以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造:
A−2.本実施例の印刷システムの構成:
B.インク残量管理処理:
B−1.インク残量修正処理:
B−2.インク補充処理:
C.初期充填処理:
A.装置構成 :
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造 :
図1は、本実施例の印刷装置としてのインクジェットプリンター100を例示した説明図である。図示したインクジェットプリンター100は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー103が設けられ、背面側には、印刷用紙1をセットする給紙トレイ101が設けられている。また、インクジェットプリンター100の前面側で、前面カバー103の隣に相当する位置には複数の操作ボタン105が設けられており、更に、操作ボタン105が設けられた箇所の上面側には、タッチパネル式のモニター画面104が設けられている。前面カバー103は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙1が排出される細長い排紙口102が現れる。給紙トレイ101にセットされた印刷用紙は、給紙トレイ101からインクジェットプリンター100の内部に取り込まれて表面に画像が印刷された後、排紙口102から排出される。
インクジェットプリンター100の側面には、箱形形状のタンクケース150が設けられている。詳細には後述するが、タンクケース150の内部には複数のインクタンクが設けられており、インクジェットプリンター100が印刷に用いるインクは、このインクタンクから供給される。
また、印刷する画像のデータ(画像データ)は、インクジェットプリンター100に接続されたコンピューター200によって画像処理が施された後、インクジェットプリンター100に供給される。インクジェットプリンター100は、コンピューター200から画像処理後の画像データを受け取ると、印刷用紙1上にインクによるドットを形成するか否かを表したドットデータに変換して、得られたドットデータに従って印刷用紙1上にインクを噴射することによってドットを形成する。その結果、印刷用紙1上に画像が印刷される。すなわち、本実施例では、インクジェットプリンター100と、画像データに所定の画像処理を施してインクジェットプリンター100に供給するコンピューター200とによって印刷システム10が構成されている。
A−2.本実施例の印刷システムの構成 :
図2は、本実施例の印刷システム10の全体構成を示した説明図である。また、図中には、インクジェットプリンター100の大まかな内部構造も示されている。先ず初めに、インクジェットプリンター100の内部構造について簡単に説明する。図2に示されるように、インクジェットプリンター100の内部には、印刷用紙1の上で往復動するキャリッジ110が設けられており、キャリッジ110には、インクを噴射する噴射ヘッド112が設けられている。本実施例のインクジェットプリンター100では、シアン(以下C)色、イエロー(以下Y)色、マゼンタ(以下M)色、黒(以下K)色の4色のインクを用いて画像を印刷可能であり、このことに対応して、インクの色毎に噴射ヘッド112が設けられている。
キャリッジ110は、図示しない駆動機構に駆動されて、ガイドレール130によってガイドされながら印刷用紙1の上で往復動を繰り返す。また、インクジェットプリンター100には図示しない紙送り機構も設けられており、キャリッジ110が往復動する動きに合わせて印刷用紙1が少しずつ紙送りされていく。そして、キャリッジ110が往復動する動きと、印刷用紙1が紙送りされる動きとに合わせて、噴射ヘッド112から、C色のインク(以下、Cインク)、Y色のインク(以下、Yインク)、M色のインク(以下、Mインク)、あるいはK色のインク(以下、Kインク)を噴射することによって、印刷用紙1に画像が印刷される。
噴射ヘッド112から噴射されるインクは、タンクケース150内に設けられたインクタンク151に収容されている。本実施例のインクジェットプリンター100では、Cインク、Yインク、Mインク、Kインクの4種類のインクを使用することから、インクタンク151もインクの種類毎に、Cインク用のインクタンク151C、Yインク用のインクタンク151Y、Mインク用のインクタンク151M、およびKインク用のインクタンク151Kの4つのインクタンク151が設けられている。尚、本明細書中では、特にインクの種類を区別する必要がない場合には、インクの種類毎のインクタンク151C,151Y,151M,151Kをまとめて単にインクタンク151と称することがある。これらインクタンク151内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ117を介して、インクの種類毎の噴射ヘッド112に供給される。
更に、キャリッジ110がガイドレール130に沿って印刷用紙1の外側まで移動した位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、インクジェットプリンター100が画像を印刷していない間は、キャリッジ110はホームポジションに移動している。ホームポジションには、キャップ122が設けられており、このキャップ122は図示しない昇降機構によって上下方向に移動可能となっている。そして、キャリッジ110をホームポジションに移動した状態で、キャップ122をキャリッジ110の底面側に押し当てると噴射ヘッド112を覆うように閉空間が形成され、噴射ヘッド112内のインクが乾燥することを防止可能となっている。また、キャップ122には、負圧チューブ124を介して負圧ポンプ120が接続されており、キャリッジ110の底面側にキャップ122を押し当てた状態で負圧ポンプ120を作動させることで、噴射ヘッド112内のインクを吸い出すことも可能である。このため、噴射ヘッド112内で乾燥が進んでインクの粘度が増加してしまった場合でも、そのようなインクを吸い出して、噴射ヘッド112内のインクを適切な粘度に維持しておくことができる。
また、インクジェットプリンター100には、論理演算や算術演算を行うCPUや、各種のプログラムやデータを記憶しておいたり、一時的にデータを記憶したりするメモリーなどによって構成された制御部140が搭載されている。また、制御部140のメモリーには、インクジェットプリンター100への電源供給が切断されると記憶されていたデータが揮発する揮発メモリーと、電源供給が切断されても記憶されたデータが保持される不揮発メモリーとが内蔵されている。この不揮発メモリーの一部は、ステータスメモリーとして使用されている。制御部140は、コンピューター200から画像処理後の画像データを受け取ると、その画像データが表す画像を、インクのドットによって表現した画像データ(ドットデータ)に変換する。そして、ドットデータに従って、キャリッジ110が往復動する動作や、印刷用紙1を紙送りする動作、噴射ヘッド112がインクを噴射してドットを形成する動作を制御する。また、インクのドットを形成すると、その分だけのインクが消費されて、インクタンク151内のインク残量が減少していく。そこで本実施例の制御部140では、インクの種類毎のドットデータに基づいて、インクの種類毎にインクタンク151内のインク残量を計数しており、インク残量が所定の下限値(所定の限界値)に達すると(インクが無くなると)、噴射ヘッド112からインクを噴射する動作を停止する。こうすることで、インクが供給されない状態で噴射ヘッド112が駆動されたために、噴射ヘッド112が大きなダメージを受けることを回避することが可能となる。
