JP2013029181A - 滑り軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コスト、簡易な構造であるとともに、断熱スリーブなどが不要で摩擦トルクも低く維持でき、さらに、内輪に摺動部材が抱き付くことに起因する摩擦係数の上昇や摩耗の発生を防止し得る滑り軸受を提供する。
【解決手段】滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する樹脂組成物の成形体からなる摺動部材4とを備えてなり、内輪2は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有し、摺動部材4は、1ヶ所の合い口部4aを有する環状体であり、内周に内輪2の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有し、外輪3は、内周側で摺動部材4を保持し、外輪3の内周面に設けた突起3aが摺動部材4の合い口部4aに嵌合する。
【選択図】図1
【解決手段】滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する樹脂組成物の成形体からなる摺動部材4とを備えてなり、内輪2は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有し、摺動部材4は、1ヶ所の合い口部4aを有する環状体であり、内周に内輪2の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有し、外輪3は、内周側で摺動部材4を保持し、外輪3の内周面に設けた突起3aが摺動部材4の合い口部4aに嵌合する。
【選択図】図1
Description
本発明は滑り軸受に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の定着ローラや加圧ローラなどの加熱されるローラ(ヒートローラ)の支持に用いる滑り軸受に関する。
一般に、画像形成装置は、その定着装置において、光学装置で形成された静電潜像にトナーを付着させ、このトナー像をコピー用紙に転写し、さらに定着させるものである。この定着工程では、ヒータを内蔵した定着ローラと加圧ローラとの間にトナー像を通過させる。これにより、トナー像からなる転写像がコピー用紙上に加熱融着によって定着される。
定着ローラは、線状ないし棒状のヒータを軸心部に内蔵した軟質の金属製であり、両端に小径の軸部が突出した円筒状に形成されている。定着ローラは、アルミニウム、またはアルミニウム合金(A5056、A6063)などの熱伝導性に優れた金属材料からなる。定着ローラの表面は、旋削や研磨などで仕上げられる。また、定着ローラ表面には、フッ素樹脂などの非粘着性の高い樹脂がコーティングまたは被覆してある。定着ローラの表面の温度は、ヒータにより180〜250℃前後に加熱される。
加圧ローラは、シリコンゴムなどで被覆された鉄材または軟質材からなり、コピー用紙を定着ローラに押圧して回転駆動するものである。加圧ローラは、加熱ローラからの伝熱により、約70〜150℃に加熱される。あるいは、定着ローラと同様に内部にヒータが設けられ150〜250℃前後に加熱される。以降、上記した定着ローラ、加圧ローラなどのように、内蔵されたヒータ、または、他部材からの伝熱により加熱されるローラを「ヒートローラ」と記す。
高温に加熱されるヒートローラは、両端の軸部で深溝玉軸受からなるボールベアリングを介してハウジングに回転自在に支持されており、このボールベアリングとヒートローラの軸部との間に、合成樹脂などからなる断熱スリーブが介在させてある。これは、ヒートローラの加熱時に両端部のボールベアリングから熱が逃げてヒートローラの軸方向に沿う温度分布が不均一になるのを防止するのとともに、軸受の高温劣化を防止するためである。
また、ヒートローラの支持軸受としては、樹脂製滑り軸受を用いるものがある。例えば、滑り軸受を、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの合成樹脂から形成しているものがある。具体例としては、耐熱性および機械的強度の優れたPPS樹脂などをリング状の軸受本体として、その摺動面にフッ素樹脂層を接着するか、または、フッ素樹脂を配合したPPS樹脂などで滑り軸受全体を一体成形する技術が知られている(特許文献1参照)。
樹脂製滑り軸受を使用する場合、樹脂製滑り軸受自体が断熱性を有するため、一般的には、該樹脂製滑り軸受とヒートローラの軸部との間に断熱スリーブを介在させない。通常、画像形成装置の定着装置において、中級機から高級機はヒートローラ軸受にボールベアリングが使用され、普及機は樹脂製滑り軸受が使用されている。
しかしながら、上記した画像形成装置における定着装置のヒートローラ用の軸受である深溝玉軸受は、構造が複雑で製造コストも高価である。また、温度分布の不均一化、軸受の高温劣化を防止するために、上述の樹脂製断熱スリーブが必要となり、さらに高価になる。また、ヒートローラの支持軸の取り付け精度誤差やモーメント荷重などに起因する支持軸の撓みにより、軸受が破損するおそれがある。
これに対して、PPS樹脂などの樹脂製滑り軸受は、断熱スリーブを介在させることなく使用でき、構造が簡単で射出成形できることから、低コストで生産できるという利点を有する。しかし、この樹脂製滑り軸受は、深溝玉軸受と比べて、摩擦トルクが約2〜5倍程度も高い。特に、ヒートローラの軸受摺動面粗さが粗いと、さらに摩擦トルクが大きくなり、同時に摩耗も大きくなり仕様を満足できなくなるおそれがある。
また、摩擦トルクを小さくするため、軸受摺動面にグリースを塗布するとしても、荷重を強く受ける部分などではグリース不足となり、仕様を満足できなくなる場合がある。
