JP5716284B2 - ポリウレタン樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なポリウレタン樹脂に関するものであり、特にガスバリア性に優れることから、フォーム、エラストマー、塗料、接着剤、シート、フィルム、各種成形材料への展開が期待できる新規なポリウレタン樹脂に関するものである。
ポリウレタン樹脂は、ポリエーテル系、ポリエステル系をはじめとするポリオール成分からなるソフトセグメントと、イソシアネート成分からなるハードセグメントとから構成され、硬質、半硬質、若しくは軟質フォーム、又はエラストマーや塗料、接着剤等に展開されている。
一般にポリウレタン樹脂は、ソフトセグメントのポリマー鎖間の自由体積が大きいため、ガスバリア性が低いという課題があった。そこで、ポリウレタン樹脂にガスバリア性を付与する方法として、1)他の無機/有機材料と複合化する方法、2)ポリウレタンの一次構造を制御する方法、等が提案されている。
1)他の無機/有機材料と複合化する方法として、層状粘土鉱物を添加する方法(例えば特許文献1参照。)、酸化珪素等の無機酸化物をフィルムに蒸着する方法(例えば特許文献2参照。)、他のガスバリア性樹脂とブレンドする方法(例えば特許文献3参照。)、等の方法が提案されている。
また、2)ポリウレタンの一次構造を制御する方法として、ハードセグメントの濃度を高くすること(例えば特許文献4参照。)、キシリレン骨格を20重量%以上含有する2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物とすること(例えば特許文献5、6参照。)、等が提案されている。
さらに、ポリウレタン樹脂のガスバリア性を高める方法として、ソフトセグメント鎖間の凝集エネルギーを高め、自由体積を減少させる方法が考えられる。そのためには、ソフトセグメントに凝集エネルギーの高い置換基を導入することが有効であり、ハロゲン原子を導入したポリオールを原料に用いることが好ましい。そして、ハロゲンを導入したポリオールとしてはエピクロロヒドリンや1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環重合体が知られている(例えば特許文献7,8参照)。
特開平10−168305号公報(特許請求の範囲) 特公昭53−12953号公報(特許請求の範囲) 特開2003−206401号公報(特許請求の範囲) 特開2001−98047号公報(特許請求の範囲) 特開2004−10655号公報(特許請求の範囲) 特開2004−10656号公報(特許請求の範囲) 米国特許第4282332号公報(特許請求の範囲) 米国特許第3251852号公報(特許請求の範囲)
しかし、特許文献1に提案の方法においては、ポリウレタン樹脂中に層状粘土鉱物を分散させること自体が困難であるうえに、複合化に伴い樹脂粘度が高くなり成形加工が困難となるという課題がある。また、特許文献2に提案の方法においては、無機酸化物を蒸着する際に基材フィルムの劣化が激しい、無機酸化物が柔軟性に劣るためフィルムの二次加工時にクラックを生じガスバリア性の低下を引き起こすという課題を有する。特許文献3に提案の方法においては、ポリウレタン樹脂が持つ特性が損なわれ、物性バランスが低下するといった課題がある。
また、特許文献4の提案においては、コーティング材として使用した際の分散安定性、製膜後の透明性、基材への密着性、柔軟性が低下するという課題を有する。特許文献5,6の提案においては、高湿度条件下においてガスバリア性が低下するという課題がある。
さらに、特許文献7に提案されたエピクロロヒドリンの開環重合体は塩素含量が低いためガスバリア改良効果が小さく、特許文献8に提案された1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環重合体は不純物を含有するため、ポリウレタン樹脂とした際の物性が低下するという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリウレタン樹脂の特性を損なわずにガスバリア性に優れた新規なポリウレタン樹脂を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の塩素化ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られるポリウレタン樹脂が、優れたガスバリア性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記式(1)で示される構造単位Aと、下記式(2)で示される構造単位B及び/又は下記式(3)で示される構造単位Cとからなり、該構造単位A/(該構造単位B及び/又は該構造単位C)=10/90〜85/15(モル比)である塩素化ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られることを特徴とするポリウレタン樹脂に関するものである。
Figure 0005716284
(1)
Figure 0005716284
(2)
(ここで、Rは水素原子又はCHCl基である。)
Figure 0005716284
(3)
(ここで、R、R、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子を含まない炭素数が1〜10のアルキル基、又はハロゲン原子を含まない炭素数6〜10のアリール基である。)
本発明のポリウレタン樹脂は、ガスバリア性に優れるとともに、塩素導入に基づく難燃性や基材密着性が期待できることから、フォーム、エラストマー、塗料、接着剤、フィルム、シート、各種成形材料等への展開が期待できる。
以下に、本発明に関し詳細に説明する。
本発明のポリウレタン樹脂は、塩素化ポリエーテルポリオールおよびポリイソシアネートをウレタン化反応して得られるポリウレタン樹脂であって、塩素化ポリエーテルポリオールが、上記式(1)で示される構造単位Aと、上記式(2)で示される構造単位B及び/又は上記式(3)で示される構造単位Cとからなる塩素化ポリエーテルポリオールであることを特徴とするものである。ここで、構造単位B、構造単位Cは、塩素化ポリエーテルポリオールの粘度を低減化し、得られるポリウレタン樹脂に成形加工性を付与する共重合成分である。構造単位Aのみからなる塩素化ポリエーテルポリオールは、その粘度が著しく高いものとなり、そのような塩素化ポリエーテルポリオールよりなるポリウレタン樹脂は粘度が高く、成形加工性に劣るものとなり、その結果、本来有しているであろうガスバリア性が発揮されず、ガスバリア性に劣るものとなる。
該塩素化ポリエーテルポリオールを構成する上記式(1)で示される構造単位Aとしては、例えば3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位を挙げることができる。本発明のポリウレタン樹脂は、該構造単位Aを有する塩素化ポリエーテルポリオールよりなることによりハロゲン(塩素)を効率的に導入したポリウレタン樹脂となり、優れたガスバリア性を有するものとなる。
また、該塩素化ポリエーテルポリオールを構成してもよい上記式(2)で示される構造単位BのRは水素原子又はCHCl基であり、該構造単位Bとしては、例えば1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、エピクロルヒドリンの開環単位を挙げることができる。該構造単位Bを共重合成分とした塩素化ポリエーテルポリオールは、高い塩素含有量を有すると共に共重合化によりその粘度を低減化することができる。そして、このような塩素化ポリエーテルポリオールよりなるポリウレタン樹脂は、高いハロゲン(塩素)含有量を有することから優れたガスバリア性を有すると共に優れた成形加工性を有するものとなる。