コンピューター200は、CPUやメモリーなどがバスによって相互にデータを通信可能に接続されて構成されており、メモリーに記憶されている各種のプログラムを実行する。また、コンピューター200には、モニター画面202も搭載されている。メモリーに記憶された複数のプログラムの中には、プリンタドライバー204と呼ばれるプログラムが記憶されており、CPUがプリンタドライバー204を実行すると、印刷しようとする画像データに対して所定の画像処理が施された後、インクジェットプリンター100に出力される。
また、本実施例のプリンタドライバー204の動作を、その機能に着目して分類すると、画像データに対して画像処理を施す機能に関する部分(画像変換モジュール)や、インクジェットプリンター100と相互に通信する通勤機能部によってインクタンク151のインク残量を管理する機能に関する部分(インク残量管理モジュール)や、インク残量管理モジュールから起動されてインクタンク151にインクを充填するための機能に関する部分(インク充填モジュール)などに分類することができる。尚、ここで言う「モジュール」とは、プリンタドライバー204の動作を、機能に着目して大まかに分類した仮想的な概念であり、実際には種々の形態で具現化することができる。たとえば、所望の機能が実現されるように複数のコマンドを連ねたプログラムコード群としてソフトウェア的に具現化することもできるし、あるいは、所望の機能をハードウェア的に実現するLSI群として具現化することもできる。本実施例においては、ソフトウェア的に具現化されたプリンタドライバー204、あるいはそのプリンタドライバー204と制御部140で実行されるプログラムの一部の何れかが、本発明における「プログラム」に対応する。プリンタドライバー204に相当するプログラムが制御部140で実行される場合は、制御部140で実行されるプログラムが、本発明における「プログラム」に対応する。また、ハードウェア的に具現化されたプリンタドライバー204、あるいはそのプリンタドライバー204を搭載したコンピューター200、更にはソフトウェア的に具現化されたプリンタドライバー204が動作するコンピューター200の何れかが、本発明における「制御装置」に対応する。プリンタドライバー204に相当する機能が制御部140によって実現されている場合は、制御部140が本発明における「制御装置」に対応する。
上述したように画像変換モジュールでは、印刷しようとする画像の画像データに対して所定の画像処理を施してインクジェットプリンター100に出力しているが、この処理自体は、一般的なプリンタドライバーで行われている処理と同様であるため、ここでは説明は省略する。また、本実施例のプリンタドライバー204では、インク残量管理モジュール(あるいはインク充填モジュール)がインクジェットプリンター100とデータを通信しながら、以下に説明するインク残量管理処理を実行することにより、インクジェットプリンター100でインク切れが発生して印刷できなくなる事態を回避している。更に、適正でない性状のインクが補充されて噴射ヘッド112の内部で目詰まりが発生することも回避している。以下では、こうした機能を実現するために、本実施例のプリンタドライバー204の内部でインク残量管理モジュールが実行している処理について説明する。
B.インク残量管理処理 :
図3は、本実施例のプリンタドライバー204の中で行われるインク残量管理処理を示したフローチャートである。この処理は、プリンタドライバー204のインク残量管理モジュールが、インクジェットプリンター100の制御部140と通信しながら実行する処理である。
図3に示されるようにインク残量管理処理では、先ず初めに、インクジェットプリンター100の制御部140から、インクタンク151内のインク残量をインクの種類毎に取得する(ステップS100)。図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140では、コンピューター200から受け取った画像データをドットデータ(画像をインクドットによって表現した画像データ)に変換して噴射ヘッド112やキャリッジ110の動作などを制御するとともに、ドットデータに基づいてインクタンク151のインク残量をインクの種類ごとに計数している。計数されたインク残量は、インクジェットプリンター100内のメモリーに記憶されている。尚、以下の処理は、すべて各色のインク毎に行われていることから、特にインクの種類を特定せずに行った説明は、すべてのインクについて該当するものとする。
インクジェットプリンター100の制御部140からインク残量を取得したら、取得したインク残量が、所定の下限値に達したか否かを判断する(ステップS102)。その結果、何れかのインクタンク151のインク残量が所定の下限値まで減少していた場合は(ステップS102:yes)、インク残量修正処理(ステップS200)を開始する。詳細には後述するが、インク残量修正処理とは、インクジェットプリンター100の操作者にインクタンク151のインク残量を確認させて、実際にはまだインクが残っていた場合には、インクジェットプリンター100のインク残量を修正する処理である。尚、上述しようにインク残量管理モジュールは、インクジェットプリンター100の制御部140からインク残量を取得して、インク残量が所定の下限値まで減少しているか否かを判断している。従って、本実施例のインク残量管理モジュールは、本発明における「計数値情報取得手段」に対応する。
一方、インクジェットプリンター100から取得したインク残量が未だ下限値に達していない場合は(ステップS102:no)、インク残量を確認するための所定の操作が、インクジェットプリンター100の操作者によって行われたか否かを判断する(ステップS104)。インク残量を確認するための所定の操作とは、たとえば操作者がインクジェットプリンター100のアイコンをコンピューター200から選択し、そのプロパティを表示させる操作である。その結果、インク残量を確認するための操作が行われていない場合は(ステップS104:no)、処理の先頭に戻って、再びインクジェットプリンター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上述した一連の処理を繰り返す。
これに対して、インクジェットプリンター100の操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行った場合は(ステップS104:yes)、インクを補充するインク(補充インク)を選択するための画面を、コンピューター200のモニター画面202に表示する(ステップS106)。尚、本明細書中で「インクを補充する」とは、インクが少なくなったり空になったりしたときにインクを充填することを意味している。従って、「補充」とは「充填」の一態様を表しているものとする。
図4は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面(インク残量確認画面を含む)を例示した説明図である。図示されているように、補充インク選択画面には、Cインク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞれについて、大まかなインク残量を示す画像が表示されている。このインク残量は、インクジェットプリンター100から取得したインク残量に基づいて表示される。また、大まかなインク残量を示す画像の下側にはチェックボックスが表示されており、インクジェットプリンター100の操作者がチェックボックスにチェックを入れることによって、補充インクを選択することが可能となる。もっとも、インク残量が減っていないインクについてはインクを補充する必要はない。そこで、このようなインクについては、チェックボックスが選択できない態様で表示されている。図4中で、C、Y、M、Kの各インクのチェックボックスが細い波線で表示されているのは、これらのチェックボックスが選択できないことを表したものである。