また、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する摺動部材とを備えてなる滑り軸受とする場合、内輪に摺動部材が抱き付き、摩擦係数が上昇するおそれがある。内輪に摺動部材が抱き付く原因は、装置の稼動により雰囲気温度が上昇し、それとともに滑り軸受が加熱され、その後装置の停止により滑り軸受が冷却されるという日常的使用において、熱膨張した後で収縮することにより摺動部材の合い口部が狭く変形することで発生するものである。内輪に摺動部材が抱き付くことで、摩擦係数が上昇する。また、グリースを摺動面から押し出し、それにより、さらに摩擦係数が上昇し、摩耗が発生するおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、低コスト、簡易な構造であるとともに、断熱スリーブなどが不要で摩擦トルクも低く維持でき、さらに、内輪に摺動部材が抱き付くことに起因する摩擦係数の上昇や摩耗の発生を防止し得る滑り軸受の提供を目的とする。
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する樹脂組成物の成形体からなる摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、上記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、1ヶ所の合い口部を有する環状体であり、内周に上記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有し、上記外輪は、内周側で上記摺動部材を保持し、上記外輪の内周面に設けた突起が上記摺動部材の合い口部に嵌合することを特徴とする。
上記合い口部は、上記環状体の両端部において、それぞれの端部断面の軸方向一方側に突合せ面を有し、少なくとも一方の端部断面の軸方向反対側に上記外輪の突起が嵌合する段部を有する形状であることを特徴とする。
上記段部からなる上記外輪の突起との嵌合部分の周方向幅が、上記外輪の突起の周方向幅よりも大きいことを特徴とする。
上記突合せ面間の隙間幅が、上記段部からなる上記外輪の突起との嵌合部分と、上記外輪の突起との嵌合隙間幅よりも小さいことを特徴とする。
上記摺動部材を該滑り軸受に組み入れない状態における上記突合せ面間の隙間幅と、上記摺動部材を該滑り軸受に組み入れた状態における上記突合せ面間の隙間幅とが同じであることを特徴とする。
上記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、およびポリイミド(PI)樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする。
上記樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。また、上記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであり、上記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
上記内輪が、金属製であることを特徴とする。また、上記内輪が、転がり玉軸受用の内輪であることを特徴とする。
上記外輪が、樹脂製であることを特徴とする。また、上記外輪が、軸受端面と円筒部とフランジとから構成され、該円筒部の内周側で上記摺動部材を保持することを特徴とする。また、上記外輪が、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、上記摺動部材は上記開口部から該外輪に組み込まれて上記爪部で固定されることを特徴とする。
上記内輪と上記外輪とが、非接触に保持されていることを特徴とする。
上記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、上記摺動部材の曲面が凸曲面であることを特徴とする。また、上記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されていることを特徴とする。また、上記摺動部材が、上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする。
上記内輪および上記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されていることを特徴とする。また、上記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。また、上記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする。
本発明の滑り軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する樹脂組成物の成形体からなる摺動部材とを備えてなり、上記内輪は、外周に曲面を内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、上記摺動部材は、1ヶ所の合い口部を有する環状体であり、内周に内輪外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有し、上記外輪は、内周側で摺動部材を保持し、該外輪の内周面に設けた突起が摺動部材の合い口部に嵌合するので、摺動部材の内輪への組付けが容易であり、また、摺動部材と外輪とが相対回転することが無く回転トルクが安定し、さらに、内輪に摺動部材が抱き付かず、回転トルクおよび摩擦係数の上昇や、摩耗の発生を防止できる。
また、ボールベアリング(転がり玉軸受)と比較して部品点数が少なく構造が簡単である。そのため、製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。さらに、上記摺動部材が樹脂組成物の成形体であるので、ボールベアリングにはない自己断熱性効果を有し、別途、断熱スリーブなどが不要となる。また、内輪の外周曲面と、環状体である摺動部材の内周曲面とが対向接触して摺動する態様であるため、相手材である支持軸と摺動する樹脂製滑り軸受と異なり、摩擦トルクが支持軸の表面粗さや材質等に依存せず、このような態様の従来の樹脂製滑り軸受よりも摩擦トルクを低くできる 。これらの結果、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有する。