該塩素化ポリエーテルポリオールを構成してもよい上記式(3)で示される構造単位Cは、アルキレンエーテル単位であり、該構造単位CのR、R、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子を含まない炭素数が1〜10のアルキル基、又はハロゲン原子を含まない炭素数6〜10のアリール基であり、R、R、R、Rの具体例としては、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基等の分岐アルキル基;シクロヘキシル基等の脂環アルキル基;フェニル基、p−メチルフェニル基等の置換フェニル基等が挙げられる。該構造単位Cとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ペンテンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等の開環単位を挙げることができる。該構造単位Cを共重合成分とした塩素化ポリエーテルポリオールは、共重合化により一層その粘度を低減化することができる。そして、このような塩素化ポリエーテルポリオールよりなるポリウレタン樹脂は、優れたガスバリア性を有すると共に優れた成形加工性を有するものとなる。
本発明のポリウレタン樹脂に用いられる塩素化ポリエーテルポリオールを構成する構造単位A/(構造単位B及び/又は構造単位C)の割合は、モル比で構造単位A/(構造単位B及び/又は構造単位C)=10/90〜85/15の範囲内であり、その中でも得られるポリウレタン樹脂のハロゲン(塩素)含有量が高く、粘度も低いことからガスバリア性、成形加工性に特に優れるポリウレタン樹脂となることから構造単位A/(構造単位B及び/又は構造単位C)=20/80〜80/20(モル比)の範囲内であることが特に好ましい。ここで、構造単位Aが該モル比で10/90未満の塩素化ポリエーテルポリオールである場合、得られるポリウレタン樹脂は塩素含有量の低いものとなりガスバリア性に劣るものとなる。一方、構造単位Aが該モル比で85/15を越える塩素化ポリエーテルポリオールである場合、粘度が高く、ポリウレタン樹脂とする際の取り扱い性、成形加工性に劣るものとなる結果、得られるポリウレタン樹脂がガスバリア性、成形加工性に劣るものとなる。
また、本発明のポリウレタン樹脂に用いられる塩素化ポリエーテルポリオールは、その名の示すとおり、通常一般的に知られているポリエーテルポリオール、ポリオキシアルキレンポリオールと同様に水酸基を有するものであり、該水酸基は、ポリマー末端、分岐鎖末端等のいずれかに水酸基を有していているものであってもよい。そして、その際の水酸基の量としては、JIS K1557に準拠した水酸基価(mgKOH/g)として算出できる。該水酸基価としては、特にガスバリア性、成形加工性に優れるポリウレタン樹脂となることから、1〜1000(mgKOH/g)であることが好ましく、特に10〜800(mgKOH/g)であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂に用いられる塩素化ポリエーテルポリオールは、液状から固体状を示し、組成、分岐数、分子量によってその状態は変化する。そして、ポリウレタン樹脂とする際には、その取り扱いが容易となることから20〜100℃において液状で流動性を示すことが好ましく、特にポリウレタン樹脂をポリウレタンフォームとした際のそのガスバリア性が優れたものとなることから、25℃における粘度が10mPa・s以上1×10mPa・s未満であることが好ましく、特に1×10mPa・s以上7×10mPa・s以下であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂に用いられる塩素化ポリエーテルポリオールは、ポリウレタン樹脂とした際のガスバリア性はもとより、難燃性、プラスチック密着性に優れるポリウレタン樹脂となることから塩素含量が5〜50重量%であることが好ましく、特に10〜46重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリウレタン樹脂に用いられる塩素化ポリエーテルポリオールは、上記式(1)で示される構造単位Aからなることから、一級炭素基に結合する塩素原子(以下、一級塩素原子と記す。)と二級炭素基に結合する塩素原子(以下、二級塩素原子と記す。)とを有することが特徴である。該塩素化ポリエーテルポリオールに含まれる全塩素原子中の二級塩素原子の割合としては、使用目的に応じて任意に調整可能であり、特に限定するものではなく、通常5〜50%の範囲である。二級塩素原子の割合を5%以上とすることで、例えば、ポリウレタン樹脂としたときの難燃性、プラスチック密着性の改質効果が向上する。
該塩素化ポリエーテルポリオールは、如何なる製造方法により得られたものであってもよく、例えば重合開始剤として含活性水素化合物を用い、酸触媒の存在下、該構造単位Aの構成原料として例えば3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンと、該構造単位Bの構成原料として例えば1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、エピクロロヒドリン、該構造単位Cの構成原料として例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ペンテンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等の炭素数2〜20のアルキレンオキシドとを開環共重合する方法を挙げることができる。
その際に、重合開始剤として用いられる含活性水素化合物としては、例えばヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、燐酸、チオール化合物等を挙げることができる。具体的には水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、へキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;ビスフェノールA等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等が挙げられる。また、重合開始剤として、水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いることも可能であり、その際には使用する単量体との親和性に優れ、低粘度である水酸基価120〜1500(mgKOH/g)のポリエーテルポリオールが好ましい。重合開始剤の使用量としては、特に制限はなく、目的とする塩素化ポリエーテルポリオールの分子量に合わせ、全単量体と重合開始剤の比を任意に調整すればよい。なかでも、ガスバリア性に優れるポリウレタン樹脂を得るに適した塩素化ポリエーテルポリオールとなることから、単量体の総モル数に対して、活性水素のモル数が0.02〜2倍モル量になるよう用いることが好ましい。なお、重合開始剤として、ヒドロキシ化合物、ポリエーテルポリオールを用いた際には、これら化合物が構成単位としてアルキレンエーテル単位を含む場合は、該塩素化ポリエーテルポリオールを構成する構造単位Cとして作用させることも可能である。
