3aの個数は、任意の個数とできる。安定して摺動部材4を保持するため、爪部3aは、好ましくは2箇所以上、より好ましくは3〜6箇所、最も好ましくは図5に示すように5箇所とする。なお、爪部3aを複数設ける場合では、その位置は、周方向で等間隔となるようにすることが好ましい。
外輪3の構造を、上記のような爪部等を設けたスナップフィット可能な構造とすることで、製造が容易となり(図3参照)、より製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。また、外輪3は、1部材で摺動部材4を保持できる構造であれば、上記爪部を用いる構造以外の構造であってもよい。例えば、摺動部材4および外輪3の一部に、相補的な嵌合構造を設けて、摺動部材4を外輪3の内周側に嵌合固定するような構造とできる。
外輪3は、摺動部材4の周方向の回り止め部を有することが好ましい。回り止め部により、摺動部材4が、外輪3の内周側に該外輪3に対して回転不能に保持され、回転性能の安定化に繋がる。回り止め部としては、上述のように、外輪3の爪部やその他の部分に、摺動部材4との相補的な嵌合構造を設けて、これを該回り止め部とし、摺動部材4の周方向の回転を不能とさせてもよい。例えば、図10に示すように、外輪3の内周面3cの一部に、摺動部材4の合い口4fの部分と嵌合できる突部(回り止め部3g)を設けることができる。この回り止め部3gは、反負荷側に設ける構成とするのが好ましい。なお、図10は爪部3aが4個の場合の図である。その他、摺動部材4および外輪3の一部に該回転を阻害するピン等を設ける構成としてもよい。
外輪3は、摺動部材4を保持するための構造に作製できるものであれば、その材質は特に限定されず、合成樹脂製や金属製にすることができる。爪部等を弾性変形させてスナップフィット可能とする複雑構造を製造しやすいことから、合成樹脂製とすることが好ましい。外輪3を形成する樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂としては、上記摺動部材と同様にものを使用でき、その中でも、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になることから、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を用いることが好ましい。
外輪3を形成する樹脂組成物において、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。これらの繊維状補強材は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。樹脂組成物に、これらの繊維状補強材を含むことで、外輪が補強され、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。また、上記繊維状補強材の中でも、炭素繊維、ガラス繊維、およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、外輪の高温での弾性率の保持性をより高めることができる。その他、外輪3を形成する樹脂組成物において、必要に応じて上述の固体潤滑剤等の他の添加剤を配合してもよい。
外輪3を形成する樹脂組成物について、そのベース樹脂および補強材等を、摺動部材4を形成する樹脂組成物と同種とすることで、外輪3と摺動部材4との線膨張係数を略同一とでき、破損やズレなどを防止できる。
外輪3を金属製とする場合、金属材料としては、例えば、冷間圧延鋼(SPCC)、肌焼き鋼(SCM)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)などの鉄系金属材料、銅−亜鉛合金、銅−アルミニウム−鉄合金などの銅系金属材料、アルミ−シリコン合金などのアルミニウム系金属材料が挙げられる。
内輪2のみの正面図および軸方向断面図を図6に示す。図6に示すように、内輪2は、外周の曲面2aの軸方向断面が凹状のR形状である。この曲面2aが摺動部材との摺動面となる。このような形状とすることで、内輪2として、既存の深溝玉軸受などの転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を転用して用いることができる。この場合、摺動部材との摺動面となる外周曲面2aが、該転がり玉軸受の内輪転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。また、別途、本発明の滑り軸受用に内輪を製造する必要がなく、製造コストの削減が図れる。
内輪2は、その材質は特に限定されず、金属製や合成樹脂製にすることができる。金属材料としては、通常の転がり軸受の内輪の金属材料(例えば、軸受鋼等)や、上述の外輪3に用いるものが挙げられる。樹脂材料としては、上述の摺動部材に用いるものが挙げられる。
内輪2は、金属の鍛造品とすることが好ましい。鍛造品とすることで、安価で大量生産ができる。特に、内輪2は、焼結金属製とすることが好ましい。焼結金属製とすることで、内輪2および摺動部材4の摺動面に塗布する潤滑剤の保有効果が高くなる。さらに、該焼結金属に潤滑油を含浸した含油焼結金属とすることがより好ましい。含浸された潤滑油と、摺動面に塗布される潤滑剤とにより、長期間にわたり潤滑効果が維持できるなど、相乗効果が期待できる。焼結金属の種類は特に限定されず、例えば、Fe系、あるいはCu系、Fe−Cu系、Cu−Sn系やCu−Fe−Sn系の合金が使用できる。また、これらにカーボン、黒鉛、二硫化モリブデンなどを添加したものも使用できる。これらの焼結金属の中でも、放熱性に優れ、また圧縮成形による製造が容易であり、寸法変化も小さく低コストで生産できることから、CuおよびFeから選ばれた少なくとも一つを主成分とする焼結金属が好ましい。