上記合い口部の環状体の両端部において、それぞれの端部断面の軸方向一方側に突合せ面を有し、少なくとも一方の端部断面の軸方向反対側に外輪の突起が嵌合する段部を有する形状にし、上記段部からなる外輪の突起との嵌合部分の周方向幅を、上記外輪の突起の周方向幅よりも大きくすることで、外輪に対して摺動部材の組み込み性が向上する。
上記突合せ面間の隙間幅を、上記段部からなる外輪の突起との嵌合部分と、外輪の突起との嵌合隙間幅よりも小さくすることで、加熱膨張によって展開長さが長くなる際に、合い口隙間が先に閉じるため、摺動部材の内輪への抱き付きを防止し得る。
上記摺動部材を該滑り軸受に組み入れない状態における上記突合せ面間の隙間幅と、上記摺動部材を該滑り軸受に組み入れた状態における上記突合せ面間の隙間幅とを同じにすることで、回転トルクに悪影響を与えない。
上記樹脂組成物のベース樹脂を、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂にすることで、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になる。このため、ヒートローラの支持軸受として好適に利用できる。
上記樹脂組成物に固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。また、上記樹脂組成物に繊維状補強材を配合することで、摺動部材を補強するとともに耐摩耗性が高くなり、さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
上記固体潤滑剤を、PTFE樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つにすることで、潤滑特性に優れ、摩擦トルクがより安定する。また、上記繊維状補強材を、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つとすることで、摺動相手材となる内輪の摩耗が抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
上記内輪を金属製にすることで、滑り軸受自体の機械的強度が高くなる。また、上記内輪として転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を利用することで、摺動部材との摺動面となる外周曲面が、該内輪の転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。
上記外輪を樹脂製にすることで、滑り軸受の軽量化が図れる。また、断熱性に優れる。また、上記外輪を軸受端面と円筒部とフランジとから構成することで、定着装置等の装置内での軸方向の位置決め部材にすることができる。
上記外輪の構造を、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、上記摺動部材が上記開口部から該外輪に組み込まれて上記爪部で固定される構造にすることで、摺動部材を外輪にスナップフィットで容易に組み込んで製造できる。該構造により、摺動部材が外輪の内部に保持され、一体化される。このようなスナップフィット可能な構造とすることで、より製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。
上記内輪と上記外輪とが、非接触に保持されている構成にすることで、内・外輪間の摩擦損失をなくすことができる。
上記内輪の外周の曲面を凹曲面とし、上記摺動部材の曲面を該凹曲面と対向接触して摺動する凸曲面とすることで、内輪と外輪の軸方向の位置ずれなどを防止できる。
上記摺動部材の凸曲面において、軸方向中央部の全周に非曲面部を形成することで、この部分に潤滑剤を保持することができる。また、上記摺動部材が上記樹脂組成物の射出成形体であり、上記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されることで、摺動部材の射出成形が容易であり、パーティングラインの突状が内輪の摺接面と干渉しない。
上記内輪および摺動部材の摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減され、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くすることができる。特に、上記潤滑剤をフッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つとすることで、高温下においても安定した潤滑性能、低摩擦トルクを有する。また、上記摺動部材の摺動面に潤滑剤保持ポケットを形成することで、潤滑剤を摺動面に安定的に供給することができる。
本発明の滑り軸受の一実施例を図1および図2により説明する。図1は本発明の滑り軸受の正面図および軸方向断面図であり、図2は図1の軸方向断面図における一部拡大図である。図1および図2に示すように、滑り軸受1は、内輪2と、外輪3と、この内輪2と外輪3との間に介在する摺動部材4とを備えてなる。この滑り軸受1は、ラジアル軸受である。摺動部材4は、樹脂組成物の成形体であり、1ヶ所の合い口部4aを有する環状体である。外輪3は、内周側で摺動部材4を覆うように保持している。外輪3の内周面に設けた突起3aが、摺動部材の合い口部4aに嵌合している。外輪3の突起3aが、摺動部材4の合い口部4aに嵌合することで、摺動部材4が該外輪3に対して周方向に回転不能に保持され、また、摺動部材4が内輪2に抱き付かない。