また、酸触媒としては、従来公知の酸触媒を用いることが可能であり、例えば硫酸、燐酸、塩酸等の鉱酸;三フッ化硼素、三塩化硼素等のハロゲン化硼素化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;四フッ化錫、四塩化錫等の錫化合物;フッ化アンチモン、塩化アンチモン等のアンチモン化合物;塩化第二鉄等の鉄化合物;五フッ化燐等の燐化合物;塩化亜鉛等のハロゲン化亜鉛化合物;四塩化チタン等のチタン化合物;塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;塩化ベリリウム等のベリリウム化合物;トリフェニル硼素、トリ(t−ブチル)硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチル硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化硼素、ジ(t−ブチル)フッ化硼素、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化硼素等の有機硼素化合物;トリエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化アルミニウム、ジ(t−ブチル)フッ化アルミニウム、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化アルミニウム、(t−ブチル)2フッ化アルミニウム等の有機アルミニウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物等を挙げることができる。
また、酸触媒として、ルイス酸を用いることも可能である。その場合、単独で使用しても良いし、種々の有機化合物との錯体として使用しても良い。ルイス酸と有機化合物の錯体としては、例えばジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、THF(テトラヒドロフラン)錯体等のエーテル錯体;酢酸錯体等のカルボン酸錯体;アルコール錯体;アミン錯体;フェノール錯体等が挙げられる。
酸触媒の使用量としては、特に制限はなく、効率よく塩素化ポリエーテルポリオールを製造できることから、単量体1モルに対して、1×10−5〜0.1モルの範囲で用いることが好ましい。
また、塩素化ポリエーテルポリオールを製造する際には、溶媒中又は無溶媒下のどちらで製造を行ってもよく、粘性の高い高分子量塩素化ポリエーテルポリオールを製造する際には、溶媒を用いることが好ましい。また、無溶媒で重合を行った後に溶媒を添加することも可能である。この際の溶媒としては、重合に悪影響を及ぼさないものであれば、特に制限なく使用することができ、例えばへキサン、ヘプタン等の炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロベンゼン等の塩素化物;エチルエーテル等のエーテル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;二硫化炭素等の硫化物;プロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル等が例示できる。上記した溶媒は単独又は2種類以上を混合して用いても良い。溶媒の使用量に特に制限はなく、塩素化ポリエーテルポリオールの生産性と回収効率を考慮し、単量体と重合開始剤の全重量に対して0.1倍〜5倍の重量であることが好ましい。
また、製造条件としては、単量体の開環共重合が可能であれば如何なる条件であってもよく、例えば重合温度−78〜150℃の範囲、重合時間10分〜48時間の範囲を挙げることができる。特に色相に優れた塩素化ポリエーテルポリオールが得られることから、重合温度−50〜120℃の範囲、重合時間30分〜24時間の範囲であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂に用いられるポリイソシアネートは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらの2種以上の混合物等を挙げることができる。さらに、これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)も包含され、その中でも、特に成形加工性、ガスバリア性に優れるポリウレタン樹脂となることから、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、その変性物であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂は、該塩素化ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとをウレタン化反応することにより得られる。この際に、該塩素化ポリエーテルポリオールおよび該ポリイソシアネートを一度に混合しウレタン化反応を行ってもよいし、多段階で混合しウレタン化反応を行ってもよい。また、ウレタン化反応の際には、必要に応じて他のポリオール、鎖延長剤、ウレタン化触媒、発泡剤及び整泡剤等を添加することができ、その中でも効率的にポリウレタン樹脂を得ることが可能となることから鎖延長剤、ウレタン化触媒を添加することが好ましい。これらを用いる際の混合順序は特に制限はなく、適宜選択することができる。
本発明のポリウレタン樹脂とする際に併用可能なポリオールとしては、本発明の目的を逸脱しない限りにおいてポリウレタン樹脂の製造に用いられるものであればいずれのものをも挙げることができ、例えばアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオール類、ポリエーテルポリオール中でビニルモノマーをラジカル重合して得られるポリマーポリオール類、多価アルコールと多価カルボン酸類との重縮合により得られるポリエステルポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類とアミノアルコール類との重縮合により得られるポリエステルアミドポリオール類、ラクトン類の開環重合により得られるポリラクトンポリオール類、多価アルコール類とカーボネート類との重縮合により得られるポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物類、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物類、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、大豆油やひまし油等の天然油系ポリオール類等を挙げることができる。
また、該鎖延長剤としては、ポリウレタン樹脂の鎖延長剤の概念に当たるものであれば如何なるものも挙げることができ、2個以上の活性水素基を有する低分子化合物であることが好ましく、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ヒドロキノンジエチロールエーテル等のジオール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、水添キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等のジアミン類、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
該ウレタン化触媒としては、通常ウレタン化触媒として用いられるアミン類、アジリジン類、第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属塩、鉛化合物、錫化合物、アルコラート化合物、フェノラート化合物、金属ハロゲン化合物、金属錯体化合物等を挙げることができ、具体的にはトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール等のアミン類;オクチル酸カリウム、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩類;ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルコラート化合物;カリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド等のフェノラート化合物;塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化錫等の金属ハロゲン化物;アセチルアセトン金属塩等の金属錯体化合物等を挙げることができる。上記したウレタン化触媒は単独又は2種類以上を混合して用いても良い。