図5は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面の他の態様を例示した説明図である。図5に示した例では、YインクおよびMインクについてはインク残量が所定値(たとえば3%以下)に減少しており、これらインクのチェックボックスが選択可能な態様で表示されている。図中でチェックボックスが太い実線で表示されているのは、選択可能な態様で表示されていることを表している。また、インク残量が所定値以下に減少したインクについては、三角形の中に!印を組み合わせた図形が、大まかなインク残量を示す画像の上に上書きされており、インク残量が減少していることが容易に認識できる。なお、図5では、YインクおよびMインクのインク残量が所定値以下に減少していた場合を例示したが、他のインク(たとえばCインク)のインク残量が所定値以下に減少していた場合には、そのインク(Cインク)についてのチェックボックスが選択可能な態様で表示されるとともに、そのインク(Cインク)の大まかなインク残量を表す画像の上に、三角形と!印とを組み合わせた図形が上書き表示される。
以上に説明したように、図3に示したインク残量管理処理では、インクジェットプリンター100の操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行うと(ステップS104:yes)、その時点でインク残量が所定値以下に減少しているインクがなければ、図4に示した態様で補充インク選択画面が表示され、逆に、インク残量が所定値以下に減少しているインクがあれば、図5に例示した補充インク選択画面が表示される(ステップS106)。そして補充インク選択画面が、図4に示した態様で表示されていた場合は、何れのインクのチェックボックスも選択可能な態様で表示されていないので、インクジェットプリンター100の操作者は、画面の右下隅の「次へ」と表示されたボタン(以下、「次へ」ボタン)を選択する。これに対して補充インク選択画面が、図5に例示した態様で表示されていた場合は、インクジェットプリンター100の操作者が補充しようと思ったインクのチェックボックスにチェックが入れられた後、画面の右下隅の「次へ」ボタンが選択される。もちろん、インクジェットプリンター100の操作者が何れのインクも補充しようと思わなかった場合は、何れのインクのチェックボックスにもチェックが入れられることなく、「次へ」ボタンが選択される。
図3のインク残量管理処理では、図4または図5に例示した補充インク選択画面をモニター画面202に表示すると(ステップS106)、インクジェットプリンター100の操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS108では「no」と判断されて、待機状態となる。そして、インクジェットプリンター100の操作者によって「次へ」ボタンが押されると、プリンタドライバー204のインク残量管理モジュールがこれを検出して(ステップS108:yes)、今度は、インクを補充するよう選択されたインク(補充インク選択画面のチェックボックスにチェックが入れられたインク)が存在するか否かを判断する(ステップS110)。その結果、補充すべきインクが存在している場合は(ステップS110:yes)、後述するインク補充処理を開始する(ステップS300)。
これに対して、補充インク選択画面が、図4に示したようにインクを選択できない態様で表示された場合や、あるいは、図5に示したようにインクを選択可能な態様で表示されたが、何れのインクも選択されなかった場合には、ステップS110では、補充すべきインクが存在しないと判断される(ステップS110:no)。そして、この場合は、後述するインク補充処理は行うことなく、そのままインク残量管理処理の先頭に戻って、インクジェットプリンター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上述した一連の処理を繰り返す。
以上では、インクジェットプリンター100の操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行った場合に(ステップS104:yes)、補充インク選択画面を表示する処理について説明した。このように、インクジェットプリンター100の操作者が所定の操作を行うことにより、インクジェットプリンター100から取得したインク残量の値にかかわらず、コンピューター200のモニター画面202に補充インク選択画面を開いて、何時でも大まかなインク残量を表示させることが可能である。これに対して、インクジェットプリンター100から取得したインク残量が所定の下限値に達していると判断された場合は(ステップS102:yes)、以下に説明するインク残量修正処理が開始されて(ステップS200)、大まかなインク残量を表示するための画面が自動的に表示される。以下では、このようなインク残量修正処理について説明する。
B−1.インク残量修正処理 :
図6は、インク残量修正処理を示したフローチャートである。この処理は、上述したようにインク残量管理処理の中で、何れかのインクのインク残量が所定の下限値に達したと判断された場合(図3のステップS102:yes)に、プリンタドライバー204のインク残量管理モジュール(図2を参照のこと)によって実行される。
図6に示されるように、インク残量修正処理を開始すると、先ず初めに、コンピューター200のモニター画面202にインク残量確認画面を表示する(ステップS202)。ここで、インク残量確認画面とは、インクジェットプリンター100の操作者に、インクタンク151のインク液面の位置を目視して、実際に残っているインク残量を確認するように促す画面である。インク残量確認画面の詳細については後述する。
また、インクジェットプリンター100の操作者に、目視によってインク残量を確認させるのは次のような理由による。まず、プリンタドライバー204がインクジェットプリンター100から取得したインク残量は、インクジェットプリンター100の制御部140がドットデータに基づいてインクの噴射量(インク噴射量)を算出し、そのインク噴射量を累積することによって求めたインク残量である。しかし実際のインク噴射量は、インクジェットプリンター100が使用される環境(たとえば周囲の温度など)によって変動するので、計算上のインク噴射量には多少の誤差が含まれる。この誤差が集積することで、計算によって求めたインク残量が、実際のインク残量と一致しないことも起こり得る。そこで、計算上のインク残量が下限値に達すると、実際にインクタンク151のインク液面が下限ラインまで下がっているか否かを目視によって確認することにより、実際のインク残量が下限値に達しているか否かを確認するのである。
図7は、モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図である。図示されているように、インク残量確認画面にも、図4あるいは図5を用いて前述した補充インク選択画面と同様に、Cインク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞれについて、大まかなインク残量を示す画像が表示される。それぞれのインク残量を示す画像を確認することで、インク残量が下限値に達しているか否かを容易に知ることができる。たとえば、図中に表示されたCインクのインク残量を示す画像、およびYインクのインク残量を示す画像には、丸の中に×印を組み合わせた図形が上書きされており、これらインクのインク残量が下限値まで減少している(インクタンク151がほとんど空になっている)旨が示されている。また、Mインクのインク残量を示す画像には、三角形の中に!印を組み合わせた図形が上書きされている。これは、図5を用いて前述した補充インク選択画面と同様に、インクを補充可能なレベルまでインク残量が減少している旨を示す表示である。更に、Kインクのインク残量を示す画像には、何れの画像も上書きされておらず、このインクについては、インクを補充可能なレベルにまでインク残量が減少していない旨が示されている。