図2に示すように、内輪2は、外周に曲面2aを、内周に支持軸と嵌合する軸受孔5をそれぞれ有している。摺動部材4は、その内周に、内輪2の外周の曲面2aに対向接触して摺動する曲面4bを有する。外輪3は、軸受端面3bと円筒部3cとフランジ3dとから構成される。摺動部材4は、外輪3の一端面に設けられた開口部3eの縁に形成された複数の爪部3fが、摺動部材4の端面の凹部4cに引っ掛けられることで、外輪3に固定されている。
摺動部材の正面図および軸方向断面図を図3に、摺動部材の斜視図を図4にそれぞれ示す。図3に示すように、摺動部材4は、1ヶ所の合い口部4aを有する環状体であり、内周に、内輪の外周の曲面に対向接触する曲面4bを有する。摺動部材4は、樹脂製(樹脂組成物に成形体)であるので、内輪を金属製とした場合、該内輪とは線膨張係数が異なる。この場合であっても、合い口部4aを有するので、高温時の熱膨張を該合い口部4aに逃すことができ、応力集中による摺動部材の破損を防止できる。また、摺動部材4を内輪に弾性変形により組み込む際に、合い口部4aが広がるため、組み込み性に優れる。
図4に示すように、合い口部4aは、環状体の両端部4d、4eにおいて、それぞれの端部断面の軸方向一方側に突合せ面4f、4gを有する。また、それぞれの端部断面の軸方向反対側に、外輪の突起が嵌合する段部4h、4iを有する。段部4hおよび4iからなる嵌合(窪み)部分4jが、外輪の内周面の突起と嵌合する部分である。図示する例では、突合せ面、段部は、それぞれの端部断面を軸方向で略二等分するように形成されているが、必要に応じて、一方の軸方向幅を大きくする等してもよい。また、嵌合部分4jが、外輪の突起と嵌合できる形状であれば、段部4h、4iのそれぞれの周方向長さは任意に設定でき、環状体の一方の端部にのみ段部を形成する態様でもよい。
また、摺動部材4において、内周の展開長さ中央に窪み4kを形成することが好ましい。この窪み4kを形成することで、内輪に組み込む際に、摺動部材4を容易に拡げることができる。
摺動部材4は、ヒートローラ等による加熱によって膨張する。また、外輪やハウジングによって径寸法が拘束されているので、上記膨張により、展開長さが長くなる。加熱膨張によって展開長さが長くなる際に、突合せ面4f、4g間の隙間(合い口隙間)が閉じるように、合い口隙間幅を狭く設定しておくことで、加熱によって合い口隙間が閉じると、摺動部材4には周方向に圧縮応力が発生し、クリープが生じる。このため、摺動部材4は、冷却されても内径寸法が変化せず、内輪に抱き付くことがない。この結果、回転トルクの変動が生じない。
また、摺動部材4は、図8に示すような合い口部4aを有する環状体としてもよい。この形状の摺動部材4のみを用いる場合(合い口部4aに突起等の嵌合させない態様)では、以下の懸念点を有する。通常、合い口隙間を広く設定しているため、加熱膨張によって展開長さが長くなっても合い口隙間が閉じることがない。そのため、摺動部材の周方向に圧縮応力は発生せず、クリープは生じない。また、ヒートローラの熱によって加熱されることで成形応力が緩和され、合い口隙間が縮まる方向に変形する。このため、冷却されると摺動部材の内径寸法は小さく変化し、内輪に抱き付くことになる。この結果、回転トルクが高くなる。
図8に示す摺動部材を使用した場合の抱き付き程度の差を下記の試験により確認した。外輪としてPPS樹脂組成物の成形体(PPS樹脂60+ガラス繊維40(wt%))、摺動部材としてPPS樹脂組成物の成形体(PPS樹脂60+PTFE樹脂35+黒鉛5(wt%))、内輪として薄肉形深溝玉軸受#6805用内輪(材質:SUJ2)をそれぞれ用いて、試験用滑り軸受を作成した。試験用滑り軸受Aは、外輪の内周面に摺動部材の合い口部の幅と同じ幅の突起を有し突起と摺動部材の合い口部とが嵌合されたものであり、試験用滑り軸受Bは、外輪の内周面に突起を有さないものである。これらの試験用滑り軸受を用いて、温度:180度、荷重:1.8MPa、速度:13.2m/min、運転時間:20時間、潤滑剤:NOKクリューバーBF4023の条件で運転試験を行ない、動摩擦係数の経時変化を記録した。結果を図10(試験用滑り軸受A)、図11(試験用滑り軸受B)にそれぞれ示す。図10、図11において横軸は経過時間(h)、縦軸は動摩擦係数である。
図10に示すように、試験用滑り軸受Aでは、動摩擦係数が低く一定に維持されている。これは、突合せ面間の隙間が外輪突起により拘束されて、摺動部材が内輪に抱き付かないためだと考えられる。一方、図11に示すように、試験用滑り軸受Bでは、動摩擦係数が高く、変動も大きい結果となっている。これは、合い口隙間が拘束されずに変形により摺動部材が内輪に抱き付いたためだと考えられる。
本実施例では評価試験につき、摺動部材の合い口部を図8に示す形状で行なったが、この場合は、隙間管理がシビアになり、組立性が低下するおそれがあるので、量産する場合には、図3および図4に示す形状の摺動部材にすることが好ましい。
摺動部材4は、樹脂組成物の成形体である。該樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂の種類は特に限定されないが、少なくとも該滑り軸受の使用条件(耐熱性、機械的強度など)に見合う特性を有する合成樹脂である必要がある。また、射出成形可能な合成樹脂であれば、製造が容易であり、寸法精度も均一にできるので好ましい。
摺動部材4を成形する樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド6−6(PA66)樹脂、ポリアミド6−10(PA610)樹脂、ポリアミド6−12(PA612)樹脂、ポリアミド4−6(PA46)樹脂、ポリアミド9−T(PA9T)樹脂、ポリアミド6−T(PA6T)樹脂、ポリメタキシレンアジパミド(ポリアミドMXD−6)樹脂などのポリアミド(PA)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂などの射出成形可能なフッ素樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、射出成形可能なPI樹脂などが挙げられる。なお、各ポリアミド樹脂において、数字はアミド結合間の炭素数を表し、Tはテレフタル酸残基を表す。これらの各合成樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