該添加剤としては、例えばハイドロクロロフルオロカーボン類、ハイドロカーボン類、水、炭酸ガス等の発泡剤;含珪素有機系の界面活性剤やポリエーテルポリシロキサン等の整泡剤、が挙げられる。さらに、黄色防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、及び着色剤等を挙げることができる。
本発明のポリウレタン樹脂を製造する際には、溶媒中又は無溶媒下のどちらで製造を行ってもよい。溶媒としては、ウレタン化反応に悪影響を及ぼさないものであれば、特に制限なく使用することができ、例えばトルエン、キシレン等の芳香族化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;プロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル等が例示できる。上記した溶媒は単独で又は2種類以上を混合して用いても良い。
本発明のポリウレタン樹脂は、該塩素化ポリエーテルポリオールと該ポリイソシアネートをウレタン化反応して得られるものであればこれらの反応比率は如何なるものからなっていてもよく、その中でも特に優れたポリウレタン樹脂となることから該塩素化ポリエーテルポリオール中の全活性水素基濃度に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基濃度の当量比が0.8〜1.3の範囲よりなることが好ましく、特に0.9〜1.1の範囲よりなることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂とする際の反応温度、反応時間は目的に応じて適宜設定すればよく、その中でも反応温度20〜220℃で反応時間0.1分〜24時間であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂は、高いガスバリア性を有するものであり、その中でも23℃における酸素透過係数が1.5×10−16(mol・m/m・s・Pa)以下、23℃における炭酸ガス透過係数が10.0×10−16(mol・m/m・s・Pa)以下を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂は、従来公知の成形方法により成形体とすることができ、例えばフォーム、エラストマー、塗料、接着剤、シート、フィルム等の各種成形材料として用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。
以下に実施例において行った評価・分析を示す。
〜NMRスペクトルの測定〜
溶媒として重クロロホルムを用い、核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、(商品名)GSX270WB)にて測定した。
〜粘度測定〜
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、(商品名)MCR−300)を用い、25℃で定常流粘度を測定した。
〜塩素含量の測定〜
試料をフラスコ燃焼法にて処理し、溶液中の塩素量を硝酸第二水銀溶液により滴定し算出した。
〜水酸基価の測定〜
JIS K1557−1に準拠し測定した。
〜ガス透過係数の測定〜
得られたポリウレタン樹脂をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して50重量%の溶液とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に流延法により厚み0.080mmのポリウレタンフィルムを塗布し、ガス透過係数を測定した。ポリウレタン/PET複合フィルムのガス透過係数は、差圧式ガス透過試験機(東洋精機製)を用い、JIS K7126Aに準拠し、23℃、100kPa、測定径70mmにより測定した。該複合フィルム中のポリウレタン層のガス透過係数(P)を以下の式を用いて計算した。
1/R=1/R+DFT/P
(ここで、Rは複合フィルムのガス透過率(mol/m・s・Pa)、RはPETフィルムのガス透過率(mol/m・Pa・s)、DFTはポリウレタン層の厚み(mm)、Pはポリウレタン層のガス透過係数(mol・m/m・s・Pa)である。)
合成例1(塩素化ポリオールAの合成)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を取り付けた500ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール15.2g(200mmol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体5.7gを仕込み、水浴で内温を40℃に制御した。3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン71.9g(510mmol)、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン133.5g(947mmol)の混合物を滴下ロートより2時間かけて仕込んだ後、さらに40℃で4時間開環重合反応を行った。反応はガスクロマトグラフにより追跡し、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンと1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの転化率はそれぞれ100%、90%であった。
次に塩化メチレン200g、1%水酸化ナトリウム水溶液100mlを加え30分撹拌した。油水分離を行った後、油層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、無水硫酸ナトリウム、塩化メチレンを除去することにより粘性液体210gを得た。該粘性液体はH−NMR測定から、1.2ppmにプロピレングリコールに由来するメチル基、3.4〜4.4ppmにプロピレングリコールに由来するメチレンとメチン、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンに由来するメチレンとメチン、及び1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンに由来するメチレンとメチンのプロトンが観測され、該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環単位/プロピレングリコール由来単位=33/54/13(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールAと記す。)であることを確認した。
得られた塩素化ポリオールAの塩素含量は46重量%、水酸基価は110mgKOH/g、粘度は5.2×10mPa・sであった。塩素化ポリオールAの性状を表1に示す。
合成例2(塩素化ポリオールBの合成)