また、これら各インクのインク残量を示す画像の下方には、四角いチェックボックスが表示されている。更に、インク残量を示す画像の上方には、「インクタンク151内に残っているインク量を確認して、まだ下限ラインまで減少していないインクがあれば、チェックボックスにチェックを入れる」ように促す旨が表示されている。図1を用いて前述したように、インクタンク151はタンクケース150内に収容されているが、タンクケース150には後述する確認窓が設けられている。このため、インクジェットプリンター100の操作者は、それぞれのインクタンク151内のインク残量を容易に確認することが可能である。
図8は、タンクケース150に設けられた確認窓152から、インクタンク151内のインク残量を確認する様子を示した説明図である。図示されているように、タンクケース150の側面には大きな確認窓152が形成されており、タンクケース150内に収容されたCインクのインクタンク151C、Yインクのインクタンク151Y、Mインクのインクタンク151M、Kインクのインクタンク151Kをそれぞれ目視することができる。また、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kは、透明あるいは半透明な樹脂材料で形成されている。このため、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kに残ったインクの液面の位置を目視によって確認することができる。
また、図8に示されているように、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kには、下限ライン153が表示されている。この下限ライン153は、図3に示したインク残量管理処理の中でインク残量について判断された「下限値」に対応する。すなわち、下限ライン153は、インクタンク151が満タンの状態からドットデータに基づいてインク噴射量を減算して行き、インク残量が下限値まで減少したときに、インクタンク151内のインクの液面がちょうど低下する位置に設定されている。
従って、ドットデータに基づく計算上のインク残量が所定の下限値まで低下したと判断されると、図7に例示するようなインク残量確認画面が表示され、そして、インクジェットプリンター100の操作者は、確認窓152から各インクタンク151内のインク液面の位置を確認することにより、実際のインク残量を確認することができる。その結果、計算上はインク残量が下限値まで低下している(すなわち、インク液面が下限ライン153に達しているものと思われる)が、実際には、インク液面がまだ下限ライン153に達していない場合には、図7の画面上で、対応するインクのチェックボックスにチェックを入れることができる。
図7に示した例では、計算上のインク残量が下限値を下回っているのが、Cインクと、Yインクの2つのインクであり、これらインクについてのチェックボックスだけが、チェックを入れて選択可能な態様で表示されている。これに対して計算上のインク残量が下限値に達していないインク(MインクおよびKインク)については、チェックボックスが選択できない態様で表示されている。また、CインクおよびYインクのうちのYインクについては、実際に確認したインク液面が下限ライン153に達していないとして、チェックボックスにチェックが入れられている。このようにしてインクジェットプリンター100の操作者は、タンクケース150の確認窓152から各インクの液面の位置を目視によって確認し、その結果に応じてチェックボックスにチェックを入れた後、画面の下方に「次へ」と表示されたボタン(「次へ」ボタン)をクリックする。
すると、図6に示したインク残量修正処理では、「次へ」ボタンが押されたと判断する(ステップS204:yes)。また、図7のインク残量確認画面をモニター画面202に表示した後(ステップS202)、インクジェットプリンター100の操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS204では「no」と判断されて待機状態となる。
そして、「次へ」ボタンが押されたと判断すると(ステップS204:yes)、今度は、計算上のインク残量の修正が必要なインク(すなわち、図7のインク残量確認画面上でチェックボックスにチェックが入れられたインク)が存在するか否かを判断する(ステップS206)。その結果、インク残量の修正が必要なインクが存在している場合は(ステップS206:yes)、インクジェットプリンター100の制御部140に向かってコマンドを送信することにより、対応するインクのインク残量を所定量(たとえば満タン状態の3%相当)だけ増加させる(ステップS208)。こうすれば、計算上のインク残量と、インクタンク151に残っている実際のインク残量とにズレが生じた場合でも、計算上のインク残量を実際のインク残量に近づけることが可能となる。インク残量の修正が必要なインクが存在していない場合は(ステップS206:no)、インク残量を修正することなく、直ちに図6のインク残量修正処理を終了して、図3のインク残量管理処理に復帰する。
尚、本実施例では、噴射ヘッド112のインク噴射量は実際よりも若干多めに見積もられており、従って、計算上のインク残量は、実際にインクタンク151内に残っているインクのインク残量よりも常に少なめとなるように設定されている。これは、まだインクが残っている段階から早めに補充インクの用意を促すことで、インク切れによって印刷が続行できない事態が発生することを確実に回避できるようにとの配慮に基づくものである。このことに対応して、図3に示したインク残量管理処理では、計算上のインク残量が所定の下限値に達した場合にだけ(図3のステップS102:yes)、インク残量修正処理を開始して、インクジェットプリンター100の操作者に実際のインク液面を確認させることとしている。
もっとも、計算上のインク残量が、実際にインクタンク151内に残ったインク量よりも多くなってしまう場合も起こり得る。そこで、実際にはインク液面が下限ライン153まで低下しているにも拘わらず、図7のインク残量確認画面ではまだインク残量が下限値に達していないことになっている場合には、インクジェットプリンター100の操作者が、計算上のインク残量をモニター画面202上から減少させることによって、計算上のインク残量を実際のインク残量に合わせられるようにしても良い。
以上のようにして、図7のインク残量修正処理でインク残量を修正した後(図7のステップS208)、図3のインク残量管理処理に復帰すると、コンピューター200のモニター画面202に補充インク選択画面が表示される(図3のステップS106)。すなわち、インク残量が下限値に達すると、インクジェットプリンター100の操作者が操作することなく、自動的に図7のインク残量確認画面が表示され、インクジェットプリンター100の操作者が画面の右下隅の「次へ」ボタンを選択すると、今度は補充インク選択画面が表示される。
図9は、インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面を例示した説明図である。図9に示した補充インク選択画面の基本的な構成は、図4あるいは図5を用いて前述した補充インク選択画面の構成と同様である。但し、図4あるいは図5に示した補充インク選択画面は、インク残量が下限値に達する前に、インクジェットプリンター100の操作者が所定の操作を行うことによって表示される画面であることから、何れのインクについてもインク残量が下限値に達している旨の画像(丸の中に×印を組み合わせた図形の画像)が表示されることはない。これに対して、インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面では、図9に例示したように、インク残量が下限値に達している旨の画像が表示されることがある。これは、図7に例示したインク残量確認画面に従って、インクジェットプリンター100の操作者が目視によってインク残量を確認した結果、インク液面が下限ライン153まで低下していたインクについては、インク残量を修正するチャックボックスが選択されないのでインク残量が修正されることなく、補充インク選択画面が表示されるためである。