これらの合成樹脂の中で、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になることから、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂で摺動部材を成形し、内・外輪は金属製とすることで、画像形成装置の高温下で使用する定着ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受にも好適に使用できる。
摺動部材4を成形する樹脂組成物において、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。これらの繊維状補強材は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。樹脂組成物に、これらの繊維状補強材を含むことで、摺動部材が補強されるとともに耐摩耗性が高くなる。さらに、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。
上記繊維状補強材の中でも、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材における上記補強効果を維持しながら、摺動相手材となる内輪の摩耗を抑制できる。また、摺動部材の耐摩耗性および高温での弾性率の保持性をより高めることができる。
摺動部材4を成形する樹脂組成物において、PTFE樹脂粉末、黒鉛、二硫化モリブデン、ポリイミド樹脂やフェノール樹脂や全芳香族ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂粉末などの固体潤滑剤を配合することができる。これらの固体潤滑剤は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。固体潤滑剤を配合することで、摩擦トルクが低減される。
上記固体潤滑剤の中でも、PTFE樹脂粉末、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つを配合することが好ましい。これらを用いることで、摺動部材の潤滑特性が優れ、摩擦トルクがより安定する。
外輪3のみの正面図および軸方向断面図を図5に示す。図5に示すように、外輪3は、軸受端面3bと円筒部3cとフランジ3dとから構成され、内周側で摺動部材を覆うように保持するものである。外輪3のフランジ3dは、一方の軸方向端部の外周全周に設けられている。フランジ3dを設けることで、外輪3の該軸方向端部の機械的強度に優れ、また、定着装置等の装置内での軸方向の位置決め部材にすることができる。また、外輪3は、軸方向の一端面に開口部3eを、該開口部3eの縁に爪部3fをそれぞれ有し、摺動部材は開口部3eから該外輪3に組み込まれて爪部3fで固定される。爪部3fを摺動部材の凹部に引っ掛けることによって、摺動部材と外輪3とが一体的に保持され、両部材の軸方向の位置ずれを防止できる。
外輪3の開口部3eの縁に形成された爪部3fの形状は、軸受使用時において、摺動部材が外れないように固定して保持できる形状であれば任意の形状にすることができる。図2および図5では、爪部3fと凹部4cは、周方向に均等に3箇所としているが、外輪3と摺動部材4を保持できる態様であれば、任意の形成位置および個数にすることができる。安定して摺動部材を保持するため、爪部3fおよび凹部4cは、好ましくは2箇所以上、より好ましくは3〜6箇所とする。なお、爪部3fを複数形成する場合では、その形成位置は、周方向で等間隔にすることが好ましい。
外輪3の構造を、上記のような爪部等を設けたスナップフィット可能な構造とすることで、製造が容易となり、より製造工程、組立時間が短縮でき、安価に提供できる。また、外輪3は、摺動部材を保持できる構造であれば、上記爪部を用いる構造以外の構造であってもよい。
外輪3の内周面には摺動部材4の合い口部4aの嵌合部分4j(図4参照)と嵌合する突起3aが形成されている。突起3aは、摺動部材の嵌合部分4jと嵌合する部分であるため、該嵌合部分4jとの関係で形状および形成位置が決定する。
外輪3は、摺動部材4を保持するための構造に作製できるものであれば、その材質は特に限定されず、樹脂製や金属製にすることができる。爪部等を弾性変形させてスナップフィット可能とする複雑構造を製造しやすいことから、樹脂製とすることが好ましい。外輪3を形成する樹脂組成物のベース樹脂となる合成樹脂としては、上記摺動部材と同様にものを使用でき、その中でも、耐熱性に優れ、200℃程度まで使用可能になることから、PPS樹脂、PEEK樹脂、PAI樹脂、およびPI樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を用いることが好ましい。
外輪3を形成する樹脂組成物において、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維状補強材を配合することができる。これらの繊維状補強材は、1種類を配合しても2種類以上を組み合わせて配合してもよい。樹脂組成物に、これらの繊維状補強材を含むことで、外輪が補強され、高弾性化によって、より高温環境での使用が可能となる。その他、外輪3を形成する樹脂組成物において、必要に応じて上述の固体潤滑剤等の他の添加剤を配合してもよい。