1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン133.5g(947mmol)の代わりにエピクロロヒドリン87.6g(947mmol)を用いた以外は、合成例1と同様の方法により開環重合を行った。エピクロロヒドリンは全量消費され、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/エピクロロヒドリンの開環単位/プロピレングリコール由来単位=31/57/12(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールBと記す。)を得た。
得られた塩素化ポリオールBの塩素含量は40重量%、水酸基価は130mgKOH/g、粘度は9.7×10mPa・sであった。塩素化ポリオールBの性状を表1に示す。
合成例3(塩素化ポリオールCの合成)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を取り付けた300ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥し、窒素置換を行った後、塩化メチレン68g、重合開始剤として水酸基価560mgKOH/gの2官能ポリプロピレングリコール13.9g、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体1.0gを仕込み、水浴で内温を20〜25℃に制御した。3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン55.0g(390mmol)を滴下ロートより50分かけて仕込んだ後、さらに20〜25℃で2時間重合反応を行った。反応はガスクロマトグラフにより追跡し、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの転化率は100%であった。
次に1%水酸化ナトリウム水溶液100mlを加え30分撹拌した。油水分離を行った後、油層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、無水硫酸ナトリウム、塩化メチレンを除去することにより粘性液体63gを得た。該粘性液体はH−NMR測定から、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環していることを確認でき、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=62/38(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールCと記す。)であることを確認した。得られた塩素化ポリオールCの塩素含量は40重量%、水酸基価は108mgKOH/g、粘度は6.1×10mPa・sであった。塩素化ポリオールCの性状を表1に示す。
合成例4(塩素化ポリオールDの合成)
重合開始剤として水酸基価560mgKOH/gの2官能ポリプロピレングリコール13.9g、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン55.0g(390mmol)の代わりに、重合開始剤として水酸基価280mgKOH/gの2官能ポリプロピレングリコール26.1g、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン38.6g(274mmol)を用いた以外は、合成例3と同様の方法により開環重合を行い、粘性液体60gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=38/62(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールDと記す。)であった。
得られた塩素化ポリオールDの塩素含量は30重量%、水酸基価は105mgKOH/g、粘度は6.8×10mPa・sであった。塩素化ポリオールDの性状を表1に示す。
合成例5(塩素化ポリオールEの合成)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を取り付けた500ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤として水酸基価122mgKOH/gの2官能ポリプロピレングリコール100g、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体1.0gを仕込み、水浴で内温を20〜25℃に制御した。3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン55.0g(390mmol)を滴下ロートより50分かけて仕込んだ後、さらに20〜25℃で2時間重合反応を行った。反応はガスクロマトグラフにより追跡し、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの転化率は100%であった。合成例1と同様の方法で後処理し、粘性液体148gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=18/82(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールEと記す。)であることを確認した。
得られた塩素化ポリオールEの塩素含量は18重量%、水酸基価は75mgKOH/g、粘度は1.1×10mPa・sであった。塩素化ポリオールEの性状を表1に示す。
合成例6(塩素化ポリオールFの合成)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を取り付けた500ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール15.2g(200mmol)、塩化メチレン30g、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体0.5gを仕込み、水浴で内温を20〜25℃に制御した。3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン56.4g(400mmol)を滴下ロートより30分かけて仕込んだ。その後、プロピレンオキシド23.2g(400mmol)を30分かけて仕込み、反応を2時間継続した。反応はガスクロマトグラフにより追跡し、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンとプロピレンオキシドの転化率はそれぞれ100%であった。合成例3と同様の方法により後処理し、粘性液体85gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=40/60(モル比)の塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールFと記す。)であった。
得られた塩素化ポリオールの塩素含量は30重量%、水酸基価は225mgKOH/g、粘度は2.0×10mPa・sであった。塩素化ポリオールFの性状を表1に示す。
合成例7(塩素化ポリオールGの合成)
プロピレンオキシド23.2g(400mmol)の代わりにプロピレンオキシド46.4g(800mmol)を用いた以外は、合成例6と同様の方法により開環重合を行い、粘性液体104gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=29/71(モル比)からなる塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールG)であった。
得られた塩素化ポリオールGの塩素含量は24重量%、水酸基価は182mgKOH/g、粘度は1.2×10mPa・sであった。塩素化ポリオールGの性状を表1に示す。
合成例8(塩素化ポリオールHの合成)