図9に示した例では、Cインクについては図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックが入れられなかった結果、図9の補充インク選択画面においてもインク残量が下限値に達している旨を示す画像が表示されている。これに対してYインクについては、図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックが入れられた結果、図9の補充インク選択画面ではインク残量が下限値に達していないが、インクを補充可能である旨を示す画像(三角形に!印を組み合わせた図形の画像)に変更されている。
そして、前述したようにインクジェットプリンター100の操作者が、図9の補充インク選択画面でチェックボックスにチェックを入れて、インクを補充するインクを選択した後、画面の右下隅に表示されている「次へ」ボタンを選択すると、インク残量管理モジュールがインク充填モジュールを起動する結果、インクを補充するためのインク補充処理(ステップS300)が開始される。
B−2.インク補充処理 :
図10は、インク補充処理のフローチャートである。この処理は、コンピューター200内にインストールされたインク残量管理モジュールおよびインク充填モジュールによって、インク残量管理処理の中で実行される処理である。図示されるようにインク補充処理(ステップS300)を開始すると、先ず初めに、コンピューター200のモニター画面202上にインク補充画面を表示する(ステップS302)。
図11は、モニター画面202に表示されたインク補充画面を例示した説明図である。図示されているように、インク補充画面には、タンクケース150を取り外して、インクタンク151のキャップ156からインクを補充するように促す旨が表示されている。また、表示の下方には、インクを補充する際の注意事項として、後述するインクボトル160のインクをすべて補充してインクボトル160内にインクが残らないように注意することや、インクタンク151に設けられた上限ライン157をインク液面が超えないように注意するといった内容が表示されている。
図12は、タンクケース150をインクジェットプリンター100から取り外した様子を示す説明図である。図12では、タンクケース150を取り外した後、インクジェットプリンター100に取り付けられていた側の面が上方を向くように、タンクケース150を回転させた状態が示されている。図示されているように、タンクケース150がインクジェットプリンター100に取り付けられる面には、4箇所に小さな突起154が立設されている。また、インクジェットプリンター100の面には、対応する位置に突起154の挿入孔109が設けられている。
タンクケース150は、突起154をインクジェットプリンター100側の挿入孔109に挿入することによって取り付けられている。挿入された突起154が引き抜かれる方向にタンクケース150を引くことで、インクジェットプリンター100からタンクケース150を取り外すことができる。インクジェットプリンター100の操作者は、モニター画面202上のインク補充画面の表示に従って、タンクケース150を取り外す。また、タンクケース150を取り外した状態では、タンクケース150の上面に設けられた上面カバー155を倒せるようになる。そして、上面カバー155を倒すと、図12に示したようにインクタンク151が現れる。その結果、それぞれのインクタンク151の側面に表示された上限ライン157を目視によって確認することが可能になる。更に、図12に示すようにタンクケース150を回転させた状態で上面カバー155を倒すことによって、インクタンク151の上面側に設けられたキャップ156を容易に取り外すことが可能となる。
図13には、補充用のインクが収容されたインクボトル160が示されている。インクボトル160は、気密性や遮光性に優れた樹脂材料で形成された略円筒形状の容器であり、容器の頂部にはキャップ162が設けられている。また、インクボトル160の側面には、紙製のラベル164が貼付されており、このラベル164の外側には、後述するインクID番号が印刷されている。
本実施例のインクボトル160は、キャップ162がインクボトル160に固着した状態で取り付けられており、この状態ではインクボトル160の内部が気密な状態に保たれている。インクを補充する際には、キャップ162をねじ切るようにして取り外すと、中から細長い注ぎ口が現れる。そこで、図11に示したようにタンクケース150を取り外した後、インクタンク151毎に設けられたキャップ156を空けて、インクボトル160内のインクを注入する。
ここで、インクボトル160内のインク量は、インクタンク151のインク液面が下限ライン153まで低下した状態でインクボトル160内の全てのインクを注入すると、インクタンク151がほぼ満タンとなるようなインク量に設定されている。更に、インクボトル160のキャップ162はインクボトル160に固着されているだけなので、インクボトル160から一旦取り外してしまうと、再びキャップ162を取り付けることができなくなる。このため、図12に示したインク補充画面で、インクボトル160内の全てのインクを補充する旨の注意事項が表示されることと相俟って、インクジェットプリンター100の操作者は自然と、インクボトル160内のインクを全てインクタンク151内に補充するようになる。
このようにして、補充が必要な全てのインクを補充し終わったら、インクジェットプリンター100の操作者は、図12のインク補充画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンを選択する。すると、図10のインク補充処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS304:yes)、補充したインクのインクID番号を入力するよう促す画面を、モニター画面202上に表示する(ステップS306)。また、図12のインク補充画面を表示した後(ステップS302)、インクジェットプリンター100の操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS304では「no」と判断されて、待機状態となる。
図14は、モニター画面202に表示されたインクID番号の入力画面を例示した説明図である。図示されているように、インクID番号の入力画面には、前述した補充インク選択処理で補充が必要と判断されたインクについて、インクID番号を入力可能な状態で入力欄が表示されている。図14に示した例では、CインクおよびMインクの入力欄が、インクID番号を入力可能な状態で表示されている。また、補充が不要と判断されたインク(ここでは、YインクおよびKインク)については、インクID番号を入力できない状態で入力欄が表示されている。尚、本実施例においてはインクID番号が、本発明における「初期化データ」に対応する。また、インクID番号を入力するための画面は、インク充填モジュールがインク補充処理を実行することによって表示される。従って、本実施例においてはインク充填モジュールが、本発明における「初期化データ受付手段」対応する。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、インクボトル160のラベル164を確認して、ラベル164の外側に印刷されているインクID番号を入力した後、画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンをクリックする。