また、内輪2は、金属の切削加工品とすることが好ましい。旋削加工品とすることで、形状にとらわれることなく、多様な形態の内輪2およびそれに対応する摺動部材4を有する、多品種の滑り軸受とできる。
次に、図2に基づき、内輪2と摺動部材4との摺動面について詳細に説明する。滑り軸受1において、摺動部材4の曲面4aと内輪2の外周の曲面2aとが摺動面である。外輪3に回り止め部を設け、摺動部材4を外輪3に対して回転不能に保持することで、摺動部材4および外輪3が内輪2に対して共回りする。内輪2と外輪3との間には隙間3fがあり、両部材は非接触であるので、内・外輪間の直接の摩擦損失は生じない。
図2に示す例では、内輪2の外周の曲面2aが、その軸方向断面が凹状のR形状である凹曲面であり、摺動部材4の曲面4aが、その軸方向断面が内輪2の外周の曲面2aに対応する凸状のR形状である凸曲面である。このような相補的な形状とすることで、外輪3および摺動部材4と、内輪2との軸方向の位置ずれなどを防止できる。また、摺動部材4の曲面4aを上記のような凸曲面とすることで、上述のように、内輪側に既存の転がり玉軸受用の内輪を利用できる。
図2に示す例では、摺動部材4の曲面4a(凸曲面)は、軸方向中央部の全周に非曲面部4eが形成されている。非曲面部4eは、軸方向断面が直線のフラット形状である。非曲面部4eを形成することで、該非曲面部4eと内輪2の外周の曲面2aとの間に空間部分が確保される。この部分が潤滑剤保持ポケット6となり、該部分に潤滑剤を保持することができる。摺動部材4の曲面4aの軸方向断面が円弧状である場合は、非曲面部4eは、軸方向断面における円弧頂点からの距離が、該円弧半径の2〜15%の長さとすることが好ましい。この範囲とすることで、必要十分な潤滑剤量を保持しながら、摺動部材4の曲面4aと内輪2の外周の曲面2aとが安定して摺接できる。なお、図2に示す例では、非曲面部4eの軸方向断面における円弧頂点からの距離を、摺動部材4の曲面4aの円弧半径の15%としている。
また、摺動部材4が射出成形体である場合、非曲面部4eに型割り面(パーティングライン(PL))を設定することで、PLの突状が内輪2の摺接面である曲面2aと干渉しない。そのため、少なくとも内周側のPL痕の研磨などの後処理を省略することができ、製造が容易となる。
内輪2および摺動部材4の摺動面には、潤滑油やグリースなどの潤滑剤を塗布することが好ましい。本発明の滑り軸受は、上述の樹脂製の摺動部材を内・外輪間に介在させる構成であるので低摩擦特性を有するが、摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減できる。この結果、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くすることができる。潤滑剤を塗布する場合、摺動部材4の摺動面に、上述したような潤滑剤保持ポケット6を形成することが好ましい。潤滑剤保持ポケット6を形成することで、潤滑剤が該潤滑剤保持ポケット6に保持され、長期にわたり摺動面に潤滑剤を安定して供給することができる。
潤滑剤保持ポケット6は、摺動部材4の摺動面、すなわち曲面4aにおける負荷部に配置することが好ましい。負荷部は、摺動面において荷重を最も受ける部分である。潤滑剤保持ポケット6を、潤滑特性に最も重要な軸受負荷部に配置することで、潤滑剤が有効に活用される。図2等に示す態様では、曲面4aの円弧頂点近傍が該負荷部であり、この部分に潤滑剤保持ポケット6が位置している。
摺動部材4の摺動面に形成する潤滑剤保持ポケット6の形状は、図2に示すような非曲面部4eのほか、ディンプル(穴)状、溝状のようなものであってもよい。これらの非曲面部、ディンプル、溝は、複数種類を組み合わせて形成してもよい。また、ディンプルや溝は、任意の個数を設けることができる。上記溝としては、軸方向あるいは周方向の溝とでき、溝の幅は、内周の0.1〜5%、その深さは、曲面4aの軸方向断面が円弧状である場合は該円弧半径の5〜100%とすることが好ましい。上記ディンプルとしては、その直径は、曲面4aの軸方向幅の1〜80%、その深さは、曲面4aの軸方向断面が円弧状である場合は該円弧半径の5〜100%とすることが好ましい。上述の実施態様では、図4に示すように、摺動部材4の合い口4fの対向部に軸方向の溝4gが形成され、該溝4gも含めて潤滑剤保持ポケット6とされている。
図7は、他の態様の溝状の潤滑剤保持ポケットが形成された摺動部材の内周面の一部拡大図である。図7に示す潤滑剤保持ポケット6は、摺動部材4の内周の曲面4aの全周に設けられたハ字型を示す2列の矩形の複数の溝6aから構成され、ハ字の下側が摺動部材4の回転方向に向くように形成されている。摺動部材4の回転時において、摺動部材4と内輪との間に封入されている潤滑剤は、各溝6a内においてハ字の下側から上側に向かって掻き寄せられて移動する。各溝6aにおけるハ字の上側は、摺動部材4の曲面4aの幅方向中央部に位置しているため、上記移動により潤滑剤は該中央部に移動することになる。なお、摺動部材4の回転時とは、摺動部材4が内輪2に対して相対的に回転するときであり、摺動部材4が固定で内輪2が回転する場合も含む。
また、各溝6aは、回転方向側の矩形辺6bから、その対向辺6cに向かって溝が深くなる傾斜溝とすることが好ましい。回転方向側からその反対側に向かって溝を深くする形状とすることで、摺動部材4の回転時において、該傾斜がない場合よりも潤滑剤を掻き寄せやすくなる。