外輪3を形成する樹脂組成物について、そのベース樹脂および補強材等を、摺動部材を形成する樹脂組成物と同種とすることで、外輪3と摺動部材との線膨張係数を略同一とでき、破損やずれなどを防止できる。
外輪3を金属製とする場合、金属材料としては、例えば、冷間圧延鋼(SPCC)、肌焼き鋼(SCM)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)などの鉄系金属材料、銅−亜鉛合金、銅−アルミニウム−鉄合金などの銅系金属材料、アルミ−シリコン合金などのアルミニウム系金属材料が挙げられる。
内輪2のみの正面図および軸方向断面図を図6に示す。図6に示すように、内輪2は、外周の曲面2aの軸方向断面が凹状のR形状である。この曲面2aが摺動部材との摺動面となる。このような形状とすることで、内輪2として、既存の深溝玉軸受などの転がり玉軸受(ボールベアリング)用の内輪を転用することができる。この場合、摺動部材との摺動面となる外周曲面2aが、該転がり玉軸受の内輪転走面であり、高精度であるため、回転性能の安定化に繋がる。また、別途、本発明の滑り軸受用に内輪を製造する必要がなく、製造コストの削減が図れる。
内輪2は、その材質は特に限定されず、金属製や樹脂製にすることができる。金属材料としては、通常の転がり軸受の内輪の金属材料(例えば、軸受鋼等)や、上述の外輪に用いるものが挙げられる。樹脂材料としては、上述の摺動部材に用いるものが挙げられる。滑り軸受自体の機械的強度の向上が図れることから、内輪2を金属製とすることが好ましい。
また、内輪2は、焼結金属製とすることもできる。焼結金属製とすることで、内輪2および摺動部材の摺動面に塗布する潤滑剤の保有効果が高くなる。さらに、該焼結金属に潤滑油を含浸した含油焼結金属とすることがより好ましい。含浸された潤滑油と、摺動面に塗布される潤滑剤とにより、長期間にわたり潤滑効果が維持できるなど、相乗効果が期待できる。焼結金属の種類は特に限定されず、例えば、Fe系、あるいはCu系、Fe−Cu系、Cu−Sn系やCu−Fe−Sn系の合金が使用できる。また、これらにカーボン、黒鉛、二硫化モリブデンなどを添加したものも使用できる。これらの焼結金属の中でも、放熱性に優れ、また圧縮成形による製造が容易であり、寸法変化も小さく低コストで生産できることから、CuおよびFeから選ばれた少なくとも一つを主成分とする焼結金属が好ましい。
図1および図2に基づいて、滑り軸受の組み立て順を説明する。まず、内輪2に摺動部材4を弾性変形により嵌め込み、内輪2の外周の曲面2aと摺動部材4の曲面4bとを合せる。次いで、摺動部材4の合い口部4aの嵌合部分4jに、外輪3の内周面に設けた突起3aを嵌合するように組み込み、滑り軸受を一体としている。なお、摺動面にグリース等の潤滑剤を塗布する場合は、摺動部材を内輪に組み込む前に、予め塗布しておくことが好ましい。
図7に基づいて、上記嵌合部分の隙間幅について説明する。図7は、外輪の突起3aと、摺動部材4の合い口部との嵌合部分の拡大図である。段部4hおよび4iからなる嵌合部分4jの周方向幅W2は、外輪の突起3aの周方向幅W3よりも大きいことが好ましい。すなわち、W2=W3とはしない。これにより、外輪に対する摺動部材の組み込み性が向上する。一方、突起3aの周方向幅W3に対して嵌合部分4jの周方向幅W2が大きすぎると、がたつきが大きくなるため、嵌合部分4jの周方向幅W2は、突起3aの周方向幅W3よりも僅かに大きくすることが好ましい。具体的には、0.3〜0.6mm程度大きくすることが好ましい。
また、突合せ面4f、4g間の隙間幅(合い口隙間幅)W1が、嵌合部分4jと突起3aとの嵌合隙間幅(W4+W5)よりも小さいことが好ましい。これにより、加熱膨張によって展開長さが長くなる際に、合い口隙間が先に閉じるので、該隙間を狭く設定しておくことで摺動部材の内輪への抱き付きを防止し得る。なお、この合い口隙間は、他部材と嵌合等する部分ではないため、寸法管理は容易であり、狭く設定することも容易である。また、合い口隙間が先に閉じて抱き付きを防止するので、嵌合部分4jと突起3aとの嵌合隙間幅(W4+W5)については、シビアな隙間管理が不要になる。この構成において、上記したように、嵌合部分4jの周方向幅W2を、突起3aの周方向幅W3よりも大きくすることで、シビアな隙間管理を必要とせずに、外輪に対する摺動部材の組み込み性を確保しながら回転トルクの変動が防止できる。
また、摺動部材4を該滑り軸受に組み入れない状態における突合せ面4f、4g間の隙間幅W1と、摺動部材を該滑り軸受に組み入れた状態における上記突合せ面間の隙間幅W1とを同じにすることが好ましい。これにより、摺動部材4と内輪との嵌め合い隙間が均一となり、回転トルクが大きくなること、変動すること等を防止できる。
図2に基づき、内輪2と摺動部材4との摺動面について詳細に説明する。滑り軸受1において、摺動部材4の曲面4bと内輪2の外周の曲面2aとが摺動面であり、摺動部材4は外輪3に回転不能に保持されているので、摺動部材4および外輪3が内輪2に対して相対的に共回りする。
内輪2と摺動部材4とが接触し、内輪2と外輪3とは隙間3gを設けて非接触とすることが好ましい(図2参照)。このような構成とすることで、内・外輪間の摩擦損失をなくすことができる。
図2に示す例では、内輪2の外周の曲面2aが、その軸方向断面が凹状のR形状である凹曲面であり、摺動部材4の曲面4bが、その軸方向断面が内輪2の外周の曲面2aに対応する凸状のR形状である凸曲面である。このような相補的な形状とすることで、外輪および摺動部材と、内輪との軸方向の位置ずれなどを防止できる。また、摺動部材4の曲面4bを上記のような凸曲面とすることで、上述のように、内輪側に既存の転がり玉軸受用の内輪を利用できる。