3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン55.0g(390mmol)の代わりに3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン36.1g(256mmol)および1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン21.6g(153mmol)を用いた以外は、合成例3と同様の方法により開環重合を行い、粘性液体67gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=42/22/36(モル比)の塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールHと記す)であった。
得られた塩素化ポリオールHの塩素含量は40重量%、水酸基価は107mgKOH/g、粘度は5.8×10mPa・sであった。塩素化ポリオールHの性状を表1に示す。
合成例9(塩素化ポリオールIの合成)
3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン38.6g(274mmol)の代わりに3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン25.4g(181mmol)および1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン15.2g(108mmol)を用いた以外は、合成例4と同様の方法により開環重合を行い、粘性液体63gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環単位/プロピレンエーテル単位=25/14/61(モル比)の塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールIと記す)であった。
得られた塩素化ポリオールIの塩素含量は30重量%、水酸基価は105、粘度は6.6×10mPa・sであった。
合成例10(塩素化ポリオールJの合成)
1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン21.6g(153mmol)の代わりにエピクロロヒドリン19.5g(210mmol)を用いた以外は、合成例8と同様の方法により開環重合を行い、粘性液体68gを得た。該粘性液体は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/エピクロロヒドリンの開環単位/プロピレンエーテル単位=37/31/32(モル比)の塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールJと記す)であった。
得られた塩素化ポリオールJの塩素含量は37重量%、水酸基価は106、粘度は4.0×10 mPa・sであった。
合成例11(塩素化ポリオールKの合成)
合成例1と同様の装置を使用し、重合開始剤としてプロピレングリコール9.3g(122mmol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体4.2gを仕込み、内温を40℃とした。1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン140g(993mmol)を滴下ロートより3時間かけて仕込んだ後、さらに40℃で7時間重合反応を行った。合成例1と同様に重合後の処理を行い、粘性液体115gを得た。H−NMRより該粘性液体は1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタンの開環単位/プロピレングリコール由来単位=69/31(モル比)の塩素化ポリエーテルポリオール(以下、塩素化ポリオールKと記す。)であることを確認した。
得られた塩素化ポリオールKの塩素含量は46重量%、水酸基価は110mgKOH/g、粘度は1.0×10mPa・sあった。塩素化ポリオールKの性状を表1に示す。
塩素化ポリオールKは、高粘度で取扱いが困難であるとともに、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドに一部不溶、2−プロパノールに不溶であった。
合成例12(塩素化ポリオールLの合成)
撹拌子、温度計、窒素導入管を取り付けた200ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥後、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール2.7g(36mmol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体0.52g、重合溶媒として塩化メチレン30g、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン30g(214mmol)を仕込み、氷水浴下で撹拌を行いながら1時間重合反応を行った。
次に、1%水酸化ナトリウム水溶液25mlを加え30分撹拌した。油水分離を行った後、有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、無水硫酸ナトリウム、塩化メチレンを除去することにより粘性液体31gを得た。該粘性液体はH−NMR測定から、1.2ppmにプロピレングリコールのメチル基、3.4〜4.4ppmにプロピレングリコールのメチレン及びメチンと3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環したメチレンとメチンのプロトンが観測されたことから、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位/プロピレングリコール由来単位=86/14(モル比)の塩素化ポリエーテル(以下、塩素化ポリオールLと記す。)であることを確認した。
得られた塩素化ポリオールLの塩素含量は46重量%、水酸基価は120mgKOH/g、粘度は1.0×10mPa・sであった。塩素化ポリオールLの性状を表1に示す。
塩素化ポリオールLは、高粘度で取扱いが困難であった。
実施例1
ドライボックス中、窒素雰囲気下により100mlセパラブルフラスコに合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート11.5g(49mmol)を仕込んだ後、撹拌翼、窒素導入管を取り付けた。N,N−ジメチルホルムアミドを31g加えた後、油浴で内温を20℃に制御し、10分間撹拌して4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解した。ウレタン化触媒としてジブチルチンジラウレート30mgを加えた後、50℃に昇温し、1.5時間反応した。さらに鎖延長剤として1,4−ブタンジオール2.9g(33mmol)を加え、80℃に昇温し、5時間反応した。反応はIRスペクトルにより追跡し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの転化率は100%であることを確認した。
得られた反応溶液を脱水メタノールに加えてポリウレタン樹脂を沈澱させ、固液分離を行い、80℃で減圧乾燥することによりポリウレタン樹脂パウダー29gを得た。
得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は5000であり、酸素ガス透過係数は0.15×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.02×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