すると、図10に示したインク補充処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS308:yes)、入力されたインクID番号を読み取った後(ステップS310)、読み取ったインクID番号が適正であるか否かを判断する(ステップS312)。インクID番号は、複数の数字やアルファベットで構成された一見すると意味のないコードであるが、インクの種類(色)や、使用可能なインクジェットプリンター100の機種などの情報が含まれた一種の符号データとなっている。インク充填モジュール内の復号部が、インクID番号を復号することにより、これらの情報を取得することが可能となる。
その結果、インク充填モジュールは、正常にインクID番号の復号を完了して、得られた各種の情報(たとえばインクの種類や、インクジェットプリンター100の機種など)が正しければ、インクID番号が適正であると判断する。これに対して、インクID番号を復号できなかった場合や、一応復号はできたものの、たとえばインクの種類やインクジェットプリンター100の機種が実際とは違っているなどのように、復号によって得られた各種の情報が矛盾している場合には、そのインクID番号は適正でないと判断する。図10に示したインク補充処理のステップS312では、このようにして、インクID番号が適正であるか否かを判断する。また、詳細には後述するが、たとえ適正なインクID番号であっても、一度使用されたことのあるインクID番号が再び入力された場合には、そのインクID番号は適正でないと判断される。
その結果、入力されたインクID番号が適正ではないと判断した場合は(ステップS312:no)、インクID番号の再入力を促す画面を、モニター画面202上に表示した後(ステップS314)、再び、「次へ」ボタンが押されたか否かを判断する処理(ステップS308)を繰り返すことによって待機状態となる。
図15は、モニター画面202上でインクID番号の再入力を促すために表示される画面(再入力画面)を例示した説明図である。図示されているように再入力画面には、先に入力されたインクID番号に加えて、そのインクID番号が適正であるか否かについての判断結果が表示されている。たとえば、図15に示した例では、Cインクについて入力したインクID番号は適正と判断されているが、MインクについてのインクID番号は適正でないと判断されている。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、適正でないと判断されたMインクのインクID番号を再度入力した後、再び「次へ」ボタンをクリックする。すると、プリンタドライバー204は「次へ」ボタンが押されたと判断して(図10のステップS308:yes)、再入力されたインクID番号を読み取った後(ステップS310)、インクID番号が適正か否かを判断する(ステップS312)。
その結果、全てのインクID番号が適正であると判断したら(ステップS312:yes)、今度は、適正と判断されたインクID番号を、使用済みID番号として、コンピューター200のメモリーに記憶する(ステップS316)。こうして記憶された使用済みID番号は、次回以降にインクID番号が適正であるか否かを判断するステップS312の処理で参照されて、入力されたインクID番号が正しく解読できて、尚且つ、解読された内容に矛盾がなくても、使用済みID番号に記憶されていた場合には、そのインクID番号は適正でないと判断される。
続いて、インク充填モジュールは、インク残量管理モジュールの通信機能部を介して、インクジェットプリンター100の制御部140に向かってコマンド(初期化コマンド)を送信することにより、インクジェットプリンター100の制御部140が計数している計算上のインク残量を、満タン状態に初期化させる(ステップS318)。図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140は、計算上のインク残量が下限値に達すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまうが、こうしてプリンタドライバー204からの初期化コマンドを受信して、計算上のインク残量を初期化することにより印刷を再開することが可能となる。このように、入力されたインクID番号が適正であるか否かを判断して、適正であればインク残量を初期化する処理は、インク充填モジュールがインク補充処理を実行することによって行われる。従って、本実施例のインク充填モジュールは、本発明における「初期化動作手段」に対応する。また、インク残量を初期化するために出力する初期化コマンドが、本発明における「初期化する指示」に対応する。
尚、ここでは、インクボトル160に収容されているインク量は、インクボトル160内のインクを全て投入すると、下限ライン153まで低下していたインクタンク151のインク液面が、ほぼ上限ライン157に達するようなインク量に設定されている。このことと対応して、図10のインク補充処理のステップS318では、インクボトル160からのインクの補充が完了すると、計算上のインク残量を満タン状態に初期化する。しかし、収容されたインク量の異なる複数種類のインクボトル160を用意しておき、インクボトル16に収容されたインク量に応じて、計算上のインク残量を異なる状態に設定しても良い。また、インクボトル160に収容されたインク量は、ラベル164に印刷されたインクID番号に組み込んでおくことができる。
たとえば、入力されたインクID番号を解読した結果、そのインクID番号が、最もインク量の多いインクボトル160のインクID番号であった場合には、計算上のインク残量を満タン状態まで復帰させる。これに対して、インクID番号が、インク量の少ないインクボトル160のインクID番号であった場合には、満タン状態に対して半分程度までしか復帰させず、インク量が中くらいのインクボトル160のインクID番号であった場合には、満タン状態に対して3分の2程度までしか復帰させないようにしても良い。
以上のようにして、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されている計算上のインク残量を復帰させたら、今度は、インクの補充が完了した旨を報知する画面(補充完了画面)をモニター画面202上に表示する(ステップS320)。図16には、コンピューター200のモニター画面202上に表示された補充完了画面が例示されている。こうして補充完了画面を表示したら、図10に示したインク補充処理を終了して、図3のインク残量管理処理に一旦復帰した後、インク残量管理処理の先頭に戻って、上述した一連の処理を繰り返す。
以上に説明したように本実施例の印刷システム10では、噴射ヘッド112から噴射したインク量に基づいて、インクジェットプリンター100の制御部140がインク残量を計数する。そして、コンピューター200のプリンタドライバー204は、上述のインク残量管理処理を実行しながら、インクジェットプリンター100からインク残量を取得することによって、インクタンク151内のインク残量を監視する。その結果、インク残量が少なくなると、図10のインク補充処理を行うことによって、インクジェットプリンター100の操作者にインクを補充させる。このため、インクカートリッジを交換してインクを補充する方式ではなく、インクタンク151にインクボトル160からインクを補充する方式を採用しているにも拘わらず、性状が適切でないインクが補充されて噴射ヘッド112内で目詰まりが発生することを回避することが可能となる。以下では、この点について説明する。