図2に示す例では、摺動部材4の曲面4b(凸曲面)は、軸方向中央部の全周に非曲面部4mが形成されている。非曲面部4mは、軸方向断面が直線のフラット形状である。非曲面部4mを形成することで、該非曲面部4mと内輪2の外周の曲面2aとの間に空間部分が確保される。この部分が潤滑剤保持ポケット6となり、該部分に潤滑剤を保持することができる。摺動部材4の曲面4bの軸方向断面が円弧状である場合は、非曲面部4mは、軸方向断面における円弧頂点からの距離が、該円弧半径の2〜15%の長さとすることが好ましい。この範囲とすることで、必要十分な潤滑剤量を保持しながら、摺動部材4の曲面4bと内輪2の外周の曲面2aとが安定して摺接できる。なお、図2に示す例では、非曲面部4mの軸方向断面における円弧頂点からの距離を、摺動部材4の曲面4bの円弧半径の15%としている。
また、摺動部材4が射出成形体である場合、非曲面部4mに型割り面(パーティングライン(PL))を設定することで、PLの突状が内輪2の摺接面である曲面2aと干渉しない。そのため、少なくとも内周側のPL痕の研磨などの後処理を省略することができ、製造が容易となる。
内輪2および摺動部材4の摺動面には、潤滑油やグリースなどの潤滑剤を塗布することが好ましい。本発明の滑り軸受は、上述の樹脂製の摺動部材を内・外輪間に介在させる構成であるので低摩擦特性を有するが、摺動面に潤滑剤を塗布することで、摩擦トルクがさらに低減できる。この結果、摺動部材の焼き付きを防止でき、性能寿命を大幅に長くすることができる。潤滑剤を塗布する場合、摺動部材4の摺動面に、上述したような潤滑剤保持ポケット6を形成することが好ましい。潤滑剤保持ポケット6を形成することで、潤滑剤が該潤滑剤保持ポケット6に保持され、長期にわたり摺動面に潤滑剤を安定して供給することができる。
潤滑剤保持ポケット6の形状は、図2に示すような非曲面部4mのほか、ディンプル状、溝状のようなものであってもよい。図9に溝状の潤滑剤保持ポケットの例を示す。図9は、溝状の潤滑剤保持ポケットが形成された摺動部材の内周面の一部拡大図である。図9に示す潤滑剤保持ポケット6は、摺動部材4の内周の曲面4bの全周に設けられたハ字型を示す2列の矩形の複数の溝6aから構成され、ハ字の下側が摺動部材4の回転方向に向くように形成されている。摺動部材4の回転時において、摺動部材4と内輪との間に封入されている潤滑剤は、各溝6a内においてハ字の下側から上側に向かって掻き寄せられて移動する。各溝6aにおけるハ字の上側は、摺動部材4の曲面4aの幅方向中央部に位置しているため、上記移動により潤滑剤は該中央部に移動することになる。なお、摺動部材4の回転時とは、摺動部材4が内輪に対して相対的に回転するときであり、摺動部材4が固定で内輪が回転する場合も含む。
また、各溝6aは、回転方向側の矩形辺6bから、その対向辺6cに向かって溝が深くなる傾斜溝とすることが好ましい。回転方向側からその反対側に向かって溝を深くする形状とすることで、摺動部材4の回転時において、該傾斜がない場合よりも潤滑剤を掻き寄せやすくなる。
以上のような潤滑剤保持ポケット6を摺動部材4の摺動面に形成することで、滑り軸受が荷重を最も受ける滑り軸受幅方向の中央部において、潤滑剤による膜が容易に継続的に形成され、滑らかで、かつ低摩擦トルクの回転が得られる。なお、潤滑剤保持ポケット6として、図2に示す非曲面部4mと、図9に示す複数の溝6aとを組み合わせて形成するなど、複数の構成の組み合わせとしてもよい。
本発明の滑り軸受において、内輪2および摺動部材4の摺動面に塗布する潤滑剤であるグリースは、通常、滑り軸受に用いられるグリースであれば特に制限なく用いることができる。グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、脂環式化合物などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。これらの基油は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
また、グリースを構成する増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、PTFE樹脂などのフッ素樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
本発明の滑り軸受は、画像形成装置の高温下で作動する定着ローラなどの支持に使用するため、グリースにも耐熱性が必要となることから、上記の中でも、フッ素化油を基油としフッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素グリース、または、ウレア系化合物を増ちょう剤とするウレアグリースを用いることが好ましい。また、これらを混合したグリースを用いることもできる。なお、上記各グリースには必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。
本発明の滑り軸受は、内輪に摺動部材が抱き付くことに起因する摩擦係数の上昇や摩耗の発生を防止でき、摩擦トルクが低く自己断熱性効果を有しながら、ボールベアリングと比較して部品点数が少なく構造が簡単であり、摩擦トルクと製造コストの両面において、ボールベアリングと従来の樹脂製滑り軸受の中間特性を有するので、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置における定着装置の加熱ローラや加圧ローラなどのヒートローラを支持する滑り軸受として好適に利用できる。
1 滑り軸受
2 内輪
2a 内輪の曲面
3 外輪
3a 突起
3b 軸受端面
3c 円筒部
3d フランジ
3e 開口部
3f 爪部
3g 隙間
4 摺動部材
4a 合い口部
4b 摺動部材の曲面
4c 凹部
4d 環状体の端部
4e 環状体の端部
4f 突合せ面(4d側)
4g 突合せ面(4e側)
4h 段部(4d側)
4i 段部(4e側)
4j 嵌合部分
4k 窪み
4m 非曲面部
5 軸受孔
6 潤滑剤保持ポケット
6a 溝
6b 矩形辺
6c 対向辺
2 内輪
2a 内輪の曲面
3 外輪
3a 突起
3b 軸受端面
3c 円筒部
3d フランジ
3e 開口部
3f 爪部