実施例2
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例2により得られた塩素化ポリオールB14.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.26×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.02×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
参考例3
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例3により得られた塩素化ポリオールC16.9g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、0.21×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過整数は0.07×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
参考例4
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例4により得られた塩素化ポリオールD17.3g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、0.31×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.04×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
参考例5
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例5により得られた塩素化ポリオールE24.3g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、0.39×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数が0.17×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
参考例6
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例6により得られた塩素化ポリオールF8.1g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、0.76×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.62×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
参考例7
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例7により得られた塩素化ポリオールG10.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、0.85×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.87×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
実施例8
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例8により得られた塩素化ポリオールH17.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.19×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.05×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタンの性状を表2に示す。
実施例9
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例9により得られた塩素化ポリオールI17.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.35×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.14×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタンの性状を表2に示す。
実施例10
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例10により得られた塩素化ポリオールJ17.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.26×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.07×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタンの性状を表2に示す。
比較例1
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、平均官能基数2のポリプロピレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスPP−1000;水酸基価112mgKOH/g、粘度110mPa・s、以下、ポリオールAと記す。)16.3g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、2.7×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は20×10−16(mol・m/m・Pa・s)であり、ガスバリア性に劣るものであった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
比較例2
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、平均官能基数2のポリプロピレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスPP−2000;水酸基価56mgKOH/g、粘度240mPa・s、以下、ポリオールBと記す。)32.5g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は、3.5×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は24×10−16(mol・m/m・Pa・s)であり、ガスバリア性に劣るものであった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
比較例3
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例11により得られた塩素化ポリオールK16.6g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を試みた。
塩素化ポリオールKはN,N−ジメチルホルムアミドに一部不溶であるため、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの転化率は85%であり、ポリウレタン樹脂パウダー29gを回収した。