先ず、図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140はドットデータに基づいてインク残量を計数しており、計数したインク残量が下限値に達すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまう。従って、印刷を継続するためには、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されているインク残量を初期化する必要があり、そのためには、インクタンク151にインクを補充する必要がある。そして、インクジェットプリンター100の操作者がインクを補充すると、補充したインクのインクID番号を入力する画面がモニター画面202上に現れる。入力したインクID番号はプリンタドライバー204によって適正か否かが判断されて、インクID番号が適正であった場合にだけ、インク残量が初期化されて、再び噴射ヘッド112からインクを噴射可能となる。すなわち、インクタンク151にインクを補充しても、適正なインクID番号を入力しなければ、インクタンク151内のインクを噴射ヘッド112から噴射することはできない。
そして、前述したようにインクID番号は、複数の数字やアルファベットが一見無意味に並んだ符号データとなっているので、インクボトル160のラベル164に印刷されたインクID番号を見て入力するのでない限り、適切なインクID番号を入力することは事実上不可能である。その結果、インクジェットプリンター100の操作者は、自然と、純正品(あるいはインクジェットプリンター100のメーカー推奨品)のインクボトル160を購入することになる。もちろん、一度購入した純正品のインクボトル160のインクID番号が何度も使用されたのでは、適正でない性状のインクが補充されることを回避することができない。しかし、一度適正であるとして受け付けられたインクID番号は、使用済みのID番号として記憶され、次にそのインクID番号が入力された時には、適正でないインクID番号と判断される。このため、インクを補充する際には、必ず新たに購入された純正品(あるいはメーカー推奨品)のインクボトル160からインクが補充されることになるので、適正でない性状のインクが噴射ヘッド112に供給されて、噴射ヘッド112を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
また、図4および図5を用いて前述したように、本実施例の印刷システム10では、インクタンク151内のインク液面が下限ライン153まで低下すると初めて、補充するインクを選択する画面がモニター画面202上に表示される(図5参照)。そして、インクボトル160内の全てのインクをインクタンク151に補充すると、インクタンク151のインク液面が、下限ライン153から上限ライン157のほぼ手前まで来るように、インクボトル160のインク収容量が設定されている。このためインクジェットプリンター100の操作者は、インクを補充する際には自然と、インクボトル160内のインクを全て補充する。しかも図11に例示したように、モニター画面202上では、インクボトル160内の全てのインクを補充する旨が表示されるので、インクボトル160内にインクを少し残すようなことがない。
前述したように、純正品のインクボトル160であっても、一旦開封すると、インクボトル160内のインクの性状は、時間の経過とともに劣化が進行する。従って、一旦開封された後、インクボトル160内に残ったインクが補充されると、噴射ヘッド112の内部を目詰まりさせる虞がある。しかし、上述したように、本実施例の印刷システム10では、インクジェットプリンター100の操作者がインクを補充する際に、インクボトル160内にインクを残すことがない。このため、インクボトル160が一旦開封されたため、インクボトル160内でインクの劣化が進んで、噴射ヘッド112内が目詰まりするような事態を回避することができる。
加えて、上述したように、一度入力されて受け付けられたインクID番号は使えないので、次回の補充の際には必ず新たなインクボトル160が購入され、そして、そのインクボトル160内のインクを全て投入すると、インクタンク151内のインク液面はほぼ上限ライン157に達してしまう。しかも図11に例示したように、モニター画面202上では、インクタンク151内のインク液面が上限ライン157を超えないように注意する旨が表示される。このため、たとえ、古いインクボトル160内にインクが少し残っていたとしても、その古いインクがインクタンク151に補充されて、噴射ヘッド112内を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
C.初期充填処理 :
以上では、インクタンク151にインクを補充する場合、すなわち、画像を印刷することによってインク残量が所定の下限値を下回ったために、インクを充填する必要が生じた場合について説明した。しかし、工場出荷状態のインクジェットプリンター100に初期充填する際には、何れのインクタンク151についてもインクを充填する必要がある。尚、初期充填とは、インクジェットプリンター100の噴射ヘッド112に初めてインクを供給することをいう。初期充填の場合でも、不適正な性状のインクが充填されることを回避しなければならないことは、上述したインクの補充の場合と同様である。その一方で、初期充填ではC,M,Y,Kの全てのインクを充填しなければならないので、これら全てのインクについて、インクID番号を入力しなければならないのでは煩雑である。そこで、本実施例の印刷システム10では、初期充填の際には以下のようにしてインクタンク151にインクを充填する。
図17は、インクジェットプリンター100に電源を投入したときに、プリンタドライバー204のインク残量管理モジュールによって行われる電源投入時処理のフローチャートである。インク残量管理モジュールは、電源投入時処理(ステップS400)を開始すると、インクジェットプリンター100の制御部140に内蔵されているステータスメモリーを参照して、初期充填フラグを取得する(ステップS402)。ここで初期充填フラグとは、インクジェットプリンター100が既に初期充填されているか否かを示すフラグであり、制御部140の不揮発メモリーに記憶されている。初期充填フラグは、インクジェットプリンター100の工場出荷時はONに設定されているが、インクジェットプリンター100で初期充填が行われるとOFFに設定される。従って、初期充填フラグの設定から、インクジェットプリンター100が未だ初期充填が行われる前の状態(初期充填前状態)であるのか、あるいは既に初期充填が行われた状態であるのかを判断することができる。尚、本実施例では初期充填フラグが、本発明における「初期充填前情報」に対応し、初期充填フラグを取得するインク残量管理モジュールが、本発明における「初期充填前情報取得手段」に対応する。
続いてインク残量管理モジュールは、初期充填フラグがONであるか否かを判断する(ステップS404)。その結果、初期充填フラグがONではなかった場合は(ステップS404:no)、電源投入時処理を終了する。一方、初期充填フラグがONであった場合は(ステップS404:yes)、インク残量管理モジュールがインク充填モジュールを起動する結果、以下に説明する初期充填処理が開始される(ステップS500)。
図18は、初期充填フラグがONであった場合にインク充填モジュールが実行する初期充填処理のフローチャートである。図示されるように初期充填処理(ステップS500)を開始すると、先ず初めに、コンピューター200のモニター画面202上に初期充填画面を表示する(ステップS502)。