3g 隙間
4 摺動部材
4a 合い口部
4b 摺動部材の曲面
4c 凹部
4d 環状体の端部
4e 環状体の端部
4f 突合せ面(4d側)
4g 突合せ面(4e側)
4h 段部(4d側)
4i 段部(4e側)
4j 嵌合部分
4k 窪み
4m 非曲面部
5 軸受孔
6 潤滑剤保持ポケット
6a 溝
6b 矩形辺
6c 対向辺
Claims (20)
- 内輪と、外輪と、この内・外輪間に介在する樹脂組成物の成形体からなる摺動部材とを備えてなる滑り軸受であって、
前記内輪は、外周に曲面を、内周に支持軸と嵌合する軸受孔をそれぞれ有し、
前記摺動部材は、1ヶ所の合い口部を有する環状体であり、内周に前記内輪の外周の曲面に対向接触して摺動する曲面を有し、
前記外輪は、内周側で前記摺動部材を保持し、前記外輪の内周面に設けた突起が前記摺動部材の合い口部に嵌合することを特徴とする滑り軸受。 - 前記合い口部は、前記環状体の両端部において、それぞれの端部断面の軸方向一方側に突合せ面を有し、少なくとも一方の端部断面の軸方向反対側に前記外輪の突起が嵌合する段部を有する形状であることを特徴とする請求項1記載の滑り軸受。
- 前記段部からなる前記外輪の突起との嵌合部分の周方向幅が、前記外輪の突起の周方向幅よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の滑り軸受。
- 前記突合せ面間の隙間幅が、前記段部からなる前記外輪の突起との嵌合部分と、前記外輪の突起との嵌合隙間幅よりも小さいことを特徴とする請求項2または請求項3記載の滑り軸受。
- 前記摺動部材を該滑り軸受に組み入れない状態における前記突合せ面間の隙間幅と、前記摺動部材を該滑り軸受に組み入れた状態における前記突合せ面間の隙間幅とが同じであることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項4記載の滑り軸受。
- 前記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記樹脂組成物が、固体潤滑剤および繊維状補強材から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、黒鉛、および二硫化モリブデンから選ばれる少なくとも1つであり、前記繊維状補強材が、炭素繊維およびアラミド繊維から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項7記載の滑り軸受。
- 前記内輪が、金属製であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記内輪が、転がり玉軸受用の内輪であることを特徴とする請求項9記載の滑り軸受。
- 前記外輪が、樹脂製であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記外輪が、軸受端面と円筒部とフランジとから構成され、該円筒部の内周側で前記摺動部材を保持することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記外輪が、軸方向の一端面に開口部を、該開口部の縁に爪部をそれぞれ有し、前記摺動部材は前記開口部から該外輪に組み込まれて前記爪部で固定されることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記内輪と前記外輪とが、非接触に保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記内輪の外周の曲面が凹曲面であり、前記摺動部材の曲面が凸曲面であることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記摺動部材の凸曲面は、軸方向中央部の全周に非曲面部が形成されていることを特徴とする請求項15記載の滑り軸受。
- 前記摺動部材が、前記樹脂組成物の射出成形体であり、前記非曲面部に射出成形におけるパーティングラインが形成されていることを特徴とする請求項16記載の滑り軸受。
- 前記内輪および前記摺動部材の摺動面に潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項記載の滑り軸受。
- 前記潤滑剤が、フッ素グリースおよびウレアグリースから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項18記載の滑り軸受。
- 前記摺動部材の摺動面に、潤滑剤保持ポケットが形成されていることを特徴とする請求項18または請求項19記載の滑り軸受。
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Cited By (2)
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JP2016156298A (ja) * | 2015-02-24 | 2016-09-01 | 株式会社リケン | ローラー式ロッカーアーム |
CN113339404A (zh) * | 2021-05-26 | 2021-09-03 | 河南科技大学 | 一种脂润滑单向推力圆锥滑动轴承 |
-
2011
- 2011-07-29 JP JP2011166933A patent/JP2013029181A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016156298A (ja) * | 2015-02-24 | 2016-09-01 | 株式会社リケン | ローラー式ロッカーアーム |
CN113339404A (zh) * | 2021-05-26 | 2021-09-03 | 河南科技大学 | 一种脂润滑单向推力圆锥滑动轴承 |
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