得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は2000であった。得られたポリウレタン樹脂は、N,N’−ジメチルホルムアミドへの溶解性が悪くフィルムとすることが困難なものであった。また、酸素ガス透過係数は、1.7×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は11.0×10−16(mol・m/m・Pa・s)であり、ガスバリア性に劣るものであった。得られたポリウレタン樹脂の性状を表2に示す。
比較例4
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに、合成例12により得られた塩素化ポリオールL15.0g(16mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を試みた。
塩素化ポリオールLは高粘度であるため、原材料の混合が不十分な状態でウレタン化反応が進行し、得られたポリウレタン樹脂は不均質なものとなった。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの転化率は80%であり、ポリウレタン樹脂パウダー20gを回収した。
得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量は1500であった。得られたポリウレタン樹脂は、脆く、フィルムとすることができず、酸素ガス透過係数及び炭酸ガス透過係数を測定することが不可能であった。
実施例11
合成例1により得られた塩素化ポリオールA16.6g(16mmol)の代わりに12.4g(12mmol)とし、1,4−ブタンジオール2.9g(33mmol)の代わりに3.3g(37mmol)としたこと以外は、実施例1と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.14×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.02×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタンの性状を表3に示す。
参考例12
合成例1により得られた塩素化ポリオールA12.4g(12mmol)の代わりに、合成例3により得られた塩素化ポリオールC12.6g(12mmol)を用いた以外は、実施例11と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は0.18×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は0.05×10−16(mol・m/m・Pa・s)であった。得られたポリウレタンの性状を表3に示す。
比較例5
合成例1により得られた塩素化ポリオールA12.4g(12mmol)の代わりに、ポリオールA12.2g(12mmol)を用いた以外は、実施例11と同様の方法によりポリウレタン樹脂の製造を行った。
得られたポリウレタン樹脂の酸素ガス透過係数は2.4×10−16(mol・m/m・Pa・s)、炭酸ガス透過係数は18×10−16(mol・m/m・Pa・s)であり、ガスバリア性に劣るものであった。得られたポリウレタンの性状を表3に示す。
Figure 0005716284
Figure 0005716284
Figure 0005716284
本発明の新規なポリウレタン樹脂は、ガスバリア性に優れるとともに、塩素導入に基づく難燃性や基材密着性が期待できることから、フォーム、エラストマー、塗料、接着剤、フィルム、シート、各種成形材料等への展開が期待できる。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で示される構造単位Aと、下記式(2)で示される構造単位Bとからなり、該構造単位A/該構造単位B=10/90〜85/15(モル比)である塩素化ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られることを特徴とするポリウレタン樹脂。
    Figure 0005716284
    (1)
    Figure 0005716284
    (2)
    (ここで、Rは水素原子又はCHCl基である。)
  2. 下記式(1)で示される構造単位Aと、下記式(2)で示される構造単位B及び下記式(3)で示される構造単位Cとからなり、該構造単位A/(該構造単位B及び該構造単位C)=10/90〜85/15(モル比)である塩素化ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られることを特徴とするポリウレタン樹脂。
    Figure 0005716284
    (1)
    Figure 0005716284
    (2)
    (ここで、Rは水素原子又はCHCl基である。)
    Figure 0005716284
    (3)
    (ここで、R、R、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子を含まない炭素数が1〜10のアルキル基、又はハロゲン原子を含まない炭素数6〜10のアリール基である。)
  3. 前記塩素化ポリエーテルポリオールとして、JIS K1557に準拠した水酸基価10〜800(mgKOH/g)を有する塩素化ポリエーテルポリオールから得られることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂。
  4. 前記塩素化ポリエーテルポリオールとして、25℃における粘度が10mPa・s以上1×10mPa・s未満である塩素化ポリエーテルポリオールから得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
  5. 前記塩素化ポリエーテルポリオールとして、塩素含量5〜50重量%である塩素化ポリエーテルポリオールから得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
  6. 前記塩素化ポリエーテルポリオールとして、前記構造単位A/前記構造単位B=20/80〜80/20(モル比)である塩素化ポリエーテルポリオールから得られることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
  7. 前記塩素化ポリエーテルポリオールとして、前記構造単位A/(前記構造単位B及び前記構造単位C)=20/80〜80/20(モル比)である塩素化ポリエーテルポリオールから得られることを特徴とする請求項2に記載のポリウレタン樹脂。
  8. 前記構造単位Aとして、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの開環単位、前記構造単位Bとして、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン及び/又はエピクロロヒドリンの開環単位、前記構造単位Cとして、炭素数2〜20のアルキレンエーテル単位からなることを特徴とする請求項2に記載のポリウレタン樹脂。
  9. 前記ポリイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートから得られることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
  10. 前記ウレタン化反応の際に、ウレタン化触媒及び鎖延長剤を用い得られることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
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