軸受の負荷状況や使用時の軸受回転数等により潤滑特性を考慮して、上記ディンプルや溝を適宜選択し、その大きさや配置位置および個数を決定することで、潤滑剤保持ポケットに充分かつ無駄なく潤滑剤を保持できる。また、摺動部材4が樹脂製であり摺動により摩耗粉が発生するが、潤滑剤保持ポケット6でこの摩耗粉を抱え込むことができるので、低摩擦トルクの回転が維持できる。
本発明の滑り軸受において、内輪2および摺動部材4の摺動面に塗布する潤滑剤であるグリースは、通常、滑り軸受に用いられるグリースであれば特に制限なく用いることができる。グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、脂環式化合物などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。これらの基油は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
また、グリースを構成する増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、PTFE樹脂などのフッ素樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
本発明の滑り軸受は、画像形成装置の高温下で作動する定着ローラなどの支持に使用するため、グリースにも耐熱性が必要となることから、上記の中でも、フッ素化油を基油としフッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素グリース、または、ウレア系化合物を増ちょう剤とするウレアグリースを用いることが好ましい。また、これらを混合したグリースを用いることもできる。なお、上記各グリースには必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。
実施例1
定着ローラ用滑り軸受材であるNTN精密樹脂製ベアリーAS5056(PPS樹脂組成物(PTFE樹脂および黒鉛を配合))を用いて、図4に示す形状(非曲面部4e、合い口4f、および溝4g有り)の摺動部材を射出成形で製造した。また、NTN精密樹脂製ベアリーAS5040(PPS樹脂組成物(ガラス繊維を配合))を用いて、図5に示す形状の外輪を射出成形で製造した。内輪としては、ボールベアリング6805の内輪を転用した。このようにして得た、摺動部材、外輪、内輪を用いて、図2に示す構成で、外形寸法をNTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZと同寸法に設計した滑り軸受を製造した。詳細には、まず、フッ素グリース(NOKクリューバー製NOXLUB BF4023)を内輪の外周の曲面に満遍なく塗布(約5g)し、この内輪に摺動部材を組み付け、次いで、内輪と組み付けた摺動部材を外輪に爪部を引っ掛けて組み付けた。得られた滑り軸受を以下に示す回転トルク試験に供し、回転トルクを求めた。結果を図9に示すとともに、製造コストを考慮した総合判定を表1に示す。
<回転トルク試験>
図8に示す軸加熱式高温ラジアル試験機10を用いて試験軸受11の回転トルクを測定した。軸加熱式高温ラジアル試験機10は、複写機の定着装置の定着ローラを模した定着ローラ12について、その内径からカートリッジヒータ13で加熱し、熱電対14で定着ローラ12の表面温度を所定の温度にコントロールするものである。試験は、試験軸受11をハウジング15内に組み付け、試験軸受11の内輪内径に定着ローラ12を挿入する。ハウジング15の下部より、ボールベアリング17を介して押し上げ、200Nの荷重16を負荷した。定着ローラ12材にアルミニウム(A5052)の旋削加工品(表面粗さRa0.5〜0.7μm)を用い、定着ローラ12の回転数は230rpm、定着ローラ12の表面温度は180℃、試験時間は20時間(h)である。潤滑は、比較例2の場合は、ドライで試験を行なった。この状態で、定着ローラ12を、カップリング18を介して駆動モータ19で回転させた。試験軸受11の回転トルクは、共回りするハウジング15の回転力をロードセル(図示せず)で測定して算出した。
<製造コスト>
製造コスト(算出コスト)については、実施例1を100とした場合の相対評価で数値化し、それぞれ記録した。
<総合判定>
図9の回転トルク試験結果と、表1の製造コストとを考慮して、回転トルクおよび算出コストともに劣るものがない場合は、両者のバランスが良好であると総合判定し「○」印を、回転トルクと算出コストのうちどちらか一つでも劣るものがあれば、両者のバランスが不良であると総合判定し「×」印を、それぞれ記録した。
比較例1
試験軸受として、NTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZを用いて、実施例1と同様の試験および評価を実施した。結果を図9および表1に併記する。
比較例2
試験軸受として、NTN精密樹脂製ベアリーAS5056を用いてNTN製定着ローラ用ボールベアリング:止め輪付6805ZZと同寸法に射出成形した滑り軸受を用いて、実施例1と同様の試験および評価を実施した。結果を図9および表1に併記する。
Figure 0005717065
図9の回転トルクの比較試験の結果、実施例1の滑り軸受は、比較例1のボールベアリングと比べて回転トルクが若干大きいものの、比較例2の滑り軸受と比べて回転トルクの大幅な軽減が確認された。表1からも明らかなように、実施例1の滑り軸受は、ボールベアリング、従来の滑り軸受より総合的に優れていることがわかる。