図19は、モニター画面202に表示された初期充填画面を例示した説明図である。図示されているように、インク補充画面には、タンクケース150を取り外して、同梱されている全色のインクをインクタンク151に充填するように促す旨が表示されている。また、表示の下方には、図11に示したインクを補充する場合の画面(インク補充画面)と同様な注意事項が表示されている。インクジェットプリンター100の操作者は、表示に従って全色のインク(本実施例では、C,M,Y,Kのインク)を充填すると、初期充填画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンを選択する。すると、図18の初期充填処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS504:yes)、初期充填用ID番号を入力するよう促す画面を、モニター画面202上に表示する(ステップS506)。また、図19の初期充填画面を表示した後(ステップS502)、インクジェットプリンター100の操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS504では「no」と判断されて待機状態となる。
図20は、初期充填用ID番号の入力画面を例示した説明図である。図示されているように、初期充填用ID番号の入力画面には、1つ分のID番号の入力欄が表示されている。すなわち、全色のインク(C,M,Y,Kのインク)を充填するにも拘わらず、初期充填用ID番号は1つだけ入力すればよい。また、初期充填用ID番号は、インクジェットプリンター100に同梱されていたインクボトル160のラベル164に印刷されている。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、インクボトル160のラベル164を確認して、ラベル164に印刷されている初期充填用ID番号を入力した後、画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンをクリックする。尚、初期充填用ID番号は、必ずしもインクボトル160のラベル164に印刷しておかなくてもよい。例えば、初期充填用ID番号を印刷した用紙を、インクジェットプリンター100やインクボトル160とともに同梱しておいてもよい。また、本実施例においては初期充填用ID番号が、本発明における「初期充填用データ」に対応する。更に、初期充填用ID番号の入力画面はインク充填モジュールが初期充填処理を実行することによって表示されることから、本実施例においてはインク充填モジュールが、本発明における「初期充填用データ受付手段」に対応する。
インクジェットプリンター100の操作者が、初期充填用IDの入力画面で「次へ」ボタンをクリックすると、初期充填処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断して(ステップS508:yes)、初期充填用ID番号の入力欄を読み取った後(ステップS510)、読み取った初期充填用ID番号が適正であるか否かを判断する(ステップS512)。初期充填用ID番号は、前述したインクID番号と同様に、複数の数字やアルファベットで構成された一見すると意味のないコードであるが、使用可能なインクジェットプリンター100の機種などの情報が含まれた一種の符号データである。インク充填モジュール内の復号部が、初期充填用ID番号を復号することにより、これらの情報を取得することが可能となる。
その結果、インク充填モジュールは、正常に初期充填用ID番号の復号を完了して、得られた各種の情報が正しければ、初期充填用ID番号が適正であると判断する。これに対して、初期充填用ID番号を復号できなかった場合や、一応復号はできたものの、たとえばインクジェットプリンター100の機種が実際とは違っているなどのように、復号によって得られた各種の情報が矛盾している場合には、その初期充填用ID番号は適正でないと判断する。また、入力欄に初期充填用ID番号が入力されていなかった場合も、初期充填用ID番号は適正でないと判断する。図18に示した初期充填処理のステップS512では、このようにして、初期充填用ID番号が適正であるか否かを判断する。
その結果、初期充填用ID番号が適正ではないと判断した場合は(ステップS512:no)、初期充填用ID番号の再入力を促す画面を、モニター画面202上に表示した後(ステップS514)、再び、「次へ」ボタンが押されたか否かを判断する処理(ステップS308)を繰り返すことによって待機状態となる。
図21は、モニター画面202上で初期充填用ID番号の再入力を促すために表示される画面(初期充填用再入力画面)を例示した説明図である。図示されているように初期充填用再入力画面には、初期充填用ID番号の再入力を促す表示と、初期充填用ID番号の入力欄とが表示されている。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、表示に従って初期充填用ID番号を再度入力した後、再び「次へ」ボタンをクリックする。すると、プリンタドライバー204のインク充填モジュールは「次へ」ボタンが押されたと判断して(図18のステップS508:yes)、再入力された初期充填用ID番号を読み取った後(ステップS510)、初期充填用ID番号が適正か否かを判断する(ステップS512)。
その結果、初期充填用ID番号が適正であると判断したら(ステップS512:yes)、インク充填モジュールは、全色分(C,M,Y,K)のインクのインク残量を満タン状態に初期化させるコマンドを、インク残量管理モジュールの通信機能部を介してインクジェットプリンター100の制御部140に向かって送信する(ステップS516)。すると、インクジェットプリンター100の制御部140は、全色のインクについてのインク残量を初期化する。その結果、噴射ヘッド112からインクを噴射して印刷を開始することが可能となる。そこで、プリンタドライバー204のインク充填モジュールは、初期充填が完了した旨を報知する画面(初期充填完了画面)をモニター画面202上に表示した後(ステップS518)、図18に示した初期充填処理を終了する。図22には、モニター画面202に表示された初期充填完了画面が例示されている。尚、インク充填モジュールが、全色分のインク残量を初期化させるコマンドをインクジェットプリンター100に送信すると、全色分のインクのインク残量が初期化されることから、本実施例においてはインク充填モジュールが、本発明における「初期充填動作手段」に対応する。
以上に説明したように、本実施例の印刷システム10では、インクジェットプリンター100の初期充填時には、初期充填用ID番号を1つ入力するだけで、C,M,Y,Kの全色のインクについてのインク残量を初期化することができる。このため、インクタンク151にインクを補充する場合のように、インク毎にインクID番号を入力する必要がないので、速やかに印刷を開始することが可能となる。また、適正な初期充填用ID番号を入力しなければインク残量が初期化されないので、不適正な性状のインクが充填されて、噴射ヘッド112に損傷を与えるおそれも回避することが可能となる。
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
たとえば、上述した実施例あるいは変形例では、ドットデータに従って噴射ヘッド112が噴射するインク量を累積することによって、インク残量を算出するものとして説明した。しかし、噴射ヘッド112内のインクの性状を適正に保っておくために、キャップ122および負圧ポンプ120を用いて噴射ヘッド112のインクを吸い出す動作(クリーニング動作)が行われることがある。このクリーニング動作を行った場合にもインクが消費されるので、このインクの消費量も考慮してインク残量を算出するようにしてもよい。
あるいは、噴射ヘッド112では、噴射するインク量を複数段階に切り換えながらインクを噴射する場合がある。このような場合は、単にインクを噴射した回数だけでなく、それぞれの噴射で噴射したインク量を考慮しながら、インク残量を算出するようにしてもよい。