本発明の滑り軸受は、摩擦トルクが低く自己断熱性効果を有しながら、ボールベアリングと比較して部品点数が少なく構造が簡単であり、製造も容易であり、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有するので、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の加熱ローラや加圧ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受として好適に利用できる。
1 滑り軸受
2 内輪
2a 曲面
3 外輪
3a 爪部
3b 端面側内面
3c 内周面
3d 開口部
3e フランジ
3f 隙間
3g 回り止め部
4 摺動部材
4a 曲面
4b 一端面
4c 他端面
4d 外周面
4e 非曲面部
4f 合い口
4g 溝
5 軸受孔
6 潤滑剤保持ポケット
6a 溝
6b 矩形辺
6c 対向辺
10 軸加熱式高温ラジアル試験機
11 軸受試験片
12 定着ローラ
13 カートリッジヒータ
14 熱電対
15 ハウジング
16 荷重
17 ボールベアリング
18 カップリング
19 駆動モータ

Claims (18)

  1. 内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、
    前記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、
    前記摺動部材は、前記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有する樹脂組成物の成形体であり、
    前記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、前記摺動部材の曲面が凸曲面であり、
    前記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されており、
    前記外輪は、前記内輪とは非接触であり、内周側で前記摺動部材を保持する1部材で構成されることを特徴とする滑り軸受。
  2. 前記摺動部材が、環状体であることを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
  3. 前記内輪が、転がり軸受用の内輪であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の滑り軸受。
  4. 前記外輪が、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、前記摺動部材は前記開口部から該外輪に組み込まれて前記爪部で固定されることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の滑り軸受。
  5. 前記摺動部材が、1ヶ所の合い口を有する環状体であることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項4記載の滑り軸受。
  6. 前記摺動部材が、複数に等分割される環状体であることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項4記載の滑り軸受。
  7. 前記外輪が、前記摺動部材の周方向の回り止め部をすることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の滑り軸受。
  8. 前記摺動部材を形成する樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載の滑り軸受。
  9. 前記摺動部材を形成する樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであり、
    前記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8記載の滑り軸受。
  10. 前記外輪が、樹脂組成物の成形体であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項記載の滑り軸受。
  11. 前記外輪を形成する樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする請求項10記載の滑り軸受。
  12. 前記外輪を形成する樹脂組成物が、繊維状補強材を含み、該繊維状補強材が、炭素繊維、ガラス繊維、およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項11記載の滑り軸受。
  13. 前記摺動部材が、前記樹脂組成物の射出成形体であり、前記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の滑り軸受。
  14. 前記内輪および前記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の滑り軸受。
  15. 前記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項14記載の滑り軸受。
  16. 前記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする請求項14または請求項15記載の滑り軸受。
  17. 前記外輪が、外周にフランジを有することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項記載の滑り軸受。
  18. 前記内輪が、金属の鍛造品または切削加工品であることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項記載の滑り軸受。
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